説明

記録装置

【課題】よりシンプルな構成によって紙粉のノズル孔への付着を防止することができ、インク吐出性能の低下および作業効率の低下を招来しにくい記録装置を実現する。
【解決手段】インクジェットプリンタ備える制御部は、用紙への記録量に係る記録枚数Nを計測する計測部を備え、ノズル面及びプラテン間が所定のギャップに設定されている状態で、メンテナンスユニットによるノズル面の清掃後、記録枚数Nが所定値N1を越えた所定タイミングが到来した場合に、ギャップdよりも大きな距離d+αに変更するようギャップ調整機構を動作させるべく構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して被記録体の表面に画像を記録する記録ヘッドと、該記録ヘッドに対向配置されるプラテンとのギャップを調整可能な記録装置に関し、特に、被記録体から生じる紙粉によって記録ヘッドのノズル孔が汚染されるのを防止すべく両者間のギャップを調整することができる記録装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の一例として、記録ヘッドからインクを吐出して記録用紙に画像を形成するインクジェットプリンタがある。このインクジェットプリンタは、対を成す搬送ローラ間に挟入された記録用紙が、この搬送ローラの回転によって下流側へ搬送され、プラテンによって裏側から支持された状態で記録ヘッドに対向配置される。記録ヘッドは記録用紙に対向するノズル面を有し、該ノズル面にはインクを吐出するノズル孔が開口されている。そして、プラテンにより支持された用紙がノズル面に対向して配置された状態で、ノズル孔からインクが吐出され、このインクが記録用紙の表面に付着して画像が形成される。
【0003】
記録ヘッドと記録用紙との間隔は、インクの記録用紙上の付着位置の精度を高める上で狭い方が好ましく、特に、銀塩写真と同等の画質をもった画像を印刷する場合においては、記録ヘッドと記録用紙とは極力近接させる必要がある。従って、印刷時に記録用紙を支持するプラテンは、記録ヘッドに対して比較的近接して対向配置されている。
【0004】
しかしながら、一般に記録用紙には非常に微細な紙粉が付着しており、この紙粉は記録用紙から離脱して記録ヘッドの周辺を浮遊したり、プラテンの表面に堆積したりする場合がある。浮遊した紙粉や、プラテン表面に堆積した後に気流等により散乱した紙粉は、記録ヘッドのノズル孔に付着する可能性があり、このような事態は、ノズル孔からのインクの吐出性能の不安定化を招く恐れがあるために好ましくない。また当然ながら、このようなノズル孔への紙粉の付着は、記録ヘッドに対して記録用紙が近接するほど頻繁になる。
【0005】
このような事態を解決すべく、インクミストを含む浮遊物質を吸引ファンなどによって吸引し、スポンジ等からなるインク捕獲部材に捕獲しようとする画像記録装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−34057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された画像記録装置の場合、吸引ファン及びその吸引流路中にスポンジ等からなるインク捕獲部材を備え付けるために装置が複雑化すると共に装置全体の小型化が困難となる。また、装置全体の生産コストが高くなり、消費電力量の増加に伴ってランニングコストも高くなってしまう。
【0007】
更に、吸引ファンはモータ等の駆動部を有しているため、このモータ等の駆動によって記録中であっても僅かながらも振動が生じてしまう。この振動は、吸引ファンが設けられたプラテンを通じて記録用紙にまで伝達される可能性がある。このような状況は、記録ヘッドから吐出されたインクの記録用紙への付着位置を不安定化させ、位置精度の向上を図れない可能性があって好ましくない。
【0008】
また、一般にインクジェットプリンタでは所定の周期で記録ヘッドのノズル面がクリーナブレードによって清掃され、ノズル面に付着した異物は払拭されるようになっている。しかしながら、このようなクリーナブレードによるノズル面の清掃は、ノズル面を傷つけたりノズル面の撥水膜の摩耗による吐出性能の低下を招来する恐れや、記録中であるにも関わらず度々記録作業を中断して作業効率を低下させる恐れもあるため、高頻度に行なうことは好ましくない。
【0009】
そこで本発明は、よりシンプルな構成によって紙粉のノズル孔への付着を防止することができ、インク吐出性能の低下および作業効率の低下を招来しにくい記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述したような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る記録装置は、インクを吐出するノズル孔が開口されたノズル面を被記録体に対向させ、所定方向へ往復移動しつつ前記ノズル孔からインクを吐出して前記被記録体の表面に画像を記録する記録ヘッドと、該記録ヘッドに対向配置されて前記被記録体を裏面側から支持するプラテンと、前記記録ヘッドにおいて前記ノズル面を所定の周期で清掃するクリーナと、前記記録ヘッドの前記ノズル面及び前記プラテンのうち一方又は両方を移動させることにより両者間のギャップを調整するギャップ調整部と、該ギャップ調整部の動作を制御する制御部とを備え、該制御部は、前記被記録体への記録量に係る値を計測する計測部を備え、前記ノズル面及び前記プラテン間が所定の第1ギャップに設定されている状態で、前記クリーナによる前記ノズル面の清掃後、前記記録量に係る値が所定値を越えた所定タイミングが到来した場合に、前記ノズル面及び前記プラテン間を前記第1ギャップよりも大きな第2ギャップに変更するよう前記ギャップ調整部を動作させるべく構成されている。
【0011】
このような構成とすることにより、被記録体への記録量に係る値が所定値を超えると、記録用紙から生じる紙粉が比較的多く発生しているということが経験的に知られているため、このタイミングでノズル面及びプラテン間のギャップを大きくすることによって紙粉がノズル面に付着するのを抑制することができる。また、クリーナによる清掃頻度を高くする必要はなく従来通りでよいので、ノズル面の傷つきや撥水膜の摩耗を抑えることができ、また記録作業効率の低下を招来することがない。
【0012】
ここで、記録装置としてのインクジェットプリンタでは、一般に記録内容に応じて記録ヘッドのノズル面とプラテンとのギャップを調整する機構が設けられているものが知られている。これは、写真画質の記録を行なう場合には被記録体へのインクの付着位置精度を高めるべくギャップを小さくし、通常文書等作成のための印字を行なう場合には被記録体との接触からノズル面を保護するためにギャップを大きくするためである。このような機構を有する記録装置であれば、本発明に係る上記記録装置は、新たな機構を設けることなく従来備えていた機構を利用して構成することが可能であり、紙粉のノズル孔への付着抑制を効率的かつ低価格で実現することができる。
【0013】
また、前記計測部は、前記被記録体の記録枚数を計測するよう構成されており、前記タイミングは、前記クリーナによる前記ノズル面の清掃後からの前記計測部による計測枚数が所定値に達したときであってもよい。このような構成とすることにより、記録ヘッドに対向する位置で画像記録が行なわれた被記録体の枚数を基準としてノズル面とプラテンとのギャップ調整を行なうため、的確なタイミングを得ることができ、ノズル孔への紙粉の付着を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、前記計測部は、前記被記録体への記録時間を計測するよう構成されており、前記タイミングは、前記クリーナによる前記ノズル面の清掃後からの前記計測部による計測時間が所定値に達したときであってもよい。このような構成とすることによっても的確なタイミングによりギャップ調整を行なうことができ、ノズル孔への紙粉の付着を効果的に抑制することができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記ノズル面及び前記プラテン間が前記第2ギャップに設定されている状態で、前記クリーナによる前記ノズル面の清掃が行われると、前記ノズル面及び前記プラテン間を前記第1ギャップに変更するよう前記ギャップ調整部を動作させるべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、クリーナによるノズル面の清掃後は、例えば写真画質での記録など記録内容に応じてギャップを小さくすることができ、吐出されたインクの被記録体への付着位置精度の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、よりシンプルな構成によって紙粉のノズル孔への付着を防止することができ、インク吐出性能の低下および作業効率の低下を招来しにくい記録装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る記録装置について、インクジェットプリンタを例にして、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
図1は、インクジェットプリンタの構成を示す平面図であり、説明の便宜上、全体を囲うハウジング等、一部分の構成は省略して示している。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、金属板等から成る左右一対のメインフレーム2,2を有し、このメインフレーム2,2間には搬送されてくる被記録体としての記録用紙(以下、単に「用紙」という)Pに画像を記録する記録部3が設けられている。なお、以下の説明では、記録部3にて画像が記録されているときの用紙Pの搬送方向(図1中の白抜き矢印が示す方向)を前方として、これを基準とした方向の概念を用いることとし、その他の場合は適宜説明することとする。
【0019】
記録部3は、メインフレーム2,2間の前後に架設されたシャーシ4,4(図1では二点鎖線で示す)を備えており、これらのシャーシ4は左右方向へ延びる板状を成している。前後のシャーシ4をガイドレールとしてキャリッジ5(図1では二点鎖線で示す)が左右摺動可能に支持されており、該キャリッジ5内には記録ヘッド6(図2参照)が収容されている。キャリッジ5は、図示しないモータによって周回動するタイミングベルトに接続されており、該タイミングベルトの動作に伴ってシャーシ4の長手方向(即ち、左右方向)へ記録ヘッド6と共に移動可能になっている。また、このように移動する記録ヘッド6の下方には、平面視で左右方向に長寸のプラテン7が配設されている。
【0020】
なお、インクジェットプリンタ1は、ハウジング内にインクカートリッジ(図示せず)を収容しており、このインクカートリッジとキャリッジ5とは図示しないインク供給管によって接続され、キャリッジ5内の記録ヘッド6へ各色(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)のインクが独立して供給可能となっている。また、ハウジング内にはCPUなどから成る制御部40(図5参照)も収容されており、この制御部40とキャリッジ5内の記録ヘッド6とは図示しないフレキシブルフラットケーブルによって接続されている。従って、制御部40からの指示信号に基づき、記録ヘッド6は各色のインクをノズル孔から吐出可能となっている。
【0021】
また、図1に示すように用紙Pの搬送領域外であるプラテン7の右側方には、記録ヘッド6が行なうフラッシング動作の際に吐出されるインクを受けるための廃インク受部30が設けられている。記録ヘッド6は、この廃インク受部30の上方に位置し、ノズル孔の目詰まり防止のためのインク吐出(フラッシング)を、記録動作中に所定の周期で行ない、廃インク受部30は吐出されたインクを受けるようになっている。
【0022】
また、用紙Pの搬送領域外であるプラテン7の左側方位置はキャリッジ5の待機位置となっており、そこには記録ヘッド6用のメンテナンスユニット31がシャーシ4に支持されて設けられている。メンテナンスユニット31は、待機位置にきた記録ヘッド6のノズル面6a(図2参照)をゴム等から成るブレードにより清掃して付着物を払拭し、各色のインクを選択的に吸引してノズル孔の目詰まりを防止するなどのメンテナンスを行なうことができる。
【0023】
図2は、図1に示すインクジェットプリンタ1のII-II矢視線での断面図であり、主として記録部3の構成を示している。図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、プラテン7の後方に上下一対のレジストローラ10,10を備えており、更にその後方には用紙Pの先端を検出するための検出レバー11を備えている。本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、プラテン7の下方に多数の用紙Pを収容するカセット(図示せず)を備えており、該カセット内の用紙Pは周知の搬送手段によって検出レバー11を経由してレジストローラ10まで搬送されるようになっている。
【0024】
検出レバー11は用紙Pの搬送経路に交差して設けられ、搬送途中の用紙Pの先端が接触することによって用紙Pの搬送経路から退行させられるよう可動な構成となっている。そして、搬送されてきた用紙Pの先端によって検出レバー11が退行すると、センサ11a(図5参照)がこれを検出し、制御部40へその旨の信号を出力する。制御部40は、この信号を受信した直後からの経過時間を測定し、所定時間経過した後に記録ヘッド6へ信号を発し、ノズル孔からインクを吐出させるようになっている。
【0025】
レジストローラ10は左右方向に回転軸芯を向けられて設けられており、検出レバー11を経た用紙Pは、上下のレジストローラ10,10間に挟入されて更に前方へ搬送される。レジストローラ10によって前方へ排出された用紙Pは、記録ヘッド6とプラテン7とに挟まれた空間へ、プラテン7によって裏面(下面)側から支持された状態で導かれ、ここで用紙Pの表面への記録が行われる。
【0026】
プラテン7の前部上方には、左右方向へ長寸の板状を成すプラテンカバー8が設けられ、該プラテンカバー8の上方には、左右方向に回転軸芯を有する拍車ローラ12が配設されている。該拍車ローラ12は、プラテン7及びプラテンカバー8の上面に沿って搬送される用紙Pの表面(上面)と接することにより、記録中の用紙Pがプラテン7上面から浮き上がるのを防止する。また、プラテン7の前方には、別の拍車ローラ13と排紙ローラ14とが上下に配設されており、これらのローラ13,14は共に回転軸芯が左右方向へ向けられている。この拍車ローラ13及び排紙ローラ14は、プラテン7上での記録を終えた用紙Pを間に挟んだ状態で回転し、記録済みの用紙Pをインクジェットプリンタ1の排出口(図示せず)へと誘導する。
【0027】
また、図2に示すように、前側のシャーシ4の下方には、ギャップ調整機構17を成す偏芯カム17aが該シャーシ4の下面に接する状態で設けられている。この偏芯カム17aは制御部40からの指示により駆動するモータ17bの出力軸にギヤを介して接続されており、回動することによってシャーシ4と共に記録ヘッド6を含むキャリッジ5を上下方向、即ち、プラテン7に近接する方向と離反する方向とに移動させ、記録ヘッド6とプラテン7との間のギャップdをd1<d<d2の間で任意に調整できるようになっている。
【0028】
例えば、写真画質での記録を行う場合には両者間のギャップdを距離d1に設定し、記録ヘッド6から吐出されたインクの付着位置精度を高める。通常文書等の作成のための印字をする場合には、両者間のギャップdを距離d1より大きい距離d3(<d2)に離反させることができ、更に必要に応じて距離d3より大きな距離d2まで離反させるなど、設定に応じて任意に調整することができる。
【0029】
図3は、プラテンカバー8が取り付けられた状態のプラテン7の斜視図であり、図4は、図3に示すプラテン7のIV-IV矢視線での断面図である。図3に示すように、プラテン7は、平面視した場合に左右方向が長寸の略箱形状を成す合成樹脂製の部材であり、その前部は用紙Pに付着しなかった余剰インクを溜めるインク溜部7aを成し、後部は記録中に用紙Pを裏面側から支持する用紙支持部7bを成している。そして、プラテンカバー8は、プラテン7のインク溜部7aを上方から覆っている(図2も参照)。
【0030】
図3及び図4に示すように、プラテン7は、プラテン本体20と、該プラテン本体20よりも上側(即ち、記録ヘッド6側又は記録中の用紙P側)に設けられて用紙Pを裏面側から支持する複数の上流側リブ22とから構成され、この上流側リブ22はプラテン本体20に立設されている。
【0031】
プラテン本体20の後部には、上面が下方へ窪んだ凹状板部23が形成されており、該凹状板部23の前方には、用紙Pの裏面に対向する平板状の棚板部24が凹状板部23から連続的に形成されている。棚板部24の上面は、凹状板部23の内底面よりも相対的に上方に位置している。上述した上流側リブ22は、これら凹状板部23から棚板部24に亘って設けられている。
【0032】
より詳しく説明すると、上流側リブ22は板状を成し、プラテン本体20の左端から右端まで一定の間隔(本実施の形態では約20mmの間隔)で配設されている。図4に示すように各上流側リブ22は、凹状板部23の内底面23a及び棚板部24の上面24aのそれぞれから上方へ延びるように立設され、且つ、凹状板部23の後端部から棚板部24の前端部に至るまで、用紙Pの搬送方向へ延設されている。
【0033】
隣り合う上流側リブ22の間には空隙部22bが形成されるため、プラテン本体20の後部においては、上流側リブ22の上端部(当接部)22aのみが用紙Pに裏面側から直接的に当接しこれを支持することとなっている。そして、プラテン本体20において空隙部22bを介して用紙Pに対向する面、即ち、凹状板部23の内底面23aと棚板部24の上面24aとには、所定の粘着剤から成る粘着層25が配設されている。このような上流側リブ22と、プラテン本体20の凹状板部23及び棚板部24と、粘着層25とによって、プラテン7の用紙支持部7bが構成されている。
【0034】
一方、プラテン本体20の前部であって上述した棚板部24の前方には、平板状のインク受部26が棚板部24から連続的に形成されており、該インク受部26の前方には上面が下方へ窪んだ凹状のインク回収部27が前記インク受部26から連続的に形成されている。インク受部26の上面26aは、前方へ向かうに従って下方へ向かうように若干傾斜している。このインク受部26の上面26aには、用紙Pの搬送方向(即ち、前後方向)へ延びる複数の下流側リブ28が立設され、この下流側リブ28は、上述した上流側リブ22よりも狭い一定間隔で左右方向に配設されている(図3参照)。また、インク回収部27の内底面27aには、インクを吸収することのできる多孔質性のインク吸収体29が配設されている。このようなインク受部26、インク回収部27、下流側リブ28、及びインク吸収体29により、プラテン7のインク溜部7aが構成されている。
【0035】
上述したような構成のインクジェットプリンタ1は、プラテン7の上面に粘着層25が設けられているため、用紙Pから生じた紙粉は、この粘着層25に捕獲される。しかも、この粘着層25は、プラテン7において記録ヘッド6に対向する面(凹状板部23の内底面23a及び棚板部24の上面24a)であって、用紙Pと直接的に接触する上流側リブ22の下方に設けられているため、効率的に紙粉を捕獲することが可能である。
【0036】
なお、図4に示したプラテン7では、凹状板部23の内底面23a及び棚板部24の上面24aにのみ粘着層25が配設された構成を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、凹状板部23の内底面23aと棚板部24の上面24aとを接続する前側垂直壁面23b(図4参照)や、凹状板部23において前側垂直壁面23bに対向する後側垂直壁面23c(図4参照)に粘着層25を設けてもよい。更に、上流側リブ22の左右の側面22cに粘着層25を設けてもよい。
【0037】
また、本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の場合は、プラテン7がインク溜部7aを有している。このインク溜部7aでは、例えば、いわゆる縁無し印刷などをした場合に用紙Pに付着しなかった余剰インクを、下流側リブ28の間に形成される溝を通ってインク回収部27へ誘導し、インク吸収体29にて吸収する。従って、余剰インクによって用紙Pが汚れてしまうのを防止することができる。
【0038】
次に、上述したインクジェットプリンタ1の機能のうち、主として記録ヘッド6を上下動させる部分について図5に示すブロック図を用いて説明する。図5に示すようにインクジェットプリンタ1は、CPU及びメモリなどから成る制御部40を備え、該制御部40は、メモリ内に格納されたプログラムに従って動作することにより、用紙Pへの記録量に係る値としての記録枚数を計測する枚数計測部41として機能する。
【0039】
例えば、制御部40が後述する図6に示すフローチャートに従って動作する場合、ステップ15の動作において枚数計測部41として機能する。また、制御部40が時間計測部42又は走査数計測部43として機能する場合は、制御部40からフレキシブルフラットケーブルを介して記録部6へ出力した信号に基づき、記録動作時間又は走査数をそれぞれ計測する。
【0040】
また、図5に示すように制御部40には、ギャップ調整機構17を構成するモータ17bが、図示しない駆動回路を介して接続されており、該モータ17bは制御部40からの指示信号に基づいて所定の回転角度だけ出力軸を回転させる。その結果、記録ヘッド6のノズル面6aとプラテン7とのギャップdは、距離d1〜d2の間で任意に設定される。なお、本実施の形態においてこのギャップdは、図2に示すように、プラテン7の上流側リブ22の当接部22aからノズル面6aまでの距離としてある。
【0041】
制御部40は、インクジェットプリンタ1についてその他の動作制御も行う。例えば、制御部40は用紙Pの先端を検出するセンサ17aとも接続されており、該センサ17aからの信号に基づくタイミングで用紙Pへの記録動作を決定する。また、廃インク受部30でのフラッシングやメンテナンスユニット31でのメンテナンス処理などについてインクジェットプリンタ1の動作制御を行なう。
【0042】
図6は、インクジェットプリンタ1で行なわれる記録ヘッド6のノズル面6aとプラテン7とのギャップdの調整動作の一例を示すフローチャートであり、図7は、図6に示す動作の一部を構成するメンテナンス処理に係るサブルーチンを示すフローチャートである。図6及び図7では、下記に説明するように、制御部40は枚数計測部41として動作する場合について示している。
【0043】
図6に示すように、はじめにインクジェットプリンタ1の電源が入れられると(S1)、制御部40はギャップdの初期化を行ない(S2)、記録ヘッド6のノズル面6aとプラテン7とのギャップdを予め設定された基準ギャップd0に一致させる。なお、この基準ギャップd0は、距離d1〜d2の間で任意に設定することができる。次に、インクジェットプリンタ1に適宜設けられた入力パネル等のオペレータによる操作、又は、インクジェットプリンタ1に通信可能に接続されたコンピュータからの指示に基づき、記録指令の有無、即ち、記録動作をすべき指令の有無を判断する(S3)。その結果、記録指令が無いと判断した場合(S3:NO)にはステップ3の動作を繰り返し、記録指令が有ると判断した場合(S3:YES)にはメンテナンス処理動作へ移行する(S4)。
【0044】
図7のサブルーチンに示すように、メンテナンス処理では最初に前回のメンテナンス処理からの経過時間Tを取得する(S41)。具体的には、メンテナンスユニット31による前回の記録ヘッド6のメンテナンス終了時から経過した時間Tを、制御部40が有するメモリから読み込む。そして、取得した時間Tが予め設定された時間値T1より大きいか否かを判断し(S42)、大きいと判断した場合(S42:YES)にはメンテナンスユニット31へ指示信号を出力し、記録ヘッド6のノズル面6aのメンテナンス動作を実行させる(S43)。このメンテナンス動作とは、上述したようにノズル孔を通じて各色を選択的に吸引し、又は、ブレードによってノズル面6aの汚れを払拭するなどである。
【0045】
制御部40は、メンテナンス動作を実行させた後、メモリ内に記録されていた経過時間Tをリセットしてゼロとし、同時にメンテナンス後からの記録枚数に関してメモリ内に記録されていた値Nをゼロとする(S44)。そして、再び経過時間Tの計測を開始し(S45)、メンテナンス処理に係るサブルーチンを終了する。なお、ステップ42にて経過時間Tが予め設定された時間値T1以下であると判断した場合も(S42:NO)、メンテナンス処理に係るサブルーチンを終了する。
【0046】
メンテナンス処理に係るサブルーチンを終えると、メモリ内に記録された記録枚数の値Nを取得し(S5)、続いて実行すべき記録モードを判別する(S6)。ここで、本実施の形態に係る記録モードとしては、既に説明したような写真画質での記録モードである精細モードと、印字する場合の記録モードである通常モードとが設定されている。
【0047】
ステップ6にて実行すべき記録モードが精細モードであると判断した場合は、ステップ5で取得した記録枚数Nが所定の値N1より大きいか否かを判断する(S7)。その結果、N1以下であると判断した場合は(S7:NO)、ギャップdを精細モードでの記録用に設定された通り距離d1とし(S8)、N1より大きいと判断した場合は(S7:YES)、モータ17bを回転させてギャップ調整機構17を駆動し、ギャップdを距離d1より大きい距離d1+α(d1+α<d2)とし(S9)、記録動作を実行する(S13)。ここで、記録動作とは、シャーシ4に沿った記録ヘッド6の一往復動作である一回分の走査をいう。
【0048】
一方、ステップ6にて実行すべき記録モードが通常モードであると判断した場合は、ステップ5で取得した記録枚数Nが所定の値N1より大きいか否かを判断する(S10)。その結果、N1以下であると判断した場合は(S10:NO)、ギャップdを通常モードでの記録用に設定された通り距離d3(d3>d1)とし(S11)、N1より大きいと判断した場合は(S10:YES)、モータ17bを回転させてギャップ調整機構17を駆動し、ギャップdを距離d3より大きい距離d3+α(d3+α≦d2)とし(S12)、記録動作を実行する(S13)。
【0049】
ステップ13にて一走査分の記録動作を完了すると、用紙Pの1枚分の記録が完了したか否かを判断する(S14)。この判断は、制御部40が記録ヘッド6へ出力した記録内容に関する信号に基づいて行なうことが可能であり、その他、センサ17aの検出信号に基づき判断することも可能である。
【0050】
ステップ14での判断の結果、用紙Pの1枚分の記録が完了したと判断した場合は(S14:YES)メモリに記録している記録枚数Nの値に1を加算し(S15)、未完了であると判断した場合は(S14:NO)メモリに記録している記録枚数Nはそのままに、ステップ13で受けた記録指令の内容が全て完了したか否かの判断を行なう(S16)。そして、完了したと判断した場合は(S16:YES)再びステップ3以降の動作を実行し、未完了だと判断した場合は(S16:NO)再びステップ4以降の動作を実行する。なお、上記ステップ15の動作時、制御部40は枚数計測部41として機能する。
【0051】
このようなインクジェットプリンタ1の動作によれば、あるルーチンにて記録モード用のギャップ(例えば、d1、d3:第1ギャップ)が設定されている場合(ステップ8,11)であっても、以降のルーチンにて記録枚数Nが所定値N1より大きいと判断されれば(S7,10:YES)、この第1ギャップより大きいギャップ(例えば、d1+α,d3+α:第2ギャップ)に変更される(S9,12)。その結果、ギャップ変更後は紙粉が記録ヘッド6のノズル面6aに付着するのを抑制することができる。
【0052】
なお、上述した図6に示すフローチャートでは、通常モードにおいて記録枚数Nが所定の値N1より大きい場合もギャップdをd3+αに調整することとしているが、例えば通常モード用として設定されているギャップd=d3が比較的大きければそのギャップdを変更する必要はない。従って、この場合にはステップ10,12が不要であり、ステップ6にて通常モードと判断された場合にはステップ11を経て記録動作(S13)を実行すればよい。
【0053】
また、上述した説明では記録枚数Nの値に基づいてギャップdを調整する場合について説明したが、これに限られない。例えば、前回のメンテナンス処理後からの記録ヘッド6の動作時間Tに基づいてギャップdを調整するようにしてもよい。この場合、インクジェットプリンタ1の機能のうち、主として記録ヘッド6を上下動させる部分の構成は、図8(a)に示すようになり、図5に示した枚数計測部41に換えて時間計測部42を備えればよい。また、制御部40の動作としては、図6に示したフローチャートにおいて、ステップ5では記録枚数Nに替えて時間Tを読み込むようにし、ステップ7,10では記録枚数Nに替えて時間Tが所定の値T2(T2<T1)より大きいか否かを判断するようにすればよく、また、ステップ15の動作は不要となる。
【0054】
更に、前回のメンテナンス処理後からの記録ヘッド6による走査数に基づいてギャップdを調整するようにしてもよい。この場合、インクジェットプリンタ1の機能のうち、主として記録ヘッド6を上下動させる部分の構成は図8(b)に示すようになり、図5に示した枚数計測部41に換えて走査数計測部43を備えればよい。また、制御部40の動作としては、図6に示したフローチャートにおいて、「記録枚数」と記載された部分を「走査数」に換えた動作となる。
【0055】
なお、制御部40は、上述した枚数計測部41、時間計測部42、および走査数計測部43のうち何れか複数を実行可能に構成されていてもよい。
【0056】
また、プラテン7を記録ヘッド6に対して近接及び離反するよう移動可能に構成することにより、プラテン7の移動によってギャップ調整を行うようにしてもよいし、プラテン7及び記録ヘッド6の両者を互いに近接及び離反するよう移動可能に構成し、両者の移動によってギャップ調整を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、よりシンプルな構成によって紙粉のノズル孔への付着を防止することができ、インク吐出性能の低下および作業効率の低下を招来しにくい記録装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す平面図であり、全体を囲うハウジング等、一部分の構成は省略して示している。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタのII-II矢視線での断面図であり、主として記録部の構成を示している。
【図3】プラテンカバーが取り付けられた状態のプラテンの斜視図である。
【図4】図3に示すプラテンのIV-IV矢視線での断面図である。
【図5】インクジェットプリンタの機能のうち、制御部が枚数計測部として機能するときの主として記録ヘッドを上下動させる部分の機能を示すブロック図である。
【図6】インクジェットプリンタで行なわれる記録ヘッドのノズル面とプラテンとのギャップの調整動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6に示す動作の一部を構成するメンテナンス処理に係るサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】インクジェットプリンタの機能のうち、主として記録ヘッドを上下動させる部分の機能を示すブロック図であり、(a)は制御部が時間計測部として機能するときの構成、(b)は制御部が走査数計測部として機能するときの構成を夫々示している。
【符号の説明】
【0059】
1 インクジェットプリンタヘッド
4 シャーシ
5 キャリッジ
6 記録ヘッド
7 プラテン
11 検出レバー
11a センサ
17 ギャップ調整機構
17a 偏芯カム
17b モータ
20 プラテン本体
22 上流側リブ
22a 当接部
22b 空隙部
23 凹状板部
23a 内底面
24 棚板部
24a 上面
25 粘着層
30 廃インク受部
31 メンテナンスユニット
40 制御部
41 枚数計測部
42 時間計測部
43 走査数計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズル孔が開口されたノズル面を被記録体に対向させ、所定方向へ往復移動しつつ前記ノズル孔からインクを吐出して前記被記録体の表面に画像を記録する記録ヘッドと、該記録ヘッドに対向配置されて前記被記録体を裏面側から支持するプラテンと、前記記録ヘッドにおいて前記ノズル面を所定の周期で清掃するクリーナと、前記記録ヘッドの前記ノズル面及び前記プラテンのうち一方又は両方を移動させることにより両者間のギャップを調整するギャップ調整部と、該ギャップ調整部の動作を制御する制御部とを備え、
該制御部は、前記被記録体への記録量に係る値を計測する計測部を備え、前記ノズル面及び前記プラテン間が所定の第1ギャップに設定されている状態で、前記クリーナによる前記ノズル面の清掃後、前記記録量に係る値が所定値を越えた所定タイミングが到来した場合に、前記ノズル面及び前記プラテン間を前記第1ギャップよりも大きな第2ギャップに変更するよう前記ギャップ調整部を動作させるべく構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記計測部は、前記被記録体の記録枚数を計測するよう構成されており、前記タイミングは、前記クリーナによる前記ノズル面の清掃後からの前記計測部による計測枚数が所定値に達したときであることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記計測部は、前記被記録体への記録時間を計測するよう構成されており、前記タイミングは、前記クリーナによる前記ノズル面の清掃後からの前記計測部による計測時間が所定値に達したときであることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ノズル面及び前記プラテン間が前記第2ギャップに設定されている状態で、前記クリーナによる前記ノズル面の清掃が行われると、前記ノズル面及び前記プラテン間を前記第1ギャップに変更するよう前記ギャップ調整部を動作させるべく構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−87400(P2008−87400A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272807(P2006−272807)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】