説明

記録装置

【課題】記録媒体の端部の位置を正確に検出して搬送状態の異常の判定精度を向上させる。
【解決手段】記録ヘッドを搭載し主走査方向に走査するキャリッジ101と、前記キャリッジに設けられ、副走査方向において記録素子の領域の範囲内に配置される反射型の第1光学センサ26、及び前記副走査方向において前記記録素子の領域よりも下流側に配置される反射型の第2光学センサ27と、画像が形成されている記録媒体の反射率よりも低い反射率を有し、前記第1光学センサに対応する領域に設けられるプラテン107と、未記録状態の記録媒体の反射率よりも高い反射率を有し、前記第2光学センサに対応する領域で且つ前記主走査方向に沿って少なくとも前記記録媒体よりも外側の所定範囲の領域に設けられる反射部材70と、前記第1光学センサ及び前記第2光学センサの少なくとも一方の検出信号に基づいて前記記録媒体の搬送状態の異常を判定する判定部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出して記録媒体上にドットを形成し記録を行なうインクジェット式の記録装置(以下、記録装置と呼ぶ)が知られている。このような記録装置(例えば、シリアル方式)においては、記録媒体(この場合、用紙)の搬送方向に交差(例えば、直交)する方向に往復移動可能な記録ヘッドが搭載されたキャリッジが設けられる。記録装置においては、プラテン上に用紙を搬送しつつキャリッジを往復移動させ、記録ヘッドからインク滴を吐出することにより記録を行なう。
【0003】
ここで、用紙を搬送するときに、搬送の異常(例えば、用紙の浮き上がり等)があると、用紙上に正確に記録を行なうことができない。特に、用紙の特性や周囲環境によっては、用紙の端部に反り(カール)が生じる。
【0004】
カールの状態によっては、走査しているキャリッジに用紙の端部が引っ掛かり「端部折れ」が発生し、紙ジャム状態となって記録ヘッドの擦れが発生する場合がある。キャリッジに大きな負荷がかかるような紙ジャム状態であれば、キャリッジの負荷変動検出によってそれを検出し、即座に記録動作を停止させることができる。そのため、このような場合には、記録ヘッドにダメージを蓄積させることを防ぐことはできる。
【0005】
しかし、記録ヘッドに擦りダメージを蓄積させる状態であっても、キャリッジの負荷増加が微小な場合も存在する。この場合、正常な記録動作時における負荷変動と区別がつかず、記録ヘッドの擦れを検出できない。そして、記録ヘッドの擦れによるダメージの蓄積が繰り返されてしまうと、正しく記録を行なうことができないだけでなく、記録ヘッドの破壊にまで至ってしまう。
【0006】
上述した「端部折れ」による記録ヘッドの擦れを防止するには、記録中の用紙の端部位置を検出し、その位置の変化を監視することが有効である。しかし、使用するセンサの特性によっては、用紙に記録された色によってセンサの出力が変化してしまう場合があり、誤検出が懸念される。
【0007】
ここで、センサを用いて、記録動作中の端部位置を検出する従来の手法として、1スキャン目で用紙の両端部を検出し、2スキャン以降では、片側の端部位置のみを検出し、もう一方の端部は演算により算出する技術が知られている(特許文献1参照)。また、記録ヘッドよりも用紙の搬送方向の上流側にセンサを設けることで、記録色の影響を受けずに、用紙の端部を検出する技術も知られている(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−090316号公報
【特許文献2】特開2005−212101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1の技術では、片側の端部位置のみを検出するため、逆側の端部位置に変化があるような搬送状態の異常時には、その異常を検出できない。
【0010】
また、上述した特許文献2の技術では、センサが記録ヘッドよりも搬送方向の上流側で検出を行なっている。そのため、記録ヘッドの擦れが発生するような「端部折れ」により、キャリッジに用紙が引っ掛かっている場合には、異常状態を検出できない可能性が高い。これは、記録ヘッドよりも上流側では端部位置がほとんど変化しないためである。また、記録ヘッドよりも上流側では、用紙の搬送ローラの位置と近いため、ローラ圧によって両端部が抑えられているため、更に端部が変化し難い状態である。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも、記録媒体の端部の位置を正確に検出できるようにして、記録媒体の搬送状態の異常の判定精度を向上させるようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一態様による記録装置は、記録素子を有する記録ヘッドを搭載し、記録媒体の搬送方向を示す副走査方向と交差する主走査方向に走査するキャリッジと、前記キャリッジに設けられた、前記副走査方向において前記記録素子の領域の範囲内に配置される反射型の第1光学センサ、及び前記副走査方向において前記記録素子の領域よりも下流側に配置される反射型の第2光学センサと、画像が形成されている記録媒体の反射率よりも低い反射率を有し、前記キャリッジの走査範囲に渡って前記第1光学センサに対応する領域に設けられるプラテンと、未記録状態の記録媒体の反射率よりも高い反射率を有し、前記第2光学センサに対応する領域で且つ前記主走査方向に沿って少なくとも前記記録媒体よりも外側の所定範囲の領域に設けられる反射部材と、前記第1光学センサ及び前記第2光学センサの少なくとも一方の検出信号に基づいて、前記記録媒体の搬送状態の異常を判定する判定部とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも、記録媒体の端部の位置を正確に検出できるため、記録媒体の搬送状態の異常の判定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる記録装置の斜視図。
【図2】図1に示す光学センサ102の構成の一例を示す図。
【図3】第1の検出部26による反射光の検出処理の概要を示す図。
【図4】記録装置10における制御系の構成の一例を示す図。
【図5】光学センサ102と、記録ヘッド103と、プラテン107との位置関係の一例を示す図。
【図6】記録媒体Pの端部を検出する際の動作を説明するための図。
【図7】第1の検出部26及び第2の検出部27からの検出信号の一例を示す図。
【図8】第1の検出部26及び第2の検出部27からの検出信号の一例を示す図。
【図9】第1の検出部26及び第2の検出部27からの検出信号の一例を示す図。
【図10】図1に示す記録装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図11】第1の検出部26及び第2の検出部27からの検出信号の一例を示す図。
【図12】第1の検出部26及び第2の検出部27からの検出信号の一例を示す図。
【図13】図1に示す記録装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図14】第2の検出部27からの検出信号の一例を示す図。
【図15】高反射部材70の構成の一例を示す図。
【図16】ふちあり記録時に記録媒体の搬送異常を判定する際の処理の概要を説明する図。
【図17】比較対象となる検出信号の概要を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明する。なお、記録装置は、インクジェット方式に限らず、別の方式の記録素子を持ったものであっても良い。記録装置は、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであっても良いし、また、例えば、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであっても良い。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0016】
なお、以下の説明において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。更に人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する、又は媒体の加工を行なう場合も表す。
【0017】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0018】
更に、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表す。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施の形態に係わる記録装置の斜視図である。
【0020】
インクジェット記録装置(以下、記録装置と呼ぶ)10は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと呼ぶ)103をキャリッジ101に搭載する。キャリッジ101は、搬送ベルト105によって、ガイドシャフト108に沿って主走査方向(矢印X方向:記録媒体の搬送方向と交差する方向)に往復移動する。
【0021】
キャリッジ101の往復運動の範囲外(記録領域外)には、記録ヘッド103の吐出不良を回復する回復装置等が配設されている。回復装置が設けられる位置は、いわゆるホームポジション(HP)などと呼ばれ、記録動作が行なわれていない間、記録ヘッド103はこの位置で静止する。また、キャリッジ101の走査方向に沿ったその他端は、バックポジション(BP)などと呼ばれる。
【0022】
記録媒体は、搬送ローラ(不図示)によって副走査方向(矢印Y方向)に沿ってプラテン107上を搬送される。プラテン107は、記録ヘッド103からのインク吐出時に記録媒体を平面保持する役割を果たす。
【0023】
記録装置10は、搬送ローラを用いて、記録媒体を記録位置まで搬送する。そして、その記録位置において、記録ヘッド103を走査させながら、記録媒体に向けてインクを吐出させて記録を行なう。記録ヘッド103による1回の記録走査が終了すると、搬送ローラが回転し、記録媒体は、記録ヘッド103の記録幅に対応した量だけ副走査方向(矢印Y方向)に搬送される。このような記録走査と搬送動作とを繰り返すことにより、記録媒体に画像が記録される。
【0024】
また、キャリッジ101には、記録ヘッド103の他、光学センサ102が搭載されている。光学センサ102には、発光素子や受光素子等が設けられる測定面が、記録媒体と対向するように設けられており、また、記録ヘッド103には、インクジェット方式の記録素子であるノズルが複数設けられる吐出口面が、記録媒体と対向するように設けられている。この測定面は、インクの吐出方向(矢印Z方向)に沿って、吐出口面と同位置又は、それよりも記録媒体からの距離が遠くなるように設けられる。
【0025】
次に、図2(a)〜図2(c)を用いて、図1に示す光学センサ102の構成の一例について説明する。図2(a)は、光学センサ102及び記録ヘッド103を搭載したキャリッジ101をZ方向から見た概要図であり、光学センサ102、記録ヘッド103及びキャリッジ101の位置関係を示す図である。また、図2(b)は、光学センサ102をZ方向から見た概要図(平面図)であり、図2(c)は、光学センサ102をX方向から見た概要図(側面図)である。
【0026】
ここで、光学センサ102には、光を照射する発光素子と当該光に基づく反射光を受光する受光素子とのペアからなる反射型の第1光学センサ(以下、第1の検出部と呼ぶ)26と反射型の第2光学センサ(以下、第2の検出部と呼ぶ)27とが設けられる。第1の検出部26及び第2の検出部27は、記録ヘッド103の吐出口面に平行する面上(測定面上)に設けられる。
【0027】
図2(a)に示すように、第1の検出部26は、記録媒体の搬送方向(Y方向)に沿って、記録ヘッド103のノズル103aのノズルの配置される領域の範囲内(好適には、中流以降)に設けられる。また、第2の検出部27は、Y方向に沿って、記録ヘッド103のノズル103aの下流側に設けられる。より詳細には、第2の検出部27は、記録媒体の搬送方向に沿った最下流に配置されたノズルよりも更に下流側に配置されている。また、第1の検出部26と第2の検出部27とのY方向に沿った配置位置の距離は、キャリッジ101の1走査最小搬送量のN倍(整数)となるようにその位置が調整される。
【0028】
図2(b)に示すように、光学センサ102には、発光素子として、LED21と及び3色LED25が設けられるとともに、受光素子として、PSD(Position Sensitive Detector)22及びフォトダイオード23が設けられる。
【0029】
LED(Light Emitting Diode)21及びPSD22は、第1の検出部26として機能し、光学センサ−記録媒体間の距離(すなわち、高さ)を検出する。LED21及びPSD22は、Y方向に沿って同列に配置されている。本実施形態においては、LED21は、赤色の光を照射する。このLED21からの照射光が、記録媒体Pから反射した反射光がPSD22で受光されることにより、高さ(光学センサ102から記録媒体Pまでの距離)が検出される。
【0030】
3色LED25及びフォトダイオード23は、第2の検出部27として機能し、濃度を検出する。3色LED25及びフォトダイオード23は、Y方向に沿って同列に配置されている。本実施形態においては、3色LED25は、赤、青、緑の3色が設けられており、1色ずつ点灯可能に構成される。濃度検出に際しては、記録媒体P上に記録された濃度パッチの色に応じて点灯させるLEDの色が決められる。
【0031】
ここで、LED21、PSD22、3色LED25及びフォトダイオード23は、図2(c)に示すように、基板24上に実装されている。LED21は、記録媒体Pの表面(測定領域)に対して法線(90度)の照射角を持つように基板24に取り付けられている。3色LED25は、記録媒体Pの表面(測定領域)に対して45度の照射角を持つように取り付けられている。
【0032】
LED21及び3色LED25と記録媒体Pとの間には、開口部(不図示)が設けられており、LED21及び3色LED25から発せられた光は、当該開口部によって照射光の幅(光径)が調整される。これにより、基準位置にある測定領域(Z方向に沿って装置設計上の位置にある記録媒体の表面)に直径約3〜4mmの照射光が形成されるように最適化されている。
【0033】
記録媒体Pと光学センサ102とが装置設計上の距離(基準値)にある場合、PSD22においては、LED21から記録媒体Pに照射された光を、45度の角度で受光する。また、フォトダイオード23においては、3色LED25から記録媒体Pに照射された光を、90度の角度で受光する。
【0034】
次に、図3を用いて、第1の検出部26による反射光の検出処理の概要について説明する。すなわち、LED21及びPSD22において、光学センサ102と記録媒体Pとの距離を検出する際の概要について説明する。
【0035】
PSD22は、LED21から照射された光が記録媒体P上を反射した反射光L2を受光する。ここで、反射光L2の高強度分布(高強度プロファイル)において、最大値(ピーク)を示す位置を重心位置とする。PSD22は、この重心位置によって2つの電流値I、Iを出力する。
【0036】
重心位置は、PSD22と記録媒体Pとの距離に応じてその位置が移動する。そのため、重心位置を検出することによって、光学センサ102(PSD22)と記録媒体Pの表面との間の距離を検出できる。
【0037】
次に、図4を用いて、記録装置10における制御系の構成の一例について説明する。ここでは、光学センサ102からの出力信号(検出信号)を処理する回路構成を重点的に説明する。
【0038】
CRエンコーダ62は、キャリッジ101の走査方向(X方向)に沿った位置情報を検出する。CPU61は、記録装置10における動作を統括制御する。CPU61においては、例えば、LED21のON/OFFを制御するための制御信号の出力や、フォトダイオード23の受光量に応じて得られる信号の演算などを行なう。なお、詳細については後述するが、記録装置10においては、CPU61の制御により、記録媒体の端部を検出する機能(端部検出部)、記録媒体の搬送状態の異常を判定する機能(異常判定部)等が実現される。
【0039】
光学センサ102には、上述したPSD22、フォトダイオード23、LED21、3色LED25の他、駆動回路31や増幅回路32が設けられる。
【0040】
駆動回路31は、CPU61から送られてくる制御信号(ON信号)に基づいて、LED21へ定電流を供給し、LED21を発光させる。増幅回路32は、PSD22及びフォトダイオード23から電流値として得られる出力信号を電圧値に変換するとともに、当該電圧値をA/D変換において最適なレベルまで増幅する。
【0041】
ここで、PSD22は、出力信号を2つ出力し、フォトダイオード23は、出力信号を1つ出力する。増幅回路32においては、これらの出力信号をそれぞれ増幅し、ASIC40に向けて出力する。
【0042】
ASIC40には、A/D変換回路41と、メモリ制御回路42とが設けられる。A/D変換回路41においては、上述した増幅回路32からの信号をアナログ/デジタル変換する。メモリ制御回路42は、変換後のデジタル信号をメモリ50(データ記憶領域51)に格納する。
【0043】
メモリ50には、各種データ(例えば、変換後のデジタル信号)を格納するデータ記憶領域51が設けられる他、高さ用GAPテーブル52が格納される。高さ用GAPテーブル52は、第1の検出部26による検出結果と、光学センサ−記録媒体間の距離の想定値とが対応付けて保持されている。CPU61は、第1の検出部26による検出結果に基づいて、当該テーブル52から情報を取得することにより、光学センサ−記録媒体間の距離を求める。
【0044】
次に、図5を用いて、光学センサ102と、記録ヘッド103と、プラテン107との位置関係の一例について説明する。
【0045】
キャリッジ101には、上述した通り、記録ヘッド103の他、光学センサ102が搭載されている。光学センサ102には、第1の検出部26と、第2の検出部27とが設けられている。第2の検出部27は、第1の検出部26よりも、記録媒体の搬送方向(Y方向)に沿って下流側(最下流に配置されたノズルよりも更に下流側)に配置されている。高反射部材70は、プラテン107に組み込まれており、Y方向に沿って第2の検出部27と同等の位置に配置されている。
【0046】
プラテン107は、キャリッジ101の走査範囲全域に渡って設けられる。プラテン107は、Y方向に沿って第1の検出部26に対応する位置に設けられる。また、高反射部材70も、プラテン107と同様に、キャリッジ101の走査範囲全域に渡って設けられる。但し、高反射部材70は、Y方向に沿って第2の検出部27に対応する位置に設けられる。
【0047】
ここで、本実施形態においては、記録媒体Pの反射率は、プラテン107よりも著しく高く。また、高反射部材70の反射率は、記録媒体Pよりも著しく高いものとして説明する。反射率が著しく高いというのは、記録媒体Pとプラテン107との反射率について例を挙げて説明すると、記録媒体Pからの反射光に基づく検出信号と、プラテン107からの反射光に基づく検出信号との識別が可能な程度の反射率の差があれば良い。具体例としては、プラテン107の反射率を、記録画像が形成された状態の記録媒体の反射率よりも低くし、高反射部材70の反射率を、未記録状態の記録媒体の反射率よりも高くすれば良い。
【0048】
続いて、第1の検出部26及び第2の検出部27を用いて、記録媒体Pの端部を検出する際の動作について説明する。
【0049】
まず、図6(a)〜図6(c)、図7(a)及び図7(b)を用いて、第1の検出部26からの検出信号に基づいて、記録媒体Pの端部を検出する際の動作について説明する。なお、図6(a)〜図6(c)には、光学センサ102と、記録ヘッド103と、プラテン107との位置関係が3パターン示されている。また、図7(a)及び図7(b)には、第1の検出部26及び第2の検出部27から得られる検出信号の一例が示されている。
【0050】
図6(a)は、キャリッジ101の主走査方向への走査とともに、第1の検出部26が記録媒体P上を通過している状態を示している(状態A)。状態A時においては、第1の検出部26からの検出信号(出力信号)は、記録媒体Pの反射率に依存する。
【0051】
図6(b)は、第1の検出部26が記録媒体Pの端部(端部位置)に到達している状態を示している(状態B)。この場合、キャリッジ101がHP側からBP側(記録媒体P側からプラテン107側)に向けて走査されているため、第1の検出部26からの検出信号は、状態A時の検出信号から状態C時(後述する図6(C)時)の検出信号に徐々に変移する。
【0052】
図6(c)は、キャリッジ101の主走査方向への走査とともに、第1の検出部26がプラテン上を通過している状態を示している(状態C)。状態C時においては、第1の検出部26からの検出信号は、プラテン107の反射率に依存する。
【0053】
上述した通り、記録媒体Pの反射率は、プラテン107よりも著しく高い。そのため、第1の検出部26からの検出信号の値(検出値)は、LED21からの照射光が記録媒体Pの端部に差し掛かった時点から徐々に下がり始める。そして、当該LED21からの照射光が完全に記録媒体Pの端部を通過するまで、第1の検出部26からの検出信号の値は下がり続ける。
【0054】
図7(a)は、上述した状態A、状態B及び状態C時における第1の検出部26の検出信号の値の変化を示している。
【0055】
上述した通り、第1の検出部26の検出信号は、状態A時に最も高い値となり、状態B時には、キャリッジ101のHP側からBP側への移動とともに、徐々にその値が降下し、状態C時には、最も低い値となる。
【0056】
ここで、状態A時における第1の検出部26の検出信号と、状態C時における第1の検出部26の検出信号とにおける値の中間点の値を端部検出用閾値とする。端部検出用閾値は、記録媒体の端部を検出するための判定基準として用いられる。本実施形態においては、第1の検出部26の検出信号の値が当該閾値に到達した場合、その時点のキャリッジ101の走査方向に沿った位置を記録媒体Pの端部であると判定する。なお、キャリッジ101の走査方向に沿った位置は、上述したCRエンコーダ62により検出される位置情報により特定できる。
【0057】
次に、第2の検出部27からの検出信号に基づいて、記録媒体Pの端部を検出する際の動作について説明する。
【0058】
図6(a)は、キャリッジ101の主走査方向への走査とともに、第2の検出部27が記録媒体P上を通過している状態を示している(状態D)。状態D時においては、第2の検出部27からの検出信号(出力信号)は、記録媒体Pの反射率に依存する。
【0059】
図6(b)は、第2の検出部27が記録媒体Pの端部(端部位置)に到達している状態を示している(状態E)。この場合、キャリッジ101がHP側からBP側(記録媒体P側からプラテン107側)に向けて走査されているため、第2の検出部27からの検出信号は、状態D時の検出信号から状態F時(後述する図6(C)時)の検出信号に徐々に変移する。
【0060】
図6(c)は、キャリッジ101の主走査方向への走査とともに、第2の検出部27がプラテン107上に設けられた高反射部材70を通過している状態を示している(状態F)。状態F時においては、第2の検出部27からの検出信号は、高反射部材70の反射率に依存する。
【0061】
上述した通り、高反射部材70の反射率は、記録媒体Pよりも著しく高い。そのため、第2の検出部27からの検出信号の値(検出値)は、3色LED25からの照射光が記録媒体Pの端部に差し掛かった時点から徐々に上がり始める。そして、当該LED25からの照射光が完全に記録媒体Pの端部を通過するまで、第2の検出部27からの検出信号の値は上がり続ける。
【0062】
図7(b)は、状態D、状態E及び状態F時における第2の検出部27の検出信号の値の変化を示している。
【0063】
上述した通り、第2の検出部27の検出信号は、状態D時に最も低い値となり、状態E時には、キャリッジ101のHP側からBP側への移動とともに、徐々にその値が上昇し、状態F時には、最も高い値となる。
【0064】
ここで、状態D時における第2の検出部27の検出信号と、状態F時における第2の検出部27の検出信号とにおける値の中間点の値を端部検出用閾値とする。端部検出用閾値は、記録媒体の端部を検出するための判定基準として用いられる。本実施形態においては、第2の検出部27の検出信号の値が当該閾値に到達した場合、その時点のキャリッジ101の走査方向に沿った位置を記録媒体Pの端部であると判定する。
【0065】
ここで、図8(a)及び図8(b)を用いて、記録媒体P上に形成された記録画像の濃度が比較的低い(記録前の白色に近い)場合の端部検出処理について説明する。
【0066】
図8(a)は、記録画像の濃度が比較的低い場合に、第1の検出部26から出力される検出信号の値を示している。より具体的には、第1の検出部26が状態A(図6(a))から状態C(図6(c))に示す位置に移動する際に得られる検出信号の値を示している。
【0067】
第1の検出部26が記録媒体P上を通過している状態を示す状態A時には、第1の検出部26からの検出信号は、未記録状態時と近い値が得られる。すなわち、図7(a)の状態A時と同等の値が得られることになる。
【0068】
また、第1の検出部26が記録媒体Pの端部位置に到達し、更にプラテン107上を通過している状態時においても(状態B、状態C)、図7(a)の状態B及び状態C時と同等の値が得られている。
【0069】
そのため、記録媒体P上に記録された画像の濃度が比較的低い場合、第1の検出部26においては、当該濃度の影響をほぼ受けずに、記録媒体Pの端部を検出できる。
【0070】
続いて、図8(b)は、記録画像の濃度が比較的低い場合に、第2の検出部27から出力される検出信号の値を示している。より具体的には、第2の検出部27が状態D(図6(a))から状態F(図6(c))に示す位置に移動する際に得られる検出信号の値を示している。
【0071】
この場合、第2の検出部27が記録媒体P上を通過している状態を示す状態D時には、第2の検出部27からの検出信号の値としては、比較的高い値が得られる。これは、記録媒体P上に記録された画像の濃度が比較的低いため(未記録状態時と記録媒体Pの状態が近いため)、記録媒体上からの反射光の強度が比較的高いためである。
【0072】
また、第2の検出部27が記録媒体Pの端部位置に到達し、更に高反射部材70上を通過している状態時においては(状態E、状態F)、更に反射光の強度が高くなるため、第2の検出部27からの検出信号の値は更に高くなる。
【0073】
そのため、第2の検出部27からの検出信号の値は、状態D〜F全てに渡って、端部検出用閾値よりも高くなり、記録媒体Pの端部を検出できない。この場合、上記図8(a)で説明した通り、第1の検出部26においては当該端部が検出されている。
【0074】
そこで、このような検出信号が得られた場合には、第2の検出部27の検出結果を使用せずに、第1の検出部26の検出結果に基づいて記録媒体Pの端部を検出する。すなわち、記録画像の濃度が比較的低い場合には、Y方向に沿ってノズルの中流付近に設けられる第1の検出部26を用いて記録媒体Pの端部の検出を行なう。
【0075】
次に、図9(a)及び図9(b)を用いて、記録媒体P上に形成された記録画像の濃度が比較的高い(プラテン107に近い)場合の端部検出処理について説明する。
【0076】
図9(a)は、記録画像の濃度が比較的高い場合に、第1の検出部26から出力される検出信号の値を示している。より具体的には、第1の検出部26が状態A(図6(a))から状態C(図6(c))に示す位置に移動する際に得られる検出信号の値を示している。
【0077】
第1の検出部26が記録媒体P上を通過している状態を示す状態A時には、第1の検出部26からの検出信号は、第1の検出部26がプラテン107上を通過しているときと近い値を示す。
【0078】
また、第1の検出部26が記録媒体Pの端部に到達し、更にプラテン107上を通過している状態時においても(状態B、状態C)、反射光の強度が弱くなり、第1の検出部26からの検出信号の値は更に低くなる。
【0079】
そのため、第1の検出部26からの検出信号の値は、状態A〜C全てに渡って、端部検出用閾値よりも低くなり、記録媒体Pの端部を判定できない。
【0080】
続いて、図9(b)は、記録画像の濃度が比較的高い場合に、第2の検出部27から出力される検出信号の値を示している。より具体的には、第2の検出部27が状態D(図6(a))から状態F(図6(c))に示す位置に移動する際に得られる検出信号の値を示している。
【0081】
この場合、第2の検出部27が記録媒体P上を通過している状態を示す状態D時には、第2の検出部27からの検出信号の値としては、比較的低い値が得られる。これは、記録媒体P上に記録された画像の濃度が比較的高いため、記録媒体上からの反射光の強度が比較的低いためである。
【0082】
また、第2の検出部27が記録媒体Pの端部に到達し、更に高反射部材70上を通過している状態時においては(状態E、状態F)、記録媒体上からの反射光の強度が徐々に上がっていき、ある一定値まで上がった段階で当該上昇が止まる。
【0083】
そのため、記録媒体P上に形成された記録画像の濃度が比較的高い場合、第2の検出部27においては、当該濃度の影響をほぼ受けずに、記録媒体Pの端部を判定できる。
【0084】
そこで、本実施形態においては、記録媒体P上に形成された記録画像の濃度が比較的高い場合には、第1の検出部26の検出結果を使用せずに、第2の検出部27の検出結果に基づいて記録媒体Pの端部位置を判定する。すなわち、記録画像の濃度が比較的高い場合には、Y方向に沿って最下流に配置されたノズルよりも更に下流側に設けられる第2の検出部27を用いて記録媒体Pの端部の検出を行なう。
【0085】
ここで、記録画像の濃度の特性は、上記例示に限られず、例えば、記録媒体P上に記録された画像の濃度が均一でなく、プラテン107の色に近い領域と記録媒体Pの未記録領域(記録前の白色)に近い領域とが混在する場合も考えられる。
【0086】
このような場合には、第1の検出部26及び第2の検出部27それぞれの検出信号に基づいて上記端部を判定すれば良い。より具体的には、第1の検出部26と第2の検出部27とのそれぞれの検出信号に基づいて判定された上記端部の位置を比較する。そして、キャリッジ101の走査方向に沿って、各走査の走査開始位置からより遠くにある端部を採用する。
【0087】
この処理について、更に詳細に説明すると、キャリッジ101がHP→BP方向に移動しているときは、検出された端部位置のうち、”よりBP側”の検出位置を端部として判定する。また、キャリッジ101がBP→HP方向に移動しているときは、検出された端部位置のうち、”よりHP”側の検出位置を端部位置として判定する。そして、採用された「端部位置」と記録媒体セット時の「端部位置」とを比較し、所定値以上の差があれば紙ジャムと判定する。
【0088】
次に、図10を用いて、図1に示す記録装置10の処理の流れの一例について説明する。
【0089】
この処理は、記録処理が指示されると開始する。すなわち、記録装置10において、キャリッジ101の走査が開始する(S101)。記録装置10は、CPU61において、第1の検出部26及び第2の検出部27それぞれからの検出信号を取得する(S102)。検出信号の取得は、当該キャリッジ101の走査中、所定時間間隔毎に行なわれる。
【0090】
ここで、第1の検出部26及び第2の検出部27それぞれから取得した検出信号の両方が端部検出用閾値に到達していれば(S103でYES)、記録装置10は、CPU61において、両検出信号により判定される記録媒体Pの端部の位置を比較する。そして、両検出信号に基づく端部位置のうち、キャリッジ101の走査方向に沿って、各走査の走査開始位置から遠い位置にある端部位置を示す検出信号の値を採用し、当該採用した検出信号に基づいて、記録媒体Pの端部位置を判定する。
【0091】
端部位置が特定されると、記録装置10は、CPU61において、当該特定された端部位置と、記録媒体セット時の端部位置とを比較し、当該端部位置がキャリッジ101の走査方向(X方向)に沿って所定値以上の差があるか否かを判定する(S107)。判定の結果、所定値以上の差がなければ(S108でNO)、記録装置10は、記録処理が終了したか否かを判定する。終了していれば(S111でYES)、この処理を終了する。終了していなければ(S111でNO)、記録装置10は、再度、S102の処理に戻る。
【0092】
S108の判定の結果、キャリッジ101の走査方向(X方向)に沿って、両端部の間の距離に所定値以上の差があれば(S108でYES)、記録装置10は、CPU61において、紙ジャムの警告をユーザに通知する(S109)。そして、記録動作を停止させた後(S110)、この処理を終了する。
【0093】
また、S103の判定の結果、第1の検出部26及び第2の検出部27それぞれから取得した検出信号の両方が端部検出用閾値に到達していなければ(S103でNO)、記録装置10は、S104の処理に進む。すなわち、CPU61において、いずれか一方の検出信号が端部検出用閾値に到達しているか否かを判定する。
【0094】
判定の結果、いずれの検出信号も端部検出用閾値に到達していなければ(S104でNO)、記録装置10は、記録処理が終了したか否かを判定し、終了していれば(S111でYES)、この処理を終了する。終了していなければ(S111でNO)、記録装置10は、再度、S102の処理に戻る。
【0095】
また、S104の判定の結果、いずれか一方の検出信号が端部検出用閾値に到達していれば(S104でYES)、記録装置10は、CPU61において、当該端部検出用閾値に到達した検出信号に基づいて記録媒体Pの端部位置を判定する(S106)。その後、上記同様に、S107以降の処理を行なう。
【0096】
以上説明したように本実施形態によれば、記録媒体の搬送方向に沿ってノズルの配置される領域の範囲内に設けられる第1の検出部と、記録媒体の搬送方向に沿ってノズルの配置される領域よりも下流側に設けられる第2の検出部とをキャリッジに搭載する。また、記録媒体の搬送方向に沿った第1の検出部と対応した位置に記録媒体よりも反射率の低いプラテンが配されるとともに、記録媒体の搬送方向に沿った第2の検出部と対応した位置に記録媒体よりも反射率の高い高反射部材が配される。
【0097】
このような構成により、記録画像の色や濃度に関係なく、記録媒体の端部を判定することができる。また、記録媒体の搬送方向に沿って記録ヘッドのノズルの中流以降に第1の検出部及び第2の検出部を設けているため、記録ヘッドの擦れを起こすような搬送状態の異常を正確に検出することができる。
【0098】
また更に、第1の検出部として光学センサ−記録媒体間の距離を検出するセンサを用いるとともに、第2の検出部27として濃度を検出するセンサを用いる。そのため、記録媒体の端部を判定するための専用の検出部を設ける必要がないため、コストも抑えることができる。
【0099】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。図11(a)は、第1の検出部26が状態A(図6(a))から状態C(図6(c))に示す位置に移動する際に得られる検出信号の値を示している。この場合、状態A時の第1の検出部26から検出信号の値と、端部検出用閾値とがほぼ同じ値となっている。
【0100】
また、図11(b)は、第2の検出部27が状態D(図6(a))から状態F(図6(c))に示す位置に移動する際に得られる検出信号の値を示している。この場合、状態D時の第2の検出部27からの検出信号の値と、端部検出用閾値とがほぼ同じ値となっている。
【0101】
図11(a)及び図11(b)に示すような検出信号の値が得られる場合、これら検出信号に基づいて記録媒体の端部を判定するのが困難となる。そのため、第1の検出部26及び第2の検出部27の検出信号それぞれに対して端部検出用閾値を設定する。
【0102】
ここで、第1の検出部26によって検出を行なう場合の端部検出用閾値として第1の閾値X1を設ける。第1の閾値X1は、記録媒体Pとプラテン107上とにおける第1の検出部26の検出信号に基づいて設定する。記録媒体Pの未記録領域(白色領域)上での第1の検出部26の検出信号をAとし、プラテン107上での第1の検出部26の検出信号をBとすると、第1の検出部26に対応する第1の閾値X1は、以下の式で求められる。
【0103】
X1=(A+B)/2
第2の検出部27によって検出を行なう場合の端部検出用閾値として第2の閾値を設ける。第2の閾値X2は、高反射部材70とプラテン107上とにおける第2の検出部27の検出信号に基づいて設定する。記録媒体Pの未記録領域(白色領域)での第2の検出部27の検出信号をA´とし、高反射部材70上での第2の検出部27の検出信号をB´とすると、第2の検出部27に対応する第2の閾値X2は、以下の式で求められる。
【0104】
X2=(A´+B´)/2
ここで、図12(a)及び図12(b)に示すように、第1の検出部26の状態A時と、第2の検出部27の状態D時とにおける検出信号がともに、第1の閾値X1と同程度であったとする。このような場合であっても、図12(b)に示すように、第2の検出部27の検出信号に対して第2の閾値X2を設定することによって、記録媒体Pの端部を判定することができる。
【0105】
以上説明したように実施形態2によれば、第1の検出部からの検出信号に対応する閾値と、第2の検出部からの検出信号に対応する閾値とを設ける。これにより、実施形態1で説明した構成よりも更に、記録媒体の端部を精度良く判定できる。
【0106】
(実施形態3)
次に、実施形態3について説明する。ここで、記録処理を重ねているうちに、高反射部材70に異物(浮遊ミスト、ゴミ等)が付着し、高反射部材70の反射率が意図したものと異なってしまう場合がある。実施形態3においては、このような状態に対処するための構成について説明する。
【0107】
ここで、図13を用いて、実施形態3に係わる記録装置10における処理の流れの一例について説明する。ここでは、第2の検出部27によって高反射部材70の状態を確認する際の処理について説明する。
【0108】
記録処理が行なわれている間、記録装置10は、CPU61において、記録枚数が所定数に達したか否かを判定する。判定の結果、記録枚数が所定数に達していれば(S201でYES)、記録装置10は、搬送ローラ等を用いて、記録媒体Pを所定の退避位置に戻す(S202)。すなわち、高反射部材70の状態検出を行なう際は、記録媒体Pの反射の影響を受けないようにする必要があるため、高反射部材70上に記録媒体Pが存在しない状態にする。
【0109】
記録媒体Pを所定の退避位置に戻すと、記録装置10は、キャリッジ101を走査させながら、CPU61において、第2の検出部27からの検出信号を順次取得する(S203)。すなわち、3色LED25による照射光が高反射部材70上で反射した反射光をフォトダイオード23において順次取得する。
【0110】
キャリッジ101の走査方向に沿って高反射部材70全域に渡った検出信号の取得が済むと(S204でYES)、記録装置10は、CPU61において、当該検出信号の値が、全て所定値の範囲内に収まっているか否かを判定する。すなわち、CPU61においては、当該検出信号の値に基づいて、高反射部材70の汚れ判定を行なう。
【0111】
具体的には、図14(a)に示すように、第2の検出部27からの検出信号の変動Aが、所定値αの範囲内にすべて収まっているか否かを判定する。なお、図14(a)には、第2の検出部27からの検出信号の変動分Aが正常な状態が示されている。一方、高反射部材70に異物などの付着がある場合には、図14(b)に示すように、第2の検出部27からの検出信号の変動Aが所定値αに収まらない。
【0112】
判定の結果、全て所定値の範囲内に収まっていれば(S205でYES)、高反射部材70に異物等の付着がない可能性が高いため、記録装置10は、記録動作を再開し(S207)、この処理を終了する。
【0113】
一方、全て所定値の範囲内に収まっていなければ(S205でNO)、高反射部材70に異物等が付着している可能性が高い。そのため、記録装置10は、CPU61において、ユーザに高反射部材70に汚れがある旨の警告を通知するとともに(S206)、記録動作を停止させる(S207)。
【0114】
以上説明したように実施形態3によれば、異物の付着等に起因した高反射部材の反射率の変化を検出できるため、異物の付着等によって、記録媒体の端部を判定する際の誤判定を防ぐことができる。
【0115】
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。実施形態4においては、上述した実施形態1と、高反射部材70の配置位置及び形状が異なる場合について説明する。
【0116】
図15を用いて、実施形態3に係わる、光学センサ102と、記録ヘッド103と、プラテン107との位置関係の一例について説明する。
【0117】
高反射部材70は、上述した通り、記録媒体の搬送方向(Y方向)に沿って、第2の検出部27と同等の位置にプラテン107の一部として配置される。すなわち、実施形態1においては、高反射部材70がキャリッジ101の走査方向(X方向)に沿って、キャリッジ101の移動範囲(走査範囲)全域に渡って配されていた。これに対して、実施形態4においては、キャリッジ101の走査方向に沿って、記録媒体の端部の位置(より詳細には、記録媒体の端部から、当該端部よりも外側の所定範囲内)に設けられる。
【0118】
以上説明したように実施形態4によれば、記録媒体の端部を判定する際の精度を低下させることなく、高反射部材の小型化を図れるため、コストをより抑制できる。
【0119】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0120】
例えば、ふちあり記録(記録媒体の端部に余白領域を設けて画像を記録する記録モード)の場合には、記録画像が記録媒体P内に収まってしまうため、光学センサ102が記録媒体Pの端部位置に到達しない可能性が高く、記録媒体Pの端部を判定できない。このような場合、記録媒体P上において、X方向に沿った両端部で記録が行なわれない領域、いわゆる”余白”を利用する。
【0121】
より詳細に説明すると、図16(a)に示すように、キャリッジ101の移動によって光学センサ102が余白領域81に到達したときに、第1の検出部26からの検出信号を確認する。このとき、搬送状態が正常であれば、第1の検出部26からの検出信号は記録媒体Pの未記録領域(白色領域)で測定した値に等しくなる。
【0122】
また、図16(b)に示すように、紙ジャム状態となって記録媒体の端部の位置が大きく変化している場合は、本来、余白領域となる余白想定位置91において、記録媒体Pが外れてしまい、プラテン107が見えるようになる。この場合、キャリッジ101の移動によって光学センサ102が余白想定位置91に到達したときの第1の検出部26からの検出信号に基づいて異常を判定する。
【0123】
より具体的には、記録媒体の搬送状態が正常であれば、余白想定位置91における第1の検出部26からの検出信号は、記録媒体の未記録領域(白色領域)で測定した値に等しくなる。これに対して、記録媒体の搬送状態に異常があれば、余白想定位置91における第1の検出部26からの検出信号は、プラテン107上で測定した値に等しくなる。
【0124】
従って、余白想定位置91における光学センサ102からの検出信号の値が端部検出用閾値に到達していなければ(すなわち、閾値を上回っていれば)、“正常”と判定する。また、到達していれば(すなわち、閾値以下であれば)、“紙ジャム”と判定する。なお、余白想定位置91は、CRエンコーダ62の検出結果に基づいて特定すれば良い。
【0125】
また、上述した実施形態においては、第1の検出部26として、光学センサ−記録媒体間の距離を検出するセンサを用いるとともに、第2の検出部27として、濃度を検出するセンサを用いる場合について説明したが、これに限られない。すなわち、記録媒体の端部検出用のセンサを別個設け、それを第1の検出部26及び第2の検出部27として用いても良い。
【0126】
また、上述した実施形態においては、第1の検出部26及び第2の検出部27の検出信号をそれぞれ取得し、これら検出信号の両方若しくは一方が端部検出用閾値に到達しているか否かを判定する構成(例えば、図10のS103〜S107)について説明した。この点について、第1の検出部26及び第2の検出部27において、どのタイミングで取得された信号同士を比較対象とするかの説明について補足する。
【0127】
ここで、比較対象となる信号は、図17(a)及び図17(b)に示すように、第1の検出部26による検出信号と第2の検出部27による検出信号とにおいて、記録媒体上の同じ位置から検出された信号とする。このような検出信号同士を比較することで、記録媒体上の記録画像の濃度の影響をほぼ受けずに、より精度良く記録媒体の端部を検出できる。但し、必ずしも、このタイミングで取得された信号同士を比較対象とする必要はなく、例えば、キャリッジ101の同一走査で取得された検出信号同士を比較するようにしても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録素子を有する記録ヘッドを搭載し、記録媒体の搬送方向を示す副走査方向と交差する主走査方向に走査するキャリッジと、
前記キャリッジに設けられた、前記副走査方向において前記記録素子の領域の範囲内に配置される反射型の第1光学センサ、及び前記副走査方向において前記記録素子の領域よりも下流側に配置される反射型の第2光学センサと、
画像が形成されている記録媒体の反射率よりも低い反射率を有し、前記キャリッジの走査範囲に渡って前記第1光学センサに対応する領域に設けられるプラテンと、
未記録状態の記録媒体の反射率よりも高い反射率を有し、前記第2光学センサに対応する領域で且つ前記主走査方向に沿って少なくとも前記記録媒体よりも外側の所定範囲の領域に設けられる反射部材と、
前記第1光学センサ及び前記第2光学センサの少なくとも一方の検出信号に基づいて、前記記録媒体の搬送状態の異常を判定する判定部と
を具備することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1光学センサ及び前記第2光学センサの少なくとも一方の検出信号の値が所定の閾値に到達したか否かに応じて前記キャリッジの走査方向に沿った前記記録媒体の端部の位置を検出する端部検出部
を更に具備し、
前記判定部は、
前記端部検出部により検出された前記記録媒体の端部の位置に基づいて、前記記録媒体の搬送状態に異常があるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の記録装置。
【請求項3】
前記端部検出部は、
前記第1光学センサ及び前記第2光学センサの検出信号の値の両方が前記所定の閾値に到達した場合、該検出信号それぞれに応じて求められた前記記録媒体の端部のうち、前記キャリッジの走査の開始位置から遠い位置にある端部を前記記録媒体の端部の位置として検出する
ことを特徴とする請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記所定の閾値は、
前記第1光学センサ及び前記第2光学センサの検出信号それぞれに対応して設けられる
ことを特徴とする請求項2又は3記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1光学センサは、
前記記録ヘッドと前記記録媒体との間の距離を検出するセンサであり、
前記第2光学センサは、
前記記録媒体に形成された画像の濃度を検出するセンサである
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記キャリッジの位置を検出するエンコーダ
を更に具備し、
前記判定部は、
記録媒体の端部に余白領域を設けて画像を記録するふちあり記録が行なわれる場合、前記エンコーダの検出結果により前記余白領域に対応する位置に前記第1光学センサがきたときの当該第1光学センサからの検出信号に基づいて前記記録媒体の搬送状態に異常があるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録媒体が前記プラテン上にない状態で前記キャリッジを走査させ、該走査中の前記第2光学センサの検出信号の値が所定の範囲内に収まっているか否かに基づいて、前記反射部材に汚れがあるか否かを判定する汚れ判定手段
を更に具備することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−75373(P2013−75373A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215380(P2011−215380)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】