説明

記録装置

【課題】廃液体の処理に要するユーザーの負担を軽減して廃液体を回収できると共に、フラッシング動作時の記録ヘッドの移動距離を短くして記録実行時間の短縮を図ることができる記録装置を提供すること。
【解決手段】被記録材Pに液体Cを吐出して記録する記録ヘッド15と、前記記録ヘッド15から吐出された液体Cのうち前記被記録材Pに付着しなかった廃液体Cを回収する廃液体回収装置51とを備え、前記廃液体回収装置51は、前記記録ヘッド15と対向する側に設けられ、前記被記録材Pに付着しなかった廃液体Cを受ける移動可能なシート状部材53を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材にインク等の液体を吐出して所望の記録を実行するインクジェットプリンター等の記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から単票紙やロール紙等の被記録材に記録ヘッドから液体(インク)を吐出して所望の記録を実行するインクジェットプリンターが数多く開発されている。このようなインクジェットプリンターの中には、下記の特許文献1に示すように、布地やメッシュターポリン等の開口部を有するメッシュ生地を被記録材として記録を実行し得るものが存在している。
【0003】
そして、前記メッシュ生地等を対象としたインクジェットプリンターでは、記録ヘッドから吐出された液体のうち記録が実行されなかった廃液体(廃インク)が大量に発生するため、該廃液体を回収する廃液体回収装置が設けられている。
下記の特許文献1には、緩やかな勾配を付けて記録ヘッドとの対向領域に配置された廃インクトレイを備えた廃液体回収装置が開示されている。この廃液体回収装置は、前記廃インクトレイに溜った廃液体をユーザーが適宜のタイミングで回収タンク等に移し変えるメンテナンス作業を必要とする構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−279780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、インクジェットプリンターが大型化すると、発生する廃液体が大量になり、廃インクトレイも大型化する。従って、前記メンテナンス作業を行うユーザーの負担が増大する問題がある。
【0006】
また、被記録材の搬送方向と交差する幅方向に記録ヘッドを往復移動させて記録を実行するシリアル方式のインクジェットプリンターにあっては、記録実行領域外の別に離れた位置に設けられているフラッシングポジションまで記録ヘッドを移動させてからフラッシング動作を行っていた。そのため、フラッシング動作が記録実行時間の短縮(スループットの向上)を妨げる要因になっていた。尚、フラッシングとは記録ヘッドのノズル口からインクを吹き飛ばしてノズル口をリフレッシュすることを言う。
【0007】
本発明の目的は、廃液体の処理に要するユーザーの負担を軽減して廃液体を回収できると共に、フラッシング動作時の記録ヘッドの移動距離を短くして記録実行時間の短縮を図ることができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明に係る記録装置の第1の態様は、被記録材に液体を吐出して記録する記録ヘッドと、前記記録ヘッドから吐出された液体のうち前記被記録材に付着しなかった廃液体を回収する廃液体回収装置とを備え、前記廃液体回収装置は、前記記録ヘッドと対向する側に設けられ、前記被記録材に付着しなかった廃液体を受ける移動可能なシート状部材を備えていることを特徴とするものである。
ここで、「被記録材に付着しなかった廃液体」とは、フラッシング動作で記録ヘッドから吐出される液体(インク)、縁なし記録を実行した際に被記録材の縁からはみ出て液体(インク)、更にメッシュ生地等に液体(インク)を吐出して記録を行った際にメッシュの開口を貫通した液体(インク)等が相当する。
【0009】
また、「被記録材に付着しなかった廃液体を受ける移動可能なシート状部材」とは、記録の実行及びフラッシング動作に際して、記録ヘッドのノズル口から吐出される液体が到達する吐出範囲をカバーして廃液体を受けることができるようにシート状部材が設けられることを意味する。よって、当該記録ヘッドが被記録材の搬送方向と交差する幅方向に往復移動するキャリッジに支持されたシリアル方式の記録ヘッドである場合には、当該シート状部材は、記録ヘッドの移動範囲を考慮した液体の吐出範囲をカバーするように設けられる。
本態様によれば、シリアル方式の記録ヘッドを搭載した記録装置の場合には、被記録材の幅の外側近傍でフラッシング動作を実行することが可能となり、以ってフラッシング動作時の記録ヘッドの移動距離を短くして記録実行時間の短縮を図ることができる。
【0010】
また本態様によれば、記録ヘッドから吐出された液体が付着したシート状部材は、記録ヘッドの対向領域の他方の端部に移動して回収することが可能である。従って、ユーザーが従来行っていた廃液体の処理作業は不要になる。即ち、廃液体の処理に要するユーザーの負担を軽減して廃液体を回収することができる。
【0011】
また、廃液体回収装置は記録ヘッドと対向する領域の一方の端部から他方の端部にかけて移動可能なシート状部材を備えるので、記録ヘッドから吐出される液体の着弾位置に存するシート状部材の記録ヘッドとの対向面の位置を時々刻々変化させることが可能である。これにより、記録ヘッドから吐出された液体が付着していないシート状部材の前記対向面によって当該廃液体を受けること我できるので、常に良好な廃液体の回収性能が発揮される。
【0012】
本発明に係る記録装置の第2の態様は、前記第1の態様に係る記録装置において、前記記録ヘッドは、被記録材の搬送方向と交差する幅方向に往復移動可能であり、前記シート状部材は、前記記録ヘッドの移動方向に沿って移動可能であり、前記記録ヘッドと前記廃液体回収装置の各動作を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記記録ヘッドのフラッシングポジションを被記録材の幅寸法に対応して設定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本態様によれば、シリアル方式の記録ヘッドを搭載した記録装置において、前記記録ヘッドのフラッシングポジションを被記録材の幅寸法に対応して設定するので、被記録材の幅の外側近傍でフラッシング動作を実行することが可能となり、以ってフラッシング動作時の記録ヘッドの移動距離を短くして記録実行時間の短縮を図ることができる。
【0014】
本発明に係る記録装置の第3の態様は、前記第1の態様又は第3の態様に係る記録装置において、前記廃液体回収装置は、前記シート状部材の移動方向における上流位置に設けられる第1ローラーと、前記シート状部材の移動方向における下流位置に設けられる第2ローラーとを備え、前記シート状部材は、前記第1ローラーにロール状に巻かれた長尺なロール状部材であり、該ロール状部材を前記第2ローラーによって巻き取るように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、廃液体の回収には、第1ローラーである繰出しローラーから繰り出される新しいシート状部材が常に使用され、廃液体を捕捉したシート状部材は、第2ローラーである巻取りローラーによって巻き取られることで自動的に回収される。
従って、ユーザーが従来行っていた廃液体の処理作業は不要になる。
【0016】
本発明に係る記録装置の第4の態様は、前記第1の態様又は第2の態様に係る記録装置において、前記廃液体回収装置は、前記シート状部材の移動方向における一端側に設けられる駆動部と、前記シート状部材の移動方向における他端側に設けられる従動部とを備え、前記シート状部材は、前記駆動部と従動部との間に巻回される無端ベルトであることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、インク捕捉性能が発揮される範囲で同一のシート状部材を連続的に繰り返して使用することが可能になる。従って、使い捨てタイプのシート状部材に比べて環境に優しく、シート状部材の交換頻度も少なくなる。
【0018】
本発明に係る記録装置の第5の態様は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様に係る記録装置において、前記シート状部材は、両側縁に適宜の間隔でスリットを有することによって複数の側縁フラップを備え、該側縁フラップは前記記録ヘッド側に立ち上がり可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、シート状部材の側縁に形成した側縁フラップによって、前記対向面に打ち捨てられた廃液体はシート状部材の左右の側縁部から下方に零れることなく記録ヘッドの対向領域の他方の端部に運ばれて回収される。
また、シート状部材の湾曲部では隣接する側縁フラップの自由端が放射状に開くように変形するため、シート状部材に無理な力をかけることなく円滑なシート状部材の移動が可能になる。
【0020】
本発明に係る記録装置の第6の態様は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様に係る記録装置において、前記シート状部材は移動方向と交差する方向に伸縮可能な蛇腹状に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、シート状部材における記録ヘッドとの対向面に別途の部材を配設することなくシート状部材自体の形状を蛇腹状に変形させることによって廃液体受け溝部が形成されている。従って、極めてシンプルな構成によって廃液体回収装置を構成でき、該シート状部材の記録ヘッドとの対向面に打ち捨てられた廃液体は、前記液体受け溝部に導かれ、記録ヘッドの対向領域の他方の端部に運ばれて回収される。
また、シート状部材を蛇腹状の変形させることによって記録ヘッドから吐出された廃液体を受けるのに必要な幅寸法よりも大きな幅寸法のシート状部材が使用できるので、シート状部材における記録ヘッドとの対向面の面積の拡大によって廃インクの捕捉率が向上する。
【0022】
本発明に係る記録装置の第7の態様は、前記第1の態様から第6の態様のいずれか一つの態様に係る記録装置において、前記シート状部材の前記記録ヘッドとの間隔は、可変に構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、縁あり記録のときは、シート状部材を被記録材の裏面(非記録面)に接して支持する位置に移動させることで、該シート状部材に記録実行中に被記録材を裏面側から支持する支持部材としての機能を持たせることができる。
縁なし記録やフラッシングによって廃液体がシート状部材に付着した箇所が、被記録材の裏面側を通過する構造の場合には、シート状部材を被記録材の裏面に接しない離間位置に移動させることで、被記録材が前記廃液体で汚染されることを防止することができる。
【0024】
本発明に係る記録装置の第8の態様は、前記第7の態様に係る記録装置において、前記間隔は、被記録材の幅内の領域と幅外の領域で異なる大きさに設定可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
本態様によれば、例えば縁なし記録の場合で、シート状部材に廃液体の付着した箇所が被記録材の裏側を通過しない構造の場合は、被記録材の裏側に位置するシート状部材のその部分は該シート状部材を被記録材の裏面(非記録面)に接して支持する位置に移動させる。一方、縁なし記録で被記録材の外側に打ち捨てられた廃液体を受ける箇所のシート状部材は被記録材の裏面に接しない離間位置に移動させることで、被記録材が前記廃液体で汚染されることを防止することができる。
【0026】
本発明に係る記録装置の第9の態様は、前記第1の態様から第8の態様のいずれか一つの態様に係る記録装置において、前記記録ヘッドから吐出される液体は、光に反応して硬化する光硬化インクであり、前記記録ヘッドの側傍には、該記録ヘッドから吐出された光硬化インクに光を照射する光照射部が設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
ここで、本明細書中で使用する「光」とは、一般に短波長側が360nm〜400nm、長波長側が760nm〜830nmとされている可視光、該可視光よりも波長の短い1nm〜380nm程度の紫外線、該可視光よりも波長の長い780nm〜1mm程度の赤外線を含む範囲に加えて、更に、前記紫外線よりも波長の短い電磁波や前記赤外線よりも波長の長い電磁波を含んだ広汎な意味で使用する。
従って、「光硬化インク」といった場合には、一般に光の範囲とされている可視光、紫外線、赤外線の範囲に加えて、これらの範囲外に属する短波長ないし長波長の電磁波に反応して、硬化する種々のインクを意味するものとする。
【0028】
本態様によれば、フラッシング動作時においても光照射部から光を照射するようにした場合には、シート状部材の記録ヘッドとの対向面に付着した光硬化インクを固めた状態で回収することが可能になる。また、固まった光硬化インクをシート状部材から剥離することによって当該シート状部材を繰り返して使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る記録装置の内部構造の概略構成を示す要部正面図。
【図2】本発明の実施例1に係る記録装置の内部構造の概略構成を示す要部平面図。
【図3】本発明の実施例1に係る記録装置の廃液体回収装置周辺を拡大して示す斜視図。
【図4】本発明の実施例1に係る記録装置の廃液体回収装置周辺を拡大して示す図3中のA−A断面図。
【図5】本発明の実施例2に係る記録装置の廃液体回収装置周辺を拡大して示す斜視図。
【図6】本発明の実施例2に係る記録装置の廃液体回収装置周辺を拡大して示す図5中のB−B断面図。
【図7】本発明の実施例3に係る記録装置の廃液体回収装置周辺を拡大して示す斜視図。
【図8】本発明の実施例3に係る記録装置の廃液体回収装置周辺を拡大して示す図7中のC−C断面図。
【図9】本発明の他の実施例に係る記録装置のシート状部材における種々の断面形状(A)〜(C)を示す断面図。
【図10】本発明の更に他の実施例に係る記録装置の廃液体回収装置の二種の配設態様(A)(B)を示す平面図。
【図11】本発明の実施例1に係る記録装置の制御部が記録ヘッドのフラッシングポジションを被記録材の幅寸法に対応して設定する場合の動作の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1〜図4及び図11に示す実施例1と、図5、6に示す実施例2と、図7、8に示す実施例3に基づいて、本発明の記録装置1の構成と、該記録装置1の作動態様について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、最初に図1、図2に基づいて本発明の記録装置1の基本的構成について説明し、次いで前記実施例1から実施例3の三つに基づいて本発明の特徴的構成について順番に説明する。
【0031】
図示の記録装置1は、一例としてバンド送り印刷が可能で、キャリッジ17が被記録材Pの搬送方向Aと交差する幅方向Bに往復移動するシリアル方式のインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)である。
このインクジェットプリンター1で記録が実行できる被記録材Pには、紙厚、性状の異なる種々の用紙や樹脂フィルムの他、布地やメッシュターポリン等の開口部を有するメッシュ生地が含まれる。メッシュ生地は記録の実行に使用されない廃液体(以下「廃インク」という場合もある)が他の被記録材よりも多くなるので、本発明を適用する効果は大である。
【0032】
そして、このインクジェットプリンター1には、被記録材Pを搬送方向Aに所定のバンド送り量Dずつ間欠的に搬送し得る搬送機構3(図2)と、前記幅方向Bに並ぶノズル列5をノズル形成面6(図1)に有し、該ノズル列5を形成している複数のノズル口7から吐出される光硬化インクの一例である紫外線(UV)硬化インクC(種類の別を区別する場合にC1、C2の符号を用いる)によって被記録材Pの被記録面9に所望の記録を実行して下地11ないし画像13を形成する記録ヘッド15と、が設けられている。
尚、「記録ヘッド15」は、後述するように二種類存在するが、その種類の区別を要しないときは単に算用数字「15」のみが付され、その種類を区別する場合は前記算用数字に異なるアルファベットが付されて「15A」「15B」のようにして区別される。この区別の仕方は、他の構成部材についても適宜適用される。
【0033】
また、このインクジェットプリンター1には、前記記録ヘッド15を搭載して前述した幅方向Bに往復移動するキャリッジ17と、前記記録ヘッド15から吐出されたインクCのうち記録の実行に使用されなかった廃インクCを回収する本発明の特徴的構成要素である廃液体回収装置(以下「廃インク回収装置」とも言う)51と、が備えられている。
また、前記キャリッジ17の往復移動範囲の下方には、前記搬送機構3によって搬送されてきた被記録材Pの下面を支持して記録ヘッド15のノズル形成面6と被記録材Pの被記録面9との間のギャップを所定の距離に保って当該被記録材Pの搬送を案内する支持部材16が備えられている。
【0034】
また、前記支持部材16の上面の前記往復移動する記録ヘッド15との対向領域33には、該対向領域33の一方の端部から他方の端部にかけて移動可能なシート状部材53を備える前述した廃インク回収装置51が備えられている。
そして、本実施例では、前記シート状部材53の前記記録ヘッド15との対向面54のすべてが、記録ヘッド15が記録実行時に移動する幅方向Bの範囲である記録実行エリア23と、記録ヘッド15がフラッシング動作時に位置するフラッシングポジション24として利用できるようになっている。
【0035】
従って、本実施例では、被記録材Pの基準縁となる一方の側縁35Rの外方に位置するフラッシングポジション24Aだけでなく、被記録材Pの幅サイズによって変わる被記録材Pの他方の側縁35Lにおける外方近傍領域もフラッシングポジション24Bとして利用できるように構成されている。
尚、前記フラッシングポジション24Aについては、当該シート状部材53を利用せず、該シート状部材53とは別個のフラッシング受け部で構成してもよい。該フラッシング受け部は穴構造で穴の下部にインク吸収材を配設したものが一例として挙げられる。詳細は後述する。
【0036】
更に、このインクジェットプリンター1は、一例として前記記録ヘッド15の幅方向の側傍に並設されるように前記キャリッジ17に対して搭載され、前記各ノズル口7から吐出されたUV硬化インクCに光の一例である紫外線(UV光)Eを照射させて該UV硬化インクCを硬化させる発光素子の一例である複数の発光ダイオード(以下、「LED」ともいう)41によって形成される発光素子列39によって構成されている光照射部19を備えている。
【0037】
図1、図2に示すように、搬送機構3は、実際に記録が実行される搬送方向Aの領域である記録実行エリア23の上流位置に設けられる一対のニップローラーによって構成されている搬送用ローラー25と、前記記録実行エリア23の下流位置に設けられる同じく一対のニップローラーによって構成されている排出用ローラー27と、を備えることによって一例として構成されている。
そして、前記搬送用ローラー25と排出用ローラー27を駆動するモーター29には、後述する制御部21から、本実施例では前記バンド送り量Dの搬送を指令する信号31が送信されて被記録材Pが前記バンド送り量Dずつ間欠的に送られるように構成されている。
【0038】
記録ヘッド15は、下地用のインクC1を吐出する第1の記録ヘッド15Aと、画像形成用インクC2を吐出する第2の記録ヘッド15Bの二種類が設けられており、一例として図1、図2中の左方に第1の記録ヘッド15Aが配設されていて、図1、図2中の右方に第2の記録ヘッド15Bが配設されている。
尚、このうち第1の記録ヘッド15Aには、例えばホワイト(W)、ゴールド(G)、シルバー(S)等の下地用インクC1を吐出するノズル列5Wが設けられている。また、第2の記録ヘッド15Bには、一例としてシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の画像形成用インクC2を個別に吐出する4つのノズル列5C、5M、5Y、5Kが幅方向Bに所定の間隔を隔てて並設されている。
【0039】
そして、これらの各ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kには、後述する制御部21から各ノズル口7の位置に対応したインク吐出量を指令する信号31が送信されてインク吐出量の調整が図られている。
また、図示のインクジェットプリンター1では、前記ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kの各ノズル口7から吐出されるインクCが前述したようにUV光Eの照射を受けて、硬化するUV硬化インクCによって構成されている。
【0040】
「UV硬化インク」は、UV光Eを照射することによって硬化、定着する速硬性に優れたインクで、ヒーター加熱によって溶媒を蒸発させることによって硬化、定着する顔料インクに比べて硬化後の体積収縮率が格段に小さいという特長を有している。
また、「UV硬化インク」は、溶剤成分を含んでいないため環境に優しく、UV光Eを照射することによって瞬時に硬化するためインク吸収性の低いフィルム系の被記録材Pに好適なインクである。
【0041】
キャリッジ17は、幅方向Bに延びるキャリッジガイド軸37に沿って前記記録ヘッド15と光照射部19を幅方向に往復移動させる往復搬送機構である。
前記キャリッジ17を往復移動させるための動力は、正逆転可能で単位ステップ毎の精密な送り制御が可能な図示しないモーターから受けており、該モーターの回転が図示しない歯付きベルトを介して前記キャリッジ17に伝達されるようになっている。
【0042】
光照射部19は、前記下地用インクC1を硬化させる前記第1の記録ヘッド15Aの図1、図2中、一例として左側傍に配置されている第1光照射部19Aと、前記画像形成用インクC2を硬化させる前記第2の記録ヘッド15Bの図1、図2中、一例として右側傍に配置されている第2光照射部19Bの二種類が設けられている。
そして、図示のインクジェットプリンター1では、前記二種類の光照射部19A、19Bが被記録材Pの被記録面9に吐出された前記UV硬化インクCに所定の照射量のUV光Eを照射させることでUV硬化インクCの硬化、定着を実行している。
【0043】
また、前記二種類の光照射部19A、19Bは、前記二種類の記録ヘッド15A、15Bにおける各ノズル列5Wと5C、5M、5Y、5Kのノズル口7の配列に対応した配列の複数のLED41を備えた発光素子列39によって構成されている。
そして、これらの各LED41には、後述する制御部21から各LED41の位置に対応したUV光Eの照射量や照射の有無を指令する信号31が送信されてUV光Eの照射量の調整と照射の有無の切り換えとが図られている。
【0044】
[実施例1](図1〜図4及び図11参照)
図3に示すように、実施例1に係るインクジェットプリンター1Aでは、廃インク回収装置51Aがシート状部材53Aの移動方向Fの上流位置に設けられる第1ローラーである繰出しローラー55と、シート状部材53Aの移動方向Fの下流位置に設けられる第2ローラーである巻取りローラー57とを備えている。
そして、本実施例ではシート状部材53Aが前記繰出しローラー55にロール状に巻かれた長尺なロール状部材によって構成されており、該ロール状部材の繰出し端を前記巻取りローラー57によって巻き取るように配設されている。
【0045】
尚、前記繰出しローラー55と巻取りローラー57は、一方を駆動ローラーとし他方を従動ローラーとすることも可能であるし、双方を駆動ローラーとすることも可能である。
また、シート状部材53Aの材質としては、合成ゴムや軟質の合成樹脂フィルム等の吸水性を有しない材質によって形成することも可能であるし、紙や不織布等の吸水性を有する材質によって形成することが可能である。
【0046】
また、図3、図4に示すように、このようにして構成される廃インク回収装置51Aが設置される支持部材16は、幅方向Bに長い平面視矩形状のブロック様の部材で、該支持部材16の上面には、被記録材Pの被支持面となる下面に直接接触して当該被記録材Pを支支持る支持リブ18が中央の開口部43を挟んでその前後に幅方向Bに適宜の間隔を空けて複数配設されている。
尚、前記開口部43の前後に配設されている支持リブ18を区別する場合には、搬送方向Aの上流側に位置しているものを支持リブ18B、下流側に位置しているものを支持リブ18Fとして両者を識別する。また、前記開口部43は、前述した廃インク回収装置51Aを設置する設置スペースになっており、本実施例では一例として角穴状の窓部によって開口部43が形成されている。
【0047】
前記開口部43の左端部と右端部が前述した繰出しローラー55と巻取りローラー57の設置スペースになっており、該設置スペースには、繰出しローラー55と巻取りローラー57のそれぞれのローラー軸56、58を自由回転可能な状態で支持する図示しない軸受構造がそれぞれ設けられている。
また、前記繰出しローラー55と巻取りローラー57の設置スペースの中間位置には、前記開口部43の前後の内壁面間に架け渡されるように後述する押上げ部材67を保持するホルダー部69が、前記押上げ部材67に対応する位置に複数設けられている。
【0048】
尚、前記開口部43の前後の内壁面の上部には、幅方向Bに巻回されているシート状部材53Aの左右の側縁部59L、59Rの下面を各別に支持する段差状の側縁支持部61L、61Rが設けられている。
そして、前記ホルダー部69には、前記シート状部材53Aの下面に当接して上方に押し上げることによってシート状部材53Aの記録ヘッド15との対向面54の高さを上昇位置H1(図1)にし、一方、前記シート状部材53Aの下方に退避させることによってシート状部材53Aの記録ヘッド15との対向面54の高さを下降位置H2(図1)にする前述した押上げ部材67が内嵌している。
【0049】
前記押上げ部材67は、使用する被記録材Pのサイズ等を考慮して幅方向Bの適宜の位置に複数設けられており、個別に前記上昇位置H1と下降位置H2とを取るように上下動できる構成になっている。ここで、前記押上げ部材67が個別に上下動できる構造としては、個別に動力源を有する構造、圧力媒体とピストンを組み合わせて前記各位置H1、H2をとらせる構造、カム機構を利用したもの等が挙げられる。
【0050】
尚、押上げ部材67の上下動の制御は、制御部21によって行われており、例えば使用する被記録材Pの幅寸法の範囲内に存する押上げ部材67や記録を実行する印刷データの範囲内に存する押上げ部材67を上昇位置H1にしてシート状部材53Aの中央部の弛みを取って記録実行中の被記録材Pの水平姿勢を保持するように構成することが可能である。
一方、使用する被記録材Pの幅寸法の範囲外に存する押上げ部材67や記録を実行する印刷データの範囲外に存する押上げ部材67を下降位置H2にして縁無し印刷時やフラッシング動作時に吐出ないし打ち捨てられた廃インクCを、シート状部材53Aの中央にできる弛み部71によって確実に捕捉できるように構成することが可能である。
【0051】
次に、このようにして構成される実施例1に係るインクジェットプリンター1Aの作動態様を廃インク回収装置51の作動態様を中心にして説明する。
ユーザーによって記録の実行指令が出されると、ユーザーによって設定された情報やインクジェットプリンター1Aにセットされた被記録材P自体から被記録材Pのサイズや向きに関する情報がインクジェットプリンター1Aの制御部21に送信されて把握される。また、インクジェットプリンター1Aに向けて送信された印刷データから印刷する画像13の大きさや位置に関する情報が同じく制御部21に送られて把握される。
【0052】
前記制御部21に送信された情報に基づき、上昇位置H1にする押上げ部材67と下降位置H2にする押上げ部材67とを決め、図示しないシフト機構を作動させて押上げ部材67を各別に駆動して上昇位置H1ないし下降位置H2にする。
次に、図示しない駆動モーターを駆動して繰出しローラー55と巻取りローラー57を所定の方向に回転させ、シート状部材53Aを例えば図3中矢印で示す移動方向Fに移動させる。
【0053】
尚、この時図4中、実線に示すように押上げ部材67が下降位置H2に位置している部位では、左右の側縁支持部61L、61Rによって支持されている左右の側縁部59L、59Rの中間に下方に凹陥した形状の弛み部71が形成される。
一方、図4中、仮想線に示すように押上げ部材67が上昇位置H1に位置している部位では、前記中間部が上方に押し上げられるため左右の側縁部59L、59Rの高さとほぼ同じ高さに前記中間部も位置するようになる。
【0054】
そして、このような状態で移動方向Fに移動し得るシート状部材53Aの上方に被記録材Pの先端部が到達すると、当該印刷データに基づく記録の実行が開始されて、記録実行エリア23を幅方向に往復移動する記録ヘッド15から吐出されるインクCにより所望の記録が実行される。
また、記録実行中は、適宜のタイミングでフラッシング動作も実行される。本実施例では、フラッシング動作は、被記録材Pの基準縁側の側縁35Rにおける外方のフラッシングポジション24Aと、当該側縁35Rと反対側の被記録材Pの側縁35Lにおける外方近傍領域に存するフラッシングポジション24Bを利用して実行される。
【0055】
そして、シート状部材53Aの記録ヘッド15との対向面54に向けて吐出された廃インクCは、シート状部材53Aによって捕捉される。記録が終了した後、前記上昇位置H1の押上げ部材67を下降位置H2に下げ、その状態でシート状部材53は移動方向Fに運ばれて巻取りローラー57によってシート状部材53Aと共に巻取られて回収されて行く。尚、記録終了前にシート状部材53を移動させて対向面54を更新する場合のも、前記上昇位置H1の押上げ部材67を下降位置H2に下げて行うことになる。
従って、本実施例に係るインクジェットプリンター1Aによれば、廃インクCの処理に要するユーザーの負担を大幅に軽減でき、効率良く廃インクCを回収できるようになる。また、フラッシングポジション24A、24Bまでの記録ヘッド15の移動距離を短くできるから、記録実行時間の大幅な短縮を図ることが可能になる。
【0056】
図11は、本実施例に係る記録装置の制御部21が記録ヘッド15のフラッシングポジション24Bを被記録材Pの幅寸法に対応して設定する場合の動作の流れを示すフローチャートである。先ずステップS1で被記録材の幅情報を得る。次に、ステップS2において、これから実行する記録は縁なし記録であるか否かを判断する。
縁なし記録である場合はステップS3に進んで、縁なし記録のための記録ヘッド15移動範囲を被記録材Pの幅に合わせて決定する。
続いて、ステップS4に進んで、被記録材Pの幅に合わせて,シート状部材53の対向面54に対するフラッシングポジション24Bを、その側縁35Lの外側近傍位置に決定する。他の側縁35R側のフラッシングポジション24Aは基準縁側であって変らないので予め決められている。続いてステップS5に進んで記録が実行される。
前記ステップS2において、縁なし記録でない、即ち縁有り(余白有り)の記録であるときは、ステップS4に進む。
【0057】
[実施例2](図5、図6参照)
実施例2に係るインクジェットプリンター1Bは、廃インク回収装置51Bの構成が前述した実施例1の廃インク回収装置51Aと相違しており、その他の構成については、前記実施例1と同様の構成を有している。
従って、ここでは、前記実施例1と同様の構成については説明を省略し、前記実施例1と相違する廃インク回収装置51Bの構成を中心にして本実施例に係るインクジェットプリンター1Bを説明する。
【0058】
即ち、本実施例では、廃インク回収装置51Bが、シート状部材53Bの移動方向Fの一端側(一例として上流側)に設けられる駆動ローラー73と、シート状部材53Bの移動方向Fの他端側(一例として下流側)に設けられる従動ローラー75とを備えている。
また、本実施例では、シート状部材53Bが前記駆動ローラー73と従動ローラー75との間に巻回される無端ベルト状部材によって構成されている。
【0059】
また、本実施例では、前記シート状部材53Bの記録ヘッド15との対向面54に、該シート状部材53Bの左右の側縁77L、77Rに適宜の間隔でスリット79を入れることによって多数の側縁フラップ81、81、…を形成し、該側縁フラップ81を上方に立ち上げることによってインク受け凹部83が形成されるようになっている。
これに伴い、支持部材16の開口部43における前後の内壁面には、シート状部材53Bの幅方向の外方に拡がっている左右の側縁フラップ81L、81Rを内側に起こして図5、図6に示す立設姿勢にする誘導傾斜面85が設けられている。
【0060】
そして、このようにして構成される廃インク回収装置51Bによれば、前記実施例1のようにシート状部材53Aに弛み部71を形成しなくても前記立設姿勢の側縁フラップ81L、81Rによってシート状部材53Bの記録ヘッド15との対向面54に前述したインク受け凹部83が形成される。
従って、形成された前記インク受け凹部83によって記録ヘッド15から打ち捨てられた廃インクCは確実に捕捉されるようになる。
【0061】
また、本実施例では、前記実施例1のシート状部材53Aと異なり、単一のシート状部材53Bを繰り返して使用することになる。これに伴って、シート状部材53Bの移送経路の途中には、シート状部材53Bの前記対向面54に付着した廃インクCを例えばかき取って除去するかき取りブレード87を備えるクリーニング装置89が配設されている。
【0062】
そして、このようにして構成される廃インク回収装置51Bを備えた本実施例に係るインクジェットプリンター1Bを使用した場合にも前述した実施例1に係るインクジェットプリンター1Aと同様の作動態様が実行され、同様の作用、効果が発揮される。
更に、本実施例では、単一のシート状部材53Bを連続的に繰り返して使用するから、前記実施例1のような使い捨てタイプのシート状部材53Aに比べて環境に優しく、シート状部材53Bの交換頻度も少なくて済むようになる。
また、本実施例の場合には、シート状部材53Bに付着した廃インクCに対しても光照射部19から光を照射して硬化させるようにすれば、前記かき取りブレード87による廃インクCの剥離を容易にすることが可能である。これは、シート状部材53Bの前記対向面54を、UV硬化インクが硬化しても定着しにくい素材にする、或いは定着性を低下する処理をしておくことで一層効果的になる。
【0063】
[実施例3](図7、図8参照)
実施例3に係るインクジェットプリンター1Cは、廃インク回収装置51Cの構成が前述した実施例1の廃インク回収装置51Aと相違しており、その他の構成については、前記実施例1と同様の構成を有している。
従って、ここでは前記実施例1と同様の構成については説明を省略し、前記実施例1と相違する廃インク回収装置51Cの構成を中心にして本実施例に係るインクジェットプリンター1Cを説明する。
【0064】
即ち、本実施例では、前記実施例2と同様、廃インク回収装置51Cが、シート状部材53Cの移動方向Fの一端側(一例として上流側)に設けられる駆動ローラー73と、シート状部材53Cの移動方向Fの他端側(一例として下流側)に設けられる従動ローラー75と、を備えている。
また、本実施例でも、前記実施例2と同様、シート状部材53Cが前記駆動ローラー73と従動ローラー75との間に巻回される無端ベルト状部材によって構成されている。
【0065】
また、本実施例では、前記シート状部材53Cは、移動方向Fと交差する方向に伸縮可能な蛇腹状に形成されている。これにより、記録ヘッド15との対向面54では複数本のインク受け溝部91、91、…が形成されることになる。
これに伴い、支持部材16の開口部43における前後の内壁面には、シート状部材53Cの左右の側縁77L、77Rに当接し、内方に寄せるための内方に張り出した張出し凸部93が図7、図8に示すように設けられている。
【0066】
そして、このようにして構成される廃インク回収装置51Cによれば、前記実施例1のようにシート状部材53Aに弛み部71を形成しなくても蛇腹状のシート状部材53Cによって形成される複数本のインク受け溝部91、91、…によって記録ヘッド15から打ち捨てられた廃インクCは確実に捕捉されるようになる。
【0067】
また、本実施例でも前記実施例2と同様、単一のシート状部材53Cを繰り返して使用することになる。これに伴って、シート状部材53Cの移送経路の途中には、シート状部材53Cの前記対向面54に付着した廃インクCを例えばかき取って除去するかき取りブレード87を備えるクリーニング装置89が配設されている。
【0068】
そして、このようにして構成される廃インク回収装置51Cを備えた本実施例に係るインクジェットプリンター1Cを使用した場合にも前述した実施例1に係るインクジェットプリンター1Aと同様の作動態様が実行され、同様の作用、効果が発揮される。
更に、本実施例では、前記実施例2と同様、単一のシート状部材53Cを連続的に繰り返して使用するから、前記実施例1のような使い捨てタイプのシート状部材53Aに比べて環境に優しく、シート状部材53Cの交換頻度も少なくて済むようになる。
また、複数本のインク受け溝部91、91、…を形成することで廃インクCを捕捉するシート状部材53Cの前記対向面54の表面積が増えるから、より確実に廃インクCが捕捉されるようになる。
【0069】
[他の実施例]
本発明に係る記録装置1は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0070】
上記実施例では、フラッシングポジション24Aとフラッシングポジション24Bの両方をシート状部材53の対向面54を利用して構成したが、基準縁側のフラッシングポジション24Aについては、当該シート状部材53を利用せず、該シート状部材53とは別個のフラッシング受け部で構成してもよい。該フラッシング受け部は穴構造で穴の下部にインク吸収材を配設したものが一例として挙げられる。
この場合は、被記録材Pの幅サイズによって変わる被記録材Pの他方の側縁35Lにおける外方近傍領域がフラッシングポジション24Bとして利用されるだけであるので、シート状部材53の移動方向を前記実施例の方向Fと逆方向にすることで、フラッシングによる廃インクCが被記録材Pの裏側を通過する状態は起こらないようにすることができる。これにより、前記廃インクによって被記録材が汚れる虞を無くすことができる。
【0071】
また、押上げ部材67を下降位置H2に下げた状態で記録を実行する場合は、記録実行中のどのタイミングでもシート状部材の移動を行えるので、廃インク量が多い記録を行う場合は、このようにすると効果的である。
【0072】
また、シート状部材53の断面形状は、前記実施例1〜3に示すように対向面54が平坦な偏平な矩形状の他、図9(A)に示すように前記対向面54に凹陥部95が形成され、中央よりも左右の側縁部59L、59Rの厚みが厚くなっているような形状のシート状部材53Dであってもよい。
また、図9(B)に示すシート状部材53Eのように前記対向面54に予め筋状の複数本の溝部97、97、…が形成されているものであってもよいし、図9(C)に示すシート状部材53Fのように前記対向面54に予め複数本の突条99、99、…が形成されているものであってもよい。
【0073】
また、廃インク回収装置51は、記録ヘッド15との対向領域33の全範囲に一組のみ設ける他、図10(A)(B)に示すように前記対向領域33の一部に一部に複数組に分けて設けることが可能である。
因みに、図10(A)(B)では、被記録材Pの基準縁となる一方の側縁35Rの外方近傍領域(図中右側)に一組、葉書サイズの被記録材Pを使用した時における他方の側縁35Lの外方近傍領域(図中左側)に一組、A4サイズの被記録材Pを使用したときにおける他方の側縁35Lの外方近傍領域(図中左側)に一組の合計三組の廃インク回収装置51Dないし51Eをそれぞれ部分的に配置した実施例が図示されている。
また、シート状部材53の移動方向Fは、図10(A)に示すインクジェットプリンター1Gのように被記録材Pの搬送方向Aと交差する幅方向Bに沿うようにしてもよいし、図10(B)に示すインクジェットプリンター1Hのように被記録材Pの搬送方向Aに沿うように設定することも可能である。
【0074】
この他、前記実施例2、実施例3で採用したシート状部材53B、53Cを実施例1のインクジェットプリンター1Aにおいて採用することが可能であるし、シート状部材53の記録ヘッド15との対向面54に吸インク性に優れるスポンジ材等を配設することも可能である。
【0075】
また、本発明のインクジェットプリンター1において採用する記録ヘッド15としては、前記各実施例において採用したシリアル方式の記録ヘッド15に限らず、被記録材Pの被記録面9における幅方向Bの全範囲を一挙に印刷する固定状態で設けられるライン方式の記録ヘッド15であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、3 搬送機構、5 ノズル列、
6 ノズル形成面、7 ノズル口、9 被記録面、11 下地、13 画像、
15 記録ヘッド、16 支承部材、17 キャリッジ、18 支持リブ、
19 光照射部、21 制御部、23 記録実行エリア、
24 フラッシングポジション、25 搬送用ローラー、27 排出用ローラー、
29 モーター、31 信号、33 対向領域、35 側縁、
37 キャリッジガイド軸、39 発光素子列、
41 発光ダイオード(LED)(発光素子)、43 開口部、47 バンド、
51 廃インク回収装置、53 シート状部材、54 対向面、
55 繰出しローラー、56 ローラー軸、57 巻取りローラー、
58 ローラー軸、59 側縁部、61 側縁支持部、67 押上げ部材、
69 ホルダー部、71 弛み分、73 駆動ローラー、75 従動ローラー、
77 側縁、79 スリット、81 側縁フラップ、83 インク受け凹部、
85 誘導傾斜面、87 かき取りブレード、89 クリーニング装置、
91 インク受け溝部、93 張出し凸部、95 凹陥部、97 溝部、99 突条、
P 用紙(被記録材)、A 搬送方向、B 幅方向、
C 紫外線(UV)硬化インク(光硬化インク)(インク)(廃インク)、
D バンド送り量、E 紫外線(UV光)(光)、F 移動方向、H1 上限位置、
H2 下限位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材に液体を吐出して記録する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから吐出された液体のうち前記被記録材に付着しなかった廃液体を回収する廃液体回収装置と、を備え、
前記廃液体回収装置は、前記記録ヘッドと対向する側に設けられ、前記被記録材に付着しなかった廃液体を受ける移動可能なシート状部材を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載された記録装置において、
前記記録ヘッドは、被記録材の搬送方向と交差する幅方向に往復移動可能であり、
前記シート状部材は、前記記録ヘッドの移動方向に沿って移動可能であり、
前記記録ヘッドと前記廃液体回収装置の各動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記記録ヘッドのフラッシングポジションを被記録材の幅寸法に対応して設定するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された記録装置において、
前記廃液体回収装置は、
前記シート状部材の移動方向における上流位置に設けられる第1ローラーと、
前記シート状部材の移動方向における下流位置に設けられる第2ローラーと、を備え、
前記シート状部材は、前記第1ローラーにロール状に巻かれた長尺なロール状部材であり、
該ロール状部材を前記第2ローラーによって巻き取るように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された記録装置において、
前記廃液体回収装置は、
前記シート状部材の移動方向における一端側に設けられる駆動部と、
前記シート状部材の移動方向における他端側に設けられる従動部と、を備え、
前記シート状部材は、前記駆動部と従動部との間に巻回される無端ベルトであることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記シート状部材は、両側縁に適宜の間隔でスリットを有することによって複数の側縁フラップを備え、該側縁フラップは前記記録ヘッド側に立ち上がり可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記シート状部材は移動方向と交差する方向に伸縮可能な蛇腹状に形成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された記録装置において、
前記シート状部材の前記記録ヘッドとの間隔は、可変に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載された記録装置において、
前記間隔は、被記録材の幅内の領域と幅外の領域で異なる大きさに設定可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載された記録装置において、
前記記録ヘッドから吐出される液体は、光に反応して硬化する光硬化インクであり、
前記記録ヘッドの側傍には、該記録ヘッドから吐出された光硬化インクに光を照射する光照射部が設けられていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−890(P2013−890A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130639(P2011−130639)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】