説明

診断および治療のための腫瘍関連抗原の同定

本発明は、その発現が癌疾患と関係がある遺伝子産物に関する。本発明は、前記遺伝子産物を発現または異所発現する疾病、特に癌疾患、の治療および診断にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インターディシプリナリー・アプローチおよび伝統的な治療を余すところなく使用しているにもかかわらず、癌は、未だ、主な死亡原因の一つである。最近の治療コンセプトは、組換え腫瘍ワクチンおよび他の特定の施策、例えば抗体療法、の使用による全治療コンセプトに患者の免疫系を組み込むことを目指している。
【背景技術】
【0002】
こうした戦略の成功の前提条件は、患者の免疫系のエフェクター機能を介在強化することによる、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原またはエピトープの認識にある。
【0003】
腫瘍細胞は、生物学的に、それらの元良性細胞と実質的に異なる。これらの相違は、腫瘍発生中に獲得される遺伝子改変に起因し、その結果、とりわけ、癌細胞では質的にまたは量的に改変された分子構造の形成も生じる。
【0004】
この種の腫瘍関連構造は、腫瘍保有宿主の特定の免疫系によって認識され、腫瘍関連抗原と呼ばれる。腫瘍関連抗原の特異的認識には、二つの機能的に結合した単位である、細胞メカニズムおよび液性機構がある:CD4Tリンパ球およびCD8 Tリンパ球は、それぞれ、MHC(主要組織適合性複合体)クラスIIおよびIの分子上に提示されるプロセッシングされた抗原を認識し、一方、Bリンパ球は、プロセッシングされていない抗原に直接結合する循環性抗体分子を産生する。
【0005】
腫瘍関連抗原の潜在的な臨床的−治療的重要性は、免疫系によって腫瘍細胞上の抗原を再認識することで、細胞傷害性エフェクターメカニズムが開始し、Tヘルパー細胞の存在下、癌細胞を排除することができるという事実に由来する(Pardoll,Nat.Med.4:525−31,1998)。
【0006】
従って、腫瘍免疫学の目的の中心は、これらの構造を分子的に定義することである。これらの抗原の分子的性質は、長い間、謎であった。適切なクローニング技術の開発後にやっと、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)(van der Bruggenら,Science 254:1643−7,1991)のターゲット構造を分析したり、または循環性自己抗体(Sahinら,Curr.Opin.Immunol.9:709−16,1997)をプローブとして使用することにより、腫瘍のcDNA発現ライブラリを腫瘍関連抗原について系統的にスクリーニングすることが可能となった。
【0007】
このために、cDNA発現ライブラリが、新鮮な腫瘍細胞から作製され、適する系においてタンパク質として組換え発現した。患者から単離した免疫エフェクター、すなわち、腫瘍特異的溶解パターンを有するCTLクローン、または循環性自己抗体は、それぞれの抗原をクローニングするために利用されていた。
【0008】
近年、これらのアプローチにより、様々な腫瘍において抗原が多重度に定義された。
【0009】
しかし、伝統的な方法において抗原同定に利用されるプローブは、通常は既に進行癌に罹患している患者からの免疫エフェクター(循環性自己抗体またはCTLクローン)である。
【0010】
多数のデータは、腫瘍が、例えば、T細胞の寛容化およびアネルギー化をもたらすことがあること、ならびにその疾病の過程で、特に、有効な免疫認識を生じさせ得る特異性が、その免疫エフェクターの能力から失われることを示している。
【0011】
現行の患者研究は、以前に発見され、利用されている腫瘍関連抗原の真の作用の信頼できる証拠を、まだ、呈示していない。従って、自然免疫応答を誘発するタンパク質が、誤ったターゲット構造であることを、除外することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、癌の診断および治療のためのターゲット構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、本件特許請求の範囲の内容によって達成される。
本発明に従って、腫瘍細胞において選択的にまたは異常に発現する遺伝子を特定することで、腫瘍関連抗原を提供することができる。これらの遺伝子および/もしくは遺伝子産物ならびに/または誘導体および/もしくはそれらのフラグメントは、治療および診断アプローチのためのターゲット構造として有用である。
【0014】
本発明に従って同定される腫瘍関連抗原は、(a)配列表の配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸を基準にして縮重している核酸、および(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的である核酸、から成る群より選択される核酸によってエンコードされたアミノ酸配列を有する。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原は、配列表の配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸によってコードされたアミノ酸配列を有する。
【0016】
さらなる好ましい実施形態において、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原は、配列表の配列番号:2、6、10、14、18、22、26、29、31、36、40、42、46、50〜60、63、68および69から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む。
【0017】
本発明は、一般に、腫瘍性疾患を治療、予防、診断および/またはモニタリングするための、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原のまたはそれらの部分もしくは誘導体の、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸のまたはそれらの部分もしくは誘導体のまたは前記コーディング核酸に対する核酸の、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはそれらの部分もしくは誘導体に対する抗体もしくはT細胞の、および/あるいは本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはそれらの部分もしくは誘導体を発現する宿主細胞の使用に関する。
【0018】
これは、これらの抗原、核酸、抗体、T細胞および/または宿主細胞のうちの二つ以上を併用することができ、一つの実施形態では、本発明に従って同定されるもの以外の腫瘍関連抗原と、それらをコードする核酸もしくは前記コーディング核酸に対する核酸、前記腫瘍関連抗原に対する抗体もしくはT細胞および/または前記腫瘍関連抗原を発現する宿主細胞を併用することができる。
【0019】
本発明の実施形態において、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはそれらの部分もしくは誘導体に対する抗体を使用する場合、任意にはMHC分子との複合体として、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはそれらの部分もしくは誘導体に対するT細胞受容体も、使用することができる。
【0020】
腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分、またはそれらを含む部分に対応する、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の一部は、治療、予防、診断および/またはモニタリングに特に適する。
【0021】
従って、本発明によると、腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分、もしくはそれらを含む部分、または本発明に従って同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸に対応する部分に対応する本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の一部は、治療、予防、診断および/またはモニタリングに好ましい。
【0022】
同様に、腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分、またはそれを含む部分に対応する、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の一部に対する抗体を使用することが、好ましい。
【0023】
治療、予防および/または診断に好ましい疾病として、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原のうちの一つ以上が、選択的に発現しまたは異常発現する疾病が挙げられる。
【0024】
さらに、本発明は、既知遺伝子の選択的スプライシング(スプライス変異体)または代替オープンリーディングフレームを使用する改変翻訳によって生じる、核酸およびタンパク質またはペプチドに関する。
【0025】
この態様において、本発明は、配列表の配列番号:28および49から成る群より選択される核酸配列を含む核酸に関する。
【0026】
さらに、この態様において、本発明は、配列表の配列番号:29および50から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、タンパク質またはペプチドに関する。
【0027】
腫瘍関連スプライス変異体は、腫瘍関連トランスクリプトおよび腫瘍関連タンパク質/抗原を産生し得る。これらは、腫瘍細胞の検出および腫瘍の治療的ターゲッティング、両方のために、分子マーカーとして利用することができる。
【0028】
患者からのサンプルにおける腫瘍細胞の検出は、例えば、スプライス変異体特異的オリゴヌクレオチドを用いてPCR増幅した核酸を抽出した後、本発明に従って行うことができる。
【0029】
本発明によると、すべての配列依存検出システムが検出に適する。これらは、PCRに加えて、例えば、遺伝子チップ/マイクロアレイシステム、ノーザンブロット、RNアーゼ保護アッセイ(RDA)およびその他である。
【0030】
すべての検出システムは、検出が、少なくとも一つのスプライス変異体特異的核酸配列での特異的ハイブリダイゼーションに基づく点で共通している。
【0031】
しかし、スプライス変異体がエンコードする特異的エピトープを認識する抗体により、本発明に従って腫瘍細胞を検出することもできる。
【0032】
前記抗体は、前記スプライス変異体に特異的であるペプチドを免疫処置に使用することによって作製することができる。健常な細胞において好適に生産される遺伝子産物の変異体(単数または複数)とは明瞭に異なるアミノ酸配列が、特に、免疫処置に適する。
【0033】
この場合、抗体を用いた腫瘍細胞の検出は、患者から単離したサンプル上で、または静脈内投与された抗体でイメージングして行うことができる。
【0034】
診断に使用できることに加えて、新規または改変エピトープを有するスプライス変異体は、本明細書において説明するような抗体またはTリンパ球のターゲッティングにこれらのエピトープを利用できるので、免疫療法の魅力的なターゲットである。
【0035】
受動免疫療法では、この場合、スプライス変異体特異的エピトープを認識する抗体またはTリンパ球を養子移入する。他の抗原の場合のように、これらのエピトープを含むポリペプチドから標準技術を用いて抗体を産生させることもできる。
【0036】
あるいは、前記エピトープを含有するペプチドをコードする核酸を免疫処置に利用することもできる。エピトープ特異的Tリンパ球をインビトロまたはインビボで産生させる様々な技術が公知であり、詳細に記載されており(例えば、Kessler JHら,2001、Sahinら,1997)、これらもまた、スプライス変異体特異的エピトープを含有するペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸に基づく。
【0037】
スプライス変異体特異的エピトープを含有するペプチドまたは前記ペプチドをコードする核酸は、能動免疫療法(例えば、ワクチン接種、ワクチン療法)において医薬活性物質として使用することもできる。
【0038】
一つの態様において、本発明は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその腫瘍関連抗原をコードする核酸を認識する、および好ましくは、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を有する細胞に対して選択的である薬剤を含む医薬組成物に関する。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、(I)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害する、ならびに/または (II)腫瘍阻害もしくは腫瘍破壊活性を有し、および本発明に従って同定される腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に対して選択的である、ならびに/または (III)投与されたとき、MHC分子と、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部、例えばペプチドエピトープ、との複合体の量を選択的に増加させる薬剤を含む医薬組成物に関する。
【0040】
特定の実施形態において、前記薬剤は、細胞死の誘導、細胞増殖の減少、細胞膜への損傷またはサイトカインの分泌を生じさせることができ、好ましくは、腫瘍阻害活性を有する。
【0041】
一つの実施形態において、前記薬剤は、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズする、アンチセンス核酸である。
【0042】
さらなる実施形態において、前記薬剤は、センスRNA鎖およびアンチセンスRNA鎖を好ましくは含むsiRNAであり、この場合、前記センスおよびアンチセンスRNA鎖は、RNA2本鎖を形成し、ならびに前記センスRNA鎖は、前記腫瘍関連抗原をコードする核酸、好ましくは前記腫瘍関連抗原をコードするmRNA、内の約19から約25の連続したヌクレオチドから成るターゲット配列と実質的に同一のヌクレオチド配列を含む。
さらなる実施形態において、前記薬剤は、前記腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体、特に、前記腫瘍関連抗原に選択的に結合する補体活性化抗体または毒素結合抗体である。
【0043】
好ましい実施形態において、前記腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体は、治療に有用な物質にカップリングされ、および/または前記腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する前記細胞に天然もしくは人口エフェクターメカニズムをリクルートする。
【0044】
さらなる実施形態において、前記薬剤は、細胞上にMHC分子によって結合した腫瘍関連抗原またはその一部を認識し、このようにして標識された細胞を溶解する、細胞傷害性Tリンパ球である。
【0045】
さらなる実施形態において、前記薬剤は、前記腫瘍関連抗原またはその一部を特異的に認識する他の細胞のエフェクター機能を強化する、Tヘルパーリンパ球である。
【0046】
さらなる実施形態において、前記薬剤は、二つまたはそれ以上の薬剤を含み、これらは、各々、異なる腫瘍関連抗原を認識し、および/または異なる腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害し、および/または腫瘍阻害もしくは腫瘍破壊活性を有し、異なる腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に対して選択的であり、および/または投与されたとき、MHC分子と異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部との複合体の量を選択的に増加させ、これらの場合、前記異なる腫瘍関連抗原のうちの少なくとも一つは、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原である。
【0047】
好ましくは、腫瘍に選択的に限定される腫瘍関連抗原は、この特定の位置にエフェクターメカニズムをリクルートするための標識として役立つ。
【0048】
本発明は、前記薬剤、それ自体は、腫瘍関連抗原の活性を阻害せず、または腫瘍阻害または腫瘍破壊活性を有さないが、そうした効果を媒介する、特に、特定の位置、特に、腫瘍もしくは腫瘍細胞にエフェクターメカニズム、特に、細胞傷害能を有するものをリクルートすることによって媒介する、実施形態を含む。
【0049】
本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の活性は、タンパク質またはペプチドの任意の活性であり得る。一つの実施形態において、この活性は、酵素活性である。
【0050】
本発明によると、「発現または活性を阻害する」というフレーズは、発現または活性の完全なまたは本質的に完全な阻害、および発現または活性の低減を含む。
【0051】
投与されたとき、MHC分子と本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部との複合体の量を選択的に増加させる薬剤は、(i)腫瘍関連抗原またはその一部、(ii)前記腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、(iii)前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および(iv)前記腫瘍関連抗原由来のペプチドエピトープとMHC分子との単離した複合体から成る群より選択される一つ以上の成分を含む。
【0052】
本発明は、さらに(i)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部、(ii)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、(iii)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原にまたはその一部に結合する抗体、(iv)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、(v)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、(vi)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および(vii)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との単離した複合体から成る群より選択される一つ以上の成分を含む医薬組成物に、関する。
【0053】
一つの実施形態において、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸は、発現ベクター内に医薬組成物として存在し、プロモーターに機能的に連結している。
【0054】
さらなる実施形態において、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸は、下でさらに説明するように、ウイルス内医薬組成物として存在する。
【0055】
さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物として存在する宿主細胞は、腫瘍関連抗原もしくはその一部を分泌し、表面でそれを発現し、好ましくは、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合するMHC分子をさらに発現する。
【0056】
一つの実施形態において、前記宿主細胞は、MHC分子を内因的に発現する。さらなる実施形態において、前記宿主細胞は、MHC分子および/または腫瘍関連抗原もしくはその一部を組換え様式で発現する。
【0057】
前記宿主細胞は、好ましくは、非増殖性である。好ましい実施形態において、前記宿主細胞は、抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0058】
さらなる実施形態において、本発明の医薬組成物として存在する抗体は、モノクローナル抗体である。
【0059】
さらなる実施形態において、前記抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体あるいは、天然抗体または合成抗体のフラグメントである。
【0060】
前記抗体は、本明細書でいう治療薬または診断薬は治療にまたは診断に有用な薬剤にカップリングさせることができる。
【0061】
本発明の医薬組成物として存在するアンチセンス核酸は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の6〜50、特に、10〜30、15〜30および20〜30の連続したヌクレオチドから成る配列を含むことができる。
【0062】
さらなる実施形態において、直接、または核酸の発現によって本発明の医薬組成物により得られる腫瘍関連抗原またはその一部は、細胞の表面のMHC分子に結合し、前記結合によって、好ましくは、細胞溶解性応答が引き起こされ、および/またはサイトカインの放出が誘導される。
【0063】
配列番号:1の核酸をターゲッティングするsiRNAの特定の実施形態では、そのセンスRNA鎖が、配列番号:70の配列を有し、そのアンチセンスRNA鎖が、配列番号:71の配列を有するか、そのセンスRNA鎖が、配列番号:72の配列を有し、そのアンチセンスRNA鎖が、配列番号:73の配列を有する。
【0064】
本発明の医薬組成物は、医薬適合性の担体および/またはアジュバントを含む。
【0065】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、腫瘍関連抗原の選択的発現または異常発現を特徴とする疾病の治療または予防に使用される。好ましい実施形態において、前記疾病は、腫瘍性疾患、好ましくは癌である。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、治療または予防に使用することができるワクチンの形態である。
【0067】
そうしたワクチンは、好ましくは、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部、および/または本発明に従って同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部をコードする核酸を含む。
【0068】
特定の実施形態において、前記核酸は、ウイルスまたは宿主細胞内に存在する。
【0069】
本発明は、さらに、治療、予防、診断またはモニタリングする方法、すなわち、本発明に従って同定される一つ以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾病、好ましくは腫瘍性疾患、特に癌の、それらの退縮、進行、経過および/または発症の判定に、関する。
【0070】
一つの実施形態において、前記治療または予防は、本発明の医薬組成物の投与を含む。
【0071】
一般に、本発明の前記診断方法および/またはモニタリング方法は、患者から、好ましくは、前記疾病に罹患している、前記疾病に罹患しているもしくは罹患すると推測される、または前記疾患の可能性を有する患者から単離した生体サンプルにおける、(i)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、(ii)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部、(iii)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部に対する抗体、および(iv)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部に特異的である、Tリンパ球、好ましくは細胞傷害性リンパ球もしくはTヘルパーリンパ球、および/または前記腫瘍関連抗原もしくはその一部とMHC分子との複合体から成る群より選択される一つ以上のパラメータの量の検出および/または決定に関する。
【0072】
前記量の検出および/または決定を遂行するための手段は、本明細書において説明するが、当業者には明らかである。
【0073】
好ましくは、前記核酸、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の存在ならびに/あるいは前記核酸、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の量は、前記疾病でない患者と比較して増加し、前記疾病の存在または前記疾病の発現の可能性を示す。
【0074】
本発明の診断および/またはモニタリング方法は、前記核酸、前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の量の検出または決定により、前記疾病の転移挙動を評価および/または予測することが可能である実施形態、好ましくは、前記核酸、前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の存在ならびに/あるいは前記核酸、前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の量が、前記疾病でないまたは前記疾病の転移がない患者と比較して増加し、前記疾病の転移挙動または前記疾病の転移挙動の可能性を示す実施形態も含む。
【0075】
特定の実施形態において、前記量の検出または決定は、(i)腫瘍関連抗原もしくは前記その一部をコードする前記核酸に、前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部に、前記抗体もしくは前記その一部に、または前記Tリンパ球に特異的に結合する薬剤と生体サンプルを接触させること、および(ii)前記薬剤と、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体もしくはその一部または前記Tリンパ球の複合体の、形成を検出することまたは量を決定することを含む。
【0076】
一つの実施形態において、前記疾病は、二つ以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とし、量の検出または決定は、二つ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはそれらの部分をコードする二つ以上の核酸の、二つ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはそれらの部分の、二つ以上の異なる腫瘍関連抗原にもしくはそれらの部分に結合する二つ以上の抗体の、および/または二つ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはそれらの部分に特異的な二つ以上のTリンパ球の、あるいはMHC分子とそれらの複合体の、量の検出または決定を含む。さらなる実施形態では、患者から単離した生体サンプルを、比較可能な正常生体サンプルと比較する。
【0077】
本発明のモニタリング方法は、好ましくは、第一時間点での第一サンプルおよびさらに第二時間点でのサンプルにおける上述のパラメータのうちの一つ以上の、量の検出および/または決定を含み、それら二つのサンプルを比較することにより、その疾病の経過を判定する。
【0078】
本発明によると、核酸もしくはその一部の検出または核酸もしくはその一部の量の決定は、前記核酸もしくは前記その一部に特異的にハイブリダイズするオリゴ−もしくはポリヌクレオチドプローブを使用して行うことができ、または前記核酸もしくは前記その一部の選択的増幅により、例えば、PCR増幅手段により、行うことができる。
【0079】
一つの実施形態において、前記オリゴ−またはポリヌクレオチドプローブは、前記核酸の6〜50、特に、10〜30、15〜30および20〜30の連続したヌクレオチドから成る配列を含む。
【0080】
特定の実施形態において、本発明の方法において検出またはその量の決定対象の腫瘍関連抗原もしくはその一部量は、細胞内の、細胞表面に、またはMHC分子との複合体として存在する。
【0081】
本発明によると、腫瘍関連抗原もしくはその一部の検出、または腫瘍関連抗原もしくはその一部の量の決定は、前記腫瘍関連抗原または前記その一部に特異的に結合する抗体を使用して行うことができる。
【0082】
本発明によると、抗体の検出または抗体の量の決定は、前記抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを使用して行うことができる。
【0083】
本発明によると、腫瘍関連抗原もしくはその一部および/またはそれとMHC分子の複合体に対して特異的であるTリンパ球の、検出または量の決定は、前記腫瘍関連抗原または前記その一部とMHC分子との複合体を提示する細胞を使用して行うことができる。
【0084】
加えて、Tリンパ球は、MHC分子と腫瘍関連抗原もしくはその一部との複合体によって特異的刺激されて誘発される、それらの増殖、それらのサイトカイン生産およびそれらの細胞傷害活性によって、検出することができる。Tリンパ球は、組換えMHC分子、または一つ以上の腫瘍関連抗原の免疫原性フラグメントと二つ以上のMHC分子の複合体を利用して検出することもできる。
【0085】
本発明の方法における検出または量の決定に使用される薬剤、例えば、オリゴ−もしくはポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質もしくはペプチドまたは細胞は、好ましくは、検出可能な様式で、詳細には、検出可能なマーカー、例えば放射性マーカーまたは酵素マーカーによって、標識される。
【0086】
特定の態様において、本発明は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾病を治療、予防、診断またはモニタリングする方法に関し、この方法は、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合する、および治療薬または診断薬にカップリングしている抗体の投与を含む。
【0087】
前記抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。さらなる実施形態において、前記抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体または、天然抗体のフラグメントである。
【0088】
そのような生体サンプルとしては、例えば、血液、血清、骨、髄、痰、気管支吸引液、および/または気管支洗浄液が挙げられる。
【0089】
一つの特定の態様において、本発明は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾病に罹患している患者の治療方法に関し、この方法は、(i)前記患者、または同じ種の別の個体、特に、健常な個体、または異なる種の個体、のいずれかから得られた免疫反応性細胞を含有するサンプルを提供すること、(ii)細胞溶解性T細胞の産生が前記腫瘍関連抗原またはその一部に対して有利に働く条件下で、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞と前記サンプルを接触させること、および(iii)細胞溶解性T細胞を、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞を溶解させるのに適する量で患者に導入することを含む。一つの実施形態において、前記方法は、得られた細胞溶解性T細胞のT細胞受容体をクローニングすること、およびそのT細胞受容体をコードする核酸を、前記患者、または同じ種の別の個体、特に、健常な個体、または異なる種の個体、いずれかから得られたT細胞に移入することを含む、それらのT細胞は、このようにして所望の特異性を受け、例えば(iii)のもとで、患者に導入することができる。
【0090】
一つの実施形態において、前記宿主細胞は、MHC分子を内因的に発現する。さらなる実施形態において、前記宿主細胞は、MHC分子および/または前記腫瘍関連抗原もしくはその一部を組換え発現する。
【0091】
好ましくは、前記宿主細胞は、その表面に、MHC分子によって前記腫瘍関連抗原またはその一部を提示する。前記宿主細胞は、好ましくは、非増殖性である。
【0092】
好ましい実施形態において、前記宿主細胞は、抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0093】
本発明は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾病の治療法にも関し、この方法は、(i)異常な量の腫瘍関連抗原を発現する患者からの細胞を同定すること、(ii)前記細胞のサンプルを単離すること、(iii)前記細胞を培養すること、および(iv)前記細胞を、それらの細胞の免疫応答の誘発に適する量で、患者に導入することを含む。
【0094】
本発明は、さらに(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸を基準にして縮重している核酸、および(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的である核酸から成る群より選択される核酸に関する。
【0095】
また、本発明は、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、29、31、36、40、42、46、50〜60、63、68および69から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含むタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0096】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸を含む組換え核酸分子、特にDNAまたはRNA分子に関する。
【0097】
本発明は、本発明の核酸または組換え核酸分子を含有する宿主細胞にも関する。
【0098】
前記宿主細胞は、MHC分子をコードする核酸を含むこともできる。一つの実施形態において、前記宿主細胞は、MHC分子を内因的に発現する。
【0099】
さらなる実施形態において、前記宿主細胞は、MHC分子および/あるいは本発明の核酸もしくは組換え核酸分子またはその部分を組換え発現する。
【0100】
好ましくは、前記宿主細胞は、非増殖性である。好ましい実施形態において、前記宿主細胞は、抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0101】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明に従って同定される核酸とハイブリダイズし、および遺伝子プローブとしてまたは「アンチセンス」分子として使用することができるオリゴヌクレオチドに関する。
【0102】
本発明に従って同定される核酸またはその部分とハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドプライマーまたはコンピテントプローブの形態での核酸分子は、例えば、PCR増幅、サザンおよびノーザンハイブリダイゼーションにより、本発明に従って同定される前記核酸に相同である核酸を見つけるために使用することができる。
【0103】
ハイブリダイゼーションは、低ストリンジェンシー下、さらに好ましくは中ストリンジェンシー下、および最も好ましくは高ストリンジェンシー条件下で行うことができる。
【0104】
さらなる態様において、本発明は、(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸を基準にして縮重している核酸、および(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的である核酸から成る群より選択される核酸によってエンコードされる、タンパク質またはペプチドに関する。好ましい実施形態において、本発明は、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、29、31、36、40、42、46、50〜60、63、68および69から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、タンパク質またはペプチドに関する。
【0105】
さらなる態様において、本発明は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の免疫原性フラグメントに関する。前記フラグメントは、好ましくは、MHC分子または抗体に、好ましくは、ヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する。
【0106】
本発明によると、フラグメントは、好ましくは、アミノ酸数が少なくとも6、詳細には、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50の配列を含む。
【0107】
この態様において、本発明は、特に、配列表の配列番号51〜60、68および69から成る群より選択される配列を有するまたは含むペプチド、その一部または誘導体に関する。
【0108】
さらなる態様において、本発明は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部に結合する薬剤に関する。
【0109】
好ましい実施形態において、前記薬剤は、タンパク質またはペプチド、特に、抗体、T細胞受容体またはMHC分子である。
【0110】
さらなる実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、組み合わせ技術によって産生された抗体、または抗体のフラグメントである。
【0111】
一つの好ましい実施形態において、本発明は、(i)本発明に従って同定される腫瘍関連抗原またはその一部と(ii)本発明に従って同定される前記腫瘍関連抗原または前記その一部が結合するMHC分子との複合体に選択的に結合するが、(i)または(ii)のみには結合しない抗体に関する。
【0112】
特に、本発明は、配列表の配列番号51〜60、68および69から成る群より選択される配列を有するまたは含むペプチド、その一部または誘導体に特異的に結合するような薬剤、特に抗体に関する。
【0113】
本発明によると、用語「結合」は、好ましくは、特異的結合に関する。「特異的結合」は、抗体などの薬剤が、エピトープなどのターゲットに、別のターゲットへの結合と比較して特異的に強く結合することを意味する。
【0114】
薬剤は、第二ターゲットの解離定数より低い解離定数(K)を有する第一ターゲットに結合する場合、第二ターゲットと比較して強く第一ターゲットに結合する。
【0115】
好ましくは、その薬剤が特異的に結合するターゲットの解離定数(K)は、その薬剤が特異的に結合しないターゲットの解離定数(K)より、10倍よりさらに、好ましくは20倍よりさらに、さらに好ましくは50倍よりさらに、さらにいっそう好ましくは100倍、200倍、500倍または1000倍よりさらに低い。
【0116】
そうした特異的抗体は、例えば、上述のペプチドを使用して免疫することによって得ることができる。
【0117】
さらに、本発明は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する本発明の薬剤または本発明の抗体と治療薬または診断薬とのコンジュゲートに関する。
一つの実施形態において、前記治療薬または診断薬は、毒素である。
【0118】
さらなる態様において、本発明は、本発明に従って同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を検出するためのキットに関し、このキットは、(i)前記腫瘍関連抗原もしくはその一部をコードする核酸の、(ii)前記腫瘍関連抗原もしくはその一部の、(iii)前記腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する抗体の、および/または(iv)前記腫瘍関連抗原もしくはその一部またはそれらとMHC分子の複合体に対して特異的であるT細胞の、検出または量の決定のための薬剤を含む。
【0119】
一つの実施形態において、前記核酸またはその一部を検出するための薬剤は、前記核酸の選択的増幅のための核酸分子であり、それらは、前記核酸の6〜50、特に、10〜30、15〜30および20〜30の連続したヌクレオチドから成る配列を含む。
(発明の詳細な説明)
【0120】
本発明によると、「参照」、例えば、参照サンプルまたは参照生物は、試験サンプルまたは試験生物、すなわち患者から本発明の方法において得られた結果を相関および比較するために使用することができる。
【0121】
一般に、前記参照生物は、健常な生物、詳細には、癌に罹患していない生物である。
【0122】
「参照値」は、十分に多数の参照を測定することにより、ある参照から経験的に決定できる。
【0123】
好ましくは、参照値は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも50、または好ましくは少なくとも100の参照を測定することによって決定される。
【0124】
核酸の「誘導体」は、単一または多数の、例えば、少なくとも2、少なくとも4、または少なくとも6、好ましくは3以下、4以下、5以下、6以下、10以下、15以下または20以下のヌクレオチドの置換、欠失および/または付加が、前記核酸に存在することを意味する。さらに、用語「誘導体」は、ヌクレオチド塩基に基づく核酸の、糖またはリン酸に基づく化学的誘導体も含む。用語「誘導体」は、自然に発生しないヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含有する核酸も含む。
【0125】
本発明によると、核酸は、好ましくは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。本発明によると、核酸は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産高分子および化学合成分子を含む。
【0126】
本発明によると、核酸は、1本鎖または2本鎖および線状または共有結合環状閉鎖分子として存在し得る。
【0127】
本明細書で用いる場合、用語「RNA」は、少なくとも一つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。
【0128】
「リボヌクレオチド」は、ベータ−D−リボ−フラノース部分の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。
【0129】
この用語は、2本鎖RNA、1本鎖RNA、単離したRNA、例えば、部分精製RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産RNA、ならびに一または二以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変により天然RNAとは異なる改変RNAを含む。そうした改変としては、非ヌクレオチド材料の、例えば、RNAの末端(単数もしくは複数)への、または内部での、例えば、RNAの一または二以上のヌクレオチドでの付加を挙げることができる。
【0130】
RNA分子中のヌクレオチドは、非鎖ヌクレオチド、例えば、非天然ヌクレオチドまたは化学合成ヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドも包む場合がある。これらの改変RNAは、類似体または非天然RNAの類似体と呼ばれることもある。
【0131】
本発明に記載する核酸は、好ましくは、単離されている。
本発明によると、用語「単離した核酸」は、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、インビトロで増幅されたこと、(ii)クローニングによって組換え生産されたこと、(iii)例えば切断およびゲル−電気泳動分画によって、精製されたこと、または(iv)例えば化学合成によって、合成された核酸を意味する。単離した核酸は、組換えDNA法による操作に利用可能な核酸である。
【0132】
ある核酸は、別の核酸に、それら二つの配列が互いにハイブリダイズでき、安定な2本鎖を形成できる場合、「相補的」であり、このハイブリダイゼーションは、好ましくは、ポリヌクレオチド間で特異的ハイブリダイゼーションできる条件(ストリンジェント条件)のもとで行われる。
【0133】
ストリンジェント条件は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrookら,Editors,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York,1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら,Editors,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに記載されており、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5×SSC、0.02% Ficoll、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaHPO(pH7)、0.5% SDS、2mM EDTA)中65℃でのハイブリダイゼーションを指す。
【0134】
ハイブリダイゼーション後、そのDNAを導入した膜を、例えば、2×SCC、室温で洗浄し、その後、0.1〜0.5×SCC/0.1×SDS中、68℃以下の温度で洗浄する。
【0135】
本発明によると、相補的核酸は、少なくとも40%、詳細には、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、および好ましくは、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一のヌクレオチドを有する。
【0136】
用語「同一性百分率」は、最高アラインメント後に得られる、比較対象の二配列間の同一性であり、ヌクレオチドのまたはアミノ酸残基の百分率を示すためのものである。
【0137】
この百分率は、純粋に統計学的なものであり、それら二配列間の差は、ランダムに、且つ、それらの全長にわたって分配される。
【0138】
従来、二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の配列比較は、これらの配列を、それらを最適にアラインした後、比較することによって適便に行い、前記比較をセグメントごとにまたは配列類似の局所的範囲を特定し、比較する「比較領域(window of comparison)」ごとに行っていた。
【0139】
比較のための配列の最適なアラインメントは、手作業に加え、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所ホモロジーアルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.MoI.Biol.48,443の局所ホモロジーアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci .USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって、作成される。
【0140】
比較対象の二つの配列間の同一位置の数を測定し、この数を、比較した位置の数で割り、得られた結果に100をかけることにより同一性百分率を計算して、これら二配列間の同一性百分率を得る。
【0141】
本発明によると、腫瘍関連抗原をコードする核酸は、単独もしくは、他の核酸、特に、異種核酸との組み合わせで存在する。
【0142】
好ましい実施形態において、核酸は、前記核酸に対して相同、または非相同である、発現制御配列または調節配列に機能的に連結される。
【0143】
コーディング配列の発現または転写が、調節配列の制御下または影響下にあるように、それらが、互いに共有結合で連結されている場合、そのコーディング配列とその調節配列は、互いに「機能的に」連結されていることとなる。
【0144】
コーディング配列を機能的タンパク質に翻訳すべき場合には、前記コーディング配列に機能的に連結された調節配列を用いてその調節配列を導入して、そのコーディング配列内でのフレームシフト、または所望のタンパク質もしくはペプチドに翻訳することができない前記コーディング配列が生じないように、前記コーディング配列を転写する。
【0145】
本発明によると、用語「発現制御配列」または「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および遺伝子の発現を調節する他の制御要素を含む。
【0146】
本発明の特定の実施形態において、前記発現制御配列を、調節することができる。調節配列の正確な構造は、種または細胞タイプを関数として変化し得るが、一般に、転写開始および翻訳開始に関与する5'非転写配列および5'非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などを含む。
【0147】
さらに具体的には、5'非転写調節配列は、機能的に連結された遺伝子の転写制御を行うプロモーター配列を含むプロモーター領域である。調節配列は、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列も含む。
【0148】
本発明によると、さらに、核酸は、タンパク質の分泌を制御するペプチドまたはの宿主細胞の前記核酸がエンコードするペプチドをコードする、別の核酸との組み合わせで存在する。
【0149】
本発明によると、核酸は、コード化タンパク質を引き起こすペプチド、または宿主細胞の細胞膜上に結合するまたは前記細胞の特定の細胞器官に区画化させるペプチド、をコードする別の核酸との組み合わせで存在する。
同様に、核酸の組み合わせにより、レポーター遺伝子または任意の「タグ」を表すことが可能である。
【0150】
好ましい実施形態において、本発明によると、組換え核酸は、ベクターであり、適切な場合にはプロモーターを伴って、核酸、例えば本発明に従って同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸、の発現を制御する。
【0151】
用語「ベクター」は、ここではその最も一般的な意味で用いており、ならびに核酸を、例えば、原核細胞および/または真核細胞への導入および適切な場合にはゲノムへの組み込みを可能にする、核酸のためのあらゆる媒介物を含む。
【0152】
この種のベクターは、好ましくは、それらの細胞内で複製され、および/または発現される。媒介物は、例えば、エレクトロポレーション、マイクロプロジェクタイル衝撃、リポソーム投与、アグロバクテリアを利用した導入、またはDNAもしくはRNAウイルスを介した挿入における使用に適用できる。
【0153】
ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスゲノムを含む。
【0154】
本発明に従って同定した腫瘍関連抗原をコードする核酸は、宿主細胞のトランスフェクションに使用することができる。
【0155】
ここでの核酸は、組換えDNAと組換えRNAの両方を意味する。組換えRNAは、DNAテンプレートのインビトロ転写によって作製することができる。
【0156】
さらに、これは、適用前に、安定化配列、キャッピングおよびポリアデニル化によって修飾することができる。
【0157】
本発明によると、用語「宿主細胞」は、外来性核酸を用いて形質転換またはトランスフェクトすることができる任意の細胞を示す。
【0158】
本発明によると、用語「宿主細胞」は、原核細胞(例えば、大腸菌(E.coli))または真核細胞(例えば、樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。
哺乳動物細胞、例えば、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長類からの細胞が、特に好ましい。
【0159】
これらの細胞は、多種の細胞タイプに由来し、霊長類細胞および霊長類細胞系統を含むことができる。
【0160】
具体的には、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄幹細胞、および胚性幹細胞である。さらなる実施形態において、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に、樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0161】
核酸は、宿主細胞内に、単一のコピーの形、または二つ以上のコピーの形で存在し、ならびに一つの実施形態では、宿主細胞において発現される。
【0162】
本発明によると、用語「発現」は、その最も一般的な意味で用いており、ならびにRNAの生産、またはRNAおよびタンパク質の生産を含む。
【0163】
また、「発現」には、核酸の部分的発現を含む。さらに、発現は、一過的に、または安定的に遂行される。哺乳動物細胞における好ましい発現系は、pcDNA3.1およびpRc/CMV(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen)を含み、これらは、選択可能マーカー、例えば、G418に対する耐性を付与する(および従って、安定的にトランスフェクトされた細胞系統の選択を可能にする)遺伝子、およびサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサー−プロモーター配列を含有する。
【0164】
MHC分子が腫瘍関連抗原またはその一部を提示する本発明の場合、発現ベクターが、前記MHC分子をコードする核酸配列も含む。
MHC分子をコードする核酸配列を、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸として同じ発現ベクター上に提示させることができ、または両方の核酸を、異なる発現ベクター上に提示させることができる。後者の場合では、二つの発現ベクターを一つの細胞に共トランスフェクトすることができる。
【0165】
宿主細胞が、腫瘍関連抗原またはその一部もMHC分子も発現しない場合、それらをコードする両方の核酸をその細胞に、同じ発現ベクターでトランスフェクトでき、または異なる発現ベクターでトランスフェクトできる。
【0166】
その細胞が、MHC分子をはじめから発現する場合、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸配列のみをその細胞にトランスフェクトすることができる。
【0167】
本発明は、腫瘍関連抗原をコードする核酸の増幅のためのキットも含む。こうしたキットは、例えば、腫瘍関連抗原をコードする核酸にハイブリダイズする一対の増幅プライマーを含む。
【0168】
前記プライマーは、好ましくは、プライマー二量体の形成を回避するために、前記核酸配列の6〜50、特に、10〜30、15〜30および20〜30の連続したヌクレオチドから成る配列を含み、オーバーラップが無い。
【0169】
前記プラマーの一方は、腫瘍関連抗原をコードする核酸の一つの鎖にハイブリダイズし、他方のプライマーは、その腫瘍関連抗原をコードする核酸を増幅させることができる配列のその相補鎖にハイブリダイズするができる。
【0170】
「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」は、核酸の発現を調節するために、特に、減少させる、ために使用することができる。
【0171】
本発明によると、用語「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」は、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドであって、に生理条件下で、特定の遺伝子を含むDNAに、または前記遺伝子のmRNAにハイブリダイズし、それによって前記遺伝子の転写および/または前記mRNAの翻訳を阻害する、オリゴヌクレオチドを指す。
【0172】
本発明によると、「アンチセンス分子」は、その天然プロモーターに対して逆の配向を有する核酸またはその一部を含有する構造体も含む。
【0173】
核酸またはその一部のアンチセンス転写ものは、酵素を特定する天然mRNAと共に2本鎖を形成することができ、それ故、そのmRNAの蓄積および活性酵素への翻訳を阻害することができる。
【0174】
もう一つの利用可能性としては、核酸を不活性化するリボザイムとして使用できる。本発明に従って好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ターゲット核酸の6〜50、特に、10〜30、15〜30および20〜30の連続したヌクレオチドから成る配列を有し、好ましくは、そのターゲット核酸またはその一部に完全に相補的である。
【0175】
好ましい実施形態において、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、N末端または5'上流部位、例えば、翻訳開始部位、転写開始部位またはプロモーター部位とハイブリダイズする。さらなる実施形態において、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3'非翻訳領域またはmRNAスプライシング部位とハイブリダイズする。
【0176】
一つの実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、一つのヌクレオチドの5'末端ともう一つのヌクレオチドの3'末端が、ホスホジエステル結合によって互いに連結されている、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはこれらの組み合わせから成る。これらのオリゴヌクレオチドは、従来の様式で合成することができ、または組換え生産することができる。
【0177】
好ましい実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、「修飾」オリゴヌクレオチドである。
【0178】
ここで、オリゴヌクレオチドは、そのターゲットに結合するその能力を損なうことなく、例えば、その安定性または治療有効度を増大させる目的で、様々な方法で修飾することができる。本発明によると、用語「修飾オリゴヌクレオチド」は、(i)その少なくとも二つヌクレオチドが、合成ヌクレオシド間結合(つまり、ホスホジエステル結合ではないヌクレオシド間結合)によって互いに連結されている、および/または(ii)核酸内に通常見いだされない化学基で、そのオリゴヌクレオチドが共有結合で連結している、オリゴヌクレオチドを意味する。
【0179】
好ましい合成ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスフェート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホロアミデート、カルバメート、カーボネート、リン酸三エステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0180】
用語「修飾オリゴヌクレオチド」は、共有結合修飾塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドも含む。
【0181】
「修飾オリゴヌクレオチド」は、例えば、その3'位のヒドロキシル基およびその5'位のリン酸基以外の低分子量有機基に共有結合している糖残基を有するオリゴヌクレオチドを含む。
【0182】
修飾オリゴヌクレオチドは、例えば、2'−O−アルキル化リボース残基、またはリボースではない別の糖、例えばアラビノースを含むことができる。
【0183】
オリゴヌクレオチドに関して上で説明したすべての実施形態がポリヌクレオチドにも適用することが可能である。
【0184】
本明細書で用いる場合、「低分子干渉RNA」すなわち「siRNA」は、好ましくは長さが10ヌクレオチドより大きい、さらに好ましくは長さが15ヌクレオチドより大きい、および最も好ましくは長さが18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチドの、単離したRNA分子を意味し、ターゲット遺伝子の同定またはmRNAの分解に用いられる。
【0185】
ヌクレオチド数19〜25の範囲が、siRNAに最も好ましいサイズである。
【0186】
本発明のsiRNAは、部分精製RNA、実質的に純粋なRNA、合成RNAまたは組換え生産RNA、ならびに一または二以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変により天然RNAとは異なる改変RNAを含むことができる。そうした改変としては、非ヌクレオチド材料の、例えば、siRNAの末端(単数もしくは複数)への、もしくはsiRNAの一または二以上の内部ヌクレオチドなどへの付加;siRNAを耐ヌクレアーゼ分解性にする修飾(例えば、2'−置換リボヌクレオチドの使用もしくは糖−リン酸骨格への修飾);またはsiRNA内の一または二以上のヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドを置換することを挙げることができる。
【0187】
さらに、修飾オリゴヌクレオチドについて上記で説明したように、siRNAを修飾して、特に一または二以上のホスホロチオエート結合を導入して、その安定性を増加させることができる。
【0188】
また、siRNAの一方または両方の鎖が、3'−オーバーハングを含むことができる。本明細書で用いる場合、「3'−オーバーハング」は、RNA鎖の3'末端から伸びる少なくとも一つの非対合ヌクレオチドを指す。
【0189】
従って、一つの実施形態において、前記siRNAは、長さが1から約6ヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドを含む)、好ましくは長さが1から約5ヌクレオチド、さらに好ましくは長さが1から約4ヌクレオチド、および特に好ましくは、長さが約2から約4ヌクレオチドの、少なくとも一つの3'−オーバーハングを含む。siRNA分子の両方の鎖が3'−オーバーハングを含む実施形態において、それらのオーバーハングの長さは、各鎖について同じであっても、または異なってもよい。
【0190】
最も好ましい実施形態において、3'−オーバーハングは、そのsiRNAの両方の鎖上に存在し、長さは2ヌクレオチドである。例えば、本発明のsiRNAの各鎖は、ジデオキシチミジル酸(「TT」)またはジウリジル酸(「uu」)などの3'−オーバーハングを含むことができる。
【0191】
あるいは、ピリミジンヌクレオチドを修飾類似体に置換すること、例えば、2'−デオキシチミジンに3'−オーバーハング内のウリジンヌクレオチドを置換することが可能であり、それによりRNAi分解効率に影響を及ぼさない。
【0192】
特に、組織培地において、2'−デオキシチミジン内に2'−ヒドロキシルが存在していないため、3'−オーバーハングのヌクレアーゼ耐性を有意に強化できる。
【0193】
siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、二つの相補的1本鎖RNA分子を含む場合があり、または二つの相補的部分が塩基対合しており、且つ、1本鎖の「ヘアピン」領域によって共有結合で連結されている1本鎖分子を含むことができる。
【0194】
すなわち、センス領域およびアンチセンス領域は、リンカー分子によって共有結合で接続することができる。前記リンカー分子は、ポリヌクレオチドリンカー、または非ヌクレオチドリンカーである。
【0195】
どの理論においても、後者のタイプのsiRNA分子のヘアピン領域は、「ダイサー」タンパク質(またはその等価物)によって細胞間で切断されて、二つの個別の塩基対合RNA分子から成るsiRNAが形成すると考えられている。
【0196】
本明細書で用いる場合、「ターゲットmRNA」は、ダウンレギュレーションのターゲットであるRNA分子を指す。
【0197】
siRNAは、ターゲッティング部位を変えることなくpol III発現ベクターから発現させることができる。
【0198】
pol IIIプロモーターからのRNAの発現は、最初に転写される核酸がプリンであるときにしか有効でないと考えられるからである。
【0199】
本発明のsiRNAは、任意のターゲットmRNA配列(「ターゲット配列」)内の約19〜25の連続したヌクレオチドから成る任意のひと配列にターゲッティングすることができる。siRNAについてのターゲット配列を選択する技術は、例えば、2002年10月11日改定のTuschl T.らの「The siRNA User Guide」(この全開示は、本明細書に参照として取り入れられている)に開示されている。「The siRNA User Guide」は、The world wide web上の、米国、ニューヨークのRockefeller University、Laboratory of RNA Molecular BiologyのDr.Thomas Tuschlが管理するウェブサイトで利用可能であり、そのRockefeller Universityのウェブサイトにアクセスし、「siRNA」のキーワードで検索することにより見つけることができる。
【0200】
従って、本発明のsiRNAのセンス鎖は、そのターゲットmRNA内の約19から約25ヌクレオチドの任意の連続したひと配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0201】
一般に、このターゲットmRNA上のターゲット配列は、好ましくは開始コドンから50から100nt下流で(すなわち、3'方向で)開始する、そのターゲットmRNAと一致する所与のcDNA配列から選択することができる。
【0202】
しかし、ターゲット配列が、5'もしくは3'非翻訳領域、または開始コドンの付近の領域に位置する場合もある。
【0203】
siRNAは、当業者には公知の多数の技術を使用して得ることができる。例えば、siRNAは、当該技術分野において公知の方法、例えば、Tuschlらの米国特許公開出願2002/0086356(この全開示は、本明細書に参照として取り入れられている)に記載されているショウジョウバエインビトロ系、を使用して、化学合成または組換え生産することができる。
【0204】
好ましくは、siRNAは、適切に保護したリボヌクレオシドホスホロアミダイトおよび従来のDNA/RNA合成装置を使用して化学合成する。
siRNAは、二つの別個の相補的RNA分子として、または二つの相補的領域を有する単一のRNA分子として、合成することができる。
【0205】
あるいは、任意の適切なプロモーターを使用して、組換え環状DNAプラスミドまたは線状DNAプラスミドからsiRNAを発現させることもできる。本発明によると、本明細書においてsiRNAの投与または医薬組成物へのsiRNAへの組み込みを指す場合、こうした実施形態を含む。
【0206】
プラスミドからの本発明のsiRNAの発現に適するプロモーターとしては、例えば、U6プロモーター配列またはH1 RNA pol IIIプロモーター配列を含み、サイトメガロウイルスプロモーターが挙げられる。
【0207】
他の適するプロモーターの選択は、当該技術分野における技術の範囲内である。
また、本発明の組換えプラスミドは、特定の組織または特定の細胞内環境でのsiRNAの発現を誘導しまたは調節するプロモーターを含むことができる。
【0208】
組換えプラスミドから発現したsiRNAは、標準的な技術によって培養細胞発現系から単離することができ、または細胞内で発現させることができる。
【0209】
インビボで細胞にsiRNAを輸送するための組換えプラスミドの使用については、より詳細に以下で論じる。
【0210】
siRNAは、二つの別個の相補的RNA分子として、または二つの相補的領域を有する単一のRNA分子として、組換えプラスミドから発現させることができる。
【0211】
siRNAを発現させることに適するプラスミドの選択、siRNAを発現させるために核酸配列をプラスミドに挿入する方法、および対象となる細胞への組換えプラスミドの輸送方法は、当該技術分野における技能の範囲内である。
【0212】
siRNAは、組換えウイルスベクターからインビボの細胞内で発現させることもできる。前記組換えウイルスベクターは、siRNAのエンコード配列、およびそれらのsiRNA配列を発現させるために適する任意のプロモーターを含む。
【0213】
前記組換えウイルスベクターは、特定の組織または特定の細胞内環境でのsiRNAの発現を誘導しまたは調節するプロモーターを含むことができる。
【0214】
siRNAは、組換えウイルスベクターから、二つの別個の相補的RNA分子として、または二つの相補的領域を有する単一のRNA分子として発現させることができる。
【0215】
用語「ペプチド」は、オリゴ−およびポリペプチドを包含し、ならびにペプチド結合によって共有結合で連結された2以上、好ましくは3以上、好ましくは4以上、好ましくは6以上、好ましくは8以上、好ましくは10以上、好ましくは13以上、好ましくは16より多く、好ましくは21以上で、好ましくは8、10、20、30、40または50、特に100以下のアミノ酸を含む物質を指す。
【0216】
用語「タンパク質」は、大きなペプチド、好ましくは、100より多くのアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に、用語「ペプチド」および「タンパク質」は、同義語であり、本明細書では同義で用いている。
【0217】
好ましくは、本発明に従って記載するタンパク質およびペプチドは、単離されている。用語「単離したタンパク質」または「単離したペプチド」は、タンパク質またはペプチドがその天然の環境から分離されていることを意味する。
【0218】
単離したタンパク質またはペプチドは、本質的に精製されている状態にある。用語「本質的に精製されている」は、そのタンパク質またはペプチドに、自然界でまたはインビボで随伴する他の物質が本質的にないことを意味する。
【0219】
こうしたタンパク質およびペプチドは、例えば、抗体を産生する際に、および免疫学的もしくは診断アッセイの際に、または治療薬として、使用することができる。
【0220】
本発明に従って記載するタンパク質およびペプチドは、生体サンプル、例えば組織または細胞から単離することができ、様々な原核または真核発現系において組換え発現させることもできる。
【0221】
本発明のために、タンパク質もしくはペプチドの、またはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。
【0222】
アミノ酸挿入変異体は、アミノ末端融合および/またはカルボキシ末端融合を含み、また単一または二つ以上の特定のアミノ酸配列を有するアミノ酸残基が挿入されている。
【0223】
挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、一または二以上のアミノ酸残基をアミノ酸配列内の特定の部位に挿入するが、ランダム挿入による産物を適切にスクリーニングすることによっても可能である。
【0224】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも一つの残基が除去され、その場所に別の残基が挿入されることを特徴とする。
【0225】
相同タンパク質もしくはペプチド間で保存されないアミノ酸配列内の位置での修飾、および/またはアミノ酸の、類似した特性、例えば疎水性、親水性、電気陰性度、側鎖の体積など、を有する他のものでの置換(保存的置換)が好ましい。
【0226】
保存的置換は、例えば、あるアミノ酸と、置換対象のアミノ酸と同じグループ内の下に列挙する別のアミノ酸との交換に関する:
1.小さな脂肪族の、非極性あるいはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)
2.負のチャージを帯びた残基およびそれらのアミド:Asn、Asp、Glu、Gln
3.正のチャージを帯びた残基:His、Arg、Lys
4.大きな脂肪族の、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)
5.大きな芳香族残基:Phe、Tyr、Trp
【0227】
3残基が、タンパク質構造において特定の役割を果たすため、括弧にて示されている。Glyは、側鎖を有さない唯一の残基であり、これにより鎖に柔軟性を付与する。Proは、独特の配置を有しており、これによりポリペプチド構造の相当な変化を導くことができる。Cysは、分子内、またはもう一つのCysとの分子間のジスルフィド架橋を形成することができる。
【0228】
上で説明したアミノ酸変異体は、公知ペプチド合成技術を利用して、例えば、固相合成(Merrifield,1964)および類似の方法または組換えDNA操作などによって、容易に作製することができる。置換、挿入または欠失を有するタンパク質およびペプチドを作製するためのDNA配列の操作は、例えば、Sambrookら(1989)に詳細に記載されている。
【0229】
本発明によると、タンパク質およびペプチドの「誘導体」は、タンパク質またはペプチドに結合する任意の分子、例えば、カルボキシレート、脂質および/またはタンパク質もしくはペプチド、の単一または多数の置換、欠失および/または付加も含む。
【0230】
用語「誘導体」は、前記タンパク質およびペプチドのすべての機能的化学的等価物にも及ぶ。
【0231】
本発明によると、好ましくは、腫瘍関連抗原の一部またはフラグメントは、それを採取したタンパク質またはペプチドの機能特性を有する。こうした機能特性は、抗体との相互作用、他のペプチドまたはタンパク質との相互作用、核酸の選択的結合および酵素活性を含む。
【0232】
本発明の腫瘍関連抗原の一部またはフラグメントは、好ましくは、その腫瘍関連抗原の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50の連続したアミノ酸から成る配列を含む。
【0233】
本発明の腫瘍関連抗原の一部またはフラグメントは、その腫瘍関連抗原の8以下、特に、10以下、12以下、15以下、20以下、30以下または55以下の連続したアミノ酸から成る配列を含む。腫瘍関連抗原の一部またはフラグメントは、好ましくは、非膜貫通部分、特に、その抗原の細胞外部分に一致する、腫瘍関連抗原の一部である、またはそれらを含有する。
【0234】
本発明の腫瘍関連抗原の好ましい部分またはフラグメントは、特に、インビボでの細胞傷害性Tリンパ球の刺激に適するだけでなく、エクスビボでの治療的養子移入のための拡張または刺激Tリンパ球産生にも適する。
【0235】
本発明によると、腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部またはフラグメントは、上記で定義したような、腫瘍関連抗原および/または前記腫瘍関連抗原の一部もしくはフラグメントを少なくともコードする核酸の部分に関する。
【0236】
腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部またはフラグメントは、好ましくは、そのオーブンリーディングフレームに一致する核酸の部分である。
【0237】
本発明によると、特定の実施形態は、腫瘍関連抗原に由来する「ドミナントネガティブ」タンパク質またはペプチドを生産する方が好ましい。
【0238】
ドミナントネガティブタンパク質またはペプチドとは、細胞機構との相互作用により、細胞機構とのその相互作用から活性タンパク質もしくはペプチドを除いたり、またはその活性タンパク質もしくはペプチドと競合し、それによって前記活性タンパク質の効果を減少させる、不活性タンパク質またはペプチド変異体である。
【0239】
ターゲットタンパク質に特異的に結合する特定の抗体を含有する抗血清は、様々な標準的なプロセスで作製することができる。
【0240】
例えば、Philip Shepherd,Christopher Deanによる「Monoclonal Antibodies: A Practical Approach」ISBN 0−19−963722−9;Ed Harlow,David Laneによる「Antibodies: A Laboratory Manual」ISBN:0879693142およびEdward Harlow,David Lane,Ed Harlowによる「Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO」ISBN 0879695447参照。
【0241】
それによって、アファイン、および天然形の複合膜タンパク質を認識する特異的抗体を産生させることもできる(Azorsaら,J.Immunol.Methods 229:35−48,1999;Andersonら,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods 234:107−116,2000)。
【0242】
これは、治療的に使用することができる抗体の作製だけでなく、多くの診断用途にも特に適する。これに関しては、全タンパク質で、細胞外部分配列で、ならびに生理的にフォールディングした形態のターゲット分子を発現する細胞で免疫することができる。
【0243】
モノクローナル抗体は、伝統的にはハイブリドーマ技術を使用して作製される。(技術の詳細については、Philip Shepherd,Christopher Deanによる「Monoclonal Antibodies: A Practical Approach」ISBN 0−19−963722−9;Ed Harlow,David Laneによる「Antibodies: A Laboratory Manual」ISBN: 0879693142;Edward Harlow,David Lane,Ed Harlowによる「Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO」 ISBN:0879695447参照)。
【0244】
抗体分子の小部分のパラトープ、のみが、抗体のそのエピトープへの結合に関与することは、公知である(Clark,W.R.(1986),The Experimental Foundations of Modern Immunology,Wiley & Sons,Inc.,New York; Roitt,I.(1991),Essential Immunology,7th Edition,Blackwell Scientific Publications,Oxford参照)。
【0245】
そのpFc'およびFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合に関与しない。
【0246】
pFc'領域が酵素的に除去されたまたはpFC'領域なしで産生された抗体は、F(ab')フラグメントと呼ばれ、完全抗体の両方の抗原結合部位を有する。
【0247】
同様に、Fc領域が酵素的に除去されたまたは前記Fc領域なしで産生された抗体は、Fabフラグメントと呼ばれ、無傷抗体分子の一方の抗原結合部位を有する。
【0248】
さらに、Fabフラグメントは、抗体の共有結合L鎖と前記抗体のH鎖の一部とから成り、Fdと呼ばれる。Fdフラグメントは、抗体特異性の主決定因子であり(単一Fdフラグメントは、抗体の特異性を改変することなく、10以下の異なるL鎖と会合することができる)、Fdフラグメントは、単離しても、エピトープに結合する能力を保持している。
【0249】
抗原エピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)およびパラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)は、抗体の抗原結合部分内に位置する。IgG免疫グロブリンのH鎖のFdフラグメントとL鎖のFdフラグメントの両方が、3つの相補性決定領域(CDR1からCDR3)によって、それぞれ、隔てられている4つのフレームワーク領域(FR1からFR4)を含有する。
これらのCDR、特にCDR3領域、さらに特にH鎖のCDR3領域は、大いに、抗体特異性に関与する。
【0250】
これが、非ヒトCDRをヒトFRおよび/またはFC/pFc'領域に共有結合で連結させて機能的抗体を産生することで、「ヒト化」抗体の開発を可能にした。
【0251】
もう一つの例として、WO 92/04381には、マウスFR領域の少なくとも一部がヒト起源のFR領域で置換されているヒト化マウスRSV抗体の産生および使用が記載されている。この種の抗体は、抗原結合能力を有する無傷抗体のフラグメントを含み、多くの場合、「キメラ」抗体と呼ばれる。
【0252】
本発明によると、用語「抗体」は、抗体のF(ab')、Fab、FvおよびFdフラグメント;Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/またはL鎖−CDR3領域が相同ヒト配列または非ヒト配列で置換されている、キメラ抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/またはL鎖−CDR3領域が相同ヒト配列または非ヒト配列で置換されている、キメラF(ab')−フラグメント抗体;FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/またはL鎖−CDR3領域が、相同ヒト配列または非ヒト配列で置換されている、キメラFab−フラグメント抗体;ならびにFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が、相同ヒト配列または非ヒト配列で置換されているキメラFd−フラグメント抗体も含む。
【0253】
用語「抗体」は、「1本鎖」抗体も含む。
【0254】
本発明は、腫瘍関連抗原に特異的に結合するタンパク質およびペプチドも含む。この種の結合物質は、例えば、免疫された形態で簡単に溶液中で作製することができる縮重ペプチドライブラリによって、または同様にしてファージ・ディスプレイ・ライブラリによっても、得ることができる。
【0255】
同様に、一または二以上のアミノ酸を有するペプチドのコンビナトリアルライブラリを作製することもできる。さらに、ペプトイドおよび非ペプチド合成残基のライブラリを作製することもできる。
【0256】
腫瘍関連抗原を発現する細胞および組織を表示するために特定の診断用物質に抗体をカップリングさせることもできる。さらに、治療に有用な物質にそれらをカップリングさせることもできる。
【0257】
診断用物質は、(i)検出可能なシグナルを出し;(ii)第二標識と相互作用して、第一もしくは第二標識、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)から出た検出可能なシグナルを修飾し;(iii)電荷、疎水性、形状もしくは他の物理的パラメータによって移動度、例えば電気泳動移動度、に影響を及ぼす、または(iv)捕捉部分、例えば、親和性、抗体/抗原もしくはイオン錯体形成を生じさせる、ように機能する任意の標識、を含む。蛍光標識;発光標識;発色団標識;放射性同位体標識;同位体標識、好ましくは安定な同位体標識;同重体標識;酵素標識;粒子標識、特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識;小さな有機分子、例えばビオチン;受容体または結合分子、例えば細胞付着タンパク質もしくはレクチンのリガンド;結合剤の使用により検出することができる、核酸および/またはアミノ酸残基を含む標識配列などのような構造が、標識として適する。
【0258】
診断物質は、限定されないが、硫酸バリウム、ヨーセタム酸、ヨーパン酸、カルシウムイポデート、ジアトリゾエートナトリウム、メグルミンジアトリゾエート、メトリザミド、チロパノエートナトリウムおよび放射線診断薬(陽電子放射体、例えばフッ素−18および炭素−11)、ガンマ線放射体、例えばヨウ素−123、テクネチウム−99m、ヨウ素−131およびインジウム−111、核磁気共鳴用核種、例えばフッ素およびガドリニウム、を含む)を含む。
【0259】
本発明によると、用語「治療に有用な物質」は、治療効果を発揮することができる任意の分子を意味する。本発明によると、治療に有用な物質は、好ましくは、一または二以上の腫瘍関連抗原を発現する細胞に選択的に誘導されるものであり、抗癌剤、放射性ヨウ素標識化合物、毒素、細胞増殖抑制薬または細胞溶解薬などを含む。
【0260】
抗癌剤は、例えば、アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロランブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビジン、デカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロン−α、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトタン、プロカルバジンHCl、チオグアニン、硫酸ビンブラスチンおよび硫酸ビンクリスチンを含む。
【0261】
他の抗癌剤は、例えば、Goodman and Gilman,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,8th Edition,1990,McGraw−Hill,Inc.、特に、Chapter 52(Antineoplastic Agents(Paul Calabresi and Bruce A.Chabner))に記載されている。
【0262】
毒素は、タンパク質、例えば、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素または緑膿菌外毒素であり得る。残留毒素が、コバルト−60などの高エネルギー放出性放射性核種である場合もある。
【0263】
用語「主要組織適合性複合体」または「MHC」は、すべての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体を指す。MHCタンパク質または分子は、T細胞受容体(TCR)による認識のためにペプチドに結合し、それらを提示することにより、正常免疫反応における白血球と抗原提示細胞の間のシグナリングに関与する。
【0264】
MHC分子は、細胞内プロセッシング区画内のペプチドに結合し、T細胞による認識のために抗原提示細胞の表面にこれらのペプチドを提示する。HLAとも呼ばれるヒトMHC領域は、染色体6上に位置し、クラスIおよびクラスII領域を含む。
【0265】
本発明のすべての態様のうちの一つの好ましい実施形態において、MHC分子は、HLA分子である。
【0266】
本明細書で用いる場合、「減少させる」または「阻害する」は、レベル、例えば、タンパク質またはmRNAのレベルに関して、参照サンプル(例えば、siRNAで処理していないサンプル)と比較して、好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%以上、および最も好ましくは75%以上のレベルで総合的減少を生じさせることができることを意味する。
【0267】
このRNAまたはタンパク質発現の減少または阻害は、ターゲットにしたmRNA切断または分解により発生し得る。
【0268】
タンパク質発現または核酸発現についてのアッセイは、当該技術分野において公知であり、例えば、タンパク質発現についての、ELISA、ウエスタンブロット分析、およびRNAについての、ノーザンブロットまたはリボヌクレアーゼ保護アッセイを含む。
【0269】
本発明によると、用語「患者」は、人類、非ヒト霊長類または別の動物、特に哺乳類、例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯動物、例えばマウスおよびラットを意味する。特に好ましい実施形態において、患者は、人類である。
【0270】
本発明によると、「異常発現」は、発現が、健常な個体における状態と比較して改変される、好ましくは増加されることを意味する。
【0271】
本発明によると、用語「増加した」または「増加した量」は、好ましくは、少なくとも10%、特に、少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の増加を意味する。物質の量は、それが、試験サンプルでは検出できるが、参照サンプルでは不在または検出できない場合、その参照サンプルと比較したその試験サンプル、例えば生体サンプル、の増加でもある。
【0272】
本発明によると、用語「疾病」は、腫瘍関連抗原が発現または異常発現される、あらゆる病的状態を指す。本発明によると、「異常発現」は、発現が、健常な個体における状態と比較して改変される、好ましくは増加されることを意味する。
【0273】
発現の増加は、少なくとも10%、特に、少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の増加を指す。一つの実施形態において、腫瘍関連抗原は、罹病個体の組織においてしか発現されず、一方、健常な個体における発現は、抑制される。
【0274】
こうした疾病の一例は、癌であり、本発明によると、用語「癌」は、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、血液の癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸の癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、胃腸の癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳、鼻および咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌ならびにこれらの転移を含む。
それらの例は、肺癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、または上に記載した癌タイプまたは腫瘍の転移である。本発明によると、癌という用語は、癌転移も含む。
【0275】
「腫瘍」は、急速な無制御細胞増殖によって増殖し、新たな増殖停止を開始させる刺激後も増殖し続ける、異常な細胞または組織群を意味する。
腫瘍は、構造的機構および正常な組織との機能協調を部分的にまたは完全に欠如しており、通常、異質な組織塊を形成し、これは、良性である場合も、または悪性である場合もある。
【0276】
「転移」は、癌細胞のその原発部位から身体の別の部分への拡大を意味する。転移の形成は、非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍からの悪性細胞の解離、細胞外基質の浸潤、体腔および血管に入るための内皮基底膜侵入、およびその後、血液により輸送された後、
ターゲット器官の浸潤に依存する。最後に、ターゲット部位での新たな腫瘍の増殖は、血管形成に依存する。
腫瘍転移は、残存した腫瘍細胞または腫瘍成分が転移能力を維持および発達できるので、多くの場合、原発腫瘍の除去後でさえ発生する。一つの実施形態において、本発明の用語「転移」は、原発腫瘍および局所リンパ節系から遠く離れた転移を示す「遠隔転移」に関する。
【0277】
本発明によると、生体サンプルは、体液を含む組織サンプル、および/または細胞サンプルであってもよく、ならびに従来の様式で、例えば、パンチ生検を含む組織生検により、および血液、気管支吸引液、痰、尿、糞便または他の体液の採取により、得ることができる。本発明によると、用語「生体サンプル」は、生体サンプルのフラグメントも含む。
【0278】
本発明によると、用語「免疫反応性細胞」は、適切な刺激で免疫細胞(例えば、B細胞、Tヘルパー細胞または細胞溶解性T細胞)に成熟することができる細胞を意味する。
【0279】
免疫反応性細胞は、CD34造血幹細胞、未成熟T細胞および成熟T細胞ならびに未成熟B細胞および成熟B細胞を含む。腫瘍関連抗原を認識する細胞溶解性T細胞またはTヘルパー細胞の産生を望む場合、免疫反応性細胞と、腫瘍関連抗原を発現する細胞とを、細胞溶解性T細胞およびTヘルパー細胞の産生、分化および/または選択に有利である条件下で接触させる。抗原にさらされるとT細胞前駆体が細胞溶解性T細胞に分化することは、その免疫系のクローン選択に似ている。
【0280】
用語「T細胞」および「Tリンパ球」は、本明細書では同義で用いており、Tヘルパー細胞、および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞を包含する。
【0281】
いくつかの治療方法は、患者の免疫系の反応に基づき、一つ以上の腫瘍関連抗原を提示する癌細胞などの抗原提示細胞の溶解を生じさせる。
【0282】
これに関連して、例えば、腫瘍関連抗原とMHC分子の複合体に特異的な自己細胞傷害性Tリンパ球を、細胞異常を有する患者に投与することが挙げられる。そうした細胞傷害性Tリンパ球のインビトロでの産生は、公知である。
【0283】
T細胞を分化させる方法の一例は、WO−A−9633265において見出すことができる。一般に、血液細胞などの細胞を含有するサンプルを患者から採取し、それらの細胞を、前記複合体を提示し、細胞傷害性Tリンパ球を増殖させることができる細胞(例えば、樹状細胞)と接触させる。そのターゲット細胞は、トランスフェクトされた細胞、例えばCOS細胞であってもよい。
【0284】
これらのトランスフェクトされた細胞は、それらの表面上に所望の複合体を提示し、ならびに細胞傷害性T細胞と接触させると、細胞傷害性T細胞が増殖するよう刺激する。その後、それらのクローン増幅させた自己細胞傷害性Tリンパ球を患者に投与する。
【0285】
抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を選択するもう一つの方法では、MHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光原性四量体を、細胞傷害性Tリンパ球の特異的クローンを得るために使用する(Altmanら,Science 274:94−96,1996; Dunbarら,Curr.Biol.8:413−416,1998)。
【0286】
本発明は、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)を、治療対象の患者の細胞傷害性Tリンパ球と組み合わせて、特定の細胞傷害性Tリンパ球を増殖させる、養子移入と呼ばれる治療方法(Greenberg,J.Immunol.136(5):1917,1986; Riddelら,Science 257:238,1992; Lynchら,Eur.J.Immunol.21:1403−1410,1991; Kastら,Cell 59:603−614,1989)も含む。
【0287】
増殖した細胞傷害性Tリンパ球を、その後、特定の異常細胞が特定の複合体を提示する細胞異常を有する患者に投与する。その後、それらの細胞傷害性T細胞が異常細胞を溶解し、それによって、所望の治療効果が達成される。
【0288】
さらに、所望の複合体を提示する細胞(例えば、樹状細胞)は、健常な個体または別の種(例えばマウス)の細胞傷害性Tリンパ球と組み合わせることができ、これにより、高い親和性で特定の細胞傷害性Tリンパ球を増殖させることができる。
これらの増殖した特定のTリンパ球の高親和性T細胞受容体をクローニングし、場合によっては、様々な程度にヒト化し、こうして得られたT細胞受容体を、その後、例えばレトロウイルスベクターを使用して、遺伝子導入により、患者のT細胞に形質導入することができる。
【0289】
その後、これらの遺伝子改変Tリンパ球を使用して、養子移入を行うことができる(Stanislawskiら,Nat Immunol.2:962−70,2001; Kesselsら,Nat Immunol.2:957−61,2001)。
【0290】
養子移入は、本発明に従って適用することができる治療法の形態に限られない。細胞傷害性T細胞は、それ自体が公知の様式で、インビボで産生させることもできる。
【0291】
一つの方法は、前記複合体を発現する非増殖性細胞を使用する。この場合に使用される細胞は、その複合体を、通常、発現する細胞、例えば、放射線照射腫瘍細胞、またはその複合体(すなわち、抗原性ペプチドとその提示MHC分子)の提示に必要な一方もしくは両方の遺伝子をトランスフェクトした細胞となる。
【0292】
もう一つの好ましい形態は、例えばリポソーム移入によりまたはエレクトロポレーションにより、細胞に導入することができる組換えRNAの形態で腫瘍関連抗原を導入する。
その結果、細胞は、対象の複合体を提示し、後に増殖する自己細胞傷害性Tリンパ球によって認識される。
【0293】
アジュバントと腫瘍関連抗原またはそのフラグメントを併用して、抗原提示細胞へのインビボでの導入を可能にすることにより、同様の効果を達成することができる。腫瘍関連抗原またはそのフラグメントは、タンパク質として、DNAとして(例えば、ベクター内DNA)またはRNAとして例示できる。
【0294】
腫瘍関連抗原は、MHC分子のためのペプチドパートナーを生じさせるようにプロセッシングし、一方、そのフラグメントは、さらなるプロセッシングを必要とせずに提示させることができる。
【0295】
後者は、特に、これらがMHC分子に結合できる場合の事例である。樹状細胞は、有効な免疫応答に必要なTヘルパー細胞応答も生じさせることができるので、完全抗原が、樹状細胞によってインビボでプロセッシングされる投与形式が好ましい(Ossendorpら,Immunol Lett.74:75−9,2000; Ossendorpら,J.Exp.Med.187:693−702,1998)。
【0296】
一般に、有効量の腫瘍関連抗原を患者に、例えば、内皮注射によって投与することができる。しかし、注射は、リンパ節の節内に行うこともできる(Maloyら,Proc Natl Acad Sci USA 98:3299−303,2001)。
【0297】
本発明に従って記載する医薬組成物および治療方法は、本明細書に記載する疾病の治療または予防のための免疫処置またはワクチン接種にも使用することができる。
【0298】
本発明によると、用語「免疫処置」または「ワクチン接種」は、好ましくは、抗原に対する免疫応答の増加または活性化に関する。腫瘍関連抗原またはそれらをコードする核酸を使用した癌に対する免疫作用を試験するために、動物モデルを使用することができる。
【0299】
例えば、ヒト癌細胞をマウスに導入して腫瘍を生じさせ、腫瘍関連抗原をコードする一または二以上の核酸を投与することができる。核酸による免疫処置の有効性についての一つの尺度として、癌細胞に対する効果(例えば、腫瘍サイズの減少)を測定することができる。
【0300】
免疫処置またはワクチン接種のための組成物の一部として、好ましくは、免疫応答を誘導するためまたは免疫応答を増大させるために、一または二以上の腫瘍関連抗原またはそれらの刺激性フラグメントを一または二以上のアジュバントと一緒に投与する。
【0301】
アジュバントは、腫瘍関連抗原に導入され、または刺激性フラグメントと一緒に投与して、免疫応答を強化する物質である。アジュバントは、(細胞外にまたはマクロファージ内に)抗原保有者(reservoir)を生じさせ、マクロファージを活性化し、および/または特定のリンパ球を刺激することによって、免疫応答を強化することができる。
【0302】
アジュバントは公知であり、限定されないが、モノホスホリル脂質A(MPL、SmithKline Beechem)、サポニン、例えばQS21(SmithKline Beechem)、DQS21(SmithKline Beechem;WO 96/33739)、QS7、QS17、QS18およびQS−L1(Soら,Mol.Cells 7:178−186,1997)、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、ビタミンE、モンタナイド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Kreigら,Nature 374:546−9,1995参照)、ならびに生体分解性油、例えばスクアレンおよび/またはトコフェロール、から調製される様々な油中水型乳剤を含む。
【0303】
好ましくは、ペプチドをDQS21/MPLとの混合物で投与する。DQS21のMPLに対する比は、一般には約1:10から10:1、好ましくは約1:5から5:1、および特に好ましくは約1:1である。ヒトに投与するためのワクチン製剤は、一般に、DQS21およびMPLを約1μgから約100μgの範囲で含有する。
【0304】
そうしたサイトカインは、例えば、ワクチンの保護作用を増大させることが証明されたインターロイキン−12(IL−12)(例えば、Science 268:1432−1434,1995参照)、GM−CSFおよびIL−18を含む。
【0305】
免疫応答を強化する多数の化合物があり、従って、ワクチン接種の際に使用することができる。前記化合物は、タンパク質または核酸、例えばB7−1およびB7−2(それぞれ、CD80およびCD86に対応する)の形態で得られる共刺激分子を含む。
【0306】
本発明は、核酸、タンパク質またはペプチドの投与に提供される。タンパク質およびペプチドは、それ自体公知の様式で、投与することができる。
【0307】
一つの実施形態において、エクスビボ法により、すなわち、患者から細胞を除去し、前記細胞を遺伝子修飾して腫瘍関連抗原を導入し、それらの改変された細胞を患者に再び導入することによって、核酸を投与することができる。
【0308】
この実施形態には、一般に、患者の細胞への遺伝子の機能的コピーをインビトロでの導入し、およびそれらの遺伝子改変細胞をその患者へ再導入することを含む。
【0309】
前記遺伝子の機能的コピーは、それらの遺伝子改変細胞において遺伝子を発現させることができる調節要素の機能的制御下にある。
【0310】
トランスフェクション法および形質導入法は、当業者には公知である。本発明は、ウイルスおよびターゲット制御リポソームなどのベクターを使用して核酸をインビボで投与することを提供する。
本発明によると、核酸の医薬組成物への投与または導入に言及する場合、これは、その核酸がそうしたベクター内に存在する実施形態を含む。
【0311】
好ましい実施形態において、腫瘍関連抗原をコードする核酸を投与する場合、ウイルスまたはウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ポックスウイルス(ワクシニアウイルスおよび弱毒化ポックスウイルスを含む)、セムリキ森林ウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスおよびTyウイルス様粒子から成る群より選択される。
【0312】
アデノウイルスおよびレトロウイルスが特に好ましい。レトロウイルスは、一般に、複製能欠失型である(すなわち、それらは、感染性粒子を生じさせることができない)。
【0313】
核酸を細胞にインビトロまたはインビボで導入する方法は、核酸のトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、DEAEを伴った核酸のトランスフェクション、対象の核酸を有する上記ウイルスでのトランスフェクションまたは感染、リポソーム媒介トランスフェクションなどを含む。
【0314】
特定の実施形態では、核酸を特定の細胞に導入することが好ましい。そうした実施形態において、細胞に核酸を投与するために使用される担体(例えば、レトロウイルスまたはリポソーム)は、結合ターゲット制御分子を有するコードができる。
【0315】
例えば、ターゲット細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体またはターゲット細胞上の受容体のリガンドなどの分子を、前記核酸担体に導入するまたは付着させることができる。好ましい抗体は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体を含む。
【0316】
リポソームを介して核酸を投与することが所望される場合、エンドサイトーシスに関連した表面膜タンパク質に結合するタンパク質結合をリポソーム製剤に組み込むことで、ターゲット制御および/または取り込みを可能にすることができる。
【0317】
こうしたタンパク質は、特定の細胞タイプに特異的なカプシドタンパク質またはそれらのフラグメント、内在タンパク質に対する抗体、細胞内部位にアドレッシングするタンパク質などを含む。
【0318】
本発明の治療用組成物は、医薬適合製剤として投与することができる。こうした製剤は、通常、医薬適合濃度の塩、緩衝物質、保存薬、担体、免疫強化補助物質、例えば、アジュバント、例えばCpGオリゴヌクレオチド、サイトカイン、ケモカイン、サポニン、GM−CSFおよび/またはRNA、ならびに適宜、他の治療活性成分を含有することができる。
【0319】
本発明の治療活性化合物は、注射または注入を含む、任意の従来的経路で投与することができる。
【0320】
この投与は、例えば、経口的に、静脈内的に、腹腔内的に、筋肉内的に、皮下的にまたは経皮的に行うことができる。好ましくは、抗体は、肺エーロゾルによって治療投与される。アンチセンス核酸は、好ましくは、遅速静脈内投与によって投与される。
【0321】
本発明の組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたはさらなる用量と一緒に、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。
【0322】
一または二以上の腫瘍関連抗原が発現する特定の疾病または特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは、その疾病の経過の抑制に関する。
【0323】
これは、その疾病の進行を遅らせること、特に、その疾病の進行を中断させまたは逆行させることを含む。
【0324】
ある疾病またはある状態の治療において所望の反応が、前記疾病または前記状態の発現の遅延または発現の予防である場合もある。
【0325】
本発明によると、癌の診断または治療は、既に形成した、または形成するかもしれない転移癌の診断または治療も含む。
【0326】
本発明によると、用語「処置」は、治療的および予防的処置、すなわち、予防を含む。
【0327】
本発明の組成物の有効量は、治療すべき状態、その疾病の重症度、患者の個々のパラメータ(年齢、生理状態、サイズおよび体重を含む)、治療継続期間、(もしあれば)併用する治療のタイプ、特定の投与経路および類似の因子に依存すると考えられる。
【0328】
本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、ならびに所望の反応または所望の効果を生じさせるために有効な量の治療活性物質を含有する。
【0329】
本発明の組成物の投与用量は、様々なパラメータ、例えば、投与のタイプ、患者の状態、所望の投与期間などに依存し得る。患者における反応が最初の用量では不十分である場合、さらに多い用量(または別の、より局所的な投与経路によって達成される有効にさらに多い用量)を使用することができる。
【0330】
治療のため、または免疫応答を生じさせるもしくは増大させるために、一般には1ngから1mg、好ましくは10ngから100μgの腫瘍関連抗原の用量が処方され、投与される。腫瘍関連抗原をコードする核酸(DNAおよびRNA)の投与が所望される場合、1ngから0.1mgの用量が処方され、投与される。
【0331】
本発明の医薬組成物は、一般に、医薬として適合量でおよび医薬適合性組成物として投与される。
【0332】
用語「医薬適合性」は、その医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性材料を指す。
【0333】
この種の製剤は、通常、塩、緩衝物質、保存薬、担体、および適宜他の治療活性化合物を含有することができる。医薬品として使用されるとき、前記塩は、医薬適合性を有しなければならない。
【0334】
しかし、医薬適合性を有しない塩でも、医薬適合を有する塩の調製に使用することができ、本発明に含むことができる。
【0335】
この種の薬理適合性および医薬適合性を有する塩は、限定的されないが、次の酸から調製される:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。医薬適合性を有する塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩として、調製することもできる。
【0336】
本発明の医薬組成物は、医薬適合性の担体を含むことができる。本発明によると、用語「医薬適合性を有する担体」は、ヒトへの投与に適する一または二以上の相溶性固体または相溶性液体フィラー、希釈剤または封入物質を指す。
【0337】
用語「担体」は、容易に適用するために活性成分と併用される天然または合成天然の有機成分または無機成分を指す。本発明の医薬組成物の成分は、通常、所望の医薬的効能を実質的に害する相互作用が発生するようなものではない。
【0338】
本発明の医薬組成物は、適する緩衝物質、例えば、塩での酢酸、塩でのクエン酸、塩でのホウ酸および塩でのリン酸を含有することができる。
【0339】
本医薬組成物は、適宜、適する保存薬、例えば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールも含有することがある。
【0340】
本医薬組成物は、通常、均一な剤形で提供され、ならびにそれ自体公知の様式で調製することができる。本発明の医薬組成物は、例えば、カプセル、錠剤、ロゼンジ、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル、または乳剤の形態とすることができる。
【0341】
非経口投与に適する組成物は、通常、活性化合物の滅菌した水性または非水性製剤を含み、好ましくは、この製剤が、受容者の血液と等張であることを含む。
相溶性担体および相溶性溶媒の例は、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、通常は滅菌固定油が溶解媒体または懸濁媒体として使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0342】
本発明は、以下に示す図面および実施例により詳細に説明されるが、これら図面および実施例は説明としてのみ用いられるのであり、限定として理解されるべきではない。当業者は、本記載および本実施例に基づいてさらなる実施形態に拡げることができるものであり、これらも本発明により保護される。
実施例:
材料および方法
本明細書において述べる技術および方法は、それ自体が公知の様式で行い、例えば、Sambrookら,Molecular Cloning: A Laboratory
Manual,2nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されている。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、それらのメーカーの情報に従って行う。
【0343】
RNA抽出、ポリ−d(T)プライムドcDNAの作製および従来のRT−PCR分析
【0344】
イソチオシアン酸グアニジウムをカオトロピック剤として使用することにより、天然組織材料から全RNAを抽出した(Chomczynski & Sacchi,Anal.Biochem.162:156−9,1987)。酸性フェノールで抽出し、イソプロパノールで沈殿させた後、前記RNAをDEPC処理水に溶解した。
【0345】
4μgの全RNAからのファーストストランドcDNA合成を、Superscript II(Invtrogen)により、メーカーの情報に従って、20μL反応混合物中で行った。使用したプライマーは、dT(18)オリゴヌクレオチドであった。cDNAの完全性および量を、30サイクルPCRでのp53の増幅によってチェックした((配列番号33、34)、ハイブリダイゼーション温度 67℃)。
【0346】
多数の正常組織および腫瘍からファーストストランドcDNAのアーカイブを作製した。発現研究のために、これらのcDNAの0.5μLを、GOI特異的プライマー(下記参照)および1UのHotStarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)を使用して、30μLの反応混合物中で増幅させた。各反応混合物には、150μM dNTP、0.3μMの各プライマー、および3μLの10×反応緩衝液を含有させた。
【0347】
前記プライマーが、二つの異なるエキソン内に位置するようにそれを選択し、偽陽性結果となるゲノムDNAの汚染による干渉の排除を、非逆転写DNAをテンプレートとして検査することによって確認した。
【0348】
15分、95℃でHotStarTaq DNAポリメラーゼを活性化した後、35サイクルのPCRを行った(94℃で0.5分、特定のハイブリダイゼーション温度で0.5分、72℃で0.5分、そして72℃で6分の最終伸長)。
【0349】
この20μLの反応物を、臭化エチジウム染色アガロースゲルで分画し、分析した。
【0350】
ランダム六量体プライムドcDNAの作成および定量的リアルタイムPCR
【0351】
幾つかの遺伝子発現をリアルタイムPCRで定量した。PCR産物を、SYBR Greenをインターカレートするレポーター色素として使用して検出した。
【0352】
SYBR Greenのレポーター蛍光は、溶解状態では抑制され、その色素は、2本鎖DNAフラグメントに結合した後にしか活性しない。各PCRサイクル後のGOI特異的プライマーを使用した特異的増幅の結果としてのSYBR Green蛍光が増加することを定量に利用する。ターゲット遺伝子の発現は、絶対定量するか、調査対象の組織において定常発現するコントロール遺伝子の発現と比較して定量する。
【0353】
発現は、いわゆるハウスキーピング遺伝子としての18s RNAに対してサンプルを正規化した後、ΔΔ−Ct法(米国、PE Biosystems)を使用して測定した。反応は、二重で行い、三重で判定した。QuantiTect SYBR Green PCRキット(Qiagen,Hilden)をそのメーカーの取扱説明書に従って使用した。cDNAは、上記で説明したプロトコルにしたがってランダムプライマー(Invitrogen)を用いて合成した。
【0354】
このPCR(センスプライマー 300nM、アンチセンスプライマー 300nM;95℃、15分間の初期変性;30秒間、95℃;30秒間のアニーリング;30秒間、72℃;40サイクル)に、30μLの全量中、各5μLの希釈cDNAを用いた。使用したプライマーの配列は、それぞれの実施例で示す。
【0355】
クローニングおよびシークエンス分析
完全長および遺伝子フラグメントのクローニングを従来の方法によって行った。配列を確認するために、校正ポリメラーゼpfu(Stratagene)を使用して、対応する逆遺伝子を増幅させた。
【0356】
PCR完了後、HotStarTaq DNAポリメラーゼによりアデノシンをそのアンプリコンの末端にライゲートして、メーカーの取扱説明書に従ってそれらのフラグメントをTOPO−TAベクターにクローニングした。塩基配列決定は、業者に委託した。従来の予測プログラムおよびアルゴリズムを使用して、その配列を分析した。
【0357】
細胞増殖分析
siRNA2本鎖をトランスフェクションして24時間後、濃度をふったFCSを添加した培地中で48時間、1×104個の細胞を培養した。
DELFIA細胞増殖キット(Perkin Elmer)をメーカーの取扱説明書に従って使用して新たに合成したDNA鎖へのBrdUの組み込みを、Wallac Victor2 マルチレベルカウンター(Perkin Elmer)で測定して、増殖を分析した。
【0358】
細胞周期分析およびアポトーシス
濃度をふったFCSを添加した培地中で細胞を培養し、48時間後に集菌し、ヨウ化プロピジウムで染色し、その後、フローサイトメトリーDNA含量分析を行った。アポトーシス細胞、および細胞周期のS/G2/M期の細胞を、CellQuest−Software(Becton Dickinson)を使用して定量した。
【0359】
細胞移動
実験開始12時間前に無血清培地中で培養した細胞を、8.0μm多孔質膜を有するトランスウエルチャンバー(BD Biosciences)を用いて、細胞移動アッセイした。siRNA実験のために、細胞を、上記で説明したようなsiRNA2本鎖でトランスフェクションした24時間後、無血清条件に移した。
【0360】
400μLの無血清培養基中の4×104個の細胞をチャンバーの上に添加した。チャンバーの下は、FCS、PDGF−BB(Sigma−Aldrch)またはSDF−1α/CXCL12(R&D Systems)のいずれかを化学誘因剤として添加した800μLの培地を含む。24時間後、前記膜の下側に移動した細胞を氷冷メタノールで固定し、膜を切除し、顕微鏡用スライドの上にのせて、蛍光顕微鏡検査用Hoechst(Dako)にセットした。
【0361】
5回ランダムに選んだ視野内の細胞(倍率100x)を各膜について計数した。すべての実験は、三重で行った。(i)上下のチャンバーに化学誘引剤を添加しない条件、および(ii)上下のチャンバーに化学誘因剤添加した条件で同じ実験をして、細胞のケモキネシスに対する効果を分析した。
【0362】
インビトロ浸潤アッセイ
実験開始12時間前に無血清培地中で培養した細胞を、8.0μm多孔質膜を有するトランスウエルチャンバー(BD Biosciences)を用いて、インビボ浸潤アッセイした。無血清培地中1mg/mLに希釈した100μLのMatrigel(BD Biosciences)で、チャンバーの上を作製した。
ゲル化のために5時間、37℃でチャンバーをインキュベートした。siRNA実験のために、細胞を、上記で説明したようなsiRNA2本鎖でトランスフェクションした24時間後、無血清条件に移した。
【0363】
400μLの無血清培養基中の1×105個の細胞をチャンバーの上に添加した。チャンバーの下は、FCSを化学誘因剤として添加した800μLの培地を含む。24時間後、前記膜の下側の浸潤細胞を氷冷メタノールで固定し、膜を切除し、顕微鏡用スライドの上にのせて、蛍光顕微鏡検査用Hoechst(Dako)にセットした。
【0364】
5回ランダムに選んだ視野内の細胞(倍率100x)を各膜について計数した。すべての実験は、三重で行った。
【0365】
(実施例1)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのISC−468の同定
ISC−468(配列番号:1)は、212個のアミノ酸から成るタンパク質(配列番号:2)をエンコードし、23.6kDaの分子量を有する。
【0366】
これは、妊娠中に発現する胎盤特異的タンパク質として以前に記載されている(Fantら,Mol Reprod Dev.63:430−6,2002)。
【0367】
このタンパク質は、バイオインフォマティクスツール(TMpred,SOUSI)の分析から、aa 1〜23からなる切断可能なシグナルペプチド、それに続く短い推定膜貫通ドメイン(aa 25〜47)を有すると予測される。
【0368】
残りの部分のタンパク質は、細胞外にあると予測され、従って、モノクローナル抗体についてのターゲット構造として、本発明に従って使用することができる。
【0369】
本発明に従って、ISC−468に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:3、4)をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。
【0370】
予想通り、胎盤は、この遺伝子を発現する唯一の健常組織として確認された(図1)。有意な発現は、他のいずれの正常器官組織においてもまったく検出されなかった。最も驚くべきことに、癌被検物を調査したとき、結腸、膵臓、食道、胃、肺、乳房、卵巣、頭頸部、腎臓、前立腺および肝臓の癌腫をはじめとする多数の異種腫瘍タイプにおいて高い、有意なレベルの発現が見つかった(図1および2ならびに表1)。
【0371】
60個の乳癌腫サンプルにおけるISC−468発現を定量的リアルタイムRT−PCR分析した結果、すべてのサンプルの80%が、有意なレベルのISC−468を発現することが明らかになった(図20A、B)。
【0372】
【表1】

【0373】
腫瘍のISC−468トランスクリプトの選択的で高い発現は、以前には知られておらず、本発明において、血清および骨髄における播種性腫瘍細胞の検出ならびに他の組織への転移を検出するためのRT−PCRなどの分子診断法に、利用することができる。
【0374】
この分子は、さらに、治療アプローチのための特異的ターゲットとして使用することができる。
【0375】
本発明に従ってISC−468特異的抗体を産生するために、中でも、以下のペプチドを選択した:配列番号:58、59、60、68、69、2。
【0376】
それらの抗体の特異性は、ISC−468−eGFPトランスフェクト細胞を免疫蛍光分析して確認した(図21aA)。
【0377】
内因発現性乳癌腫細胞系統MCF−7およびBT−549のISC−468の細胞内局在化を、免疫蛍光分析した。MeOH固定細胞(図21aB)または非固定細胞(図21bC)を染色した結果、ISC−468が、前記発現性細胞の細胞質膜に局在していることが明らかとなった。染色の特異性は、ISC−468発現をRNAi誘導でノックダウンし、細胞質膜の染色をなくすことでよって確認した。
【0378】
さらに、ISC−468特異的抗体を、正常乳房および乳癌腫の臨床サンプルにおけるISC−468発現の免疫組織化学的分析に使用した。ISC−468の発現は、正常乳房被検物では検出できなかった(図22A、B)。
【0379】
コントロール的に、乳癌腫被検物は、ISC−468の強い均一な発現を示した(図22C、D)。発現した癌細胞の細胞質膜で強いシグナルを示した。これにより、ISC−468が癌細胞において選択的に発現される膜タンパク質であることが確認される。
【0380】
ISC−468の細胞外ドメインは、本発明において、モノクローナル抗体による免疫診断および治療のためのターゲット構造として使用することができる。加えて、ISC−468は、本発明において、腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用することができる。
【0381】
ISC−468発現のRNAi誘導ノックダウンは、ISC−468 mRNA(配列番号:70〜73)を特異的にターゲッティングするsiRNA2本鎖で細胞にトランス
フェクションすることで可能となる。内因発現性乳癌腫細胞系統MCF−7およびBT−549をトランスフェクションした結果、ISC−468 mRNA発現が安定的で特異的に減少した(図23)。
【0382】
ISC−468発現の生理的役割を洞察するために、幾つかのRNAi系インビトロ細胞アッセイを行った。siRNA2本鎖を乳癌腫細胞系統MCF−7およびBT−549にトランスフェクションし、BrdU系増殖アッセイで分析したところ、それぞれのコントロールと比較して細胞増殖が明瞭に減少した(図24)。
【0383】
FACS系細胞周期分析に結果、G1/S停止に起因して、細胞増殖が抑制されることが示された(図25A、B)。加えて、ISC−468のRNAi誘導ノックダウンにより、AKTリン酸化が阻害され、内因発現性癌細胞におけるAKTシグナリング経路に大いに影響を及ぼすことが示された(図26)。
【0384】
さらに、MCF−7細胞の増殖は、ISC−468特異的ペプチド(配列番号:68、69)に対して産生したISC−468特異的抗体と共に細胞をインキュベートしたとき、影響を与えないコントロール抗体と比較して、減弱した(図27)。
【0385】
これらの結果から、ISC−468は、おそらく前記AKTシグナリング経路などの増殖因子誘導活性化を媒介して、癌細胞を増殖させる重要な要因であることが示された。ISC−468それ自体が、増殖因子、ケモカインまたは他の物質の受容体、共受容体または膜結合シャペロンを提示し得る。
【0386】
さらに、癌細胞の移動能力に対するISC−468発現の影響を分析した。乳癌腫細胞系統MCF−7およびBT−549におけるISC−468発現をRNAi誘導ノックアウトしたところ、トランスウエル移動アッセイの評価から、細胞の走化性、ケモキネシスおよび浸潤が明瞭に減損することが示された(図28A、B、C)。
【0387】
走化性、ケモキネシスおよび浸潤は、癌細胞が他の器官への転移するための重要な要因である。従って、癌細胞におけてISC−468の発現が、癌細胞転移についての陽性要因になり得る。
【0388】
乳癌腫において、ISC−468の発現は、その腫瘍のエストロゲン−受容体の状態と相関している。60個の乳癌腫サンプルにおけるISC−468発現の定量リアルタイムRT−PCR分析の結果、エストロゲン−受容体陽性乳癌腫が受容体−陰性腫瘍より有意に高いISC−468発現レベルを示すことが明らかとなった(図29)。
【0389】
従って、エストロゲン−受容体陽性乳癌腫細胞系統MCF−7において、17β−エストラジオールを処理することで、ISC−468の発現を誘導することができた(図30)。
【0390】
(実施例2)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのISC−507の同定
ISC−507(配列番号:5)は、85.6kDaの分子量を有する754 aaのタンパク質(配列番号:6)をエンコードする。ISC−507は、付着タンパク質および/またはエンドペプチダーゼとして機能するディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ活性を有する亜鉛結合タンパク質ファミリーのメンバーである。
【0391】
このファミリーのメンバーは、受精、神経発生、筋肉発達および免疫応答をはじめとする多数の生体プロセスに関与すると記載されている(Sealsら,Genes Dev.17(l):7−30,2003)。
【0392】
ISC−507は、一つの膜貫通ドメイン(aa 671〜687)、大きなN末端細胞外領域およびより短いC末端細胞質領域を有する。
【0393】
ISC−507発現は、精子の成熟に重大に関与する哺乳動物精巣上体、精巣に隣接する小腺、に特異的に限定されると報告されている。文献によると、ISC−507は、精巣上体から精子表面に輸送され、先体反応中に精子頭に再分配される(Adachiら,Mol Reprod Dev.64:414−21,2003)。
【0394】
ISC−507特異的プライマー(配列番号:7、8)を用いたRT−PCR法の結果、精巣における選択的発現が確認され、ならびに前立腺およびリンパ節由来組織における弱い発現を除き(表2、図4)、他のいずれの正常組織においもISC−507が存在しないことが確認された(表2、図3)。
【0395】
しかし、そして最も驚くべきことに、有意な数の前立腺癌においてISC−507の発現が観察された(図3、4)。このタンパク質が癌に関与することは以前に報告されていなかった。
【0396】
【表2】

【0397】
正常な組織に対して毒性がなく、ならびに前立腺癌のISC−507発現が頻繁で有意なものであるため、本発明によると、このタンパク質は価値のある診断および治療マーカーになる。
【0398】
本発明によると、これは、RT−PCRによる、血清、骨髄、尿における播種性腫瘍細胞の検出および他の器官への転移の検出を含む。加えて、ISC−507の細胞外ドメインは、本発明に従って、モノクローナル抗体による免疫診断および治療のためのターゲット構造として使用することができる。
【0399】
加えて、ISC−507は、本発明に従って、腫瘍特異的免疫応答(TおよびB細胞媒介免疫応答)を誘導するためのワクチン(RNA、DNA、タンパク質、ペプチド)として利用することができる。
【0400】
ISC−507を検出するための抗体は、以下のペプチドおよびタンパク質を用いて産生することができる:配列番号:51、52、53、54、55、6、56および57。
【0401】
本発明によると、ISC−507に結合する抗体は、治療または診断のために有用であり得る。
【0402】
(実施例3)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのISC−466の同定
ISC−466(配列番号:9)は、48.2kDaの分子量を有する426 aaのタンパク質(配列番号:10)をエンコードする。これは、妊娠特異糖タンパクのファミリーに属する。
【0403】
ヒト妊娠特異糖タンパク(PSG)は、妊娠中に胎盤合胞体栄養細胞によって主に生産される、および免疫グロブリンスーパーファミリーの一部であるグループの分子である(Beaucheminら,Exp Cell Res.252(2):243−9,1999)。
他のPSGと同様に、ISC−466も胎盤に限定されると報告されている。
【0404】
本発明に従って、ISC−466に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号11、12)をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。
RT−PCR分析の結果、正常胎盤においてISC−466トランスクリプトが発現し、ならびに胸腺および卵巣において弱い発現が示されている(表3、図5aA)。他のい
ずれの正常器官組織においても有意な発現は検出されなかった。
【0405】
最も驚くべきことに、癌細胞系統を調査した結果、乳癌(図5bC)、肺癌(図5bC)、卵巣癌腫(図5bD)ならびに頭頸部および腎臓癌腫(図5aB)をはじめとする多数の腫瘍タイプにおいて高く、有意なレベルの発現が見つかった。
【0406】
【表3】

【0407】
結腸直腸癌腫にISC−466が存在するという観察結果(Salahshorら,BMC Cancer.5:66,2005)とは対照的に、本発明者らの調査から、本発明において、ISC−466は、頭頸部、乳、卵巣、前立腺癌および黒色腫の診断および治療マーカーとなることが明かとなった。
【0408】
(実施例4)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのISC−518の同定
ISC−518(配列番号:13)は、237 aaの翻訳産物(配列番号:14)をエンコードする。しかし、これまでのところ、利用できる組織分布に関するデータおよび癌への関連付けはない。
【0409】
ISC−518は、バイオインフォマティクス的に予測された仮説遺伝子/タンパク質である。配列分析の結果、このタンパク質が膜貫通ドメイン(aa 102〜118)を有することが明らかになった。細胞外C末端は、細胞表面糖タンパクにある機能的ドメインを特徴とする。
【0410】
本発明に従って、ISC−518に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:15、16)をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。
【0411】
この遺伝子を発現する唯一の正常組織が精巣であることが判明し、一方、これに対して、他のいずれの正常器官においてもISC−518の有意な発現は検出されなかった(図6)。最も驚くべきことに、癌被検物を調査した結果、肝細胞癌腫において高く、有意なレベルの発現が発見された(図7)。
【0412】

【0413】
バイオインフォマティックの結果から、ISC−581がエンコードするタンパク質は細胞表面分子を示すことが分かった。以前には知られていないが、この表面分子を選択的発現することにより、これを、治療、ならびに腫瘍細胞を検出する診断法および腫瘍細胞を除去する治療法の開発のためのターゲットとすることができる。
【0414】
(実施例5)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのISC−477の同定
ISC−477(配列番号:17)は、130 aaの翻訳産物(配列番号:18)をエンコードする。ISC−477は、仮説タンパク質である。公的に利用できる組織分布に関するデータおよび癌への関連付けはない。
【0415】
構造分析からISC−477は、疎水性領域を示し、膜貫通領域またはシグナルペプチドであり得る。
【0416】
本発明に従って、ISC−477に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:19、20)をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。
【0417】
この遺伝子を発現することが判明した正常組織は、胎盤および卵巣だけあった。対照的に、他のいずれの正常器官においてもISC−477の有意な発現は検出されなかった(図8aA)。
【0418】
最も驚くべきことに、癌被検物を調査した結果、肺、卵巣、結腸および胃癌において高く、有意なレベルの発現が見つかった(図8abA〜D)。発現レベルは、正常卵巣の発現より明らかに高い。
【0419】
【表5】

【0420】
(実施例6)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのISC−489の同定
ISC−489(配列番号:21)は、363 aaの翻訳産物(配列番号:22)をエンコードする。このタンパク質は、新たに記載されたGタンパク結合受容体のファミリーのメンバーである。しかし、公的に利用できる組織分布に関するデータおよび癌への関連付けはない。
【0421】
本発明に従って、ISC−489に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:23、24)をRT−PCRにおいて使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。
【0422】
この遺伝子を発現することが判明した正常組織は、胎盤および食道(弱い発現)だけであった。コントロール的に、他のいずれの正常器官においても、ISC−489の有意な発現は検出できなかった(図9aA)。
【0423】
最も驚くべきことに、癌被検物を調査した結果、頭頸部および胃癌において高く、有意なレベルの発現が見つかった(図9aB、9bC)。
【0424】
Gタンパク質結合受容体ファミリーのメンバーとして、ISC−489は、細胞表面にターゲッティングすることができる、7つの膜貫通ドメインと幾つかの細胞外ループを有する膜内在性タンパク質である。
【0425】
【表6】

【0426】
本発明によると、頭頸部癌腫におけるISC−489は顕著に発現し、および予想外に高い出現率を有するので、このタンパク質が非常に興味深い治療および診断マーカーとなる。
【0427】
(実施例7)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのISC−461の同定
ISC−461(配列番号:25)は、47.1kDAの分子量を有する419 aaタンパク質(配列番号:26)をエンコードする。
【0428】
これは、妊娠特異糖タンパクのファミリーに属する。ヒト妊娠糖衣糖タンパク(PSG)は、妊娠中に胎盤合胞体栄養細胞によって主に生産され、および免疫グロブリンスーパーファミリーの一部であるグループの分子である(Beaucheminら,Exp Cell Res.252(2):243−9,1999)。
【0429】
他のPSGと同様に、ISC−461も胎盤に限定されると報告されている。
【0430】
本発明に従って、ISC−461に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:11、27)をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。
【0431】
予想通り、胎盤はこの遺伝子を発現することが確認され、加えて、精巣および卵巣において弱い発現が確認された(図10aAおよび10aB)。他のいずれの正常器官組織においても有意な発現はまったく検出されなかった。
【0432】
最も驚くべきことに、癌由来の組織および癌細胞系統を調査した結果、乳癌(図10b
C)、卵巣癌腫(図10bD)および黒色腫(図10aB、10bC)をはじめとする多数
の腫瘍タイプにおいて高く、有意なレベルの発現が発見された。
【0433】
【表7】

【0434】
本発明のさらなる目的は、診断と治療の両方に利用できるISC−461のスプライス変異体を同定することであった。
【0435】
スプライス変異体の調査の結果、スプライス形態(配列番号:28)およびそれらがエンコードするタンパク質(配列番号:29)を同定することができた。
【0436】
(実施例8)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのISC−465の同定
ISC−465(配列番号:30)は、47.0kDAの分子量を有する419 aaタンパク質(配列番号:31)をエンコードする。
【0437】
これは、妊娠特異糖タンパクのファミリーに属する。ヒト妊娠糖衣糖タンパク(PSG)は、妊娠中に胎盤合胞体栄養細胞によって主に生産され、および免疫グロブリンスーパーファミリーの一部であるグループの分子である(Beaucheminら,Exp Cell Res.252(2):243−9,1999)。
【0438】
他のPSGと同様に、ISC−465も胎盤に限定されると報告されている。
【0439】
本発明に従って、ISC−465に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:11、32)をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。予想通り、胎盤はこの遺伝子を発現す
ることが確認され、加えて、正常卵巣において弱い発現が確認された(図11A)。他のいずれの正常器官組織においても有意な発現はまったく検出されなかった。
【0440】
最も驚くべきことに、癌由来の組織および癌細胞系統を調査した結果、多数の腫瘍タイプ(図11A、11B)、特に、乳癌(図11B)において、高く、有意なレベルの発現が発見された。
【0441】
【表8】

【0442】
腫瘍のISC−465トランスクリプトの選択的で高い発現は、以前には知られておらず、本発明において、血清および骨髄の播種性腫瘍細胞を検出ならびに他の組織への転移を検出するためのRT−PCRなどの分子診断法に、利用することができる。この分子は、さらに、治療アプローチのための特異的ターゲットとして使用することができる。
【0443】
(実施例9)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのMem−030の同定
Mem−030(配列番号:35)は、67.9kDAの分子量を有する592 aaタンパク質(配列番号:36)をエンコードする。
【0444】
Mem−030は、GTP、GDPおよびGMPに結合することができ、GTPからGDPへならびにGMPへの加水分解を触媒することができる大きなGTPアーゼである、GBP−タンパク質に属する(Chengら,J Biol.Chem.260:15834−9,1985)。
【0445】
GTPアーゼは、細胞増殖、分化、シグナル伝達および細胞内タンパク質輸送において重要な役割を果し、ならびにインターフェロンを誘導できる(Boehmら,J Immunol.161(12):6715−23,1998)。
【0446】
また、Mem−030は、内皮細胞に対する炎症性サイトカイン、例えばIFN−g、インターロイキン 1−b(IL−1b)および腫瘍壊死因子−a(TNF−a)1、の増殖効果を妨げる(Guenziら,EMBO J.20(20):5568−77,2001)。
【0447】
本発明において、Mem−030に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:37,38)をリアルタイムRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。Mem−030は、ユビ
キタス発現パターンを示す(図12A、表9)。
【0448】
最も驚くべきことに、癌由来の組織および癌細胞系統を調査した結果、多数の腫瘍タイプ(図12A、12B)、特に、頭頸部癌腫において、高い、有意なレベルの過剰発現が発見された。
【0449】
【表9】

【0450】
バイオインフォマティクス分析および文献分析の結果、Mem−030の相同遺伝子も魅力的な治療ターゲット(配列番号:39)であり、66.6kDAの分子量を有する586 aaのタンパク質(配列番号:40)をエンコードする。
【0451】
バイオインフォマティックの結果、両方のタンパク質が、細胞表面分子を提示することを示した。この表面分子は以前には知られていない選択的過剰発現をするため、治療のための、ならびに腫瘍細胞を検出する診断法および腫瘍細胞を除去する治療法の開発のためのターゲットになる。
【0452】
(実施例10)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのMem−055の同定
Mem−055(配列番号:41)は、27.9kDAの分子量を有する250 aaタンパク質(配列番号:42)をエンコードする。この遺伝子がエンコードするタンパク質は、低pH下でタンパク質ジスルフィド結合を減少させることができる、リソソームチオールレダクターゼである。
【0453】
この酵素は、抗原提示細胞において構成的に発現され、他の細胞タイプではガンマ−インターフェロンによって誘導される。この酵素は、MHCクラスII限定抗原プロセッシングにおいて重要な役割を有する(Arunachalamら,Proc Natl Acad Sci U S A.97(2):745−50,2000)。
【0454】
Mem−055の局在化およびタンパク質トポロジーを、バイオインフォマティクスツール(TMPRED、SOUSI)を用いた推定シグナル配列および推定膜貫通ドメインの分析によって予測した。Mem−055は、細胞外C末端を有すると考えられる。
【0455】
本発明に従って、Mem−055に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:43,44)をリアルタイムRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来のcDNAを増幅した。Mem−055は、ユビ
キタス発現パターンを示す(図13A、表10)。
【0456】
最も驚くべきことに、癌由来の組織内でのMem−055発現を調査した結果、多数の腫瘍タイプ(図13A、13B)、特に、胃癌において、高い、有意なレベルの過剰発現が発見された。
【0457】
【表10】

【0458】
Mem−055は、推定的細胞外ドメインを有し、および多種の癌腫タイプおいて予想外の過剰発現をするので、治療および診断のためのターゲット構造となる。
【0459】
(実施例11)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのMem−062の同定
Mem−062(配列番号:45)は、30.7kDAの分子量を有する271 aaタンパク質(配列番号:46)をエンコードする。
【0460】
コンピュータに基づくスクリーニング法により、Mem−062は、以前に同定できており、精巣、前立腺および胎盤特異的に発現されると記載されている(Beraら,Biochem Biophys Res Commun.312(4):1209−15,2003)。
【0461】
本発明に従って、Mem−062に対する遺伝子特異的プライマー対(配列番号:47,48)をRT−PCR分析において使用した。驚くべきことに、Mem−062は、精巣−癌特異的な発現パターンを示した(図14A、表11)。他のいずれの正常器官組織においても発現は検出されなかった。最も驚くべきことに、癌由来の組織を調査した結果、特に卵巣癌腫において、有意なレベルのMem−62発現が発見された(図14B)。
【0462】
【表11】

【0463】
可変スプライシングにより、オルターナティブトランスクリプト(配列番号49)およびその翻訳産物(配列番号:50)が生じる。
【0464】
(実施例12)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのMem−068の同定
Mem−068(配列番号:61)は、新たに同定されたcDNAクローンである。
【0465】
バイオインフォマティック予測アプローチ(Genscan)により、Mem−068は、染色体9上の多エキソン遺伝子(配列番号:62)として説明することができる。推定タンパク質配列(配列番号:63)は、751個のaaを有するものであり、82.4kDAの分子量を有するタンパク質を形成する。
【0466】
本発明に従って、Mem−068に対する遺伝子特異的プライマー対をRT−PCR分析において使用した。驚くべきことに、Mem−068は、精巣−癌特異的な発現パターンを示す(図15A、表12)。胎盤(弱い発現)を除き、他のいずれの正常器官組織においても発現は検出されなかった。
【0467】
最も驚くべきことに、癌由来の組織を調査した結果、特に腎細胞癌腫および胃癌において、有意なレベルのMem−068発現が発見された(図15B)。
【0468】
【表12】

【0469】
膜貫通型予測プログラムTMpredによると、Mem−068は、細胞表面で発現される場合があり、このことが、それを、治療または診断のための興味深いターゲットにする。
【0470】
(実施例13)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのMem−071の同定
Mem−071(配列番号:64)は、染色体1上の2つのエキソンにエンコードされる、新たなcDNAクローンである。
【0471】
本発明に従って、Mem−071に対する遺伝子特異的プライマー対をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来
のcDNAを増幅した。この遺伝子を発現することが判明した唯一の正常組織が精巣であった(図16A)。コントロール的に、癌被検物を調査した結果、腎細胞癌腫および胃癌において高い、有意なレベルの発現が発見された(図16B)。
【0472】
【表13】

【0473】
腎細胞癌腫におけるMem−071は予想外の高い発生率のため、本発明によると、このタンパク質は、非常に興味深い診断および治療マーカーとなることができる。
【0474】
(実施例14)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのMem−072の同定
Mem−072(配列番号:65)は、染色体16上の3つのエキソンにエンコードされる、新たに同定された遺伝子である。
【0475】
本発明に従って、Mem−072に対する遺伝子特異的プライマー対をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来
のcDNAを増幅した。試験したすべての正常組織におい発現は見られなかった(図17A、表14)。癌由来の組織および癌細胞系統を調査した結果、肺癌サンプルにおいて高い、有意なレベルの発現が発見された(図17B)。
【0476】
【表14】

【0477】
肺腫瘍におけるMem−072の選択的で高い発現は、以前には知られておらず、本発明に従って、血清および骨髄における播種性腫瘍細胞の検出ならびに他の組織への転移の検出のためのRT−PCRなどの分子診断法に、利用することができる。この分子は、さらに、治療アプローチのための特異的ターゲットとして使用することができる。
【0478】
(実施例15)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのMem−106の同定
Mem−106(配列番号:66)は、染色体2上にイントロンなしでエンコードされる、新たに同定された遺伝子である。
【0479】
本発明に従って、Mem−106に対する遺伝子特異的プライマー対をRT−PCR分析において使用した。
【0480】
驚くべきことに、Mem−106は、精巣−癌特異的な発現パターンを示した(図18A、表15)。他のいずれの正常器官組織においても発現は検出されなかった。最も驚くべきことに、癌由来の組織を調査した結果、特に卵巣癌腫において有意なレベルのMem−106発現が発見された(図18B)。
【0481】
【表15】

【0482】
Mem−106は、多種の癌腫タイプにおいてその予想外の過剰発現をするため、治療および診断のためのターゲット構造となる。
【0483】
(実施例16)
治療用および診断用癌ターゲットとしてのMem−131の同定
Mem−131(配列番号:67)は、新たに同定されたcDNAクローンである。Mem−131は、染色体15上の2エキソン遺伝子である。
【0484】
本発明に従って、Mem−131に対する遺伝子特異的プライマー対をRT−PCR分析において使用して、正常組織および腫瘍組織の総合パネル(comprehensive panel)由来
のcDNAを増幅した。
【0485】
RT−PCR分析の結果、正常な活性化PBMCにおいてのみ、Mem−131トランスクリプトが発現した(表16、図19aA)。他のいずれの正常器官組織においても有
意な発現は検出されなかった。
【0486】
最も驚くべきことに、癌サンプルを調査した結果、乳癌(図19bB)、肺癌(図19bB+C)および卵巣癌腫(図19bC)をはじめとする多数の腫瘍タイプにおいて、高い、有意なレベルの発現が発見された。
【0487】
【表16】

【0488】
本発明者らの調査の結果、本発明に従って、Mem−131が、肺、乳および卵巣癌腫のための診断および治療マーカーとして示された。
【図面の簡単な説明】
【0489】
【図1】ISC−468 mRNA発現 A.ISC−468特異的プライマーを用いたRT−PCR法の結果、胎盤を除いて、試験したすべての正常組織内で有意な発現を示さなかった。 B.頭頸部、肝臓、腎臓および結腸癌腫におけるISC−468 mRNA発現。 C.乳、卵巣および胃癌腫におけるISC−468 mRNA発現。
【図2】正常コントロール組織および乳癌におけるISC−468 mRNA発現の定量PCR分析 ISC−468特異的プライマーを用いたリアルタイムPCR法の結果、正常精巣、胎盤、胃およびPBMCならびにすべての乳癌腫生検において選択的mRNA発現を示した。
【図3】正常精巣および前立腺癌腫における特異的ISC−507発現 遺伝子特異的ISC−507プライマーを用いたRT−PCR分析の結果、正常精巣(A)および前立腺癌腫生検(B)においてcDNA増幅を示す。
【図4】ISC−507の定量発現 ISC−507特異的プライマーを用いた定量RT−PCRの結果、精巣、リンパ節および前立腺サンプルならびに前立腺癌サンプルにおいて選択的発現を示した。
【図5a】正常精巣および多種腫瘍サンプルにおけるISC−466発現 ISC−466特異的プライマーを用いたRT−PCR分析の結果、胎盤を除き正常組織内での発現を示さなかった(A)が、頭頸部癌腫生検および腎臓癌腫生検では発現を示した(B)。
【図5b】正常精巣および多種腫瘍サンプルにおけるISC−466発現 ISC−466特異的プライマーを用いたRT−PCR分析の結果、乳および肺癌腫細胞系統ならびに卵巣癌腫細胞系統においても明瞭な発現が検出された(CおよびD)。
【図6】ISC−518 mRNA発現 ISC−518特異的プライマーを用いたRT−PCR分析の結果、精巣を除き正常組織内での発現を示さなかった。
【図7】ISC−518の定量的発現 定量RT−PCRの結果、正常精巣においておよび1つの肝臓癌腫プールにおいて高い、選択的な発現を示した。
【図8a】正常および腫瘍組織におけるISC−477発現 ISC−477特異的プライマーを用いたRT−PCR法の結果、胎盤および卵巣正常組織において選択的発現を示し(A)、中でも胃癌腫(B)において高い発現を示した。
【図8b】正常および腫瘍組織におけるISC−477発現 ISC−477特異的プライマーを用いたRT−PCR法の結果、乳、結腸および肺癌腫(C)ならびに卵巣および膵臓癌腫サンプル(D)において高い発現を示した。
【図9a】ISC489 mRNA発現 ISC−489特異的プライマーを用いたRT−PCRの結果、胎盤コントロール組織において選択的発現を示し、加えて、肺癌腫サンプル(A)、胃癌腫(B)において様々なレベルの発現を示した。
【図9b】ISC489 mRNA発現 ISC−489特異的プライマーを用いたRT−PCRの結果、胎盤コントロール組織において選択的発現を示し、加えて、肺癌腫サンプル(C)、胃癌腫(C)、頭頸部腫瘍(C)および肝臓癌腫サンプル(C)において様々なレベルの発現を示した。
【図10a】正常精巣および多種腫瘍サンプルにおけるISC−461発現 ISC−461特異的プライマーを用いたRT−PCR法の結果、胎盤コントロール組織において選択的な発現を示し、加えて、乳癌腫および黒色腫(B)において、様々なレベルの発現を示した。
【図10b】正常精巣および多種腫瘍サンプルにおけるISC−461発現 ISC−461特異的プライマーを用いたRT−PCR法の結果、胎盤コントロール組織において選択的な発現を示し、加えて、乳癌腫、肺癌腫および黒色腫細胞系統(C)、および卵巣癌腫細胞系統(D)において、様々なレベルの発現を示した。
【図11】胎盤および癌由来サンプルにおけるISC−465 mRNA発現 ISC−465特異的プライマーを用いたRT−PCRの結果、胎盤(A)および乳癌、黒色腫、肺癌または胃癌由来の幾つかの細胞系統(B)において、選択的発現を示した。
【図12】Mem−030の定量的発現 A.Mem−030特異的プライマーを用いた定量RT−PCRの結果、調査したすべての頭頸部癌腫サンプルにおいて有意な過剰発現を示した。以下の正常組織を分析した:膀胱、脳、骨髄、頸部、結腸、十二指腸、心臓、肺、リンパ節、乳房、筋肉、卵巣、PBMC、活性化PBMC、胎盤、前立腺、網膜、脾臓、胃、精巣、胸腺および扁桃腺。 B.食道、肝臓、子宮癌腫および黒色腫由来組織におけるMem−30発現の普及(prevalence)。
【図13】Mem−055の定量的発現 Mem−055特異的プライマーを用いた定量RT−PCRの結果、正常コントロール組織において高い、選択的な発現を示し、胃および肺癌由来の組織において有意な過剰発現を示す(A)。Mem−055は、肝臓癌腫、卵巣癌腫および乳癌サンプルにおいても過剰発現する(B)。
【図14】Mem−062 mRNA発現 Mem−064特異的プライマーを用いたRT−PCR分析の結果、精巣において選択的発現を示し、肺癌由来組織において弱い発現を示した(A)。Mem−064トランスクリプトの強い、有意な発現レベルが、様々な卵巣腫瘍において検出できた(B)。
【図15】正常精巣および腎細胞癌腫における特異的Mem−068発現 遺伝子特異的Mem−068プライマーを用いたRT−PCR分析の結果、、正常精巣においてcDNA増幅を示し、胎盤(A)、腎細胞癌腫および胃癌において(B)、弱いcDNA増幅を示す。
【図16】正常精巣および多種腫瘍サンプルにおけるMem−071発現 Mem−071特異的プライマーを用いたRT−PCRの結果、精巣を除き正常組織内で発現を示さなかった(A)。腎細胞癌腫サンプルおよび胃癌においても明瞭な発現が検 出された(B)。
【図17】Mem−072 mRNA発現 Mem−072特異的プライマーを用いたRT−PCRの結果、正常組織内では発現を示さず(A)、様々な肺癌サンプルにおいて有意な発現を示した(A+B)。
【図18】正常組織および腫瘍組織におけるMem−106発現 Mem−106特異的プライマーを用いたRT−PCR法の結果、精巣を除き正常組織内で発現を示さなかった(A)。卵巣および前立腺癌腫ならびに黒色腫および結腸癌細胞系統における高い発現を調査した(B)。
【図19a】Mem−131 mRNA発現 Mem−131特異的プライマーを用いたRT−PCR法の結果、活性化PBMCを除き、試験したすべての正常組織内で有意な発現を示さなかった。
【図19b】Mem−131 mRNA発現 乳および肺癌腫におけるMem−131 mRNA発現。肺および卵巣癌腫におけるMem−131 mRNA発現。
【図20】ISC−468 mRNA発現 ISC−468特異的プライマーを用いた、(A)RT−PCRおよび(B)リアルタイムPCRの結果、正常精巣、胎盤において、および乳癌腫生検の80%において、選択的mRNA発現を示した。
【図21a】ISC−468発現の免疫蛍光分析 (A)抗ISC−468抗体の特異性を、ISC−468−eGFPトランスフェクト細胞を染色して確認した。(B)ISC−468特異的RNAi2本鎖または非サイレンシングコントロール2本鎖のいずれかのトランスフェクトMeOH固定細胞の染色。
【図21b】ISC−468発現の免疫蛍光分析 (C)ISC−468特異的RNAi2本鎖または非サイレンシングコントロール2本鎖のいずれかのトランスフェクト非固定細胞の染色。
【図22】ISC−468発現の免疫組織化学分析 正常な乳房組織において検出可能な発現はなかった(A)100x、(B)200x。コントロール的に、乳癌腫被検物において強い均一な膜染色が観察された(C)100x、(D)200x。
【図23】ISC−468 mRNA発現のRNAi誘導ノックダウン ISC−468特異的siRNA2本鎖を細胞にトランスフェクションした結果、コントロール細胞と比較してISC−468 mRNA発現が明瞭にノックダウンした。
【図24】細胞増殖分析 ISC−468特異的siRNA2本鎖を細胞にトランスフェクションした結果、コントロール細胞と比較して細胞増殖の有意な減少が生じた。
【図25】細胞周期分析 ISC−468特異的siRNA2本鎖を細胞にトランスフェクションした結果、コントロール細胞と比較して、(A)MCF−7および(B)BT−549乳癌腫細胞においてG1/S期が停止した。
【図26】AKTリン酸化(phosphorylierung) ISC−468特異的siRNA2本鎖を細胞にトランスフェクションした、コントロール細胞と比較してAKTリン酸化の明瞭な減少が生じた。
【図27】抗体媒介増殖阻害 ISC−468特異的抗体とMCF−7乳癌腫細胞をインキュベーションした結果、影響がないコントロール抗体とインキュベートした細胞と比較して増殖の減少が生じた。
【図28】細胞増殖分析 ISC−468特異的siRNA2本鎖を細胞にトランスフェクションした結果は、コントロール細胞と比較して、(A)走化性、(B)ケモキネシスおよび(C)浸潤の明瞭な減少が生じた。
【図29】エストロゲン受容体相関関係 乳癌腫サンプルにおけるISC−468 mRNAの発現レベルと、エストロゲン受容体の状態は相関する。中央値、第10および第90パーセンタイルとエラーバーを示す。
【図30】17β−エストラジオール処理 エストロゲン受容体陽性乳癌腫細胞系統MCF−7を100nM 17β−エストラジオールで処理することによって、ISC−468 mRNA発現を誘導した。エストロゲン受容体陰性細胞系統MDA−MB−231では、誘導は見られなかった。
【図31a】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31b】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31c】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31d】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31e】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31f】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31g】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31h】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31i】配列 本明細書において言及する配列を示す。
【図31j】配列 本明細書において言及する配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害する、ならびに/または
(II)腫瘍阻害活性を有し、および腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に対して選択的である、ならびに/または
(III)投与されたとき、MHC分子と腫瘍関連抗原またはその一部との複合体の量を選択的に増加させる
薬剤を含む医薬組成物であって、
前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされた配列を有する、医薬組成物。
【請求項2】
(II)に属する前記薬剤が、細胞死を誘導し、細胞増殖を減少させ、細胞膜を損傷させまたはサイトカインを分泌させる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(I)または(II)に属する前記薬剤が、前記腫瘍関連抗原をコードする前記核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(I)または(II)に属する前記薬剤が、前記腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記薬剤が、
(i)前記腫瘍関連抗原またはその一部、
(ii)前記腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、
(iii)前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体、
(iv)前記腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)前記腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、
(vi)前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および
(vii)前記腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子を単離した複合体
から成る群より選択される一つ以上の成分を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記薬剤が、各場合、異なる腫瘍関連抗原の発現もしくは活性のいずれも選択的に阻害する、異なる腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞のいずれに対しても選択的である、またはMHC分子と異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部との前記複合体の量を増加させる、二つ以上の前記薬剤を含み、
前記腫瘍関連抗原の少なくとも一つが、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされた配列を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(i)腫瘍関連抗原またはその一部、
(ii)腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、
(vi)腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および
(vii)腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子を単離した複合体
から成る群より選択される一つ以上の成分を含み、
前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされた配列を有する、医薬組成物。
【請求項8】
(ii)の前記核酸が、発現ベクター内に存在する、請求項5または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記宿主細胞が、前記腫瘍関連抗原またはその一部を分泌する、請求項5または7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記宿主細胞が、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合するMHC分子をさらに発現する、請求項5または7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記宿主細胞が、前記MHC分子および/また前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部を組換え様式で発現する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記宿主細胞が、前記MHC分子を内因的に発現する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記宿主細胞が、抗原提示細胞である、請求項5、7、10または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体である、または抗体のフラグメントである、請求項4、5または7に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗体が、治療薬または診断薬にカップリングする、請求項4、5、7または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記癌の治療または予防に使用することができる、請求項1〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記癌が、肺腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫、結腸腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、ENT腫瘍、腎細胞癌腫または子宮頸癌腫、結腸癌腫または乳房癌腫である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記腫瘍関連抗原が、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、29、31、36、40、42、46、50〜60、63、68および69から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
ワクチンの形態である、請求項1、2、5〜13および16〜18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
治療用途および/または予防用途のための、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾病を診断またはモニタリングする方法であって、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされた配列を有する前記腫瘍関連抗原を用いて、;
(i)前記腫瘍関連抗原をコードする核酸のもしくはその一部の、および/または
(ii)前記腫瘍関連抗原もしくはその一部の、および/または
(iii)前記腫瘍関連抗原もしくはその一部に対する抗体の、および/または
(iv)患者から単離した生体サンプルにおける前記腫瘍関連抗原にもしくはその一部に特異的であるTリンパ球の、
量を検出または決定することを含む方法。
【請求項22】
前記量の検出または決定が、
(i)前記腫瘍関連抗原をコードする前記核酸にもしくは前記その一部に、前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部に、前記抗体に、または前記Tリンパ球に特異的に結合する薬剤と前記生体サンプルを接触させること、および
(ii)前記薬剤と、前記核酸もしくは前記その一部、前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部、前記抗体または前記Tリンパ球との複合体の形成を検出することまたは前記複合体の量を決定すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍関連抗原をコードする前記核酸にまたは前記その一部に特異的に結合する前記薬剤が、前記核酸にまたは前記その一部に特異的にハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記腫瘍関連抗原または前記その一部に特異的に結合する前記薬剤が、前記腫瘍関連抗原にまたは前記その一部に特異的に結合する抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体に特異的に結合する前記薬剤が、前記抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記Tリンパ球に特異的に結合する前記薬剤が、前記腫瘍関連抗原または前記その一部とMHC分子との前記複合体を提示する細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記疾病の前記モニタリングが、前記疾病に罹患しているまたは前記疾病に罹患すると推測される患者からのサンプルにおいて前記疾病の退行、経過または発症を判定すること含む、請求項21から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
第一時間点での第一サンプルの量の検出または決定、第二時間点でのさらなるサンプルの量の検出または決定、ならびに前記二つのサンプルの比較を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記薬剤が、検出可能な様式で標識される、請求項22〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルが、体液および/または体内組織を含む、請求項21〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾病を治療または予防する方法であって、
前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされた配列を有する;
請求項1〜20のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項32】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾病を治療、予防、診断またはモニタリングする方法であって、
前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされた配列を有する;
前記腫瘍関連抗原にまたはその一部に結合する、および治療薬または診断薬にカップリングする抗体を投与することを含む方法。
【請求項33】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体である、または抗体のフラグメントである、請求項24または32に記載の方法。
【請求項34】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を特徴とする疾病に罹患している患者を治療する方法であって、
前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされた配列を有する;
(i)免疫反応性細胞を含有するサンプルを提供すること、
(ii)細胞溶解性T細胞またはサイトカイン放出性T細胞の産生が前記腫瘍関連抗原または前記その一部に対して有利に働く条件下で、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞と前記サンプルを接触させること、
(iii)細胞溶解性T細胞またはサイトカイン放出性T細胞を、前記患者に前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞を溶解するのに適する量で導入すること
を含む方法。
【請求項35】
前記宿主細胞が、前記腫瘍関連抗原にまたはその一部に結合するMHC分子を組換え発現する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記宿主細胞が、前記腫瘍関連抗原にまたはその一部に結合するMHC分子を内因的に発現する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
請求項1〜20のいずれかに記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、患者の癌の発生を抑制する方法。
【請求項38】
前記腫瘍関連抗原が、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、29、31、36、40、42、46、50〜60、63、68および69から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項21〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされている前記タンパク質もしくはポリペプチドに、またはその一部に、特異的に結合する薬剤。
【請求項40】
前記タンパク質またはポリペプチドが、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、29、31、36、40、42、46、50〜60、63、68および69から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項39に記載の薬剤。
【請求項41】
抗体である、請求項39または40に記載の薬剤。
【請求項42】
前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体である、または抗体のフラグメントである、請求項41に記載の薬剤。
【請求項43】
(i)タンパク質もしくはポリペプチドまたはその一部と、
(ii)前記タンパク質もしくはポリペプチドまたは前記その一部が結合するMHC分子と
の複合体に選択的に結合し、(i)または(ii)のみには結合しない前記抗体であって、
前記タンパク質またはポリペプチドが、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってエンコードされている、抗体。
【請求項44】
前記タンパク質またはポリペプチドが、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、29、31、36、40、42、46、50〜60、63、68および69から成る群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項43に記載の抗体。
【請求項45】
モノクローナル抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体である、または抗体のフラグメントである、請求項43または44に記載の抗体。
【請求項46】
請求項39〜42のいずれかに記載の薬剤または請求項43〜45のいずれかに記載の抗体と治療薬または診断薬とのコンジュゲート。
【請求項47】
前記治療薬または診断薬が、毒素である、請求項46に記載のコンジュゲート。
【請求項48】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現を検出するためのキットであって、
前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:1、5、9、13、17、21、25、28、30、35、39、41、45、49、61、62および64〜67から成る群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で(a)の前記核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)(a)または(b)の前記核酸を基準にして縮重している核酸、および
(d)(a)、(b)または(c)の前記核酸に相補的である核酸
から成る群より選択される核酸によってコードされた配列を有する;
(i)前記腫瘍関連抗原をコードする核酸のもしくはその一部の、および/または
(ii)前記腫瘍関連抗原もしくはその一部の、および/または
(iii)前記腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する抗体の、および/または
(iv)前記腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との複合体に対して特異的であるT細胞の、
量の検出または決定のための薬剤を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31a】
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【図31b】
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【図31c】
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【図31d】
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【図31e】
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【図31f】
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【図31g】
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【図31h】
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【図31i】
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【図31j】
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【公表番号】特表2009−507868(P2009−507868A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530387(P2008−530387)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008695
【国際公開番号】WO2007/031222
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(504346260)ガニメド ファーマシューティカルズ アーゲー (21)
【出願人】(507221221)
【氏名又は名称原語表記】JOHANNES GUTENBERG−UNIVERSITAET MAINZ VERTRETEN DURCH DEN PRAESIDENTEN
【住所又は居所原語表記】Saarstrasse 21, 55122 Mainz, Germany
【Fターム(参考)】