説明

評価用半導体チップ、評価システムおよび放熱材料評価方法

【課題】半導体装置の熱抵抗を容易に評価することができる評価用半導体チップを提供する。
【解決手段】評価用半導体チップにおいて、半導体チップを構成するシリコン基板100と、シリコン基板100の面上に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の金属配線膜101と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の金属配線膜102と、金属配線膜101に電気的に接続された電極103と、金属配線膜102に電気的に接続された電極103とが形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および放熱材料の評価技術に関し、特に評価用半導体チップを用いた評価システムおよび放熱材料評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)やメモリをはじめとする半導体チップでは、信号処理の高速化や、実装密度の向上が強く要求されている。そのため、電界効果トランジスタ(FET)を始めとする半導体素子の微細化が進められてきた。また、半導体チップの実装基板についても、ビルドアップ方式などに代表される配線の高密度化を実現する技術が開発されてきている。
【0003】
さらに、システム化の容易さから、半導体チップを複数組み合わせた半導体パッケージの開発が活発となり、薄く研磨した半導体チップを積層した3次元実装技術が注目されている。このような3次元実装構造では、半導体チップと基板の双方の配線密度が向上し、半導体チップと基板を電気的に接続する端子についても、微細化や多ピン化が急激に進んでいる。
【0004】
上記のような高密度な半導体チップでは、その実装に用いられる材料が非常に多く、また、複雑なプロセスを経て製造されている。一般的に、半導体チップでは積層の度に加熱を繰り返さなければならないが、後の工程では先の工程における処理の信頼性を損なわないよう、先の工程よりも低温で処理を行ういわゆる温度階層プロセスが採用されている。
【0005】
よって、材料開発や製造プロセスの確立には、各プロセスにおける温度履歴を正確に把握することが不可欠である。
【0006】
また、一般的に製造された半導体の実装信頼性の評価は、JEITA規格 EIAJ ED4701/100に記載されている半導体デバイスの環境および耐久性試験に則って行われる。実装信頼性評価は、発熱源である半導体チップの接続部、すなわち、半導体素子を構成するタングステン、アルミニウム、銅などの微細配線に流れる電流による熱抵抗、あるいはFET電極間(ソース−ドレイン間)の電子の移動による熱抵抗による温度の変化を評価するものである。
【0007】
このような温度履歴の測定には、従来から、熱電対を温度センサとして半導体チップや半導体パッケージの周辺に実装する方法が採用されている。
【0008】
例えば、日立評論 Vol.91,No.05,p.456(非特許文献1)には、高密度実装で課題となる応力・発熱解析に向けた評価用素子によるソリューションを提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日立評論 Vol.91,No.05,p.456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、熱電対を温度センサとして実装する方法では、実際に評価対象(発熱源)である接続部に熱電対を設けるのは困難であるため、接続部から離れた半導体チップや半導体パッケージの裏面、またはその周囲の基板上に熱電対を設置して温度測定を行っていた。これでは、発熱源である半導体チップの正確な温度を把握したり、評価試験時に加熱したりすることができないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、半導体装置の熱抵抗を容易に評価することができる評価用半導体チップ、評価システムおよび放熱材料評価方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0014】
すなわち、代表的なものの概要は、半導体チップを評価するための評価用半導体チップであって、半導体チップを構成する半導体基板と、半導体基板の面上に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の第1の配線と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の第2の配線と、第1の配線に電気的に接続された第1の電極と、第2の配線に電気的に接続された第2の電極とが形成されたものである。
【0015】
また、半導体チップを評価するための評価システムであって、半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の第1の配線と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の第2の配線と、第1の配線に電気的に接続された第1の電極と、第2の配線に電気的に接続された第2の電極とを有する評価用半導体チップと、評価用半導体チップを実装する実装基板と、評価用半導体チップの半導体基板の他方の面側に、実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料とを備え、第2の配線に電源を電気的に接続して、第2の配線の領域ごとに加熱を行い、第1の配線に電流計および電圧計を電気的に接続して、第1の配線の領域ごとに測温を行うものである。
【0016】
また、半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の第1の配線と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の第2の配線と、第1の配線に電気的に接続された第1の電極と、第2の配線に電気的に接続された第2の電極とを有する評価用半導体チップと、評価用半導体チップを実装する実装基板と、評価用半導体チップの半導体基板の他方の面側に、実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料とを備えた評価システムにおける放熱材料評価方法であって、第2の配線に電源を電気的に接続して、第2の配線の領域ごとに加熱を行い、第1の配線に電流計および電圧計を電気的に接続して、第1の配線の領域ごとに測温を行い、その領域ごとの測温結果に基づいて、放熱材料の放熱板との密着性の変化を検出するものである。
【0017】
また、半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の第1の配線と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の第2の配線と、第1の配線に電気的に接続された第1の電極と、第2の配線に電気的に接続された第2の電極とを有する評価用半導体チップと、評価用半導体チップを実装する実装基板と、評価用半導体チップの半導体基板の他方の面側に、実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料と、評価用半導体チップと実装基板との間に充填された硬化性樹脂材料とを備えた評価システムにおける放熱材料評価方法であって、第2の配線に電源を電気的に接続して、第2の配線の領域ごとに加熱を行い、第1の配線に電流計および電圧計を電気的に接続して、第1の配線の領域ごとに測温を行い、その領域ごとの測温結果に基づいて、硬化性樹脂材料の充填状態および硬化状態を計測するものである。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0019】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、半導体装置の熱抵抗を容易に評価することができ、半導体装置および放熱材料の評価を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの金属配線膜の配線パターンの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの金属配線膜の配線パターンの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの電極の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの製造方法の過程を示す遷移図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る評価システムの構成を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る評価システムによる実装プロセスの評価を説明するための説明図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る評価システムによる実装プロセスの評価を説明するための説明図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る評価システムによる実装プロセスの評価を説明するための説明図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る評価システムの構成を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る評価システムの構成部材の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る評価システムの配置例について説明するための説明図である。
【図17】本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例を説明するための評価システムの構成を示す断面図である。
【図18】評価システムによる放熱特性評価の結果を表す図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例を説明するための評価システムの構成を示す断面図である。
【図20】本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例を説明するための評価結果を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例を説明するための評価システムの構成を示す断面図である。
【図22】本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例を説明するための評価結果を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例を説明するための評価結果を示す図である。
【図24】本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例を説明するための評価結果を示す図である。
【図25】本発明の実施の形態4に係る評価用半導体チップの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
(実施の形態1)
<評価用半導体チップの構成>
図1〜図4により、本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの構成について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの構成を示す断面図、図2は本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの金属配線膜の配線パターンの一例を示す図、図3は本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの金属配線膜の配線パターンの一例を示す図、図4は本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの電極の一例を示す図である。
【0023】
図1において、評価用半導体チップ1は、シリコン基板100の一方の面に、測温抵抗体としての金属配線膜101と、絶縁層としてのポリイミド膜104aと、ヒータとしての金属配線膜102と、絶縁層としてのポリイミド膜104bと、金属配線膜101および金属配線膜102を実装基板に電気的に接続するための電極103と、保護層としてのポリイミド膜104cとが順次積層されて構成されている。また、評価用半導体チップ1の表面には、開口部11、12、21、22が設けられている。
【0024】
また、金属配線膜101は、測温抵抗体として利用可能な金属の配線パターンが形成されたものである。
【0025】
図2に金属配線膜101の配線パターンの一例を示す。図2に例示したパターンでは、金属配線膜101は方形に蛇行する独立した白金配線であり、3×3のマトリクス状に分画された領域にそれぞれ形成されている。分画する領域数はいくつでもよく、その配置の仕方は、図2に示すように各領域が隣接していてもよいし、離れていてもよい。
【0026】
図2に例示したパターンでは、各白金配線はそれぞれ配線の両端に2つずつ、計4つの端子1011を有しており、端子1011は図1の電極103に接続される。このように、各配線の電気抵抗はいわゆる4端子法により測定できる。すなわち、白金の抵抗温度係数(3.9×10-3/K)から白金配線の各領域における温度を測定することが可能である。この詳細については後述する。
【0027】
なお、ここでは各領域で独立した白金配線を設けた構成を例示しているが、金属配線膜101が1つの連続した配線からなる構成としてもよいし、連続した配線を途中から分岐させ、端子を設けてもよい。
【0028】
また、金属配線膜101に使用する金属材料としては、温度と電気抵抗の線形性に優れており、また腐食耐性、マイグレーション耐性に優れていて膜質変化が小さいことから、特に白金を利用することが望ましい。白金以外の金属材料、例えばニッケル、銅などを利用する場合には、使用に際して温度と電気抵抗の相関関係を計測して、あらかじめ検量線を作製しておく必要があるが、チップ作製コストは低減できる。しかし、これらの金属は腐食耐性・マイグレーション耐性は白金より劣るので、繰り返して使用しないならば、ニッケルや銅を用いるなど、用途・目的に応じて使い分けすればよい。
【0029】
また、金属配線膜102は、ヒータとして利用可能な金属の配線パターンが形成されたものである。図3に金属配線膜102の配線パターンの一例を示す。図3に例示したパターンでは、金属配線膜102は、ニッケル配線または銅配線が2×2のマトリクス上に分画された4領域に蛇行する一連の配線パターンである。
【0030】
ニッケル配線または銅配線は、両端および途中に3つの端子1021を有しており、図1の電極103にそれぞれ接続される。加熱領域を分画する場合、その領域数はいくつでもよく、その配置の仕方は、図3に例示するように各領域が隣接していてもよいし、離れていてもよい。また、配線への電磁波シールドとしてシールド1022を有する。
【0031】
評価対象となっている半導体装置に使われている半導体チップ内の各機能領域を模擬するような配置で、加熱領域(金属配線膜102)を配置し、各領域のみを選択して加熱するための途中端子1021を設ける。このような構成により、ニッケル配線または銅配線の加熱領域を選択することが可能となり、半導体チップ発熱領域を模擬できる。
【0032】
なお、図3に例示したパターンでは途中に端子を設ける構成としているが、もちろん、簡易的な評価のために両端のみに端子を設けてもよいし、図2に例示した金属配線膜101と同様なパターン、すなわち、分画した各領域に独立した配線をそれぞれに設けてもよい。
【0033】
また、金属配線膜102に使用する金属材料は上記ではニッケルまたは銅としたが、これに限らない。評価対象となっている半導体装置に使われている半導体チップの発熱挙動を模擬できるような導体抵抗を有し、低コストで微細なパターンを加工形成でき、且つ高温耐久性を有する金属であればよい。具体的にいくつか列記すると、ニッケルクロム系合金、ニッケルクロムアルミニウム系合金、銅系合金、銅マンガン、銅ニッケル、鉄クロム系合金、タングステンなどである。
【0034】
図4に電極103の一例を示す。電極103は金属配線膜101および金属配線膜102と電気的に接続されている外部接続用の電極である。図4に例示したパターンでは、外部接続用電極1031が金属配線膜101の端子1011と、外部接続用電極1032が金属配線膜102の有する端子1021と接続されている。
【0035】
図1に例示する通り、電極103上にはポリイミド膜104cが保護層として形成されており、ポリイミド膜104cには、開口部21および開口部22が設けられている。開口部21は、後述する配線基板111や他の半導体チップと金属配線膜101につながる電極103を接続するための開口であり、開口部22は、配線基板111と金属配線膜102につながる電極103を接続するための開口である。
【0036】
さらに、絶縁層として、金属配線膜101と金属配線膜102の間にポリイミド膜104aが、金属配線膜102と電極103の間にポリイミド膜104bが設けられている。ポリイミド膜104aおよびポリイミド膜104bには、共に金属配線膜101と電極103とを接続するための開口部11が形成され、ポリイミド膜104bには、さらに金属配線膜102と電極103とを接続するための開口部12が形成されている。
【0037】
このように、開口部11は、ポリイミド膜104a、104b、104cの同一の場所に設けられているので、金属膜101は、開口部11および開口部21のどちらの開口部からも電気的な接続することが可能である。
【0038】
同様に、金属配線膜102では、開口部12および開口部22のどちらの開口部からも電気的な接続を確保することが可能である。このような構成をとったことにより、開口部21および開口部22を用いてBGA型実装構造を採用することもできるし、開口部11および開口部12を用いてWB型実装構造を採用することもできる。さらに、これらの開口部は導通検査用端子として用いることもできる。
【0039】
このような半導体チップ1を実装基板に実装することで、さまざまな温度プロセスを評価することが可能である。
【0040】
<評価用半導体チップの製造方法>
次に、図5により、本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの製造方法について説明する。図5は本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの製造方法の過程を示す遷移図である。
【0041】
まず、シリコン基板100の一方の面に、図示しないシリコン酸化膜を成長させる。シリコン酸化膜は、900℃程度のスチーム雰囲気下でシリコンと酸素を反応させるような、一般的な方法で形成すればよい。そして、シリコン酸化膜上に、白金配線パターンを有する金属配線膜101をリフトオフ法により形成する(図5(a))。具体的には、まずシリコン酸化膜上にパターニングされたレジストを形成し、PtO膜101a、Pt膜101b、TiO膜101cを順次蒸着する。
【0042】
そして、レジストを除去して図2に示す配線パターンを完成させる。本実施の形態では、リフトオフ法を採用しているので、配線厚は、実効的には最大1μm程度である。このような薄膜構造の測温体を用いたことにより、測温膜自身の熱容量を最小化でき、その結果として高速応答性が実現できる。
【0043】
なお、PtO膜101aはシリコン酸化膜と、TiO膜101cはポリイミド膜104aとの密着性を向上させるために、それぞれPt膜101bに対して1/100程度の膜厚で設けている。
【0044】
次に、絶縁層として、金属配線膜101の両端を覆い、端子1011部分を開口させた膜厚約5μmのポリイミド膜104aを形成し、そして、ポリイミド膜104a上に、ニッケル配線パターンを有する金属配線膜102を形成する(図5(b))。
【0045】
例えば、Cr膜およびCu膜の積層膜をシード膜として、レジストのフォトリソグラフィおよびNi電気めっきを併用するセミアディティブ法を用いることにより、図3に記載の配線パターンを有する金属配線膜102を形成することができる。
【0046】
さらに、金属配線膜102の両端を覆い、端子1011および端子1021部分を開口させたポリイミド膜104bを形成し、ポリイミド膜104b上に、セミアディティブ法により図4に記載の外部接続用の電極103を形成する(図5(c))。
【0047】
そして最後に、後述する実装基板等と電極103を接続するための開口を有する保護層としてのポリイミド膜104cを形成することで(図5(d))、図1に示す評価用半導体チップを得ることができる。
【0048】
なお、本発明は、本実施の形態に係る評価用半導体チップに制限されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変形が可能である。
【0049】
例えば、測温抵抗体、およびヒータは、どのような位置関係で配置されていてもよい。
【0050】
また、測温抵抗体、ヒータ、および電極は、シリコン基板の同一面内(同一層)に形成してもよい。
【0051】
さらに、配線の温度と電気抵抗の関係を明らかにしておくことで、ヒータと測温抵抗体を1つの配線で兼ねることもできる。すなわち、配線に接続した電源から電力を供給すると同時に電気抵抗を測定すれば、別途配線を設けずとも発熱する配線自身の温度を測定することが可能となる。これにより、本発明の半導体チップの構造を大幅に簡素化し、短TAT(urn round ime)での製造が可能となり、また製造コストの大幅低減が可能となる。
【0052】
なお、抵抗測温体としての金属配線膜101のみを備え、ヒータ機能を持たない構成としてもよい。例えば、外部から熱を加えるプロセスの温度プロファイル計測を行う場合には、必ずしも半導体チップ内にはヒータが必須ではないため、より簡素な構成とすることができる。
【0053】
<評価用半導体チップの変形例>
以下に、本実施の形態の評価用半導体チップの変形例を具体的に示す。
【0054】
図6〜図9により、本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの変形例について説明する。図6〜図9は本発明の実施の形態1に係る評価用半導体チップの変形例を示す断面図である。
【0055】
○変形例1
図6において、評価用半導体チップ2は、測温抵抗体としての金属配線膜201と、ヒータとしての金属配線膜202とが、図1に示す評価用半導体チップ1の測温抵抗体(金属配線膜101)、およびヒータ(金属配線膜102)と逆の位置に配置されている。その他の構成は図1の評価用半導体チップ1と同様である。
【0056】
このような構成の評価用半導体チップ2によれば、測温抵抗体としての金属配線膜201の測定エリアより電極103が外部接続される開口部21および開口部22の近傍となっている。そのため、より発熱源に近い位置(例えば、硬化性樹脂材料であるアンダーフィル材)の温度をより正確に測定することが可能であるが、ポリイミド膜104a、104bは十分に薄く、従って熱容量は十分に小さいので、実用上の性能差はほとんどない。金属配線膜201と202は、形成歩留り差を考慮し、有利構造を選択するとよい。
【0057】
○変形例2
図7において、評価用半導体チップ3は、測温抵抗体としての金属配線膜301とヒータとしての金属配線膜302とが、同じ面内の酸化膜上に形成され、金属配線膜301および金属配線膜302の両端を覆うように、金属配線膜301と電極103とを接続するための開口部31および金属配線膜302と電極103とを接続するための開口部32を有するポリイミド膜304が設けられている。その他の構成は図1の評価用半導体チップ1と同様である。
【0058】
このような構成によれば、絶縁層としての2つのポリイミド膜(ポリイミド膜104aおよびポリイミド膜104b)を1つのポリイミド膜304で実現できるため、半導体チップ1に比べて層数を減少させ、より低コストに、簡便な方法で半導体チップを製造することが可能である。
【0059】
○変形例3
図8において、評価用半導体チップ4は、測温抵抗体とヒータの機能を兼ねる金属配線膜402のみが形成され、金属配線膜402の両端を覆うように、金属配線膜402と電極103とを接続するための開口部41および開口部42を有するポリイミド膜404が設けられている。なお、金属配線膜402には、例えば、図2に示すようなNi配線またはCu配線を利用することができる。その他の構成は図1の評価用半導体チップ1と同様である。
【0060】
このような半導体チップ4を後述する配線基板111に実装し、両端の端子に電源と電圧計を接続することで、Ni配線またはCu配線に流れる電流を制御するとともに、ニッケルの抵抗温度係数(6.3×10-3/K)または銅の抵抗温度係数(4.3×10-3/K)からNi配線またはCu配線の各領域における温度を測定することが可能である。
【0061】
このような構成の評価用半導体チップ4によれば、図1に示す評価用半導体チップ1に比べてポリイミド膜および金属配線膜をそれぞれ1つずつ省略できるため、製造プロセスの簡素化と、製造コストの大幅な低減が可能である。
【0062】
○変形例4
図9において、評価用半導体チップ5は、図1に示す評価用半導体チップ1を複数積み上げた3次元積層チップである。
【0063】
なお、評価用半導体チップ5は、例えば、評価用半導体チップ1の端子1011領域にスルーホール501を形成して上下の評価用半導体チップ1間の導通をとり、評価用半導体チップ1の測温抵抗体やヒータの配線を電極などにより評価用半導体チップ5として引き出せるようになっている。
【0064】
また、この評価用半導体チップ5としての電極の接続の組み合わせにより、それぞれの評価用半導体チップ1の測温抵抗体やヒータを動作させる組み合わせを指定することができるようになっている。
【0065】
そして、高温プレス加熱加圧装置901によって圧着することで評価用半導体チップ5を製造することが可能である。
【0066】
このような構成の評価用半導体チップ5によれば、3次元積層構造の半導体チップの温度プロセスを評価することが可能である。
【0067】
(実施の形態2)
<評価システムの構成>
図10により、本発明の実施の形態2に係る評価システムの構成について説明する。図10は本発明の実施の形態2に係る評価システムの構成を示す断面図である。
【0068】
図10において、評価システム110は、はんだバンプ114によって、プリント基板やセラミック基板等の配線基板111に評価用半導体チップ1を実装したものである。配線基板111には、測温抵抗体である金属配線膜101に接続される基板配線113aとヒータである金属配線膜102に接続される基板配線113bが設けられている。はんだバンプ114を用いて接続する場合は、開口部11と開口部12は閉じていても良い。
【0069】
なお、配線群900は、基板配線113aを介して抵抗測温体である金属配線膜101と図示しない電流計および電圧計を結線し、また、基板配線113bを介してヒータである金属配線膜102と図示しない外部電源とを結線している。
【0070】
これにより、金属配線膜102の加熱と、金属配線膜101の各領域における電気抵抗を4端子法により測定することが可能である。この測定結果と白金の抵抗温度係数(3.9×10-3/K)から、白金配線の各領域の温度を測定することが可能である。
【0071】
なお、本実施の形態においては、評価システムに用いられる評価用半導体チップとして、図1に示す評価用半導体チップ1で説明したが、評価用半導体チップの形状は、これに限らず、例えば、図6〜図9に示す評価用半導体チップを配線基板111に実装するようにしてもよい。
【0072】
<評価システムによる実装プロセスの評価>
次に、図11〜図13により、本発明の実施の形態2に係る評価システムによる実装プロセスの評価について説明する。図11〜図13は本発明の実施の形態2に係る評価システムによる実装プロセスの評価を説明するための説明図である。
【0073】
○実装プロセスの評価1
図11はリフロー炉を使用した評価システム110の実装プロセスの温度プロファイル測定を説明するための説明図である。
【0074】
半導体チップのBGA実装は、リフロー炉を使用したはんだ付けプロセスを経て行われるが、リフロー炉内の設定温度や半導体チップおよび基板の表面、そしてはんだバンプには、大きな温度差が存在する。そこで、図11に示すように、評価システム110をはんだ付けプロセスに付せば、半導体チップ内部の温度変化を評価することができる。
【0075】
具体的には、半導体チップ1をリフロー炉902内の移動ステージ903に戴置して加熱する。これにより、金属配線膜101の各領域の電気抵抗の変化をモニタすることで、はんだバンプ114やアンダーフィル材115近傍の温度プロファイルを得ることが可能である。この用途で用いる場合、金属配線膜102に電力供給する必要がなく、測温金属配線膜101の抵抗変化をモニタするだけであり、配線群900から供給する電力は小さくて十分であることは言うまでもない。
【0076】
○実装プロセスの評価2
図12はリフロー炉を使用しない評価システム110の実装プロセスの温度プロファイル測定を説明するための説明図である。
【0077】
この実装プロセスの評価では、実装プロセスの評価1で得たはんだ付けプロセスの温度プロファイルに従って金属配線膜102へ供給される電力を制御してヒータの温度を経時変化させ、リフロー炉内における状態を再現することで、リフロー炉を使用せずともプロセス中の温度プロファイルを得ることを可能としたものである。
【0078】
このようにヒータの温度を制御することによって、評価用半導体チップ1とアンダーフィル材115の熱硬化を再現したり、途中で加熱を停止させてアンダーフィル材115の硬化時の経時変化を観察したりすることが可能である。
【0079】
チップ1内部の発熱体(金属配線膜102)は熱容量が小さいため、電力停止すると速やかに加熱が停止するので、加熱途中停止操作によって、アンダーフィル硬化途中挙動の観察が可能になる。よって、各材料の開発においても、有用なデータが取得できる。
【0080】
より具体的には、図11に例示した方法によってリフロー炉内処理中の半導体チップ内部の温度分布とその経時変化を計測し、その計測値を再現するように金属配線膜102へ供給する電力を制御する。このようにすることにより、リフロー炉を使用せずとも半導体チップ実装プロセスの温度プロセスファイルを忠実に再現できる。これにより、バンプ接続時のバンプ内ボイドを最小化する温度プロファイル設定のための条件検討に要する時間を著しく短時間化できる。
【0081】
○実装プロセスの評価3
図13は3次元積層プロセスにおける評価システム120の温度プロファイル測定を説明するための説明図である。
【0082】
実施の形態1の評価用半導体チップの変形例4で説明したように、3次元積層された評価用半導体チップ5は、複数の評価用半導体チップ1を積み上げて高温プレス加熱加圧装置901で加圧および加熱することで製造される。ここで、評価用半導体チップ5を配線基板111に実装した評価システム120を3次元積層プロセスに付すことで、該プロセス中における温度プロファイルを測定することができる。
【0083】
なお、配線群900は、評価用半導体チップ5を形成する各評価用半導体チップ1の各金属配線膜101をそれぞれ図示しない電流計および電圧計と結線しているため、積層されたどの半導体チップのどの領域にどのような温度変化が見られるのかを、それぞれ観察することが可能である。
【0084】
もちろん、配線群900に、各評価用半導体チップのヒータである金属配線膜102と外部電源とを結線させ、上記で得た3次元積層プロセスの温度プロファイルに従ってヒータの温度を変化させることで、高温プレス加熱加圧装置を使用せずに3次元積層プロセスを再現することも可能である。
【0085】
(実施の形態3)
<評価システムの構成>
図14により、本発明の実施の形態3に係る評価システムの構成について説明する。図14は本発明の実施の形態3に係る評価システムの構成を示す断面図であり、放熱特性の評価をする構成である。
【0086】
図14において、評価システム140は、実施の形態2の評価システムをより実際に近い形状で搭載し、評価用半導体チップおよびその周辺材料の熱情報を得ることを可能とするものであり、図10に示す評価システム110とアルミ材等からなる放熱板148とで、放熱シート145a、ヒートスプレッダ144、放熱シート145bをこの順で挟んで断熱性ネジ141で固定したものである。
【0087】
ヒートスプレッダ144は、シール材147により基板配線113と接続されている。また、ヒートスプレッダ144には、評価用半導体チップ1の下側に位置する部分に熱電対146が設けられている。なお、配線基板111の配線の少なくとも一部は、コネクタ142を介してハーネス143として外部回路に電気的に接続されている。
【0088】
このような評価システム140によれば、評価用半導体チップ1の備える抵抗測温体の温度変化と、熱電対146の温度変化とをそれぞれ独立して測定できる。これにより、実装時に近い放熱特性を評価することが可能である。
【0089】
さらに、両者の温度差を算出することで、放熱シート145aの放熱特性(熱抵抗)を知ることもできるため、放熱シート等の放熱材料の開発においても有用なデータを取得することができる。
【0090】
<評価システムの構成部材>
図15および図16により、本発明の実施の形態3に係る評価システムの構成部材について説明する。図15は本発明の実施の形態3に係る評価システムの構成部材の一例を示す図、図16は本発明の実施の形態3に係る評価システムの配置例について説明するための説明図である。
【0091】
本実施の形態の評価システム140は、例えば、図15に例示するような部材によって構成することができる。
【0092】
また、評価システム140に搭載された評価用半導体チップには、例えば図16に例示するような部材が用いられる。
【0093】
図16は、3種類の評価用半導体チップ1a、1bおよび1cに形成されている測温抵抗体としての金属配線膜と、ヒータとしての金属配線膜と、電極との組み合わせを示す上面図である。
【0094】
評価用半導体チップ1aは、外形サイズが8mm×8mmであり、3×3のマトリクス状に分画された領域が隣接して配置されている金属配線膜101aと、2×2のマトリクス状に分画された領域が隣接して配置されている金属配線膜102aと、外形サイズの面積のほぼ全面に配線された電極103aとが積層されたものである。
【0095】
評価用半導体チップ1bは、外形サイズが9mm×13mmであり、3×3のマトリクス状に分画された領域が離れて配置されている金属配線膜101bと、2×2のマトリクス状に分画された領域が隣接し配置されている金属配線膜102bと、外形サイズの面積のほぼ全面に配線された電極103bとが積層されたものである。なお、本実施の形態では金属配線膜101bの領域の面積は、金属配線膜102bと同じ面積である。
【0096】
評価用半導体チップ1cは、外形サイズが15mm×25mmであり、3×3のマトリクス状に分画された領域が離れて配置されている金属配線膜101bと、2×2のマトリクス状に分画された領域が隣接し配置されている金属配線膜102bと、外形サイズの面積のほぼ全面に配線された電極103bとが積層されたものである。なお、本実施の形態では金属配線膜101bの領域の面積は、金属配線膜102bと同じ面積である。
【0097】
<放熱材料の放熱特性評価の具体例>
以下、本実施の形態に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例について説明する。ただし、本発明は、これらの具体例によって限定されるものではない。
【0098】
図17〜図24により、本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例について説明する。図17〜図24は本発明の実施の形態3に係る評価システムによる放熱特性評価の具体的例を説明するための説明図であり、図17、図19、図21は評価システムの構成を示す断面図、図18、図20、図22〜図24は評価結果を示す図である。
【0099】
○具体例1:温度測定評価
図17において、評価システム140aは、図14に例示した評価システム140と比較して、放熱シート145a、145b、および熱電対146を設けない構成である点が異なる。なお、各部材には、図15に記載のものを使用し、評価システム140aに搭載されている評価用半導体チップには、上述の評価用半導体チップ1bを用いた。
【0100】
具体例1では、評価用半導体チップ1bへ電力を印加して金属配線膜102を加熱すると共に、金属配線膜101と別途用意した放射温度計によって評価用半導体チップ1bの温度を測定することで、評価システム140aの測温能力を評価した。図18に、その結果を示す。
【0101】
図18は、評価用半導体チップ1bへの印加電力に対する金属配線膜101による温度測定値(□)と、放射温度計を用いて測定した温度測定値(○)とを示すグラフである。
【0102】
図18からわかるように、金属配線膜101による温度測定値(□)と放射温度計を用いて測定した温度測定値(○)との間には実質的な差は見られず、両者はよく一致した。
【0103】
この結果から、具体例1の評価システムによれば、金属配線膜102の発熱による温度の変化を、熱電対を用いることなく金属配線膜101によって正確に測定することが可能であることがわかった。
【0104】
○具体例2:領域別の温度測定評価
図19において、評価システム140bは、図17に例示した評価システム140aと比較して、ヒートスプレッダ144を用いていない点で異なる構造である。なお、各部材には、図15に記載のものを使用し、評価システム140bに搭載されている評価用半導体チップには、上述の評価用半導体チップ1bを用いた。
【0105】
具体例2では、評価用半導体チップ1bへ電力を印加して金属配線膜102を加熱すると共に、金属配線膜101による白金配線層の全測定領域1〜9(図16参照)の温度を測定した。図20に、その結果を示す。
【0106】
図20は、半導体チップ1bへの印加電力が1.3W(◇)、5.5W(□)、13.0W(△)、20.0W(○)である際の、各測定領域1〜9における温度測定値を示すグラフである。
【0107】
図20からわかるように、評価用半導体チップ1bへの印加電力が上昇するに従って、各測定領域における温度も上昇した。また、測定領域別にみれば、評価用半導体チップの中央の測定領域5の温度が全体で最も高く、逆に評価用半導体チップ端の測定領域1、3、7、9の温度は、比較的抑えられていた。
【0108】
また、この傾向は、印加電力が大きくなるにつれて顕著になる。これらは、評価用半導体チップの中央は熱が籠り易く、端側は熱が逃げ易いことを示している。この結果から、具体例2では、金属配線膜102の発熱による温度の変化を、金属配線膜101の各領域ごとに正確に測定することが可能であることがわかった。
【0109】
このように、具体例2の評価システムによれば、実パッケージの発熱構造を再現可能であると共に、その発熱挙動(放熱特性)の正確な温度プロファイルを各領域ごとに得ることができる。
【0110】
○具体例3:放熱シートの有無による温度測定評価
図21において、評価システム140cは、図17に例示した評価システム140aとはヒートスプレッダ144を使用していない点で異なる。また、ヒートスプレッダ144に代えて、放熱材料として放熱シート145を使用する場合についても測温を行った。なお、各部材には、図15に記載のものを使用し、評価システム110に搭載されている評価用半導体チップには、上述の評価用半導体チップ1aを用いた。
【0111】
具体例3では、評価システム140cに放熱シート145を使用した場合と、使用していない場合とで、金属配線膜101による白金配線層の全測定領域1〜9(図16参照)の温度を測定した。なお、評価用半導体チップ1aへの印加電力は同一とした。
【0112】
図22は、評価用半導体チップ1aへの印加電力が15Wの際の、放熱シート145を使用した場合の各測定領域1〜9における温度測定結果(□)と、放熱シート145を使用しなかった場合の各測定領域1〜9における温度測定結果(○)と、を示すグラフである。
【0113】
図22からもわかるように、放熱シートを評価用半導体チップと放熱板との間に設けた温度(□)は、放熱材料を用いない温度(○)と比較して、全領域に渡って低いことがわかった。これは、高熱伝導性の放熱材料を用いることにより、評価用半導体チップで発生した熱が放熱板へと効率よく伝導したことを示している。また、放熱シートにより、各測定領域間の温度分布が低減されていることもわかった。
【0114】
これは、評価用半導体チップ1aと放熱板の密着性が向上したことで、接触抵抗が低減され、評価用半導体チップ1aで発生した熱が面内に効率よく分散して伝導したことを示している。
【0115】
このように、具体例3の評価システムによれば、放熱材料等の部材ごとの放熱特性や、その効果を評価できる。
【0116】
○具体例4:グリース放熱材料の温度サイクル信頼性試験
具体例4では、評価システム140dを、以下に記載するような温度サイクル試験の前後で、一定の印加電力の下、全測定領域1〜9(図16参照)の温度を測定することにより、グリース放熱材料の放熱特性の変化を検出して、そこから材料寿命評価を行った。
【0117】
なお、評価システム140dは、評価システム140cの評価用半導体チップ1aの代わりに評価用半導体チップ1cに、また放熱材料をシートからグリースに代えただけであるため、図は省略する。
【0118】
温度サイクル試験は、−40℃で30分間保持した後、1分で+130℃までテストエリア内の温度を上昇させて同温度を30分間保持した後、再び1分で−40℃まで下降させて同温度を30分間保持するサイクルを、1000回繰り返すことで行った。
【0119】
放熱グリースは、塗布する際に気泡を巻き込むことがあるが、その量や大きさ、場所は一定ではなく、その結果として、放熱グリース自体の正しい放熱特性を検出することは必ずしも簡単ではない。また、放熱グリース内に混入した気泡は温度サイクル試験にも影響を与えることがある。
【0120】
図23は、同一の評価用半導体チップ(評価用半導体チップ1c)、同一放熱グリースから作製した試料Aおよび試料Bについて温度サイクル試験の繰り返し再現性に関する実験結果例の一部を示したものである。放熱グリースは、温度サイクル試験に評価用半導体チップと放熱板の間からはみ出していく現象がしばしば観察される。この現象は、ポンプアウトと呼ばれており、温度サイクル試験における放熱グリースの熱伝導特性変動の主要原因と言われている。
【0121】
図23に例示した試料A、試料Bの温度サイクル試験の結果においても、ポンプアウトによって、まず、放熱グリース厚の減少による放熱性改善が起こり、その後に、さらなるポンプアウトによる放熱グリース不足が発生して、放熱性が劣化する現象が確認されている。
【0122】
しかし、試料Aと試料Bの放熱特性変化を詳しく解析すると、同一電力印加の条件で計測しているにもかかわらず、試料Aと試料Bでは、その示す温度が異なっており、その変化挙動は必ずしも同じではない。その原因を調べるために、試料A、Bと同様の構成にて作製した試料X、Yにおいて、そのチップ内の温度測定分布を測定した。
【0123】
測定結果の一部を図24に示す。試料X、試料Yは、初期段階での面内平均温度において6℃の差異が生じており、特に特定のいくつかの領域において、その差異が顕著になっている。
【0124】
また、グリース内混入気泡を別途観察したところ、図24において特に温度差が顕著な領域の近傍に気泡が含在していることが確認できた。放熱グリース内に気泡が混入した状態のまま温度サイクル試験に供すると、試験中の放熱グリースのポンプアウトと供に気泡も排出されることになるが、気泡混入した量がランダムであるため、必然的に放熱変動がチップごとに異なる挙動を示すことになるわけである。
【0125】
具体例4の評価システムを用いて、チップ内の温度分布を計測しながら温度サイクル試験を実施することによって、このようなランダムに混入した気泡の影響を評価することができるようになるのである。つまり、混入気泡の影響を非破壊に観察することにより、放熱材料と放熱板間の密着性変化を検出できる。
【0126】
(実施の形態4)
<評価用半導体チップの構成>
図25により、本発明の実施の形態4に係る評価用半導体チップの構成について説明する。図25は本発明の実施の形態4に係る評価用半導体チップの構成を示す断面図であり、デバイスチップとして構成した一例である。
【0127】
図25において、評価用半導体チップ6は、半導体素子600およびその接続のための開口部60を有している点で、図1に示す評価用半導体チップ1とは異なるものである。
【0128】
具体的に、評価用半導体チップ6は、シリコン基板100の一方の面に設けられた半導体素子600と、当該半導体素子600とは接触しないように設けられた測温抵抗体としての金属配線膜101と、絶縁層としてのポリイミド膜604a、ヒータとしての金属配線膜102と、絶縁層としてのポリイミド膜604bと、半導体素子600、金属配線膜101および金属配線膜102と電気的に接続される電極103と、保護層としてのポリイミド膜604cと、が次積層されてなる。
【0129】
なお、外部の基板との接続には、Auバンプ614が利用されるものとする。また、ここでは半導体素子600と金属配線膜101は電気的に接続されていない構成としているが、金属配線膜101および金属配線膜102のいずれかと半導体素子600とが接続されていてもよい。
【0130】
さらに、評価用半導体チップ6は上記構成に限定されず、前述の変形例2〜4と同様の変形が可能である。
【0131】
また、評価用半導体チップ6を基板へ実装して実施の形態2、3において説明した評価システムを作成すれば、同様にさまざまな温度プロファイルを得ることも可能である。
【0132】
以上、本発明の評価用半導体チップとその評価システムについて説明した。
【0133】
本発明によれば、ヒータが半導体チップの発熱源である半導体素子を模しているため、抵抗測温体は、発熱源から数μm〜数十μmの位置における温度を測定することができる。また、発熱源である半導体チップと基板の接合部の温度プロファイルを正確に測定することで、接合プロセスの最適化を図れるだけでなく、接合部材の開発にも極めて重要なデータを得ることができる。
【0134】
また、例えば高温高湿試験等では、試験槽内で高温に晒すことで構成部材の耐久性を評価するものであるため実際に内部から発熱する半導体チップの実装時の状況を再現することは困難であったが、本発明によれば、ヒータで半導体チップを直接加熱することが可能であるため、従来の試験槽内を加熱する方法に比べて正確な温度プロファイルが可能である。
【0135】
加えて、測温膜(金属配線膜101)自身の熱容量が最小化された評価用半導体チップを用いることで、特に温度サイクル試験においての加熱、冷却に要する時間を大幅に短縮することが可能である。
【0136】
例えば、加熱と冷却にそれぞれ30分かかれば、1000サイクルに到達するまでには42日間が必要となる。しかしながら、本発明によれば、加熱、冷却がそれぞれ5分程度で可能となるため、大幅に開発時間を短縮させられると共に、要するエネルギーも抑えることができる。
【0137】
さらに、リフロー炉や高圧プレス加熱加圧装置等の大規模施設を実際に使用せずに、ヒータによって同様の熱履歴を再現することができる。
【0138】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、半導体装置および放熱材料の評価技術に関し、半導体チップの放熱特性評価を行う装置やシステムなどに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0140】
1〜5…評価用半導体チップ、6:評価用半導体チップ(デバイスチップ)、11、12、21、22、31、32、41、42…開口部、100…シリコン基板、101…金属配線膜、101a…PtO膜、101b…Pt膜、101c…TiO膜、102…金属配線膜、103…電極、1011、1021…端子、1022…シールド、1031、1032…外部接続用電極、104a〜104c…ポリイミド膜、111…配線基板、113…配線基板、113a、113b…基板配線、114…はんだバンプ、115…アンダーフィル材、110、120、140、140a〜140c…評価システム、141…断熱性ネジ、142…コネクタ、143…ハーネス、144…ヒートスプレッダ、145、145a、145b…放熱シート、146…熱電対、147…シール材、148…放熱板、201、202、301、302、402…金属配線膜、304、404…ポリイミド膜、501…スルーホール、600…半導体素子、604、604a〜604c…ポリイミド膜、611…基板、614…Auバンプ、900…配線群、901…高温プレス加熱加圧装置、902…リフロー炉、903…移動ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを評価するための評価用半導体チップであって、
前記半導体チップを構成する半導体基板と、
前記半導体基板の面上に、複数領域からなる抵抗測温体およびヒータを兼用で構成する複数の第1の配線と、前記第1の配線に電気的に接続された第1の電極とが形成されたことを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項2】
半導体チップを評価するための評価用半導体チップであって、
前記半導体チップを構成する半導体基板と、
前記半導体基板の面上に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の第1の配線と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の第2の配線と、前記第1の配線に電気的に接続された第1の電極と、前記第2の配線に電気的に接続された第2の電極とが形成されたことを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項3】
請求項2に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第1の配線と前記第2の配線とは、絶縁層を挟んで、積層されていることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項4】
請求項3に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第1の配線は、前記第2の配線よりも前記半導体基板側に設けられていることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項5】
請求項3に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第2の配線は、前記第1の配線よりも前記半導体基板側に設けられていることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第1の配線の領域の数は、前記第2の配線の領域の数以上であることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第2の配線が設けられた1つあたりの領域の広さは、前記第1の配線が設けられた1つあたりの領域の広さ以上であることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項8】
請求項2に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第1の配線と前記第2の配線とは、前記半導体基板上の同一の面内に配置されていることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第1の配線は、白金配線であることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項10】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第2の配線は、ニッケル配線、または銅配線であることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1項に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第1の配線は、領域ごとに対になった前記第1の電極を有し、前記第2の配線は、領域ごとに対になった前記第2の電極を有していることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項12】
請求項1または11に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第1の配線の1つの領域について、4つの前記第1の電極を有することを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項13】
請求項1に記載の評価用半導体チップにおいて、
前記第1の配線は、ニッケル配線または銅配線であることを特徴とする評価用半導体チップ。
【請求項14】
半導体チップを評価するための評価システムであって、
前記半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体およびヒータを兼用で構成する複数の第1の配線と、前記第1の配線を電気的に接続するための電極とを有する評価用半導体チップと、
前記評価用半導体チップを実装する実装基板と、
前記評価用半導体チップの前記半導体基板の他方の面側に、前記実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料とを備え、
前記第1の配線を電源、電流計および電圧計に電気的に接続して、前記第1の配線の領域ごとに加熱および測温を行うことを特徴とする評価システム。
【請求項15】
半導体チップを評価するための評価システムであって、
前記半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の第1の配線と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の第2の配線と、前記第1の配線に電気的に接続された第1の電極と、前記第2の配線に電気的に接続された第2の電極とを有する評価用半導体チップと、
前記評価用半導体チップを実装する実装基板と、
前記評価用半導体チップの前記半導体基板の他方の面側に、前記実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料とを備え、
前記第2の配線に電源を電気的に接続して、前記第2の配線の領域ごとに加熱を行い、前記第1の配線に電流計および電圧計を電気的に接続して、前記第1の配線の領域ごとに測温を行うことを特徴とする評価システム。
【請求項16】
請求項15に記載の評価システムにおいて、
前記評価用半導体チップの前記第1の配線と前記第2の配線とは、絶縁層を挟んで、積層されていることを特徴とする評価システム。
【請求項17】
請求項15に記載の評価システムにおいて、
前記評価用半導体チップの前記第1の配線は、前記評価用半導体チップの前記第2の配線よりも前記半導体基板側に設けられていることを特徴とする評価システム。
【請求項18】
請求項15に記載の評価システムにおいて、
前記評価用半導体チップの前記第2の配線は、前記評価用半導体チップの前記第1の配線よりも前記半導体基板側に設けられていることを特徴とする評価システム。
【請求項19】
請求項15に記載の評価システムにおいて、
前記第1の配線と前記第2の配線とは、前記半導体基板上の同一面内に形成されていることを特徴とする評価システム。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の評価システムにおいて、
前記第1の配線が、白金配線であることを特徴とする評価システム。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか1項に記載の評価システムにおいて、
前記第2の配線が、ニッケル配線または銅配線であることを特徴とする評価システム。
【請求項22】
請求項14に記載の評価システムにおいて、
前記第1の配線は、ニッケル配線または銅配線であることを特徴とする評価システム。
【請求項23】
請求項14〜22のいずれか1項に記載の評価システムにおいて、
前記放熱材料を前記実装基板と前記放熱板に固定した際の半導体チップ温度を測定する温度測定手段を備えたことを特徴とする評価システム。
【請求項24】
請求項14〜23のいずれか1項に記載の評価システムにおいて、
前記放熱材料は、前記実装基板に固定されていることを特徴とする評価システム。
【請求項25】
半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体およびヒータを兼用で構成する複数の第1の配線と、前記第1の配線を電気的に接続するための電極とを有する評価用半導体チップと、前記評価用半導体チップを実装する実装基板と、前記評価用半導体チップの前記半導体基板の他方の面側に、前記実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料とを備えた評価システムにおける放熱材料評価方法であって、
前記第1の配線を電源、電流計および電圧計に電気的に接続して、前記第1の配線の領域ごとに加熱および測温を行い、その領域ごとの測温結果に基づいて、前記放熱材料の前記放熱板との密着性の変化を検出することを特徴とする放熱材料評価方法。
【請求項26】
半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の第1の配線と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の第2の配線と、前記第1の配線に電気的に接続された第1の電極と、前記第2の配線に電気的に接続された第2の電極とを有する評価用半導体チップと、前記評価用半導体チップを実装する実装基板と、前記評価用半導体チップの前記半導体基板の他方の面側に、前記実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料とを備えた評価システムにおける放熱材料評価方法であって、
前記第2の配線に電源を電気的に接続して、前記第2の配線の領域ごとに加熱を行い、前記第1の配線に電流計および電圧計を電気的に接続して、前記第1の配線の前記領域ごとに測温を行い、その領域ごとの測温結果に基づいて、前記放熱材料の前記放熱板との密着性の変化を検出することを特徴とする放熱材料評価方法。
【請求項27】
半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体およびヒータを兼用で構成する複数の第1の配線と、前記第1の配線を電気的に接続するための電極とを有する評価用半導体チップと、前記評価用半導体チップを実装する実装基板と、前記評価用半導体チップの前記半導体基板の他方の面側に、前記実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料と、前記評価用半導体チップと前記実装基板との間に充填された硬化性樹脂材料とを備えた評価システムにおける放熱材料評価方法であって、
前記第1の配線を電源、電流計および電圧計に電気的に接続して、前記第1の配線の領域ごとに加熱および測温を行い、その領域ごとの測温結果に基づいて、前記硬化性樹脂材料の充填状態および硬化状態を計測することを特徴とする放熱材料評価方法。
【請求項28】
半導体チップを構成する半導体基板の一方の面に、複数領域からなる抵抗測温体を構成する複数の第1の配線と、1つまたは複数領域からなるヒータを構成する1つまたは複数の第2の配線と、前記第1の配線に電気的に接続された第1の電極と、前記第2の配線に電気的に接続された第2の電極とを有する評価用半導体チップと、前記評価用半導体チップを実装する実装基板と、前記評価用半導体チップの前記半導体基板の他方の面側に、前記実装基板と放熱板との間に固定された放熱材料と、前記評価用半導体チップと前記実装基板との間に充填された硬化性樹脂材料とを備えた評価システムにおける放熱材料評価方法であって、
前記第2の配線に電源を電気的に接続して、前記第2の配線の領域ごとに加熱を行い、前記第1の配線に電流計および電圧計を電気的に接続して、前記第1の配線の領域ごとに測温を行い、その領域ごとの測温結果に基づいて、前記硬化性樹脂材料の充填状態および硬化状態を計測することを特徴とする放熱材料評価方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図2】
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【図3】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−184990(P2012−184990A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47366(P2011−47366)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】