試料検査用プレート
【課題】軽量で、破損し難い、嵩張らず、複数個の試料の検査も容易に可能である安価な試料検査用プレートを提供する。
【解決手段】合成樹脂シート2上に少なくとも1個の隆起壁3により囲繞された試料採取部4を少なくとも1個設け、外周に隆起枠5を周設したことを特徴とする試料検査用プレートである。
【解決手段】合成樹脂シート2上に少なくとも1個の隆起壁3により囲繞された試料採取部4を少なくとも1個設け、外周に隆起枠5を周設したことを特徴とする試料検査用プレートである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、破損し難く、嵩張らず、複数個の試料検査も容易に可能である安価な試料検査用プレートに関し、更に詳しくは、特に、病原大腸菌免疫血清凝集反応に使用する糞便試料の検査用プレートとして、また、血液、血清、唾液、尿その他の液体試料等で使用することができる凝集反応用汎用プレートに好適な試料検査用プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では都市集中型生活、流通機構の拡大、輸入食品・輸入食材などにより生活様式が変化し、食中毒の多様化、大型化、広域化の原因となっている。
食中毒・感染性腸炎への今日的なアプローチとして、検査結果の早急な対応が必要不可欠となっている。病原大腸菌はヒトの腸管内正常細菌叢に含まれる腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌で、下痢、急性胃腸炎又は大腸炎などの腸管感染症の原因菌となる。病原大腸菌はその病原性機構の違いによって、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管毒素性大腸菌、腸管出血性大腸菌の4つに大きく分類されている。それぞれの病原大腸菌は特定の血清型を調べて病原大腸菌を推定する。
【0003】
この種のものとしては、従来、水切放スライドガラス(76×26ml)を使用しガラス鉛筆で8区画割をするか、又は、水切放スライドガラス8枠数字入りとして、境界線を白色塗料で区画割をしたものが使用されている(例えば、非特許文献1参照)。これの特徴としては、顕微鏡観察が可能であり、大腸菌菌濁液をそれぞれの区画に滴下し混合血清を滴加し凝集反応の有無を観察判定するものである。
【非特許文献1】「細菌検査用スライドグラス」(松浪硝子工業株式会社製カタログ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した水切放スライドガラスは操作中に誤って指を切ることがあり、更には、重量が大きく破損しやすいこと、嵩張ること、区画割で隣接する区画間で試料が混ざりあいコンタミネーションを起こしやすく判定が不確実になりやすい等問題が多く、作業性、効率性、作業者の安全性等の点で多くの問題を含んでいる。
【0005】
また、ガラス製であるため高価となり、従って、使い捨てではなく洗浄して再利用される場合も多いが、洗浄中においても破損したり、指を切ることが多く、また洗浄が不十分な場合には検査結果に悪影響を与える等の問題もある。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、上記従来技術の問題点を解消し、検体のコンタミネーションを防ぎ、軽量で、破損し難く、且つ、作業者の安全性の高く、使い捨てにも適した安価な試料検査用プレートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の請求項1は、合成樹脂シート上に少なくとも1個の隆起壁により囲繞された試料採取部を少なくとも1個設けたことを特徴とする試料検査用プレートを内容とする。
【0008】
本発明の請求項2は、試料採取部が複数個である請求項1記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0009】
本発明の請求項3は、試料採取部が矩形状又は楕円形状である請求項1又は2記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0010】
本発明の請求項4は、試料採取部の底部が傾斜した形状からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0011】
本発明の請求項5は、試料採取部付近に識別記号を設けた請求項1〜4ののいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0012】
本発明の請求項6は、記録部を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0013】
本発明の請求項7は、試料採取部が内側及び外側の2個の隆起壁により囲繞されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0014】
本発明の請求項8は、外周に隆起枠を周設した請求項1〜7のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0015】
本発明の請求項9は、把持部を延設した請求項1〜8のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0016】
本発明の請求項10は、病原大腸菌免疫血清凝集反応用である請求項1〜9のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0017】
本発明の請求項11は、試料採取部が8個からなり、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との間に識別手段が施されている請求項10記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0018】
本発明の請求項12は、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との識別手段が第2番目〜第8番目の試料採取部の間隔よりも広い間隔からなる請求項11記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0019】
本発明の請求項13は、真空成形により成形された請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0020】
本発明の請求項14は、射出成形により成形された請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の試料検査用プレートは、合成樹脂シート上に隆起壁により囲繞された試料採取部を少なくとも1個設けたので、従来のガラス製のものに比べ、軽量で、破損し難く、嵩張らず、作業者にとって極めて安全である。
【0022】
また、試料採取部は隆起壁により囲繞されているので試料が洩出することがなく、特に、試料採取部を複数個設けた場合には、隣接する試料採取部は隆起壁により明確にそれぞれ区画されているので、隣接する試料採取部の試料が混ざりあうことが防止され、コンタミネーションにより判定が不確実になるというトラブルが防止される。
【0023】
また、試料採取部は矩形状又は楕円形状であることが好ましい。例えば、病原大腸菌免疫血清凝集反応においては、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を試料採取部内で上下又は左右に移動させて凝集の有無を判定するので、移動させる距離を取り易い矩形状又は楕円形状が好ましい。
【0024】
また、試料採取部は、底部が傾斜した形状からなることが好ましい。これは、例えば、上記したように、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を上下又は左右に移動させ易いためである。
【0025】
また、試料採取部を形成する隆起壁を2個、例えば内側と外側の如く2重に設けた場合は、採取部から洩れた試料は先ず隣り合う内側隆起壁と外側隆起壁との間の凹部に留まり、万一、凹部から洩れたとしても外周の隆起枠により堰止められ洩出が阻止されるので好ましい。
【0026】
また、試料採取部は合成樹脂シート上に所望の個数だけ容易に設けられるので、複数個の試料を同時に1枚のプレートに採取することができ、検査の作業性、効率性が飛躍的に高められる。
【0027】
また、試料採取部付近に識別記号を設けることにより、各試料採取部を明確に区別することができ、検査の作業性及び信頼性を高めることができる。
【0028】
また、記録部を設けることにより、試料提供者の氏名、番号、記号等が記載でき、検査の作業性及び信頼性を高めることができる。
【0029】
また、試料採取用プレートの外周に隆起枠を周設することにより、採取部から洩れた試料は該隆起枠によりせき止められ、プレート外への漏出が防止される。また、隆起枠を周設することにより、薄い合成樹脂シートを使用しても剛性が付与されるので、原料樹脂量が節約でき、安価な試料検査用プレートを提供することができる。
【0030】
また、把持部を設けることにより、プレートが取り扱い易くなり作業性が大巾に向上する。この場合、好ましくは隆起した把持部を設けることにより、万一、試料が採取部から洩れ出しても手に触れることがなく衛生的である。
【0031】
また、病原大腸菌免疫血清凝集反応用に用いる場合は、混合血清の凝集判定のためには8個の試料採取部を設け、次の単味血清を用いた凝集判定のために、第1番目の試料採取部を対照のための混合血清用とし、第2番目以降の試料採取部を単味血清用とするのが好ましく、更に、この第1番目の混合血清用と第2番目以降の単味血清用とを混同しないように区別することが好ましく、このような区別としては、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との間隔を第2番目〜第8番目の試料採取部の間隔よりも広い間隔とすれば、成形と同時にできるとともに一目瞭然に区別し得る点で好ましい。
【0032】
本発明の試料検査用プレートは、合成樹脂を真空成形又は射出成形により作製することにより、容易に且つ安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の試料検査用プレートは、合成樹脂シート上に少なくとも1個の隆起壁により囲繞された試料採取部を少なくとも1個設けたことを特徴とする。
【0034】
本発明に用いられる合成樹脂としては、透明性等光学的特性及び耐薬品性に優れ、吸水性の小さいものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート等が挙げられる。これらの中で、ポリエステルが透明性、経済性等の点で好ましい。
【0035】
合成樹脂シート上に、隆起壁により囲繞された試料採取部が設けられる。試料採取部の形状は、矩形、円形、楕円形、多角形等のいずれでもよく、そのサイズも特に制限されないが、通常、矩形の場合は一辺が、また円形の場合は直径が、楕円形の場合は長径又は短径が、8〜20mm程度のものが好ましい。あまり小さい場合は試料の採取が困難であり、一方、あまり大きくても意味がなく、却って、取り扱い性が悪くなるとともに、材料費が大きくなり不経済である。
【0036】
特に、病原大腸菌免疫血清凝集反応用の場合は、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を上下又は左右に移動させることにより凝集の有無を肉眼で判定するので、移動させる距離を取り易い矩形状又は楕円形状の試料採取部が好ましい。この場合は、液量と移動させて判定する作業性とから、長辺又は長径8〜25mm、短辺又は短径3〜8mm程度の矩形状又は楕円形状が好ましい。
【0037】
隆起壁は試料が採取部から洩れ出さないように堰止めるもので、少なくとも1個(1重)設けられる。上限は特に制限されないが、実用性の面からは3個(3重)程度が好ましく、より好ましくは内側と外側の2個(2重)である。
【0038】
隆起壁は幅0.5〜1.5mm程度、高さ0.5〜5.0mm程度のものが好ましい。隆起壁を複数個重ねて設ける場合、その間隔は1.5〜3mm程度が好ましい。
【0039】
本発明の試料検査用プレートは、作業性や取り扱い性の面から一辺が50〜200mm程度、好ましくは50〜150mm程度の矩形が好ましく、厚さは1.0〜5mm程度が好ましい。
試料検査用プレートには、試料採取部が少なくとも1個設けられるが、作業性や効率面から複数個設けるのが好ましく、3個以上設けるのがより好ましい。上限は特に制限されないが、余り多くなると該検査用プレートのサイズも大きくならざるを得ず、作業性や取り扱い性が低下するので20個程度が好ましい。例えば、病原大腸菌免疫血清凝集反応用の場合は8個設けるのが好ましい。
【0040】
また、病原大腸菌免疫血清凝集反応用の場合は、先ず混合血清(混合1〜8)で凝集の有無を観察し、次いで、混合血清で陽性と判定された場合、その混合血清を構成する単味血清を用いて同様に凝集の有無を判定する。
従って、前者の混合血清の凝集判定のためには8個の試料採取部が必要で、後者の単味血清を用いた凝集判定のためには、例えば、第1番目の試料採取部を対照のための混合血清用とし、第2番目以降の試料採取部を単味血清用とするのが好ましい。更に、この第1番目の混合血清用と第2番目以降の単味血清用とを混同しないように区別することが好ましく、このような区別としては、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との間隔を他の試料採取部の間隔よりも少し広く開ける、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取との間に区画壁を立設する、区画線を引く、等が好ましい。
【0041】
また、病原大腸菌免疫血清凝集反応用の場合は、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を試料採取部内で移動させて(底面を流して)肉眼で判定するので底部を傾斜せるのが好ましい。傾斜は矩形の場合は長辺の方向に、楕円形の場合は長径の方向に傾斜させ、傾斜の角度は5度以下が好ましく、より好ましくは1〜3度である。
【0042】
試料採取部の近傍に、各試料採取部を区別するために、番号、アルファベット等の識別記号を設けたり、また、試料提供者の氏名や番号、記号等を記録するための記録部を設けることにより、作業性や信頼性を高めることができる。識別記号は印刷等により設けることもできるが、成形と同時に凸状又は凹状に刻印するのが好ましい。記録部は、例えば、筆記性を高めるために表面を荒らしたり、梨地状とすることにより設けられる。
更に、試料検査用プレートの上下を一見して区別できるように合成樹脂シートの角部のアール(丸味)を変える、目印をつける、等のマーキングを施し、作業性及び検査の信頼性を高めることも可能である。
【0043】
本発明の試料採取用プレートの外周に隆起枠を周設することにより、採取部から洩れた試料は該隆起枠によりせき止められ、プレート外への漏出が防止される。また、薄い合成樹脂シートを使用しても剛性が付与されるので、樹脂量が節約でき、安価な試料検査用プレートを提供することができる。
【0044】
また、本発明の試料検査用プレートは、把持部を設けることにより、取り扱い性が向上し、検査の作業性が向上する。把持部は外周の隆起枠内に設けてもよく、また隆起枠外に延設してもよい。外周の隆起枠内に設ける場合は、万一、洩出した試料が手に触れないように、試料採取部とは突設した壁又は凹溝を介在せしめるか、一段と高く設けることが好ましい。
把持部を隆起枠外に延設する場合の形状は特に制限されないが、例えば、試料検査用プレートの外周に舌片状の把持部を設ける、該プレートと略同幅の把持片を折り曲げ溝部を介して延設し、使用時に所定の角度だけ斜上方に折り曲げて把持部とする、等が好ましい。
【0045】
本発明の試料検査用プレートは、射出成形、圧縮成形、真空成形、圧空成形等で容易に成形されるが、特に、真空成形が薄い合成樹脂シート(フィルム)を用いて成形できるので原料樹脂量も節約でき、軽量で且つ安価な試料検査用プレートを提供できる点で好ましい。
【0046】
上記の如き本発明の試料検査用プレートには、必要に応じ、カバーを設けることができる。カバーは、試料の蒸発を防ぐ、埃の混入を防ぐ、漏出を防ぐ等の効果がある。従って、カバーは少なくとも試料採取部を覆うに十分なサイズのものが必要である。カバーは試料検査用プレートに密着する接着性を有し、水分を透過させない水分バリヤー性及び透明性を有する合成樹脂フィルムが好ましく、このようなフィルムとしては、ポリエチレン、2軸延伸ポリプロピレン、防湿セロファン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。カバーフィルムの厚みは特に制限されないが、50〜300μm程度のものが好ましい。
【0047】
カバーは、必要に応じ、両端を該プレートに接着剤、粘着剤で仮(弱)接着して着脱自在に接着してもよく、この場合、接着剤又は粘着剤、離型紙の順に積層し、接着又は仮(弱)接着したい場合には、該離型紙を剥がし取って接着剤又は粘着剤を露出させて仮(弱)接着させるのが便利である。また、一端を試料検査用プレートの一端にヒートシールや接着剤、粘着剤により接着しカバーの他端を開閉自在としてもよい。
また、合成樹脂シートの端部を一部切り欠いて、その部分はカバーのみとしたり、また一部を突出させてカバーを指で摘み易くしておくことにより、カバーの開閉操作を容易にすることができる。
【0048】
上記の如き本発明の試料検査用プレートは、病原大腸菌免疫血清凝集反応に使用する糞便試料や、血液、血清、尿、唾液等の凝集反応用汎用プレートとして特に有用であるが、サルモネラ菌、赤痢菌等の抗体検査等にも使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
図1は、本実施例の試料検査用プレートを示すもので、図1(a)は上面図、図1(b)はA−A断面図である。
これらの図において、試料検査用プレート1は真空成形により成形され、合成樹脂シート2の表面に、隆起壁3により囲繞された試料採取部4が8個形成され、外周に隆起枠5が周設され、更に、短辺側の1辺には隆起した把持部6及び/又は記録部9が設けられている。
【0051】
本実施例では、隆起壁3は、試料が試料採取部4の隅に滞留しないように試料採取部4側が末拡がりのテーパー状に形成されている。また、各試料採取部4の上方部には、識別記号として番号が刻設(本例では凹設)されており、これにより各試料採取部内の各試料が識別される。
【0052】
上記試料検査用プレート1は、試料採取部4に血液、糞便から分離した大腸菌菌濁液等の試料が採取される。採取部4より洩れ出した試料は外周の隆起枠5により堰止められる。この場合、把持部6及び/又は記録部9は隆起して形成されているので、洩れ出した試料により、手指が汚染されることがない。記録部9には、試料提供者等を記録することができる。
【0053】
実施例2
図2は本実施例の試料検査用プレートを示す上面図で、把持部6が短辺側の他の1辺、即ち右側に設けられている他は実施例1と同じである。
本実施例の試料検査用プレート1は、実施例1の試料検査用プレート1が左手で把持部6を把持するのに対し、右手で把持部6を把持するのに適している。
【0054】
実施例3
図3は本実施例の試料検査用プレートを示し、図3(a)は上面図、図3(b)はB−B断面図、図3(c)はC−C拡大断面図で、実施例1の試料検査用プレート1の試料採取部4の底部4aを傾斜した形状とした他は実施例1と同様の構成からなる。
【0055】
即ち、図3(c)に示すように、試料採取部4の底部4aが長辺方向に約2度傾斜した形状(図では、上部の識別記号11の側が高く、下部が低い。低い方を2本の線で示す)に構成されている。
このように構成することにより、例えば、本実施例の試料検査プレート1を用いて病原大腸菌免疫血清凝集反応を観察する場合、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を該採取部4の底部4a上を移動させ(流して)凝集反応を肉眼で観察することが容易になる。
【0056】
実施例4
図4は本実施例の試料検査用プレートを示し、実施例1の試料検査用プレート1において、「1」の識別記号が付された試料採取部4Aと「2」の識別記号が付された試料採取部4Bとの間隔を大きくして「1」の識別記号が付された試料採取部4Aと2〜8の識別記号が付された試料採取部4Bとを区別し得るようにした例を示す。
このように構成することにより、例えば、単味血清を用いた凝集判定をする場合、試料採取部4Aには対照のために混合血清用とし、残りの7個の試料採取部4Bを単味血清用として用いることにより、両者が混同するトラブルが防止される。
【0057】
実施例5
図5は本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例1の試料検査用プレート1において、各試料採取部4の上部に記録部12が設けられている他は実施例1と同じである。
【0058】
実施例6
図6は本実施例の試料検査用プレートを示し、図6(a)は上面図、図6(b)はD−D断面図で、実施例1の試料検査用プレート1において、カバー7が設けられている他は実施例1と同じである。
即ち、合成樹脂フィルムからなるカバー7の短辺側のうち把持部6及び/又は記録部9を設けていない側を隆起枠5にヒートシールにより接続してヒンジ8とした例である。本実施例ではカバー7の把持部6及び/又は記録部9側を少し長くして突縁部7aを設けているので、この突縁部7aを摘んでカバー7を容易に開閉することができる。
本実施例の試料検査用プレート1は、カバー7をヒンジ8を介して開き、試料採取部4けに試料を採取した後、カバー7を被着し、試料の蒸発や、埃が入るのを防止することができる。
【0059】
実施例7
図7は、本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例1の試料検査用プレートにおいて、把持部13を延設した他は実施例1と同じである。
即ち、試料検査用プレート1の把持部6及び/又は記録部9の反対側の外周隆起枠5に舌片状(半円状)の把持部13が延設されている。把持部13の隆起枠5付近に折り線14が刻設され、必要に応じ、折り線14を介して所望の角度で斜め上方又は略直立に起立させて摘み易くして使用される。
【0060】
実施例8
図8は本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例4の試料検査用プレートにおいて、把持部13を延設した他は実施例4と同じである。
即ち、試料検査用プレート1の把持部6及び/又は記録部9の反対側の外周隆起枠5に矩形状の把持片を延設し、折り線14により略三角形状の把持部13a、13bを形成し、把持部13a、13bを折り線14を介して所望の角度で斜上方又は略直立に起立させ摘み易くして使用される。
【0061】
実施例9
図9は、本実施例の試料検査用プレートを示すもので、図9(a)は上面図、図9(b)はE−E断面図である。
これらの図において、試料検査用プレート1は射出成形により成形され、合成樹脂シート2の表面に、内側隆起壁3a及び外側隆起壁3bにより2重に囲繞された試料採取部4が1列に8個形成され、外周に隆起枠5が周設され、更に短辺側の両辺には把持部6が設けられている。
【0062】
また、各試料採取部4の上方部には、識別番号として番号が刻設されており、これにより各試料採取部内の試料が識別される。
【0063】
上記試料検査用プレート1は、試料採取部4に血液、糞便から分離した大腸菌菌濁液等の試料が採取される。採取部4より洩れ出した試料は先ず内側隆起部3aと外側隆起壁3bとの間の凹部10に留まり、採取部4からの洩出が防止され、万一、凹部10から洩れ出した試料は外周の隆起枠5により堰止められる。
【0064】
実施例10
図10は本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例1の試料検査用プレートにおいて、試料採取部4を楕円形状とした例を示す。効果は実施例1の場合と略同じである。
【0065】
実施例11
図11は本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例4の試料検査用プレートにおいて、試料採取部4を楕円形状とした例を示す。効果は実施例4の場合と略同じである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
叙上のとおり、本発明の試料検査用プレートは合成樹脂シートからなるので軽量で、破損し難く、また薄いので嵩張らず、更に、安全性や取り扱い性に優れている。
【0067】
また、試料採取部は隆起壁により囲繞されているので試料が洩出することがなく、特に、試料採取部を複数個設けた場合には、隣接する試料採取部は隆起壁により明確にそれぞれ区画されているので、隣接する試料採取部の試料が混ざりあうことが防止され、コンタミネーションにより判定が不確実になるというトラブルが防止される。
【0068】
また、本発明の試料検査用プレートは、試料採取部を複数個設けることにより、一度に多数の試料を処理することができるので、飛躍的に作業性、効率性が高められる。本発明の試料検査用プレートは、特に、病原大腸菌免疫血清凝集反応用汎用プレートとして好適である。
【0069】
また、本発明の試料用検査プレートは、真空成形や射出成形等により容易に成形できるので、安価な試料用検査プレートを提供することができ、特に、使い捨て用としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1の試料検査用プレートを示し、(a)は上面図、(b)はA−A断面図である。
【図2】実施例2の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図3】実施例3の試料検査用プレートを示す、(a)は上面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C断面図である。
【図4】実施例4の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図5】実施例5の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図6】実施例6の試料検査用プレートを示し、(a)は上面図、(b)はD−D断面図である。
【図7】実施例7の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図8】実施例8の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図9】実施例9の試料検査用プレートを示し、(a)は上面図、(b)はE−E断面図である。
【図10】実施例10の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図11】実施例11の試料検査用プレートを示す上面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 試料検査用プレート
2 合成樹脂シート
3 隆起壁
3a 内側隆起壁
3b 外側隆起壁
4 試料採取部
4a 底部
5 外周の隆起枠
6 把持部
7 カバー
7a 突縁部
8 ヒンジ
9 記録部
10 凹部
11 識別記号
12 記録部
13、13a、13b 把持部
14 折り線
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、破損し難く、嵩張らず、複数個の試料検査も容易に可能である安価な試料検査用プレートに関し、更に詳しくは、特に、病原大腸菌免疫血清凝集反応に使用する糞便試料の検査用プレートとして、また、血液、血清、唾液、尿その他の液体試料等で使用することができる凝集反応用汎用プレートに好適な試料検査用プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では都市集中型生活、流通機構の拡大、輸入食品・輸入食材などにより生活様式が変化し、食中毒の多様化、大型化、広域化の原因となっている。
食中毒・感染性腸炎への今日的なアプローチとして、検査結果の早急な対応が必要不可欠となっている。病原大腸菌はヒトの腸管内正常細菌叢に含まれる腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌で、下痢、急性胃腸炎又は大腸炎などの腸管感染症の原因菌となる。病原大腸菌はその病原性機構の違いによって、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管毒素性大腸菌、腸管出血性大腸菌の4つに大きく分類されている。それぞれの病原大腸菌は特定の血清型を調べて病原大腸菌を推定する。
【0003】
この種のものとしては、従来、水切放スライドガラス(76×26ml)を使用しガラス鉛筆で8区画割をするか、又は、水切放スライドガラス8枠数字入りとして、境界線を白色塗料で区画割をしたものが使用されている(例えば、非特許文献1参照)。これの特徴としては、顕微鏡観察が可能であり、大腸菌菌濁液をそれぞれの区画に滴下し混合血清を滴加し凝集反応の有無を観察判定するものである。
【非特許文献1】「細菌検査用スライドグラス」(松浪硝子工業株式会社製カタログ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した水切放スライドガラスは操作中に誤って指を切ることがあり、更には、重量が大きく破損しやすいこと、嵩張ること、区画割で隣接する区画間で試料が混ざりあいコンタミネーションを起こしやすく判定が不確実になりやすい等問題が多く、作業性、効率性、作業者の安全性等の点で多くの問題を含んでいる。
【0005】
また、ガラス製であるため高価となり、従って、使い捨てではなく洗浄して再利用される場合も多いが、洗浄中においても破損したり、指を切ることが多く、また洗浄が不十分な場合には検査結果に悪影響を与える等の問題もある。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、上記従来技術の問題点を解消し、検体のコンタミネーションを防ぎ、軽量で、破損し難く、且つ、作業者の安全性の高く、使い捨てにも適した安価な試料検査用プレートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の請求項1は、合成樹脂シート上に少なくとも1個の隆起壁により囲繞された試料採取部を少なくとも1個設けたことを特徴とする試料検査用プレートを内容とする。
【0008】
本発明の請求項2は、試料採取部が複数個である請求項1記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0009】
本発明の請求項3は、試料採取部が矩形状又は楕円形状である請求項1又は2記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0010】
本発明の請求項4は、試料採取部の底部が傾斜した形状からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0011】
本発明の請求項5は、試料採取部付近に識別記号を設けた請求項1〜4ののいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0012】
本発明の請求項6は、記録部を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0013】
本発明の請求項7は、試料採取部が内側及び外側の2個の隆起壁により囲繞されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0014】
本発明の請求項8は、外周に隆起枠を周設した請求項1〜7のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0015】
本発明の請求項9は、把持部を延設した請求項1〜8のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0016】
本発明の請求項10は、病原大腸菌免疫血清凝集反応用である請求項1〜9のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0017】
本発明の請求項11は、試料採取部が8個からなり、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との間に識別手段が施されている請求項10記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0018】
本発明の請求項12は、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との識別手段が第2番目〜第8番目の試料採取部の間隔よりも広い間隔からなる請求項11記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0019】
本発明の請求項13は、真空成形により成形された請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【0020】
本発明の請求項14は、射出成形により成形された請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料検査用プレートを内容とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の試料検査用プレートは、合成樹脂シート上に隆起壁により囲繞された試料採取部を少なくとも1個設けたので、従来のガラス製のものに比べ、軽量で、破損し難く、嵩張らず、作業者にとって極めて安全である。
【0022】
また、試料採取部は隆起壁により囲繞されているので試料が洩出することがなく、特に、試料採取部を複数個設けた場合には、隣接する試料採取部は隆起壁により明確にそれぞれ区画されているので、隣接する試料採取部の試料が混ざりあうことが防止され、コンタミネーションにより判定が不確実になるというトラブルが防止される。
【0023】
また、試料採取部は矩形状又は楕円形状であることが好ましい。例えば、病原大腸菌免疫血清凝集反応においては、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を試料採取部内で上下又は左右に移動させて凝集の有無を判定するので、移動させる距離を取り易い矩形状又は楕円形状が好ましい。
【0024】
また、試料採取部は、底部が傾斜した形状からなることが好ましい。これは、例えば、上記したように、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を上下又は左右に移動させ易いためである。
【0025】
また、試料採取部を形成する隆起壁を2個、例えば内側と外側の如く2重に設けた場合は、採取部から洩れた試料は先ず隣り合う内側隆起壁と外側隆起壁との間の凹部に留まり、万一、凹部から洩れたとしても外周の隆起枠により堰止められ洩出が阻止されるので好ましい。
【0026】
また、試料採取部は合成樹脂シート上に所望の個数だけ容易に設けられるので、複数個の試料を同時に1枚のプレートに採取することができ、検査の作業性、効率性が飛躍的に高められる。
【0027】
また、試料採取部付近に識別記号を設けることにより、各試料採取部を明確に区別することができ、検査の作業性及び信頼性を高めることができる。
【0028】
また、記録部を設けることにより、試料提供者の氏名、番号、記号等が記載でき、検査の作業性及び信頼性を高めることができる。
【0029】
また、試料採取用プレートの外周に隆起枠を周設することにより、採取部から洩れた試料は該隆起枠によりせき止められ、プレート外への漏出が防止される。また、隆起枠を周設することにより、薄い合成樹脂シートを使用しても剛性が付与されるので、原料樹脂量が節約でき、安価な試料検査用プレートを提供することができる。
【0030】
また、把持部を設けることにより、プレートが取り扱い易くなり作業性が大巾に向上する。この場合、好ましくは隆起した把持部を設けることにより、万一、試料が採取部から洩れ出しても手に触れることがなく衛生的である。
【0031】
また、病原大腸菌免疫血清凝集反応用に用いる場合は、混合血清の凝集判定のためには8個の試料採取部を設け、次の単味血清を用いた凝集判定のために、第1番目の試料採取部を対照のための混合血清用とし、第2番目以降の試料採取部を単味血清用とするのが好ましく、更に、この第1番目の混合血清用と第2番目以降の単味血清用とを混同しないように区別することが好ましく、このような区別としては、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との間隔を第2番目〜第8番目の試料採取部の間隔よりも広い間隔とすれば、成形と同時にできるとともに一目瞭然に区別し得る点で好ましい。
【0032】
本発明の試料検査用プレートは、合成樹脂を真空成形又は射出成形により作製することにより、容易に且つ安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の試料検査用プレートは、合成樹脂シート上に少なくとも1個の隆起壁により囲繞された試料採取部を少なくとも1個設けたことを特徴とする。
【0034】
本発明に用いられる合成樹脂としては、透明性等光学的特性及び耐薬品性に優れ、吸水性の小さいものであれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート等が挙げられる。これらの中で、ポリエステルが透明性、経済性等の点で好ましい。
【0035】
合成樹脂シート上に、隆起壁により囲繞された試料採取部が設けられる。試料採取部の形状は、矩形、円形、楕円形、多角形等のいずれでもよく、そのサイズも特に制限されないが、通常、矩形の場合は一辺が、また円形の場合は直径が、楕円形の場合は長径又は短径が、8〜20mm程度のものが好ましい。あまり小さい場合は試料の採取が困難であり、一方、あまり大きくても意味がなく、却って、取り扱い性が悪くなるとともに、材料費が大きくなり不経済である。
【0036】
特に、病原大腸菌免疫血清凝集反応用の場合は、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を上下又は左右に移動させることにより凝集の有無を肉眼で判定するので、移動させる距離を取り易い矩形状又は楕円形状の試料採取部が好ましい。この場合は、液量と移動させて判定する作業性とから、長辺又は長径8〜25mm、短辺又は短径3〜8mm程度の矩形状又は楕円形状が好ましい。
【0037】
隆起壁は試料が採取部から洩れ出さないように堰止めるもので、少なくとも1個(1重)設けられる。上限は特に制限されないが、実用性の面からは3個(3重)程度が好ましく、より好ましくは内側と外側の2個(2重)である。
【0038】
隆起壁は幅0.5〜1.5mm程度、高さ0.5〜5.0mm程度のものが好ましい。隆起壁を複数個重ねて設ける場合、その間隔は1.5〜3mm程度が好ましい。
【0039】
本発明の試料検査用プレートは、作業性や取り扱い性の面から一辺が50〜200mm程度、好ましくは50〜150mm程度の矩形が好ましく、厚さは1.0〜5mm程度が好ましい。
試料検査用プレートには、試料採取部が少なくとも1個設けられるが、作業性や効率面から複数個設けるのが好ましく、3個以上設けるのがより好ましい。上限は特に制限されないが、余り多くなると該検査用プレートのサイズも大きくならざるを得ず、作業性や取り扱い性が低下するので20個程度が好ましい。例えば、病原大腸菌免疫血清凝集反応用の場合は8個設けるのが好ましい。
【0040】
また、病原大腸菌免疫血清凝集反応用の場合は、先ず混合血清(混合1〜8)で凝集の有無を観察し、次いで、混合血清で陽性と判定された場合、その混合血清を構成する単味血清を用いて同様に凝集の有無を判定する。
従って、前者の混合血清の凝集判定のためには8個の試料採取部が必要で、後者の単味血清を用いた凝集判定のためには、例えば、第1番目の試料採取部を対照のための混合血清用とし、第2番目以降の試料採取部を単味血清用とするのが好ましい。更に、この第1番目の混合血清用と第2番目以降の単味血清用とを混同しないように区別することが好ましく、このような区別としては、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との間隔を他の試料採取部の間隔よりも少し広く開ける、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取との間に区画壁を立設する、区画線を引く、等が好ましい。
【0041】
また、病原大腸菌免疫血清凝集反応用の場合は、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を試料採取部内で移動させて(底面を流して)肉眼で判定するので底部を傾斜せるのが好ましい。傾斜は矩形の場合は長辺の方向に、楕円形の場合は長径の方向に傾斜させ、傾斜の角度は5度以下が好ましく、より好ましくは1〜3度である。
【0042】
試料採取部の近傍に、各試料採取部を区別するために、番号、アルファベット等の識別記号を設けたり、また、試料提供者の氏名や番号、記号等を記録するための記録部を設けることにより、作業性や信頼性を高めることができる。識別記号は印刷等により設けることもできるが、成形と同時に凸状又は凹状に刻印するのが好ましい。記録部は、例えば、筆記性を高めるために表面を荒らしたり、梨地状とすることにより設けられる。
更に、試料検査用プレートの上下を一見して区別できるように合成樹脂シートの角部のアール(丸味)を変える、目印をつける、等のマーキングを施し、作業性及び検査の信頼性を高めることも可能である。
【0043】
本発明の試料採取用プレートの外周に隆起枠を周設することにより、採取部から洩れた試料は該隆起枠によりせき止められ、プレート外への漏出が防止される。また、薄い合成樹脂シートを使用しても剛性が付与されるので、樹脂量が節約でき、安価な試料検査用プレートを提供することができる。
【0044】
また、本発明の試料検査用プレートは、把持部を設けることにより、取り扱い性が向上し、検査の作業性が向上する。把持部は外周の隆起枠内に設けてもよく、また隆起枠外に延設してもよい。外周の隆起枠内に設ける場合は、万一、洩出した試料が手に触れないように、試料採取部とは突設した壁又は凹溝を介在せしめるか、一段と高く設けることが好ましい。
把持部を隆起枠外に延設する場合の形状は特に制限されないが、例えば、試料検査用プレートの外周に舌片状の把持部を設ける、該プレートと略同幅の把持片を折り曲げ溝部を介して延設し、使用時に所定の角度だけ斜上方に折り曲げて把持部とする、等が好ましい。
【0045】
本発明の試料検査用プレートは、射出成形、圧縮成形、真空成形、圧空成形等で容易に成形されるが、特に、真空成形が薄い合成樹脂シート(フィルム)を用いて成形できるので原料樹脂量も節約でき、軽量で且つ安価な試料検査用プレートを提供できる点で好ましい。
【0046】
上記の如き本発明の試料検査用プレートには、必要に応じ、カバーを設けることができる。カバーは、試料の蒸発を防ぐ、埃の混入を防ぐ、漏出を防ぐ等の効果がある。従って、カバーは少なくとも試料採取部を覆うに十分なサイズのものが必要である。カバーは試料検査用プレートに密着する接着性を有し、水分を透過させない水分バリヤー性及び透明性を有する合成樹脂フィルムが好ましく、このようなフィルムとしては、ポリエチレン、2軸延伸ポリプロピレン、防湿セロファン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。カバーフィルムの厚みは特に制限されないが、50〜300μm程度のものが好ましい。
【0047】
カバーは、必要に応じ、両端を該プレートに接着剤、粘着剤で仮(弱)接着して着脱自在に接着してもよく、この場合、接着剤又は粘着剤、離型紙の順に積層し、接着又は仮(弱)接着したい場合には、該離型紙を剥がし取って接着剤又は粘着剤を露出させて仮(弱)接着させるのが便利である。また、一端を試料検査用プレートの一端にヒートシールや接着剤、粘着剤により接着しカバーの他端を開閉自在としてもよい。
また、合成樹脂シートの端部を一部切り欠いて、その部分はカバーのみとしたり、また一部を突出させてカバーを指で摘み易くしておくことにより、カバーの開閉操作を容易にすることができる。
【0048】
上記の如き本発明の試料検査用プレートは、病原大腸菌免疫血清凝集反応に使用する糞便試料や、血液、血清、尿、唾液等の凝集反応用汎用プレートとして特に有用であるが、サルモネラ菌、赤痢菌等の抗体検査等にも使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
図1は、本実施例の試料検査用プレートを示すもので、図1(a)は上面図、図1(b)はA−A断面図である。
これらの図において、試料検査用プレート1は真空成形により成形され、合成樹脂シート2の表面に、隆起壁3により囲繞された試料採取部4が8個形成され、外周に隆起枠5が周設され、更に、短辺側の1辺には隆起した把持部6及び/又は記録部9が設けられている。
【0051】
本実施例では、隆起壁3は、試料が試料採取部4の隅に滞留しないように試料採取部4側が末拡がりのテーパー状に形成されている。また、各試料採取部4の上方部には、識別記号として番号が刻設(本例では凹設)されており、これにより各試料採取部内の各試料が識別される。
【0052】
上記試料検査用プレート1は、試料採取部4に血液、糞便から分離した大腸菌菌濁液等の試料が採取される。採取部4より洩れ出した試料は外周の隆起枠5により堰止められる。この場合、把持部6及び/又は記録部9は隆起して形成されているので、洩れ出した試料により、手指が汚染されることがない。記録部9には、試料提供者等を記録することができる。
【0053】
実施例2
図2は本実施例の試料検査用プレートを示す上面図で、把持部6が短辺側の他の1辺、即ち右側に設けられている他は実施例1と同じである。
本実施例の試料検査用プレート1は、実施例1の試料検査用プレート1が左手で把持部6を把持するのに対し、右手で把持部6を把持するのに適している。
【0054】
実施例3
図3は本実施例の試料検査用プレートを示し、図3(a)は上面図、図3(b)はB−B断面図、図3(c)はC−C拡大断面図で、実施例1の試料検査用プレート1の試料採取部4の底部4aを傾斜した形状とした他は実施例1と同様の構成からなる。
【0055】
即ち、図3(c)に示すように、試料採取部4の底部4aが長辺方向に約2度傾斜した形状(図では、上部の識別記号11の側が高く、下部が低い。低い方を2本の線で示す)に構成されている。
このように構成することにより、例えば、本実施例の試料検査プレート1を用いて病原大腸菌免疫血清凝集反応を観察する場合、大腸菌菌濁液と混合血清又は単味血清との混合液を該採取部4の底部4a上を移動させ(流して)凝集反応を肉眼で観察することが容易になる。
【0056】
実施例4
図4は本実施例の試料検査用プレートを示し、実施例1の試料検査用プレート1において、「1」の識別記号が付された試料採取部4Aと「2」の識別記号が付された試料採取部4Bとの間隔を大きくして「1」の識別記号が付された試料採取部4Aと2〜8の識別記号が付された試料採取部4Bとを区別し得るようにした例を示す。
このように構成することにより、例えば、単味血清を用いた凝集判定をする場合、試料採取部4Aには対照のために混合血清用とし、残りの7個の試料採取部4Bを単味血清用として用いることにより、両者が混同するトラブルが防止される。
【0057】
実施例5
図5は本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例1の試料検査用プレート1において、各試料採取部4の上部に記録部12が設けられている他は実施例1と同じである。
【0058】
実施例6
図6は本実施例の試料検査用プレートを示し、図6(a)は上面図、図6(b)はD−D断面図で、実施例1の試料検査用プレート1において、カバー7が設けられている他は実施例1と同じである。
即ち、合成樹脂フィルムからなるカバー7の短辺側のうち把持部6及び/又は記録部9を設けていない側を隆起枠5にヒートシールにより接続してヒンジ8とした例である。本実施例ではカバー7の把持部6及び/又は記録部9側を少し長くして突縁部7aを設けているので、この突縁部7aを摘んでカバー7を容易に開閉することができる。
本実施例の試料検査用プレート1は、カバー7をヒンジ8を介して開き、試料採取部4けに試料を採取した後、カバー7を被着し、試料の蒸発や、埃が入るのを防止することができる。
【0059】
実施例7
図7は、本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例1の試料検査用プレートにおいて、把持部13を延設した他は実施例1と同じである。
即ち、試料検査用プレート1の把持部6及び/又は記録部9の反対側の外周隆起枠5に舌片状(半円状)の把持部13が延設されている。把持部13の隆起枠5付近に折り線14が刻設され、必要に応じ、折り線14を介して所望の角度で斜め上方又は略直立に起立させて摘み易くして使用される。
【0060】
実施例8
図8は本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例4の試料検査用プレートにおいて、把持部13を延設した他は実施例4と同じである。
即ち、試料検査用プレート1の把持部6及び/又は記録部9の反対側の外周隆起枠5に矩形状の把持片を延設し、折り線14により略三角形状の把持部13a、13bを形成し、把持部13a、13bを折り線14を介して所望の角度で斜上方又は略直立に起立させ摘み易くして使用される。
【0061】
実施例9
図9は、本実施例の試料検査用プレートを示すもので、図9(a)は上面図、図9(b)はE−E断面図である。
これらの図において、試料検査用プレート1は射出成形により成形され、合成樹脂シート2の表面に、内側隆起壁3a及び外側隆起壁3bにより2重に囲繞された試料採取部4が1列に8個形成され、外周に隆起枠5が周設され、更に短辺側の両辺には把持部6が設けられている。
【0062】
また、各試料採取部4の上方部には、識別番号として番号が刻設されており、これにより各試料採取部内の試料が識別される。
【0063】
上記試料検査用プレート1は、試料採取部4に血液、糞便から分離した大腸菌菌濁液等の試料が採取される。採取部4より洩れ出した試料は先ず内側隆起部3aと外側隆起壁3bとの間の凹部10に留まり、採取部4からの洩出が防止され、万一、凹部10から洩れ出した試料は外周の隆起枠5により堰止められる。
【0064】
実施例10
図10は本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例1の試料検査用プレートにおいて、試料採取部4を楕円形状とした例を示す。効果は実施例1の場合と略同じである。
【0065】
実施例11
図11は本実施例の試料検査用プレートを示すもので、実施例4の試料検査用プレートにおいて、試料採取部4を楕円形状とした例を示す。効果は実施例4の場合と略同じである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
叙上のとおり、本発明の試料検査用プレートは合成樹脂シートからなるので軽量で、破損し難く、また薄いので嵩張らず、更に、安全性や取り扱い性に優れている。
【0067】
また、試料採取部は隆起壁により囲繞されているので試料が洩出することがなく、特に、試料採取部を複数個設けた場合には、隣接する試料採取部は隆起壁により明確にそれぞれ区画されているので、隣接する試料採取部の試料が混ざりあうことが防止され、コンタミネーションにより判定が不確実になるというトラブルが防止される。
【0068】
また、本発明の試料検査用プレートは、試料採取部を複数個設けることにより、一度に多数の試料を処理することができるので、飛躍的に作業性、効率性が高められる。本発明の試料検査用プレートは、特に、病原大腸菌免疫血清凝集反応用汎用プレートとして好適である。
【0069】
また、本発明の試料用検査プレートは、真空成形や射出成形等により容易に成形できるので、安価な試料用検査プレートを提供することができ、特に、使い捨て用としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1の試料検査用プレートを示し、(a)は上面図、(b)はA−A断面図である。
【図2】実施例2の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図3】実施例3の試料検査用プレートを示す、(a)は上面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C断面図である。
【図4】実施例4の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図5】実施例5の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図6】実施例6の試料検査用プレートを示し、(a)は上面図、(b)はD−D断面図である。
【図7】実施例7の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図8】実施例8の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図9】実施例9の試料検査用プレートを示し、(a)は上面図、(b)はE−E断面図である。
【図10】実施例10の試料検査用プレートを示す上面図である。
【図11】実施例11の試料検査用プレートを示す上面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 試料検査用プレート
2 合成樹脂シート
3 隆起壁
3a 内側隆起壁
3b 外側隆起壁
4 試料採取部
4a 底部
5 外周の隆起枠
6 把持部
7 カバー
7a 突縁部
8 ヒンジ
9 記録部
10 凹部
11 識別記号
12 記録部
13、13a、13b 把持部
14 折り線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シート上に少なくとも1個の隆起壁により囲繞された試料採取部を少なくとも1個設けたことを特徴とする試料検査用プレート。
【請求項2】
試料採取部が複数個である請求項1記載の試料検査用プレート。
【請求項3】
試料採取部が矩形状又は楕円形状である請求項1又は2記載の試料検査用プレート。
【請求項4】
試料採取部の底部が傾斜した形状からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項5】
試料採取部付近に識別記号を設けた請求項1〜4ののいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項6】
記録部を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項7】
試料採取部が内側及び外側の2個の隆起壁により囲繞されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項8】
外周に隆起枠を周設した請求項1〜7のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項9】
把持部を延設した請求項1〜8のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項10】
病原大腸菌免疫血清凝集反応用である請求項1〜9のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項11】
試料採取部が8個からなり、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との間に識別手段が施されている請求項10記載の試料検査用プレート。
【請求項12】
第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との識別手段が第2番目〜第8番目の試料採取部の間隔よりも広い間隔からなる請求項11記載の試料検査用プレート。
【請求項13】
真空成形により成形された請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項14】
射出成形により成形された請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項1】
合成樹脂シート上に少なくとも1個の隆起壁により囲繞された試料採取部を少なくとも1個設けたことを特徴とする試料検査用プレート。
【請求項2】
試料採取部が複数個である請求項1記載の試料検査用プレート。
【請求項3】
試料採取部が矩形状又は楕円形状である請求項1又は2記載の試料検査用プレート。
【請求項4】
試料採取部の底部が傾斜した形状からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項5】
試料採取部付近に識別記号を設けた請求項1〜4ののいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項6】
記録部を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項7】
試料採取部が内側及び外側の2個の隆起壁により囲繞されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項8】
外周に隆起枠を周設した請求項1〜7のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項9】
把持部を延設した請求項1〜8のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項10】
病原大腸菌免疫血清凝集反応用である請求項1〜9のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項11】
試料採取部が8個からなり、第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との間に識別手段が施されている請求項10記載の試料検査用プレート。
【請求項12】
第1番目の試料採取部と第2番目の試料採取部との識別手段が第2番目〜第8番目の試料採取部の間隔よりも広い間隔からなる請求項11記載の試料検査用プレート。
【請求項13】
真空成形により成形された請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【請求項14】
射出成形により成形された請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料検査用プレート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−133168(P2006−133168A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325030(P2004−325030)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
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