説明

試験要素のスプリットスピン遠心分離

サンプルのバッチのハイスループット遠心分離は、サンプルのバッチの単一の遠心分離運転を、より少ないサンプルを有する2つ以上の時差式の別個のスピンに分割することにより達成され、サンプルを装填または取り出すための遠心分離機スロットの有用性、およびその後の実験結果の送達が、強化され得る。方法論は、例えば、輸血前に、救急施設におけるSTAT血液型決定プログラムの一環として、複数のサンプルを迅速に処理する必要がある場合に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔出願の分野〕
本出願は、試験サンプルのハイスループット遠心分離のための装置および方法に関する。
【0002】
〔背景〕
カラム凝集テクノロジー(CAT)の技術は、遠心分離による形成凝集塊の濾過と共に、不活性基質および凝集用試薬を利用し、反応が起こっているかどうかを判断し、かつ、反応が起こっている場合は反応の等級を判断する視覚的表示手段を提供する。LaPierreおよび同僚によって1980年代に初めて発明された、CATテクノロジーを用いる試験は現在、血液サンプルを迅速かつ確実に試験するために、ヘルスケア施設で広く使用されている。典型的には、CAT試験は、いくつかのマイクロチューブを備えた「ビーズカセット」または「ゲルカード」などの免疫診断試験要素を含み、マイクロチューブはそれぞれ、凝集型アッセイを行うため、デキストランアクリルアミドのゲル粒子と適切な試薬との混合物を収容している。例えば、直接クームズアッセイでは、患者の赤血球懸濁液が最初に各マイクロチューブに加えられ、抗ヒトグロブリン血清(クームズ試薬)との適切なインキュベーションの後、カードが遠心分離される。アッセイの結果は、その後、カードから単に「読み取られる」ことができる。
【0003】
近年では、CATは、目に見える凝集反応の観察を可能にする様々な異なるタイプのサンプル容器を用いる、包括的プラットフォームの導入により能率化されてきた。例えば、そのような1つのプラットフォームは、血液の血液型判定、抗体スクリーニング、抗体識別、表現型検査、および交差適合に一般に使用される、ID-Micro Typing System(登録商標)(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)である。ID-Micro Typing System Gel Test(登録商標)は、必要とする手順工程が少ないので、他の血清学的方法より実行するのが容易であり、また費用効果が高い。処理が減ることは、オペレーターが誘発する過失が減り、また、結果をより客観的に解釈することにもつながる。
【0004】
これらの改善点にもかかわらず、ID-Micro Typing System(登録商標)などの現在の免疫血液学的プラットフォームでゲルカードまたは同様の試験要素を処理することに対する大きな妨げは、依然として遠心分離機である。遠心分離機は、システムに装填された各「バッチ」のため、バッチのスピンが完了するまで、途切れることなく連続して動くようにプログラムされている。
【0005】
この問題に取り組む試みに関連する情報を、米国特許第7,151,973号;7,127,310号;7,072,732号;7,069,097号;6,606,529号;6,490,566号;5,890,134号;5,865,718号;5,826,236号;5,737,728号;5,260,868号、ならびに米国特許出願公開第2005/0004828号;2004/0074825号および2003/0064872号で見ることができる。しかしながら、これらの参考文献はそれぞれ、以下の欠点のうち1つ以上を被っている:これらの参考文献は、律速遠心分離工程を改善(remedy)できていないこと、およびバッチ遠心分離の全体的な効率を改良できる処置を説明してもいないことである。
【0006】
前述の理由から、バッチ遠心分離プロトコルのスループットを改善する、当技術分野における満たされていない必要性がある。
【0007】
〔出願の概要〕
サンプルのバッチのハイスループット遠心分離を行う方法を説明する。本発明はさらに、サンプルのバッチのハイスループット遠心分離を自動で操作するための試験装置およびプロトコルに関する。
【0008】
一態様によると、1つ以上のサンプル容器のバッチの遠心分離を行う方法が説明され、この方法は、(a)1つ以上のサンプル容器をそれぞれが含む1つ以上の第1のバッチを提供することであって、各第1のバッチは、第1の遠心分離機におけるt秒間の遠心分離を必要とする、提供することと、b)1つ以上のサンプル容器をそれぞれが含む1つ以上の第2のバッチを提供することと、(c)1つ以上の第2の遠心分離機において第1のバッチを遠心分離することと、(d)第2の遠心分離機の運転を無作為にN回中断することと、(e)各第2の遠心分離機に1つ以上の第2のバッチの装填または取り出しを行うことと、(f)中断した第2の遠心分離機の遠心分離を再開することと、を含み、第2の遠心分離機に第2のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度は、第1の遠心分離機にサンプル容器の各第1のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度と比べて、N倍増大する。
【0009】
この方法に従って使用されるサンプル容器は、遠心分離により促進される、目に見える凝集反応を生じさせることができる任意の免疫診断試験要素であってよい。
【0010】
サンプル容器は、患者サンプル、ヒト血液サンプルまたは緊急サンプル(emergency samples)を収容してよく、試薬は、凝集アッセイまたは血液型決定用の試薬をさらに含んでよい。
【0011】
本明細書に記載される方法によると、2〜10個の第2の遠心分離機があってよい。第2の遠心分離機の運転は、取り出しおよび再装填のため、2〜10回、中断され得る。
【0012】
さらに別の態様では、遠心分離、装填、および再装填工程はそれぞれ、制御機構により制御される。
【0013】
さらに別の態様では、各第2のバッチは、同じ数のサンプル容器を有する。
【0014】
さらに別の態様では、各第2のバッチにおけるサンプル容器は、装填または取り出しの際に、結果について評価される。
【0015】
さらに別の態様では、各第2のバッチの遠心分離時間は、その他の第2のバッチそれぞれの遠心分離時間とは異なってよい。
【0016】
さらに別の態様では、各第2のバッチにおけるサンプル容器は、装填または取り出しのため遠心分離機の運転が中断されるたびに結果が評価される。
【0017】
別の態様によると、2つ以上のサンプル容器のバッチの遠心分離を行う方法が説明され、この方法は、(a)2つ以上のサンプル容器の第1のバッチを提供する工程であって、第1のバッチは、第1の遠心分離機におけるt秒間の遠心分離を必要とする、工程と、(b)第1のバッチをx個の第2のバッチに分割する工程と、(c)各第2のバッチをy個の第2の遠心分離機それぞれの中に装填する工程と、(d)各第2のバッチを、t/x秒間遠心分離する工程であって、各第2の遠心分離機の運転は、少なくともt/xy秒だけ時差をつけられる、工程と、(e)各第2の遠心分離機を少なくともt/xy秒ごとに取り出しおよび再装填する工程と、を含み、第2の遠心分離機に第2のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度は、第1の遠心分離機にサンプル容器の第1のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度に比べて、最大でxy倍だけ増大する。
【0018】
一態様によると、取り出しおよび装填は、t/xz+z秒ごとに行われ、ここで、zは、装填および取り出しに必要な秒数に等しい。1つのバージョンでは、例えば、zは、1〜120秒に等しい。
【0019】
この方法に従って使用されるサンプル容器は、遠心分離により促進される、目に見える凝集反応を生じさせることができる任意の免疫診断試験要素であってよい。
【0020】
サンプル容器は、患者サンプル、ヒト血液サンプルまたは緊急サンプルを収容してよく、試薬は、凝集アッセイまたは血液型決定用の試薬をさらに含んでよい。
【0021】
本明細書で説明する方法によると、2〜10個の第2の遠心分離機があってよい。また、2〜10個の第2のバッチがあってもよい。
【0022】
さらに別の態様では、分割、遠心分離、および再装填工程はそれぞれ、制御機構により制御される。
【0023】
さらに別の態様では、各第2のバッチは、同数のサンプル容器を有する。
【0024】
さらに別の態様では、各第2のバッチにおける全てのサンプル容器は、各第2のバッチをt/x秒間遠心分離した後で結果について評価される。
【0025】
さらに別のバージョンによると、試験装置が提供され、この試験装置は、(a)複数のサンプル容器を遠心分離するように構成された複数の遠心分離機と、(b)遠心分離機に接続された1つ以上の駆動機構と、(c)遠心分離機に対してサンプル容器を装填するかまたは取り出すように構成された、少なくとも1つの移動機構と、(d)駆動機構および移動機構と協調する制御機構であって、遠心分離機を運転するように構成されている、制御機構と、を含む。この運転は、(i)1つ以上のサンプル容器をそれぞれが含む1つ以上の第1のバッチを提供する工程であって、各第1のバッチは、第1の遠心分離機におけるt秒間の遠心分離を必要とする、工程と、(ii)1つ以上のサンプル容器をそれぞれが含む1つ以上の第2のバッチを提供する工程と、(iii)1つ以上の第2の遠心分離機において第1のバッチを遠心分離する工程と、(iv)第2の遠心分離機の運転をN回、無作為に中断する工程と、(v)各第2の遠心分離機に1つ以上の第2のバッチの装填または取り出しを行う工程と、(vi)中断した第2の遠心分離機の遠心分離を再開する工程と、を含み、第2の遠心分離機に第2のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度は、第1の遠心分離機にサンプル容器の第1のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度に比べてN倍増大している、方法の工程を含む。
【0026】
一実施形態では、試験装置は、サンプル容器内部の凝集反応を検出するように構成された検出器を含む。容器は、1つのバージョンでは、ゲルカード、ビーズカセット、または目に見えて検出可能な凝集反応を生じさせることができる任意の他の試験要素である。好ましくは、サンプル容器は、バーコードリーダーで容器を読み取ることができるように、バーコードを付けられていてよく、装置は、1つ以上のサンプルの温度を調節するためのインキュベーターをさらに含む。
【0027】
サンプル容器は、ヒトサンプル、ヒト血液サンプル、または緊急サンプルを収容することができる。
【0028】
サンプル容器は、凝集アッセイまたは血液型決定用の試薬を収容することができる。
【0029】
2〜10個の第2の遠心分離機があってよい。2〜10個の第2のバッチがあってもよい。遠心分離は、2〜10に等しいN回、中断されてよい。
【0030】
さらに別の実施形態では、試験装置は、装填または取り出しのため遠心分離機の運転が中断されるたびに、結果について、各第2のバッチにおける全てのサンプル容器を評価するように構成されている。
【0031】
さらに別のバージョンによると、試験装置が提供され、この試験装置は、(a)複数のサンプル容器を遠心分離するように構成された複数の遠心分離機と、(b)遠心分離機に接続された1つ以上の駆動機構と、(c)遠心分離機に対してサンプル容器を装填するかまたは取り出すように構成された、少なくとも1つの移動機構と、(d)駆動機構および移動機構と協調する制御機構であって、遠心分離機の時差式運転に合わせて構成された、制御機構と、を含む。時差式運転は、(i)第1の遠心分離機におけるt秒間の遠心分離を必要とする2つ以上のサンプル容器の第1のバッチを提供する工程と、(ii)第1のバッチをx個の第2のバッチに分割する工程と、(iii)第2のバッチをそれぞれ、y個の第2の遠心分離機それぞれの中に装填する工程と、(iv)各第2のバッチをt/x秒間遠心分離する工程であって、第2の遠心分離機それぞれの運転は、少なくともt/xy秒だけ時差をつけられる、工程と、(v)第2の遠心分離機それぞれに対する取り出しおよび再装填が、少なくともt/xy秒ごとに行われる工程と、を含み、第2の遠心分離機に第2のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度は、第1の遠心分離機にサンプル容器の第1のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度に比べて、最大でxy倍だけ増大する。
【0032】
一実施形態では、試験装置は、サンプル容器内部の凝集反応を検出するように構成された検出器を含む。容器は、1つのバージョンでは、ゲルカード、ビーズカセット、または、目に見えて検出可能な凝集反応を生じさせることができる任意の他の試験要素である。好ましくは、サンプル容器は、バーコードリーダーで容器を読み取ることができるように、バーコードを付けられてよく、装置は、1つ以上のサンプルの温度を調節するためのインキュベーターをさらに含む。
【0033】
サンプル容器の取り出し及び装填は、t/xz+z秒ごとに行われてよく、ここで、zは、装填および取り出しに必要な秒数に等しい。1つのバージョンでは、zは、1〜120秒に等しくてよい。
【0034】
サンプル容器は、ヒトサンプル、ヒト血液サンプル、または緊急サンプルを収容することができる。
【0035】
サンプル容器は、凝集アッセイまたは血液型決定用の試薬を収容することができる。
【0036】
2〜10個の第2の遠心分離機があってよい。2〜10個の第2のバッチがあってもよい。第2のバッチは、2〜100個のサンプル容器を含むことができる。
【0037】
さらに別の実施形態では、第2のバッチを第2の遠心分離機に再装填する頻度は、サンプル容器の第1のバッチを第1の遠心分離機に再装填する頻度に比べて、2〜40倍増大する。
【0038】
さらに別の実施形態では、試験装置は、1つ以上の緊急サンプルを迅速に処理するように構成される。
【0039】
さらに別の実施形態では、試験装置は、各第2のバッチをt/x秒間遠心分離した後で、結果について、各第2のバッチの全てのサンプル容器を評価するように構成される。
【0040】
先に述べた実施形態は、多くの利点を有し、その利点には、バッチ遠心分離のスループットを増大させる能力、サンプルが全バッチ数量より少ない数で提示される場合の、結果までの時間(time to result)の短縮、サンプルが同時に提示されない場合の、結果までの時間の短縮、ならびに、任意の1回の所定の別個のスピン後に凝集していないと明らかに識別され得るサンプルについては、結果までの時間の短縮およびスループットの増大が含まれる。
【0041】
したがって、本明細書に開示される方法は、特に応急処置施設におけるSTATレーン(STAT lane)の一部として、試験要素のハイスループット処理の自動化に特に有用である。
【0042】
本出願はこの概要に開示した実施形態に限定されないこと、ならびに、当業者の範囲内の、また請求項により定められるような、改変およびバリエーションを含むことが意図されていることを理解すべきである。
【0043】
〔詳細な説明〕
<定義>
別に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。以下の定義は、本出願の開示内容および請求項の解釈を助けるために与えるものである。このセクションの定義が、他の部分における定義と矛盾する場合、このセクションで述べた定義が支配する。
【0044】
本明細書で使用される用語「複数」は、2つ以上の数量を指す。
【0045】
本明細書で使用される「バッチ」は、2つ以上の存在物、例えば2つ以上のサンプル容器またはサンプルの群を指す。
【0046】
本明細書で使用される「凝集」は、試薬、通常は抗体もしくは他のリガンド結合存在物、による細胞もしくは粒子抗原の懸濁液のクランピングを指す(例えば、米国特許第4,305,721号、5,650,068号および5,552,064号を参照。これらの内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。別の実施形態では、用語「凝集」は、赤血球凝集、すなわち赤血球の凝集を指す。赤血球凝集は、赤血球表面抗原を(既知の抗体で)識別するか、または抗体を(既知の表面抗原を発現する赤血球で)スクリーニングするのに使用され得る。
【0047】
本明細書で使用される用語「粒子」は、リガンドまたはリガンド結合分子が結合し得る、凝集アッセイに使用される任意の粒子であってよい。粒子は、細胞、例えば、細菌もしくは赤血球もしくは白血球、または例えばラテックスでできた不活性な微細な固体であってよいが、リガンドが結合し得る他の種類の粒子も、本発明の範囲に含まれる。これらの不活性粒子は、ガラスまたはセラミクス、炭素またはプラスチックおよび/または、例えばナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(商標))もしくはスチレン‐ジビニルベンゼンポリマーなどの1つ以上のポリマー、またはデキストランアクリルアミドもしくはセファロースなどのゲル、などの任意の好適な材料で構成されてもよい。粒径は、約0.1μm〜1000μm(約0.1ミクロン〜1000ミクロン)であってよい。好ましくは、粒径は、約1〜約10μm(約1〜約10ミクロン)である。
【0048】
本明細書で使用される「リガンド」は、リガンド結合分子に結合することができる任意の分子である。別の好適な実施形態では、リガンドは、本明細書で定義する分析物の表面に露出される。一実施形態では、リガンドは、抗体のエピトープである。例えば、リガンドは、ウイルス、細菌または寄生虫の成分であってよい。リガンドは、赤血球などの細胞上の表面抗原であってよい。イムノグロブリン分子に結合し、本出願で使用される粒子に共有結合できるいくつかのリガンドも既知であり、例えば、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/GおよびKappaLock(商標)(参照により、内容が全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,665,558号も参照のこと)である。リガンドは、使用もしくは試験される抗体のイソタイプに結合でき、あるいは、IgM抗体のための架橋抗体、例えばIgG抗IgMを使用することができる。したがって、IgG抗IgM抗体は、「橋」としてリガンドに結合し、IgM抗体は、IgG抗IgM抗体に結合する。
【0049】
本明細書で使用される用語「リガンド結合」は、結合対のメンバー、すなわち2つの異なる分子を指し、分子のうち1つは、化学的または物理的手段により、第2の分子に特異的に結合する。抗原および抗体の結合対メンバーに加えて、他の結合対は、制限のない例として、ビオチンおよびアビジン、炭水化物およびレクチン、相補的ヌクレオチド配列、相補的ペプチド配列、エフェクターおよびレセプター分子、酵素補因子および酵素、酵素阻害薬および酵素、ペプチド配列およびその配列もしくはタンパク質全体に特異的な抗体、ポリマー酸および塩基、染料およびタンパク質結合剤、ペプチドおよび特異タンパク質結合剤(例えば、リボヌクレアーゼ、S−ペプチドおよびリボヌクレアーゼS−タンパク質)、ならびに同種のものを含む。さらに、結合対は、元の結合メンバー(original binding member)の類似体、例えば分析物‐類似体、もしくは組み換え技術もしくは分子工学により作られた結合メンバーである、メンバーを含み得る。結合メンバーが、免疫反応物質である場合、それは、例えばモノクローナルまたはポリクローナル抗体、組み換えタンパク質または組み換え抗体、キメラ抗体、前記のものの混合物またはフラグメント、ならびに、結合メンバーとしての使用の適合性が当業者に周知であるそのような抗体、ペプチドおよびヌクレオチドの製剤であってよい。リガンド結合メンバーは、ポリペプチド親和性リガンドであってよい(例えば、参照により、内容が全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,326,155号を参照)。一実施形態では、リガンド結合メンバーは標識される。標識は、蛍光標識、化学発光標識、または生物発光標識、酵素−抗体構造物、または当技術分野で既知の同様の他の適切な標識から選択されてよい。
【0050】
本明細書で使用される用語「サンプル」は、少なくとも1つの分析物を含む疑いのある物質を指す。サンプルは、供給源から入手されたときに、または、サンプルの性質を変えるための前処理の後で、直接使用され得る。サンプルは、生理学的流体など、あらゆる生物学的供給源から引き出すことができ、生理学的流体には、血液、唾液、眼用レンズ流体(ocular lens fluid)、脳脊髄液(cerebral spinal fluid)、汗、尿、乳、腹水液(ascites fluid)、raucous、滑液、腹水(peritoneal fluid)、羊水または同種のものが含まれる。サンプルは、使用前に、前処理、例えば血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈など、を行われてよい。処理方法は、濾過、蒸留、濃縮、妨害成分の不活性化、および試薬の添加を含むことができる。生理学的流体のほかに、他の液体サンプルを使用することができる。さらに、分析物を含有することが疑われる固体物質をサンプルとして使用することができる。場合によっては、固体サンプルを修飾して、液体培地を形成するか、または分析物を放出することが有益かもしれない。
【0051】
本明細書で使用される用語「分析物」は、検出もしくは測定されるべき化合物または組成物を指し、この化合物または組成物は、少なくとも1つのエピトープまたは結合部位もしくはリガンドを有するものである。分析物は、自然に存在する結合メンバーが存在するか、または結合メンバーが調製され得る、任意の物質であってよい。分析物は、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物(細菌、ウイルス、もしくは寄生虫など)、アミノ酸、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物、ウイルス粒子、および前記物質のいずれかの代謝産物、または前記物質のいずれかに対する抗体を含むが、これらに限定されない。用語「分析物」は、任意の抗原物質、ハプテン、抗体、巨大分子、およびこれらの組み合わせも含む。一実施形態では、分析物は細胞表面抗原である。別の実施形態では、分析物は、赤血球の表面抗原である。
【0052】
本明細書で使用される「血液」は、全血、または、赤血球、血漿もしくは血清など、全血の任意の成分を広く含む。
【0053】
本明細書で使用されるように、本出願で使用される「赤血球」(RBC)は、遠心分離により、またはFicoll勾配など密度勾配を通じて、全血から分離され得る。
【0054】
本明細書で使用される「遠心分離」は、回転軸の周りでの物体の回転を指す。
【0055】
本明細書で使用される「試験要素」または「免疫診断試験要素」は、遠心分離工程を必要とする粒子凝集反応を行うための任意の容器を指す。一実施形態では、試験要素は、ビーズカセット、またはゲルカードである。好ましくは、試験要素内における粒子凝集の程度は、検出器を用いて、または視覚的に判断され得る。
【0056】
本明細書で使用される「ビーズカセット」は、典型的にはカード上にある、1つ以上の入れ物の組立体を指し、これは、遠心分離工程を必要とする凝集アッセイを行うためにビーズを詰められている。一実施形態では、カセットは、1つ以上のマイクロチューブを含む。
【0057】
本明細書で使用される「ゲルカード」は、2つ以上のマイクロチューブを備えた試験要素を指す。一実施形態では、ゲルカードは、ID-Micro Typing System(登録商標)ゲルカードである。そのようなカードは、ほぼ50.8×69.85mm(2.0×2.75インチ)の寸法であり、典型的には、最大6個のマイクロチューブを含む。各マイクロチューブには、サンプル中に存在する赤血球を凝集させるためゲルが予め詰められている。さらなる説明は、米国特許第5,650,068号および5,552,064号で見ることができ、これら特許は双方、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0058】
本明細書で使用される用語「ビーズ」は、球形である(例えばミクロスフェア)か、または不規則な形状を有することができる、別個の固体を指す。ビーズは、直径が約0.1μmと小さくてよく、または、直径がおよそ数ミリメートルと大きくてもよい。ビーズは、セラミクス、プラスチック、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、デキストランアクリルアミド、セファロース、セルロースなどを含むがこれらに限定されない、様々な物質を含み得る。
【0059】
本明細書で使用される用語「時差をつけられる・時差式(staggered)」は、2つ以上の遠心分離機の運転を指し、1つの遠心分離機の遠心分離サイクルは、残りの遠心分離機それぞれの遠心分離サイクルの一部に重なる。
【0060】
本明細書で使用される数字「x」、「y」、「z」および「t」は、全整数を指す。
【0061】
本明細書で使用される用語「頻度」は、どれくらい頻繁に、遠心分離機が、サンプル容器の装填または取り出しのため利用可能となるかを指す。
【0062】
本明細書で使用される用語「サンプル容器」は、遠心分離され得る任意の入れ物を指す。例えば、サンプル容器は、チューブ、マイクロタイタープレート、カラムまたはビーズカセットであってよい。サンプル容器は、プラスチック、またはガラス、または形状を変形させずに遠心分離され得る任意の他の物質で作られてよい。別の実施形態では、サンプル容器は、サンプル容器の内壁に対する生物学的サンプルの付着を促進しない不活性物質で作られる。例示的な実施形態では、サンプル容器は、アクリル樹脂(acrylic)またはポリプロピレンから作られる。さらに別の例示的な実施形態では、サンプル容器は、1つ以上のマイクロチューブを収容するゲルカードまたはビーズカセットである。さらに別の実施形態では、サンプル容器の壁は透明であり、200nm〜700nmの波長の電磁放射線を通すことができる。
【0063】
本明細書で使用される「検出器」は、粒子凝集の検出用の装置、典型的には光検出器を指す(例えば、米国特許第5,256,376号および米国特許出願公開第2004/0166551号を参照のこと。これらの内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。一実施形態では、この装置は、生物発光、または化学発光、または蛍光を検出することができる。別の実施形態では、検出器は、撮像装置である。
【0064】
本明細書で使用される「制御機構」は、1つ以上の駆動機構、1つ以上の検出器、1つ以上の読取装置、および1つ以上の移動機構を含むがこれらに限定されない、試験装置の様々な態様を監視および制御する1つ以上のコンピュータ、ならびに、関連するハードウェアおよびソフトウェアを指す。一態様では、コンピュータは、患者情報の暗号化保管のための1つ以上のハードドライブまたは同等のハードウェアを提供する。別の態様では、コンピュータは、標準的な有線または無線のネットワーク能力によりヘルスケア施設でローカルエリアネットワーク(LAN)に接続される。別の態様では、コンピュータは、結果の包括的分析用のソフトウェアを提供し、この情報を、保管された患者記録および指定されたバーコードと関連付ける。さらに別の態様では、「制御機構」は、据付のデスクトップコンピュータ、またはノートブックコンピュータにより提供される。コンピュータは、ローカルプリンタにネットワーク接続されてよい。
【0065】
本明細書で使用される「移動機構」は、装置内でサンプル容器を輸送する任意の手段を指し、サンプルおよびサンプル容器を1つの場所から別の場所へ動かすロボットアーム、グリッパー、コンベアベルトなどを含むことができる。例えば、1つ以上のロボットアームなどの移動機構は、1つ以上のサンプル容器を、バーコードリーダーから1つ以上の遠心分離機まで、または1つ以上の遠心分離機から1つ以上の検出器まで動かすことができる。
【0066】
本明細書で使用される「インキュベーター」は、サンプルの温度を上げるかまたは下げる装置である。一実施形態では、インキュベーターは、サンプルを37℃まで加熱する。
【0067】
本明細書で使用される「STAT」は、「直ちに」を意味するラテン語「statim」に由来する医療用語である。したがって、「STATレーン」は、患者サンプルの迅速なまたは急を要する処理を指す。
【0068】
本明細書で使用される「緊急サンプル」は、即座の処理を必要とする任意のサンプルを指す。緊急サンプルは、典型的には、緊急治療室または他の救急施設で収集されたサンプルを含む。例えば、緊急治療室サンプルは、患者に輸血を施す前に迅速に分類されることを必要とする、緊急治療室の患者から得た血液サンプルであってよい。
【0069】
本明細書で使用される「粒子凝集用試薬」は、凝集反応が起こるのに必要な任意の化合物を指す。例えば、試薬は、本明細書で定義される緩衝剤、リガンド、リガンド結合分子、および関連粒子を含むがこれらに限定されない。
【0070】
本明細書で使用される「血液型決定用試薬」は、血液サンプルの血液型を決定する直接もしくは間接クームズ試験または同等のアッセイなどの血液型決定に必要な試薬を指す。例えば、血液型決定用試薬は、クームズ試薬、すなわち、動物で生じ、以下のヒトイムノグロブリン、補体、または特異的イムノグロブリン、例えばクームズ試験で使用される抗ヒトIgG、のうち1つに向けられた、抗体の製剤であってよい。
【0071】
本明細書で使用される用語「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方を含み、未変化分子、そのフラグメント(例えばFv、Fd、Fab、Fab’およびF(ab)’2フラグメント)、または未変化分子および/もしくはフラグメントのマルチマーもしくは凝集物であってよく、自然に発生するか、または例えば免疫化、合成もしくは遺伝子工学により産生されてよい。本明細書で使用する抗体または抗原は、試験されている抗体または抗原によって決まる。例えば、血液型抗原、よって、識別されたこれらの抗原に対する抗体の数は、非常に多く、より多くの抗原および抗体が絶えず判定されている。国際輸血学会は、赤血球抗原の包括リストを、Blood Group Terminology 1990, Vox. Sang. 58:152-169に公表している(1990年、抗体および抗原A、B、D、C、c、Cw、E、e、K、Fya、Fyb、Jka、Jkb、Sおよびsを含むがこれらに限定されない)。
【0072】
本明細書で使用される「結果を評価する(to assess a result)」は、各試験要素における陽性または陰性分析物(positive or negative assay)いずれかの判断を指す。一実施形態では、ビーズカセットまたはゲルカードなどの試験要素は、1つ以上のカラム凝集型分析物を含む。例えば、凝集の存在は、陽性結果を示すが、凝集がないことは、陰性結果と解釈される。別の実施形態では、それぞれの別個のスピンの終わりに、試験要素は、画像分析ソフトウェアにより、分析のため撮影される。コンピュータが結果を、すなわち凝集の存在または欠如を、正確に判断できる場合、結果は、記録されてよく、試験要素は遠心分離機から取り出され、それにより、器具の全体的なスループットが増大する。
【0073】
以下の説明は、本出願の特定の好適な実施形態に関し、また、試験要素のバッチ遠心分離の特定の方法論に関する。この検討から容易に明らかとなるように、本明細書に記載する発明の概念は、サンプルの大きなバッチを最大スループットで処理する必要のある任意の遠心分離処置に広く適用可能である。
【0074】
一実施形態では、本明細書に記載する遠心分離プロトコルは、AutoVue(登録商標)(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)または血液分析用の同様のプラットフォームといったワークステーション内部で粒子凝集型分析物を処理するのに使用される。血液分析プラットフォームは、典型的には、ゲルカード、またはビーズカセットを使用する。ゲルカードの場合には、この試験要素は、ゲル粒子と粒子凝集用試薬、例えば抗ヒトグロブリン(クームズ試薬)血清および希釈剤、との混合物を予め分配されたマイクロチューブを含む。患者からの所望の赤血球懸濁液の測定量(典型的には数マイクロリットル)が、最初にゲルカード内の各マイクロチューブに加えられ、遠心分離前に、所定の時間(典型的には数分)にわたって37℃でインキュベートされる。遠心分離後、試験結果が読み取られ、凝集の程度に応じて等級分けされる。凝集が起こっている場合、赤血球凝集塊が、遠心分離の間にゲル懸濁液中にとらえられる。大きな凝集塊は、ゲルカラムの上部に向かって固定されるが、より小さな凝集塊は、ゲルカラム内下方でとらえられる。結合抗体のない赤血球は、遠心分離中にゲル粒子の中を押し進められ、マイクロチューブ下部のチューブ先端部でペレットとして沈殿する。この処置の主な利点は、細胞洗浄の必要性がなくなることである。適切な陽性および陰性対照も、必要に応じて加えられてよい。先に述べたように、遠心分離工程は、遠心分離機の運転が完了したときにサンプルの装填および取出しが生じ得るにすぎないので、律速(rate-limiting)である。
【0075】
本出願で説明する、新奇のスプリットスピン遠心分離プロトコルは、遠心分離機の有用性を増大させ、装填から結果分析までの時間を削減する措置(regimen)を提案する。
【0076】
図1を参照すると、図式100は、一連の遠心分離プロトコルおよび各遠心分離工程に必要な時間を示す。例えば単一の専用遠心分離機内部に配された24個の試験要素の、単一の連続した遠心分離プロトコル110は、時間145で始まり、ブロック135で示されるように10分後の時間140でサイクルを終える、タイムスケールに沿って描かれている。この標準的プロトコル110によると、遠心分離機は、10分ごとに、すなわちサイクル終了時に、装填および取り出しのため利用可能になるにすぎない。
【0077】
第1の実施形態によると、スプリット遠心分離プロトコル115および120が提供され、図1の24個の試験要素のバッチが、それぞれ12個のカードの、より小さな2つのバッチに分割される。12個の試験要素の、より小さなバッチは、矢印130で示すように、プロトコル110の半分の長さ(すなわち5分)にわたり、互いに対して時差式の構成(staggered configuration)で作動する2つの別個の遠心分離機で遠心分離される。
【0078】
さらに具体的には、第1の遠心分離機について、サイクル115は、時間165で始まり、5分後に時間170で停止する。追加の試験要素の装填および再装填のための期間150の後、第2のサイクルが第1の遠心分離機で開始され、時間175で始まり、5分後に時間180で停止する。
【0079】
一方、第2の遠心分離機の時差式プロトコル120では、サイクルは、時間185で始まり、5分後に時間192で終了する。時間192は、第1の遠心分離機の時間175よりも2.5分遅い。追加の試験要素の装填および再装填のための別の期間150の後、第2のサイクルが時間195で始まり、さらに5分間続き、時間180より2.5分遅く終了する。
【0080】
第1および第2の遠心分離機の運転に、この例では125に示すように2.5分だけ、時差をつけることにより、遠心分離機が、標準的プロトコル110で示したような10分ごとではなく、2.5分ごと、すなわち時間190、170、192および180に、装填または取り出しのために利用できるようになるので、遠心分離機スロットの有用性が著しく増大することが明らかである。したがって、図1は、サンプルのバッチを2で割り、2つの遠心分離機を提供することにより、遠心分離機の取り出し/装填の頻度が、いずれかの遠心分離機に装填および/または再装填するのにかかる時間150に応じて、最大で4倍まで増大することを示す。
【0081】
当業者は、説明した実施形態が、いくつかの方法で変えられ、依然として本出願の意図する範囲内に入り得ること、ならびに、サンプルの最初のバッチが、任意の予め決められた数の、より小さな複数のバッチに分割され得ること、を認識するであろう。例えば、図2〜図4に関して例示的に述べるように、本明細書に開示する方法は、3つ以上の遠心分離機と共に使用されてよい。
【0082】
最初に図2を参照すると、図式200は、複数の遠心分離機、およびサンプル複数のバッチを使用した、スプリットスピン遠心分離プロトコルを示す。この例によると、サイクル210は、t秒に等しい期間270にわたり遠心分離を必要とする、サンプルの単一のバッチの、いわゆる標準的な遠心分離プロトコルを表す。矢印265で図2に示すように、サンプルの元のバッチをx個のミニバッチに分割することにより、各ミニバッチは、t/x秒に等しい期間275にわたって、y個の遠心分離機に装填されてよく、そのサイクルが矢印260により示され、期間275は、時間222に始まり時間217に終わる各遠心分離の運転に必要な時間に対応している。ミニバッチそれぞれを装填または取り出しするのに必要な期間285は、z秒に等しい。サイクル215、220および230に示すように、t/xy秒に等しい期間280だけ各遠心分離機の運転に時差をつけることにより、遠心分離機への装填および取り出しの頻度は、サンプルの単一の元のバッチを含み、t秒に等しい期間270にわたり運転する、サイクル210における単一の遠心分離機への装填および取り出しの頻度と比べて、最大でxy倍だけ増大され得る。
【0083】
本明細書で説明するスプリットスピンプロトコルは、t/x秒の別々のスピンそれぞれが終わった後に、結果について全てのサンプル容器を評価する機会を提供する。陰性または陽性として既に識別可能であるゲルカードなどのサンプル容器は、t−t/x秒の残りのスピン時間に移る必要なしに、結果を記録させ、遠心分離機から取り出すことができる。この能力により、結果までの時間が減少し、遠心分離機それぞれの内部の利用可能なスロットを解放し、それにより、スプリットスピン遠心分離プロトコルの全体的なスループットがさらに増大する。
【0084】
当業者は、説明した遠心分離プロトコルが、ランダムスプリットスピンプロトコルを含むように変えられてよいことを認識するであろう。ランダムスプリットスピンプロトコルでは、試験要素のバッチの遠心分離が、可変期間の、潜在的に任意の数の、より小さな遠心分離スピンに無作為に「分割(split)」され得る。
【0085】
図5を参照すると、図式500は、複数の遠心分離機、およびサンプルの複数のバッチを用いた、ランダムスプリットスピン遠心分離プロトコルを示す。サイクル510は、試験要素の1つ以上のバッチが期間570にわたり遠心分離される、標準的な遠心分離プロトコルを表す。ランダムスプリットスピン遠心分離プロトコルによると、試験要素の1つ以上の第1のバッチはまず、560で示されるように1つ以上の遠心分離機の間に分配される。遠心分離が開始するとすぐに、遠心分離機が無作為に選択されて、期間585にわたり休止し、よって、試験要素がその特定のサンプルに割り振られた所定の遠心分離時間を完了しているかどうかに応じて、試験要素の装填または取出しが可能となる。例えば、プロトコル515では、遠心分離機は、545で開始し550で停止することが示されている。すなわち期間570中に4回である。別の例のプロトコル520では、第2の遠心分離機が、期間570中に合計3回、545で停止し550で開始する。
【0086】
当業者は、ランダムスプリットスピンプロトコルが、試験要素の取り出しまたは再装填のため、遠心分離スピンを無作為に休止させることを可能にし、それにより遠心分離のスループットを増大させることを、認識するであろう。例えば、試験要素の1つ以上の第1のバッチの遠心分離は、期間585にわたり休止するよう無作為に選択されてよい。プロトコル525に描かれるこのシナリオによると、遠心分離期間570は、可変期間575の、任意の数590の別個のスピン565に無作為に分割される。したがって、ランダムスプリットスピン遠心分離プロトコルを有する遠心分離機への装填および取り出しの頻度は、サンプルの単一のバッチを含み、期間570にわたり運転する、サイクル510における単一の遠心分離機への装填および取り出しの頻度に比べて、増大されてよい。ランダムスプリットスピン遠心分離プロトコルにおける中断の回数は、結果までの所望の時間によってのみ制限され得る。
【0087】
別の実施形態では、各試験要素は、別々のスピンそれぞれが終わった後、すなわち、この例では時点550で、結果について評価される。陰性または陽性と判定された試験要素は、残りのスピン時間に移る必要なしに、結果を記録させ、遠心分離機から取り出すことができる。この能力により、結果までの時間がさらに減少し、遠心分離機それぞれの内部の利用可能なスロットが解放され、それにより、全体的なスループットがさらに増大する。
【0088】
本明細書に説明するような遠心分離のプロトコルを利用する目的で、例示的な装置を提供する。より具体的には、スプリットスピン遠心分離のための血液型決定ワークステーションを説明する。図3を参照すると、ワークステーション300は、人間の介入なしで実験結果を保存および分析する適切なソフトウェアを備えた専用のコンピュータ355を含む。ワークステーション300のコンピュータ手段は、マイクロプロセッサ、マイクロプロセッサをプログラミングするためのキーボード375または他の入力装置、メモリおよびデータストレージ、ならびにネットワーク手段395を含むのが好ましい。包含される患者容器およびワークステーション300の設備の位置情報をマイクロプロセッサに連続的に与えるために、フィードバックが提供される。患者の記録および試験結果は、リアルタイムで遠隔的に監視され得る。血液サンプル処理システムの例示的説明は、内容が全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,814,276号にさらに詳細に教示されている。
【0089】
操作の際、研究室の人員は、患者血液サンプルを収容したバイアルを装填ステーション325で空のサンプルラック380に装填する。ラック398は次に、ラックコンベアベルト365によってピペットステーション320まで運ばれる。ピペットステーション320では、血液サンプルのアリコートが、サンプルバイアルから自動的に吸引され、赤血球凝集のため、本明細書で説明するゲルカードおよび/またはビーズカセットといった試験要素の中に装填される。各試験要素は、独自のバーコードを予め付けられていることが好ましい。このバーコードは、ロット番号、有効期限、製造日、および他の関連情報を含むがこれらに限定されない、要素に特有の情報を識別するものである。コンベアベルト315が、バーコードリーダー310を過ぎた所まで試験要素370を輸送する。コンピュータ355は次に、バーコードを患者の記録と関連付けることができる。コンベアベルトは、37℃の温度に維持されるインキュベーター330を通して、試験要素370を輸送する。使用されるインキュベーターの形態は、試験要素を適切に収容できるならば、必ずしも重要ではない。インキュベーター330を通って移動した後、ロボットアーム340が次に、互いに隣接した関係で配された4つの利用可能な遠心分離機350のうちいずれか1つの中に試験要素を装填する。
【0090】
遠心分離機および関連する駆動機構345の開始‐停止スケジュールは、図4の予めプログラムされたスプリットスピン遠心分離プロトコル400に従ってコンピュータ355により制御される。
【0091】
図4を参照すると、参照符号410はここでも、比較目的で、例えば24分間の遠心分離を必要とする16個の試験要素から開始する単一の遠心分離機の標準的なプロトコルを示す。サイクルは、時間442で始まり24分後の時間447で終了する。16個の試験要素を、それぞれ4つの試験要素からなる4つのミニバッチに分割することにより、各ミニバッチはしたがって、24/4=6分に等しい期間460にわたって遠心分離されることができる。4つの遠心分離機を使用し、各遠心分離機の運転を、残りの遠心分離機それぞれに対して、24/4×4=1.5分に等しい期間455だけ時差式にすると、図3の遠心分離機350は、1.5分ごとに装填または取り出しに利用可能となる。各遠心分離機350への取り出しおよび再装填に必要な期間450に応じて、装填および再装填の頻度は、24分間の運転で単一の遠心分離機において16個の試験要素を遠心分離するのに比べて、4X4=16倍まで増大され得る。
【0092】
別の実施形態では、遠心分離機および関連する駆動機構345の停止−開始スケジュールは、前述した図5の予めプログラムされたランダムスプリットスピン遠心分離プロトコル500に従ってコンピュータ355により制御される。このシナリオによると、期間570に等しい期間にわたり続く、試験要素の1つ以上のバッチの遠心分離は、可変期間575の、潜在的に任意の数の別個のスピン565に、無作為に分割される。別個のスピンの数は、試験要素の特定のバッチの結果までの所望の時間によってのみ制限される。コンピュータは、各試験要素を追跡し、特定の試験要素の遠心分離がいつ完了したかを判定する。コンピュータは次に、各別個のスピンの最後に、遠心分離機への装填および取り出しを調整し、それにより、装置の全体的なスループットを増大させる。
【0093】
遠心分離機350それぞれの時差式運転を理解した上で、再び図3を参照すると、4つの遠心分離機350のうち1つが停止すると、コンピュータ355は、どの試験要素が、必要な24分の遠心分離期間を完了したのかを判断し、選択された試験要素をその遠心分離機からコンベアベルト335まで移すようにロボットアーム340に指示する。試験要素は次に、排出スロットの中に配される前に、バーコードリーダー387および検出器360の前を通る。バーコードリーダー387および検出器360からのデータは、コンピュータ355によって処理および分析される。その後、赤血球凝集試験の結果が、モニターに表示されるか、または、図式的に示されるローカルエリアネットワーク395(LAN)経由で集中サーバーに送られることができる。代替的な実施形態では、カメラを用いて、各試験要素を撮影することができる。その後、凝集試験の結果は、画像分析ソフトウェアを用いてコンピュータ355により評価される。
【0094】
別の実施形態では、各試験要素は、別個のスピンそれぞれが終わると、すなわちこの例では6分ごとに、撮影される。コンピュータにより陰性または陽性であると判断された試験要素は、残りのスピン時間、すなわちこの例では24−6=18分、に移る必要なしに、結果を、記録させ、遠心分離機から取り出すことができる。この能力により、結果までの時間が減少し、遠心分離機それぞれの内部の利用可能なスロットが解放され、それにより、器具の全体的なスループットがさらに増大される。
【0095】
前述したような、血液型決定のためのスプリットスピン遠心分離ワークステーション300は、完全に自動化され、効率的であり、また、必要とする人間の介入が最小限である。したがって、この装置は、救急施設でのSTATレーンに理想的に適している。救急施設では、例えば、輸血の前にドナーの血液が患者のものと適合するかどうかを決定するために、血液サンプルを迅速に処理する必要がある。
【0096】
本発明は、その好適な実施形態を参照して、具体的に図示および説明されたが、請求項により含まれる本発明の意図する範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更が本発明において行われ得ることが、当業者には理解されるであろう。
【0097】
〔実施の態様〕
(1) 遠心分離の方法において、
a)2つ以上のサンプル容器の第1のバッチを提供する工程であって、前記第1のバッチは、第1の遠心分離機においてt秒間の遠心分離を必要とする、工程と、
b)前記第1のバッチをx個の第2のバッチに分割する工程と、
c)前記第2のバッチをそれぞれ、y個の第2の遠心分離機それぞれの中に装填する工程と、
d)前記第2のバッチをそれぞれ、t/x秒間遠心分離する工程であって、前記第2の遠心分離機それぞれの運転は、少なくともt/xy秒だけ時差をつけられる、工程と、
e)少なくともt/xy秒ごとに、前記第2の遠心分離機それぞれに取り出しおよび再装填を行う工程と、
を含み、
前記第2の遠心分離機に前記第2のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度は、前記第1の遠心分離機にサンプル容器の前記第1のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度に比べて、最大でxy倍だけ増大する、方法。
(2) 試験装置において、
a)複数のサンプル容器を遠心分離するように構成された複数の遠心分離機と、
b)前記遠心分離機に接続される1つ以上の駆動機構と、
c)前記遠心分離機に装填または取り出しを行うように構成された少なくとも1つの移動機構と、
d)前記駆動機構および前記少なくとも1つの移動機構と協調する制御機構であって、前記制御機構は、前記遠心分離機の時差式運転に合わせて構成され、前記時差式運転は、実施態様1に記載の方法を含む、制御機構と、
を含む、試験装置。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記取り出しおよび装填は、t/xz+z秒ごとに行われ、ここで、zは、前記装填および取り出しに必要な秒数に等しい、方法。
(4) 実施態様3に記載の方法において、
zは、1〜120秒に等しい、方法。
(5) 実施態様1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、ビーズカセットである、方法。
【0098】
(6) 実施態様5に記載の方法において、
前記ビーズカセットは、ゲルカードである、方法。
(7) 実施態様1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、ヒトサンプルを収容する、方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、ヒト血液サンプルを収容する、方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、緊急サンプルのみを収容する、方法。
(10) 実施態様1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、粒子凝集アッセイ用試薬を収容する、方法。
【0099】
(11) 実施態様9に記載の方法において、
前記サンプル容器は、血液型決定用試薬を含む、方法。
(12) 実施態様1に記載の方法において、
第2の遠心分離機の数は、2〜10個である、方法。
(13) 実施態様1に記載の方法において、
第2のバッチの数は、2〜10個である、方法。
(14) 実施態様1に記載の方法において、
前記分割する工程、遠心分離する工程、装填する工程、および再装填する工程は、制御機構により制御される、方法。
(15) 実施態様1に記載の方法において、
前記第2のバッチはそれぞれ、同数のサンプル容器を有する、方法。
【0100】
(16) 実施態様1に記載の方法において、
前記第2のバッチそれぞれの前記サンプル容器は、前記第2のバッチそれぞれのt/x秒間の遠心分離が終わった後で、結果について評価される、方法。
(17) 実施態様2に記載の試験装置において、
前記サンプル容器内部の粒子凝集反応を検出するように構成された、1つ以上の検出器、
をさらに含む、試験装置。
(18) 実施態様2に記載の試験装置において、
前記サンプル容器は、バーコードを付けられている、試験装置。
(19) 実施態様2に記載の試験装置において、
バーコードリーダー、
をさらに含む、試験装置。
(20) 実施態様2に記載の試験装置において、
前記サンプルの温度を調節するように構成された1つ以上のインキュベーター、
をさらに含む、試験装置。
【0101】
(21) 実施態様2に記載の試験装置において、
前記第2のバッチにおけるサンプル容器の数は、2〜100個である、試験装置。
(22) 緊急サンプルを迅速に処理するためのSTATレーン装置において、
実施態様2に記載の試験装置であって、1つ以上の緊急サンプルを迅速に処理するように構成されている、試験装置、
を含む、STATレーン装置。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1の実施形態による、サンプルのバッチのハイスループット遠心分離のためのプロトコルを示す。
【図2】第2の実施形態による、サンプルの複数のバッチのハイスループット遠心分離のためのプロトコルを示す。
【図3】ハイスループット遠心分離プロトコルを用いることができるワークステーションの平面図を描く。
【図4】図3のワークステーションで使用される、第3の実施形態によるサンプルのバッチのハイスループット遠心分離のためのプロトコルを示す。
【図5】第4の実施形態による、サンプルの複数のバッチのハイスループット遠心分離のためのプロトコルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離の方法において、
a)2つ以上のサンプル容器の第1のバッチを提供する工程であって、前記第1のバッチは、第1の遠心分離機においてt秒間の遠心分離を必要とする、工程と、
b)前記第1のバッチをx個の第2のバッチに分割する工程と、
c)前記第2のバッチをそれぞれ、y個の第2の遠心分離機それぞれの中に装填する工程と、
d)前記第2のバッチをそれぞれ、t/x秒間遠心分離する工程であって、前記第2の遠心分離機それぞれの運転は、少なくともt/xy秒だけ時差をつけられる、工程と、
e)少なくともt/xy秒ごとに、前記第2の遠心分離機それぞれに取り出しおよび再装填を行う工程と、
を含み、
前記第2の遠心分離機に前記第2のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度は、前記第1の遠心分離機にサンプル容器の前記第1のバッチの取り出しおよび再装填を行う頻度に比べて、最大でxy倍だけ増大する、方法。
【請求項2】
試験装置において、
a)複数のサンプル容器を遠心分離するように構成された複数の遠心分離機と、
b)前記遠心分離機に接続される1つ以上の駆動機構と、
c)前記遠心分離機に装填または取り出しを行うように構成された少なくとも1つの移動機構と、
d)前記駆動機構および前記少なくとも1つの移動機構と協調する制御機構であって、前記制御機構は、前記遠心分離機の時差式運転に合わせて構成され、前記時差式運転は、請求項1に記載の方法を含む、制御機構と、
を含む、試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記取り出しおよび装填は、t/xz+z秒ごとに行われ、ここで、zは、前記装填および取り出しに必要な秒数に等しい、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
zは、1〜120秒に等しい、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、ビーズカセットである、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記ビーズカセットは、ゲルカードである、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、ヒトサンプルを収容する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、ヒト血液サンプルを収容する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、緊急サンプルのみを収容する、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプル容器は、粒子凝集アッセイ用試薬を収容する、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
前記サンプル容器は、血液型決定用試薬を含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
第2の遠心分離機の数は、2〜10個である、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
第2のバッチの数は、2〜10個である、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
前記分割する工程、遠心分離する工程、装填する工程、および再装填する工程は、制御機構により制御される、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
前記第2のバッチはそれぞれ、同数のサンプル容器を有する、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
前記第2のバッチそれぞれの前記サンプル容器は、前記第2のバッチそれぞれのt/x秒間の遠心分離が終わった後で、結果について評価される、方法。
【請求項17】
請求項2に記載の試験装置において、
前記サンプル容器内部の粒子凝集反応を検出するように構成された、1つ以上の検出器、
をさらに含む、試験装置。
【請求項18】
請求項2に記載の試験装置において、
前記サンプル容器は、バーコードを付けられている、試験装置。
【請求項19】
請求項2に記載の試験装置において、
バーコードリーダー、
をさらに含む、試験装置。
【請求項20】
請求項2に記載の試験装置において、
前記サンプルの温度を調節するように構成された1つ以上のインキュベーター、
をさらに含む、試験装置。
【請求項21】
請求項2に記載の試験装置において、
前記第2のバッチにおけるサンプル容器の数は、2〜100個である、試験装置。
【請求項22】
緊急サンプルを迅速に処理するためのSTATレーン装置において、
請求項2に記載の試験装置であって、1つ以上の緊急サンプルを迅速に処理するように構成されている、試験装置、
を含む、STATレーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−520109(P2011−520109A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507648(P2011−507648)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/042323
【国際公開番号】WO2009/135011
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(501131014)オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Ortho−Clinical Diagnostics, Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Indigo Creek Drive, Rochester, NY 14626−5101, U.S.A.
【Fターム(参考)】