説明

認証装置、認証方法、登録装置及び登録方法

【課題】高速に認証し得る認証装置、認証方法、登録装置及び登録方法を提案する。
【解決手段】指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出部と、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を抽出する抽出部と、情報と、登録対象の静脈情報に対応付けられた情報との類似度に基づいて、静脈情報との照合候補を決定する決定部とを含む構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は認証装置、認証方法、登録装置及び登録方法に関し、例えばバイオメトリクス認証に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばある場所の入退場を管理するシステム等のように、複数人の登録情報をメモリに登録し、登録された登録情報と一致する情報を入力した者が登録者であるか否かを、検索する場合がある。この場合、入力される認証対象の情報を、メモリに登録された複数の登録情報とそれぞれ照合する、いわゆる「1:N認証」が行われる。
【0003】
この種の認証装置として、複数の登録画像及び認証対象の照合画像から低解像度の変換登録画像及び変換照合画像を生成し、変換照合画像との相関度の高い上位所定数の変換登録画像の生成元となる登録画像を、認証対象の照合画像との照合結果に基づいて登録者であるか否かを判定するようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−215883公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでかかる構成の認証装置では、認証対象の照合画像から変換照合画像を生成しているため、認証対象の照合画像が生成されなければ、登録者であるか否かを判定することができず、認証速度が低下するという問題があった。
【0005】
また、この認証装置では、変換登録画像及び変換照合画像がハフ変換により生成されるが、当該ハフ変換は、変換前の画像(x−y平面)における直線成分をρ−θ空間において定量化するものである。
【0006】
しかし、定量化される直線成分は、単純につながった線だけでなく、破線(点線)等のように、直線上にある複数の線分の場合も含まれる。すなわち、登録画像及び照合画像には含まれない要素も適宜加味された大雑把な量の相関度によって、認証対象の照合画像と照合すべき登録画像が決まるため、変換照合画像との相関度の高い上位所定数の変換登録画像の生成元となる登録画像のなかに、当該登録者の登録画像が含まれない可能性が高くなり、かえって認証速度が低下することになる。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高速に認証し得る認証装置、認証方法、登録装置及び登録方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明は、認証装置であって、指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出部と、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を抽出する抽出部と、該情報と、登録対象の静脈情報に対応付けられた情報との類似度に基づいて、静脈情報との照合候補を決定する決定部とを含む構成とする。
【0009】
また本発明は、認証方法であって、指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出ステップと、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を抽出する抽出ステップと、該情報と、登録対象の静脈情報に対応付けられた情報との類似度に基づいて、静脈情報との照合候補を決定する決定ステップとを含む手法とする。
【0010】
さらに本発明は、登録装置であって、指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出部と、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を、照合候補のキー情報として抽出するキー情報抽出部と、静脈情報とキー情報とを対応付けて記憶部に登録する登録部とを含む構成とする。
【0011】
さらに本発明は、登録方法であって、指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出部と、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を、照合候補のキー情報として抽出するキー情報抽出部と、静脈情報とキー情報とを対応付けて記憶部に登録する登録部とを含む手法とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を、照合候補の決定要素としたことにより、該静脈情報を抽出し終わらなくても照合候補の決定が可能となり、またハフ変換画像等のように擬似的な要素を含むことなく、生体の直接的な要素をもとに照合候補を正確に決定することが可能となるため、高速に認証し得る認証装置、認証方法、登録装置及び登録方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面について、本発明を適用した一実施の形態を詳述する。
【0014】
(1)第1の実施の形態
(1−1)認証装置の回路構成
図1において、第1の実施の形態による認証装置1の回路構成を示す。この認証装置1は、制御部10に対して、操作部11、撮像部12、記憶部13、インターフェース14、表示部15及び音声出力部16をそれぞれバス17を介して接続することにより構成される。
【0015】
制御部10は、認証装置1全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)と、起動プログラムなどが格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを含むコンピュータとして構成される。
【0016】
この制御部10には、登録対象のユーザ(以下、これを登録者とも呼ぶ)における静脈を登録するモード(以下、これを静脈登録モードとも呼ぶ)の実行命令COM1又は登録者本人の有無を判定するモード(以下、これを認証モードとも呼ぶ)の実行命令COM2が、操作部11から入力される。
【0017】
制御部10は、かかる実行命令COM1、COM2に基づいて実行すべきモードを決定し、この決定結果に対応するプログラムに基づいて、撮像部12、記憶部13、インターフェース14、表示部15及び音声出力部16を適宜制御し、静脈登録モード又は認証モードを実行するようになされている。
【0018】
撮像部12は、脱酸素化ヘモグロビン及び酸素化ヘモグロビンの双方に対して特異的に吸収される特性をもつ波長域(700[nm]〜900[nm])が含まれる波長の光(以下、これを近赤外光とも呼ぶ)を、光入力面に配される指内方の静脈層よりも後方(深層)に照射する光源を有する。
【0019】
また撮像部12は、光入力面に配される生体部位内の静脈の画像(以下、これを静脈画像とも呼ぶ)の画像データを、所定周期ごとに生成し、これを制御部10に送出するようになされている。
【0020】
記憶部13は、登録対象の静脈画像に含まれる静脈に関する情報(以下、これを静脈情報とも呼ぶ)や、プログラムあるいは設定情報等の各種データを保持するためのものであり、制御部10により指定されるデータを記憶し、又は読み出すようになされている。
【0021】
インターフェース14は、所定の伝送路を介して接続された外部の装置との間で各種データを授受するようになされている。
【0022】
表示部15は、制御部10から与えられる表示データに基づく文字や図形を表示画面に表示する。音声出力部16は、制御部10から与えられる音声データに基づく音声を、スピーカから出力するようになされている。
【0023】
(1−1−1)静脈登録モード
次に、静脈登録モードについて説明する。制御部10は、実行すべきモードとして静脈登録モードを決定した場合、表示部15及び音声出力部16の少なくとも一方を介して光入力面に指を配すべきことを通知した後、図2に示すように、撮像制御部21、静脈情報抽出部22、キー情報抽出部23及び登録部24として機能する。
【0024】
撮像制御部21は、光源を駆動し、光入力面に配される指内方の静脈層よりも後方に近赤外光を照射する。指内方の静脈層の後方に近赤外光が照射された場合、近赤外光は、その指内方において反射及び散乱によって静脈層と表皮層を経由し、光入力面に入射する。この光入力面に入射する近赤外光は、指内方における非静脈部分では明るい状態となる一方、静脈部分ではヘモグロビンの吸光特性により暗い状態が保たれることにより、静脈部分と非静脈部分のコントラストが鮮明となっており、静脈を投影する光(以下、これを静脈投影光とも呼ぶ)として、撮像部12の撮像面に導光される。
【0025】
また撮像制御部21は、撮像部12から出力される画像データに基づいて、例えば、静脈に焦点が合うように光学レンズのレンズ位置を調整するとともに、所定の露出値(EV(Exposure Value))を基準として、絞りの絞り値及び撮像素子に対するシャッター速度(露出時間)をそれぞれ調整することで、光入力面に配される指内方の静脈の撮像状態が良好となるように撮像部12の撮像条件を設定する。
【0026】
撮像制御部21は、撮像部12の撮像条件を設定した場合、該撮像部12から出力される画像データを静脈情報抽出部22に送出する。
【0027】
静脈情報抽出部22は、撮像部12での撮像結果として、撮像制御部21から与えられる画像データの静脈画像から静脈情報を抽出する。
【0028】
キー情報抽出部23は、静脈情報抽出部22から、静脈情報の抽出過程における所定の段階で生成される画像を取得し、照合候補のキーとして、該画像の状態を示す情報(以下、これをキー情報とも呼ぶ)を抽出する。
【0029】
登録部24は、静脈情報抽出部22によって抽出された静脈情報と、キー情報抽出部23によって抽出されたキー情報とを対応付けて記憶部13に登録する。
【0030】
このようにして制御部10は、静脈登録モードを決定した場合、静脈情報と、その静脈情報の抽出過程における所定段階の状態を示すキー情報とを記憶部13に登録するようになされている。
【0031】
(1−1−2)認証モード
次に、認証モードについて説明する。制御部10は、実行すべきモードとして認証モードを決定した場合、表示部15及び音声出力部16の少なくとも一方を介して光入力面に指を配すべきことを通知した後、図2との対応部分に同一符号を付した図3に示すように、撮像制御部21、静脈情報抽出部22、キー情報抽出部23、読出部31、認証部32及び処理実行部33として機能する。
【0032】
撮像制御部21は、近赤外光光源を駆動し、撮像部12の撮像条件を設定する。一方、静脈情報抽出部22は、撮像部12から撮像制御部21を介して得られる画像データから、静脈登録モードと同一の抽出処理を施し、認証対象の静脈情報を抽出する。
【0033】
他方、キー情報抽出部23は、記憶部13に記憶される登録対象の静脈情報が複数となる場合、認証用静脈情報の抽出過程のうち、静脈登録モードと同一の段階で生成される画像を静脈情報抽出部22から取得し、当該画像から、静脈登録モードと同一の抽出処理により認証対象のキー情報を抽出する。
【0034】
読出部31は、記憶部13に記憶される登録対象の静脈情報が1つとなる場合、該静脈情報を読み出し、これを認証部32に送出する。この場合、認証部32は、読出部31によって記憶部13から読み出された登録対象の静脈情報と、静脈情報抽出部22によって抽出された認証対象の静脈情報とを用いて、登録者であるか否か(認証成功又は認証失敗であるか)を判定する。
【0035】
一方、読出部31は、記憶部13に記憶される登録対象の静脈情報が複数となる場合、当該静脈情報に対応付けられた登録対象のキー情報を記憶部13から読み出し、これを認証部32に送出する。この場合、認証部32は、読出部31によって記憶部13から読み出された登録対象のキー情報と、キー情報抽出部23によって抽出された認証対象のキー情報とに基づいて、記憶部13に登録された複数の静脈情報のなかから、静脈情報抽出部22によって抽出される認証対象の静脈情報との照合候補を決定する。
【0036】
また認証部32は、照合候補として決定した登録対象の静脈情報を読出部31に読み出させ、当該読み出された登録対象の静脈情報と、静脈情報抽出部22によって抽出された認証対象の静脈情報とを用いて、登録者であるか否か(認証成功又は認証失敗であるか)を判定する。
【0037】
処理実行部33は、認証部32において登録者である(認証成功)と判定された場合、所定の処理を開始させるための制御データを生成し、これをインターフェース14に接続された内部又は外部の装置に送出する。この装置では、所定の処理として、例えば、ドアを一定期間閉錠する、あるいは、制限対象の動作モードを解除する等の処理が実行される。
【0038】
また処理実行部33は、認証部32において登録者ではないと判定された場合、例えば、登録者として承認することができないことを、表示部15及び音声出力部16の少なくとも一方を介して通知する。
【0039】
このようにしてこの制御部10は、認証モードを決定した場合、記憶部13に対して複数の静脈情報が登録されているときには、認証対象の静脈情報に対する照合候補を、当該登録対象の静脈情報及び認証対象の静脈情報の抽出過程における所定段階の状態を示すキー情報を用いて絞り込むようになされている。
【0040】
(1−2)静脈情報抽出部の構成
次に、静脈情報抽出部22の構成を説明する。この実施の形態の場合、静脈情報抽出部22は、図4に示すように、画像平滑化部41、輪郭抽出部32、マスク画像生成部43、切出部44、静脈平滑化部45、2値化部46、太線化部47及び細線化部48によって構成される。
【0041】
画像平滑化部41は、撮像制御部21から撮像結果として与えられる画像データの静脈画像に対して、例えばガウシアンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、該静脈画像を平滑化する。
【0042】
輪郭抽出部32は、画像平滑化部41によって平滑化された静脈画像に対して、例えばLog(Laplacian of Gaussian)と呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、該静脈画像における輪郭を浮き彫りに(強調)する。
【0043】
マスク画像生成部43は、輪郭抽出部32によって輪郭が強調された静脈画像から、背景部分とのコントラストを基に指輪郭を検出し、該指輪郭に囲まれる指領域と、それ以外の領域とを2値で示す画像(以下、これをマスク画像とも呼ぶ)を生成する。
【0044】
切出部44は、輪郭抽出部32によって輪郭が強調された静脈画像から、マスク画像生成部43によって生成されたマスク画像を用いて、指輪郭に囲まれる指領域を含む所定サイズの画像を切り出す。
【0045】
静脈平滑化部45は、切出部44によって切り出された静脈画像に対して、例えばメディアンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、該静脈画像における静脈部分を平滑化する。
【0046】
2値化部46は、静脈平滑化部45によって静脈部分が平滑化された静脈画像を、設定された輝度レベルを基準として、2値レベルに変換する。ここで、仮に、静脈が平滑化される前の静脈画像を2値化対象の画像とした場合、図5の例に示すように、実際には一本の静脈が、2値化によって2本の静脈として分離される確率が高くなる(図5(A))。したがって、静脈が平滑化された静脈画像を2値化対象とすることで、実際の静脈に近似する状態での2値化が可能となる(図5(B))。
【0047】
太線化部47は、2値化部46によって2値化された静脈画像に対して、例えばダイレーションと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、該静脈画像に含まれる静脈を太線化する。この結果、本来連結された静脈箇所であるにもかかわらず途切れていた静脈箇所が連結される。
【0048】
細線化部48は、太線化部47によって静脈部分が太線化された静脈画像に対して、例えばエロージョンと呼ばれる空間フィルタを用いてフィルタ処理を施し、該静脈部分の静脈幅を一定とする。
【0049】
このようにして静脈情報抽出部22は、静脈幅が一定とされる静脈部分と、背景部分とを2値で示す画像を、静脈情報として抽出するようになされている。
【0050】
(1−3)キー情報生成部の構成
次に、キー情報抽出部23の構成を説明する。この実施の形態の場合、キー情報抽出部23は、図6に示すように、選択キー情報抽出部51と、決定キー情報抽出部52とによって構成される。
【0051】
選択キー情報抽出部51は、照合候補を選択するためのキーとして、静脈情報抽出部22における中間段階で生成される画像の状態を示す情報(以下、これを選択キー情報とも呼ぶ)を抽出する部であり、輪郭形状抽出部61、度数分布抽出部62及び血管量抽出部63を有する。
【0052】
輪郭形状抽出部61は、画像におけるノイズ成分の除去段階で生成される静脈画像を用いて、指の輪郭形状を示す選択キー情報を抽出する。
【0053】
この抽出手法の具体的な一例を説明する。輪郭形状抽出部61は、マスク画像生成部43からマスク画像を取得し、図7に示すように、該取得したマスク画像(図7(A))から、指輪郭(指枠を構成する画素)の一部を含む特定領域(図7(B))を切り出す。
【0054】
そして輪郭形状抽出部61は、特定領域(図7(B))を、縦横サイズがn分の1倍となるように圧縮し(図7(C))、該圧縮された特定領域(図7(C))に含まれる指輪郭(指枠を構成する画素)の位置を、行又は列単位で、特定領域での基準(左端)からの距離を示す座標値(x座標値)として抽出する(図7(D))。
【0055】
このようにこの抽出手法では、特定部分の指枠を構成する画素が、行又は列単位で、該特定領域での基準からの距離を示す座標値(x座標値)が選択キー情報とされる。したがって、指枠を構成する各画素のx及びy座標値を選択キー情報とする場合に比して、小さいデータ容量で指輪郭の状態(形状)を示すことができる。
【0056】
ちなみに、マスク画像から切り出す特定領域を「240×30」とし、該特定領域をその縦横サイズが5分の1倍となるように圧縮した場合、該圧縮された「48×6」の特定領域での基準に対する指輪郭の位置(座標値)は「48×1」となるので、選択キー情報は24[byte]となる。
【0057】
度数分布抽出部62は、画像におけるノイズ成分の除去段階で生成される静脈画像を用いて、指の輪郭に囲まれる指領域の度数分布を示す選択キー情報を抽出する。
【0058】
この抽出手法の具体的な一例を説明する。度数分布抽出部62は、画像平滑化部41から、平滑化された静脈画像を取得するとともに、マスク画像生成部43からマスク画像を取得する。
【0059】
そして度数分布抽出部62は、図8に示すように、平滑化された静脈画像(図8(A))から、マスク画像を用いて指領域を認識し、該指領域から、設定された輝度階級ごとの画素数を抽出する(図8(B))。
【0060】
このようにこの抽出手法では、平滑化された静脈画像内における指領域の輝度ヒストグラムが選択キー情報とされる。したがって、指領域をそのまま選択キー情報とする場合に比して、小さいデータ容量で指領域の状態を示すことができる。ちなみに、輝度階級を16[bin]とした場合、選択キー情報は16[byte]となる。
【0061】
またこの抽出手法では、抽出対象の画像が、画像平滑化部41によって平滑化された静脈画像とされる。したがって、例えば、画像平滑化部41の後に、さらに輪郭強調部42又は静脈平滑化部45により処理された静脈画像を抽出対象とする場合に比して、指領域に対する輝度操作の程度が小さいため、際立った特徴を示す選択キー情報として抽出することができる。
【0062】
血管量抽出部63は、2値画像における静脈の太線化段階で生成される静脈画像を用いて、指の輪郭に囲まれる指領域内の静脈量を示す選択キー情報を抽出する。この抽出手法の具体的な一例を説明する。血管量抽出部63は、静脈が太線化された2値の静脈画像を太線化部47から取得し、該静脈画像から、該静脈を構成する画素の数(血管量)を示す選択キー情報を抽出する。
【0063】
このようにこの抽出手法では、太線化された2値の静脈画像内における血管量が選択キー情報とされる。したがって、血管をそのまま選択キー情報とする場合に比して、小さいデータ容量で指領域の状態を示すことができる。ちなみに、選択キー情報は2[byte]となる。
【0064】
またこの抽出手法では、静脈が太線化された2値の静脈画像が、血管量の抽出対象の画像とされる。したがって、例えば、多値の静脈画像を抽出対象とする場合に比して、血管部分とそれ以外の部分との境界がはっきりしているため、一定の基準のもとに血管量を抽出できる。一方、図9に示すように、静脈が太線化された2値の静脈画像(図9(A))は、該静脈画像に対して細線化処理を施す過程を経た後に得られる静脈画像(図9(B))を抽出対象とする場合に比して、血管状態が忠実に反映されているため、際立った特徴を示す選択キー情報として抽出することができる。
【0065】
ちなみに、上述の選択キー情報抽出部51により抽出される選択キー情報の容量は、24[byte]、16[byte]、2[byte]の計42[byte]を要するが、48種の登録対象の静脈情報を登録した場合であっても、該静脈情報に対応付けられて記憶部13に登録される選択キー情報は、1[Kbyte]以内に納まる。したがって、記憶部13に対する選択キー情報の占有量を極力小さい状態とすることが可能である。
【0066】
決定キー情報抽出部52は、照合候補を決定するためのキーとして、静脈情報抽出部22において登録対象とされる画像の生成段階で生成される静脈画像の状態を示す情報(以下、これを決定キー情報とも呼ぶ)を抽出する部である。
【0067】
この決定キー情報抽出部52は、登録対象とされる静脈幅が一定とされる静脈部分と、背景部分とを2値で示す静脈画像を細線化部48から取得し、該静脈画像から、縦横サイズをn分の1倍に圧縮した画像(以下、これをサムネイル画像とも呼ぶ)を決定キー情報として抽出する。
【0068】
したがって、この決定キー情報は、登録対象とされる静脈画像全体の内容が反映されたものであるから、指輪郭状態抽出部41、指領域状態抽出部42又は血管状態抽出部43によって抽出される選択キー情報に比して、静脈に関して詳細内容を示すキー情報となる。
【0069】
(1−4)認証部の構成
次に、認証部32の構成を説明する。この実施の形態では、認証部32は、図10に示すように、候補選択部71、候補決定部72及び判定部73によって構成される。
【0070】
候補選択部71は、読出部31によって記憶部13から読み出された登録対象の選択キー情報(指輪郭の位置(座標値)、輝度階級ごとの画素数、静脈画素数)と、キー情報抽出部23によって抽出された認証対象の選択キー情報(指輪郭の座標値、輝度階級ごとの画素数、静脈画素数)との対応するもの同士を比較する。
【0071】
指輪郭の座標値を示す選択キー情報を比較する場合、候補選択部71は、登録対象の選択キー情報(指輪郭の座標値)と、認証対象の選択キー情報(指輪郭の座標値)とを、行(又は列)単位で差の絶対値を求め、これら差の絶対値を合計する。この合計により得られる値は、小さいほど、指輪郭における形状の類似度が高いことを意味する。以下、この合計値は、指輪郭相違値と適宜呼ぶ。
【0072】
一方、輝度階級ごとの画素数を示す選択キー情報を比較する場合、候補選択部71は、登録対象の選択キー情報(輝度階級ごとの画素数)と、選択キー情報抽出部51によって抽出された認証対象の選択キー情報(輝度階級ごとの画素数)とを、対応する階級ごとに画素数の小さいほうをとり、これらを合計する。この合計により得られる値は、大きいほど、指領域における輝度状態の類似度が高いことを意味する。以下、この合計値は、指領域相違値と適宜呼ぶ。
【0073】
他方、静脈画素数を示す選択キー情報を比較する場合、候補選択部71は、登録対象のキー情報(静脈画素数)と、選択キー情報抽出部51によって抽出された認証対象の選択キー情報(静脈画素数)との差を求める。この差により得られる値は、小さいほど、静脈の占有量の類似度が高いことを意味する。血管相違値と適宜呼ぶ。
【0074】
また候補選択部71は、選択キー情報同士の比較結果として、指輪郭相違値、指領域相違値及び血管相違値を得た場合、指輪郭相違値をS、指領域相違値をH、血管相違値をDとするとともに、指輪郭相違値に対して設定された第1の閾値をT1、指領域相違値に対して設定された第2の閾値をT2、血管相違値に対して設定された第3の閾値をT3とすると、
【0075】
【数1】

【0076】
のように、第1の閾値T1に対する指輪郭相違値Sの割合ESと、第2の閾値T2に対する指領域相違値Hの割合EHと、第3の閾値T3に対する血管相違値Dの割合EDとを求めることで、当該指輪郭相違値、指領域相違値及び血管相違値における数量の幅を一定とする(正規化する)。
【0077】
そして候補選択部71は、次式
【0078】
【数2】

【0079】
のように、第1の閾値T1に対する指輪郭相違値Sの割合ESと、第3の閾値T3に対する血管相違値Dの割合EDとの和から、第2の閾値T2に対する指領域相違値Hの割合EHを減算し、照合候補と評価すべき評価値Eを生成する。ここで、指輪郭相違値S及び血管相違値Dが小さいほど、また指領域相違値Hが大きいほど類似性が高いものであるから、この評価値Eは、小さいほど本人である可能性が高いことを意味するものとなる。
【0080】
この状態において候補選択部71は、評価値Eに対して設定された第4の閾値未満となる評価値をもつ登録対象の選択キー情報を検出し、該選択キー情報に対応付けたられた登録対象の静脈情報を、認証対象の静脈情報との照合候補として選択する。
【0081】
ここで、候補選択部71は、照合候補として選択した選択数を、予め規定された数(以下、これを規定候補数とも呼ぶ)と比較し、照合候補の選択数が規定候補数以上となる場合、照合候補に対する照合順位を、評価値Eが低い順に順位付けする。
【0082】
一方、照合候補の選択数が規定候補数未満となる場合、該照合候補として選択した登録対象の静脈情報のなかに、認証対象の静脈情報と同一又は同一のものとすべきものが含まれている可能性がある。この場合、候補選択部71は、評価値Eの低いものから順に、規定候補数分の照合候補を再選択するとともに、該照合候補に対する照合順位を順位付けする。
【0083】
このように候補選択部71は、登録時及び認証時に抽出される静脈情報の抽出途中で得られる画像の一部分(指輪郭部分、指領域部分、静脈部分)の大雑把な状態(形状、輝度状態、静脈画素数)の類似度を、照合候補の選択基準及び順位付け基準として、認証対象の静脈情報に対する照合候補とすべき登録対象の静脈情報を選択するとともに順位付けするようになされている。
【0084】
また候補選択部71は、照合候補数が規定候補数未満となるときには、当該状態(形状、輝度状態、静脈画素数)の類似度が一定のレベル(第4の閾値)未満にあるか否かにかかわらず、該類似度が低いものから順に、登録対象の静脈情報を選択するとともに順位付けすることで、認証対象の静脈情報と同一又は同一のものとすべきものが照合候補とされる率を向上することができるようになされている。
【0085】
ちなみに、指輪郭の形状は、例えば、指先の湾曲の程度や、指の太さの程度などによって相違することから、候補選択部71では、当該指輪郭の形状をもとに、認証時の指の種類や、成長の程度が異なる登録対象の静脈情報が、照合候補からおおよそ除外されることになる。
【0086】
また、指領域の輝度状態は、例えば、指の太さの程度や、黒人と白人等といった人種などによって相違することから、候補選択部71では、当該指領域の輝度状態をもとに、認証時の指の種類や、人種が異なる登録対象の静脈情報が、照合候補からおおよそ除外されることになる。
【0087】
さらに、血管量は、例えば、脂肪量の程度もしくは男女差又は指の太さの程度などによって相違することから、候補選択部71では、当該血管量をもとに、認証時の指の種類や、男女が異なる登録対象の静脈情報が、照合候補からおおよそ除外されることになる。
【0088】
候補決定部72は、候補選択部71によって選択された規定候補数以上の照合候補のなかから、該照合候補の登録対象の静脈情報に対応付けられた決定キー情報(サムネイル画像)と、キー情報抽出部23によって抽出された認証対象の決定キー情報(サムネイル画像)とを用いて、一の照合候補を決定する。
【0089】
具体的には、候補決定部72は、読出部31に対して、登録対象の決定キー情報(サムネイル画像)を、候補選択部71によって順位付けされた順に読み出させ、該登録対象のキー情報(サムネイル画像)が読み出されるたびに、認証対象の決定キー情報(サムネイル画像)と照合する。この決定キー情報(サムネイル画像)の照合には、例えば、相互相関関数、位相相関関数又はSAD(Sum of Absolute difference)等のように、照合対象となる各画像の類似度(隔たりの程度)を求めるものが用いられる。
【0090】
そして候補決定部72は、登録対象及び認証対象の決定キー情報(サムネイル画像)同士の照合結果が、該照合結果に対して設定される第5の閾値以上となる場合、当該登録対象のサムネイル画像に対応付けられた登録対象の静脈情報を、認証対象の静脈情報の照合候補として決定する。
【0091】
このように候補決定部72は、登録時及び認証時に抽出される静脈情報の抽出結果から、選択キー情報に比して詳細な状態を示すものとして得られる決定キー情報(サムネイル画像)の類似度を、照合候補の決定基準として、認証対象の静脈情報に対する照合候補とすべき登録対象の静脈情報を決定するようになされている。
【0092】
判定部73は、候補決定部72により照合候補として決定された登録対象の静脈情報と、静脈情報抽出部22によって抽出された認証対象の静脈情報とを照合し、この照合結果に基づいて登録者であるか否かを判定する。この静脈情報の照合には、上述の決定キー情報(サムネイル画像)の照合と同一のものを用いてもよく、相違するものを用いてもよい。
【0093】
(1−5)認証処理手順
次に、認証部32の認証処理手順を説明する。図11に示すように、認証部32は、認証モードを決定した場合、この認証処理手順を開始し、ステップSP1において、登録対象及び認証対象の選択キー情報を取得し、次のステップSP2に進む。
【0094】
認証部32は、このステップSP2において、登録対象の選択キー情報と、認証対象の選択キー情報とを比較し、該比較結果が小さいほど照合候補と評価すべきものとする評価値を生成した後、ステップSP3に進む。
【0095】
認証部32は、このステップSP3において、所定値未満となる評価値をもつ登録対象の選択キー情報を検出し、該選択キー情報に対応付けたられた登録対象の静脈情報を、認証対象の静脈情報との照合候補として選択し、次のステップSP4に進んで、当該選択数が予め規定された数(規定候補数)以上となるか否かを検出する。
【0096】
ここで、選択数が規定候補数以上となる場合、認証部32は、照合候補として選択した登録対象の静脈情報のなかに、認証対象の静脈情報と同一又は同一のものとすべきものが含まれている可能性が高いと判定する。この場合、認証部32は、ステップSP5を経ずにステップSP6に進む。
【0097】
一方、選択数が規定候補数未満となる場合、認証部32は、照合候補として選択した登録対象の静脈情報のなかに、認証対象の静脈情報と同一又は同一のものとすべきものが含まれている可能性が低いと判定する。この場合、認証部32は、ステップSP5に進んで、ステップSP2で生成した評価値の低いものから順に、規定候補数分の照合候補を再選択した後、ステップSP6に進む。
【0098】
認証部32は、ステップSP6において、選択した照合候補を、ステップSP2で生成した評価値の低いものから順に順位付けし、続くステップSP7において、該照合候補となる登録対象の静脈情報に対応付けられた決定キー情報と、認証対象の決定キー情報とを取得する。
【0099】
そして認証部32は、ステップSP8に進んで、登録対象の決定キー情報を、ステップSP6で順位付けされた順序で認証対象の決定キー情報と照合し、該認証対象の決定キー情報と所定以上の類似度となる登録対象の決定キー情報に対応付けられた登録対象の静脈情報を、照合候補として決定する。
【0100】
認証部32は、次のステップSP9において、照合候補として決定された登録対象の静脈情報と、認証対象の静脈情報とを照合し、この照合結果に基づいて、続くステップSP10において、登録者であるか否かを判定した後、この認証処理手順を終了する。
【0101】
このようにこの認証部32は、選択キー情報を用いて照合候補を大雑把に絞り込んだ後、該照合候補を、選択キー情報よりも詳細な状態を示す決定キー情報を用いてさらに絞り込むようになされている。
【0102】
(1−6)動作及び効果
以上の構成において、この認証装置1は、登録対象の静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示すキー情報を抽出し、該キー情報と、静脈情報と対応付けて記憶部31に登録する。
【0103】
一方、認証装置1は、認証対象の静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を抽出し、該情報と、記憶部13に登録されたキー情報との類似度に基づいて、登録対象の静脈情報のなかから、認証対象の静脈情報との照合候補を決定する。
【0104】
したがって、この認証装置1では、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置が、照合候補の決定要素となる。これによりこの認証装置1では、認証対象の静脈情報の抽出途中において照合候補を決定することができ、この結果、高速に認証することができる。また、指の輪郭の位置情報は、ハフ変換画像等のように擬似的な要素を含むことなく、生体の直接的な要素となるので、該擬似的な要素を含むものを決定要素とする場合に比して、照合候補のなかに、登録者の登録画像が含まれていない等の可能性を低減することができ、この結果、高速に認証することができる。
【0105】
またこの認証装置1では、指の輪郭の位置として、静脈情報の中間段階で生成される画像の所定領域から、指の指枠を構成する画素のうち、所定間隔ごとの画素の位置(図7(C))が採用される。
【0106】
したがって、この認証装置1では、指の指枠を構成する画素の位置を指の輪郭形状を示す情報とする場合(図7(B))に比して小さい情報量で輪郭形状を示すことができ、この結果、記憶部13に対する占有量を低減できるとともに、指の輪郭の位置を示す情報の類似度を得る過程での処理負荷を低減できる。
【0107】
またこの認証装置1では、所定間隔ごとの画素の位置として、x座標値及びy座標値ではなく、所定領域での基準(左端)からの距離を示す座標値(x座標値)が採用される(図7(D))。したがって、より一段と小さい情報量で輪郭形状を示すことができる。
【0108】
またこの認証装置1では、指の輪郭の位置を示す情報の抽出対象の画像として、指部位の静脈を含む画像に対するノイズ成分の除去段階(画像平滑化部41)で生成される画像が採用される。したがって、撮像環境等の一過性の変化に起因する擬似的な要素が除かれた画像から、指の輪郭部分をより正確に抽出することができ、照合候補のなかに、登録者の登録画像が含まれていない等の可能性を一段と低減することができる。
【0109】
またこの認証装置1では、指の輪郭形状を示す情報だけでなく、該指の輪郭に囲まれる領域の度数分布を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報とが抽出される。したがって、この認証装置1では、生体において異なる観点の特徴を捉えることができるため、指の輪郭形状を示す情報だけの場合に比して、個々の情報の情報量を抑えたとしても、照合候補のなかに、登録者の登録画像が含まれていない等の可能性を一段と低減することができる。
【0110】
ここで、実験結果を図12に示す。この図12は、50人分の各指の静脈画像(200枚)を登録対象とし、個々の静脈画像を認証対象として、指の輪郭形状を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域の度数分布を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報とを、3次元プロットしたものである。この図12からも明らかなように、グレーのマーク群(本人同士の群)は、ブラックのマーク群(他人同士の群)の隅に固まっており、当該情報によって、照合候補のなかに、登録者の登録画像が含まれていない可能性が極めて低いということが分かる。
【0111】
またこの認証装置1では、指の輪郭形状を示す情報と、指の輪郭に囲まれる領域の度数分布を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報との類似度は、(1)式及び(2)式に示したように、第1の閾値T1に対する指輪郭相違値Sの割合ESと、第3の閾値T3に対する血管相違値Dの割合EDとの和から、第2の閾値T2に対する指領域相違値Hの割合EHを減算した結果が用いられる。
【0112】
したがって、この認証装置1では、相関係数のように、分散や標準偏差等の複雑な統計学的手法を用いる場合に比して、加算又は減算の簡易な演算手法で類似度を得ることができ、この結果、より一段と高速に認証することができる。
【0113】
またこの認証装置1では、選択キー情報(指の輪郭形状を示す情報と、指の輪郭に囲まれる領域の度数分布を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報)の類似度によって照合候補を選択し、選択された照合候補のなかから、当該選択キー情報よりも情報量の多い決定キー情報(サムネイル画像)の類似度によって照合候補を決定する手法が採用される。
【0114】
したがってこの認証装置1では、照合候補を簡易に絞り込んだ後に、詳細に絞り込むことができるため、単に選択キー情報又は決定キー情報によって照合候補を決定する場合に比して、照合候補のなかに、登録者の登録画像が含まれていない等の可能性を低減しながらも、高速に認証できる。
【0115】
ちなみに、選択キー情報の類似度を求める時間は、一の静脈画像では、MATLAB7.4.0上で0.01[msec]以下であった。また、例えば、N枚の画像から選択キー情報を用いてN/4枚が照合候補として選択されるものとし、該選択されたN/4枚のなかから、決定キー情報を用いてN/8枚目を照合候補として決定されるものとした場合、当該決定時間は、MATLAB7.4.0上で3[msec]を要し、決定された照合候補と、認証対象の静脈情報とを照合して登録者の有無を判定するまでの時間は、MATLAB7.4.0上で10[msec]を要した。
【0116】
したがって、上述の認証処理手順による理論的な平均時間は、0.01・N[msec]+3N/8[msec]+10[msec]、すなわち0.3651N+10[msec]になる。一方、選択キー情報を用いずに、単に決定キー情報(サムネイル画像)のみによって照合候補を決定する手法の場合、理論的な平均時間は1.5 N+10[msec]になる。
【0117】
よって、認証速度は、選択キー情報を用いて照合候補を簡易に絞り込んだ後に、決定キー情報を用いてさらに絞り込むほうが、当該決定キー情報だけを用いて照合候補を絞り込む場合に比して、およそ4倍速くなる。
【0118】
以上の構成によれば、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭形状を、照合候補の決定要素としたことにより、認証対象の静脈情報の抽出途中において照合候補を決定することが可能となり、また擬似的な要素を含むものを決定要素とする場合に比して、照合候補のなかに、登録者の登録画像が含まれていない等の可能性を低減することができ、かくして高速に認証し得る認証装置1を実現できる。
【0119】
(2)第2の実施の形態
(2−1)携帯電話機の外観構成
図13において、第2の実施の形態による携帯電話機100の外観構成を示す。この携帯電話機100は、略直方体状の第1の筺体(以下、これを第1筐体と呼ぶ)102及び第2の筺体(以下、これを第2筺体と呼ぶ)103と、ヒンジ部104とによって構成される。
【0120】
第1筺体102における一面P1の中央部には、LCD(Liquid Crystal Display)111が設けられ、該一面P1のうち、凹状端部の逆側となる端部には、スピーカ112が設けられる。
【0121】
一方、第2筺体103における一面P2の中央部には、電源キー、発呼キー、メニューキー及び文字入力キー等の操作部113が設けられる。またこの一面P2のうち、第1筐体102における凹状端部に対応する凸状端部には撮像口114が形成され、該凸状端部の逆側となる端部には、マイクロフォン115が設けられる。
【0122】
他方、ヒンジ部104は、第1筺体102の凹状端部と、第2筺体103の凸状端部とを貫通する回転軸を有し、この回転軸を介して、図14に示すように、第1の筺体102又は第2の筺体103を、当該面P1、P2が対向した状態(以下、これを閉状態と呼ぶ)と、当該面P1、P2が所定の角度をなす状態(以下、これを開状態と呼ぶ)との間で移動可能に支持する。
【0123】
この携帯電話機100は、開状態のときのみならず閉状態のときにも、第2筺体103の凸状端部が露出される構造となっているので、閉状態又は開状態のいずれの場合であっても、撮像口114を介して被写体を撮像し得るようになされている。
【0124】
かかる構成に加えてこの携帯電話機100は、第1筐体102の所定位置に配される指内方における血管の撮像光を撮像口114に入射させるための構造を有している。具体的には、LCD111の上端とスピーカ112との間に近赤外光を照射する光源部121が設けられ、該LCD111における上側の脇に薄厚板状の1対の台座122(122a、122b)が設けられる。
【0125】
したがって、図15に示すように、LCD111の上端に沿って、該LCD111の上側(スピーカ112側)ではなく表示面側に指を配すべきことを、1対の台座122の設置位置や、該台座122と光源部121との配置関係によって構造的に把握させて案内し得るようになされている。またこの携帯電話機100は、1対の台座122によって、LCD111の表示面に対して指の汗等の汚れが付着することを回避し得るようになされている。
【0126】
例えば図16に示すように、開状態における第1筐体102の所定位置に指が配されている場合、光源部121から発射される近赤外光は、該指内方の静脈層よりも深層部分となる後方に照射され、指内方を反射又は散乱して指から出射する。
【0127】
また、指から出射する近赤外光のうち、第1筐体102の一面P1と平行又は略平行となる近赤外光は撮像口114に入射し、第2筐体103内部に配される光学系によりCCD(Charge Coupled Device)に導光される。この近赤外光は、非静脈部分(静脈層を経由していない部分)では明るい状態となる一方、静脈部分(静脈層を経由した部分)ではヘモグロビンの吸光特性により暗い状態が保たれることとなる。
【0128】
(2−2)携帯電話機の回路構成
次に、この携帯電話機100の回路構成を説明する。この携帯電話機100は、図13との対応部分に同一符号を付した図17に示すように、制御部130に対して、LCD111、スピーカ112、マイクロフォン114、CCD131、記憶部132及び通信処理部133をそれぞれバス134を介して接続することにより構成される。
【0129】
制御部130は、この携帯電話機100全体の制御を司るCPUと、起動プログラムなどが格納されるROMと、当該CPUのワークメモリとしてのRAMとを含むコンピュータとして構成される。
【0130】
この制御部130には、血管登録モードの実行命令、認証モードの実行命令、電子メールを作成及び送信するモードの実行命令、通話モードの実行命令などの各種命令が、操作部113から入力される。
【0131】
制御部130は、入力される命令に基づいて実行すべきモードを決定し、この決定結果に対応するプログラムに基づいて、LCD111、スピーカ112、マイクロフォン114、CCD131、記憶部132及び通信処理部133を適宜制御して各種処理を実行するようになされている。
【0132】
LCD111は、制御部130から与えられる表示データに基づく内容を、文字や図形により表示画面に表示するようになされている。スピーカ112は、制御部130から与えられる音声データに基づく音声を出力するようになされている。マイクロフォン114は、外部から集音した音声を所定周期ごとに音声データとして生成し、制御部130に出力するようになされている。
【0133】
CCD131は、撮像口114(図13)から入射される撮像光を所定周期ごとに光電変換し、該光電変換結果として得られる画像データを制御部130に送出するようになされている。
【0134】
記憶部132は、静脈情報や、プログラムあるいは設定情報等の各種データを保持するためのものであり、制御部130により指定されるデータを記憶し、又は読み出すようになされている。
【0135】
通信処理部133は、マイクロフォン114又は制御部130から供給される各種データに対して所定の変調処理を施した後に増幅し、この結果得られる信号を、この携帯電話機100に設けられたアンテナANTを介してアップリンク波信号として基地局(図示せず)に送信する。
【0136】
一方、通信処理部133は、基地局(図示せず)から送信されたダウンリンク波信号をアンテナANTを介して受信し、増幅した後に所定の復調処理を施し、この結果得られるデータをスピーカ112又は制御部130に送出するようになされている。
【0137】
(2−2−1)静脈登録モード
次に、静脈登録モードについて説明する。制御部130は、実行すべきモードとして静脈登録モードを決定した場合、第1の筐体102及び第2の筐体103を開状態にすべきこと(図16)及びLCD111の上端に指背が沿った状態で表示面上に指をおくべきこと(図15)を、LCD111及びスピーカ112の少なくとも一方を介して通知する。
【0138】
この後、制御部130は、図2との対応部分に同一符号を付した図18に示すように、撮像制御部21、静脈情報抽出部22、キー情報抽出部23及び登録部140として機能する。ここでは、第1の実施の形態における登録部24の構成と異なる登録部140についてのみ説明する。
【0139】
登録部140は、静脈情報抽出部22によって抽出された静脈情報の情報量や静脈パターンの形状等に基づいて、該静脈情報が登録対象として適すものであるか否かを判定する。また登録部140は、登録対象として適すものである場合には、一の登録者が登録すべき数として2以上に設定される登録数に達したか否かを判定する。
【0140】
ここで、登録部140は、登録対象として適さない静脈情報を得た場合、又は、登録対象として適す静脈情報が登録数に達していない場合、その旨をLCD111及びスピーカ112の少なくとも一方を介して通知する。
【0141】
これに対して、登録部140は、登録対象として適す静脈情報が登録数に達したときには、各静脈情報と、これら静脈情報の抽出過程の画像からキー情報抽出部23によって抽出されたキー情報とを組(以下、これを登録セットとも呼ぶ)として記憶部132に記憶する。
【0142】
このように登録部140は、同一指における複数の静脈情報と、それらキー情報とを登録する点で、ある指の唯一の静脈情報と、そのキー情報とを登録する第1の実施の形態の登録部24とは相違する。
【0143】
(2−2−2)認証モード
次に、認証モードについて説明する。制御部130は、実行すべきモードとして認証モードを決定した場合、第1の筐体102及び第2の筐体103を開状態にすべきこと(図16)及びLCD111の上端に指背が沿った状態で表示面上に指をおくべきこと(図15)を、LCD111及びスピーカ112の少なくとも一方を介して通知する。
【0144】
認証部150には、記憶部132に記憶される登録セットが1つとなる場合、該登録セットにおける静脈情報が、読出部31から与えられる。この場合、認証部150は、読出部31によって読み出された登録対象の静脈情報と、静脈情報抽出部22によって抽出された認証対象の静脈情報とを用いて、登録者であるか否か(認証成功又は認証失敗であるか)を判定する。
【0145】
一方、認証部150には、記憶部132に記憶される登録セットが複数となる場合、各登録セットにおける静脈情報に対応する登録対象のキー情報が、読出部31から与えられる。
【0146】
この場合、認証部150は、読出部31によって読み出された登録対象のキー情報と、キー情報抽出部23によって抽出された認証対象のキー情報とに基づいて、記憶部132に登録された複数の登録セットのなかから、静脈情報抽出部22によって抽出される認証対象の静脈情報と照合すべき候補となる登録セットを決定する。
【0147】
また認証部150は、照合候補として決定した登録セットにおける静脈情報を読出部31に読み出させ、当該読み出された登録対象の静脈情報と、静脈情報抽出部22によって抽出された認証対象の静脈情報とを用いて、登録者であるか否か(認証成功又は認証失敗であるか)を判定する。
【0148】
このように認証部150は、登録セットとされる静脈情報を単位として照合候補を決定する点で、個々の静脈情報を単位として照合候補を決定する第1の実施の形態の認証部32とは相違する。また認証部150では、照合候補を決定手法が第1の実施の形態の認証部32とは相違する。この認証部150の具体的処理内容については次の項目で説明する。
【0149】
(2−3)認証部の構成
次に、認証部150の構成を説明する。この認証部150は、図10との対応部分に同一符号を付した図20に示すように、候補選択部160、候補決定部72及び判定部73によって構成される。ここでは、第1の実施の形態における候補決定部71の構成と異なる候補選択部160についてのみ説明する。
【0150】
候補選択部160は、読出部31によって記憶部132から読み出された登録対象の選択キー情報(指輪郭の位置(座標値)、輝度階級ごとの画素数、静脈画素数)と、キー情報抽出部23によって抽出された認証対象の選択キー情報(指輪郭の座標値、輝度階級ごとの画素数、静脈画素数)との対応するもの同士を比較する。
【0151】
指輪郭の座標値を示す選択キー情報を比較する場合、この候補選択部160は、指の配置場所に配すべき指の長方向への配置シフトを考慮する点で、該配置シフトを考慮していなかった第1の実施の形態における候補選択部71とは相違する。
【0152】
すなわち、候補選択部71では、登録対象の選択キー情報(指輪郭のx座標値)と、認証対象の選択キー情報(指輪郭のx座標値)との差の絶対値が行(又は列)単位で求められた。このため、LCD111の上端に沿って配された指が、登録時と認証時とでその指の長方向側にずれが生じていた場合、同一の登録者における同一指であったとしても、例えば図20に示すように、指輪郭の形状が相違することになる。
【0153】
したがって、この場合、指輪郭相違値が、同一人における同一指であるにもかかわらず高くなり、この結果、照合候補として選択されるべき本人の静脈情報が選択されないといったことが起こり得る。
【0154】
そこでこの候補選択部160は、登録対象及び認証対象の選択キー情報(指輪郭のx座標値)のいずれか一方をシフト対象とし、例えば図22に示すように、非シフト対象の選択キー情報(指輪郭のx座標値)NSに対して、シフト対象とした選択キー情報(指輪郭のx座標値)SKを、開始位置(図22(A))から指の長方向に対応する方向へ終了位置(図22(B))まで所定の移動幅で移動させる。
【0155】
また候補選択部160は、開始位置及び終了位置を含む各シフト位置において、対応する指輪郭部分(図22では矢印で示す範囲)での絶対値差の割合の平均を求め、最小をとるものを指輪郭相違値とする。ちなみに、図22では、図22(A)の場合が、最小の指輪郭相違値をとることになる。
【0156】
具体的にこの候補選択部160は、指輪郭の長さを「l」とし、シフト量の最大値を「lSmax」とし、当該指輪郭を構成するインデックス(位置)を「p」とし、そのインデックス(位置)での値を「S」とすると、次式
【0157】
【数3】

【0158】
によって指輪郭相違値を得る。ちなみに、(3)式における「r」は登録対象を、「i」は認証対象をそれぞれ意味する。
【0159】
このようにして候補選択部160は、指の配置場所に配すべき指の長方向への配置シフトを考慮するようになされている。
【0160】
一方、輝度階級ごとの画素数を示す選択キー情報を比較する場合、および、静脈画素数を示す選択キー情報を比較する場合、候補選択部160は、第1の実施の形態における候補選択部71と同一手法により指領域相違値、血管相違値を得る。
【0161】
また、候補選択部160は、選択キー情報同士の比較結果として、指輪郭相違値、指領域相違値及び血管相違値を得た場合、第1の実施の形態と同様に、(1)式を用いて指輪郭相違値、指領域相違値及び血管相違値における数量の幅を一定とする(正規化する)。
【0162】
その後、候補選択部160は、正規化した指輪郭相違値、指領域相違値及び血管相違値を用いて、登録セット単位で照合候補と評価すべき評価値を生成する。ここで、この候補選択部160は、登録セット単位で評価値を生成する点で、登録される個々の静脈情報単位で評価値を生成していた第1の実施の形態における候補選択部71とは相違する。
【0163】
すなわち、登録セットにおける複数の静脈情報は、それぞれ相違するものの同一人のものであるため、大きく相違するものではない。このため、登録セットにおける複数の静脈情報に対して求められた評価値は、認証対象者がその登録者であれば、大きく相違することはなく、かつ、いずれも小さい値をとることになる。
【0164】
しかしながら、例えば図23に示すように、登録セットにおける複数の静脈情報のうち、ある1つの静脈情報に対して求められた評価値Eだけが小さい場合、該登録セットとしては、認証対象者がその登録者本人である可能性は低い。にもかかわらず、第1の実施の形態における候補選択部71では、その評価値Eが高い静脈情報が、登録者本人の静脈情報よりも先に照合候補とされ、かえって認証速度が遅くなるといったことが起こり得る。
【0165】
そこでこの候補選択部160は、例えば図24に示すように、登録セットごとに、該登録セットにおける複数の静脈情報それぞれに対して(2)式を用いて得られる評価値Eの逆数の総和を求め、当該総和を登録セットに対する評価値とするようになされている。ここで、静脈情報に対する評価値Eは小さいほど本人である可能性が高く、この登録セットに対する評価値は、該評価値Eの逆数の総和であることから、大きいほど本人である可能性が高いことを意味する。
【0166】
このように候補選択部160は、登録セットにおける各静脈情報を単位とする評価値を得ることで、該登録セットの一部の静脈情報に対する評価値Eだけが高いことに起因する照合候補の選択精度の低下を未然に防止することができる。
【0167】
ところで、登録セットに対する評価値の算出手法として、(2)式を用いて得られる値の平均、あるいは、該値の和等を採用した場合、登録セットに対する評価値としては大きくなるため、本人よりも先に他人の登録セットが照合候補とされ、かえって認証速度が遅くなるといったことが起こり得る。しかしながら候補選択部160は、(2)式を用いて得られる値の「逆数の」総和としているので、上述のような事態も未然に防止することができる。
【0168】
なお、候補選択部160は、各登録セットの評価値を求めた場合には、該評価値に対して設定された閾値以上となる評価値をもつ登録セットの選択キー情報と、該選択キー情報に対応付けたられた登録対象の静脈情報を、認証対象の静脈情報との照合候補として選択し、第1の実施の形態における候補選択部71と同様にして順位付けするようになされている。
【0169】
(2−4)動作及び効果
以上の構成において、この携帯電話機100は、指輪郭の形状を示す登録対象の選択キー情報(指輪郭のx座標値)と、認証対象の選択キー情報(指輪郭のx座標値)とから、照合候補の選択指標とされる指輪郭相違値を求める場合、指の配置場所に配すべき指の長方向への配置シフトを考慮して求めるようにした((3)式、図22)。
【0170】
したがって、携帯電話機100は、指の配置場所に配すべき指の長方向への配置シフトを考慮しない場合に比して、照合候補の選択指標の1つとされる指輪郭相違値を正確に求めることができる。このため、この携帯電話機100では、同一人における同一指であるにもかかわらず、照合候補として選択されるべき本人の静脈情報が選択されないといったことを未然に低減でき、この結果、より高速に本人判定を行うことが可能となる。
【0171】
これに加えて、この携帯電話機100における指の配置場所では、配すべき指の幅方向への配置シフトを生じさせない対策が構造的に講じられる(図15)。すなわち、光源部121の照射対象となる部分に設けられ、指の長方向の表面をあわせて指を配すべきことを示すLCD111の上端線及び台座122を挟んで、該光源部121と対向側にCCDが設けられている。
【0172】
携帯電話機100は、このCCDから出力される画像における選択キー情報(指輪郭のx座標値)を用いて、指輪郭相違値を、指の長方向への配置シフトを考慮して求めるので、指の幅方向への配置シフトを考慮した演算を省くことができ、この結果、より高速に本人判定を行うことが可能となる。
【0173】
またこの携帯電話機100は、登録モードでは同一指における複数の静脈情報と、それらキー情報とを登録セットとして登録し、認証モードでは認証対象の静脈情報と照合すべき登録セットの候補を選択する。
【0174】
具体的には、登録セットごとに、該登録セットにおける複数の静脈情報それぞれに対して(2)式を用いて得られる評価値Eの逆数の総和を求める(図24)。登録セットを単位としながらも、該登録セットに含まれる個々の静脈情報に対する評価値Eの影響を、該評価値Eの平均あるいは和をとる場合に比して、正当に重み付けすることができる。
【0175】
したがって、この携帯電話機100では、同一人における同一指であるにもかかわらず、照合候補として選択されるべき本人の静脈情報が選択されないといったことを未然に低減でき、この結果、より高速に本人判定を行うことが可能となる。
【0176】
以上の構成によれば、照合候補の選択指標の1つとされる指輪郭相違値を正確に求めるようにするとともに、該選択指標から求めるべき評価値を登録セット単位としたことにより、認証装置1に比してより一段と高速に認証し得る携帯電話機100を実現できる。
【0177】
(3)他の実施の形態
上述の実施の形態においては、指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出部として、図4に示した各部41〜48を有する静脈情報抽出部22を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら各部41〜48のうちの一部を省略する若しくは入れ替える、あるいは、新たな処理部を加える等、必要に応じて構成態様を変更することができる。また、各部41〜48の処理手法(例えばカーネルサイズ等)についても同様である。
【0178】
また上述の実施の形態においては、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域の度数分布を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報とを抽出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、指の輪郭の位置を示す情報を含めていれば、その他に関しては省略する若しくは入れ替える、あるいは、新たに加えることができる。
【0179】
これは、静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域の度数分布を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報とを個々に用いた場合、指の輪郭の位置を示す情報が最も精度が高かったからである。
【0180】
さらに上述の実施の形態においては、選択キー情報を用いて照合候補を選択し、該選択された照合候補のなかから、決定キー情報を用いて照合候補を決定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、選択キー情報を用いて照合候補を決定するようにしてもよい。このようにした場合であっても、当該選択キー情報を用いて照合候補を選択しているため、従来の認証手法に比して認証速度の向上を図ることができる。
【0181】
さらに上述の実施の形態においては、指の輪郭の位置を示す情報として、所定領域での基準からの距離を示す情報(図7)を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、ベジェ等を用いて制御点を抽出するようにしてもよく、これ以外の抽出手法を用いてもよい。
【0182】
さらに上述の実施の形態においては、指領域の度数分布として、輝度ヒストグラムを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、3原色の全部又は一部にヒストグラムを抽出するようにしてもよく、これ以外の抽出手法を用いてもよい。
【0183】
さらに上述の実施の形態においては、撮像機能(撮像部12)、登録機能(図2)、認証機能(図3)を有する認証装置1を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該用途に応じて、機能ごとに又は各機能の一部を含む単体の装置に分けた態様で適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明は、バイオメトリクス認証分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本実施の形態による認証装置の構成を示すブロック図である。
【図2】静脈登録モードにおける制御部の機能的構成(1)を示すブロック図である。
【図3】認証モードにおける制御部の機能的構成(1)を示すブロック図である。
【図4】静脈情報抽出部の構成を示すブロック図である。
【図5】静脈抽出過程での輝度の状態推移の説明に供する略線図である。
【図6】キー情報抽出部の構成を示すブロック図である。
【図7】指輪郭の形状の抽出の説明に供する略線図である。
【図8】輝度ヒストグラムの抽出の説明に供する略線図である。
【図9】静脈の細線化前後の画像を示す略線図である。
【図10】認証部の構成(1)を示すブロック図である。
【図11】認証処理手順を示すフローチャートである。
【図12】実験結果を示す略線図である。
【図13】携帯電話機の外観構成を示す略線図である。
【図14】携帯電話機の移動範囲を示す略線図である。
【図15】光源部及び台座による、LCD上端を基準とした指の配置案内の説明に供する略線図である。
【図16】血管の撮像状態の説明に供する略線図である。
【図17】携帯電話機の回路構成を示すブロック図である。
【図18】静脈登録モードにおける制御部の機能的構成(2)を示すブロック図である。
【図19】認証モードにおける制御部の機能的構成(2)を示すブロック図である。
【図20】認証部の構成(2)を示すブロック図である。
【図21】指の長方向への配置シフトによって生じる指輪郭形状の差の説明に供する略線図である。
【図22】指の長方向への配置シフトを考慮した指輪郭相違値の算出の説明に供する略線図である。
【図23】静脈情報に対する評価値をもとに照合候補を選択する際の弊害の説明に供する略線図である。
【図24】登録セットに対する評価値の算出の説明に供する略線図である。
【符号の説明】
【0186】
1……認証装置、10、130……制御部、11……操作部、12……撮像部、13、132……記憶部、14……インターフェース、15……表示部、16……音声出力部、22……静脈情報抽出部、23……キー情報抽出、24、140……登録部、31……読出部、32、150……認証部、41……画像平滑化部、42……輪郭強調部、43……マスク画像生成部、44……切出部、45……静脈平滑化部、46……2値化部、47……太線化部、48……細線化部、51……選択キー情報抽出部、52……決定キー情報抽出部、61……輪郭形状抽出部、62……度数分布抽出部、63……血管量抽出部、71、160……候補選択部、72……候補決定部、73……判定部、100……携帯電話機、111……LCD、121……光源部、122……台座。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出部と、
上記静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を抽出する抽出部と、
上記情報と、登録対象の静脈情報に対応付けられた情報との類似度に基づいて、上記静脈情報との照合候補を決定する決定部と
を有する認証装置。
【請求項2】
上記抽出部は、
上記中間段階で生成される画像の所定領域から、上記指の指枠を構成する画素のうち、所定間隔ごとの画素の位置を示す情報を抽出する、請求項1に記載の認証装置。
【請求項3】
上記所定間隔ごとの画素の位置について、上記所定領域での基準からの距離を示す情報を抽出する、請求項2に記載の認証装置。
【請求項4】
上記決定部は、
上記所定領域での基準からの距離と、登録対象の静脈情報に対応付けられた所定領域での基準からの距離との差の程度を用いて、上記静脈情報との照合候補を決定する、請求項3に記載の認証装置。
【請求項5】
上記所定領域と、登録対象の静脈情報に対応付けられた所定領域との一方をシフト対象として、シフト対象とした所定領域を指の長方向に対応する方向へ段階ごとにシフトさせたときの上記差の程度を用いて、上記静脈情報との照合候補を決定する、請求項3又は請求項4に記載の認証装置。
【請求項6】
上記静脈情報抽出部は、
近赤外光の照射対象とされ、指の長方向の表面をあわせて指を配すべきことを示す提示部を挟んで、該近赤外光の光源と対向に配される撮像部から出力される画像から、上記静脈情報を抽出する、請求項5に記載の認証装置。
【請求項7】
上記中間段階で生成される画像は、
上記静脈情報抽出部から、上記指部位の静脈を含む画像に対するノイズ成分の除去段階で生成される画像である、請求項2に記載の認証装置。
【請求項8】
上記抽出部は、
上記静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域の度数分布を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報との少なくとも2以上を抽出する、請求項1に記載の認証装置。
【請求項9】
上記抽出部は、
上記静脈情報抽出部から、上記指部位の静脈を含む画像に対するノイズ成分の除去段階で生成される画像と、該画像を2値で示す2値画像とを取得し、上記除去段階で生成される画像から指の輪郭の位置を示す情報を抽出するとともに、上記2値画像から指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報を抽出する、請求項1に記載の認証装置。
【請求項10】
上記抽出部は、
上記静脈情報における抽出過程の中間段階で生成される画像の所定領域から、上記指の指枠を構成する画素のうち、所定間隔ごとの画素の位置について、上記所定領域での基準からの距離を示す情報と、上記指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報とを抽出し、
上記決定部は、
上記所定領域での基準からの距離と、登録対象の静脈情報に対応付けられた所定領域での基準からの距離との差の絶対値における基準との割合、及び、上記静脈量と、登録対象の静脈情報に対応付けられた静脈量との差における基準との割合の和を用いて、上記静脈情報との照合候補を決定する、請求項1に記載の認証装置。
【請求項11】
上記和を、組とされる登録対象の静脈情報ごとに求め、各組における上記和の逆数の総和を用いて、上記静脈情報との照合候補を組単位で決定する、請求項10に記載の認証装置。
【請求項12】
上記静脈情報抽出部から、静脈幅が一定とされる静脈部分と、背景部分とを2値で示す画像を取得し、該画像の圧縮画像を生成する生成部をさらに具え、
上記決定部は、
上記情報と、登録対象の静脈情報に対応付けられた情報との類似度に基づいて、上記静脈情報との照合候補を選択する候補選択部と、
上記圧縮画像と、上記照合候補として選択された登録対象の静脈情報に対応付けられた圧縮画像との類似度に基づいて、上記静脈情報との照合候補を決定する候補決定部とを含む、請求項1に記載の認証装置。
【請求項13】
指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出ステップと、
上記静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を抽出する抽出ステップと、
上記情報と、登録対象の静脈情報に対応付けられた情報との類似度に基づいて、上記静脈情報との照合候補を決定する決定ステップと
を有する認証方法。
【請求項14】
指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出部と、
上記静脈情報における抽出過程の中間段階での指の状態を示す情報を、照合候補のキー情報として抽出するキー情報抽出部と、
上記静脈情報と上記キー情報とを対応付けて記憶部に登録する登録部と
を有する登録装置。
【請求項15】
上記キー情報抽出部は、
上記中間段階で生成される画像の所定領域から、上記指の指枠を構成する画素のうち、所定間隔ごとの画素の位置を示す情報を抽出する、請求項14に記載の登録装置。
【請求項16】
上記キー情報抽出部は、
上記所定間隔ごとの画素の位置について、上記所定領域での基準からの距離を示す情報を抽出する、請求項15に記載の登録装置。
【請求項17】
上記中間段階で生成される画像は、
上記静脈情報抽出部から、上記指部位の静脈を含む画像に対するノイズ成分の除去段階で生成される画像である、請求項15に記載の登録装置。
【請求項18】
上記キー情報抽出部は、
上記静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域の度数分布を示す情報と、該指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報との少なくとも2以上を抽出する、請求項14に記載の登録装置。
【請求項19】
上記キー情報抽出部は、
上記静脈情報抽出部から、上記指部位の静脈を含む画像に対するノイズ成分の除去段階で生成される画像と、該画像を2値で示す2値画像とを取得し、上記除去段階で生成される画像から指の輪郭の位置を示す情報を抽出するとともに、上記2値画像から指の輪郭に囲まれる領域内の静脈量を示す情報を抽出する、請求項14に記載の登録装置。
【請求項20】
上記キー情報抽出部は、
上記静脈情報における抽出過程の中間段階での指の輪郭の位置を示す情報を、照合候補を選択するためのキー情報として抽出する選択キー情報抽出部と、
上記静脈情報抽出部から、静脈幅が一定とされる静脈部分と、背景部分とを2値で示す画像を取得し、該画像の圧縮画像を、選択された照合候補から照合候補を決定するためのキー情報として抽出する決定キー情報抽出部とを含む、請求項14に記載の登録装置。
【請求項21】
指部位の静脈を含む画像から、静脈を示す静脈情報を抽出する静脈情報抽出ステップと、
上記静脈情報における抽出過程の中間段階での指の状態を示す情報を、照合候補のキー情報として抽出するキー情報抽出ステップと、
上記静脈情報と上記キー情報とを対応付けて記憶部に登録する登録ステップと
を有する登録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−187520(P2009−187520A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126207(P2008−126207)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】