説明

認証装置

【課題】
現代社会において個人情報を含む情報の取り扱いが増え、幅広い分野で個人を同定する個人認証手段が必要不可欠となっている。しかしこのような個人認証技術の利用と共に、機器に対するセキュリティの向上のために、機器への認証動作、再認証動作といった処理時間の増加が問題となっている。
【解決手段】
ユーザ認証処理を生体情報によって認証する入出力装置と、ユーザの生体情報を用いて認証処理を行う認証処理部とを有し、前記入出力装置によるユーザ認証操作の開始時にバックグラウンドで機器へのユーザ所望の処理準備を開始始する事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は認証装置に関する
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2008-40644号公報(特許文献1)がある。該公報には、「1回のログイン操作でログイン対象とする全ての機器に対し同時にログインできるログイン管理方法及びサーバを提供する」という課題に対して、「複数の情報処理装置が接続され、第1の情報処理装置からのログイン要求を受けて指定された第2の情報処理装置へのログイン処理を行うサーバにおけるログイン管理方法」という解決手段を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-40644号公報(発明の開示参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現代社会において個人情報を含む情報の取り扱いが増え、幅広い分野で個人を特定する個人認証手段が必要不可欠となっている。パスワード認証は現在最も広く普及している個人認証手段であるが、他人に類推されるといった脆弱性や記憶違いによる認証失敗が指摘されており、高い価値を扱う用途においてはより信頼性の高い個人認証技術が必要とされる。そこで新たな認証技術として、生体認証が広く利用され始めている。
【0005】
この生体認証技術は誰もが持っている「普遍性」、本人のみ所有する情報を用いる「唯一性」、歳を取っても変化しない「永続性」を有する生体情報を用いることで、高いセキュリティ強度と利便性を兼ね備えている。しかし、さまざまな機器のセキュリティ向上を目的として、個人認証技術の利用が拡大する事で、機器への認証動作、再認証動作の度に行われる認証処理時間の増加が問題となる。
【0006】
その為に前記した特開2008-40644号公報(特許文献1)では、複数の機器に対して同時にログインする際のログイン時間を短縮する事を特徴としているが、認証を行う際のユーザ認証からユーザ所望の処理が実行されるまでに必要とする時間に関しては記載されていない。
【0007】
そこでこのような状況を鑑み、本発明では使い勝手の良い認証装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では例えば以下の実施態様により前記課題を解決できるが、この実施態様に限られることはない。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、ユーザの認証処理を生体情報によって認証する入出力装置と、ユーザの生体情報を用いて認証処理を行う認証処理部と、を有する認証装置であって、前記入出力装置に対するユーザ認証操作によって機器へのユーザ認証動作の開始を検出し、認証動作開始の検出によって機器のバックグラウンドでユーザ所望の処理を開始することで、ユーザ認証処理が完了する前にユーザ所望の処理準備が完了し、ユーザ認証完了直後にユーザ所望の処理が実行可能となる認証装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生体認証装置を有する機器において、高速にユーザ所望の処理が実行可能な機器を提供することが可能となる。例えば、ユーザが生体認証による認証操作を開始し始めた時点で、機器のバックグラウンドでユーザ所望の処理、例えば映像データのストリーミングなどのダウンロード処理を開始する事によって、ユーザによる認証作業が完了した時点でダウンロード処理が終了している事が可能となり、高速なユーザ所望の処理を実現した認証装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】認証装置の処理例を示すフローチャートである。
【図2】第一の実施例を示す図である。
【図3】第二の実施例を示す図である。
【図4】第三の実施例を示す図である。
【図5】第四の実施例を示す図である。
【図6】第二の実施例を示すフローチャートである。
【図7】第三の実施例を示すフローチャートである。
【図8】第四の実施例を示すフローチャートである。
【図9】第五の実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は認証装置の一例として、認証の流れを示すフローチャートである。
101は認証動作開始処理、102はバックグラウンドでのユーザ所望の処理準備開始処理、103はユーザ所望の処理準備完了処理、104は認証開始処理、105は認証完了処理、106は認証終了かつ処理準備完了の判定処理、107はユーザ所望の処理開始処理、108はバックグラウンドでのユーザ所望の処理開始を通知する通信処理、109はユーザ所望の処理準備完了を通知する通信処理である。
【0014】
はじめに図1で示す認証装置の流れを説明する。認証動作開始処理101は、ユーザが機器への認証動作を開始した状態を示している。この処理において認証動作とは、例えば機器に付属している指静脈認証装置等にユーザが指をセットした状態を示している。
【0015】
続いて、通信108は認証処理フローと並列して実行されるユーザ所望の処理フローへの処理開始を通知する処理である。ユーザ所望の処理開始処理102は、認証処理が完了していない状態でユーザが指定した所望の処理を開始している状態を示している。この処理は、機器動作のバックグラウンドで行っても良く、また一般には認証処理が完了してから実行される処理よりも先行して行われる事が特徴である。
【0016】
ユーザ所望の処理準備完了処理103は、バックグラウンドでの処理準備が完了した状態を示している。
【0017】
認証開始処理104は、ユーザの認証処理を開始した状態を示している。認証完了処理105は、ユーザの認証処理が完了した事を示している。認証終了かつ処理準備完了の判定処理106は、処理準備完了かつ認証完了している状態を示している。また上記判定処理106では、処理準備処理と、認証完了処理のいずれかが完了していない状態では本判定処理を満たさない為、再び判定処理106を実行する。判定処理106が成り立てば、ユーザ所望の処理開始処理107を実行する。ここでのユーザ所望の処理開始処理107は処理準備完了処理103が完了していることから処理実行直後にユーザ所望の処理開始が可能となる。
【0018】
本発明の第一の実施例を図1及び図2を用いて説明する。パーソナルコンピュータ201(以下、PCとする)においてユーザは認証機器202によって認証処理を実行する。この認証処理に指静脈認証を用いた場合、ユーザは指を認証機器202にセットする状態を示している。またこれば図1における認証動作開始101に相当し、認証処理はまだ開始されてはいない状態とする。
【0019】
次に図1における認証動作開始101に続いて図2のPC201は、通信108によってバックグラウンドでのユーザ所望の処理開始102を開始する。但し、この時点でPC201はユーザ認証処理を完了していないため、処理102はバックグランドで実行されるなど、ユーザには処理を実行していることは通知する必要はない。
【0020】
また認証開始104は上記処理102と平行して開始、実行する。ここでユーザ所望の処理準備完了103は、ユーザ認証処理完了105より先に完了したとする場合、認証完了かつ処理準備完了の判定処理106によって、認証処理と処理準備完了の双方が完了するまでは状態遷移は発生せず判定処理106を繰り返す。また処理準備完了よりも認証処理が先に完了の状態に達した場合も同様である。
【0021】
判定処理106において処理準備完了と認証の双方が完了の状態に達した際、ユーザ所望の処理開始107が開始されるが、本発明により認証処理に先行してユーザ所望の処理準備を行っていることで、ユーザ所望の処理の開始時間を認証処理にかかる時間だけ高速化する事が可能となりユーザの利便性を高めることが出来る。
【0022】
ユーザ所望の処理の例としては、例えばユーザ認証動作開始時点で映像データのストリーミングなどのダウンロード処理を開始する事によって、ユーザによる認証作業が完了した時点でダウンロード処理が終了している事が可能となり高速なユーザ所望の処理を実現した認証装置を提供することができる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の第二の実施例を、図3及び図6を用いて説明する。第一の実施例と同様にPC301に搭載されている場合、図3のように、人感センサ302によってユーザ304がPCを使用するために接近してきた事を検知する。(図6-601)。この検知情報に基づいてPCはバックグラウンドでのユーザ所望の処理開始(図6-602)を開始する。この処理は第一の実施例同様にPCのバックグラウンドで実行されるためユーザには実行状態は通知されない。そしてユーザがPCへの認証を行う為に認証機器303を用いて認証処理を開始する(図6-604)。次に認証が完了した時点(図6-605)ではユーザ所望の処理準備完了処理は完了(図6-603)しているため判定処理(図6-606)により、認証完了直後からユーザ所望の処理開始(図6-607)が可能となる。以上により第一の実施例同様にユーザの利便性を高めることが出来る。
【0024】
ユーザ所望の処理としては例えば、PCへのログインなどがある。この場合、直前にログインしていたユーザ情報に基づいてバックグラウンドでログインを実行しておくことで、直前にPCを使用していたユーザが再ログインのために認証処理を行った場合には、認証処理が完了した時点で、ログイン処理は完了しているので高速にログインが可能となる。
【実施例3】
【0025】
次に、本発明の第三の実施例を、図4及び図7を用いて説明する。第一の実施例と同様、PC401に認証機器403が接続されている場合、図4のように、ユーザ404が使用していたPCを離れ、再度使用するために戻ってきた事を人感センサ402によって検知(図7-701)することで、バックグラウンドでのユーザ所望の処理開始(図7-702)を開始する事が可能である。この際、検知範囲内405をユーザが移動していた場合、ユーザを追跡することで再度同一ユーザがPCを利用する際にユーザの特定も可能となり、ユーザを特定した状態でユーザ所望の処理開始(図7-707)も可能であるため、ユーザにとって利便性の高いユーザ所望の処理実行が可能である。
【0026】
また人感センサ等でユーザを追跡することから、ユーザ認証の認証レベルを低くする事で二回目以降のユーザ認証が完了するまでの時間を短縮することで可能であり、ユーザ認証完了と供に実行されるユーザ所望の処理実行までの期間も短縮が可能である。
【0027】
ユーザ所望の処理の例としては、実施例二と同様である。
【実施例4】
【0028】
次に、本発明の第四の実施例を、図5及び図8を用いて説明する。PC501を使用するために認証機器502を接続した事により認証動作(図8-801)を開始する。以後、第二に実施例と同様に、検知情報に基づいてPCは所望の処理準備開始処理(図8-802)を開始する。この処理準備開始処理はユーザには実行状態は通知する必要はなく、第一の実施例同様にPCのバックグラウンドで実行される。次にユーザがPCの認証機器502を用いて認証処理を開始し(図8-804)、認証が完了した時点(図8-805)で処理準備完了処理が完了している場合(図8-803)には、認証完了と処理準備完了の判定処理(図8-806)は条件を満たすので、判定処理認証完了直後からユーザ所望の処理開始(図8-807)が可能となる。
【0029】
例えばユーザ所望の処理としては、実施例1、3と同様である。
【実施例5】
【0030】
次に、本発明の第五の実施例を、図2と図9を用いて説明する。以下、認証動作開始901による認証動作開始までは実施例一と同様である。パーソナルコンピュータ201(以下、PCとする)においてユーザは認証機器202によって認証処理を実行する。この認証処理に指静脈認証を用いた場合、ユーザは指を認証機器202にセットする状態を示している。またこれば図9における認証動作開始901に相当し、認証処理はまだ開始されてはいない状態とする。
【0031】
認証動作開始901によってユーザのユーザ認証動作を開始した後、ネットワークHDDの起動処理910によって、その認証動作開始直前にネットワーク等を介してアクセスが実行したいた一台以上の外部ストレージに対してスリープ等の状態を解除させる為にHDDのスピンアップ等を行う。
【0032】
この処理によって事前にHDDのスリープ等が解除されているので、以後認証開始処理904や、ユーザ所望の処理準備開始902の実行が行われる際にさらに処理速度の向上が可能となる。なおネットワークHDDの起動910以後のフローは実施例一と同様である。
【0033】
また、HDDの起動は、直前にアクセスが実行されていたHDDの中から、直近のN台とする事で、多数のネットワークHDDの起動よるオーバーヘッドや、消費電力の問題を回避する事が可能である。
【0034】
また本実施例ではPCにおける例を示したため、ユーザ認証に用いるユーザデータは一般にPC内に保存されていることを想定しているが、ユーザデータがネットワークを介した遠隔地のサーバで管理されている場合などでは認証に必要な処理時間が長くなる。このような環境では本発明による効果はより大きくなる。さらに、ユーザ認証時のユーザデータとユーザの関係は一対一認証の場合においては認証処理時間が比較的短くて済むが、認証時のユーザデータの母数N人が非常に大きい場合、すなわちN対一認証時にはユーザを特定するための認証処理時間が長くなってしまうの為、本発明の効果は更に大きくなる。
【0035】
また、本実施例ではPCにおける例を示したが、ユーザ認証を実行する機器としては、TV、レコーダなどでも構わない。
【0036】
また、この認証処理に関しては、指静脈認証や指紋認証などがあるが認証手段についてはどのような手法であっても構わない。
【0037】
以上,添付図面を参照しながら本発明にかかる好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0038】
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 認証動作開始処理
2 バックグラウンドでのユーザ所望の処理準備開始処理
3 ユーザ所望の処理準備完了処理
4 認証開始処理
5 認証完了処理
6 認証終了かつ処理準備完了の判定処理
7 ユーザ所望の処理開始処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ認証処理を生体情報によって処理する為の生体情報入力装置と、ユーザの生体情報を用いた認証処理を行う認証処理部と、
ユーザ所望の処理を実行する為の前記入出力装置に対するユーザ認証動作始を検出し、認証動作開始の検出によってユーザ所望の処理準備をバックグラウンドで開始することで、ユーザ認証処理が完了する前にユーザ所望の処理準備が完了し、ユーザ認証完了直後にユーザ所望の処理が実行可能な状態となるよう制御する制御部と、
を有することを特徴とする認証装置。
【請求項2】
請求項1において、人感センサを有し、
前記制御部は、ユーザ所望の処理実行の為に機器に近づいた際、上記入力装置によるユーザ認証動作を行う前に上記人感センサによりユーザを検知して、バックグラウンドで処理を開始する事で、ユーザ認証処理が完了する前にユーザ所望の処理準備が完了し、ユーザ認証完了直後に処理実行可能となるよう制御すること
を特徴とする認証装置。
【請求項3】
請求項2において、人感センサによって機器を使用していたユーザ認証済みのユーザを追跡し、再度ユーザ所望の処理を実行する際には認証レベルを下げる事で2回目以降のユーザ認証が完了するまでの時間を短縮される事
を特徴とする認証装置。
【請求項4】
請求項3において、ユーザの認証回数が2回目以降はユーザが上記認証装置による認証動作を開始したら、ユーザ所望の処理を認証完了よりも先に実行する事
を特徴とする認証装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、認証処理部がネットワーク等を介して外部の機器に有する事を特徴とする認証装置。
【請求項6】
請求項1において、ユーザ認証動作を開始した際に、ユーザ認証動作の開始以前にネットワーク等を介してアクセスを実行した一台以上の外部ストレージに対してスリープ等の状態を解除させる事
を特徴とする認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−76288(P2011−76288A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225852(P2009−225852)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】