説明

認識システム、認識方法、および認識プログラム

【課題】学習型パターン認識手法を利用して、ノイズを含む2次元分布データから、目的とするデータを識別し、その形状等を特定する認識システム、認識方法、および認識プログラムを提供する。
【解決手段】記憶手段に保存された2次元分布データ、正規化データ、弱識別器定義データ、正解認識データ、および訓練データと、記憶手段から読み出された2次元分布データを正規化データに変換する正規化処理部と、記憶手段に保存された弱識別器定義データを読み出し、弱識別器定義データを正規化処理部により生成された正規化データに適用し、パターン認識を実行させ、認識結果を出力手段に表示するパターン認識処理部と、パターン認識処理部による認識結果が正解か誤りかの判定確認処理を実行させ、正解と判定された場合は、記憶手段に正解認識データとして保存し、誤りと判定された場合は、記憶手段に訓練データの誤認識データとして保存する認識判定部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習型パターン認識手法を利用して、ノイズを含む2次元分布データから、目的とするデータを識別し、その形状等を特定する認識システム、認識方法、および認識プログラムに関する。
【0002】
特に、航空レーザー計測システムによって測量された地表面のレーザー計測データから、送電線の弛み状態等の形状を特定する認識システム、認識方法、および認識プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、送電線は、鉄塔を山野に敷設して所定の弛みを有して張られているものである。このため、送電線下付近にある樹木の成長によって、送電線と樹木との距離が適切に保てなくなってくる( 以下送電線下支障樹木という)。
【0004】
このような、送電線下支障樹木は、従来においては電力会社の選任作業員が実際に送電線下を廻って、送電線下支障樹木(風によって送電線が揺れた場合に、送電線に触れるおそれがある樹木を含む)をチェックし、必要に応じて伐採を行っていた。このため、チェックする作業員を多く必要とすると共に、チェックに非常に長い時間を要していた。
【0005】
そこで、近年は航空機で送電線上を飛行して得た3次元写真から樹木が送電線に触れるかどうかをチェックする場合もある。このチェックでは、3次元写真から人間が樹木の高さを割り出し、送電線高が書き込まれている図面に、この樹木高をプロットした後に、風等によって送電線が揺れる範囲を書き込む。そして、この範囲に入る樹木又は近い将来に前述の範囲に入る樹木がないかどうかを判断していた。
【0006】
さらに最近では、3次元写真に代わって、航空レーザー計測システムによって測量された地表面のレーザー計測データが用いられるようになってきている。レーザー計測データには、照射したレーザーの反射地点の地理位置が含まれるため、対象物を特定できれば、その地点の標高を得ることができる。
【0007】
したがって、送電線や樹木を特定すれば、特定した樹木が送電線に触れるおそれがあるか否か、それらの高さから判断可能となる。
【0008】
たとえば、特許文献1に開示されている、航空機によって得たレーザー計測データから送電線下付近の支障樹木を自動的に割り出して知らせる送電線下支障樹木自動表示装置等が開発されている。
【0009】
一方、実在するものを観測量から推定するパターン認識として、文字認識・顔認識等、多岐にわたり研究されてきた。しかし、不確定要素の多い困難さを伴うため、精度の高いモデル開発の難しさ,そして実現できても計算量から実用に耐えられない問題があった。
【0010】
そこで、精密なモデル化を避ける1つの手法として、ある程度多数の典型的なケースを例題として用意し、それを用いて学習する手法が考案されている。その有力な一手法に、ブースティングがある。
【0011】
ブースティングとは、精度のあまりよくないランダム(正解率50%以上)より少し良い程度の弱い識別器を組み合わせて強い識別器を作る学習アルゴリズムであり、多くの分野で使用されている。
【特許文献1】特許第3927660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
航空レーザー計測システムでは、レーザーを照射できる距離間隔に制限があり、その距離間隔が、測量されたレーザー計測データの最短識別可能長となる。
【0013】
したがって、高電圧などの大規模で太い送電線に関しては、特定に十分なレーザー計測データが得られる確率は高いが、支線などの小規模で細くかつ地表面に近い送電線に関しては、特定に十分なレーザー計測データが得られる確率は低い。
【0014】
このようにノイズが含まれ対象物の不明確なレーザー計測データでは、3次元写真と同様に、レーザー計測データを画像化して、人間が目視して対象物を特定せざるを得ないという課題がある。
【0015】
したがって、レーザー計測データに限らず、ノイズが含まれ対象物の不明確なデータから、正確に対象物を特定できる認識システム、認識方法、および認識プログラムの提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の認識システムは、中央情報処理回路、記憶手段、データ入力手段および出力手段を備えたコンピュータ上に構築された認識システムであって、記憶手段に保存された2次元分布データ、正規化データ、弱識別器定義データ、正解認識データ、および訓練データと、記憶手段と出力手段に接続され、記憶手段に保存された2次元分布データを読み込む処理を中央情報処理回路に実行させるデータ読込部と、記憶手段、出力手段、およびデータ読込部に接続され、データ読込部によって記憶手段から読み出された2次元分布データを正規化データに変換する処理を中央情報処理回路に実行させ、生成された正規化データを記憶手段に保存する正規化処理部と、記憶手段、出力手段、および正規化処理部に接続され、記憶手段に保存された弱識別器定義データを読み出し、弱識別器定義データを正規化処理部によって生成された正規化データに適用し、パターン認識を中央情報処理回路に実行させ、認識結果を出力手段に表示するパターン認識処理部と、記憶手段、出力手段、およびパターン認識処理部に接続され、パターン認識処理部によって出力された認識結果が正解か誤りかの判定を確認する処理を中央情報処理回路に実行させ、正解と判定された場合は、記憶手段に正解認識データとして保存し、誤りと判定された場合は、記憶手段に訓練データの誤認識データとして保存する認識判定部とを含むことを要旨とする。
【0017】
さらに、本発明の認識システムは、記憶手段に接続され、認識判定部によって記憶手段に保存された訓練データを読み出し、訓練データでブースティング学習アルゴリズムによる学習を中央情報処理回路に実行させ、新たに定義された弱識別器定義データにより、記憶手段に既に保存されている弱識別器定義データを更新する学習部を含むことを要旨とする。
【0018】
また、本発明の認識システムは、送電線を認識するため、2次元分布データとして、航空レーザー計測システムによって測量された地表面の3次元レーザー計測データから得られる、任意の鉄塔間の垂直方向の2次元平面上に展開した2次元化航空レーザー計測データを使用する。
【0019】
本発明の認識方法は、中央情報処理回路、記憶手段、データ入力手段および出力手段を備えたコンピュータによる認識方法であって、外部の計測システムによって得られた2次元分布データと初期値を設定した弱識別器定義データを、データ入力手段から記憶手段に取り込むステップと、記憶手段に保存された2次元分布データを読み込むステップと、読み込まれた2次元分布データのどの区間を認識対象とするか、認識対象区間の両端を指定するステップと、指定した両端の座標から、認識対象区間に適用する分布関数y=f(x)について決定できる係数があれば、算出し決定するステップと、分布関数y=f(x)の係数のうちで両端の座標のみでは決定できない係数を変化させ、各係数値についての正規化データ要素を求めて正規化データを作成し、作成された正規化データを記憶手段に記憶するステップと、記憶手段から正規化データと弱識別器定義データを読み込むステップと、読み込んだ弱識別器定義データに基づいて、読み込んだ正規化データから各弱識別器によってパターン認識した認識スコアの合計を各係数値について算出するステップと、各係数値に対するパターン認識の認識スコアの合計を比較して、認識スコアの合計が最大点である係数値を決定し、認識対象区間に適用する分布関数y=f(x)を確定するステップとを含むことを要旨とする。
【0020】
さらに、本発明の認識方法は、確定した分布関数y=f(x)を出力手段に出力表示するステップと、出力手段に出力表示された確定した分布関数y=f(x)が妥当であるか作業者が入力する判定結果を確認するステップと、正解と判定されている場合は、記憶手段に正解認識データとして保存し、誤りと判定されている場合は、分布関数y=f(x)を正しく修正した正解関数および正解データと、誤認識を生じさせた誤認識データを記憶手段に訓練データとして保存するステップとをさらに含むことを要旨とする。
【0021】
また、本発明の認識方法は、記憶手段に保存された訓練データを読み出し、ブースティング学習アルゴリズムを用いて学習を行い、各弱識別器の信頼度ht(Xi)を設定し直した弱識別器定義データを作成し、記憶手段に既に保存している弱識別器定義データを更新するステップをさらに含むことを要旨とする。
【0022】
本発明の認識方法は、送電線を認識するため、2次元分布データとして、航空レーザー計測システムによって測量された地表面の3次元レーザー計測データから得られる、任意の鉄塔間の垂直方向の2次元平面上に展開した2次元化航空レーザー計測データを使用する。
【0023】
本発明の認識プログラムは、弱識別器定義データと外部の計測システムによって得られた2次元分布データとを用いる認識プログラムであって、中央情報処理回路、記憶手段、データ入力手段および出力手段を備えたコンピュータに、2次元分布データと初期値を設定した弱識別器定義データを、データ入力手段から記憶手段に取り込ませ、記憶手段に保存された2次元分布データを読み込ませ、読み込まれた2次元分布データのどの区間を認識対象とするか、指定された認識対象区間の両端を識別させ、指定された両端の座標から、認識対象区間に適用する分布関数y=f(x)について決定できる係数があれば、算出し決定させ、分布関数y=f(x)の係数のうちで両端の座標のみでは決定できない係数を変化させ、各係数値についての正規化データ要素を求めて正規化データを作成させ、作成された正規化データを記憶手段に記憶させ、記憶手段から正規化データと弱識別器定義データを読み込ませ、読み込んだ弱識別器定義データに基づいて、読み込んだ正規化データから各弱識別器によってパターン認識させた認識スコアの合計を各係数値について算出させ、各係数値に対するパターン認識の認識スコアの合計を比較して、認識スコアの合計が最大点である係数値を決定し、認識対象区間に適用する分布関数y=f(x)を確定させることを要旨とする。
【0024】
さらに、本発明の認識プログラムは、コンピュータに、確定した分布関数y=f(x)を出力手段に出力表示させ、出力手段に出力表示された確定した分布関数y=f(x)が妥当であるか作業者が入力する判定結果を識別させ、正解と判定されている場合は、記憶手段に正解認識データとして保存し、誤りと判定されている場合は、分布関数y=f(x)を正しく修正した正解関数および正解データと、誤認識を生じさせた誤認識データを記憶手段に訓練データとして保存させることを要旨とする。
【0025】
また、本発明の認識プログラムは、コンピュータに、記憶手段に保存された訓練データを読み出し、ブースティング学習アルゴリズムを用いて学習を行い、各弱識別器の信頼度ht(Xi)を設定し直した弱識別器定義データを作成し、記憶手段に既に保存している弱識別器定義データを更新させること要旨とする。
【0026】
本発明の認識プログラムは、送電線を認識するため、2次元分布データとして、航空レーザー計測システムによって測量された地表面の3次元レーザー計測データから得られる、任意の鉄塔間の垂直方向の2次元平面上に展開した2次元化航空レーザー計測データを使用する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ノイズが含まれ対象物の不明確なレーザー計測データから、高電圧の太い送電線や細くかつ地表面に近い送電線など、状況の異なる送電線でも認識し、その形状を特定できる。
【0028】
さらに、本発明によれば、ノイズが含まれ対象物の不明確なデータから、対象物を認識し、その形状を特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態における認識システム10の概要構成を図示すると図1のようになり、認識システム10は、中央情報処理回路(CPU)を備えたコンピュータ上に構築されるシステムであり、周辺ユニット群として記憶手段20、データ入力手段30、および出力手段40を含み、CPUに情報処理を実行させるユニット群としてデータ読込部11、正規化処理部12、パターン認識処理部13、認識判定部14、および学習部15を含む。
【0030】
記憶手段20には、2次元分布データ21、正規化データ22、弱識別器定義データ23、正解認識データ24、および訓練データ25が保存される。
【0031】
なお、CPUは、プロセッサ、ロジック、レジスタなどの組み合わせからなる回路であり、コンピュータ全体の制御も行うことは周知のことであり、図示は省略している。
【0032】
さらに、以下の説明において、各ユニットの「接続」という語句は、必ずしも直接物理的に導線等でつながれている状態を示すものではなく、CPUを介して該当のユニット間で情報のやり取りを行える状態に配置していることを示すものである。
【0033】
(認識システム10の各構成要素の説明)
記憶手段20は、情報処理に利用される各種データを記憶また保存しておくためのメモリーである。具体的には、ハードディスクメモリーやフラッシュメモリー、また情報処理の途中で生成されるデータを記憶する一時記憶メモリー等が含まれる。
【0034】
データ入力手段30は、記憶手段20に接続され、記憶手段20にデータを入力し保存するための手段である。具体的には、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、光ディスク等の外部記録媒体からデータを取り込むためのドライブ、通信ネットワークを介して接続された外部記憶装置からデータを取り込むための手段、そして直接データを記憶手段に入力するためのキーボード等が含まれる。
【0035】
出力手段40は、CPUに情報処理を実行させるユニット群のそれぞれに接続され、処理されたデータを確認するためにデータを出力する手段である。具体的には、データを表示するディスプレイであり、その他にデータを印刷して確認するためのプリンタや通信ネットワークを介して接続された外部記憶装置に送信するための通信チャネルも含まれる。
【0036】
データ読込部11は、記憶手段20と出力手段40に接続され、記憶手段10に保存されている2次元分布データを読み込む処理をCPUに実行させるユニットである。
【0037】
正規化処理部12は、記憶手段20、出力手段40、およびデータ読込部11に接続され、データ読込部11によって記憶手段20から読み出された2次元分布データ21を正規化データ22に変換する処理をCPUに実行させ、生成された正規化データ22を記憶手段20に保存するユニットである。
【0038】
パターン認識処理部13は、記憶手段20、出力手段40、および正規化処理部12に接続され、記憶手段20に保存されている弱識別器定義データ23を読み出し、弱識別器定義データ23を正規化処理部12によって生成された正規化データ22に適用しながら、パターン認識をCPUに実行させ、認識結果を出力手段40に表示するユニットである。
【0039】
認識判定部は、記憶手段20、出力手段40、およびパターン認識処理部13に接続され、パターン認識処理部13によって出力された認識結果が正解か誤りかの判定を確認する処理をCPUに実行させ、正解と判定された場合は、記憶手段20に正解認識データ24として保存し、誤りと判定された場合は、記憶手段に訓練データの誤認識データ25として保存するユニットである。
【0040】
学習部15は、記憶手段20に接続され、認識判定部14によって記憶手段20に保存された訓練データ25を読み出し、誤認識データから正解データを認識させる学習をCPUに実行させ、その結果新たに定義された弱識別器定義データ23によって、以前から記憶手段20に保存されている弱識別器定義データ23を更新するユニットである。
【0041】
(データ構成)
記憶手段20に保存される2次元分布データ21、正規化データ22、弱識別器定義データ23、正解認識データ24、および訓練データ25について説明する。
【0042】
2次元分布データ21は、図2の分布図に示すように、対象となる物や事象(以下、単に対象物という)を計測した結果を、横軸(X)・縦軸(Y)によって定義される2次元平面上に分布する点集合として生成されるデータであり、実際のデータ要素は図3に示すように、各計測点の座標値となる。
【0043】
具体的な例としては、オシロソコープによって計測された電気信号の波形、音響観測(ソナー)やレーザーレーダー観測による3次元対象物の垂直方向または水平方向の形状などある。このような2次元分布データには多くのノイズのデータも含まれることがある。
【0044】
なお、本発明は、データの分布を関数分布として捉えることができる2次元分布データを使用するが、1つの2次元分布データ全体を1つの関数で捉えられる2次元分布データのみではなく、2次元分布データ全体を、関数で捉えられる複数の区間に分割することによって適用できる2次元分布データも含まれる。
【0045】
さらに、図27に示したような、いくつかのデータが混在している2次元分布データ21であっても、目的とする対象物について、認識対象区間を適切に指定することで、その形状の近似式を決定できる。
【0046】
正規化データ22は、図4に示すように、対象物の2次元分布データに、その分布に適用できる可能性のある関数を指定し、その関数の軌跡を重ね合わせ、2次元分布データ21中の関数を適用する区間を等間隔にn分割した「セル(1〜N)」ごとに、軌跡上に2次元分布データ21の点データが存在するかを調べ、存在する場合は「1」、存在しない場合は「0」と各セル情報に設定したデータ要素によって構成される。
【0047】
2次元分布データ21に適用する関数の係数値aiをa1〜amまで少しずつ変化させながら、各係数値について各セル情報を設定した一連のデータ要素を、パターン認識を行うための正規化データ22とする。なお、正規化データ22の作成方法については、詳細を後述する。
【0048】
弱識別器定義データ23は、図5に示すように、パターン認識を行うためにあらかじめ設定した複数の弱識別器htについて、各弱識別器htが比較するセル群の範囲と各弱識別器htの信頼度ht(Xi)のデータ要素によって構成される。弱識別器定義データ23の作成方法については、学習処理の説明とともに後述する。
【0049】
正解認識データ24は、正規化データ22からパターン認識処理部によって正しく認識され、元の2次元分布データの分布形状に適用された関数と、元の2次元分布データ21自体または適用された関数の軌跡上に存在する点テータのみを抽出した2次元分布データ21をデータ要素とする。図6には、適用関数と適用関数上の2次元分布データ21の点データをデータ要素とした例を示している。
【0050】
訓練データ25は、図7に示すように、正規化データ22からパターン認識処理部によって誤って認識され、元の2次元分布データ21の分布形状に適用された関数を正しく修正した正解関数および正解データと、誤認識を生じさせた元の2次元分布データ21(誤認識データという)をデータ要素とする。
【0051】
なお、各データは、上述したデータ要素のほかの情報を含んでも構わない。
【0052】
(処理の説明)
次に、図8を参照しながら、認識システムの処理の全体的な流れを説明する。
【0053】
(イ)データの準備:
外部の計測システムによって得られた2次元分布データ21と初期値を設定した弱識別器定義データ23を、データ入力手段30によって記憶手段20に取り込む(S100)。
【0054】
弱識別器定義データ23の初期値は、どんな関数分布をしているか既知の2次元分布データをサンプルとして、学習部15で行う学習と同様な処理を外部のコンピュータに繰り返し実行させて求めてもよいし、具体的に計算して求めてもよい。
【0055】
(ロ)データの読み込み:
データ読込部11は、記憶手段20に保存された2次元分布データ21を読み込む(S101)。また、必要に応じて、読み込んだ2次元分布データ21を図3に示したデータ要素一覧形式や図2に示した分布図形式で出力手段40に出力表示する。
【0056】
(ハ)正規化:
正規化処理部12は、データ読込部11によって読み込まれた2次元分布データ21のどの区間を認識対象とするか、認識対象区間の両端を指定する(S102)。
【0057】
両端の指定方法としては、あらかじめ2次元分布データ21に指標等を付与しておき、正規化処理部12がその指標を自動的に識別し指定する方法でもよいし、出力手段40に表示された2次元分布データ21から作業者が指定し、それを正規化処理部12が認識する方法でもよい。
【0058】
次に、正規化処理部12は、指定した両端の座標から、認識対象区間に適用する分布関数y=f(x)について決定できる係数があれば、算出し決定する(S103)。
【0059】
つづいて、正規化処理部12は、分布関数y=f(x)の係数のうちで両端の座標のみでは決定できない係数を変化させていき、各係数値aiについての正規化データ要素を求めて正規化データ22を作成し、作成された正規化データ22を記憶手段20に記憶する(S104)。
【0060】
(ニ)パターン認識:
まず、パターン認識処理部13は、記憶手段20から正規化データ22と弱識別器定義データ23を読み込む(S105)。
【0061】
次に、パターン認識処理部13は、読み込んだ弱識別器定義データ23に基づいて、読み込んだ正規化データ22から各弱識別器htによってパターン認識した結果(認識スコア)を各係数値aiについて算出する(S106)。
【0062】
最終的に、パターン認識処理部13は、各係数値aiに対するパターン認識の認識スコアを比較して、認識スコアが最大点である係数値aiを決定し、認識対象区間に適用する分布関数y=f(x)を確定する(S107)。
【0063】
パターン認識処理部13は、確定した分布関数y=f(x)を出力手段40に出力表示する(S108)。
【0064】
このとき、図2に示した2次元分布データ21の分布図上に重ねて表示させることで、2次元分布データ21の正しい点データとノイズデータを区別したり、ノイズデータを除いた2次元分布データ21のみを表示させたりしてもよい。
【0065】
つづいて、出力手段40に出力表示されたパターン認識処理部13によって認識された分布関数y=f(x)が妥当であるかが作業者によって判定され、認識判定部14は、作業者が入力する判定結果を確認する。(S109)
認識判定部14は、正解と判定されている場合は、記憶手段20に正解認識データ24として保存し(S110)、誤りと判定されている場合は、分布関数y=f(x)を正しく修正した正解関数および正解データと、誤認識を生じさせた誤認識データを記憶手段20に訓練データ25として保存する(S111)。
【0066】
入力された2次元分布データ21について、さらに認識すべき別の認識対象区間がある場合は、再度(ハ)の正規化処理から繰り返す(S112)。
【0067】
図8では、繰り返しの判定(S112)を行ってから正規化処理部12に戻る例を図示しているが、正規化処理部12の最初に繰り返しの判定(S112)を設けておき、認識判定部14の処理終了後、いったん正規化処理部12に必ず戻り、残りのデータの有無を判定して、ない場合は処理を終了する流れとしても構わない。
【0068】
(ホ)学習:
イ)〜二)によって、2次元分布データ21のパターン認識が実行された結果、パターン認識に誤りが生じた場合、パターン認識に使用している弱識別器htの定義を修正する必要がある。そこで収集した訓練データ25を使って学習を行い、弱識別器htの定義を更新する。
【0069】
学習は、誤認識が発生し、訓練データ25が保存されるのを契機に、自動的に実行されるようにしてもよいし、イ)〜二)の処理からは分離して、ある程度訓練データ25が蓄積された時点で、別個に実行されるようにしても構わない。
【0070】
学習部15は、記憶手段20に保存された訓練データ25を読み出し、以下に記述する学習アルゴリズムを用いて学習を行い、各弱識別器htの信頼度ht(Xi)を設定し直した弱識別器定義データ23を作成する。
【0071】
学習部15は、作成した弱識別器定義データ23によって、既に記憶手段20に保存している弱識別器定義データ23を更新する。
【0072】
以上が、本発明の認識システム10の認識処理の全体の流れであり、以下に本発明の認識システム10の特徴となる正規化データ作成技法、学習アルゴリズムと弱識別器定義データ作成技法、およびパターン認識技法について詳細に説明する。
【0073】
(正規化データ作成の詳細説明)
正規化データの作成手順について、図9から図14を参照しながら詳細に説明する。
【0074】
(1)図9に示したように、ノイズを含む2次元分布データの分布図を、データのサンプリング密度によって、N個の区間(セル)に等分割する。
【0075】
(2)図10に示したように、認識対象区間の両端(×印)を通る分布関数y=f(x)を想定し、未確定の係数aにある値a1を代入したときの軌跡を2次元分布データ21の分布図に重ねる。
【0076】
(3)次に、図11に示したように、N個のセルごとに、(2)で重ねた軌跡上(または軌跡から一定範囲内)に2次元分布データ21が存在するかを判定する。データが存在する場合は、そのセル情報に「1」を、存在しない場合は、「0」を設定する。
【0077】
この際、計測によって得られる2次元分布データ21の点データの座標には、ある程度のぶれ(誤差)が生じることを考慮して、図10に示したように、実線で示した分布関数y=f(x)の軌跡から一定の範囲(破線で示した軌跡の区域)についてデータの有無を調べる。
【0078】
(4)さらに、図12に示したように、未確定の係数aを変化させて、係数a=anのときの分布関数y=f(x)の軌跡について(3)を行い、結果として図13のデータが得られる。
【0079】
(5)以上の正規化処理を繰り返し、図4に示した正規化データ22が作成される。
【0080】
(6)作成された正規化データを、セル情報が「1」のセルは黒、セル情報が「0」のセルは白で表示すると、図14に示したような正規化データマッピング図になる。
【0081】
なお、図14は正規化データマッピング図の例であって、図4に示した正規化データ22そのものをマッピングした図ではない。
【0082】
(学習アルゴリズムと弱識別器定義データ作成の詳細説明)
本発明で利用する学習アルゴリズムはブースティングである。ブースティングとは、精度のあまりよくないランダム(正解率50%以上)より少し良い程度の弱い識別器(弱識別器ht)を組み合わせて強い識別器(強識別器H)を作る学習アルゴリズムである。
【0083】
ブースティングの中で最も知られている学習アルゴリズムにアダブースト(AdaBoost)がある。アダブーストは、学習するサンプルに重みをつけ,重みを更新しながら逐次的に学習するというアイディアを元にしている。
【0084】
アダブーストは、各弱識別器htが離散値(+1か−1)を返すが、連続値を扱う学習アルゴリズムとしてリアルアダブースト(Real AdaBoost)があり、本発明ではリアルアダブーストを採用している。リアルアダブーストの学習アルゴリズムを表したのが図16である。
【0085】
t=1〜Tの弱識別器htについて逐次的に学習を実行し、各弱識別器htが認識できるパターンの得手不得手を考慮して、パターン認識する際の各弱識別器htの信頼度ht(Xi)を決定する。
【0086】
具体的には、m個の訓練データi(i=1〜m)について、弱識別器htで識別誤りとなった認識データの重み係数Dt(i)は大きく,正解した認識データの重み係数Dt(i)は小さくする。次の弱識別器ht+1では、同じ認識データについての識別を行う際に重み係数Dt(i)を計算に入れるため、前の弱識別器htが識別誤りをした認識データに関する弱識別器ht+1の認識結果はより重点的に扱われることになる。
【0087】
つまり,得意な認識パターンの異なる多様な弱識別器htを組み合わせることで、相互に補う強識別器Hの構築が可能となる。
【0088】
ここで、本発明で使用する弱識別器htの定義には、ビオラ‐ジョーンズ(Viola−Jones)の顔検出法での弱識別器htの定義の方法を応用している。ビオラ‐ジョーンズの顔検出法では、Haar‐like特徴という濃淡情報を特徴量とする弱識別器htを網羅的に設定し、強識別器Hを構築する。つまり、図15に示した黒と白のボックスの明るさ平均値を比較することで,弱識別器htとしている。
【0089】
しかし、ビオラ‐ジョーンズの顔検出法では、画素間輝度の簡単な演算値(差分)等を用いているが,本発明で使用する正規化データ22は2値(0か1)であることからそのままでは適さない。
【0090】
そこで、図17(c)に示した正規化データマッピング図に対して、図17(d)に示したように、たとえば判定したい係数値に対する正規化データ要素の行(1行は50セル)の上下7行を含めた15行を判定窓として定義し、判定窓を5行ごとおよび各行10セルごとに領域を分割し、領域R1〜R15を定義する。
【0091】
よって、判定窓は15の領域に分割され、これら15の領域のどの領域同士を比較するかを決めて、その比較する領域の組み合わせによって複数の弱識別器htを定義する。
【0092】
図17(d)に示したように、領域(黒)と領域(白)の間の差分を特徴量Pとして定義する。特徴量Pは、各々の領域に含まれる各セルに設定された値(0か1)を合計し、それぞれの値をSBlack、SWhiteとし、式1によって定める。
【0093】
なお式1では、特徴量Pが0.0〜1.0になるように、1領域に含まれるセル数の50を差分に加え、比較する総セル数の100で割っている。
【0094】

P=(SBlack−SWhite+50)/100 ・・・(式1)

各種の訓練データ25を図16に示したアルゴリズムで学習することによって、弱識別器htごとに、特徴量P全域(0.0〜1.0)を0.1刻みの10のビンに区切った各ビンの信頼度ht(Xi)を決定する。ここで、変数Xiは区切ったビンの値(番号)を示し、Xi=1、2、・・・、10となる。もしk区分した場合は、Xi=1、2、・・・、kとなる。1個の弱識別器htの特徴量Pの各ビンの信頼度ht(Xi)をグラフ化したものが図18であり、これを全弱識別器htについて定義する。
【0095】
以上の方法で、弱識別器定義データのデータ要素として、弱識別器htが比較するセル群の範囲(領域)と、特徴量Pを10区分した各ビンの信頼度ht(Xi)との組を、全弱識別器htについて作成する。
【0096】
なお、上述中で示した行数やセル数等は一例であり、認識すべき2次元分布データやその正規化データにより、本発明の技術的範囲において適宜変更し得るものである。
【0097】
(パターン認識の詳細説明)
パターン認識処理部が行うパターン認識の方法について詳細に説明する。
【0098】
図17(c)は、2次元分布データを正規化処理部によって正規化して作成された正規化データのうち、分布関数y=f(x)の係数a=anのときについて、パターン認識するために必要な範囲の正規化データをマッピングした図である。
【0099】
具体的には、係数a=a(n−7)から係数a=a(n+7)までの正規化データであり、黒で示されたセルは、その係数値のときに、そのセルに2次元分布データ21が存在していることを示している。
【0100】
また、図17(d)は、弱識別器h1の認識領域図を模式的に示したものである。黒で示した領域と白で示した領域が弱識別器h1のパターン認識すべき領域である。
【0101】
(1)まず、図17(c)で示した正規化データマッピング図に、図17(d)示した弱識別器htの比較領域を重ねる。
【0102】
(2)次に、正規化データマッピング図で、図17(d)の認識領域図の黒で示した領域に含まれるセルと白で示した領域に含まれるセルのセル情報の合計の差分を求める。
【0103】
(3)前述した式1によって、係数a=anのときの弱識別器h1による認識すべき2次元分布データ22の特徴量Pを算出する。
【0104】
(4)弱識別器定義データ23に定義されている弱識別器h1の(3)で算出された特徴量Pを含むビンに対する信頼度を、このときの弱識別器h1の認識スコアとする。
【0105】
たとえば、弱識別器h1の(3)で算出された特徴量Pが0.35であれば、ビンXi=4(0.3〜0.4の区分)に含まれるので、信頼度ht(Xi)=h1(4)が、弱識別器h1の認識スコアとなる。
【0106】
(5)他の弱識別器htのすべてについて、(1)〜(4)を実行し、各弱識別器htの認識スコアを算出する。
【0107】
(6)次に、各弱識別器htの認識スコアを合計して、係数a=anのときの強識別器Hの認識スコアとする。
【0108】
(7)係数aの値すべてについて、(1)〜(6)を繰り返し、強識別器Hの認識スコアが最大となる係数aの値を決定する。この係数aの値の分布関数y=f(x)がパターン認識処理部13の認識した結果となる。
【実施例】
【0109】
本発明の認識システム10を、航空レーザー計測システムによって測量された地表面のレーザー計測データから送電線の弛み状態等の形状を特定ために適用した実施例について説明する。
【0110】
本発明の実施例における送電線認識システム10aの概要構成を図示すると図19のようになり、送電線認識システム10aの構成は、図1に示した認識システム10と同様であり、記憶手段20に保存される2次元分布データ21として、航空レーザー計測システムによって測量された地表面の3次元レーザー計測データから、任意の鉄塔間の垂直方向の2次元平面上に展開したレーザー計測データ(以下、2次元化航空レーザー計測データ21aという)を使用する。
【0111】
したがって、送電線認識システム10aの各構成要素の説明は、認識システム10と同様となるため、ここでは省略し、2次元化航空レーザー計測データ21aについてのみ説明する。
【0112】
2次元化航空レーザー計測データ21aは、以下の手順で作成されたデータである。
【0113】
(1)航空レーザー計測システムによって測量された地表面の3次元レーザー計測データは、照射したレーザーの反射点を測定し、その3次元座標を記録したデータである。この図20に示すように、3次元レーザー計測データを分布図形式で表示すると、立体的に地表面を把握できる。
【0114】
(2)ここで、真横から観察した送電線の状態を知るため、送電線の張られた鉄塔間の垂直方向の2次元平面上のレーザー計測データのみを抽出する。ただし、送電線の揺れやレーザー反射の乱れ等で、計測される点に誤差が生じることを考慮して、垂直方向の2次元平面にある程度厚みを持たせ、つまり水平方向の座標に一定範囲の幅を許容して、レーザー計測データの抽出を行う。
【0115】
抽出された2次元化航空レーザー計測データ21aは、図3に示した2次元分布データ21と同じデータ要素となり、データ入力手段30によって、記憶手段20に保存ざれる。
【0116】
図21と図22は、抽出された2次元化航空レーザー計測データ21aを分布図形式で表示した図であり、図21は、太い高電圧線の場合であり、高電圧線の弛みの状態が肉眼でも把握できる。一方、 図22は、細い低電圧線の場合であり、低電圧線は表面近くに存在し、さらに抽出されたレーザー計測データが少ないため、弛みの状態を肉眼で把握しにくい。
【0117】
図22のように弛みの状態を肉眼では把握しにくい場合でも、本発明の送電線認識システム10aによって、送電線の形状を認識することができる。
【0118】
また、実施例の送電線認識システム10aでは、弱識別器定義データ23に定義する弱識別器htとして、図23に示した46個を定義した。
【0119】
各弱識別器htは、黒で示した領域と白で示した領域に含まれる各セルのセル情報をそれぞれ合計して、式1によって特徴量Pを算出し、弱識別器定義データ23で特徴量Pに定義された信頼度ht(Xi)を読み出し、認識スコアとする。
【0120】
46個の弱識別器htすべての認識スコアを合計して、46個の弱識別器htで作られた強識別器Hの認識スコアとする。
【0121】
(処理の説明)
次に、図24を参照しながら、送電線認識システム10aの処理の流れを説明する。
【0122】
(イ)データの準備:
外部の計測システムによって得られた2次元化航空レーザー計測データ21aと初期値を設定した弱識別器定義データ23を、データ入力手段30によって記憶手段20に取り込む(S100a)。
【0123】
(ロ)データの読み込み:
データ読込部11は、記憶手段20に保存された2次元化航空レーザー計測データ21aを読み込む(S101a)。また、必要に応じて、読み込んだ2次元化航空レーザー計測データ21aを図3に示したデータ要素一覧形式や図21、図22に示した分布図形式で出力手段40に出力表示する。
【0124】
(ハ)正規化:
正規化処理部12は、データ読込部11によって読み込まれた2次元化航空レーザー計測データ21aのどの区間を認識対象とするか、送電線支持点(鉄塔)の座標を指定する(S102a)。
【0125】
次に、正規化処理部12は、指定した両端の座標から、認識対象区間に適用する2次関数y=ax+bx+cについて決定できる係数bとcを算出し決定する(S103a)。
【0126】
つづいて、正規化処理部12は、2次関数y=ax+bx+cの係数aを変化させていき、各係数値aiについての正規化データ要素を求めて正規化データ22を作成し、作成された正規化データ22を記憶手段20に記憶する(S104a)。
【0127】
(ニ)パターン認識:
まず、パターン認識処理部13は、記憶手段20から正規化データ22と弱識別器定義データ23を読み込む(S105a)。
【0128】
次に、パターン認識処理部13は、読み込んだ弱識別器定義データ23に基づいて、読み込んだ正規化データ22から各弱識別器htによってパターン認識した結果(認識スコア)を各係数値aiについて算出する(S106a)。
【0129】
最終的に、パターン認識処理部13は、各係数値aiに対するパターン認識の認識スコアを比較して、認識スコアが最大点である係数値aiを決定し、認識対象区間に適用する2次関数y=ax+bx+cを確定する(S107a)。
【0130】
パターン認識処理部13は、確定した2次関数y=ax+bx+cを出力手段40に出力表示する(S108a)。
【0131】
このとき、図21や図22に示した2次元化航空レーザー計測データ21aの分布図上に重ねて表示させることで、2次元化航空レーザー計測データ21aの正しい点データとノイズデータを区別したり、ノイズデータを除いた2次元化航空レーザー計測データ21aのみを表示させたりしてもよい。
【0132】
図25と図26は、図21と図22に示した2次元化航空レーザー計測データ21aを認識して得られる2次関数y=ax+bx+cの軌跡(破線で表示)を、それぞれ重ねて表示したものである。
【0133】
つづいて、出力手段40に出力表示されたパターン認識処理部13によって認識された二次関数y=ax+bx+cが妥当であるかが作業者によって判定され、認識判定部14は、作業者が入力する判定結果を確認する。(S109a)
認識判定部14は、正解と判定されている場合は、記憶手段20に正解認識データ24として保存し(S110a)、誤りと判定されている場合は、二次関数y=ax+bx+cを正しく修正した正解関数および正解データと、誤認識を生じさせた誤認識データを記憶手段20に訓練データ25として保存する(S111a)。
【0134】
入力された2次元化航空レーザー計測データ21aについて、さらに認識すべき別の認識対象区間がある場合は、再度(ハ)の正規化処理から繰り返す(S112a)。
【0135】
(ホ)学習:
イ)〜二)によって、2次元化航空レーザー計測データ21aのパターン認識が実行された結果、パターン認識に誤りが生じた場合、パターン認識に使用している弱識別器htの定義を修正する必要がある。
【0136】
そこで学習部15は、記憶手段20に保存された訓練データ25を使って学習を行い、記憶手段20に保存された弱識別器htの弱識別器定義データ23を更新する。
【0137】
以上が、送電線認識システム10aの認識処理の流れであり、正規化データ作成技法、学習アルゴリズムと弱識別器定義データ作成技法、およびパターン認識技法については、認識システム10について説明したものと同様である。
【0138】
なお、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】認識システムの構成図。
【図2】2次元分布データの分布図。
【図3】2次元分布データのデータ要素一覧。
【図4】正規化データのデータ要素一覧。
【図5】弱識別器定義データのデータ要素一覧。
【図6】正解認識データのデータ要素一覧。
【図7】訓練データのデータ要素一覧。
【図8】認識システムの処理フロー図。
【図9】正規化データの作成手順図。
【図10】正規化データの作成手順図。
【図11】係数a=a1のときの正規化データ要素一覧。
【図12】正規化データの作成手順図。
【図13】係数a=anのときの正規化データ要素一覧。
【図14】正規化データマッピング図。
【図15】Haar‐like特徴量の弱識別器。
【図16】リアルアダブーストの学習アルゴリズム図。
【図17】(c)正規化データマッピング図、(d)弱識別器の定義図。
【図18】特徴量の各ビンの重み係数のグラフ。
【図19】送電線認識システムの構成図。
【図20】3次元レーザー計測データの分布図。
【図21】太い高電圧線の場合の2次元化航空レーザー計測データの分布図。
【図22】細い低電圧線の場合の2次元化航空レーザー計測データの分布図。
【図23】46個の弱識別器定義図。
【図24】送電線認識システムの処理フロー図。
【図25】太い高電圧線の場合の認識軌跡図。
【図26】細い低電圧線の場合の認識軌跡図。
【図27】2次元分布データの例。
【符号の説明】
【0140】
10 認識システム
10a 送電線認識システム
11 データ読込部
12 正規化処理部
13 パターン認識処理部
14 認識判定部
15 学習部
20 記憶手段
21 2次元分布データ
21a 2次元化航空レーザー計測データ
22 正規化データ
23 弱識別器定義データ
24 正解認識データ
25 訓練データ
30 データ入力手段
40 出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央情報処理回路、記憶手段、データ入力手段および出力手段を備えたコンピュータ上に構築された認識システムであって、
前記記憶手段に保存された2次元分布データ、正規化データ、弱識別器定義データ、正解認識データ、および訓練データと、
前記記憶手段と前記出力手段に接続され、前記記憶手段に保存された前記2次元分布データを読み込む処理を前記中央情報処理回路に実行させるデータ読込部と、
前記記憶手段、前記出力手段、および前記データ読込部に接続され、前記データ読込部によって前記記憶手段から読み出された前記2次元分布データを前記正規化データに変換する処理を前記中央情報処理回路に実行させ、生成された前記正規化データを前記記憶手段に保存する正規化処理部と、
前記記憶手段、前記出力手段、および前記正規化処理部に接続され、前記記憶手段に保存された前記弱識別器定義データを読み出し、前記弱識別器定義データを前記正規化処理部によって生成された前記正規化データに適用し、パターン認識を前記中央情報処理回路に実行させ、認識結果を前記出力手段に表示するパターン認識処理部と、
前記記憶手段、前記出力手段、および前記パターン認識処理部に接続され、前記パターン認識処理部によって出力された前記認識結果が正解か誤りかの判定を確認する処理を前記中央情報処理回路に実行させ、正解と判定された場合は、前記記憶手段に前記正解認識データとして保存し、誤りと判定された場合は、前記記憶手段に前記訓練データの誤認識データとして保存する認識判定部
とを含むことを特徴とする認識システム。
【請求項2】
前記記憶手段に接続され、前記認識判定部によって前記記憶手段に保存された前記訓練データを読み出し、前記訓練データでブースティング学習アルゴリズムによる学習を前記中央情報処理回路に実行させ、新たに定義された前記弱識別器定義データにより、前記記憶手段に既に保存されている前記弱識別器定義データを更新する学習部をさらに含む請求項1に記載の認識システム。
【請求項3】
送電線を認識するため、前記2次元分布データは、航空レーザー計測システムによって測量された地表面の3次元レーザー計測データから得られる、任意の鉄塔間の垂直方向の2次元平面上に展開した2次元化航空レーザー計測データである請求項1または2に記載の認識システム。
【請求項4】
中央情報処理回路、記憶手段、データ入力手段および出力手段を備えたコンピュータによる認識方法であって、
外部の計測システムによって得られた2次元分布データと初期値を設定した弱識別器定義データを、前記データ入力手段から前記記憶手段に取り込むステップと、
前記記憶手段に保存された前記2次元分布データを読み込むステップと、
読み込まれた前記2次元分布データのどの区間を認識対象とするか、認識対象区間の両端を指定するステップと、
指定した前記両端の座標から、前記認識対象区間に適用する分布関数y=f(x)について決定できる係数があれば、算出し決定するステップと、
前記分布関数y=f(x)の係数のうちで前記両端の座標のみでは決定できない係数を変化させ、各係数値についての正規化データ要素を求めて正規化データを作成し、作成された前記正規化データを前記記憶手段に記憶するステップと、
前記記憶手段から前記正規化データと前記弱識別器定義データを読み込むステップと、
読み込んだ前記弱識別器定義データに基づいて、読み込んだ前記正規化データから各弱識別器によってパターン認識した認識スコアの合計を前記各係数値について算出するステップと、
前記各係数値に対する前記パターン認識の前記認識スコアの合計を比較して、前記認識スコアの合計が最大点である係数値を決定し、前記認識対象区間に適用する前記分布関数y=f(x)を確定するステップ
とを含むことを特徴とする認識方法。
【請求項5】
確定した前記分布関数y=f(x)を前記出力手段に出力表示するステップと、
前記出力手段に出力表示された確定した前記分布関数y=f(x)が妥当であるか作業者が入力する判定結果を確認するステップと、
正解と判定されている場合は、前記記憶手段に正解認識データとして保存し、誤りと判定されている場合は、前記分布関数y=f(x)を正しく修正した正解関数および正解データと、誤認識を生じさせた誤認識データを前記記憶手段に訓練データとして保存するステップ
とをさらに含む請求項4に記載の認識方法。
【請求項6】
前記記憶手段に保存された前記訓練データを読み出し、ブースティング学習アルゴリズムを用いて学習を行い、前記各弱識別器の信頼度ht(Xi)を設定し直した前記弱識別器定義データを作成し、前記記憶手段に既に保存している前記弱識別器定義データを更新するステップをさらに含む請求項5に記載の認識方法。
【請求項7】
送電線を認識するため、前記2次元分布データは、航空レーザー計測システムによって測量された地表面の3次元レーザー計測データから得られる、任意の鉄塔間の垂直方向の2次元平面上に展開した2次元化航空レーザー計測データである請求項4ないし6のいずれか1項に記載の認識方法。
【請求項8】
弱識別器定義データと外部の計測システムによって得られた2次元分布データとを用いる認識プログラムであって、
中央情報処理回路、記憶手段、データ入力手段および出力手段を備えたコンピュータに、
前記2次元分布データと初期値を設定した前記弱識別器定義データを、前記データ入力手段から前記記憶手段に取り込ませ、
前記記憶手段に保存された前記2次元分布データを読み込ませ、
読み込まれた前記2次元分布データのどの区間を認識対象とするか、指定された認識対象区間の両端を識別させ、
指定された前記両端の座標から、前記認識対象区間に適用する分布関数y=f(x)について決定できる係数があれば、算出し決定させ、
前記分布関数y=f(x)の係数のうちで前記両端の座標のみでは決定できない係数を変化させ、各係数値についての正規化データ要素を求めて正規化データを作成させ、作成された前記正規化データを前記記憶手段に記憶させ、
前記記憶手段から前記正規化データと前記弱識別器定義データを読み込ませ、
読み込んだ前記弱識別器定義データに基づいて、読み込んだ前記正規化データから各弱識別器によってパターン認識させた認識スコアの合計を前記各係数値について算出させ、
前記各係数値に対する前記パターン認識の前記認識スコアの合計を比較して、前記認識スコアの合計が最大点である係数値を決定し、前記認識対象区間に適用する前記分布関数y=f(x)を確定させる
ことを特徴とする認識プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータに、
確定した前記分布関数y=f(x)を前記出力手段に出力表示させ、
前記出力手段に出力表示された確定した前記分布関数y=f(x)が妥当であるか作業者が入力する判定結果を識別させ、
正解と判定されている場合は、前記記憶手段に正解認識データとして保存し、誤りと判定されている場合は、前記分布関数y=f(x)を正しく修正した正解関数および正解データと、誤認識を生じさせた誤認識データを前記記憶手段に訓練データとして保存させる
ことをさらに含む請求項8に記載の認識プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータに、
前記記憶手段に保存された前記訓練データを読み出し、ブースティング学習アルゴリズムを用いて学習を行い、前記各弱識別器の信頼度ht(Xi)を設定し直した前記弱識別器定義データを作成し、前記記憶手段に既に保存している前記弱識別器定義データを更新させることをさらに含む請求項9に記載の認識プログラム。
【請求項11】
送電線を認識するため、前記2次元分布データは、航空レーザー計測システムによって測量された地表面の3次元レーザー計測データから得られる、任意の鉄塔間の垂直方向の2次元平面上に展開した2次元化航空レーザー計測データである請求項8ないし10のいずれか1項に記載の認識プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図23】
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【図24】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−112889(P2010−112889A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287039(P2008−287039)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(591074161)アジア航測株式会社 (48)
【Fターム(参考)】