説明

誘導位置センサ

位置センサは、交流電気エネルギ源によって励起されると電磁放射を生成する円形のトランスミッタコイルを有する。レシーバコイルは、トランスミッタコイルの部分の周りに第1の方向に巻かれる第1のループと、トランスミッタコイルにおいて径方向に対向する部分の周りに、第1の方向とは反対の第2の方向に巻かれる第2のループとを有する。さらに、レシーバコイルは、トランスミッタコイルの第1の部分の内側に、第2の方向に巻かれる第1の補償コイルを含むとともに、トランスミッタコイルの第2の部分の内側に、第1の方向に巻かれる第2の補償コイルを含む。レシーバコイルの第1および第2のループならびに第1および第2の補償コイルは、互いに直列に電気的に接続される。移動可能な結合要素が、トランスミッタコイルとレシーバコイルとの間の誘導結合を、当該結合器の位置の関数として変動し、これによりトランスミッタコイルによって励起された際に、レシーバコイルからの電気的出力信号を変動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2007年12月12日に出願された米国仮特許出願連続番号第61/013,158号、および2008年12月1日に出願された米国連続番号第12/325,648の優先権を主張し、これらの両方の内容はここに参照により援用される。
【0002】
発明の背景
I.発明の分野
本発明は一般的には位置センサに関し、より詳細には、誘導位置センサに関する。
【背景技術】
【0003】
II.関連技術の説明
自動車では、スロットルペダルは従来、ケーブルによってエンジンスロットルに機械的に接続されていた。しかしながら、現代の車両では、スロットル位置センサがペダルに機械的に接続され、スロットルペダルの位置を示す電気出力信号を生成する。電気出力信号は、運転者によってスロットルペダルが押し下げられると変動する。このようなシステムは時に「フライ・バイ・ワイヤ」システムと呼ばれる。
【0004】
1つのタイプの従来公知のスロットル位置センサでは、センサは、典型的にはプリント回路基板上に形成される円形に巻かれたトランスミッタコイルを含む。このトランスミッタコイルは、電磁放射を生成するよう高周波交流電源によって励起される。トランスミッタコイルは通常円形パターンに構成されるが、他のパターン構成が代替的に用いられてもよい。
【0005】
トランスミッタコイルに近接して、さらにレシーバコイルがプリント回路基板上に形成される。このレシーバコイルは、トランスミッタコイルから誘導結合を通じて電磁放射を受け、トランスミッタコイルから受けた信号により出力信号を生成する。
【0006】
しかしながら、トランスミッタコイルとは異なり、レシーバコイルは平面図で見ると反対の方向にまかれる第1のループと第2のループとを含む。この結果、トランスミッタコイルとレシーバコイルの第1のループとの間の誘導結合により、トランスミッタコイルとトランスミッタコイルの第2のループとの間の誘導結合とは極性が反対の電圧が生成される。このレシーバ出力は、互いに直列に接続されたトランスミッタコイルの第1および第2のループからの信号の組合せまたは合計である。
【0007】
スロットルの位置を示す出力信号を生成するために、スロットル位置センサの中に結合要素が回転可能に取付けられ、スロットルペダルの押下および解放に同期して回転する。さらにこの結合要素は、トランスミッタコイルから受取られた磁束を相殺する、金属のような導電材料から構成される。
【0008】
結合要素は、トランスミッタおよびレシーバコイルの両方の部分の上に存在する。結果、トランスミッタコイルの通電の間および結合要素の回転の際には、トランスミッタコイルとレシーバコイルの第1および第2のループとの間の誘導結合が変動する。この変動し得る誘導結合は、結合要素の角度位置、したがってスロットルペダルの位置を示す、レシーバコイルからの電圧出力を作り出す。
【0009】
これらの従来公知のスロットル位置センサから正確な信号を得るには、結合要素がトランスミッタおよびレシーバコイルと同心であることと、結合要素とトランスミッタおよびレシーバコイルとの間の間隔が結合要素の全運動を通して一定のままであることとが重要である。しかしながら、スロットル位置センサの製造における製造公差により、結合要素はしばしばトランスミッタおよびレシーバコイルと正確に同心とならず、ならびに/または結合要素とトランスミッタおよびレシーバコイルとの間の間隔は、結合要素の旋回運動の間に、ある程度変動する。この結合要素とトランスミッタおよびレシーバコイルとの間の同心性の欠如、ならびに結合要素の回転の間の結合要素とレシーバおよびトランスミッタコイルとの間の間隔の変動により、トランスミッタコイルとレシーバコイルの第1および第2のループとの間の誘導結合が変動することになる。これにより、レシーバコイルからの出力信号が、同じ角度位置で正確に位置決めされた結合要素を有するスロットル位置センサとは異なって作り出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の概要
本発明は、従来公知のスロットル位置センサの上述した不都合を克服するスロットル位置センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡潔に言うと、本発明のスロットル位置センサは、好ましくは円形の構成に巻かれるトランスミッタコイルを含む。トランスミッタコイルは、通電されると電磁放射を生成するように、高周波交流源によって励起される。さらに、トランスミッタコイルは好ましくはプリント回路基板上に形成される。
【0012】
さらに、トランスミッタコイルに近接して、レシーバコイルがプリント回路基板上に形成される。しかしながら、トランスミッタコイルとは異なり、レシーバコイルは互いに直列で相互接続される4つの別個のコイル部を含む。これらの4つの別個のコイル部は、反対に巻かれる第1および第2のループと、反対に巻かれる2つの補償コイルとを含む。
【0013】
レシーバコイルの第1のループはトランスミッタコイルの第1の部分の周りに位置決めされ、その一方、同様に、レシーバコイルの第2のループはトランスミッタコイルにおいて径方向に対向する第2の部分の周りに位置決めされる。第1の補償コイルは、トランスミッタコイルの第1の部分の内側に位置決めされるが、第2の方向、すなわちレシーバコイルの第2のループと同じ方向に巻かれる。逆に、第2の補償コイルは、トランスミッタコイルの第2の部分の内側に位置決めされ、第1の方向、すなわちレシーバコイルの第1のループと同じ方向に巻かれる。
【0014】
レシーバコイルの第1および第2のループならびに第1および第2の補償コイルはトランスミッタコイルに誘導結合されるようにトランスミッタコイルに十分近く位置決めされる。しかしながら、第1および第2のループならびに第1および第2の補償コイルは互いに直列に接続されるので、レシーバコイルの第1および第2のループならびに補償コイルからの電圧の合計がスロットル位置センサの出力信号を形成する。
【0015】
トランスミッタおよびレシーバコイルに対して結合要素が移動可能に位置決めされる。結合要素は、トランスミッタコイルとレシーバコイルとの間の誘導結合を結合要素の角度位置の関数として変動させる。好ましくは、結合要素は、トランスミッタコイルおよびレシーバコイルの両方の軸と同心の軸の周りを回転可能なように取り付けられる。さらに、結合要素は、結合要素の回転が、結合要素がレシーバコイルの第1および第2のループの両方の上に存在する量、したがってレシーバコイルの出力信号を変動させるように形状決めされる。
【0016】
実際には、レシーバコイルの第1および第2の補償コイルは、トランスミッタおよびレシーバコイルの軸に対する結合要素の回転軸の位置合わせの誤差を補償するとともに、結合要素とトランスミッタおよびレシーバコイルとの間の間隔の変動も補償する。以下により詳細に記載されるように、レシーバコイルの第1および第2の補償コイルは、トランスミッタおよびレシーバコイルの軸に対する結合要素の小さなずれと、結合要素とトランスミッタおよびレシーバコイルとの間の間隔の変動とを補償する。たとえば、結合要素のずれによって引き起こされる、トランスミッタコイルとレシーバコイルの第1のループとの間の誘導結合の低減はレシーバコイルの第2のループと同じ方向に巻かれた第1の補償コイルとの間の誘導結合の減少によって相殺される。逆も当てはまる。
【0017】
添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照すれば、本発明をよりよく理解できるであろう。いくつかの図を通じて、同様の参照符号は、同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】明確さのために一部を除去した本発明の好ましい実施例を示す平面図である。
【図2】トランスミッタおよびレシーバコイルの上に配置される結合要素を示す、図1に類似した図である。
【図3】センサの軸に対してずれた結合要素を示す、図2に類似した図である。
【図4】結合要素がトランスミッタおよびレシーバコイルに対して傾いている本発明の位置センサを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施例の詳細な説明
まず図1を参照して、本発明に従ったスロットル位置センサ10を概略的に示す。スロットル位置センサ10は、プリント回路基板13上に印刷されたトランスミッタコイル12を含む。トランスミッタコイル12は、センサ10の軸14について実質的に同心円状に少なくとも1つ、好ましくはいくつかの円形ループを含む。
【0020】
高周波交流源16は、トランスミッタコイル12の端部に電気的に接続される。したがって、高周波交流源16が活性化されると、トランスミッタコイル12は、高周波交流源16の周波数で電磁放射を生成する。
【0021】
プリント回路基板13上にはさらにレシーバコイル20が印刷され、このレシーバコイル20は、センサ10の出力信号を形成する2つの端部22および24を含む。レシーバコイル20は、トランスミッタコイル12の外周の実質的に半分の周りに第1の方向に巻かれる第1のループ26を含む。レシーバコイル20の第2のループ28は、第1のループ26と径方向において対向する位置において、トランスミッタコイル12の外周の周りに、第1の方向とは反対の第2の方向へ巻かれる。
【0022】
レシーバコイルはさらに、第1のループ26と同じトランスミッタコイル12の半分部分上において、トランスミッタコイル12の内部に位置決めされる第1の補償コイル30を含む。しかしながら、この補償コイル30は、レシーバコイルの第2のループ28と同じ方向、したがってレシーバコイルの第1のループ20の方向とは反対の方向に巻かれる。同様に、第2の補償コイル32が第1の補償コイル30と径方向において対向するトランスミッタコイル12の内部に位置決めされる。この第2の補償コイル32は、レシーバコイル20の第1のループ26と同じ方向、したがってレシーバコイル20の第2のループ28とは反対の方向に巻かれる。
【0023】
ループ26および28の両方ならびに補償コイル30および32の両方は、センサ10の軸14に対して、プリント回路基板13上に同心円状に形成される。さらに、レシーバコイル20の第1のループ26および第1の補償コイル30は、レシーバコイル20の第2のループ28および第2の補償コイル32の鏡像を実質的に形成する。
【0024】
レシーバコイル20のループ26および28の両方ならびに補償コイル30および32の両方がプリント回路基板13上に印刷される。さらに、第1および第2のループ26および28ならびに第1および第2の補償コイル30および32は、全体のレシーバコイル20が2つの端部22および24を有する単一の配線からなるように、互いに直列に接続される。
【0025】
レシーバコイル20のループ26および28は互いに反対に巻かれているので、ループ20および28においてトランスミッタコイル12によって誘導される電圧は、極性が互いに反対になることになる。同様に、補償コイル30および32も反対に巻かれているので、通電された際に補償コイル30および32においてトランスミッタコイル12によって誘導される電圧も極性が互いに反対になることになる。同様に、レシーバコイル20の第1のループ26における電圧の極性は、第1の補償コイル30における誘導電圧とは反対になり、レシーバコイル20の第2のループ28において誘導される電圧は、第2の補償コイル32において誘導される電圧と極性が反対になる。結果、レシーバコイル20の出力端子22および24での電圧は、レシーバコイル20の第1および第2のループ26および28ならびに第1および第2の補償コイル30および32における誘導電圧の合計に等しくなる。
【0026】
ここで図2を参照して、結合要素40は、センサハウジングの軸14につて回転可能なようにセンサ10に取付けられる。この結合要素40は、トランスミッタコイル12が作り出す電磁放射に応答して渦電流を作り出す材料、たとえば金属から構成される。
【0027】
結合要素40は、図2に示されるように、レシーバコイル20の第1および第2のループ26および28の両方の部分の上に存在する半円部42を含む。結合要素42はさらに、結合要素40が正確にセンサ10の軸14と同心である場合に完全に補償コイル30および32の上に重なる円形部44を含む。
【0028】
したがって、結合要素は、センサ10に対する結合要素40の角度位置に依存して、トランスミッタコイル12とレシーバコイル20の第1のループ26および第2のループ28との間の誘導結合を変動させる。結合要素40は、結合要素40の角度位置が車両のためのスロットルペダル41の位置に比例して変動するように、スロットルペダル41に機械的に接続される。
【0029】
たとえば図2では、結合要素40の半円部42がレシーバコイル20の第1のループ26および第2のループ28の両方の部分の上に等しく存在する中立位置に結合要素40があるのが示される。この結果、この位置では、第1のループ26においてトランスミッタコイル12によって誘導される電圧は、レシーバコイル20の第2のループ28において誘導される電圧と等しいが、極性が反対になる。したがって、レシーバコイル20の出力端子22および24の間で誘導される電圧は零になる。しかしながら、結合要素40がたとえば時計回りの方向に回転される場合、トランスミッタコイル12とレシーバコイル20の第1のループ26との間の誘導結合が増加すると同時に、トランスミッタコイル12とレシーバコイル20の第2のループ28との間の誘導結合が減少する。これにより、レシーバコイルの出力端子22および24にて、センサ軸14に対する結合要素40の角度位置に比例する量により変動する電圧が作り出される。
【0030】
結合要素40がセンサ10の軸14と正確に同心円状に取付けられると、結合要素40の円形部44は、補償コイル30および32の両方の上に完全かつ等しく重なる。したがって、第1の補償コイル30においてトランスミッタコイル12によって誘導される電圧は、第2の補償コイル32においてトランスミッタコイルによって誘導される電圧と等しいが、極性が逆になる。この結果、2つのコイル30および32からの誘導電圧が互いに相殺する。
【0031】
しかしながら、製造公差により、結合要素40は常にセンサ10の軸と正確に整列するわけではない。図3を参照すると、図3に誇張して示されるセンサ10では、結合要素40が、ハウジング軸14と同心ではなく、図3に誇張して示される小量Xだけ軸14からオフセットする軸50上に取り付けられている。図3に示されるように結合要素40の右方向のシフトにより、結合要素40はレシーバコイル20の第1のループ26の全体をもはや覆っていない。これにより第1のループ26に対する結合要素40の影響が減少する。同時に、第1の補償コイル30に対する結合要素40の影響も減少し、そのためトランスミッタコイル12によってレシーバコイル20の第1のループ26および第1の補償コイル30の両方において誘導される電圧が増加する。しかしながら、レシーバコイル20の第1のループ26が第1の補償コイル30とは反対方向に巻かれているので、第1のループ26における誘導電圧の増加は極性が反対である第1の補償コイル30における誘導電圧の増加によって自動的に相殺される。これにより、センサハウジングの軸14に対する結合要素の軸のずれによって引き起こされるレシーバコイル端子22および24での出力電圧に対する影響を打消す、または少なくとも最小化する。
【0032】
ここで図4を参照して、結合要素40が図4に大きく誇張して示されるようにトランスミッタコイルおよびレシーバコイル12に対して傾斜する場合、レシーバコイル20の第1のループ26に対する結合要素40の影響の増加は、第1の補償コイル30に対する結合要素40の影響の増加によって相殺される。同様に、レシーバコイル20の第2のループ28に対する結合要素40の影響の減少は、第2のレシーバループ28と第2の補償コイル32との間の結合要素40に対する間隔の増加による第2の補償コイル32に対する結合要素40の影響の減少によって相殺される。
【0033】
上記から本発明が、結合要素のずれならびにトランスミッタおよびレシーバコイルに対する結合要素の傾斜の両方の自動補正を提供する、特にスロットル位置センサとして良好に好適である位置センサを提供することが分かり得る。この発明を記載してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に規定されるこの発明の精神から逸脱しない多くの修正例が明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置センサであって、
電気エネルギ源によって励起されると電磁放射を生成する円形のトランスミッタコイルと、
前記トランスミッタコイルの第1の部分の周りに第1の方向に巻かれる第1のループと、前記トランスミッタコイルにおいて径方向に対向する第2の部分の周りに前記第1の方向とは反対の第2の方向に巻かれる第2のループと、前記トランスミッタコイルの前記第1の部分の内側において前記第2の方向に巻かれる第1の補償コイルと、前記トランスミッタコイルの前記第2の部分の内側において前記第1の方向に巻かれる第2の補償コイルとを有するレシーバコイルとを含み、前記第1のループ、前記第2のループ、前記第1の補償コイル、および前記第2の補償コイルは直列に接続され、前記レシーバコイルは、前記トランスミッタコイルと前記レシーバコイルとの間の誘導結合により前記トランスミッタコイルが励起されると電気出力信号を生成し、前記位置センサはさらに、
前記トランスミッタコイルと前記レシーバコイルとの間の誘導結合を前記結合要素の位置の関数として変動させ、これにより前記トランスミッタコイルによって励起される際の前記レシーバコイルからの当該電気出力信号を変動させる移動可能な結合要素を含む、位置センサ。
【請求項2】
前記トランスミッタコイルはプリント回路基板上に形成される、請求項1に記載の発明。
【請求項3】
前記レシーバコイルはプリント回路基板上に形成される、請求項1に記載の発明。
【請求項4】
前記結合要素は金属製であり、前記トランスミッタコイルに対して回転可能である、請求項1に記載の発明。
【請求項5】
前記結合要素は、前記トランスミッタコイルに対して軸の周りを回転可能である、請求項1に記載の発明。
【請求項6】
前記トランスミッタコイルは、同心である複数の円形ループを含む、請求項1に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506951(P2011−506951A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537535(P2010−537535)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003468
【国際公開番号】WO2009/074864
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(508000593)ケイエスアール テクノロジーズ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】