説明

誘導位置センサ

高周波電流源によって通電される送信コイルを備えたロータリポジションセンサを提供する。第1の受信コイルは偶数のN個のループを含み、第1の受信コイルの有する隣接するループは逆方向に巻かれている。第2の受信コイルはまた、N個のループを含み、隣接するループは逆方向に巻かれている。さらに、第2の受信コイルは、第1の受信コイルから180/N度だけ角度を付けてオフセットされる。導電性材料からなる非円形カプラは、カプラ要素が第1および第2の受信コイルの少なくとも一部上に重なるように、コイルに対して回転可能に装着される。回路は、第1および第2の受信コイルからの出力信号を処理し、カプラの回転位置を表わす出力信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
この出願は、2010年1月25日に出願されこの明細書中に引用により援用される米国仮特許出願連続番号第61/297,841号の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
I.発明の分野
この発明は概して回転センサに関する。
【背景技術】
【0003】
II.関連技術の説明
自動車車両においては、スロットルペダルは、従来より、ケーブルによって機械的にエンジンスロットルに接続されている。しかしながら、現代の車両においては、スロットルポジションセンサがペダルに機械的に接続されており、スロットルペダルの押下げ度合いを示す電気信号を生成する。このようなシステムはしばしば「フライ・バイ・ワイヤ(fly by wire)」システムと称される。
【0004】
或る種の公知のスロットルポジションセンサにおいては、センサは送信コイルまたはエキサイタコイルを含む。この送信コイルまたはエキサイタコイルは、高周波源によって励磁され、高周波源の周波数で電磁放射を発生させる。さらに、この送信コイルは典型的には円形パターンに配置されるが、但し、他のパターン構成が代替的に用いられてもよい。
【0005】
受信コイルがまた、スロットルポジションセンサにおいて送信コイルに隣接して配置される。結果として、送信コイルが受信コイルと送信コイルとの間の誘導結合によって励磁されると、受信コイルが受信信号を発生させる。
【0006】
しかしながら、受信コイルは、送信コイルとは異なり、平面図で見たときに互いに対して逆方向に巻かれた少なくとも第1および第2のループを含む。結果として、送信コイルと受信コイルの第1のループとの間の誘導結合により、送信コイルと受信コイルの第2のループとの間の誘導結合とは逆の極性を有する電圧が生じる。受信コイルのループは、受信機出力信号が受信コイルの第1のループからの信号と第2のループからの信号との組合せまたはこれら信号の合計となるように、直列に接続される。
【0007】
スロットルの位置を表わす出力信号を生成するために、カプラ要素は、このカプラ要素が、スロットルペダルを踏込んだり緩めたりするのと同期して回転するように、スロットルポジションセンサ内で回転可能に装着される。このカプラ要素はさらに、送信コイルおよび受信コイル両方の一部に重なる。カプラ要素は導電性材料で構成されており、これが、カプラ要素内の渦電流の発生による磁束を相殺する。結果として、カプラが回転すると、送信コイルと、受信コイルの第1および第2のループとの間の誘導結合が変化し、これにより、カプラの角度位置と、これによりスロットルペダルの位置とを表わす電圧出力が受信コイル全体から生成される。
【0008】
連結要素が送信コイルおよび受信コイルとぴったりと同心であると想定し、かつ、カプラ要素と送信コイルおよび受信コイルとの間にある空間がカプラ要素の移動中ずっと一定のままであると想定すると、受信コイルからの出力は、カプラ要素の角度位置と、これによりスロットルペダルの位置とを正確に示すこととなる。しかしながら、実際には、スロットルポジションセンサの製造中の製造公差のせいで、しばしば、製造されるスロットルポジションセンサにおいては、カプラ要素が、送信コイルおよび受信コイルとぴったりと同心ではなくなり、ならびに/または、カプラ要素が、カプラ要素の全体的な回動もしくは回転運動中に、カプラ要素と送信コイルおよび受信コイルとの間の間隔さえも維持しなくなってしまう。送信コイルおよび受信コイルとのカプラ要素の同心性が欠如し、かつ、カプラ要素の回転または回動中におけるカプラ要素と受信コイルとの間の空間が変動することにより、送信コイルと受信コイルの第1および第2のループとの間の誘導結合が変化することとなり、これにより、さらに、カプラ要素が同じ角度位置で正確に位置決めされているスロットルポジションセンサと異なる出力信号が受信コイルから供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
この発明は、公知のスロットルポジションセンサの上述の問題を克服するスロットルポジションセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡潔には、この発明のスロットルポジションセンサは、好ましくは複数のループを有する円形構成に巻かれた送信コイルを含む。受信コイルは、通電されると、送信コイルが電磁放射を発生させるように、高周波交流源によって励磁される。送信コイルは、さらに、典型的にはプリント回路基板上に印刷される。
【0011】
第1の受信コイルがまた、プリント回路基板上において送信コイルに隣接して印刷される。受信コイルは、互いに直列に電気的に結合された少なくとも2つ、好ましくは4つ以上の別個のコイル部分を含む。4つの別個のコイル部分について、受信コイルは4つの別個のループを含み得る。この場合、交流ループは各々、円のうち90度を占めており、交流ループは互いとは逆方向に巻かれている。しかしながら、受信コイルからの電気出力全体が受信コイルのすべてのループ上の誘導電圧の合計で構成されるように、すべてのループは互いに直列に電気的に接続される。結果として、交流ループは、互いとは逆方向に巻かれるので、送信コイルと4つのループの各々との間の誘導結合が同一であるとすると、受信コイル上の出力は0になるだろう。
【0012】
第2の受信コイルがまた、プリント回路基板上において第1の受信コイルと同じ形状に形成されるが、45度または180/Nだけ回転させられている。ここでNは受信コイルにおけるループの数に等しい。
【0013】
公知のスロットルポジションセンサと同様に、カプラ要素は、両方の送信コイルおよび両方の受信コイルに対して相対的に移動可能に位置決めされる。このカプラ要素は、カプラ要素の角度位置の関数として、送信コイルと第1および第2の両方の受信コイルとの間の誘導結合を変化させる。カプラ要素がスロットルペダルに機械的に結合されているので、カプラ要素の回転位置はスロットルペダルの位置にちょうど対応する。
【0014】
カプラ要素はさらに、カプラ要素の回転運動が第1の受信コイル上で誘導された電圧を正弦関数として変化させるように、構成される。しかしながら、第2の受信コイルが第1の受信コイルに対して実質的に90度回転するので、カプラ要素の回転中に第2の受信コイル上で生成された電気出力は余弦関数として変化する。結果として、カプラ要素の角度位置と、これにより、スロットルペダルの実際の位置とは、第1の受信コイルおよび第2の受信コイルからのそれぞれの正弦出力信号および余弦出力信号の逆正接関数を解くことによって正確に決定され得る。
【0015】
この発明の主要な利点は、第1の受信コイルおよび第2の受信コイルからのそれぞれの正弦信号および余弦信号がともに同じ係数によってスケーリングされることになるので、第1および第2の両方の受信コイルからの検知された角度が、スロットルポジションセンサにおけるカプラ要素と受信コイルとの間の空隙、温度などの変動による影響を受けないことである。
【0016】
この発明は、以下の詳細な説明を参照しつつ添付の図面に関連付けて読まれるとより良く理解されるだろう。添付の図面においては、同様の参照符号はいくつかの図全体にわたって同様の部品を指している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の好ましい実施例を示す概略的な分解図である。
【図2A】第1の受信コイルを示す平面図である。
【図2B】第2の受信コイルを示す平面図である。
【図3】連結要素についての代替的な形状を示す図である。
【図4A】図2Aと同様であるが、その変形例を示す図である。
【図4B】図2Bと同様であるが、その変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の好ましい実施例の詳細な説明
図1を参照すると、この発明に従ったスロットルポジションセンサ10の分解図が示される。スロットルポジションセンサ10は送信コイル12を含む。この送信コイル12は、好ましくは、高周波交流源14に結合された導電性材料からなる複数の円形ループを含む。送信コイル12は、好ましくは、高周波交流源14によって通電されたときに送信コイル12が高周波電磁場を発生させるように、プリント回路基板上に印刷される。
【0019】
ここで図1、図2Aおよび図2Bを参照すると、スロットルポジションセンサはまた、第1の受信コイル16および第2の受信コイル18を含む。さらに、第1の受信コイル16および第2の受信コイル18もまた、プリント回路基板上に印刷され、送信コイル12と概ね位置合わせされている。
【0020】
図2Aから最もよく分かるように、第1の受信コイル16は4つの別個のループ20、22、24および26を含む。各々のループ20〜26は、第1の受信コイル16の円全体のうち90度を占めている。しかしながら、隣接するループ20〜26同士は、互いとは逆方向に巻かれている。
【0021】
たとえば、第1の受信コイル16のループ20が平面図で見て時計回りの方向に巻かれていると想定すると、ループ22は反時計回りの方向に巻かれ、ループ24は時計回りの方向に巻かれ、ループ26は反時計回りの方向に巻かれる。しかしながら、ループ20〜26は各々、単一の2線出力28が受信コイル16から供給されるように、互いに直列に接続される。
【0022】
受信コイル16における隣接するループ20〜26同士が逆方向に巻かれているので、送信コイルの通電時のこれらのループ20〜26上の誘導電圧は、逆の電圧となるだろう。このため、送信コイル12と4つのすべてのループ20〜26と間の誘導結合が同一であれば、第1の受信コイル16の出力28上の電圧は0になるだろう。
【0023】
第2の受信コイル18は、第2の受信コイル18が45度または180N度(ここで、Nはループ20〜26の数に等しい)だけ回転することを除いては、第1の受信コイル16と実質的に同一である。第2の受信コイル18のループ20〜26は全て、第1の受信コイル16と同様に、第2の受信コイルからの出力30を介して出力される電圧が、第2の受信コイル18の4つのすべてのループ20〜26上の誘導電圧の合計と等しくなるように、互いに直列に電気的に接続される。
【0024】
カプラ要素32(図1)は、公知のスロットルポジションセンサと同様に、受信コイル16および18ならびに送信コイル12と同心である。カプラ要素32はさらに導電性材料で構成されており、このため、送信コイル12を通電させることによって、カプラ要素32内に渦電流が生成され、これにより、送信コイル12と2つの受信コイル16および18との間の誘導結合に影響が及ぼされる。図3に図示のとおり、カプラ要素32の実際の形状は受信コイルにおけるループの数に応じて異なることとなる。
【0025】
たとえば、カプラ要素32は、図3において60、61および62で図示されるような概して三角形を有していてもよい。このような概して三角形のカプラ要素60〜62は、たとえば、第1および第2の両方の受信コイルが3つのローブを有している場合に用いられるだろう。
【0026】
代替的には、カプラ要素32は、図3において65および66で示されるような楕円形状であってもよい。各々の受信コイルが4つのローブを含んでいるようなカプラ要素が用いられてもよい。カプラ要素32についてのさらに他の形状が、図3において67および68で示される。
【0027】
カプラ要素32は、カプラ要素32の回転位置がスロットルペダルの押下げに比例して変化するように、スロットル位置に機械的に接続される。結果として、スロットルペダルを押下げることにより、カプラ要素32が回転させられ、第1の受信コイル16および第2の受信コイル18の両方のループ20〜26における誘導電圧が変化することとなる。
【0028】
より特定的には、カプラ要素32が時計回りの方向に回転するのに応じて、第1の受信コイル16からの出力28上の誘導電圧が正弦関数として変化することとなる。逆に、第2の受信コイル18が第1の受信コイル16から実質的に90度回転するので、第2の受信コイル18からの出力30上の誘導電圧は、カプラ要素の回動角度の余弦関数として変化することとなる。
【0029】
結果として、カプラ要素の回転角度と、これによりスロットルペダルの位置とを得るために、第1の受信コイル16および第2の受信コイル18からのそれぞれの出力28および30上で正弦関数および余弦関数の両方の逆正接を取る必要がある。この逆正接関数は以下のとおり与えられる。
【0030】
【数1】

【0031】
この発明の主要な利点は、コイルとカプラ要素との間の空隙、温度、湿度などの変動によってもたらされる第1の受信コイル16または第2の受信コイル18上の誘導電圧の如何なる不正確性も、正弦関数および余弦関数の両方に関して同じ誤差要因によってスケーリングされ得ることである。結果として、環境条件または製造公差によるこのような如何なる誤差も、自動的に補償され、相殺される。
【0032】
この発明を、各々が4つの受信ループを有する1対の受信コイルを備えたスロットルポジションセンサとして説明してきたが、受信コイルは、偶数であれば如何なる数の受信ループを有していてもよい。たとえば、各々が6つの別個のループを有する第1の受信コイル50および第2の受信コイル52が図4Aおよび図4Bにそれぞれ示される。
【0033】
我々の発明をここまで記載してきたが、その多くの変形例が、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の精神から逸脱することなく、本発明が属する技術分野の当業者にとって明らかになるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリポジションセンサであって、
高周波電流源によって通電されるよう適合された送信コイルと、
前記送信コイルに隣接し、軸を中心として同心状に配置された第1の受信コイルとを含み、前記第1の受信コイルは偶数のN個のループを有し、第1の受信コイルの有する隣接するループは逆方向に巻かれ、前記ロータリポジションセンサはさらに、
前記送信コイルに隣接し、前記軸を中心として同心状に配置された第2の受信コイルを含み、前記第2の受信コイルはN個のループを有し、第2の受信コイルの有する隣接するループは逆方向に巻かれ、前記第2の受信コイルは、180N/度だけ前記第1の受信コイルから角度を付けてオフセットされ、前記ロータリポジションセンサはさらに、
前記カプラが前記第1および第2の受信コイルの少なくとも一部の上に重なるように、前記軸を中心として回転可能に装着された導電性材料からなる非円形カプラと、
前記第1および第2の両方の受信コイルからの出力信号を処理し、前記カプラの回転位置を表わす出力信号を生成する回路とを含む、ロータリポジションセンサ。
【請求項2】
前記送信コイルは、前記第1および第2の受信コイルに同心状に巻かれる、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
Nは4と等しい、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
Nは6と等しい、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記カプラは三角形である、請求項4に記載の発明。
【請求項6】
前記カプラは楕円形である、請求項3に記載の発明。
【請求項7】
前記回路は、前記第1および第2の受信コイルからの出力信号の逆正接を計算する、請求項1に記載の発明。

【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図1】
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【公表番号】特表2013−518247(P2013−518247A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549437(P2012−549437)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000100
【国際公開番号】WO2011/089519
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(508000593)ケイエスアール テクノロジーズ カンパニー (12)
【Fターム(参考)】