説明

誘導加熱容器

【課題】高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器であって、誘導加熱発熱体を発熱させて被加熱物を加熱するに際して、容器の接地面が水平になっていなくても、機器の操作によることなく、所定時間経過後に自動的に加熱を終わらせることができる誘導加熱容器を提供する。
【解決手段】液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体2と、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体3と、被加熱物よりも低比重で、かつ、平坦な天面部40を有する保持部材4とを備えて構成し、誘導加熱発熱体3を、保持部材4に保持された状態で、容器本体2の内底面2aに部分的に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルにより発生する高周波磁界によって渦電流が誘起され、そのジュール熱により発熱する誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス機器が主流であった加熱調理機器に代わって、一般に、電磁調理器と称される加熱調理機器が、安全性、清潔性、利便性、経済性などの観点から、飲食業などにおける業務用のみならず、一般家庭においても広く普及するようになってきている。
【0003】
しかしながら、この種の電磁調理器は、内部に備えた電磁誘導加熱コイルにより高周波磁界を発生させ、誘起された渦電流によって生じるジュール熱により加熱対象物を加熱するというものである。このため、炎を使わずに加熱調理を行うことができる反面、その原理上、使用できる調理器具が限られてしまい、鉄、鉄ホーローなどの磁性金属からなる専用の調理器具を用いなければならないという不利があった。
【0004】
このような状況下、上記した電磁調理器の不利を解消するものとして、例えば、特許文献1には、蒸し鍋用土鍋の底に、発熱体としてアルミニウムや銀の薄い金属層を配して電磁調理器で蒸し料理ができるようにした土鍋が提案されている。
【特許文献1】特開2002−238738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、食のインスタント化が進み、電子レンジで加熱するだけで食することができるようにされた種々の食品が、冷凍又は冷蔵されて市場に流通している。このような流通形態において、包装容器をそのまま調理容器として使用できれば便利であり、また、シューマイに代表されるような蒸し料理にあっては、本来の風味を損なわないためにも、電子レンジで加熱するのではなく、蒸気によって加熱するのが好ましい。このため、包装容器をそのまま蒸し器として利用できれば、非常に手軽で、便利である。
【0006】
しかしながら、特許文献1には、電磁調理器で蒸し料理ができるようにした土鍋が提案されているものの、特許文献1に記載されているような蒸し鍋用土鍋は、上記のような用途に利用するには不向きである。
また、電磁調理器により包装容器を蒸し器として利用するにあたり、機器の操作によることなく、収容された調理対象に応じて、容器ごとに設定された時間で加熱処理を自動で終わらすことができれば、加熱不足や、過剰加熱を未然に防いで、常に適切な条件で調理対象を蒸して加熱処理できるようになることが期待されるが、特許文献1では、そのような検討はなされていない。
【0007】
ところで、本発明者らが鋭意検討したところ、上記の用途において、発熱体を水に浸漬させた状態で発熱させ、水を加熱すると、水の減少にともなって発熱体の一部が水面から露出するが、このとき、その露出した部位が過剰に発熱することで、発熱体に破断が生じ、これによって電磁調理器の安全機構が働いて、加熱処理を自動で終わらすことができることを見出した。
【0008】
しかしながら、本発明者らが、さらなる鋭意検討を重ねたところ、例えば、電磁調理器を設置した台が傾いているなどして、容器の接地面が水平になっていない場合には、水面から露出する部分が一意に定まらず、発熱体が破断する部位や、破断するタイミングが一定しないという問題があるという知見を得るに至った。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器であって、誘導加熱発熱体を発熱させて被加熱物を加熱するに際して、容器の接地面が水平になっていなくても、機器の操作によることなく、所定時間経過後に自動的に加熱を終わらせることができる誘導加熱容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る誘導加熱容器は、液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体と、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体と、平坦な天面部を有する保持部材と、を備え、前記誘導加熱発熱体が、前記保持部材に保持された状態で、前記容器本体の内底面に部分的に接着されている構成としてある。
【0011】
このような構成とした本発明に係る誘導加熱容器によれば、容器本体内に収容された被加熱物中に保持部材がたゆたうとともに、保持部材が被加熱物の液面に対して傾いていても、被加熱物の液面の低下に伴って保持部材の天面が液面と平行となるように、その傾きが補正され、保持部材に保持された誘導加熱発熱体は、その全体がほぼ均等に液面上に露出していくようになる。
その結果、誘導加熱発熱体の破断部位や破断するタイミングを一意に定めて、容器本体に収容する被加熱物の量などを調整することで、機器の操作によらずに、所定時間経過後に自動的に被加熱物の加熱を終わらせることが可能になる。
【0012】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、前記誘導加熱発熱体が、選択的に過剰に発熱するようにされた部位を有している構成とすることができる。
このような構成とすれば、当該部位が他の部位よりも確実に優先して破断するようになり、誘導加熱発熱体の破断部位や破断するタイミングを一意に定めることが容易となる。
【0013】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、被加熱物中に保持部材がたゆたうようにするにあたり、加熱対象となる被加熱物を想定して、前記保持部材が、前記被加熱物よりも低比重の材料を用いて形成された構成とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、前記保持部材が、互いに嵌合する環状の外周部を有する上側保持部と下側保持部との間に、誘導加熱発熱体を収容するようになっており、前記天面部を前記上側保持部に設けるとともに、前記下側保持部には、複数のリブを放射状に形成した構成とすることができる。
このような構成とすれば、下側保持部に形成したリブにより誘導加熱発熱体の下面側が支持されるようにするとともに、被加熱物が加熱され、沸騰する際に発生する気泡を逃がすための通路が、容器本体の内底面と誘導加熱発熱体との間に形成される。
【0015】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、前記誘導加熱発熱体3に、前記リブの形状に対応させて折り癖を付けた構成とすることができる。
このような構成とすれば、誘導加熱発熱体の剛性が向上するだけでなく、リブが形成されていない部分に位置する誘導加熱発熱体が、容器本体の内底面に沿って面接し、誘導加熱発熱体の多くの部分が、容器本体の内底面に沿うように配されるようになる。このため、電磁調理器の鍋釜確認機能に誘導加熱発熱体が認識されずに、誘導加熱発熱体が加熱されなくなってしまうという不都合を有効に回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の誘導加熱容器は、容器の接地面が水平になっていなくても、機器の操作によらずに、所定時間経過後に自動的に被加熱物の加熱を終わらせることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、図1は、本実施形態に係る誘導加熱容器の概略を示す平面図であり、図2、図3、図4は、それぞれ図1のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図である。
【0018】
図1に示す容器1は、水などの液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体2と、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体3と、平坦な天面部40を有する保持部材4とを備えて構成されている。そして、誘導加熱発熱体3は、保持部材4に保持された状態で、容器本体2の内底面2aに部分的に接着されている。
なお、図1中、容器本体2の内底面2aと誘導加熱発熱体3との接着部位を円形の鎖線で囲むとともに、符号3aで示すが、当該接着部位3aは、これに限定されない。
【0019】
図示する例において、容器本体2は、内底面2aの周りを囲むようにして立設された側壁部2bを有している。容器本体2の内底面2aは、図示するような円形状とするほか、矩形状とするなど、任意の形状とすることができる。
容器1は、一般に、市販の電磁調理器の上に置いて使用されることから、容器本体2の大きさは、使用する電磁調理器が備える加熱コイルの大きさに応じて設定することができる。例えば、市販の家庭用電磁調理器が備える一般的な加熱コイルは、内径5cm程度、外径20cm程度であり、業務用のものであれば、もっと大きいものもあるが、使用が想定される電磁調理器に応じて大きさを適宜定めておくものとする。
【0020】
また、図示する例では、容器本体2の開口部側に、側壁部2bの内周縁の全周に沿って段部2cを設けているが、この段部2cには、容器本体2の開口部を覆う蓋体やトレーなどを支持させる。
一方、容器本体2の外側の底面には、複数の凸部2dを設けてある。このような凸部2dは、通気性を良くして、容器本体2と電磁調理器との間に不要な熱がこもらないようにするとともに、例えば、被加熱物が吹きこぼれて容器本体2と電磁調理器との間に入り込んだときに、誘導加熱発熱体3に作用する斥力によって、容器1が電磁調理器上を容易に動いて効果的な誘導加熱ができなくなってしまうという不具合を回避する上でも有効である。
【0021】
容器本体2は、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂材料、さらには、紙や、ガラスなど、種々の汎用の非磁性材料にて形成することができる。これらの材料にて容器本体2を形成することにより、電磁調理器で使用可能な誘導加熱容器を安価に提供することが可能となる。
【0022】
また、誘導加熱発熱体3としては、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルから発生する高周波磁界により渦電流が誘起され、その電気抵抗によりジュール熱が生じて発熱し得る導電性材料、例えば、アルミニウム,ニッケル,金,銀,銅,白金,鉄,コバルト,錫,亜鉛など、又はこれらの合金、あるいは、導電性を付与した樹脂フィルムや紙などの導電性材料を用いることができる。
【0023】
より具体的には、例えば、金属材料としてアルミニウムを用いる場合、誘導加熱発熱体3は、0.10〜100μm程度の厚みのアルミニウム箔を用いて形成することができる。誘導加熱発熱体3は、容器本体2の内底面2aに部分的に接着されるが、このときヒートシールによる接着が可能となるように、容器本体2に用いた材料に対してヒートシール性を有する樹脂層をラミネートすることもできる。
なお、容器本体2の内底面2aに誘導加熱発熱体3を部分的に接着するには、ヒートシールのほか、接着テープや接着剤などを用いて接着してもよい。
【0024】
また、図示する例において、保持部材4は、互いに嵌合する上側保持部4aと下側保持部4bとの間に、誘導加熱発熱体3を収容するようになっている。
ここで、図5は、誘導加熱発熱体3と保持部材4の一例を示す分解斜視図である。保持部材4の上側保持部4aは、上面が平坦とされた天面部40と、天面部40の外周縁に沿って環状に垂下する外周部41を有している。下側保持部4bは、上側保持部4aの外周部41の内側に嵌合する外周部42と、放射状に形成された複数(図示する例では八つ)のリブ43を有している。
保持部材4の下側保持部4bに形成されるリブ43は、誘導加熱発熱体3を下面側から支持するとともに、被加熱物が加熱され、沸騰する際に発生する気泡を、容器本体2の内底面2aと誘導加熱発熱体3との間から逃がすための通路を形成する役目も果たしている。
【0025】
誘導加熱発熱体3は、このような上側保持部4aと下側保持部4bとの間に収容されるようにして保持されるが、このとき、誘導加熱発熱体3には、図5に示すように、リブ43の形状に対応させて折り癖を付けておくのが好ましい。このようにすることで、誘導加熱発熱体3の剛性が向上することに加え、リブ43が形成されていない部分に位置する誘導加熱発熱体3が、容器本体2の内底面2aに沿って面接するようにした状態で、容器本体2の内底面2aに誘導加熱発熱体3を部分的に接着することができる(図2、図3、図4参照)。
その結果、誘導加熱発熱体3の多くの部分が、容器本体2の内底面2aに沿うように配されることになり、電磁調理器の鍋釜確認機能に誘導加熱発熱体3が認識されずに、誘導加熱発熱体3が加熱されなくなってしまうという不都合を有効に回避することができる。
【0026】
また、誘導加熱発熱体3は、例えば、図6などに示すようにして形成することができる。
すなわち、図6(a)に示すようなトラック形状にアルミニウム箔30を打ち抜き、山折り線MLと谷折り線VLとにより、図6(b)に示すように立ち上がり片310,320が形成されて円形状となるように折り曲げる。次に、図6(c)に示すように、一方の立ち上がり片310の上縁を切断して、図7(a),(b),(c)に順に示すように、切断した上縁側を図中矢印方向に折り返していき、端縁折り返し部31とする。次いで、図8(a)中の矢印方向に他方の立ち上がり片320を拡げながら、図8(b)に示すように、誘導加熱発熱体3の他の部位と折り重ねて重畳部32とする。そして、前述したように、保持部材4の下側保持部4aに形成されたリブ43の形状に対応させて折り癖を付けることによって、図5に示すような誘導加熱発熱体3が形成される。
なお、図7は、図6(c)のD−D断面に相当する部位を示し、図8は、同E−E断面に相当する部位を示している。
【0027】
このようにして誘導加熱発熱体3を形成すると、端縁折り返し部31の切断された端面31a,31b又はその近傍との間に、誘導加熱発熱体3に誘起された渦電流が流れる電流路が形成されることとなり、この部位における抵抗値が最大となる。このため、端縁折り返し部31での発熱量が最も大きくなり、選択的に過剰に発熱するようになる。そして、被加熱物中に浸漬されている間は被加熱物に熱が奪われていくが、被加熱物から露出すると、その過剰な発熱に伴って、端面31a,31b又はその近傍で放電し、放電による溶断によって破断が生じることとなり、これによって安全機構が働いて電磁調理器が停止する。
なお、放電によって生じる火花や、誘導加熱発熱体3の破片の飛散による影響を考慮して、図示する例では、端面31a,31b又はその近傍を内側に折り返している。
【0028】
また、保持部材4に保持された誘導加熱発熱体3は、容器本体2の内底面2aに部分的に接着されている。このため、水などの液状の被加熱物を容器本体2内に収容したときに、保持部材4に浮力が作用しても、保持部材4は液面上に浮上することなく、被加熱物中にたゆたうようになる。
【0029】
ここで、保持部材4は、容器本体2と同様の材料を用いて形成することができるが、被加熱物中に保持部材4がたゆたうようにするにあたり、保持部材4を形成する材料には、比重1以下の材料を用いるのが好ましい。
特に、容器1に収容されて加熱される被加熱物は、通常、水又は多量の水を含有するものとされるが、保持部材4を形成する材料には、加熱対象となる被加熱物を想定して、被加熱物よりも低比重のものを用いるのが好ましい。例えば、被加熱物が水(比重1.0)である場合、ポリプロピレン(比重0.9程度)、低密度ポリエチレン(比重0.91〜0.94程度)などにより保持部材4を形成するのが好適である。
なお、被加熱物を加熱するに際して、保持部材4は、斥力を受けた誘導加熱発熱体3によって押し上げられることになるため、加熱時に、保持部材4が被加熱物中にたゆたうことの妨げにならなければ、保持部材4を形成する材料の比重は、被加熱物の比重と同程度以上でもよい。例えば、水を被加熱物とする場合であっても、ポリエチレンテレフタレートやポリアミドなどのような比重1.2〜1.4程度のものも、比重が極端に大きくない限り、保持部材4を形成する材料として使用可能である。
【0030】
そして、電磁調理器を設置した台が傾いているなどして、電磁調理器上に容器本体2が傾いて置かれ、被加熱物の液面に対する傾きが保持部材4にも生じている場合であっても、被加熱物中にたゆたう保持部材4が平坦な天面部40を有することにより、図9に示すように、被加熱物が加熱されて沸騰、蒸発して、その液面が下がってくると、保持部材4の天面部40が液面と平行となるように、保持部材4の傾きが補正される。
なお、図9は、保持部材4の傾きが補正される様子を示すイメージ図であり、図9(a)は、容器本体2中に十分な量の被加熱物がある状態を示し、図9(b)は、被加熱物の液面が下がって保持部材4の傾きが補正された状態を示しているところ、いずれの図においても、容器本体2の傾きを誇張している。また、保持部材4の下側保持部4aは、容器本体2の内底面2aから所定の距離だけ離間させておくが、このときの離間距離は、誘導加熱発熱体3が撓んで保持部材4の傾きを補正できる程度に設定する。
【0031】
これによって、被加熱物の液面が下がってきたときに、保持部材4に保持された誘導加熱発熱体3は、その全体がほぼ均等に液面上に露出していくようになる。そして、選択的に過剰に発熱するようにされた端縁折り返し部31が、確実に他の部位よりも優先して破断するようになり、誘導加熱発熱体3の破断部位や破断するタイミングを一意に定めることが容易となる。
【0032】
ここで、沸騰している被加熱物の液面は、実際には、激しく飛沫が上がっており、天面部40の下面側に達した飛沫は、その下方に位置する誘導加熱発熱体3にかかることになる。そして、端縁折り返し部31に飛沫がかかると、端縁折り返し部31を選択的に過剰に発熱させる上での妨げになってしまう。このため、図示する例では、天面部40に切り欠き40aを設けることで、端縁折り返し部31に飛沫がかからないようにしている。また、切り欠き40aを設けることにより、誘導加熱発熱体3に形成した端縁折り返し部31と天面部40との干渉を避けることもできる。
【0033】
以上のような容器1は、電磁調理器の上に置いて使用されるが、例えば、所定量の水を容器本体2に注入して、誘導加熱発熱体3が水に浸されるようにしつつ、容器本体2の段部2cにトレーを支持させる。そして、このトレー上に調理対象を載置し、容器本体2の開口部を蓋体で覆ってから、誘導加熱発熱体3が水と接した状態で電磁調理器を作動させ、誘導加熱発熱体3を発熱させる。これにより、誘導加熱発熱体3に接している水が加熱されて沸騰し、容器内に発生する蒸気により調理対象を蒸すことができる。
【0034】
このように、容器1は、水を注入するだけで、電磁調理器により蒸し器として利用することができるが、使用に際して容器内に蒸気が発生すると、これに伴って容器本体2に収容された水が減少する。そして、水が減少して、その水面が下がっていくと、誘導加熱発熱体3が、水面上に露出していく。このとき、水面に対して保持部材4が傾いていても、水中にたゆたう保持部材4の天面40が水面と平行となるように、保持部材4の傾きが補正される。
【0035】
このため、保持部材4に保持された誘導加熱発熱体3は、その全体がほぼ均等に水面上に露出して、選択的に過剰に発熱するようにされた端縁折り返し部31が破断し、安全機構が働いて電磁調理器が停止するようになる。そして、調理対象を蒸すのに要する時間に応じて、容器本体2に注入する水の量などを適宜調整することにより、誘導加熱発熱体3を発熱させてから、誘導加熱発熱体3が破断するまでの時間を管理して、電磁調理器の操作によらずとも、所定時間経過後に、加熱処理を自動的に終わらせることができる。
したがって、収容された調理対象に応じて、容器ごとに設定された時間で加熱処理を自動で終わらすことができ、加熱不足や、過剰加熱を未然に防いで、常に適切な条件で調理対象を蒸して加熱処理できる。
【0036】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0037】
例えば、前述した実施形態では、誘導加熱発熱体3に端縁折り返し部31を形成し、この端縁折り返し部31が他の部位よりも過剰に発熱するようにしているが、選択的に過剰に発熱するようにされた部位の具体的な形態は、これに限定されるものではない。
すなわち、当該部位は、(1)誘導加熱発熱体3の中心から外周縁までの長さを部分的に短くし、この部位での渦電流密度が高くなるようにして、選択的に過剰に発熱するようにしたもの、(2)誘導加熱発熱体3の所定の部位に電気抵抗の大きい金属片を貼り付けるなどして、当該部位が選択的に過剰に発熱するようにしたもの、(3)誘導加熱発熱体3の一部を立ち上げて、被加熱物の液面が下がってきたときに、他の部位よりも先に液面上に露出して、被加熱物により熱が奪われ難くなるようにすることで、選択的に過剰に発熱するようしたものなど、誘導加熱発熱体3の破断部位や破断するタイミングを一意に定めることができれば、種々の形態とすることができる。
【0038】
また、前述した実施形態では、保持部材4は、互いに嵌合する上側保持部4aと下側保持部4bとの間に、誘導加熱発熱体3を収容するようになっているが、被加熱物中にたゆたう保持部材4が、被加熱物の液面の低下に伴って保持部材4の天面部40が液面と平行となるように、保持部材4の傾きを補正できるようになっていれば、保持部材4の具体的な形態は特に限定されない。
【0039】
すなわち、被加熱物の液面の低下に伴って保持部材4の天面部40が液面と平行となるように、保持部材4の傾きを補正できるだけの十分な面積が天面部40に確保されていれば、天面部40の形状を含め、保持部4は種々の形態を採用することができる。
例えば、前述した実施形態では、容器本体2への収容性を考慮して、天面部40は容器内方に張り出すように形成してあるが、これとは逆に、容器外方に向かって張り出すように形成してもよい。
また、前述した実施形態では、切り欠き40aを除いて天面部40の幅をほぼ一定としているが、必要に応じて天面部40の幅を変化させてもよく、被加熱物の対流を考慮して、天面部40には、必要に応じて対流孔を穿設してもよい。さらに、上側保持部4aに誘導加熱発熱体3を直接保持させて、下側保持部4bを省略することも可能である。
【0040】
また、前述した実施形態では、被加熱物として水を容器本体2に収容し、容器1を蒸し器として使用して、調理対象を蒸して加熱処理する例を示したが、被加熱物を直接に加熱するための加熱容器として使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、市販の電磁調理器により誘導加熱発熱体を発熱させて、被加熱物を加熱する誘導加熱容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る誘導加熱容器の第一実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】誘導加熱発熱体と保持部材の一例を示す分解斜視図である。
【図6】誘導加熱発熱体の一例を示す説明図である。
【図7】図6(c)のD−D断面に相当する部位を示す説明図である。
【図8】図6(c)のE−E断面に相当する部位を示す説明図である。
【図9】保持部材の傾きが補正される様子を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0043】
1 容器
2 容器本体
2a 内底面
3 誘導加熱発熱体
31 端縁折り返し部
4 保持部材
4a 上側保持部
4b 下側保持部
40 天面部
43 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体と、
高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体と、
平坦な天面部を有する保持部材と、
を備え、
前記誘導加熱発熱体が、前記保持部材に保持された状態で、前記容器本体の内底面に部分的に接着されていることを特徴とする誘導加熱容器。
【請求項2】
前記誘導加熱発熱体が、選択的に過剰に発熱するようにされた部位を有している請求項1に記載の誘導加熱容器。
【請求項3】
前記保持部材が、前記被加熱物よりも低比重の材料を用いて形成された請求項1又は2のいずれかに記載の誘導加熱容器。
【請求項4】
前記保持部材が、互いに嵌合する環状の外周部を有する上側保持部と下側保持部との間に、誘導加熱発熱体を収容するようになっており、
前記天面部を前記上側保持部に設けるとともに、
前記下側保持部には、複数のリブを放射状に形成した請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱容器。
【請求項5】
前記誘導加熱発熱体3に、前記リブの形状に対応させて折り癖を付けた請求項4に記載の誘導加熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−34336(P2009−34336A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201201(P2007−201201)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】