説明

誘導可能な心臓保護のためのデバイス、ベクターおよび方法

虚血を検出または治療するために有用な、ベクター、埋込型デバイスを有するシステム、および方法を提供する。一部の局面において、本発明はベクター系を提供し、このベクター系は、a)正常酸素圧条件下で不安定であり、低酸素条件下で安定であり、特定のDNA配列を結合する、遺伝子産物のための第1のオープンリーディングフレームに操作可能に連結される、臓器特異的、組織特異的、または細胞特異的な、あるいはエネルギー調節された、転写調節エレメントを含む、転写調節領域を備える第1のベクターと、b)治療用遺伝子産物、心臓保護遺伝子産物、またはバイオマーカ−のための第2のオープンリーディングフレームに操作可能に連結される、該特定のDNA配列を含む、転写調節領域を備える第2のベクターと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
優先権の利益は、本願によって2006年10月2日に出願された米国特許出願第11/541,757号(これは、参考として本明細書に援用される)に対して主張される。
【背景技術】
【0002】
心臓は、人の循環系の中心である。それは、2つの主要なポンプ機能を行う電気機械を含む。心臓の左部分は、酸素に対する代謝要求を体の臓器に提供するために、肺から酸素化血液をくみ上げ、臓器に送り出す。心臓の右部分は、臓器から脱酸素化血液をくみ上げ、血液が酸素化される肺へ送り出す。酸素に対する体の代謝要求は、体の身体活動レベルに伴って増加する。ポンプ機能は、心筋(心臓の筋肉)の収縮によって行われる。通常の心臓では、心臓の天然ペースメーカである洞房結節は、電気伝導系を通って心臓の種々の領域に伝播し、これらの領域における心筋組織を活性化させる、活動電位として周知の電気的刺激を生成する。通常の周波数伝導系での活動電位の伝播における調整された遅延によって、心臓の種々の領域は、ポンプ機能が効果的に行われるように、同時に収縮する。
【0003】
遮断またはそうでなければ損傷した周波数伝導系によって、心筋は、遅すぎる、速すぎる、不規則な、または非同期のリズムで収縮する。そのような異常リズムは、概して、不整脈として知られる。不整脈によって、心臓のポンプ効果が低下し、それにより、体への血流が減少する。劣化した心筋は、収縮性が低下し、血流の減少も引き起こす。心不全患者は、通常、損傷した周波数伝導系および劣化した心筋の両方を患う。血流の減少によって、種々の体器官への血液供給不全が生じ、これらの臓器は適切に機能しなくなり、種々の症状が引き起こされる。例えば、急性非代償性心不全を患う患者において、腎臓への血液供給不全によって、代償不全と言及される状態である、肺および体の末梢部での体液貯留および浮腫が引き起こされる。効果的な治療なしでは、急性非代償性心不全によって、心臓血管および総体的な健康の急速な悪化が引き起こされ、寿命が顕著に短くなる。不整脈および心不全に対する治療としては、これらに限定されないが、ペーシングおよび除細動療法等の電気療法、薬物療法、および遺伝子に基づく療法を含む生物学的療法を含む。
【0004】
遺伝子に基づく療法としては、標的細胞への治療遺伝子の送達、および場合によっては、調節可能なシステムの使用を含む。ベクターにおける配列の発現を必要とする遺伝子に基づく療法では、プロモーターは、発現する配列に連結する。強いウイルスプロモーターは、広範な組織および細胞において高レベルの発現を駆動することができるが、構成的発現は、開ループ系であり、コードされた遺伝子産物は、細胞毒性または耐性、または負帰還による発現の下方調節を誘導する場合がある。
【0005】
標的遺伝子の発現を調節するための一戦略は、内在性調節可能エレメントを使用し、他の戦略は、外因性誘導的遺伝子発現系を使用する。例えば、熱ショック誘導遺伝子座は、哺乳動物細胞における異種遺伝子の発現を調節するために使用され(非特許文献1;非特許文献2)、赤血球生成促進因子遺伝子からの低酸素誘導シス作用配列は、低酸素誘導転写因子(HIF−I)による転写応答を可能にする(非特許文献3)。しかしながら、内在性プロモーターに基づく多くの調節可能なシステムは、弱い誘導および高い基底発現の問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wurmら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:5414
【非特許文献2】Bovenbergら、Mol.Cell.Endocrinol.(1990)74:45
【非特許文献3】Wangら、Curr.Op.Hematol.(1996)3:156
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
必要とされるのは、虚血事象に対する迅速な診断システム、および虚血事象の検出によって自動的に誘導される療法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、虚血、例えば、心筋虚血(例えば、急性心筋梗塞)または心不全に関連する虚血を迅速に検出する、ベクター、方法、およびシステムを提供し、任意で、心臓保護または治療用遺伝子産物、例えば、細胞が虚血性障害を起こす危険性がある、例えば、心筋の細胞を救う、または保護することができる遺伝子産物の発現を含む治療を提供する。遺伝子療法は、任意で、電気療法(例えば、神経刺激が迷走神経へ送達される迷走神経刺激療法(VST))または薬物療法と組み合わされてもよい。ベクター、方法、およびシステムは、低酸素安定遺伝子産物、およびそれにより調節された組み換え遺伝子、例えば、HIF1α、またはサイクリックAMP応答エレメント結合(CREB)タンパク質等の低酸素誘導因子(HIF)によって誘導された遺伝子を使用する。組み換え遺伝子は、低酸素安定遺伝子産物を結合するその転写調節領域において特定のDNA配列を有する。体内でのそのような組み換え遺伝子の使用は、例えば、診断において有用な、虚血に対する特定の位置情報を提供するか、または虚血事象の後、例えば、直後の特定の位置での遺伝子療法の誘導を提供してもよい。
【0009】
一実施形態において、ベクター系は、高い特異性および即効作用で、疾患を検出および/または治療するために使用される。ベクター系は、遺伝子産物のための第1のオープンリーディングフレーム(「発現カセット」)に操作可能に連結される、臓器特異的、組織特異的、または細胞特異的な、転写調節エレメントを有する転写調節領域を備える第1のベクターを含んでもよい。他の実施形態において、ベクター系は、エネルギー、例えば、遺伝子産物のための第1のオープンリーディングフレームに操作可能に連結される、電気的ペーシング、光、または磁場によって調節される転写調節領域を備える第1のベクターを含んでもよい。一実施形態において、エネルギー調節エレメントは、誘導エレメントである。遺伝子産物は、正常酸素圧条件下で不安定であり、低酸素条件下で安定であり、特定のDNA配列を結合する。一実施形態において、転写調節領域におけるプロモーターは、構成的に発現される。臓器、組織、または細胞特異的な、あるいはエネルギー調節された、転写調節エレメントは、プロモーターであってもよい。ベクター系は、治療用遺伝子産物、心臓保護遺伝子産物、またはバイオマーカ−のための第2のオープンリーディングフレームに操作可能に連結される、特定のDNA配列備える、転写調節領域を備える第2のベクターも含んでもよい。臓器、組織または細胞特異的な、あるいはエネルギー調節された、転写調節エレメント、例えば、心臓または血管系において発現される転写調節エレメントの結果として、虚血事象の検出、虚血事象の位置の検出、その臓器、組織、または細胞における虚血に対する遺伝子療法、またはその任意の組み合わせが得られてもよい。さらに、検出、および任意で、虚血事象の位置、またはその治療は、特定の病態生理学的状態、例えば、虚血、または糖尿病患者においてのみ行われる。例えば、血糖値のかなりの変動が見られる患者において虚血を検出する能力によって、糖尿病による虚血性障害の検出および/または治療が提供される。一実施形態において、例えば、心内膜層における虚血等の心不全患者においては、正常以下のレベル酸素しか心筋に利用できないため、ベクター系は、心不全、例えば、拡張型心筋症に関連する心臓リモデリングを抑制または治療するために使用される。他の実施形態において、ベクター系は、例えば、心臓リモデリングおよび/または拡張を予防または回復に向かわせるために、慢性心不全を抑制または治療するために使用される。一実施形態において、正常酸素圧不安定および低酸素安定遺伝子産物に対する特定のDNA配列を有する第2のベクターにおける転写調節領域は、例えば、虚血事象後約1から2時間で、対象の連結されたオープンリーディングフレームの発現を増加させるため、虚血を迅速に検出し、任意で、心筋梗塞後の心臓保護を提供するために有用である。そのため、ベクター系によって、虚血の迅速な検出、および任意で、例えば、心臓等の虚血部位において、選択的な方法で対象のオープンリーディングフレームの自動的な発現の増加が可能になる。本発明のベクター、方法、およびシステムは、任意の臓器または組織において虚血を診断、または予防、抑制、または治療することに適用でき、血行再建術、または虚血再かん流傷害から心臓(または他の臓器または組織)を保護するための他の療法と併用されてもよい。一実施形態において、システムは、遺伝子の力および埋込型デバイスを組み合わせて、心虚血を診断、または抑制または治療する。
【0010】
そのため、本発明は、虚血状態応じて、空間的および時間的検出、および任意で、体内での細胞の治療を提供する。一実施形態において、本発明のベクター系におけるベクターの1つは、例えば、細胞間管を介して、または分泌、または細胞外空間への所望の遺伝子産物の放出を引き起こす他のメカニズムによって、ベクター系を有する細胞および/または隣接する細胞における虚血性障害を抑制するために有用な1つ以上の遺伝子産物をコードする。
【0011】
本発明は、ベクター系を有する単離(外因性)哺乳動物細胞も提供する。一実施形態において、哺乳動物細胞は、幹細胞である。他の実施形態において、哺乳動物細胞は、自己細胞である。一実施形態において、哺乳動物細胞は、例えば、注入または埋込型デバイスを介して、宿主哺乳動物生物に導入されてもよい。
【0012】
本発明は、少なくとも2つのベクターを含有する組成物を有するシステムをさらに提供し、1つのベクターは、正常酸素圧条件下で不安定であり、低酸素条件下で安定であり、特定のDNA配列を結合する、遺伝子産物のための第1のオープンリーディングフレームに操作可能に連結される臓器、組織、または細胞特異的な、あるいはエネルギー調節された、転写調節エレメントを含む、転写調節領域を有する。他のベクターは、治療または心臓保護遺伝子産物のための第2のオープンリーディングフレームに連結する特定のDNA配列を有する転写調節領域、および電気または薬物療法に対する埋込型デバイスを有する。組成物は、デバイス、例えば、埋込型遺伝子送達デバイス、または注射針が付いているか、または付いていない経皮的カテーテルの一部を形成するか、またはそれによって送達されてもよい。一実施形態において、治療または心臓保護遺伝子産物の発現に伴う埋込型デバイスからのペーシングパルスは、有益な効果、例えば、システムまたはデバイスを有する哺乳動物において相加的または相乗的である効果を提供する。
【0013】
ベクターを使用する方法も提供される。一実施形態において、本発明のベクター系は、ベクターの1つが、治療または心臓保護遺伝子産物をコードする、哺乳動物、例えば、心虚血の危険性がある哺乳動物に導入される。有効量での哺乳動物における遺伝子産物の発現は、虚血を抑制または治療する。一実施形態において、哺乳動物は、電気療法、例えば、ペーシングも受ける。他の実施形態において、本発明のベクター系は、ベクターの1つが、分泌型バイオマーカ−、またはアンカータンパク質等の細胞結合型タンパク質等のバイオマーカ−をコードする、哺乳動物に導入される。一実施形態において、哺乳動物におけるバイオマーカ−または細胞結合型タンパク質の存在または位置が検出される。例えば、分泌型バイオマーカ−の存在は、生理液において検出されてもよいか、またはアンカータンパク質等の細胞結合型タンパク質の位置は、タンパク質に対する放射性リガンドを投与した後に検出されてもよい。
【0014】
一実施形態において、ベクターは、虚血の危険性がある哺乳動物に導入(投与)される。他の実施形態において、ベクターは、心不全を有すか、または危険性がある哺乳動物に導入される。他の実施形態において、ベクターは、冠動脈疾患、不安定プラーク、または発作を有するか、または危険性がある哺乳動物に導入される。一実施形態において、哺乳動物に導入されるベクターは、同じ分子、例えば、プラスミド等のDNA分子上にある。一実施形態において、ベクターは、哺乳動物への導入の前に、外因性ドナー細胞、例えば、自己ドナー幹細胞に導入される。一実施形態において、ベクターは、心内または静脈内投与を介して哺乳動物に導入される。一実施形態において、ベクターは、組織または臓器、例えば、心臓に導入される。例えば、ベクターは、組織または臓器に注入されてもよい。他の実施形態において、ベクターを有する哺乳動物は、電気刺激、例えば、神経刺激またはペーシングパルスを受けるか、薬剤を投与されるか、またはその組み合わせも受けてよい。一実施形態において、埋込型デバイスは、ベクターを有する哺乳動物に電気刺激または1つ以上の薬剤、またはその組み合わせを送達する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のシステムおよび方法において有用な例示的なベクター系の概略図である。
【図2】ベクター系とデバイス療法の併用の説明図である。
【図3】デバイス療法を送達するための心臓保護デバイスのある実施形態を示すブロック図である。
【図4】デバイス療法を送達するための心臓保護デバイスの特定の実施形態を示すブロック図である。
【図5】心臓保護デバイスおよびシステムが動作する環境の一部を含むシステムのある実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明において、付随図面を参照すると、付随図面は、本明細書の一部を形成し、本発明が履行されてもよい特定の実施形態の説明として示される。これらの実施形態は、当業者が本発明を履行できるように十分詳細に記載され、当然のことながら、実施形態は、組み合わされてもよいか、または他の実施形態は、利用されてもよく、構造的、論理的、および電気的変化を、本発明の精神および範囲を逸脱せずに加えてもよい。以下の詳細な記載は、実施例を提供し、本発明の範囲は、添付の請求項、およびそれらの同等物によって定義される。
【0017】
本開示における「ある」、「一」、または「種々の」実施形態への言及は、同じ実施形態への言及である必要はなく、そのような言及は、1つ以上の実施形態を意図することに注意すべきである。
【0018】
定義
「ベクター」または「構成物」(時々、遺伝子送達または遺伝子導入「媒体」と言及される)は、体外または体内において宿主細胞へ送達されるポリヌクレオチドを備える高分子、または分子の複合体を言及する。送達されるポリヌクレオチドは、遺伝子療法を対象とする配列を包含してもよい。ベクターは、例えば、トランスポゾン、および他の部位特異的可動エレメント、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、乳頭腫ウイルス属、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、泡沫状ウイルス、およびレトロウイルスベクターを含み、偽型ウイルス、リポソーム、および他の脂質含有複合体、および宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介することが可能な他の高分子複合体、例えば、DNAでコーティングされた金粒子、ポリマー−DNA複合体、リポソーム−DNA複合体、リポソーム−ポリマー−DNA複合体、ウイルス−ポリマー−DNA複合体、例えば、アデノウイルス−ポリリシン−DNA複合体、および抗体‐DNA複合体を含む。ベクターは、遺伝子送達および/または遺伝子発現をさらに調整するか、またはそうでなければ、ベクターが導入される細胞に有益な特性を提供する他の成分または機能性も備えることができる。そのような他の成分としては、例えば、細胞との結合または細胞を標的にすることを影響する成分(細胞型または組織特異的結合を媒介する成分を含む)、細胞によるベクター核酸の摂取を影響する成分、摂取後に細胞内でのポリヌクレオチドの局在を影響する成分(核局在性を媒介する薬剤等)、およびポリヌクレオチドの発現を影響する成分を含む。そのような成分は、ベクターによって送達された核酸を摂取し、発現している細胞を検出または選択するために使用することができる検出可能および/または選択可能なマーカ等のマーカも含む場合がある。そのような成分は、ベクターの天然の特色として提供することができ(結合および摂取を媒介する成分または機能性を有する、特定のウイルスベクターの使用等)、またはベクターは、そのような機能性を提供するように修飾することができる。多種多様なそのようなベクターは、当技術分野で周知であり、一般に利用できる。ベクターが、宿主細胞に維持される場合、ベクターは、宿主細胞のゲノムに取り込まれる、自律構造としての有糸分裂中に細胞によって安定して複製する、または宿主細胞の核または細胞質に維持することができる。
【0019】
「組み換えウイルスベクター」は、1つ以上の異種遺伝子または配列を備えるウイルスベクターを言及する。多くのウイルスベクターは、パッケージングに関連するサイズ制限を提示するため、異種遺伝子または配列は、通常、ウイルスゲノムの1つ以上の部分を置換することによって導入される。そのようなウイルスは、複製欠損になってもよく、ウイルス複製およびエンカプシデーション中にトランスで欠失機能を提供する必要がある(例えば、ヘルパーウイルス、または複製および/またはエンカプシデーションに必要なパッケージング細胞株運搬遺伝子を使用することによって)。送達されるポリヌクレオチドが、ウイルス粒子の外側に運搬される修飾ウイルスベクターも、記載されている(例えば、Curielら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8850(1991)を参照)。
【0020】
本明細書において使用されるように、「遺伝子送達」、「遺伝子導入」等は、導入のために使用される方法に関係なく、宿主細胞への外因性ポリヌクレオチド(時々、「トランス遺伝子」と言及される)の導入を言及する用語である。そのような方法として、ベクター媒介遺伝子導入(例えば、ウイルス感染/トランスフェクション、または種々の他のタンパク質に基づくか、または脂質に基づく遺伝子送達複合体による)等の多様な周知の技術、および「裸の」ポリヌクレオチドの送達を促進する技術(周波数穿孔法、イオン導入法、「遺伝子銃」送達等、または細胞外基質またはヒドロゲル足場による、およびポリヌクレオチドの導入のために使用される種々の他の技術)を含む。導入されたポリヌクレオチドは、安定的に、または一時的に宿主細胞に維持されてもよい。安定した維持には、通常、導入されたポリヌクレオチドが、宿主細胞に適合する複製起点を含有するか、または染色体外レプリコン(例えば、プラスミド)、または核またはミトコンドリア染色体等の宿主細胞のレプリコンに組み入れることを必要とする。多くのベクターは、当技術分野で周知のように、哺乳動物細胞への遺伝子移動を媒介することが可能なことが周知である。
【0021】
「トランス遺伝子」は、技術を用いて一時的または永久的のいずれかで細胞に挿入され、ゲノムに組み入れられるか、または染色体外で維持される場合、生物の一部になる核酸分子(例えば、DNA)の任意の部分を意味する。そのようなトランス遺伝子として、部分的または全体的にトランスジェニック生物と異種(すなわち、異物)である遺伝子を含んでもよいか、または生物の内在性遺伝子と同種の遺伝子を表してもよい。
【0022】
「トランスジェニック細胞」は、トランス遺伝子を含有する細胞を意味する。例えば、発現カセットを含有するベクターで変換された幹細胞は、変化した表現型の特徴を有する細胞集団を生成するために使用することができる。
【0023】
「野生型」という用語は、自然発生の源から単離される場合、その遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を言及する。野生型遺伝子は、集団において最も頻繁に見られるため、遺伝子の「正常」または「野生型」の形で任意に指定される。対照的に、「修飾」または「突然変異」は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合、配列および/または機能的特性における修飾(すなわち、変化した特徴)を示す遺伝子または遺伝子産物を言及する。自然発生突然変異体は、単離することができ、それらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合、変化した特徴を有するという事実によって特定されることに注意する。
【0024】
「血管系」または「血管の」は、哺乳動物の体全体に血液(およびリンパ液)を運搬する血管のシステムを言及する用語である。
【0025】
「血管」は、動脈、細動脈、毛細血管、小静脈、静脈、洞、および栄養血管を含む哺乳動物の脈管系の任意の血管を言及する。
【0026】
「動脈」は、血液が心臓から離れるように通過する血管を言及する。冠状動脈は、心臓自体の組織に供給し、他の動脈は、体の残りの臓器に供給する。動脈の一般構造は、多層動脈壁に囲まれる内腔から成る。
【0027】
「形質導入」という用語は、ウイルスベクター、および好ましくは、組み換えAAV等の複製欠損のウイルスベクターを介して、体内または体外のいずれかにおいて受容細胞へのポリヌクレオチドの送達を意味する。
【0028】
遺伝子配列および制御配列等の核酸配列に関するように、「異種」という用語は、通常、互いに接合していない、および/または通常、特定の細胞と関連しない配列を意味する。そのため、核酸構成物またはベクターの「異種」領域は、自然の状態では他の分子と関連して見られない他の核酸分子内にあるか、または付着した拡散の断片である。例えば、核酸構成物の異種領域は、自然の状態ではコード配列と関連して見られない配列、すなわち、異種プロモーターが両側に配置されたコード配列を含むことがある。異種コード配列の他の実施例は、コード配列時自体が自然の状態では見られない構成物である(例えば、天然遺伝子と異なるコドンを有する合成配列)。同様に、通常、細胞に存在しない構成で変換された細胞は、本発明の目的で異種と見なされる。
【0029】
「DNA」は、特に、線状DNA分子(例えば、制限断片)、ウイルス、プラスミド、および染色体において見られる二本鎖または一本鎖型でのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)の多量体型を意味する。特定のDNA分子の構造を論じる場合、配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相補的な配列を有する鎖)に沿う5’から3’の方向で配列のみを与える通常の変換に従って、本明細書において記載されてもよい。用語は、4つの塩基性アデニン、グアニン、チミン、またはシトシンを含む分子、および当技術分野で周知の非塩基類似体を含む分子を表す。
【0030】
本明細書において使用されるように、「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対合則に関係するポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を参照して使用される。例えば、配列「A−G−T」は、配列「T−C−A」に相補的である。相補性は、「部分的」であってもよく、核酸の塩基のいくつかのみが、塩基対合則に従って一致する。あるいは、核酸の間に「完全」または「総」相補性があってもよい。核酸鎖の相補性の程度は、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率性および強度に対して有意な影響を与える。これは、増幅反応、および核酸の間の結合に依存する検出方法において特に重要である。
【0031】
DNA分子は、1つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸塩が、ホスホジエステル結合を介して一方向にその近隣の3’酸素に付着するような方法で、モノヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを作製するように反応するため、「5’末端」および「3’末端」を有すると言われる。したがって、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの末端は、その5’リン酸塩がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に連結されていない場合、「5’末端」と言及され、その3’酸素が後続のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸塩に連結されていない場合、「3’末端」と言及される。本明細書において使用されるように、より大きいオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの内部にある場合でも、核酸配列は、5’および3’末端を有すると言われてもよい。線状または環状DNA分子のいずれにおいて、別個のエレメントは、「上流」、または「下流」の5’または3’エレメントとして言及される。この専門用語は、転写は、DNA鎖に沿う5’から3’の方法で進むという事実を反映する。連鎖遺伝子の転写を方向付けるプロモーターおよびエンハンサーエレメントは、概して、コード領域の5’または上流に位置付けられる。しかしながら、エンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントおよびコード領域の3’に位置付けられた場合でも、それらの効果を発揮することができる。転写終結およびポリアデニル化シグナルは、コード領域の3’または下流に位置付けられる。
【0032】
特別な遺伝子産物を「エンコード」する「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「コード領域」、または「配列」は、適切な調節配列の制御下にある場合、体外または体内において、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドに転写、および任意で翻訳される核酸分子である。コード領域は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA型のいずれかで存在してもよい。DNA型で存在する場合、核酸分子は、一本鎖(すなわち、センス鎖)または二本鎖であってもよい。コード領域の境界は、5’(アミノ)末端にある開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端にある翻訳終止コドンによって決定される。遺伝子としては、これらに限定されないが、原核生物または真核mRNAからのcDNA、原核生物または真核DNAからのゲノムDNA配列、および合成DNA配列を含むことができる。そのため、遺伝子は、完全オープンリーディングフレームによってコードされる遺伝子産物と実質的に同じ活性を有する遺伝子産物をコードする遺伝子産物(センス方向)またはその一部(センス方向)をコードする完全オープンリーディングフレームを含んでもよいポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの相補体、例えば、完全オープンリーディングフレーム(アンチセンス方向)、および任意で連結された5’および/または3’非コード配列またはその一部、例えば、対応するmRNAの転写、安定性または翻訳を抑制するために有用なオリゴヌクレオチドの相補体を含む。転写終結配列は、通常、遺伝子配列に対する3’に位置付けられる。
【0033】
「オリゴヌクレオチド」としては、RNAまたはDNAのいずれかで、非コード鎖の、またはコード鎖の、選択されたmRNAの相補体に対応するか、または当業者に周知の、例えば、Sambrookら、A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1989)における方法によって定義されるような中程度にストリンジェントな、または非常にストリンジェントな条件の下でmRNA、またはmRNAをコードするDNAにハイブリダイズし、安定的に結合したままでいる、少なくとも7つのヌクレオチド、好ましくは、15、より好ましくは、20以上100までの配列ヌクレオチドを含む。
【0034】
「制御エレメント」という用語は、受容細胞におけるコード配列の複製、転写、転写後プロセッシング、および翻訳を総合的に提供する、プロモーター領域、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節領域、複製起点、内部リポソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサー、スプライス部位等を総称する。選択されたコード配列が、適切な宿主細胞において複製、転写、および翻訳されることが可能な限り、これらの制御エレメントのすべてが存在する必要はない。
【0035】
「プロモーター領域」という用語は、調節配列が、RNAポリメラーゼを結合し、下流(3’方向)コード配列の転写を開始することが可能な遺伝子から由来するDNA調節配列を備えるヌクレオチド領域を言及するその通常の意味で本明細書において使用される。そのため、「プロモーター」は、それが操作可能に連結される、遺伝子またはコード配列の転写を調節するポリヌクレオチド配列を言及する。構成的、誘導可能、および抑止可能なプロモーターを含む、多様な異なる源からの多数のプロモーターは、当技術分野で周知である。 「エンハンサーエレメント」は、プロモーターの最も近くに配置される場合、エンハンサー領域の不在下におけるプロモーターから生じる転写活性に対する転写活性の増加をもたらす核酸配列を意味する。そのため、「エンハンサー」としては、それが操作可能に連結される、遺伝子またはコード配列の転写を強化するポリヌクレオチド配列を含む。多様な異なる源からの多数のエンハンサーは、当技術分野で周知である。プロモーター配列(一般的に使用されるCMVプロモーター等)を有する多くのポリヌクレオチドは、エンハンサー配列も有する。
【0036】
「心臓特異的エンハンサーまたはプロモーター」は、プロモーターに操作可能に連結されるか、または単独のそれぞれの場合、心臓細胞において遺伝子発現を方向付け、すべての組織またはすべての細胞型において遺伝子発現を方向付けないエレメントを意味する。心臓特異的エンハンサーまたはプロモーターは、自然発生または非自然発生であってもよい。当業者は、非自然発生のエンハンサーまたはプロモーターの合成は、標準的なオリゴヌクレオチド合成技術を使用して行うことができることを認識する。
【0037】
「操作可能に連結される」とは、そのように記載される成分が、それらの目的とする方法で機能できるような関係にある並列を言及する。核酸分子に関して、「操作可能に連結される」とは、2つ以上の核酸分子(例えば、転写される核酸分子、プロモーター、およびエンハンサーエレメント)が、核酸分子の転写を可能にするように接続されることを意味する。プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写を調節する場合、コード配列に操作可能に連結される。操作可能に連結されたプロモーターは、概して、コード配列の上流に位置付けられるが、それと継続する必要はない。エンハンサーは、エンハンサーがコード配列の転写を増加させる場合、コード配列に操作可能に連結される。操作可能に連結したエンハンサーは、コード配列の上流、中流、または下流に位置付けることができる。ポリアデニル化配列は、転写がポリアデニル化配列へコード配列を通って進むように、コード配列の下流端に位置付けられる場合、コード配列に操作可能に連結される。ペプチドおよび/またはポリペプチド分子に関して、「操作可能に連結される」は、融合の各ペプチドおよび/またはポリペプチド成分少なくとも1つの特性を有する一本鎖ポリペプチド、すなわち、融合ポリペプチドを産出するように接続される。そのため、シグナルまたは標的ペプチド配列は、得られた融合が、分泌シグナルペプチドの存在の結果として細胞から分泌されるか、または細胞小器官標的ペプチドの存在の結果として細胞小器官へ分泌される場合、他のタンパク質に操作可能に連結される。
【0038】
「相同」は、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチドの間の同一性の割合を言及する。1つの配列と他の配列との間の一致は、当技術分野で周知の技術によって決定することができる。例えば、相同は、配列情報を整列し、すぐに利用可能なコンピュータプログラムを使用することによって、2つのポリペプチド分子の間の配列情報の直接比較によって決定することができる。別様に、相同は、同種領域の間に安定した二本鎖を形成する条件の下で、ポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションし、一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、消化断片の大きさを判定することによって決定することができる。2つのDNA、または2つのポリペプチド、配列は、上記の方法を使用して決定されるように、少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約90%、および最も好ましくは、少なくとも約95%のヌクレオチド、またはアミノ酸が、それぞれ、分子の規定の長さを超えて一致する場合、互いに「実質的に同種」である。
【0039】
「哺乳動物」は、無制限に、チンパンジ、および他の類人猿、およびサル種等のヒトおよび非ヒト霊長、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマ等の家畜、イヌおよびネコ等の家庭哺乳動物、ネズミ、ラット、ウサギ、およびモルモット等の齧歯動物を含む実験動物等を含む哺乳網の任意の部分を意味する。「動物」としては、哺乳動物、鳥、両生類、は虫類、および魚を含む水生動物等の脊椎動物を含む。
【0040】
「由来する」は、例えば、それが作製または設計された親核酸分子によってコードされた遺伝子産物と実質的に同じ活性を有する遺伝子産物をコードする親核酸分子の実質的に同じ機能的特色を保持する誘導体である、親核酸分子から作製または設計された核酸分子を意味する。
【0041】
「発現構成物」または「発現カセット」は、転写を方向付けることが可能な核酸分子を意味する。発現構成としては、少なくとも、プロモーターを含む。エンハンサー、および/または転写終結シグナル等の付加的エレメントも含まれてもよい。
【0042】
細胞または生物におけるタンパク質、遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチドに対して使用される場合の「外因性」という用語は、人工または自然の手段によって細胞または生物に導入されたタンパク質、遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチドを言及するか、または関連して、細胞は、人工または自然の手段によって単離され、その後、他の細胞または生物に導入された細胞を言及する。外因性核酸は、異なる生物または細胞からであってもよいか、または生物または細胞内で自然発生する核酸の1つ以上の付加的複製であってもよい。外因性細胞は、異なる生物からであってもよいか、または同じ生物からであってもよい。非制限的実施例として、外因性核酸は、自然細胞のそれと異なる染色体上の位置にあるか、またはそうでなければ、自然の状態で見られる配列と異なる核酸配列が両側に配置される。
【0043】
核酸、ペプチド、ポリペプチド、細胞またはウイルスに関して使用される場合、「単離」という用語は、それが、通常、その自然源おいて関係する少なくとも1つの汚染物質核酸、ポリペプチド、ウイルスまたは他の生物学的成分から分離される核酸配列、ペプチド、ポリペプチド、細胞またはウイルスを言及する。単離された核酸、ペプチド、ポリペプチド、細胞またはウイルスは、事前の状態で見られる形または背景と異なる形または背景で存在する。例えば、既定のDNA配列(例えば、遺伝子)は、隣接する遺伝子に近接する宿主細胞染色体上で見られ、特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列等のRNA配列は、多数のタンパク質をコードする多数の他のmRNAを有する混合物として細胞において見られる。単離核酸分子は、一本鎖または二本鎖型に存在してもよい。単離核酸分子が、タンパク質を発現するために使用される場合、分子は、最小限でセンスまたはコード鎖を含有するが(すなわち、分子は、一本鎖であってもよい)、センスおよびアンチセンス鎖の両方を含有してもよい(すなわち、分子は、二本鎖であってもよい)。
【0044】
本明細書において使用されるように、「組み換えDNA分子」という用語は、分子生物学的技術を用いて接合されたDNAの断片で構成されるDNA分子を言及する。
【0045】
本明細書において使用されるように、「組み換えタンパク質」または「組み換えポリペプチド」という用語は、組み換えDNA分子から発現されるタンパク質分子を言及する。
【0046】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーと区別されない限り、本明細書において同じ意味で使用される。これらの用語は、グリコシル化、アセチル化、およびリン酸化反応を含む反応によって翻訳後に修飾されるタンパク質も含む。
【0047】
「増殖因子」は、少なくとも、細胞成長を促進するか、または表現型の変化を誘導する薬剤を意味する。
【0048】
概要
虚血再かん流傷害(I/R)誘導組織傷害は、文明世界における死亡数および死亡率の主要な原因である。I/R傷害は、急性腎尿細管壊死、肝不全、および腸梗塞等の末期臓器不全を引き起こす低血圧、ショック、またはバイパス術の結果として発症することがある。I/R傷害は、発作、心筋梗塞、および固形腫瘍等の血管疾患の合併症の結果として発症することもある。例えば、冠動脈の閉塞によって生じた心筋虚血は、世界規模で死亡数および死亡率の主な原因であり、最終的に慢性心不全に至る急性心臓障害および進行性リモデリングを引き起こす。さらに、多発性無症候性I/R事象は、血管性認知症、虚血性心筋症、および腎不全等の慢性変性疾患を引き起こす蓄積された組織傷害を誘導することがある。薬剤を使用する細胞保護戦略は、例えば、治療を行うタイミング、または十分な組織レベルの治療薬の達成によるI/R傷害の予防においてある程度の成功しか収めていない。
【0049】
また、慢性心不全では、例えば、心内膜層において広範囲で、または集中する場合がある微小虚血等、正常以下のレベルの酸素が心筋に利用可能である。
【0050】
細胞が、低酸素(低酸素症)の間に遺伝子発現を調節することによる主要なメカニズムの1つは、プロリン水酸化およびアセチル化を含むユビキチン化メカニズムによって正常酸素圧の状態にある間、迅速に分解される転写因子、低酸素誘導因子1α(HIF1α)の活性化に関与する。HIF1αの活性化は、I/R傷害に対する保護を提供する場合がある、血管内皮増殖因子(VEGF)、赤血球生成促進因子、一酸化窒素合成酵素等のいくつかの標的遺伝子、およびスーパーオキシドジスムターゼ、およびヘム代謝酵素−1(HO−1)等のいくつかの抗酸化酵素系の転写を引き起こす。しかしながら、治療用タンパク質、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)の無制御発現は、血管腫、網膜症、および潜伏腫瘍増殖等の副作用を引き起こす場合がある。
【0051】
本明細書では、特に、虚血を検出、または虚血の検出および虚血に対する1つ以上の療法を送達するための、ベクター、方法、およびシステムが記載される。一実施形態において、虚血、例えば、心虚血を有するか、または危険性がある哺乳動物は、本発明のベクター系の送達の対象となる。ベクター系のベクターの1つは、低酸素感受性遺伝子産物に操作可能に連結される、臓器、組織、細胞特異的、またはエネルギー調節されるプロモーターまたはエンハンサー、および/または構成的に発現されるプロモーターを含む。例示的なエネルギー調節転写エレメントは、参照することにより本明細書に組み込まれ、すべてCardiac Pacemaker,Inc.に譲渡される、「METHOD AND APPARATUS FOR DEVICE CONTROLLED GENE EXPRESSION」という名称の米国特許出願第10/788,906号、「BIOLOGIC DEVICE FOR REGULATION OF GENE EXPRESSION AND METHOD THEREFOR」という名称の同第11/272,432号、「METHOD AND APPARATUS FOR HEAT OR ELECTROMAGNETIC CONTROL OF GENE EXPRESSION」という名称の同第11/276,077号、および「METHO TO POSITION THERAPEUTIC AGENT USING A MAGNETIC FIELD」という名称の同第11/424,107号に記載される。一実施形態において、エンハンサーは、筋肉クレアチンキナーゼ(mck)エンハンサーであってもよく、プロモーターは、アルファミオシン重鎖(MyHC)またはベータMyHCプロモーターであってもよい(図1)。一実施形態において、低酸素感受性遺伝子産物は、細胞質において蓄積し、HIF−1βで機能的二量体を形成する低酸素誘導因子1α(HIF−1α)であってもよい。他の実施形態において、低酸素感受性遺伝子産物は、CREBであってもよい。他のベクターは、少なくとも1つの治療用遺伝子産物、心臓保護遺伝子産物またはバイオマーカ−をコードし、低酸素条件下で安定する遺伝子産物に対する結合部位を含む転写調節領域に操作可能に連結される。一実施形態において、第2のベクターは、低酸素応答性エレメント(HRE)を含む。HREは、VEGF、赤血球生成促進因子、およびいくつかの糖分解酵素を含む、多くの低酸素刺激性遺伝子のエンハンサーに属するシス作用エレメントである。他の実施形態において、ベクターは、1つ以上、例えば、タンデムのHREを含む。一実施形態において、第2のベクターは、CREB応答性エレメントを含む。一実施形態において、第2のベクターは、これらに制限されないが、増殖因子、例えば、VEGF、生存因子、例えば、Akt、サイトカイン、受容体、例えば、アセチルコリン受容体(AChR)またはアドレナリン受容体、または他の遺伝子産物、またはその任意の組み合わせを含む遺伝子産物をコードする少なくとも1つの発現カセットを含む(図2)。例えば、心不全、例えば、拡張型心筋症に関連する心臓リモデリングを治療するために、第2のベクターは、心臓保護または治療用遺伝子産物をコードし、正常以下の酸素レベルの下で、心臓保護または治療用遺伝子産物が発現される。遺伝子産物の発現は、心臓リモデリング/拡張を抑制、予防または回復に向かわせる場合があるため、慢性心不全に対して効果的である場合がある。
【0052】
他の実施形態において、第2のベクターは、蛍光タンパク質、例えば、緑蛍光タンパク質(GFP)、赤FP、青FPまたは黄FP等の細胞結合型マーカタンパク質、または放射性元素を結合するタンパク質、またはそうでなければ、例えば、125Iまたは131I、例えば、サイロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)、モノヨードチロシンまたはジヨードチロシン、14C、例えば、HCO摂取に関与する細胞膜タンパク質であるCmpA、32P、例えば、無機リン酸輸送に関与するPstS、またはそのGdまたは放射性同位体、例えば、152Gdを結合する検出可能な薬剤を含む、バイオマーカ−をコードする。一実施形態において、正常酸素圧条件下で、基礎レベルがあり、治療または心臓保護遺伝子産物、またはバイオマーカ−の発現はない。
【0053】
任意で、2つ以上のベクターが使用されてもよく、それぞれ、臓器、組織、細胞特異的、またはエネルギー調節される転写調節エレメント、または正常酸素圧条件下で不安定であり、低酸素条件下で安定する遺伝子産物に対する1つ以上の結合部位を含む転写調節領域に連結される異なるオープンリーディングフレームを有する。例えば、1つのベクターは、正常酸素圧条件下で不安定であり、低酸素条件下で安定する遺伝子産物に連結される臓器、組織、細胞特異的、またはエネルギー調節される転写調節エレメントを有し、2つ以上のベクターは、それらの転写調節領域のそれぞれが、異なる遺伝子産物に対するオープンリーディングフレームに連結される、遺伝子産物に対する1つ以上の結合部位を含む転写調節領域を有する。
【0054】
ベクターは、任意の経路によって、または任意の送達媒体において哺乳動物に投与されてもよい。例えば、プラスミドは、両方のベクターを含有してもよく、心臓の領域に注入されてもよい。他の実施形態において、複製能力のないウイルスベクターは、哺乳動物における1つ以上の生理学的部位に局所的に投与されてもよい。さらに他の実施形態において、ベクターは、生体外で細胞に送達され、それらの組み換え細胞は、哺乳動物、例えば、1つ以上の心臓の箇所に投与されてもよい。
【0055】
一実施形態において、哺乳動物へのベクター送達の前、同時に、または後で、電気または薬物療法用の埋込型デバイスは、ベクター系の有効性を強化するために哺乳動物に提供される。一実施形態において、デバイスは、損傷心臓血管組織に、または近くに導入される。虚血の検出応じて、デバイスは、電気刺激または薬剤を発する。一実施形態において、虚血の望ましい変化が検出された後、電気または薬物療法は、中断される。他の実施形態において、電気または薬物療法は、所定の期間、送達される。
【0056】
そのため、本明細書では、少なくとも2つの発現カセットを含むベクター系が論じられる。低酸素状態応じて、ベクター系は、バイオマーカ−、または治療または心臓保護遺伝子産物を発現する。さらなる実施形態において、検出および遺伝子療法は、ペーシング療法等の電気療法、および/または薬物療法と併せて行われる。埋込型医療デバイスの特定の一実施例は、埋込型心調律管理(CRM)デバイスである。
【0057】
遺伝子送達ベクター
遺伝子送達ベクターとしては、例えば、ウイルスベクター、リポソーム、および他の脂質含有複合体、および宿主細胞への遺伝子の送達を媒介することが可能な他の高分子複合体を含む。ベクターは、遺伝子送達および/または遺伝子発現をさらに調整するか、またはそうでなければ、標的細胞に有益な特性を提供する他の成分または機能性も備えることができる。そのような他の成分としては、例えば、細胞との結合または細胞を標的にすることを影響する成分(細胞型または組織特異的結合を媒介する成分を含む)、細胞によるベクター核酸の摂取を影響する成分、摂取後に細胞内での導入された遺伝子の局在を影響する成分(核局在性を媒介する薬剤等)、および遺伝子の発現を影響する成分を含む。そのような成分は、ベクターによって送達された核酸を摂取し、発現している細胞を検出または選択するために使用することができる検出可能および/または選択可能なマーカ等のマーカも含む場合がある。そのような成分は、ベクターの天然の特色として提供することができ(結合および摂取を媒介する成分または機能性を有する、特定のウイルスベクターの使用等)、またはベクターは、そのような機能性を提供するように修飾することができる。選択可能なマーカは、陽性、陰性または二官能性であることがある。選択可能な陽性マーカは、マーカを持つ細胞の選択を可能にする一方、選択可能な陰性マーカは、マーカを持つ細胞が選択的に排除されるようにする。二官能性(すなわち、陽性/陰性)マーカを含む、多様なそのようなマーカ遺伝子が記載されている(例えば、第WO92/08796号、および第WO94/28143号を参照)。そのようなマーカ遺伝子は、遺伝子療法の状況において有利となり得る付加的調節手段を提供することができる。多様なそのようなベクターは、当技術分野で周知であり、一般に利用可能である。
【0058】
本発明の範囲内の遺伝子送達ベクターは、それらに限定されないが、単離核酸、例えば、染色体外で維持されてもよいプラスミドに基づくベクター、およびリポソーム、例えば、DOSPA/DOPE、DOGS/DOPEまたはDMRIE/DOPEリポソーム等の中性またはカチオン性リポソームに存在する、および/またはDNA‐抗DNA抗体カチオン性脂質(DOTMA/DOPE)複合体等の他の分子に関連するウイルスおよび非ウイルスベクターを含むウイルスベクター、例えば、組み換えアデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、乳頭腫ウイルス、またはアデノ随伴ウイルスを含む。例示的な遺伝子送達ベクターは、以下に記載される。遺伝子送達ベクターは、これらに限定されないが、筋内、口腔、直腸、静脈内または冠動冠動脈内投与を含む任意の経路を介して投与されてもよく、細胞への移動は、電気穿孔法および/またはイオン導入法、および/または細胞外基質またはヒドロゲル、例えば、ヒドロゲルパッチ等の足場を使用して強化されてもよい。
【0059】
レトロウイルスベクター
レトロウイルスベクターは、長期トランス遺伝子発現を提供する宿主ゲノムに安定的および正確に組み込むそれらの能力を含むいくつかの顕著な特徴を提示する。これらのベクターは、感染性遺伝粒子を排除し、全身感染症および患者から患者への感染の危険性を最小限にするために、生体外で操作することができる。偽型レトロウイルスベクターは、宿主細胞指向性を変更することができる。
【0060】
レンチウイルス
レンチウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスおよび猫免疫不全ウイルスを含むレトロウイルス群から由来する。しかしながら、分裂細胞のみに感染するレトロウイルスとは異なり、レンチウイルスは、分裂および非分裂細胞の両方に感染することができる。例えば、ヒト免疫不全ウイルスゲノムに基づくレンチウイルスベクターは、体内において心筋細胞の効率的な形質導入が可能である。レンチウイルスは、特定の向性を有するが、水疱性口内炎ウイルスを有するウイルス外皮を偽型にすることによって、さらに広範囲なウイルスが産出される(Schneppら、Meth.Mol.Med.,69:427(2002))。
【0061】
アデノウイルスベクター
アデノウイルスベクターは、ゲノムからのウイルス遺伝子発現に関与する初期(E1AおよびE1B)遺伝子を削除することによって複製能力をなくされてもよく、染色体外の形で宿主細胞に安定的に維持される。これらのベクターは、複製および非複製細胞の両方をトランスフェクトする能力を有し、特に、これらのベクターは、例えば、直接注入または還流の後に、体内において心筋細胞に効果的に感染することが示されている。アデノウイルスベクターは、7日をピークとし、約4週間持続する、体内での治療遺伝子の一時的発現を引き起こすことが示されている。トランス遺伝子発現の持続時間は、心臓特異的プロモーターを利用するシステムにおいて改善される場合がある。さらに、アデノウイルスベクターは、非常に高い力価で生成されることがあり、少量のウイルスで効率的な遺伝子導入を可能にする。
【0062】
アデノ関連ウイルスベクター
組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、非病原性パルボウイルスから由来し、原則的に細胞性免疫反応を惹起せず、ほとんどのシステムにおいて数ヶ月持続するトランス遺伝子発現を生成する。また、アデノウイルスのように、アデノ随伴ウイルスベクターも、複製および非複製細胞に感染する能力を有し、ヒトに対して非病原性であると考えられる。また、それらは、持続性心臓遺伝子導入に対して有望であると思われる(Hoshijimaら、Nat.Med.,8:864(2002); Lynchら、Circ.Res.,80:197(1997))。
【0063】
ヘルペスウイルス/単位複製配列
単純ヘルペスウイルス1(HSV−1)は、それを、体内において重要な遺伝子送達ベクターにする多くの重要な特徴を有する。次の2種類のHSV−1に基づくベクターがある。1)骨格ウイルスゲノムに外因性遺伝子を挿入することによって生成されるベクター、および2)後に複製され、ビリオン粒子にパッケージされる単位複製配列プラスミドに外因性遺伝子を挿入することによって生成されるHSV単位複製配列ビリオン。HSV−1は、分裂および非分裂の両方の多様な細胞に感染することがあるが、神経細胞に対して明らかに強い向性を有する。それは、非常に大きいゲノムサイズを有し、非常に大きいトランス遺伝子(>35kb)に対応することができる。ヘルペスウイルスベクターは、大きい遺伝子、例えば、リアノジン受容体およびチチンをコードする遺伝子の送達に対して特に有用である。
【0064】
プラスミドDNAベクター
プラスミドDNAは、しばしば、「裸のDNA」と言及され、より精巧なパッケージシステムの不存在を示す。体内における心筋細胞へのプラスミドDNAの直接注入は、遂行されている。プラスミドに基づくベクターは、細胞ゲノムに安定的に組み込む潜在力を有する、比較的非免疫原性および非病原性であり、体内において分裂終了細胞における長期遺伝子発現を引き起こす。例えば、比較的低レベルの限局性トランス遺伝子発現にもかかわらず、プラスミドDNAの筋肉注射の後の分泌血管新生因子の発現は、動物モデルにおいて有意な生物学的効果を証明し、臨床的に有望であると思われる(Isner,Nature,415:234(2002))。なお、プラスミドDNAは、血流において迅速に分解されるため、遠い臓器系におけるトランス遺伝子発現の機会は、ごくわずかである。プラスミドDNAは、高分子複合体、例えば、リポソームまたはDNA−タンパク質複合体の一部として細胞に送達されてもよく、送達は、電気穿孔法を含む技術を使用して強化されてもよい。
【0065】
転写調節エレメント
一部の実施形態において、筋肉特異的および誘導プロモーター、エンハンサー等の臓器、細胞、または組織特異的制御エレメントは、特定の効果がある。そのような調節エレメントは、これらに限定されないが、ミオD遺伝子族由来のエレメント(Weintraubら、Science,251,761(1991))、ミオサイト特異的エンハンサー結合因子MEF−2(Cserjesi and Olson,Mol.Cell.Biol.,11,4854(1991))、ヒト骨格アクチン遺伝子(Muscatら、Mol.Cell.Bio.,7,4089(1987))および心臓アクチン遺伝子由来の調節エレメント、筋肉クレアチンキナーゼ配列エレメント(Johnsonら、Mol.Cell.Biol.,9,3393(1989))およびマウスクレアチンキナーゼエンハンサー(mCK)エレメント、骨格速収縮トロポニンC遺伝子、緩徐収縮心臓トロポニンC遺伝子、および緩徐収縮トロポニンI遺伝子由来の調節エレメント等のアクチンおよびミオシン遺伝子族由来のエレメントを含む。
【0066】
心臓細胞制限プロモーターは、これらに限定されないが、以下の遺伝子からのプロモーターを含む。αミオシン重鎖遺伝子、例えば、心室αミオシン重鎖遺伝子、β−ミオシン重鎖遺伝子、例えば、心室β−ミオシン重鎖遺伝子、ミオシン軽鎖2v遺伝子、例えば、心室ミオシン軽鎖2遺伝子、ミオシン軽鎖2a遺伝子、例えば、心室ミオシン軽鎖2遺伝子、心筋細胞制限心臓アンキリン反復タンパク質(CARP)遺伝子、心臓α−アクチン遺伝子、心臓m2ムスカリン性アセチルコリン遺伝子、ANP遺伝子、BNP遺伝子、心臓トロポニンC遺伝子、心臓トロポニンI遺伝子、心臓トロポニンT遺伝子、心臓筋小胞体Ca−ATPアーゼ遺伝子、骨格α−アクチン遺伝子、および人工心臓細胞特異的プロモーター。
【0067】
さらに、心房特異的プロモーターまたはエンハンサーも、例えば、ウズラ遅筋型ミオシン鎖型3(MyHC3)またはANPプロモーターに対して使用されてもよいか、またはcGATA−6エンハンサーが使用されてもよい。心室特異的発現に対して、イロコイホメオボックス遺伝子が使用されてもよい。心室ミオサイト特異的プロモーターの実施例としては、心室ミオシン軽鎖2プロモーターおよび心室ミオシン重鎖プロモーターを含む。
【0068】
他の実施形態において、疾患特異的制御エレメント、例えば、低酸素症特異的制御エレメントは、使用されてもよい。そのため、本明細書に開示される任意の遺伝子に限定されないが、特定の疾患に関連する遺伝子からの調節エレメントは、本発明のベクターにおいて使用されてもよい。
【0069】
それでもなお、心臓細胞または筋肉細胞に特異的ではない他のプロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、RSVプロモーターは、本発明の発現カセットおよび方法において使用されてもよい。プロモーターおよび/またはエンハンサーに対する他の源は、Csx/NKX2.5遺伝子、チチン遺伝子、遺伝子におけるα−アクチン、ミオメシン遺伝子、Mタンパク質遺伝子、心臓トロポニンT遺伝子、RyR2遺伝子、Cx40遺伝子、およびCx43遺伝子、およびMef2、dHAND、GATA、CarG、E−box、Csx/NKX2.5、またはTGF−ベータ、またはその組み合わせを結合する遺伝子からのプロモーターおよびエンハンサーである。
【0070】
標的ベクター
本発明は、特定の宿主細胞または宿主細胞型(心筋等)に対する遺伝子送達および/または遺伝子発現を標的とする傾向がある特色を有する標的ベクター構成物の使用を意図する。そのため、そのような標的ベクター構成物は、本明細書において記載されるように、標的送達ベクターおよび/または標的ベクターを含む。送達および/または発現を制限することは、遺伝子送達の潜在的影響をさらに集中させる手段として有益になり得る。送達/発現をさらに制限することの潜在的有用性は、主に、使用されるベクターの種類およびそのようなベクターの導入の方法および場所に依存する。例えば、冠動脈内注入を介する心筋へのウイルスベクターの送達は、それ自体において、高度標的化遺伝子送達を提供することが観察されている。さらに、宿主細胞(アデノウイルスおよび多数の他のベクター等)のレプリコンへのトランス遺伝子組み込みを引き起こさないベクターを使用して、心筋細胞は、迅速な代謝回転を行わないため、比較的長いトランス遺伝子発現を提示すると思われる。対照的に、より迅速に分裂する細胞における発現は、細胞分裂および代謝回転によって低下する傾向がある。しかしながら、本明細書において記載されるように、説明される送達方法に加えるか、または代わりに、送達および/または発現を制限する他の手段も使用することができる。
【0071】
標的送達ベクターは、例えば、表面成分(残りの半分は標的とされる宿主細胞上で見られる、リガンド−受容体対の一員)、または特定の宿主細胞または宿主細胞型に対する選択的結合および/または遺伝子送達を媒介する他の特色を有するベクター(ウイルス、非ウイルスタンパク質に基づくベクター、および脂質に基づくベクター等)を含む。当技術分野で周知のように、ウイルス性および非ウイルス性の両方の多くのベクターは、そのような選択的結合を容易にする固有の特性を有し、および/または選択的標的をもたらすために修飾されている(例えば、Miller,et al.,FASEB Journal,9:190(1995);Chonnら、Curr.Opin.Biotech.,6:698(1995);Schofieldら、British Med.Bull.,51:56(1995);Schreier,Pharmaceutica Acta Helvetiae,68:145(1994);Ledley,Human Gene Therapy,6:1129(1995);第WO95/34647号;第WO95/28494号;および第WO96/00295号を参照)。
【0072】
標的ベクターは、送達が、特定の宿主細胞または宿主細胞型に比較的制限されるトランス遺伝子発現を引き起こすベクター(ウイルス、非ウイルスタンパク質に基づくベクター、および脂質に基づくベクター等)を含む。例えば、トランス遺伝子は、異種組織特異的エンハンサーまたはプロモーターに操作可能に連結されることができるため、その特定の組織における細胞の発現を制限する。例えば、左心室ミオシン軽鎖−2(MLCV)またはミオシン重鎖(MHC)をコードする遺伝子由来の組織特異的転写調節配列は、ベクター内でトランス遺伝子と融合することができる。したがって、トランス遺伝子の発現は、心室心筋細胞に比較的制限することができる。
【0073】
ドナー細胞源
本発明のベクター系を送達するためのドナー細胞源は、これらに限定されないが、骨髄由来細胞、例えば、間葉細胞および間質細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、SP細胞、多能性細胞または全能細胞、例えば、奇形腫細胞、造血幹細胞、例えば、臍帯血および単離CD34細胞からの細胞、多能性成体前駆細胞、成体幹細胞、胚性幹細胞、骨格筋由来細胞、例えば、骨格筋細胞および骨格筋芽細胞、心筋細胞、ミオサイト、例えば、心室ミオサイト、心房ミオサイト、SA結節ミオサイト、AV結節ミオサイト、およびプルキンエ細胞を含む。一実施形態において、ドナー細胞は、自己細胞であるが、非自己細胞、例えば、異種細胞が使用されてもよい。ドナー細胞は、受容哺乳動物への投与に対するドナー細胞集団の拡大を提供するために、体外において拡大することができる。さらに、ドナー細胞は、以下に例示されるように、体外において治療されてもよい。ドナー細胞源およびそれらの細胞を培養する方法は、当業者に周知である。
【0074】
ドナー細胞は、参照することにより本明細書に組み込まれる、「METHOD AND APPARATUS FOR CELL AND ELECTRICAL THERAPY OF LIVING TISSUE」という名称の米国特許出願第10/722,115号に記載されるように、それらを、機械的、電気的、または生物学的条件付け、またはその任意の組み合わせに暴露させることによって、体外で治療されてもよく、条件付けは、外因性刺激への連続または間欠暴露を含んでもよい。例えば、生物学的条件付けは、ドナー細胞を、外因性薬剤、例えば、分化因子、増殖因子、血管新生タンパク質、生存因子、およびサイトカインに暴露させることを含む。好適な外因性薬剤として、移植後のドナー細胞の局在、移植、分化、増殖および/または機能を強化する薬剤を含む。一実施形態において、遺伝子組み換え(トランスジェニック)ドナー細胞は、本発明のベクター系を有することに加えて、発現カセットを含んでもよく、ドナー細胞における発現は、移植後のドナー細胞の増殖、局在、移植、分化および/または機能を強化する。
【0075】
投与経路、用量、および剤形
本発明による遺伝子送達ベクターの投与は、例えば、受容者の生理学的状態、投与の目的が治療的または予防的であるか、および当業者に周知の他の因子によって、連続または間欠であってもよい。遺伝子送達ベクターの投与は、原則的に、事前に選択した期間にわたって継続してもよいか、または一連の間隔の空いた用量であってもよい。局所および全身投与の両方が検討される。
【0076】
任意で、持続放出のために調製されてもよい、遺伝子送達ベクターを備える1つ以上の適切な単位剤形は、経口または、直腸、口腔、膣内および舌下、経皮、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、胸郭内、肺内および鼻腔内経路を含む非経口を含む多様な経路によって投与することができる。製剤は、必要に応じて、便宜上、個別単位剤形で提示されてもよく、薬局で周知の任意の方法によって調製されてもよい。そのような方法は、ベクターを液体キャリア、固体マトリクス、半固体状キャリア、微粉化固体キャリア、またはその組み合わせに関連させ、その後、必要であれば、生成物を所望の送達系に導入または形付けるステップを含んでもよい。
【0077】
特定の転帰を得るために投与された遺伝子送達ベクター、例えば、組み換え細胞または細胞型に存在するベクターの量は、これらに限定されないが、選択された遺伝子およびプロモーター、状態、患者特異的パラメータ、例えば、身長、体重、および年齢、および診断、または予防または治療が得られるかどうかを含む種々の因子による。本発明の遺伝子送達ベクター系は、予防的目的のため連用に適している。
【0078】
本発明のベクターは、例えば、血流へ(例えば、冠動脈内動脈)への投与に適切な製剤の形で、便宜上、提供されてもよい。適切な投与形態は、標準的な方法によって、個人的に各患者に対して開業医によって決定されるのが最良である。適切な薬学的に許容されるキャリアおよびそれらの製剤は、標準的な製剤の論文、例えば、RemingtonのPharmaceuticals Sceiencesにおいて記載される。本発明のベクターは、好ましくは、溶液をほぼ等張性にする賦形、例えば、概して、安全と見なされるリン酸ナトリウム等の当技術分野で周知の緩衝液で中和されたpHの4.5%マンニトールまたは0.9%塩化ナトリウムと、メタクレゾール0.1%から0.75%、より好ましくは、0.15%から0.4%メタクレゾール等の許容される防腐剤とともに、中性pH、例えば、約pH6.5から約pH8.5、より好ましくは、約pH7から8の溶液において調製されるべきである。所望の等張性は、塩化ナトリウム、またはデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(マンニトールおよびソルビトール等)または他の無機または有機溶質等の他の薬学的に許容される薬剤を使用して得ることができる。塩化ナトリウムは、特に、ナトリウムイオンを含有する緩衝液に対して好適である。必要に応じて、上記組成の溶液は、保存期間および安定性を強化するように調整することもできる。本発明の治療に有用な組成物は、以下の一般に認められている方法に従って成分を混合することによって調製することができる。例えば、選択された成分は、混合し、水、および/またはpHを調節するための緩衝液または弾力性を調節するための付加的溶質の添加によって、その後、最終濃度および粘度に調整されてもよい濃縮した混合物を生成することができる。
【0079】
ベクターは、1つまたは複数の用量において効果的なベクターの量を含有する剤形で提供することができる。ウイルスベクターに関して、有効量は、少なくとも約10ウイルス粒子、好ましくは、約10ウイルス粒子、およびより好ましくは、約1011ウイルス粒子の範囲にあってもよい。ウイルス粒子の数は、1014を超えない場合があるが、好ましくは、超えない。言及するように、投与される正確な用量は、担当臨床医によって決定されるが、好ましくは、1mlのリン酸塩緩衝生理食塩水にある。組み換え細胞の送達に関して、投与される細胞の数は、受容者に有益な効果をもたらす量である。例えば、10から1010、例えば、10から10、10から10、または10から10で、細胞を投与することができる。プラスミドDNA単独、または他の高分子との複合体におけるプラスミドDNAの送達に関して、投与されるDNAの量は、受容者に有益な効果をもたらす量である。例えば、0.0001から1mgまたはそれ以上、例えば、1gまで、個別または分割投与、例えば、0.001から0.5mg、または0.01から0.1mgのDNAを投与することができる。
【0080】
一実施形態において、心臓疾患の場合、投与は、適切な冠状動脈カテーテルを使用して、1つまたは両方の冠状動脈(または1つ以上の伏在静脈または内胸動脈グラフトまたは他の導管)への冠動脈内注入によってもよい。多様なカテーテルおよび送達経路は、当技術分野で周知のように、冠動脈内送達を行うために使用することができる。例えば、本発明における使用に適切な多様な汎用のカテーテル、および修正したカテーテルは、商用の供給業者から入手可能である。また、直接冠動脈への注入によって心筋へ送達する場合、当技術分野で周知のように、多くの方法が、カテーテルを冠動脈に導入するために使用することができる。例として、カテーテルは、適宜上、大腿動脈に導入し、腸骨動脈および腹部大動脈を逆行し、冠動脈へ通ることができる。別様に、カテーテルは、まず、上腕または頸動脈に導入し、冠動脈へ逆行することがきる。これら、および他の技術の詳細な記載は、当技術分野において見ることができる(例えば、Topol,(ed.),The Textbook of Interventional Cardiology,4th Ed.(Elsevier2002);Rutherfod,Vascular Surgery,5th Ed.(W.B.Saunders Co.2000);Wyngaarden et al.(eds.),The Cecil Textbook of Medicine、22nd Ed.(W.B.Saunders,2001); およびSabiston,The Textbook of Surgery、16th Ed.(Elsevier2000)を含む上記を参照)。
【0081】
例として、リポソームおよび他の脂質含有遺伝子送達複合体は、1つ以上のトランス遺伝子を送達するために使用することができる。遺伝子送達に対するそのような複合体の調製および使用の原則は、当技術分野において記載されている(例えば、Ledley,Human Gene Therapy,6:1129(1995);Millerら、FASEB Journal,9:190(1995);Chonnら、Cuur.Opin.Biotech.,6:698(1995);Schofieldら、British Med.Bull.,51:56(1995);Brighamら、J.Liposome Res.,3:31(1993)を参照)。
【0082】
遺伝子送達ベクターを含有する製剤処方は、周知およびすぐに利用できる成分を使用して当技術分野で周知の方法によって調製することができる。例えば、薬剤は、一般的な賦形剤、希釈剤、またはキャリアで調製することができ、錠剤、カプセル、懸濁液、粉末等に形成することができる。本発明のベクターは、エリキシル剤、または便利な経口投与用の溶液、または非経口投与、例えば、筋内、皮下または静脈内経路に適切な溶液として調製することもできる。
【0083】
ベクターの製剤処方は、水溶液または無水溶液、または分散の形、または乳剤または懸濁液の形を取ることもできる。
【0084】
一実施形態において、ベクターは、非経口投与(例えば、注入、例えば、ボーラス注入または持続注入による)に対して調製されてもよく、アンプル、薬剤充填済みシリンジ、少量注入容器、または防腐剤を加えた複数用量容器における単位用量形で提示されてもよい。有効成分は、油性または水性媒体において懸濁液、溶液、または乳剤等の形を取ってもよく、懸濁化、安定および/または分散剤等の製剤化剤を含有してもよい。別様に、有効成分は、使用前の、適切な媒体、例えば、無菌のピロゲンのない水での構成のために、無菌固体の無菌単離または溶液からの凍結乾燥によって得られた粉体形状であってもよい。
【0085】
これらの製剤は、従来知られている薬学的に許容される媒体およびピロゲンアジュバントを含有することができる。例えば、生理学的観点から許容される1つ以上の有機溶媒を使用して溶液を調製することが可能である。
【0086】
吸入による上(鼻)または下気道への投与に関して、ベクターは、適宜上、吸入器、噴霧器または加圧パック、またはエアゾールスプレーを送達する他の便利な手段から送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガス等の適切な高圧ガスを包含してよい。加圧エアゾールの場合、用量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定されてもよい。
【0087】
別様に、吸入または通気によって投与は、乾燥粉末、例えば、治療剤の混合粉体、および乳糖またはでんぷん等の適切な粉末基剤の形を取ってもよい。粉末組成物は、単位剤形、例えば、カプセルまたはカートリッジ、または、例えば、粉末が、吸入器、通気器または定量吸入器の援助で投与されてもよいゼラチンまたはブリスター包装で提示されてもよい。
【0088】
鼻腔内投与に関して、ベクターは、プラスチックのアトマイザ容器または定量吸入器等の点鼻薬、液状製品を介して投与されてもよい。アトマイザの典型として、Mistometer(Wintrop)およびMedihaler(Riker)がある。
【0089】
ベクターの局部送達は、ベクターを疾患部位に、または近くに投与する多様な技術によってもよい。部位特異的または標的局部送達技術の実施例は、利用可能な技術を限定するためではなく、説明のためである。実施例は、点滴または留置カテーテル、例えば、針付き注入カテーテル等の局部送達カテーテル、シャントおよびステント、または他の埋込型デバイス、部位特異的キャリア、直接注入、または直接適用を含む。
【0090】
局所投与に関して、ベクターは、標的領域への直接適用に対して、当技術分野で周知のように調製されてもよい。この目的のための従来の形としては、創傷包帯、コーティングされた包帯または他のポリマー被膜、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゼリー、スプレー、およびエアゾール、および歯磨き粉およびマウスウォッシュ、または他の適切な形を含む。軟膏およびクリームは、例えば、適切な増粘および/またはゲル化剤が添加された水性または油性基剤で調製される。ローションは、水性または油性基剤で調製されてもよく、概して、1つ以上の乳化剤、安定剤、分散薬剤、増粘剤、または着色剤も含有する。有効成分は、例えば、米国特許第4,140,122号、第4,383,529号、または第4,051,842号において記載されるイオン導入法によって送達することもできる。局所製剤に存在する本発明の治療剤の重量パーセントは、種々の因子によるが、概して、製剤の総重量の0.01%から95%、通常、0.1から25重量%である。
【0091】
必要に応じて、上記の製剤は、例えば、天然ゲル、合成ポリマーゲル、またはその混合物を備える特定の親水性ポリマーマトリクスとの組み合わせによって使用される有効成分の持続放出を与えるために使用することができる。
【0092】
点眼薬または点鼻薬等の滴下は、1つ以上の分散剤、可溶化剤または懸濁化剤も備える水性または非水性基剤で調製されてもよい。液状製品は、適宜上、加圧パックから送達される。滴下は、簡易蓋付き点眼ボトル、または液体量を、特殊形状の閉じ材を介して滴下で送達するために使用されるプラスチックのボトルを介して送達することができる。
【0093】
ベクターは、口または喉での局所投与に対してさらに調製されてもよい。例えば、有効成分は、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントの風味のある基剤をさらに備えるトローチ剤、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア等の不活性基剤において組成物を備えるトローチ、適切な液体キャリアにおいて本発明の組成物を備えるマウスウォッシュ、および本発明の組成を備えるペーストおよびゲル、例えば、歯磨き粉またはゲルとして調製されてもよい。
【0094】
本明細書において記載される製剤および組成物は、抗菌剤または防腐剤等のほかの成分も含有してもよい。
【0095】
心臓送達に対する例示的な経路
心膜点滴、心内膜心筋注入、冠動脈内注入、冠静脈逆行性かん流、および大動脈基部注入を含む心臓遺伝子送達に対するいくつかの技術は、開発されている(Isner,Nature,415:234(2002))。異なる技術は、遺伝子送達の同質性における可変反応を得て、心臓内の限局性遺伝子発現を引き起こす(Hajjar et al.Circ.Res.,86:616(2000)。このため、広範性摂取を得る技術は、優れているように思われる。2つのそのような方法は、播種性ウイルス性トランスフェクションを遂行するために心臓の動脈および静脈循環を使用する。クロスクランプした大動脈への経皮的方法によって直接、または点滴によって間接的に行った動脈注入は、心不全の動物モデルにおいて有望性を示し、心臓手術時に、または経皮インターベンションとして行うことができるという点で魅力的である(Hajjarら、PNAS USA,95:5251(1998))。同様に、冠状静脈洞を通る逆行性かん流は、局部的または限局的注入技術と比較して、より広範囲の遺伝子発現を生成すると思われる(Boechstegersら、Circ.,100:1(1999))。
【0096】
組み換え細胞は、静脈内、経静脈的、心筋内、または任意の他の便利な経路によって投与されてもよく、針、カテーテル、例えば、注射針または注入ポートを含むカテーテル、または他の適切なデバイスによって送達されてもよい。
【0097】
直接心筋注入
プラスミドDNA、およびウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクター、および組み換え細胞を含む細胞の直接心筋注入は、多くの体内研究において実証されている。プラスミドDNAまたはアデノウイルスベクターとともに使用される場合、この技術は、心筋細胞の効果的な形質導入をもたらすことが示されている。そのため、直接注入は、開心術を受ける患者における補助療法としてか、または小切開を通る修正したソラスコープを介する独立型方法として使用されてもよい。一実施形態において、投与のこのモードは、分泌生成物(例えば、VEGF、内皮一酸化窒素合成酵素)をコード、またはそれをもたらす遺伝子等の、有意な治療反応を生成するために限定的なトランスフェクション効率性のみを必要とする遺伝子または遺伝子産物を送達するために使用される。ウイルス、例えば、偽型、またはDNA−、またはウイルス−リポソーム複合体は、心筋内に送達されてもよい。
【0098】
カテーテルに基づく送達
遺伝物質の冠動脈内送達は、主に冠動脈の分布において、約30%のミオサイトの形質導入を引き起こすことができる。冠動脈内かん流によるベクターの送達を影響し、形質導入された心筋の部分を強化するパラメータとしては、高冠状動脈流量、より長い暴露時間、ベクター濃度、および温度を含む。心筋の実質的により高い割合への遺伝子送達は、低カルシウム高セロトニン混合物における遺伝子を投与することによって強化されてもよい(Donahueら、Nat.Med.,6:1395(2000))。心不全に対する遺伝子療法のこの方法の潜在的使用は、ベクター(例えば、心臓トロポニンT)の心筋摂取を強化する特定のタンパク質の使用によって増加してもよい。
【0099】
カテーテルに基づく遺伝子送達の改善された方法は、体内における心筋のほぼ完全なトランスフェクションを得ることができた。Hajjarら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:5251(1998))は、大動脈および肺動脈のクロスクランプ中に、左室心尖部を通り大動脈弁にわたる外科的カテーテル挿入と、対象の遺伝子の還流とを組み合わせた技術を使用した。この技術は、心臓のほぼ完全な形質導入をもたらし、大動脈がクロスクランプされ得る場合の開心術中の補助的遺伝子療法の送達のためのプロトコルとなることがある。
【0100】
組み換え細胞は、カテーテルを介して送達されてもよい。
【0101】
心膜送達
心膜への遺伝物質の注入による心室心筋へ遺伝子送達は、心筋の心外膜層への効率的な遺伝子送達を示した。しかしながら、ヒアルロニダーゼおよびコラゲナーゼは、心室機能に対する任意の悪影響なしで、形質導入と強化してもよい。組み換え細胞は、心膜の周囲に送達されてもよい。
【0102】
静脈内送達
静脈内遺伝子送達は、心筋遺伝子送達に対して有効であってもよい。しかしながら、静脈内投与したベクターの標的送達および形質導入の効率性を改善するためには、標的ベクターが使用されてもよい。一実施形態において、DNA−リポソームまたは抗体−DNA複合体の静脈内投与が使用されてもよい。
【0103】
リード線に基づく送達
遺伝子送達は、遺伝子送達デバイスまたは管腔を、ペーシングリード、除細動リード、またはペーシング除細動リード等のリード線に組み込むことによって行うことができる。遺伝子送達デバイスまたは管腔を含む心内膜リードは、心筋の心内膜層への遺伝子送達を可能にする。遺伝子送達デバイスまたは管腔を含む心外膜リードは、心筋の心外膜層への遺伝子送達を可能にする。遺伝子送達デバイスまたは管腔を含む経静脈リードも、静脈内遺伝子送達を可能にしてもよい。リード線に基づく送達は、リード線が、同じ領域に電気および遺伝子療法を送達するために使用される場合、特に有益である。
【0104】
概して、経口、粘膜、筋内、口腔および直腸投与を含む、投与の任意の経路は、使用されてもよい。特定のベクターに関して、投与の特定の経路が好ましい場合がある。例えば、ウイルス、例えば、偽型ウイルス、およびDNA−、またはウイルス−リポソーム、例えば、HVJ−リポソームは、冠状動脈の点滴によって投与されてもよいが、HVJ−リポソーム複合体は、心膜の周囲に送達されてもよい。
【0105】
組み換え細胞は、全身的に、例えば、静脈内に送達されてもよい。
【0106】
例示的なベクター系
本明細書において論じられるように、システムは、虚血の自動検出、または虚血の危険性がある組織を救う、または保護することができる自動検出および治療を提供する。本システムは、低酸素感受性遺伝子産物、例えば、低酸素誘導因子(HIF)(例えば、NCBI登録番号NP001521、NP0851397、Q16665、AAC50152、CAH17551、またはAAC68568を参照)、あるいはCREB(例えば、NCBI登録番号AAD13869、P16220、P15337、AAL47131、P27925、NP604391およびNP004370を参照)(それぞれ、参照することにより本明細書に組み込まれる)に基づき、虚血事象後の1つ以上の位置における虚血に特異的な検出または治療を提供する。正常酸素圧条件下では、HIF−1αタンパク質等の低酸素感受性遺伝子産物は、安定していなく、迅速に分解する。一実施形態において、低酸素感受性遺伝子は、心臓特異的プロモーター、例えば、MLC−2vまたはMHC−βを有するプロモーターの下流にある。低酸素条件下で、低酸素感受性遺伝子産物は、安定し、転写調節領域を備えるHREと相互に作用し、治療またはバイオマーカ−の発現を活性化する。そのため、システムは、HREと連結される、低酸素感受性遺伝子産物の発現および心臓に有益な遺伝子の虚血誘導発現によって即座に、および自動的に活性化される、例えば、心臓の治療または心臓保護に対する固有の空間的特異性を提供する。システムは、低酸素症(虚血)を感知し、対象遺伝子、例えば、対象治療またはレポータ遺伝子を転写活性化する少なくとも1つのベクターセット、および任意で電気または薬物療法を送達するデバイスを含む閉ループ系である。一実施形態において、有益な遺伝子は、デバイス療法に対する基質をコードする。例えば、有益な遺伝子は、AChR(例えば、ムスカリン性受容体)をコードする遺伝子であってもよい。低酸素安定遺伝子産物の持続発現によって誘導される、心臓における虚血部位における、AChR受容体の発現の増加は、より効果的に作用するために迷走神経刺激療法(VST)に対する基質(受容体)の増加を提供してもよい。
【0107】
他の対象治療または心臓保護遺伝子は、これらに限定されないが、心筋虚血の位置において即座に刺激される場合、治療的および心臓保護的である、内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)(例えば、開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる、NCBI登録番号NP000594、CAA53950、AAK71989、またはBAA05652を参照)、ヘムオキシゲナーゼ、例えば、HO−1(例えば、開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる、NCBI登録番号CAA32886、P09601、またはP14901を参照)、熱ショックタンパク質(HSP)、例えば、HSP70(例えば、開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる、NCBI登録番号I56208、NP005336、NP694881、AAK17898、NP005337、またはAAA02807を参照)、サイトカイン、生存因子、例えば、Akt(例えば、開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる、NCBI登録番号NP001014432、NP001014431、またはNP005154を参照)、またはVEGF等の増殖因子(例えば、開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる、NCBI登録番号AAK95844、AAC63143、CAI19965、CAC19516、CAC19515、CAC19514、CAC19513、CAC19512、AAV34601、またはAAL27630)を含む。
【0108】
本システムは、効果的な療法に対するガイドとして、危険性のある臓器または組織の特定の位置情報を提供するバイオマーカ−の虚血誘導発現も可能にする。心筋虚血に対するシステムの一実施例は、放射性試薬、例えば、特定の期間、放射性過テクネチウム酸ナトリウムNa99mTcOを結合するヒトヨウ化ナトリウム共輸送体(hNIS)、放射性リン、炭素、ヨウ化物、または診断法において有用な他の分子、例えば、磁気共鳴映像法に対して使用されてもよいガドリニウムを結合する遺伝子産物を結合または引き付けるタンパク質をコードするレポータ遺伝子を含む。一実施形態において、虚血の部位におけるナトリウム、またはその類似体、例えば、IA族の金属を結合するタンパク質の発現は、非侵襲性PETスキャン、または他の放射線ベースの機器による心筋虚血の検出に対する位置マーカを提供する。
【0109】
他の実施例として、対象の遺伝子は、分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)等の分泌タンパク質をコードするレポータ遺伝子であることがある。SEAPは、適宜上、血液サンプルから採取されてもよく、HIF−1α発現に誘導されたSEAPレベルの上昇は、MIの危険性がある心筋虚血または心臓を示す場合がある。そのようなシグナルは、適切なデバイス介入、例えば、ペースメーカまたは薬物ポンプに対する指標として使用することができる。
【0110】
デバイス
本明細書において論じられる遺伝子に基づく虚血検出および治療は、デバイス療法と併用されてもよい。デバイス療法としては、埋込型医療デバイス等のデバイスによって送達される1つ以上の心臓保護療法を含む。一実施形態において、心臓保護デバイスは、遺伝子療法の有効性を強化するために使用される。他の実施形態において、心臓保護デバイスは、本明細書において論じられる生物学的検出方法を使用して虚血の検出応じて1つ以上の心臓保護療法を送達する。
【0111】
図3は、デバイス療法を送達するための心臓保護デバイス300のある実施形態を示すブロック図である。デバイス300は、センサー330、虚血検出器332、心臓保護治療用コントローラ340、および心臓保護治療用出力デバイス350を含む。
【0112】
センサー330は、虚血事象を示す1つ以上の生理学的パラメータ、または1つ以上の生理学的パラメータにける変化を感知する。虚血事象の実施例としては、急性心筋梗塞、および心筋梗塞の相当な危険性を示す検出可能な状態を含む。虚血検出器332は、1つ以上の生理学的パラメータから虚血事象、または1つ以上の生理学的パラメータにおける変更を検出する。虚血事象の検出応じて、心臓保護治療用コントローラ340は、1つ以上の心臓保護療法の送達を開始および調節する。心臓保護治療用出力デバイス350は、1つ以上の心臓保護療法を送達する。
【0113】
虚血検出器332は、1つ以上の生理学的パラメータからの虚血事象、またはそれにおける変更を検出するために自動虚血検出アルゴリズムを管理する虚血分析器を含む。一実施形態において、虚血検出器332は、各虚血事象の検出を示す虚血警告シグナルを生成する。一実施形態において、虚血警告シグナル応じて、デバイス300は、患者によって感知可能な所定の音声トーン等の警報シグナルを生成する。他の実施形態において、虚血警告シグナルは、医師または他の介護者に対する警報シグナルおよび/または警告メッセージを生成するために、遠隔地へ送信される。
【0114】
一実施形態において、虚血検出器332は、SEAPレベルを示すパラメータから虚血事象を検出する。センサー330は、血液中のSEAPを感知し、SEAPレベルを示すパラメータを生成する。虚血検出器332は、SEAPレベルを示すパラメータと閾値を比較することによって虚血事象を検出する。虚血事象は、SEAPレベルを示すパラメータが閾値を超える場合、すなわち、血液SEAPレベルが一定のレベルに上昇した場合、検出される。
【0115】
他の実施形態において、虚血検出器332は、1つ以上の心臓パラメータからの虚血事象、またはそれにおける変更を検出する。センサー330は、心臓感知回路を含む。特定の実施形態において、センサー330は、1つ以上の電位図を感知する電位図感知回路を含み、虚血検出器332は、1つ以上の電位図から虚血事象を検出する。電位図に基づく虚血検出器の実施例は、「METHOD AND APPARATUS FOR DETECTING CHANGES IN ELECTROCARDIOGRAM SIGNALS」という名称の米国特許第6,108,577号、および2001年9月25日出願の「EVOKED PRESPONSE SENSING FOR ISCHEMIA DETECTION」という名称の同第09/962,852号に記載され、両方ともCardiac Pacemaker,Inc.に譲渡され、それら全体で参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0116】
他の実施形態において、虚血検出器332は、1つ以上のインピーダンスパラメータから虚血事象を検出する。センサー330は、それぞれ心臓インピーダンスまたは経胸腔インピーダンスを示す1つ以上のインピーダンスパラメータを感知するためにインピーダンス感知回路を含む。虚血検出器332は、周波数インピーダンスから虚血事象を検出するための低搬送周波数を使用する周波数インピーダンスに基づくセンサーを含む。組織周波数インピーダンスは、Dzwonczyk,et al.,IEEE Trans.Biomed.Eng.,51(12): 2206−09(2004)において論じられるように、虚血中は有意に増加し、虚血後は有意に低下することが示されている。虚血検出器は、心臓に間置された電極の間の低周波数周波数インピーダンスを感知し、インピーダンス急変(値の急激な増加等)として虚血を検出する。特定の実施形態において、虚血検出器332は、虚血事象を検出するリアクタンスに集中して複合体インピーダンスをモニタする。インピーダンスの虚血に誘導された変化は、主に、無効分において生じるため、インピーダンスの無効分に対して集中することは、虚血検出の高感度を提供する。他の特定の実施形態において、虚血検出器332は、心室領域の体積または壁運動をモニタするために配置された複合電極によって感知された多重インピーダンスパラメータから虚血事象を検出する。インピーダンスパラメータは、虚血によって引き起こされた局所的心収縮の変化を示す。虚血事象は、テンプレート照合技術の使用等、インピーダンスパラメータの形態および/または時間的変化を分析することによって検出される。
【0117】
他の実施形態において、虚血検出器332は、心音を示す1つ以上のパラメータから虚血事象を検出する。センサー330は、心音感知回路を含む。心音感知回路は、加速度計および/またはマイクロホン等の1つ以上のセンサーを使用して、心音を示す1つ以上のパラメータを感知する。虚血検出器332は、所定の種類の心音、所定種類の心音成分、所定の種類の心音の形態特徴、または虚血を示す心音の他の特徴を検出することによって虚血事象を検出する。
【0118】
他の実施形態において、虚血検出器332は、1つ以上の圧力パラメータから虚血事象を検出する。センサー330は、1つ以上の圧力センサーに連結した圧力感知回路を含む。特定の実施形態において、圧力センサーは、それらの特徴は虚血を示す心内または血管内圧力を示すパラメータを感知する埋込型圧力センサーである。
【0119】
他の実施形態において、虚血検出器332は、それぞれ局部的な臓壁運動を示す1つ以上の加速パラメータから虚血事象を検出する。センサー330は、それぞれ心臓上または心臓内に配置されたリード線の一部に組み込まれた1つ以上の加速度計に連結した心臓運動感知回路を含む。虚血検出器332は、局所的心臓の加速の振幅における急激な低下として虚血を検出する。
【0120】
他の実施形態において、虚血検出器332は、心拍変動(HRV)を示すパラメータから虚血事象を検出する。センサー330は、HRVを代表するパラメータを感知または生成するHRV感知回路を含む。HRVは、ある期間にわたる心臓周期長における心拍間隔の変化である。HRVパラメータは、ある期間にわたる心臓周期長における心拍間隔の変化の任意の質的発現を含む、HRVの目安である任意のパラメータを含む。特定の実施形態において、HRVパラメータは、低周波数(LF)HRV対高周波数(HF)HRVの比率(LF/HF比率)を含む。LF HRVは、約0.04Hzから0.15Hzの間の周波数を有するHRVの成分を含む。HF HRVは、約0.15Hzから0.40Hzの間の周波数を有するHRVの成分を含む。虚血検出器332は、LF/HF比率が所定の閾値を超える場合、虚血を検出する。LF/HF比率に基づく虚血検出器の実施例は、Cardiac Pacemaker,Inc.に譲渡され、それら全体で参照することにより本明細書に組み込まれる、2003年9月23日出願の「METHOD FOR ISCHEMIA DETECTION BY IMPLANTABLE CARDIAC DEVICE」という名称の米国特許出願第10/669,168号において記載される。
【0121】
図4は、デバイス療法を送達するための心臓保護デバイス400のある実施形態を示すブロック図である。デバイス400は、デバイス300の特定の実施形態であり、センサー330、虚血検出器332、心臓保護治療用コントローラ440、および心臓保護治療用出力デバイス450を含む。
【0122】
心臓保護治療用コントローラ440は、心臓保護治療用コントローラ340の特定の実施形態であり、1つ以上の心臓保護療法の送達を開始し、制御する。一実施形態において、図4に示されるように、心臓保護治療用コントローラ440は、神経刺激コントローラ442、ペーシングコントローラ444、遺伝子調節コントローラ446、および薬物送達コントローラ448を含む。他の実施形態において、心臓保護治療用コントローラ440は、神経刺激コントローラ442、ペーシングコントローラ444、遺伝子調節コントローラ446、および薬物送達コントローラ448のうちの任意の1つ以上を含む。
【0123】
心臓保護治療用出力デバイス450は、心臓保護治療用出力デバイス350の特定の実施形態であり、1つ以上の心臓保護療法を送達する。一実施形態において、図4に示されるように、心臓保護治療用出力デバイス450は、神経刺激出力回路452、ペーシング出力回路454、遺伝子調節シグナル送達デバイス456、および薬物送達デバイス458を含む。他の実施形態において、心臓保護治療用出力デバイス450は、神経刺激出力回路452、ペーシング出力回路454、遺伝子調節シグナル送達デバイス456、および薬物送達デバイス458のうちの任意の1つ以上を含む。
【0124】
神経刺激コントローラ442は、神経刺激出力回路452に送達される神経刺激療法を制御する。一実施形態において、神経刺激療法は、電気刺激パルスが迷走神経に送達されるVSTを含む(例えば、Fallenら、A.N.E.,10:441(2005)を参照)。
【0125】
神経性刺激の実施例は、それら全体で参照することにより本明細書に組み込まれる、以下の特許出願において見ることができる。2006年8月29日出願の「Controlled Titration of Neurostimulation Therapy」という名称の米国出願第11/468,143号、および2006年8月29日出願の「System and Method For Neural Stimulation」という名称の同第11/468,135号。種々の実施形態は、神経カフ電極、およびデバイスから神経へ皮下を通過するリード線を使用して、神経性刺激を迷走神経へ送達する。種々の実施形態は、少なくとも1つの電極を、内頸静脈、または迷走神経の標的に最も近い他の血管に配置するために血管内に送り込まれたリード線を使用して、神経性刺激を迷走神経に送達する。
【0126】
一例として、限定しないが、一実施形態において、神経性刺激は、約20Hzの周波数、約300マイクロ秒のパルス幅、約1.5から2.0ミリアンペアのパルス振幅の電気パルスとして送達される。電気パルスは、それぞれ二相または単相波形を有してもよい。神経性刺激は、所望の神経反応を得るために、連続または間欠的に(例えば、負荷サイクル=10秒間ON、50秒間OFF)のいずれかで加えられるパルス列として送達することができる。そのような刺激は、経過した時間間隔または感知された生理学的状態によって、慢性的または定期的のいずれかで加えられてもよい。例えば、対象神経上または近くにある2つの電極を有する両極性配置、または対象神経上または近くにある電極、および遠視野皮下対極板を有する単極性配置を含む、種々の刺激電極配置を使用することができる。刺激回路は、神経性刺激の送達専用であってもよいか、またはペーシングおよび電気的除細動/除細動等の心刺激に適切な波形も送達するように構成されてもよい。
【0127】
神経性刺激は、二相または単相パルス列として送達されてもよい。ある実施形態において、神経性刺激波形は、交互に起きる極性の相によって送達される。例えば、波形は、両極性刺激配置を有し、単相パルスの相が、それぞれの連続的なパルス列において交互に起きるように「両極性スイッチ」を有する単相パルスとして送達されてもよい。つまり、その後、一方の極性の第1の相を有する単相パルスを有するパルス列の後に、反対の極性の第2の相を有する単相パルスを有するパルス列が続く。
【0128】
電気回路は、コントローラによって特定された刺激強度でパルスを出力するために使用することができる。種々の実施形態は、振幅、周波数、パルス幅、パルス列持続時間等の、神経性刺激波形の特色を調整することによって神経性刺激療法を調整する能力を提供する。
【0129】
ペーシングコントローラ444は、ペーシング出力回路454からの心臓ペーシングパルスの送達を制御する。一実施形態において、ペーシング療法は、心臓保護ペーシング療法を含む。心臓保護ペーシング療法は、交互に起きるペーシングおよび非ペーシング期間の送達を含む。ペーシングコントローラ444は、虚血検出器332による虚血事象の検出に応じて、1つ以上の心臓保護ペーシング配列を開始し、時間を計る。1つ以上の心臓保護ペーシング配列は、それぞれ、交互に起きるペーシングおよび非ペーシング期間を含む。ペーシング期間は、それぞれ、複数のペーシングパルスが送達されるペーシング持続時間を有する。非ペーシング期間は、それぞれ、ペーシングパルスが送達されない非ペーシング持続時間を有する。1つ以上の心臓保護ペーシング配列は、それぞれ、約30秒から1時間の範囲における配列持続時間を有する。ペーシング持続時間は、約5秒から10分の範囲である。非ペーシング持続時間は、約5秒から10分の範囲である。一実施形態において、心臓保護ペーシングの機能は、徐脈および心不全の治療等の長期的にペーシング療法を送達するペーシングデバイスに含まれる。心臓保護ペーシング療法は、虚血事象の検出応じて、1つ以上の短い期間に送達される一時的ペーシング療法であり、ペーシングデバイスは、徐脈ペーシング療法、心臓再同期療法、および心臓リモデリング制御療法等の慢性ペーシング療法も送達する。一時的ペーシング療法は、心臓保護ペーシング療法が、心筋における応力分布を変化させ、それによって、心筋組織への虚血性障害に対する内因性心筋保護メカニズムが誘発するように、慢性ペーシング療法のペーシングモードと実質的に異なるペーシングモードを使用する。一時的ペーシングモードの実施例としては、該当する場合、それらの心拍応答型を含む、VOO、VVI、VDD、およびDDDモードを含む。一実施形態において、ペーシング率は、一時的ペーシングモードの間の患者の内因性心拍数より一分当たり約20パルス高く設定される。特定の実施形態において、心臓保護ペーシング療法が、送達される唯一のペーシング療法(すなわち、慢性ペーシングモードは、非ペーシングモード)である場合、一時的ペーシングモードは、それらの心拍応答および多重心室部位型を含む、VDDまたはDDDモード等の心房追跡ペーシングモードである。慢性ペーシングモードが、VDDまたはDDDモード等の心房追跡ペーシングモードである場合、一時的ペーシングモードは、患者の内因性心拍数より高いペーシング率におけるVOOまたはVVIモード、またはペーシング率、ペーシング部位、および/または心房ペーシング遅延等の実質的に異なるペーシングパラメータを有するVDDまたはDDDモードである。心臓保護ペーシング(心臓保護ペーシングとしても言及される)を送達する埋込型医療デバイスの実施例は、Cardiac Pacemaker,Inc.に譲渡され、それら全体で参照することにより本明細書に組み込まれる、2006年5月11日出願の「METHOD AND APPARATUS FOR INITIATING AND DELIVERING CARDIAC PROTECTION PACING」という名称の米国特許出願第11/382,849号において論じられる。一実施形態において、心臓保護ペーシングは、経皮経管血管インターベンションデバイス上に組み込まれるペーシング電極を通る、血管形成術等の血行再建術中に送達される。ペーシング電極を有する経皮経管血管インターベンションデバイスを含む、血行再建術中に心臓保護ペーシングを送達するためのシステムの実施例は、Cardiac Pacemaker,Inc.に譲渡され、それら全体で参照することにより本明細書に組み込まれる、2005年4月25日出願の「METHOD AND APPARATUS FOR PACING DURING REVASCULARIZATION」という名称の米国特許出願第11/113,828号において論じられる。
【0130】
遺伝子調節コントローラ446は、遺伝子調節シグナル送達デバイス456によって送達される遺伝子調節シグナルによって調節される伝子療法を制御する。遺伝子調節シグナルは、遺伝子療法ベクターにおける遺伝子発現を調節することが可能なエネルギーの形である。エネルギーの形としては、電気エネルギー、電磁エネルギー、光エネルギー、音響エネルギー、熱エネルギー、および遺伝子療法ベクターにおける発現を調節するエネルギーの任意の他の形を含む。遺伝子調節シグナルの実施例としては、電界、電磁場、光、音または超音波シグナル等の音響シグナル、化学剤、および熱シグナルを含む。一実施形態において、遺伝子調節シグナル送達デバイス456は、遺伝子調節シグナルを血液へ送達する。他の実施形態において、遺伝子調節シグナル送達デバイス456は、遺伝子調節シグナルを心臓に送達する。遺伝子調節シグナルは、心臓脱分極を誘導せずに、遺伝子発現を調節することが可能である。一実施形態において、遺伝子調節コントローラ446は、虚血検出器332による虚血事象の検出に応じて、生物学的療法を開始する。生物学的療法は、交互に起きるシグナルおよび非シグナル期間を含む。各シグナル期間は、遺伝子調節シグナルが放出されるシグナル持続時間を有する。各非シグナル期間は、遺伝子調節シグナルが放出されない非シグナル持続時間を有する。生物学的療法は、約30秒から1時間の範囲における治療期間を有する。シグナル持続時間は、約5秒から10分の範囲である。非シグナル持続時間は、約5秒から10分の範囲である。そのような生物学的療法を送達するためのシステムの実施例は、Cardiac Pacemaker,Inc.に譲渡され、それら全体で参照することにより本明細書に組み込まれる、2005年9月6日出願の「METHOD AND APPARATUS FOR DEVICE CONTROLLED GENE EXPRESSION FOR CARDIAC PROTECTION」という名称の米国特許出願第11/220,397号において論じられる。
【0131】
薬物送達コントローラ448は、薬物送達デバイス458からの心臓保護薬剤の送達を制御する。心臓保護薬剤の実施例としては、これらに限定されないが、β遮断薬、利尿薬、ACE阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、硝酸塩、抗血小板物質(抗凝固剤)等を含む。一実施形態において、薬剤は、これらに限定されないが、アデノシン、ブラジキニン、アセチルコリン、および熱ショックタンパク質を含む、前処置またはプレコンディショニングまたはポストコンディショニングのために使用される薬剤である。他の実施形態において、薬剤は、心筋のpHを低下させ、それによって、ポストコンディショニングの心臓保護を提供する。
【0132】
図5は、心調律管理(CRM)システム560、およびシステム560が動作する環境の部分のある実施形態の説明図である。システム560は、埋込型システム565、外部システム575、および埋込型システム565と外部システム575との間の通信を提供するテレメトリ連結573を含む。
【0133】
埋込型システム565は、特に、埋込型医療デバイス570および誘導系568を含む。種々の実施形態において、埋込型医療デバイス570は、ペースメーカ、心臓除細動器/除細動器、心臓再同期療法(CRT)デバイス、心臓リモデリング制御療法(RCT)デバイス、神経刺激器、薬物送達デバイスまたは薬物送達コントローラ、および生物学的療法デバイスのうちの1つ以上を含む埋込型CRMデバイスである。図5に示されるように、埋込型医療デバイス570は、体562に埋め込まれる。種々の実施形態において、誘導系568は、生理学的シグナルを感知し、ペーシングパルス、電気的除細動/除細動ショック、神経刺激パルス、医薬品、生物学的薬剤、および/または心疾患を治療するための他の種類のエネルギーまたは物質を送達するためのリード線を含む。一実施形態において、誘導系568は、それぞれ、電位図を感知し、および/またはペーシングパルスを送達するための、心臓561内またはその上に配置された少なくとも1つの電極を含む、1つ以上のペーシング感知リードを含む。他の実施形態において、体562の中に配置されるが、心臓561からはなれている電極は、生理学的シグナルを感知し、ペーシングパルス、電気的除細動/除細動ショック、神経刺激パルス、医薬品、生物学的薬剤、および/または心疾患を治療するための他の種類のエネルギーまたは物質を送達するために使用される。特定の実施形態において、1つ以上の電極は、皮下配置のための埋込型医療デバイス570の上に組み込まれる。
【0134】
システム560は、心臓保護デバイス300または400を含む。埋込型医療デバイス570は、心臓保護デバイス300または400、またはその一部を含む心臓保護デバイス580を含む。一実施形態において、誘導系568は、心臓保護治療用出力デバイス350または450と体562との間のインターフェースに相当する。1つ以上のリード線は、神経刺激、ペーシングパルス、および電気遺伝子調節シグナルのうちの1つ以上を送達するための電極、および/または遺伝子調節および心臓保護薬剤の1つ以上を送達するための薬物送達構造を含んでもよい。
【0135】
外部システム575によって、医師または他の介護者または患者は、埋込型医療デバイス570の操作を制御し、埋込型医療デバイス570によって取得された情報を得ることができる。一実施形態において、外部システム575は、テレメトリ連結573を介して双方向で埋込型医療デバイス570と通信するプログラマを含む。他の実施形態において、外部システム575は、電気通信網を通って遠隔デバイスと通信する外部デバイスを含む患者管理システムである。外部デバイスは、埋込型医療デバイス570の近くにあり、テレメトリ連結573を介して双方向で埋込型医療デバイス570と通信する。遠隔デバイスによって、医師または他の介護者は、遠く離れた場所から患者をモニタまたは治療することができる。一実施形態において、虚血警告シグナルは、虚血事象の検出時に、埋込型医療デバイスにおいて生成され、医師または他の介護者に対する警報シグナルおよび/または警告メッセージを生成するための遠隔デバイスに送信される。
【0136】
テレメトリ連結573は、埋込型医療デバイス570から外部システム575へのデータ伝送を提供する。これは、例えば、埋込型医療デバイス570によって取得されるリアルタイム生理学的データの送信、埋込型医療デバイス570よって取得され、それに保存される生理学的データの抽出、埋込型医療デバイス570に保存される治療歴データの抽出、虚血警告シグナル等の、埋込型医療デバイス570によって生成される送信シグナル、および埋込型医療デバイス570の稼働状況(例えば、電池状態およびリードインピーダンス)を示すデータの抽出を含む。テレメトリ連結573は、外部システム575から埋込型医療デバイス570へのデータ伝送も提供する。これは、例えば、生理学的データを取得するための、埋込型医療デバイス570のプログラミング、少なくとも1つの自己診断テスト(デバイス稼働状況のため等)を行うための、埋込型医療デバイス570のプログラミング、および心臓保護療法を開始するため等、少なくとも1つの療法を送達するための、埋込型医療デバイス570のプログラミングを含む。
【0137】
すべての出版物、特許、および特許出願は、参照することにより本明細書に組み込まれる。前述の明細書において、本発明は、その特定の好適な実施形態と関連して記載されて、多くの詳細は、説明のために示されるが、本発明は、付加的実施形態を受け入れる余地があり、本明細書における特定の詳細は、発明の基本原理から逸脱せずに大幅に変化してもよいことは、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)正常酸素圧条件下で不安定であり、低酸素条件下で安定であり、特定のDNA配列を結合する、遺伝子産物のための第1のオープンリーディングフレームに操作可能に連結される、臓器特異的、組織特異的、または細胞特異的な、あるいはエネルギー調節された、転写調節エレメントを含む、転写調節領域を備える第1のベクターと、
b)治療用遺伝子産物、心臓保護遺伝子産物、またはバイオマーカ−のための第2のオープンリーディングフレームに操作可能に連結される、該特定のDNA配列を含む、転写調節領域を備える第2のベクターと、
を含む、ベクター系。
【請求項2】
前記第1のベクターにおける前記転写調節領域は、心臓特異的転写調節エレメントを含む、請求項1に記載のベクター系。
【請求項3】
前記第1のオープンリーディングフレームは、低酸素誘導性遺伝子産物をコードする、請求項1および2のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項4】
前記第2のオープンリーディングフレームは、受容体をコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項5】
前記第2のオープンリーディングフレームは、アセチルコリン受容体(AChR)をコードする、請求項4に記載のベクター系。
【請求項6】
前記第2のオープンリーディングフレームは、内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)をコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項7】
前記第2のオープンリーディングフレームは、ヘムオキシゲナーゼ(HO)をコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項8】
前記第2のオープンリーディングフレームは、熱ショックタンパク質(HSP)をコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項9】
前記第2のオープンリーディングフレームは、Aktをコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項10】
前記第2のオープンリーディングフレームは、分泌タンパク質をコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項11】
前記第2のオープンリーディングフレームは、分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をコードする、請求項10に記載のベクター系。
【請求項12】
前記第2のオープンリーディングフレームは、非脊椎動物細胞関連バイオマーカ−をコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項13】
前記第2のオープンリーディングフレームは、増殖因子をコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項14】
前記第2のオープンリーディングフレームは、血管内皮増殖因子(VEGF)をコードする、請求項13に記載のベクター系。
【請求項15】
前記第2のオープンリーディングフレームは、サイトカインをコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項16】
前記第2のオープンリーディングフレームは、アンカータンパク質をコードする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項17】
前記第2のオープンリーディングフレームは、ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)をコードする、請求項16に記載のベクター系。
【請求項18】
哺乳動物の細胞における有効量での前記第2のオープンリーディングフレームの発現は、該哺乳動物における心虚血を予防、抑制、または治療する、請求項1から17のうちのいずれか1項に記載のベクター系。
【請求項19】
請求項1から18のうちのいずれか1項に記載のベクター系を有する哺乳動物細胞。
【請求項20】
幹細胞である、請求項19に記載の哺乳動物細胞。
【請求項21】
少なくとも2つのベクターを含む組成物であって、第1のベクターは、正常酸素圧条件下で不安定であり、低酸素条件下で安定であり、特定のDNA配列を結合する、遺伝子産物のための第1のオープンリーディングフレームに操作可能に連結される、臓器、組織、または細胞特異的な、あるいはエネルギー調節された、転写調節エレメントを含む、転写調節領域を備え、第2のベクターは、治療用遺伝子産物または心臓保護遺伝子産物のための第2のオープンリーディングフレームに連結される、該特定のDNA配列を含む、転写調節領域を備える、組成物と、
該治療用または心臓保護遺伝子産物の効能を強化する、電気、生物学、または薬物療法のうち1つ以上を送達するように適合される埋込型デバイスと、
を備える、システム。
【請求項22】
前記組織特異的転写調節エレメントは、心臓特異的である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1のオープンリーディングフレームは、低酸素誘導因子をコードする、請求項21および22のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1のオープンリーディングフレームは、cAMP調節エレメント結合タンパク質をコードする、請求項21および22のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記埋込型デバイスは、虚血事象を検出する虚血検出器を備える、請求項21から24のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記埋込型デバイスは、分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)レベルを感知するセンサーを備え、前記虚血検出器は、該SEAPレベルを使用して前記虚血事象を検出するように適合される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記埋込型デバイスは、神経刺激器を備える、請求項21から26のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記埋込型デバイスは、心臓ペースメーカを備える、請求項21から27のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記埋込型デバイスは、遺伝子調節シグナル送達デバイスを備える、請求項21から28のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
前記埋込型デバイスは、薬物送達デバイスを備える、請求項21から29のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項31】
前記第1および第2のベクターは、ドナー哺乳動物細胞の中にある、請求項21から30のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1および第2のベクターは、哺乳動物の心臓細胞の中にある、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記第1および第2のベクターは、哺乳動物の幹細胞の中にある、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
虚血を検出する方法であって、該方法は:
a)請求項1から3、10から11、または13から17のいずれかに記載のベクター系を備える細胞を有する哺乳動物を提供するステップであって、第2のオープンリーディングフレームは、ナトリウム、リン、ヨウ素、炭素、またはガドリニウム、あるいはそれらの類似体を結合する、分泌型バイオマーカ−または遺伝子産物をコードする、ステップと、
b)該哺乳動物において、ナトリウム、リン、ヨウ素、炭素、またはガドリニウム、あるいはそれらの類似体を結合する、該分泌型バイオマーカ−またはタンパク質を検出するステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
前記分泌型バイオマーカ−の検出に応じて電気療法を前記哺乳動物に送達するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記分泌型バイオマーカ−は、SEAPを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
埋込型デバイスは、前記分泌型バイオマーカ−を検出する、請求項34から36のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
ナトリウム、リン、ヨウ素、炭素もしくはガドリニウムまたはそれらの類似体を結合する前記タンパク質の位置または存在は、放射性ナトリウム、リン、ヨウ素、炭素もしくはガドリニウムまたはそれらの類似体、あるいは放射性ナトリウム、リン、ヨウ素、炭素、またはガドリニウム、あるいはそれらの類似体を含有する分子、あるいはガドリニウムを投与することによって検出される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
請求項1から10、13から15または18のうちのいずれか1項に記載のベクター系を哺乳動物に導入するステップを含み、第2のオープンリーディングフレームは、治療用または心臓保護遺伝子産物をコードする、虚血を治療するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−505421(P2010−505421A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531495(P2009−531495)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/069643
【国際公開番号】WO2008/042473
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】