説明

誘導結合プラズマ源用の内部分割ファラデー・シールド

【課題】ビームを形成する目的に対して望ましい小さなエネルギー幅を得るために、荷電粒子ビーム・システム内でのプラズマとの容量結合を低減させる。
【解決手段】集束荷電粒子ビーム・システム用の誘導結合プラズマ源200は、プラズマとの容量結合を低減させるため、プラズマ室102内に導電性シールド202を含む。この内部導電性シールドは、バイアス電極106またはプラズマ104によってプラズマ源と実質的に同じ電位に維持される。この内部シールドは、プラズマ室の外側においてより幅広いさまざまな冷却方法を使用することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束ビーム・システム用の誘導結合プラズマ・イオン源に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ・イオン技術は、半導体ウェーハの処理に対して一般的に使用されている。半導体ウェーハ全体を処理するように設計されたイオン源は、300mmウェーハの上など、広い面積の上に均一なイオン・ビームを供給することが求められる。そのようなプラズマ・システムの1つの用途はフォトレジストの除去であろう。プラズマは、単原子フッ素、単原子酸素などの反応性の種を生成させ、それらの反応性の種はフォトレジストと反応してフォトレジストを灰に変え、その灰は続いて真空ポンプによって除去される。この灰化は、スパッタリングによってではなく反応性の種によって実行されるため、加工物に衝突するイオンのエネルギーを比較的に小さくすることができ、プラズマ室の内部と加工物の間の電圧差は一般に小さい。
【0003】
走査電子顕微鏡、集束イオン・ビーム・システムなどの集束ビーム・システムで使用されるプラズマ源に対する要件は、ウェーハ全体を処理するシステムで使用されるプラズマ源に対する要件とはかなり異なる。イオン・ビームまたは電子ビームは1ミクロン未満のスポットに集束させる。集束システムは一般に、仮想イオン源(virtual ion source)の縮小された像を試料に投影するため、試料に小さなスポットを作り出すためには、荷電粒子が放出される源である仮想イオン源が小さくなければならない。すなわち、イオン源は、小さな面積から比較的に多数のイオンが到来するようなものであるべきである。ビーム中の全ての荷電粒子のエネルギーは同等でなければならず、そうでなければ、色収差が、荷電粒子が微細な点に集束することを妨げる。
【0004】
集束カラムとともに使用されて荷電粒子の集束ビーム、すなわちイオンまたは電子の集束ビームを形成するとき、誘導結合(inductively coupled)(IC)プラズマ源は、他のタイプのプラズマ源よりも有利な点を有する。誘導結合プラズマ源は、狭いエネルギー範囲内の荷電粒子を供給することができ、それによって小さなスポットに粒子を集束させることができる。本発明の譲受人に譲渡された、参照によって本明細書に組み込まれるKeller他の「Magnetically Enhanced,Inductively Coupled Plasma Source for a Focused Ion Beam System」という名称の米国特許第7,241,361号に記載されているものなどのICプラズマ源は高周波(radio frequency)(RF)アンテナを含み、このRFアンテナは一般に、セラミック製のプラズマ室の周囲に巻き付けられている。このRFアンテナは、プラズマ室内においてガスをイオン化された状態に維持するためのエネルギーを供給する。
【0005】
集束荷電粒子ビーム・システムはしばしば、材料をエッチングしもしくは付着させ、または加工物の画像を形成する目的に使用され、荷電粒子は、源と加工物の間の電圧差によって比較的に高いエネルギーに加速される。集束イオン・ビーム中のイオンは一般に、5keVから100keVの間の入射エネルギー、より一般的には約30keVの入射エネルギーで加工物に衝突する。電子の入射エネルギーは、走査電子顕微鏡システムに対する約500eVないし5keVから、透過型電子顕微鏡システムに対する数十万電子ボルトまでの範囲にある。操作員に対する危険を低減させるため、加工物の電位は一般にグランド電位またはグランド電位に近い電位に維持され、プラズマ源は、ビームの形成に使用する粒子に応じて正または負の高電圧に維持される。本明細書で使用されるとき、用語「高電圧」は、グランド電位よりも約500V以上高い正電圧またはグランド電位よりも約500V以上低い負電圧を意味する。操作員の安全のため、高電圧の構成要素は電気的に絶縁する必要がある。高電圧のプラズマの電気絶縁は、プラズマ源設計の他の目的を考慮すると解決が難しい設計上のいくつかの問題を生じさせる。
【0006】
例えば、電力を効率的に伝達するためには、プラズマに電力を供給する高周波コイルをプラズマのできるだけ近くに配置することが望ましいが、短い距離を隔てて電圧差が存在するとアークが発生し、それによってシステムが損傷する可能性がある。上述のとおり、プラズマは高いDC電圧に維持され、高周波コイルは一般に、高くはあるがプラズマのDC電圧よりも低いRF電圧で発振する。プラズマとコイルの間の電圧差の多くを排除する1つの方法は、プラズマの高い電位に等しいDCバイアスにコイルを維持する方法であろう。しかしながら、この解決策は、コイル用の電源を高いプラズマ電位に維持することを要求することになり、このことは、電源設計を過度に複雑にし、コストを大幅に増大させるであろう。
【0007】
図1は、集束イオン・ビーム・システムで使用される先行技術の一般的なプラズマ源100を概略的に示す。プラズマ源100はプラズマ室102を含む。プラズマ室102内にはプラズマ104が維持されている。プラズマ室102の底部をプラズマ引出し/バイアス電極106が囲っている。電極106は、バイアス電圧源107への外部高電圧接続を有し、バイアス電圧源107は、大部分の荷電粒子ビーム用途では一般に30kVであるプラズマのターゲット電位にプラズマをバイアスするために使用される。プラズマ源から開口112を通して加工物へ、電子またはイオンが導かれる。プラズマ室102とRFコイル110の間には、分割されたファラデー・シールド108が配置されている。シールド108は一般に適切に接地されており、プラズマ室102とRFコイル110の間の空間に冷却流体を送達することができる。最小限の色収差を有する小さなプローブを形成する目的に対して、ファラデー・シールドは、RFによって誘起されたエネルギーの広がりを防ぐのに役立ちうる。プラズマ・イオン源用のファラデー・シールドは例えば、Johnson,Wayne L.、「Electrostatically−Shielded Inductively−Coupled RF Plasma Sources」、HIGH DENSITY PLASMA SOURCES:DESIGN AND PHYSICS AND PERFORMANCE、Popov,Oleg,A.編(1995)に記載されている。
【0008】
接地されたファラデー・シールドは、高DC電圧のプラズマを高周波コイルの電位から絶縁し、コイルとプラズマの間の容量結合を低減させる。ファラデー・シールドが誘電性のプラズマ容器の近くに配置されていると、接地されたシールドと必要な加速電圧(例えば30kV)にバイアスされているプラズマとの間の電圧差に起因する大きな電場が、プラズマ源を損傷しうる高電圧放電の可能性を生じさせる。ファラデー・シールドとセラミックとの間に捕捉された空気の存在も、その領域でアークが発生する可能性を生じさせる。
【0009】
さらに、プラズマ室とアンテナの間にファラデー・シールドを導入すると、アンテナがプラズマ容器からさらに遠ざけられることが避けられず、このことが、アンテナからシールドへのアークの発生およびシールドからプラズマへのアークの発生を含む複雑化の原因となりうる。さらに、ファラデー・シールドは、高電圧管理のさらなる問題の原因となる鋭いエッジを有することがある。
【0010】
集束イオン・ビーム・システム用のプラズマ源の設計上の難題は高電圧の管理だけではなく、熱の管理も難題である。プラズマ室に加えられたエネルギーは、プラズマ室内および高周波コイル内に熱を発生させる。コンパクトなプラズマ源はビームを形成するためには望ましいが、プラズマ源がよりコンパクトでより強力であるほど、プラズマ源はより高温になり、したがって熱を効率的に放散させる必要性もより高まる。高い電圧も冷却を困難にすることがあり、このことが、使用されるプラズマの密度を制限することがある。これらの相反する要件は、ICプラズマ源の設計を非常に難しいものにする。本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第13/182,925号は、集束荷電粒子ビーム・システム用の液体冷却式のプラズマ源を記載している。
【0011】
ファラデー・シールドが冷却方法を複雑にすることがある。シールドと接触した流体がシールドを腐食したり、またはシールドを酸化したりすることがあってはならず、冷却流体の選択は、ファラデー・シールドの鋭いエッジにおける高電圧の管理に関連した誘電性の問題によっても制限されることがある。
【0012】
M.Dickson他、「Radial Uniformity of an External−Coil Ionized Physical Vapor Deposition Source」、J.Vac.Sci.Tech.B 16(2)(1998)は、イオン化物理蒸着(ionized physical vapor deposition)によってウェーハの表面に金属を付着させるプラズマ・システムを記載している。プラズマ・イオンが金属ターゲットを衝撃し、ターゲットからスパッタリングされた金属がイオン化され、イオン化された金属が、プラズマ・シース(plasma sheath)によって下方のウェーハに向かって導かれる。ターゲットからスパッタリングされた金属は、石英製のプラズマ室の内側に沿った電気経路をすぐに形成するため、プラズマ室の内側に、水冷式の金属ファラデー・シールドが使用されている。プラズマ室内のファラデー・シールドは、スパッタリングされた金属に対するバッフル(baffle)の働きをし、プラズマ室の誘電性の壁を金属膜の厚い付着物から保護する。水冷管路はグランドから電気的に絶縁されており、絶縁された高周波電力フィードスルー(feedthroughs)を通して接続されている。M.Dickson他のウェーハ規模の大きなプラズマ室は、その大きなプラズマ室内でのファラデー・シールドの操作を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7,241,361号
【特許文献2】米国特許出願第13/182,925号
【特許文献3】米国特許出願第13/165,556号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Johnson,Wayne L.、「Electrostatically−Shielded Inductively−Coupled RF Plasma Sources」、HIGH DENSITY PLASMA SOURCES:DESIGN AND PHYSICS AND PERFORMANCE、Popov,Oleg,A.編(1995)
【非特許文献2】M.Dickson他、「Radial Uniformity of an External−Coil Ionized Physical Vapor Deposition Source」、J.Vac.Sci.Tech.B 16(2)(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、ビームを形成する目的に対して望ましい小さなエネルギー幅を得るために、荷電粒子ビーム・システム内でのプラズマとの容量結合を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、集束荷電粒子ビーム・システムのプラズマ室内にあって、プラズマの電位またはプラズマの電位にかなり近い電位にバイアスされたファラデー・シールドを提供する。
【0017】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0018】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】外部ファラデー・シールドを使用する先行技術のプラズマ源を示す図である。
【図2】ファラデー・シールドがプラズマ室内に配置された本発明の一実施形態を示す図である。
【図3】図2の実施形態を使用するステップを示す図である。
【図4】結合を低減させるために内部ファラデー・シールドを使用し、冷却するためにプラズマ室の外側の流体を使用するプラズマ源の略縦断面図である。
【図5】平らな分割ファラデー・シールドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
相反する複数の設計要件を満たすために、プラズマ源の設計は一般に多くのトレードオフを必然的に伴う。本発明の実施形態は、RFコイルとプラズマの間の優れた結合、プラズマ室の効率的な冷却および優れた容量遮蔽を提供することができ、これらは全て、密度が濃く、静止しており、高い電位にある誘導結合プラズマの生成に役立ちうる。
【0021】
以下の説明は、集束イオン・ビーム・システム用のプラズマ源を対象としているが、電子ビーム・システムまたは他のシステムに対して本発明のプラズマ源を使用することもできる。本発明の目的上、シールド、ファラデー・シールド、静電シールドおよび容量シールドの用語は、同義である。
【0022】
好ましい一実施形態は、プラズマ室の内部にあるファラデー・シールド、すなわちプラズマ室の壁の内側にあるファラデー・シールドを使用する。集束ビーム・システム用の先行技術のプラズマ源は内部分割ファラデー・シールドを使用していない。これは、過度の加熱など設計上困難な点が知られていた一方で、プローブを形成する光学部品を備えるシステムに対して内部シールドが有利である程度が理解されていなかったためである。本出願の出願人は、内部ファラデー・シールドを使用することの利点をいくつか見出した。外部ファラデー・シールドを排除すると、高周波コイルをプラズマ室のより近くに配置することができ、その結果、結合効率がより高くなる。本発明の出願人はさらに、プラズマ管の外側の空間がよりすっきりするため、内部ファラデー・シールドによって、冷却システムを設計する際の柔軟性をより高めることができることを見出した。さらに、冷却流体との相互作用によって生じるシールド材料の腐食が回避される。M.Dickson他のシステムとは違い、プラズマ室内に、スパッタリング源として機能する金属ターゲットがなく、一般にプラズマ中に金属イオンが存在しない。本発明の大部分の実施形態ではファラデー・シールドが液体によって冷却されない。本発明のプラズマ源は、プローブを形成するシステム用のイオン源として使用される。すなわち、プラズマ室からイオンが出、それらのイオンをビームに形成し、形成されたビームを試料に集束させる。M.Dickson他のシステムとは違い、プラズマ室内に加工物が配置されない。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態で使用される荷電粒子ビーム・システムのプラズマ源200を示す。プラズマ室102内にファラデー・シールド202が配置されている。シールド202は導電性であり、電極106と電気的に接触した状態に配置されており、そのため、ファラデー・シールドは、プラズマ104とともに、バイアス電圧源107によってターゲット電位にバイアスされる。荷電粒子ビーム処理ではこのターゲット電位が一般に30kVである。あるいは、内部シールド202を使用すると、RFコイル110をプラズマ室のより近くに配置することができ、その結果、結合効率がより高くなる。スパッタリングを防ぐため、このファラデー・シールドは、プラズマ源の動作パラメータによって、イオンのエネルギー幅が40eV未満、より好ましくは20eV未満、最も好ましくは6eV未満に維持されるように設計されている。このレベルのエネルギー幅を維持すると、プラズマ源の絞り(aperture)のスパッタリングも防ぐことができる。シールド202は、プラズマ室102の内側の環境と両立できる任意の導電材料からなることができる。例えば、シールド202は、銅、銀めっきされた銅、または導電性の高い他の金属からなることができる。シールド202は、プラズマ室102の内壁にめっきされた金属層もしくは他の方法でプラズマ室102の内壁を覆う金属層、または挿入可能なスリーブとすることができる。RFコイル110の外側の導体が、高電圧のプラズマ室およびRFコイルをシステムの操作員から絶縁する接地面を形成する。熱を適切に管理するため、本発明の実施形態は、内部ファラデー・シールドからプラズマ室102の壁および/または電極106に熱を分配する方法を提供する。
【0024】
遮蔽効果に加えて、内部ファラデー・シールドはさらに、バイアス電位の接触面積を、プラズマ封じ込め(plasma containment)の軸に沿って効果的に広げ、そのため、内部ファラデー・シールドは、プラズマのより良好なバイアスを提供し、プラズマ室の軸に沿ってバイアス電圧に差が生じる可能性をより小さくし、その結果、より良好なエネルギー幅を提供する。単一の電気接続が、ファラデー・シールドと引出し絞りの両方にバイアスを提供することが好ましい。
【0025】
プラズマ源から引き出された荷電粒子を集束させる集束カラムは一般に、ビーム画定絞り210、偏向器212、および試料216に粒子を集束させる少なくとも1つのレンズ214を含む。
【0026】
図3は、図2の実施形態を使用するステップを示す。ステップ302は、プラズマを維持するために、プラズマ室内に高周波エネルギーを供給することを含む。ステップ304は、高周波エネルギーの供給源とプラズマの間の容量結合を低減させるために、プラズマ室内に内部分割ファラデー・シールドを配置することを含む。ステップ306は、プラズマおよびファラデー・シールドをグランド電位とは異なる電位、一般に100Vよりも大きなある電圧、1000Vよりも大きなある電圧または10,000Vよりも大きなある電圧に維持することを含む。これは、シールドをバイアス電極に接触させることによって達成される。あるいは、このファラデー・シールドを「浮動(floating)」シールド、すなわち、受動的にバイアスされており、能動的にはバイアスされていないが、プラズマと接触しており、プラズマ電圧の付近を浮動するシールドとすることができる。プラズマの電位はシールドおよび引出し電極の電位と実質的に同じだが、プラズマの境界にあるプラズマ・シースにわたる一般に50V未満である電圧降下のため、それらの電圧は、プラズマの内部の電圧とは正確には同じではないことを当業者は理解するであろう。シールドをバイアスすることは、ある電極がシールドと物理的に直接に接触していることを必ずしも意味しない。このバイアスを、引出し電極またはプラズマを介した間接バイアスなど、間接的なバイアスとすることもできる。
【0027】
最後に、ステップ308は、引出し光学部品を使用してプラズマ室から荷電粒子を引き出し、それらの荷電粒子を加工物に集束させることを含む。さらに、プラズマ室を冷却するため、プラズマ室の外側に冷却流体を供給することができる。非循環式の冷却材を使用する方法、ヒート・チューブ(heat tube)を使用する方法など、他の冷却方法が、本発明の譲受人に譲渡されたKellogg他の「Encapsulation of Electrode in Solid Media for use in Conjunction with Fluid High Voltage Isolation」という名称の米国特許出願第13/165,556号に記載されている。本明細書に記載された内部ファラデー・シールドとともに、米国特許出願第13/165,556号に記載されている冷却方法を使用することができる。
【0028】
図4は、結合を低減させるために内部ファラデー・シールドを使用し、冷却するためにプラズマ室の外側の流体を使用するプラズマ源400の略縦断面図を示す。プラズマ源400は、内壁404および外壁406を有する誘電性のプラズマ室402を含む。プラズマ室402は、導電性のベース平板電極410の上に載っている。プラズマ室402内にはプラズマ412が維持されている。引出し光学部品414が、ベース電極410の開口416を通してプラズマ412から荷電粒子を引き出す。それらの荷電粒子は用途によってイオンまたは電子である。好ましくは高周波エネルギーを最小限の損失で伝達するセラミック材料またはプラスチック材料の誘電性の外殻420が、外殻420とプラズマ室の外壁406との間に空間422を画定している。プラズマ室402内にファラデー・シールド444が、ファラデー・シールドが内壁404とプラズマ412の間に位置するような態様で、配置されている。ポンプ424が、リザーバ/冷却器427から冷却流体入口428を通して空間422に冷却流体426を送り込み、冷却流体426は出口432から流出し、外壁406からの熱伝達によってプラズマ室402を冷却する。入口452によってプラズマ室406にガスが供給される。接地シールド454が、操作員の環境からプラズマ室を遮蔽する。
【0029】
先行技術の一般的なファラデー・シールドは適切に接地されており、また、プラズマ室の外部に配置されており、その結果、プラズマ領域とシールドの間の電位降下が急速に起こる。この急速な電位降下は、プラズマ領域と導電性のファラデー・シールドの間に挿入する材料に制限を課す。先行技術では、アークの発生を防ぐのに十分な大きさの絶縁耐力を有する材料だけしかこの領域に挿入することができない。しかしながら、本発明は、ターゲット電位にバイアスされた内部ファラデー・シールド444を有するため、実質的に任意のタイプの材料を空間422内で使用することができる。これは、急速な電位降下が起こらず、アークの発生がかなり減るためである。したがって、内部シールドを使用することにより、冷却流体に起因する絶縁破壊を防ぐことができ、幅広いさまざまな冷却流体を使用してプラズマ室402を冷却することができ、適切な誘電率を持たない冷却流体であっても使用することができる。本明細書で使用するとき、用語「流体」は、液体または気体を含む。
【0030】
冷却方法は一般に、フィールド・エンハンスメント(field enhancement)および気中放電の機会を提供しうる気泡または他の不純物を含まないように選択された液体冷却材を含む。冷却流体はさらに、過大な量の電力を消費することになる大型のポンプを必要とする大きな流体流を必要とせずにプラズマ室402が過熱するのを防ぐことができる十分な熱容量を有しているべきである。プラズマ室の外壁406の温度は一般に約50°C以下に維持する。
【0031】
内部ファラデー・シールド444は、RFコイル446からの高周波エネルギーを通過させてプラズマに電力を供給し、同時に、高周波コイル446とプラズマ412の間の容量結合を低減させる。いくつかの実施形態では、セラミック、ガラス、樹脂、ポリマーなどの誘電性固体媒質中にファラデー・シールド444を実質的に封入して高電圧放電を排除することにより、ファラデー・シールド444を物理的な損傷から保護する。RFコイル446は中空とすることができ、コイルの内部通路447に流体冷却材を流すことによってRFコイル446を冷却することができる。あるいは、RFコイルの外側に冷却材を流すこともできる。プラズマ室の冷却材システムがさらに、コイルの内部へ流体冷却材をポンピングすることもでき、または、コイルが、独立した冷却システムを有することもできる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、このシールドが分割ファラデー・シールドである。内部ファラデー・シールドは巻かれて円筒形の形状を形成する。図5は、本発明のいくつかの実施形態で使用することができる平らな分割ファラデー・シールド500を示す。ファラデー・シールド500は「分割」されており、垂直の溝穴502を有する。この垂直の溝穴は、高周波コイルからエネルギーを流出させ熱を発生させる誘導電流を低減させる。容量結合および変調の適当なレベルが得られるように、溝穴502の幅、長さおよび数量を変更することができることを当業者は容易に理解するであろう。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態は、
・プラズマを封じ込めるプラズマ室、
・プラズマ室内に高周波エネルギーを供給する導体、および
・高周波エネルギーを供給する導体とプラズマの間の容量結合を低減させる導電性シールドであり、プラズマ室内に配置された導電性シールドを含む
・プラズマ源と、
・プラズマ源からの荷電粒子を試料に集束させる1つまたは複数の集束レンズと
を備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、このシステムが、導電性シールドを所望の電圧に電気的にバイアスするバイアス電極を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、この導電性シールドが、プラズマ室の内壁を覆う層を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、この導電性シールドが、プラズマ室内に挿入された薄い導体箔を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、この荷電粒子ビーム・システムが、プラズマ室の少なくとも一部分を取り囲んで熱接触している冷却流体をさらに含む。いくつかの実施形態では、冷却流体が空気または液体を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、この導電性シールドが、プラズマ・シースの外側境界と実質的に同じ電圧に維持される。
【0039】
いくつかの実施形態では、この導電性シールドが電気的に絶縁されており、動作時、導電性シールドが、プラズマ・シースの外側境界と実質的に同じ電位に維持される。
【0040】
いくつかの実施形態では、この導電性シールドが、500Vから100kVの間または5000Vから50000Vの間の大きさを有するある電圧に維持される。
【0041】
いくつかの実施形態では、プラズマが、500eVから100keVの間の荷電粒子の入射エネルギーを生み出すようにバイアスされる。
【0042】
いくつかの実施形態では、この導電性シールドおよびプラズマがグランド電位とは異なる電位に維持される。
【0043】
いくつかの実施形態では、この導電性シールドが分割ファラデー・シールドであり、いくつかの実施形態では、プラズマ室内で円筒形の形状を形成するために、分割ファラデー・シールドが巻かれている。
【0044】
いくつかの実施形態では、プラズマの温度が、プラズマ室内での導電性シールドのスパッタリングを防ぐのに十分な低い温度に維持される。
【0045】
いくつかの実施形態では、導電性シールドが、プラズマからプラズマ室の内壁に熱を分配する。
【0046】
いくつかの実施形態では、プラズマ室内に高周波エネルギーを供給する導体が、冷却流体を通す内部通路を含む。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態は、プラズマ室を含む誘導結合プラズマ源を動作させる方法を含み、この方法は、
・プラズマ室内のプラズマを維持するために、少なくとも1つの導電性コイルからプラズマ室内に高周波エネルギーを供給するステップと、
・高周波エネルギーの供給源とプラズマの間の容量結合を低減させるために、導電性シールドを設けるステップと、
・プラズマおよび導電性シールドをグランド電位とは異なる電位に維持するステップと、
・プラズマ室から荷電粒子を引き出すステップと、
・荷電粒子を集束させてビームとし、このビームを、加工物または前記加工物の近くに導くステップと
を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、この方法が、プラズマ室を冷却するために冷却流体を供給するステップをさらに含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、導電性シールドを設けるステップが、プラズマ室の内壁を導電性シールドで覆うステップを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、導電性シールドを設けるステップが、プラズマ室の内部に導電材料を挿入するステップを含む。
【0051】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。下記の特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および「備える(comprising)」が、オープン・エンド(open−ended)型の用語として使用されており、したがって、これらの用語は、「...を含むが、それらだけに限定はされない(including,but not limited to)」ことを意味すると解釈すべきである。
【符号の説明】
【0052】
102 プラズマ室
104 プラズマ
200 プラズマ源
202 ファラデー・シールド
210 ビーム画定絞り
212 偏向器
214 レンズ
216 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを封じ込めるプラズマ室、
前記プラズマ室内に高周波エネルギーを供給する導体、および
高周波エネルギーを供給する前記導体と前記プラズマの間の容量結合を低減させる導電性シールドであり、前記プラズマ室内に配置された導電性シールド
を含むプラズマ源と、
前記プラズマ源からの荷電粒子を試料に集束させる1つまたは複数の集束レンズと
を備える荷電粒子ビーム・システム。
【請求項2】
前記導電性シールドを所望の電圧に電気的にバイアスするバイアス電極をさらに備える、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項3】
前記導電性シールドが、前記プラズマ室の内壁を覆う層を含む、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項4】
前記導電性シールドが、前記プラズマ室内に挿入された薄い導体箔を含む、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項5】
前記プラズマ室の少なくとも一部分を取り囲んで熱接触している冷却流体をさらに含む、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項6】
前記冷却流体が空気または液体を含む、請求項5に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項7】
前記導電性シールドが、プラズマ・シースの外側境界と実質的に同じ電圧に維持される、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項8】
前記導電性シールドが電気的に絶縁されており、動作時、前記導電性シールドがプラズマ・シースの外側境界と同じ電位にある、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項9】
前記導電性シールドが、500Vから100kVの間の大きさを有するある電圧に維持される、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項10】
前記導電性シールドが、5000Vから50000Vの間の大きさを有するある電圧に維持される、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項11】
前記プラズマが、500eVから100keVの間の前記荷電粒子の入射エネルギーを生み出すある電位にバイアスされる、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項12】
動作時、前記プラズマ室内の前記プラズマおよび前記導電性シールドがグランド電位とは異なる電位に維持される、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項13】
前記導電性シールドが分割ファラデー・シールドである、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項14】
前記プラズマ室内で円筒形の形状を形成するために、前記分割ファラデー・シールドが巻かれている、請求項13に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項15】
前記プラズマの温度が、前記プラズマ室内での前記導電性シールドのスパッタリングを防ぐのに十分な低い温度に維持される、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項16】
前記導電性シールドが、前記プラズマから前記プラズマ室の内壁に熱を分配する、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項17】
前記プラズマ室内に高周波エネルギーを供給する前記導体が、冷却流体を通す内部通路を含む、請求項1に記載の荷電粒子ビーム・システム。
【請求項18】
プラズマ室を含む誘導結合プラズマ源を動作させる方法であって、
前記プラズマ室内のプラズマを維持するために、少なくとも1つの導電性コイルから前記プラズマ室内に高周波エネルギーを供給するステップと、
前記高周波エネルギーの供給源と前記プラズマの間の容量結合を低減させるために、導電性シールドを設けるステップと、
前記プラズマおよび前記導電性シールドをグランド電位とは異なる電位に維持するステップと、
前記プラズマ室から荷電粒子を引き出すステップと、
前記荷電粒子を集束させてビームとし、前記ビームを、加工物または前記加工物の近くに導くステップと
を含む方法。
【請求項19】
前記プラズマ室を冷却するために冷却流体を供給するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
導電性シールドを設ける前記ステップが、前記プラズマ室の内壁を導電性シールドで覆うステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
導電性シールドを設ける前記ステップが、前記プラズマ室の内部に導電材料を挿入するステップを含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−89594(P2013−89594A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−208991(P2012−208991)
【出願日】平成24年9月22日(2012.9.22)
【出願人】(501419107)エフ・イ−・アイ・カンパニー (78)
【Fターム(参考)】