説明

誘電体アンテナ

【課題】 安価で耐エージング性に優れ、かつ小型化が可能で、内部損失の少ない誘電体アンテナを提供する。
【解決手段】 エラストマーに高誘電性セラミック粉末を配合した組成物で、比誘電率が7以上、誘電正接が0.01以下の材料を用いてアンテナ基体2を形成する。このアンテナ基板2に、導電性ペースト4を用いてスクリーン印刷により電極3を形成して、誘電体アンテナ1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波帯で使用される誘電性アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂系アンテナ材への電極形成方法として、SPS(シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体)に無機充填材と溶剤に可溶なゴム状弾性体を混合し、エッチング処理により表面を粗くしてめっき性を改良した複合誘電体材料をアンテナとして使用するものがある(例えば特許文献1)。また、難めっき性の樹脂と易めっき性の樹脂を併用し、電極形成面には易めっき性の樹脂をアンテナ材として使用したものがある(例えば特許文献2)。その他、セラミック製アンテナ材にスクリーン印刷で電極を形成したもの等がある(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−143531号公報
【特許文献2】特開2003−078322号公報
【特許文献3】特開平06−029727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
樹脂材等をアンテナとして使用する場合、電極の形成が必要になる。この電極の形成方法として、
(1) 金属めっきによるもの
(2) 金属箔の貼り付けによるもの
(3) スクリーン印刷によるもの
等がある。樹脂系アンテナ材の場合、一般的に(1)の金属めっきにより電極を直接に形成するのは困難なため、特許文献1,2に開示の技術では、アンテナ材に特殊な下地処理を施してから金属めっきによる電極形成を行っている。しかし、めっき処理で電極を形成する場合、電極パターン以外のマスキングが必要になったり、めっき処理用の溶液の濃度によりめっき膜の特性が大きく変化するので、電極形成方法として好ましくない。
【0004】
(2)の金属箔を貼り付けて電極を形成する方法の場合、金属箔として銅箔が通常使用されるが、銅箔は酸化し易くエージング特性が悪いので好ましくない。そこで、酸化し難くするためにAgを用いる対策もあるが、この場合にはコストが大幅に上昇するという問題がある。また、コスト低減のために、銅箔の厚みを薄くした場合、製造し難く、かつ取扱いが困難となることから好ましくない。
(3)のスクリーン印刷は、主としてセラミック製アンテナ材への電極形成に適用されているが、エラストマー系アンテナ材には適用されていない。セラミック製アンテナの電極形成に使用するスクリーン印刷用ペーストはシリカを含んでおり、印刷品を500〜600℃の高温で焼成し、ガラス化してAg粉末を固定している。エラストマー系アンテナ材の場合、500℃の高温ではエラストマー自身が分解するので、上記スクリーン印刷の方法を使用することはできなかった。
【0005】
この発明の目的は、安価で耐エージング性に優れ、かつ小型化が可能で、内部損失の少ない誘電体アンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の誘電体アンテナは、エラストマーに高誘電性セラミック粉末を配合した組成物からなるアンテナ基体と、このアンテナ基体上に、導電性ペーストを用いてスクリーン印刷により形成された電極とを備えるものである。前記アンテナ基体の材料となる前記組成物は、比誘電率が7以上、誘電正接が0.01以下のものとする。
【0007】
この構成の誘電体アンテナは、エラストマー系誘電体アンテナの電極を、スクリーン印刷により形成するため、めっき処理による場合に必要なマスキングや、溶剤の濃度管理が不要となり、また金属箔の接着による場合に比べて薄膜化が可能で、導電性の調整が容易という利点がある。このため、安価に製造できる。
高周波域に使用されるアンテナ等の電子部品材料は、高誘電率でかつ低誘電正接が求められている。上記エラストマーに高誘電性セラミック粉末を配合した組成物は、比誘電率が7よりも小さい場合、組成物内を伝播する波長の短縮効果が少ないため、製品の小型化ができないので好ましくない。誘電正接が0.01よりも大きい場合、上記アンテナ材内の損失が大きくなるので好ましくない。比誘電率が7以上、誘電正接が0.01以下であると、小型化、および低損失の面で優れたものとなる。
また、上記構成の誘電体アンテナは、耐エージング性に優れていることが、試験によりく確認できた。
【0008】
この発明において、前記導電性ペーストは、導電性粉末を50〜97wt%、バインダーを3〜50wt%配合したものであっても良い。
導電性ペーストにおける導電材の配合量が50wt%未満の場合、電極として必要な導電性を確保できないので好ましくない。導電材の配合量が97wt%より多い場合、バインダー樹脂の配合量が少なくなるため、焼成後のアンテナ基体との密着性が低下したり、電極にクラックが生じる可能性があるので好ましくない。導電性粉末を50〜97wt%の範囲とすると、導電性の確保、および焼成後のアンテナ基体との密着性,電極のクラック回避の面で優れたものとできる。
【0009】
この発明において、前記エラストマーは、そのエラストマーマトリックスが、スチレン系、オレフィン系からなる群より選ばれる1種または2種以上からなるものであっても良い。また、前記エラストマーは、そのエラストマーマトリックスが、エチレンプロピレンゴムからなるものであっても良い。
【0010】
また、この発明の誘電体アンテナは、100MHz以上の周波数帯で使用されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
この発明の誘電性アンテナは、エラストマーに高誘電性セラミック粉末を配合した組成物で比誘電率が7以上、誘電正接が0.01以下の材料を用いてアンテナ基体を形成し、導電性ペーストを用いてスクリーン印刷により電極を形成したため、安価で耐エージング性に優れた誘電体アンテナとすることができる。また、小型でかつ内部損失の少ない誘電体アンテナとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の第1の実施形態を図1,図2と共に説明する。この誘電体アンテナ1は、エラストマーに高誘電性セラミック粉末を配合した組成物を材料とするアンテナ基体2を形成し、このアンテナ基体2の上に、導電性ペースト4を用いてスクリーン印刷により電極3を形成したものである。上記組成物は、比誘電率が7以上で誘電正接が0.01以下のものとする。電極3は、グランド側および放射側のものをアンテナ基体2の前後面にそれぞれ設け、この誘電体アンテナ1はパッチアンテナとした。
【0013】
上記スクリーン印刷は、図1のように、版枠8で周囲を補強したスクリーン5を被印刷体であるアンテナ基体2に重ねた状態で、スクリーン5の裏面からスキージ9により導電性ペースト4を塗布するものである。スクリーン5は、選択的に透過部6aを形成した遮蔽板6と、この遮蔽板6の裏面側に全面配置した網目材7とからなり、スキージ9で塗布された導電性ペースト4が遮蔽板6の透過部6aから透過してアンテナ基体2の表面に選択的に印刷されることで電極3が形成される。このように、スクリーン印刷により電極3を形成すると、めっき処理による場合に必要なマスキングや、溶剤の濃度管理が不要となるし、金属箔の接着による場合に比べて薄膜化が可能で、導電性の調整が容易になる等の利点が得られる。
【0014】
使用する導電性ペースト4に含まれる導電材は、アンテナとして機能する導電性を保持できれば特に限定されるものではなく、例えばAu,Pt,Ag,Cu,Ni,Sn等であれば良い。これらのうちで、耐酸化性、導電性、コスト等の点から、Agが特に好ましい。配合する導電材の粒子径は、0.05〜30μmが好ましく、さらに好ましくは1〜10μmである。0.05μm未満の微粉末は取扱いが困難であり、30μmより大きい場合、電極厚さが厚くなり、使用する導電材量が増えるので好ましくない。また、厚肉のスクリーン印刷は、厚みが不均一となり易く、体積抵抗率が変化するので好ましくない。
【0015】
導電性ペースト4に含まれる導電材の配合量は、50〜97wt%が好ましい。この場合、バインダーの配合量は3〜50wt%となる。より好ましくは、導電材の配合量は70〜90wt%である。残りがペーストである。導電材の配合量が50wt%未満の場合、電極として必要な導電性を確保できないので好ましくない。導電材の配合量が97wt%より大きい場合、バインダー樹脂の配合量が少ないため、焼成後のアンテナ材との密着性が低下したり、電極にクラックが生じる可能性があるので好ましくない。
【0016】
導電材としてAgを用いた導電性ペースト4の場合、使用するバインダーは、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂等、一般的に使用されるバインダーであれば特に限定されないが、その中でも特にエポキシ変性した樹脂がアンテナ材との密着性から好ましい。電極の体積抵抗率は、アンテナとしての機能を損なわない範囲内であれば特に限定されないが、10-2Ω・cm未満であることが好ましい。10-2Ω・cm以上の場合、電極の導電性が著しく低下し、アンテナの共振周波数が大幅にずれたり、VSWR(定在波比)が悪化するので好ましくない。より好ましくは10-3Ω・cm未満である。
【0017】
エラストマーに配合する高誘電率セラミック粉末は、誘電正接が低い材料であることが好ましく、その粒子径は、0.01μm〜100μm程度のものが好ましい。粒子径が0.01μmより小さい場合、秤量時の飛散等から取扱いが困難であり好ましくない。粒子径が100μmより大きい場合、成形体内での誘電特性のばらつきを引き起こす恐れがあるので好ましくない。より実用的な粒子径の範囲は0.1μm〜20μm程度である。
【0018】
高周波域に使用されるアンテナ等の電子部品用として使用される材料は、高誘電率かつ低誘電正接が求められており、比誘電率:7以上、誘電正接:0.01以下が好ましい。複合材の比誘電率が7よりも小さい場合、前記組成物である複合材内を伝播する波長の短縮効果が少ないため、製品の小型化ができないので好ましくない。誘電正接が0.01よりも大きい場合、複合材内の損失が大きくなるので好ましくない。この複合材を100MHz以上の高周波帯で使用する。
【0019】
アンテナ材の主体となるエラストマーとして、例えば天然ゴム系エラストマーが使用される。この天然ゴム系エラストマーとしては、塩化ゴム、塩酸ゴム、環化ゴム、マレイン酸化ゴム、水素化ゴム、天然ゴムの二重結合にPMMA,PAN,メタクリル酸エステル等のビニルモノマーをグラフトさせてなるグラフト変性ゴム、窒素気流中でモノマー存在下に天然ゴムを粗練してなるブロックコポリマー等を挙げることができる。これらは、天然ゴムを原料とするもののほか、合成cis −1,4−ポリイソプレンを原料としたものを含む。
【0020】
エラストマーとして合成ゴムエラストマーを使用しても良い。合成ゴム系エラストマーとしては、イソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等のポリオレフィン系エラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)等のスチレン系エラストマー、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、ナイロン12、ブチルゴム、ブタジエンゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を例示できる。
【0021】
これらのエラストマーは、1種類または2種類以上混合して用いることができる。またエラストマーの持つ弾性力を損なわない範囲内で、熱可塑性樹脂の1種または2種以上を配合して用いることができる。
【0022】
この実施形態の誘電体アンテナのアンテナ材の主体であるエラストマーとして、天然ゴム系エラストマーおよび/または合成非極性エラストマーのうちから選ばれる1種または2種以上を使用した場合には、電気絶縁性に優れた高誘電性エラストマーとすることができるので、特に絶縁性の要求される用途に好ましく用いることができる。合成非極性のエラストマーとしては、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、イソブチレンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。とくに、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムは誘電正接が極めて低いので、アンテナ等の電子部品やセンサーの用途に好ましく用いることができる。
【0023】
また、この実施形態の誘電体アンテナでは、上記した必須成分に加えて、この発明の誘電体アンテナの効果を妨げない範囲で、以下に列挙する添加剤を配合しても良い。
(1) ゴムとセラミックス粉末の界面の親和性や接合性を向上させ、機械的強度を改良するためのカップリング剤(シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコニアアルミネート系カップリング剤等)。
(2) 電極形成のためのめっき性を改良するための微粒子性充填剤(タルク、ピロリン酸カルシウム等)。
(3) 熱安定性を一層改善するための酸化防止剤。
(4) 耐光性を改良するための光安定剤(紫外線吸収剤等)。
(5) 難燃性をいっそう改善するための難燃剤(ハロゲン系もしくはリン系等)、および難燃助剤(アンチモン系化合物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、酸化ジルコニウム等)。
(6) 耐衝撃性を改良するための耐衝撃性付与剤。
(7) 着色するための着色剤(染料、顔料等)。
(8) 物性を調整するための可塑剤や架橋剤(パーオキサイト等)。
(9) 加硫を進めるための加硫促進剤。
【0024】
また、上記した高誘電性エラストマー組成物には、この発明の目的を損なわない範囲内で、ガラスファイバー、チタン酸カリウムウィスカー等のチタン酸アルカリ金属繊維、酸化チタン繊維、ホウ酸マグネシウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー等のホウ酸金属塩系繊維、ケイ酸亜鉛ウィスカーやケイ酸マグネシウムウィスカー等のケイ酸金属塩系繊維、カーボンファイバ、アルミナ繊維、アラミド繊維等の各種有機または無機の充填剤を併用しても良い。
【0025】
上記した高誘電性エラストマー組成物の製造方法としては、特に制限がなく、各種の混合成形方法を用いることができる。例えば、2軸押し出し機で混練して製造する方法などが好適に用いられる。また、直ちに射出成形や押し出し成形等により成形品としても良いし、ペレットや棒状物、板状物等の成形用材料としても良い。また、アンテナ基体2と導電性ペースト4との密着性を向上させるため、アンテナ基体2の表面をサンドペーパー、ブラスト処理などで粗くしたり、溶剤によるエッチング、UVエッチング、プラズマエッチング、プライマーの塗布等の表面処理を施しても良い。
【0026】
このように、この実施形態の誘電体アンテナ1では、エラストマーに高誘電性セラミック粉末を配合した組成物で比誘電率が7以上、誘電正接が0.01以下の材料を用いてアンテナ基体2を形成し、導電性ペースト4を用いてスクリーン印刷により電極3を形成したため、安価で耐エージング性に優れた誘電体アンテナ1とすることができる。
【0027】
この実施形態の誘電体アンテナの具体例である複数の実施例1〜6の各材料組成等を表1に示し、これら実施例1〜6のアンテナ特性およびその良否判定を表2に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
また、この実施形態の誘電体アンテナの効果を検証するため、実施形態とは異なる構成とした誘電体アンテナの具体例である複数の比較例1〜6の各材料組成等を表3に示し、これら比較例1〜6のアンテナ特性,その良否判定を表4に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
上記実施例1〜3の詳細は以下の通りである。
エチレンプロピレンゴム(以下、EPDMと記す)にチタン酸バリウムネオジウム系セラミック粉末(共立マテリアル製:HP−120 比誘電率:120)、加硫促進剤および加工助剤等の微量添加物をそれぞれ表1に示す配合割合で混合し、加熱圧縮成形により、80mm×80mm×2mmの成形体を得た。なお、加硫条件は、それぞれ170℃×30分である。この成形体から、1.5mm×1.5mm×80mmの短冊状試験片を加工し、空洞共振器法により、1GHz帯で25℃での誘電特性(比誘電率および誘電正接)を測定した。その測定結果を表1に併記する。また、60mm×60mm×2mmに加工したアンテナ材を用いて、2450MHz用のパッチアンテナを製作した。給電位置および放射面のアンテナ電極形状は、それぞれ材料の比誘電率に合わせて選定し、放射側とグランド側(前面)にAgペーストのスクリーン印刷を施した。スクリーン印刷のAgペーストには、福田金属箔製のシルコート:RF200を使用し、所定の形状でグランド側の印刷を行った後、80℃×30minの乾燥を行った。次に放射側の印刷を行い、80℃×30minの乾燥を行った後、150℃×30minの焼成を行った。各アンテナの電極の厚さ、体積抵抗率を表1に併記する。
【0034】
このアンテナを用いて、ネットワークアナライザにより共振周波数およびVSWR(定在波比)、利得のわかっている基準アンテナとの比較により、各共振周波数での利得を測定した。VSWR<2.5で、かつ利得>2dBiの場合、判定:○(○は結果良好を表す)、それ以外の場合、判定:×(×は結果不良を表す)とした。その結果を表2に示す。さらに、各アンテナについて、100℃×500時間のエージングを行い、アンテナ特性の変化を測定した。結果を表2に併記する。この測定結果から、実施例1〜3のすべてのアンテナで、アンテナ特性の判定が○であり、アンテナとして十分使用可能であることが分かる。
【0035】
上記実施例4〜6の詳細は以下の通りである。
EPDMにチタン酸ストロンチウム系セラミック粉末(共立マテリアル製:ST−NAS 比誘電率:180)、加硫促進剤および加工助剤等の微量添加物をそれぞれ表1に示す配合割合で混合し、加熱圧縮成形にて、80mm×80mm×2mmの成形体を得た。なお、加硫条件は、それぞれ170℃×30分である。この成形体から、1.5mm×1.5mm×80mmの短冊状試験片を加工し、空洞共振器法により、1GHz帯で25℃での誘電特性(比誘電率および誘電正接)を測定した。その測定結果を表1に併記する。また、60mm×60mm×2mmに加工したアンテナ材を用いて、2450MHz用のパッチアンテナを製作した。給電位置および放射面のアンテナ電極形状は、それぞれ材料の比誘電率に合わせて選定し、放射側とグランド側(前面)にAgペーストのスクリーン印刷を施した。スクリーン印刷のAgペーストには、福田金属箔製のシルコート:RF200を使用し、所定の形状でグランド側の印刷を行った後、80℃×30minの乾燥を行った。次に放射側の印刷を行い、80℃×30minの乾燥を行った後、150℃×30minの焼成を行った。各アンテナの電極の厚さ、体積抵抗率を表1に併記する。
【0036】
このアンテナを用いて、ネットワークアナライザにより共振周波数およびVSWR(定在波比)、利得のわかっている基準アンテナとの比較により、各共振周波数での利得を測定した。VSWR<2.5で、かつ利得>2dBiの場合、判定:○、それ以外の場合、判定:×とした。その結果を表2に示す。さらに、各アンテナについて、100℃×500時間のエージングを行い、アンテナ特性の変化を測定した。結果を表2に併記する。この測定結果から、実施例4〜6のすべてのアンテナで、アンテナ特性の判定が○であり、アンテナとして十分使用可能であることが分かる。
【0037】
上記比較例1〜3の詳細は以下の通りである。
EPDMにチタン酸バリウムネオジウム系セラミック粉末(共立マテリアル製:HF−120 比誘電率:120)、加硫促進剤および加工助剤等の微量添加物をそれぞれ表3に示す配合割合で混合し、加熱圧縮成形にて、80mm×80mm×2mmの成形体を得た。なお、加硫条件は、それぞれ170℃×30分である。この成形体から、1.5mm×1.5mm×80mmの短冊状試験片を加工し、空洞共振器法により、1GHz帯で25℃での誘電特性(比誘電率および誘電正接)を測定した。その測定結果を表3に併記する。また、60mm×60mm×2mmに加工したアンテナ材を用いて、2450MHz用のパッチアンテナを製作した。給電位置および放射面のアンテナ電極形状は、それぞれ材料の比誘電率に合わせて選定し、放射側とグランド側(前面)にエポキシ系接着剤を用いて銅箔(厚み:30μm)を接着した。各アンテナの電極の厚さ、体積抵抗率を表3に併記する。
【0038】
このアンテナを用いて、ネットワークアナライザにより共振周波数およびVSWR(定在波比)、利得のわかっている基準アンテナとの比較により、各共振周波数での利得を測定した。VSWR<2.5で、かつ利得>2dBiの場合、判定:○、それ以外の場合、判定:×とした。その結果を表4に示す。さらに、各アンテナについて、100℃×500時間のエージングを行い、アンテナ特性の変化を測定した。結果を表3に併記する。この測定結果から、比較例1〜3のアンテナはエージング前では、すべてのアンテナ特性の判定が○であるが、エージング後にはVSWR>2.5で、かつ利得<2dBiとなり、アンテナ特性が著しく劣化しており好ましくないことが分かる。
【0039】
上記比較例4〜6の詳細は以下の通りである。
EPDMにチタン酸バリウムネオジウム系セラミック粉末(共立マテリアル製:ST−NAS 比誘電率:180)、加硫促進剤および加工助剤等の微量添加物をそれぞれ表3に示す配合割合で混合し、加熱圧縮成形にて、80mm×80mm×2mmの成形体を得た。なお、加硫条件は、それぞれ170℃×30分である。この成形体から、1.5mm×1.5mm×80mmの短冊状試験片を加工し、空洞共振器法により、1GHz帯で25℃での誘電特性(比誘電率および誘電正接)を測定した。その測定結果を表3に併記する。また、60mm×60mm×2mmに加工したアンテナ材を用いて、2450MHz用のパッチアンテナを製作した。給電位置および放射面のアンテナ電極形状は、それぞれ材料の比誘電率に合わせて選定し、めっき不要部分にマスキングを施した後、クロム酸エッチング処理で表面を粗くした。次に、Sn,Pbによる触媒化処理および活性化処理を行った後、無電解NiめっきおよびCuの電気めっきを行った。
しかしながら、表4に結果を示すように、各種条件を代えた場合でも均一なめっき膜を得ることができず、アンテナ特性の評価を行うことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の一実施形態にかかる誘電体アンテナの製造工程におけるスクリーン印刷による電極形成の説明図である。
【図2】同誘電体アンテナの断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…誘電体アンテナ
2…アンテナ基体
3…電極
4…導電性ペースト
5…スクリーン
6…遮蔽板
6a…透過部
7…網目部
8…版枠
9…スキージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーに高誘電性セラミック粉末を配合した組成物で比誘電率が7以上、誘電正接が0.01以下の材料を用いて形成されたアンテナ基体と、このアンテナ基体上に導電性ペーストを用いてスクリーン印刷により形成された電極とを備える誘電体アンテナ。
【請求項2】
請求項1において、前記導電性ペーストが、導電性粉末を50〜97wt%、バインダーを3〜50wt%配合したものである誘電体アンテナ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記エラストマーは、そのエラストマーマトリックスが、スチレン系、オレフィン系からなる群より選ばれる1種または2種以上からなるものである誘電体アンテナ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記エラストマーは、そのエラストマーマトリックスが、エチレンプロピレンゴムからなるものである誘電体アンテナ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、100MHz以上の周波数帯で使用されるものである誘電性アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−42231(P2006−42231A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222910(P2004−222910)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】