説明

調光装置及びカメラ装置

【課題】被写体が偏光板を用いた表示装置であっても良好な撮像結果が得られる調光装置及びカメラ装置を提供する。
【解決手段】調光装置1は、液晶部4を挟む偏光板3a、3bが開口部8を備え、この開口部8からの入射光を偏光することなく透過させる透過部6が設けられている。このため入射光の一部は常に偏光されることなく調光装置1を透過する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器用の調光装置に関し、より詳細には、デジタルカメラ装置やビデオカメラ装置等の光学機器に好適に使用できる調光装置及びこれを備えたカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の機械式の絞り装置の駆動部分の保守、点検等の煩雑さや小型化の困難性という問題を解消すべく、液晶セルを用いた電子式の絞り装置が試みられている。例えば、特許文献1には、第1及び第2偏光板と、これら第1及び第2偏光板間に設けられた液晶セルとを備えた電子絞り装置が開示されている。この絞り装置は、第1及び第2偏光板と、液晶セルとをその全面に設けてある。液晶セルは、対向する透明電極と、これらの電極の間に満たされた液晶物質とを有し、一方の透明電極が同心円状に複数個に分割されている。この絞り装置は、分割された透明電極に選択的に駆動電圧を供給し、その領域の偏光板間を透過または遮光状態とし、絞りとして機能するものである。
【0003】
【特許文献1】特開平7−218975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の絞り装置を組み込んだカメラ装置により、液晶テレビ、PC用の液晶モニター、液晶表示時計等の偏光板を用いた表示装置を撮影した場合、被写体の偏光板と絞り装置の偏光板との関係により、被写体が良好に撮影されないことがある。例えば、液晶テレビの偏光板と絞り装置の偏光板との互いの偏光角が直交したときには、液晶テレビは画面が真っ黒な状態で写ってしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、被写体が偏光板を用いた表示装置であっても良好な撮像結果が得られる調光装置及びカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る調光装置は、それぞれ開口部を有するとともに、互いに対向する第1及び第2の偏光板と、前記第1及び第2の偏光板間に設けられた液晶部と、前記開口部の周囲に設けられてあり、前記液晶部を挟んで対向する第1及び第2の透明電極パターンと、前記開口部に対応して設けられた透過部と、を備え、前記第1及び第2の透明電極パターン間への電圧供給に応じて前記第1及び第2の偏光板間を透過状態から遮光状態へと変化させる。
【0007】
また、それぞれ前記第1及び第2の偏光板を支持する第1及び第2の透明基板と、 前記第1及び第2の透明基板の外周に設けられて当該第1及び第2の透明基板を離間するスペーサと、を備え、前記透過部が前記第1透明基板と第2の透明基板とを接着する樹脂からなり、前記液晶部は、前記スペーサと前記透過部とによって離間された領域にあることが好ましい。
【0008】
また、前記透過部の透過率は、前記第1及び第2の偏光板間の透過状態での透過率に応じて設定されることが望ましい。
【0009】
また、前記第1及び第2の偏光板は、前記開口部にナイフエッジ部を備えることが望ましい。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るカメラ装置は、上記調光装置を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、調光装置及びカメラ装置は、液晶部を挟む第1及び第2の偏光板が開口部を有し、この開口部からの入射光を偏光することなく透過させるために透過部が設けられている。入射光の一部は常に偏光されることなく調光装置を透過するので、被写体が偏光板を用いた表示装置であっても良好な撮像結果が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る調光装置1の平面、調光装置1が組み込まれる光学系の光軸に直交する面が示され、図2には、図1のA−A’断面図が示されている。
【0013】
図1、2に示されるように、本実施形態に係る調光装置1は、透明基板2a、2bと、偏光板3a、3bと、液晶部4と、透明電極パターン5a、5bと、透過部6と、スペーサ7とを備えている。
【0014】
透明基板2a、2bは、ガラス又はプラスチックからなる。偏光板3a、3bは、それぞれ光軸を中心とした開口部8を有して透明基板2a、2b上に設けられている。ここで、偏光板3a、3bは互いの偏光角が90度となるように配置してある。偏光板3a、3bには、それぞれ開口部8に対応してナイフエッジ部3c、3dが設けられている。ナイフエッジ部3c、3dは、それぞれ透明基板2a、2bに向かって傾斜して開口部8の近傍で偏光板3a、3bが薄くなるように形成されている。ナイフエッジ部3c、3dにより、開口部8の近傍における偏光板3a、3bの端面での入射光の反射によるフレア及びゴーストを抑える。
【0015】
透明基板2a、2bは、外周に設けられたスペーサ7と透過部6とにより離間されている。対向する透明基板2a、2bの内側の面にそれぞれ透明電極パターン5a、5bが同じパターンで設けられる。透明電極パターン5a、5bは引出し部5cを除いて光学的非有効部分には設けられていない。透明電極パターン5a、5b上には図示しない配向膜が設けられている。パターン透明電極5a、5bに挟まれた空間に充填される液晶物質をこの配向膜により配向し、液晶部4が構成される。ここで液晶部4はTN型でノーマリホワイトの構成をとっている。本発明は、これに限らずノーマリブラックの構成をとってもよい。
【0016】
透過部6は、開口部8に対応してこれを覆うように透明基板2a、2bの間に設ける。また、透過部6は、例えば、透明基板2a、2bを対向させて固定する工程において、一方の透明基板上にディスペンサ装置等から適当な硬化性の樹脂を滴下して、この樹脂が透明基板2aと透明基板2bとを接着するようにして設けてもよい。この場合、透明基板2a、2bの外周に設けられるスペーサ7の一部に注入口を設けておき、透過部6となる樹脂の硬化後にこの開口部から液晶物質を充填し、注入口を封止するようにすればよい。このように構成すれば、透明基板2a、2bと透過部6との界面に別途接着層を設ける必要がなく、界面が少なくでき、良好な光学特性が得られるとともに、工程が簡易になる。
【0017】
また、透過部6を、透明基板2a、2bを構成する物質の屈折率と同一、または近い屈折率の材料で構成し、透過部6とこれに隣接する部材との界面での入射光の反射によるフレアを抑えることが好ましい。
【0018】
以上のように構成される調光装置1は、図3に示すようにカメラ装置の光学系9に組み込まれる。光学系9は、光軸10上に、被写体側から調光装置1、レンズ11、赤外線吸収フィルタ12、CCD、CMOSセンサ等の撮像素子13が並ぶように構成してある。本発明のカメラ装置は、このような構成に限らず、複数のレンズを用いてもよいし、調光装置1を被写体側から見てレンズの前面、後面、または複数のレンズを用いる場合には適当なレンズ間の何れかなど、適当な位置に配置してもよく、適宜変更可能である。
【0019】
次に図4乃至6を参照して、調光装置1の動作について説明する。図4(a)、図5(a)、図6(a)には、パターン透明電極5a、5b間に印加する駆動電圧の電圧値を斜線の粗密で模式的に表しており、図4(a)、図5(a)、図6(a)へと電圧値をゼロから次第に大きくした状態を示している。図4(b)、図5(b)、図6(b)には、調光装置1の断面方向からみて、調光装置1への入射光量、透過光量を矢印の大きさで模式的に示している。
【0020】
パターン透明電極5a、5b間に駆動電圧が印加されていないときには、偏光板3aを透過した光は液晶部4の液晶物質のねじれ配列によって90度回転されて偏光板3bを透過する。このときに偏光板3a、3b間では最大透過率を得る。図4(b)に示すように調光装置1は、液晶部6の領域、偏光板3a、3bの領域ともに入射光を透過させ、透過状態となり、絞りが開口された状態となる。
【0021】
図示しない駆動回路からそれぞれの引出し部5cを介してパターン透明電極5a、5b間に駆動電圧を印加すると液晶部4では液晶物質のねじれ配列が消失していき、複屈折が生じ、駆動電圧の電圧値が大きくなるに従い偏光板3bを透過する光量が低下する。例えば、第1の電圧値の駆動電圧では、偏光板3a、3b間では最大透過率よりも低下した第2の透過率となり、図5(b)に示すように調光装置1は、偏光板3a、3bの領域での透過光量は減少し、中間的な透過状態となる。
【0022】
パターン透明電極5a、5b間に駆動電圧をさらに大きな第2の電圧値とすると液晶部4では液晶物質のねじれ配列が消失し、偏光板3bを透過する光量がほぼゼロになる。図6(b)に示すように調光装置1は、偏光板3a、3bの領域での透過光量がほぼゼロの状態、遮光状態となる。調光装置1は、液晶部6の領域からのみ入射光を透過させる状態、所謂子絞り状態となる。
【0023】
以上のように、調光装置1では、開口部8からの入射光を偏光することなく透過させる透過部6が設けられている。このため入射光の一部は常に偏光されることなく調光装置1を透過するので、被写体が偏光板を用いた表示装置であっても良好な撮像結果が得られるようになる。上記実施形態に係わる液晶モードは、TN型に限るものではなく、垂直配向モード(VA)、平面スイッチングモード(IPS)等でもよい。
【0024】
上記実施形態に係る調光装置1では、液晶部4に電界を与える透明電極パターンとして、一対の透明電極パターン5a、5bを用いたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図7(a)乃至9(a)に示すように透明電極パターン5a、5bの少なくとも一方、例えば、透明電極パターン5aを分割した透明電極パターン5a1、5a2を用い、これら透明電極パターン5a1、5a2と透明電極パターン5bとの間に駆動電圧を選択的に供給することで、透明電極パターン5a1、5a2がそれぞれ画定する領域を透過状態、遮光状態とするように構成してもよい。なお、透明電極パターン5bを透明電極パターン5a1、5a2のように分割してもよい。
【0025】
図7(a)、図8(a)、図9(a)には、パターン透明電極5a1及び/又はパターン透明電極5a2と、パターン透明電極5bとの間に印加される駆動電圧を斜線の粗密で模式的に表している。図7(a)では、パターン透明電極5a1、5a2と、パターン透明電極5bとの間に駆動電圧が印加されていない状態を示し、図8(a)では、パターン透明電極5a1と、パターン透明電極5bとの間に駆動電圧が印加されている状態を示し、図9(a)では、パターン透明電極5a1及びパターン透明電極5a2と、パターン透明電極5bとの間に駆動電圧が印加されている状態を示している。図7(b)、図8(b)、図9(b)には、調光装置1の断面方向からみて、調光装置1への入射光量、透過光量を矢印の大きさで模式的に示している。
【0026】
透明電極パターン5a1、5a2と透明電極パターン5bとの間に駆動電圧を選択的に供給することで、図7乃至図9に示すように、絞り開放状態、中間的な絞り開放状態、子絞り状態の3段階の調光が可能となる。この場合でも、入射光の一部、透過部6からのものは常に偏光されることなく調光装置1を透過するので、被写体が偏光板を用いた表示装置であっても良好な撮像結果が得られるようになる。
【0027】
透過部6については、その透過率が、偏光板3a、3b間の最大透過率と等しくなるように材料調整してもよい。このようにすれば、絞りを開放した際の調光装置1の平面での透過率の不均一を極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る調光装置1の平面図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る調光装置1を備えるカメラ装置の光学系を示す模式図である。
【図4】図4(a)はパターン透明電極5a、5b間の駆動電圧を斜線の粗密で模式的に示し、図4(b)は、調光装置1への入射光量、透過光量を矢印の大きさで模式的に示している。
【図5】図5(a)はパターン透明電極5a、5b間の駆動電圧を斜線の粗密で模式的に示し、図5(b)は、調光装置1への入射光量、透過光量を矢印の大きさで模式的に示している。
【図6】図6(a)はパターン透明電極5a、5b間の駆動電圧を斜線の粗密で模式的に示し、図6(b)は、調光装置1への入射光量、透過光量を矢印の大きさで模式的に示している。
【図7】図7(a)は、パターン透明電極5a1及び/又はパターン透明電極5a2と、パターン透明電極5bとの間の駆動電圧を斜線の粗密で模式的に表し、図7(b)はは、調光装置1への入射光量、透過光量を矢印の大きさで模式的に示している。
【図8】図8(a)は、パターン透明電極5a1及び/又はパターン透明電極5a2と、パターン透明電極5bとの間の駆動電圧を斜線の粗密で模式的に表し、図8(b)はは、調光装置1への入射光量、透過光量を矢印の大きさで模式的に示している。
【図9】図9(a)は、パターン透明電極5a1及び/又はパターン透明電極5a2と、パターン透明電極5bとの間の駆動電圧を斜線の粗密で模式的に表し、図9(b)はは、調光装置1への入射光量、透過光量を矢印の大きさで模式的に示している。
【符号の説明】
【0029】
1 調光装置
2a、2b 透明基板
3a、3b 偏光板
3c、3d ナイフエッジ
4 液晶部
5a、5a1、5a2、5b 透明電極パターン
6 透過部
7 スペーサ
8 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ開口部を有するとともに、互いに対向する第1及び第2の偏光板と、
前記第1及び第2の偏光板間に設けられた液晶部と、
前記開口部の周囲に設けられてあり、前記液晶部を挟んで対向する第1及び第2の透明電極パターンと、
前記開口部に対応して設けられた透過部と、
を備え、前記第1及び第2の透明電極パターン間への駆動電圧の供給に応じて前記第1及び第2の偏光板間を透過状態から遮光状態へと変化させる
ことを特徴とする調光装置。
【請求項2】
それぞれ前記第1及び第2の偏光板を支持する第1及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板の外周に設けられて当該第1及び第2の透明基板を離間するスペーサと、
を備え、前記透過部が前記第1透明基板と第2の透明基板とを接着する樹脂からなり、前記液晶部は、前記スペーサと前記透過部とによって離間された領域にあることを特徴とする請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記透過部の透過率は、前記第1及び第2の偏光板間の透過状態での透過率に応じて設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の調光装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の偏光板は、前記開口部にナイフエッジ部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調光装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調光装置を備えたカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−271272(P2009−271272A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120931(P2008−120931)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】