説明

調湿用成形体とその製造方法

【課題】
家屋の床下に配置して、押入や畳の結露を防止するなどの用途に使用する調湿用の成形体を改良し、高い吸湿・放湿性能を有し、繰り返し調湿機能を発揮した後もその形状を保持するだけの耐崩壊性を備えた調湿用成形体を、低コストで提供する。
【解決手段】
調湿材成分として、トバモライトの粉末50〜70重量部と、竹炭などの炭素質材料の粉末5〜15重量部と、ハロイサイトの粉末0〜15重量部とを配合し、結合材として、ベントナイトに消石灰を組み合わせたものを15〜25重量部加え、適宜の寸法・形状に成形する。転動成形により直径7〜13mmのほぼ球形に成形することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として家屋の床下に撒布してその部分の湿度を調節するために使用する、吸湿性と放湿性をあわせ有する調湿用成形体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建ての住宅の床下の空気は、ほぼ環境の湿度に従った湿度を有するが、一般にあまり流通がよくないので、湿度が高くなる梅雨時などは、床下からの湿気が凝結し、押入れ内のフトンや畳に吸収され、カビが発生する原因になったりすることがある。これを防ぐためには、床下の必要な部分に吸湿性の物質を置いて、過剰な水分を吸収させて湿度を低下させることが必要になる。一方、冬季には乾燥し、床下の湿度も低くなるが、木材のひび割れなどを避けるためには、湿度を高めることが望ましい。つまり、湿度が高い条件化では水分を吸収し、低い条件化では放出する性質、すなわち吸放湿性をもった調湿材の使用が必要になる。
【0003】
吸湿材としては、生石灰や塩化カルシウム、シリカゲルなどが知られているが、これらは放湿性能がなく、上記のような用途の調湿剤としては機能しない。調湿材として、多孔性の物質が有用であることが知られており、たとえば木炭を不織布で包んだもの(特許文献1)とか、多孔質の粉体をセメントで固化したり(特許文献2)、軽量発泡コンクリートの残材を床下に敷き詰めたりすること(特許文献3、特許文献4)が開示された。そのほか、調湿性能をもった材料をボードに成形して床下に張ること(特許文献5)や、珪藻土、ゼオライトなどの多孔性材料を内装用マットに組み込むこと(特許文献6)、不織布に貼り付けて使用すること(特許文献7)、が提案されている。
【特許文献1】特開2004−132170
【特許文献2】特開2002−114556
【特許文献3】特開平6−99063
【特許文献4】特開2003−313965
【特許文献5】特開2002−155585
【特許文献6】特開2004−176519
【特許文献7】特開2004−176240
【0004】
これらの技術も、調湿材の吸放湿性能や寿命の点で、なお、十分満足なものはない。調湿性能を高めるために、フライアッシュにカルシウム化合物を加えて水熱合成を行なう技術(特許文献8)や、貝殻、炭、麦飯石、トルマリンなどを混練して焼成する技術(特許文献9)が開示されている。そのほかには、軽量発泡コンクリート残材の吸湿性を高めるため、高圧の炭酸ガスで処理する技術(特許文献10、特許文献11)が試みられている。さらに、金属水酸化物の造粒品の凝集体を乾燥したもの(特許文献12)や、ゼオライトに酸化チタンを組み合わせたもの(特許文献13)も現れた。しかし、これらはいずれもコストの上昇が避けられず、それに相応した性能が得られてはいないので、実際的な調湿用成形体はまだ出現していない。
【特許文献8】特開2002−348170
【特許文献9】特開2002−167287
【特許文献10】特開2001−240457
【特許文献11】特開2001−353418
【特許文献12】特開2002−1952
【特許文献13】特開2000−265580
【0005】
多孔質体から調湿材を製造する場合、通常、板状や粒状に成形するが、これらの成形品が輸送中に破壊することを避けるには一定の強度が必要であり、一方、使用時の吸湿・放湿の繰り返しに起因する崩壊を防ぐ必要もある。このような使用時の耐崩壊性を確保するための適切な結合材も、また求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、主として家屋の床下に配置して使用する調湿用の成形体であって、高い吸湿・放湿性能を有し、繰り返し調湿機能を発揮した後もその形状を保持するだけの耐崩壊性を備えた、低コストで製造できる調湿用成形体と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の調湿用成形体は、基本的には、調湿材成分として、ケイ酸カルシウム系材料の粉末50〜70重量部と、炭素質材料の粉末5〜15重量部とを配合し、結合材5〜25重量部を加え、適宜の形状に成形してなるものである。
【0008】
本発明の調湿用成形体の好ましい態様は、調湿材成分として、ケイ酸カルシウム系材料の粉末50〜70重量部と、炭素質材料の粉末5〜15重量部と、カオリン系粘土鉱物の粉末15重量部以下とを配合し、結合剤を加え適宜の形状に成形してなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の調湿用成形体は、高い吸湿性と放湿性とを兼ね備えているから、全体として高い調湿機能を有する。本発明でとくに好適であるとして選択した結合材、すなわちベントナイトと消石灰の組み合わせは、後記する実施例にみるとおり、高い圧壊強度と高い耐水崩壊性を有しており、輸送や取り扱い中の破壊が少なく、かつ、多数回の吸湿と放湿とを繰り返した後も、なお元の形を保持している。この調湿用成形体はほぼ白色であって、いわゆる「セメント色」をしていないので、美観の点からも好ましい。ほぼ一定の粒径に造粒したものは、床下などに敷き詰めて使用するのに好都合である。前記した床下のほか、天井裏の湿度の調節にも使用でき、その場合は、透湿性を有する袋に充填して配置することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ケイ酸カルシウム系材料としては、トバモライト5CaO・6SiO2・5H2O系の化合物が好適である。トバモライトは、SiO2−CaO系の水熱反応により合成することができる。オートクレーブ処理により製造する軽量建材、代表的には軽量気泡コンクリートは、トバモライトが主成分であるから、それら建材の残材、端材を粉砕して、本発明のケイ酸カルシウム系材料としてもよい。
【0011】
炭素質材料としては、活性炭、リグナイトコークス、木炭および竹炭が有用であり、これらから選んだ1種または2種以上を使用するとよい。
【0012】
カオリン系粘土鉱物材料としては、ハロイサイトAl4Si410(OH)8・nH2Oが好適である。この材料は層状構造を有し、比表面積が大きく、水分の吸着性能が高い。この成分を添加することによって、調湿機能が向上する。圧壊強度および耐水崩壊性にも、ハロイサイトは寄与する。
【0013】
結合材成分としては、ベントナイトおよび消石灰を併用することが推奨される。この結合材を使用することにより、成形体の耐水崩壊性が高く得られる。吸湿・放湿の繰り返しによる崩壊と水に浸漬したときの崩壊とは、現象として同じではないが、後者の性質が前者とパラレルな関係にあり、水への浸漬は、一種の促進試験として有用なことがわかっている。結合材成分は、調湿用成形体の配合物中の15〜25重量部を占めるように添加し、ベントナイトおよび消石灰を併用する場合は、それぞれが5〜15重量部であって合計量が上記15〜25重量部となるようにするとよい。
【0014】
上記いずれかの調湿用成形体を製造する本発明の製造方法は、ケイ酸カルシウム系材料の粉末50〜70重量部、炭素質材料の粉末5〜15重量部、カオリン系粘土鉱物の粉末0〜15重量部および結合剤15〜25重量部を水とともに混練して造粒し、乾燥して水分の含有量を5重量%以下にすることからなる。
【0015】
造粒は、任意の方法で実施できるが、上記の水を加えた混練物の転動造粒が適切であり、粒径が1〜30mmの、ほぼ球形にした調質用成形体が、実際の使用に好都合である。より好ましい粒径は7〜13mmである。他の方法で造粒した場合も、調湿用成形体製品の水分含有量を5重量%以下となるように乾燥すべきである。
【実施例】
【0016】
下記の原料を用い、表1に記載した配合割合で混合したものに水を加え、転動造粒により平均直径10mmの球状の調湿用成形体とした(実施例1〜5)。比較のため、主成分がトバモライトである建材の端材から得た、5〜15mmの破砕物(比較例1)およびトバモライト粉末に結合材だけ加えて成形体としたもの(比較例2)も用意した。
調湿材成分:トバモライト粉末
炭素質材料:竹炭
カオリン系粘土鉱物材料:ハロイサイト系粘土(栃木県葛生産)
結合材:ベントナイト+消石灰
比較のため、主成分がトバモライトである建材の端材から得た、5〜15mmの破砕物(比較例1)およびトバモライト粉末に結合材だけ加えて成形体としたもの(比較例2)も用意した。
【0017】
【表1】

【0018】
実施例および比較例について、中湿域における吸放湿性能、圧壊強度および耐水崩壊性を測定した。試験法は、つぎのとおりである。
[吸湿量と放湿量]
造粒した調湿材成形体を温度23℃、湿度53%RHの環境において水分の平衡に達しさせ(±0.1g/d以内であることを確認した後)、温度は同じ23℃に保って、75%RH×24時間(高湿度)−53%RH×24時間(低湿度)の条件下に置いて吸湿−放湿を行なわせ、重量の変化を記録した。吸湿量および放湿量を、表2に示す。
[圧壊強度]
木屋式硬度測定器を使用。
[耐水崩壊性]
造粒した成形体を10粒水中に浸漬して一夜放置し、崩壊したものがゼロの場合は○、1個の場合を△、2個以上の場合を×とした。圧壊強度および耐水崩壊性を、容重とともに、表3に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿材成分として、ケイ酸カルシウム系材料の粉末50〜70重量部と炭素質材料の粉末5〜15重量部とを配合し、これに結合材15〜25重量部を加えて適宜の形状に成形してなる調湿用成形体。
【請求項2】
調湿剤成分として、ケイ酸カルシウム系材料の粉末50〜70重量部と、炭素質材料の粉末5〜15重量部と、カオリン系粘土鉱物の粉末15重量部以下とを配合し、結合剤15〜25重量部を加え、適宜の形状に成形してなる調湿用成形体。
【請求項3】
ケイ酸カルシウム系材料として、トバモライト系化合物または軽量気泡コンクリート切削粉を使用した請求項1または2の調湿用成形体。
【請求項4】
炭素質材料として、活性炭、リグナイトコークス、木炭および竹炭から選んだ1種または2種以上を使用した請求項1または2の調質用成形体。
【請求項5】
カオリン系粘土鉱物として、ハロイサイトを主成分とする粘土鉱物を使用した請求項1または2の調質用成形体。
【請求項6】
結合剤成分として、ベントナイトおよび(または)消石灰を使用した請求項1または2の調質用成形体。
【請求項7】
直径1〜30mmのほぼ球形に成形した請求項1または2の調湿用成形体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかの調湿用成形体を製造する方法であって、ケイ酸カルシウム系材料の粉末50〜70重量部、炭素質材料の粉末5〜15重量部、カオリン系粘土鉱物の粉末0〜15重量部および結合剤15〜25重量部を水とともに混練して造粒し、乾燥して水分の含有量を5重量%以下にすることからなる調湿用成形体の製造方法。

【公開番号】特開2006−219346(P2006−219346A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34914(P2005−34914)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000160407)吉澤石灰工業株式会社 (38)
【出願人】(501367037)協栄産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】