説明

調理済食品再加熱用容器

【課題】熱風再加熱によって容器内の食品全体を均等に加熱することができ、またHACCPの概念に基づき厚生労働省が定める大量調理施設衛生管理マニュアルの基準を満たすように再加熱した時にも、食品の容器との接触面や空気に触れる部分が乾燥するのを防止する。
【解決手段】上部が開口した容器本体1と、容器本体1の前記開口を覆ったそれ自体の自重によって半密閉の収容空間を形成する蓋体2とから構成される。収容空間を構成する内部露出材において、収容食品と接する接触部が熱伝導率の比較的低い第一樹脂材(A)で構成されると共に、収容食品と接しない非接触部のうち29%超の表面積部分が、前記第一樹脂材(A)よりも熱伝導率の高い第二樹脂材(B)で構成され、前記第二樹脂材(B)の第一樹脂材(A)に対する熱伝導率比が2.7超である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理済の食品を収容したまま、マイクロウェーブ以外の加熱方法で収容食品を再加熱可能な、調理済食品再加熱用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、深絞り容器本体のフランジ部に蓋材がシールされる電子レンジ用包装容器として、深絞り容器本体の最内層がポリプロピレンをベースにし、これにポリエチレン又はポリエチレンとスチレン−ブタジエン共重合体とをブレンドしてなり、ポリエチレンより優れた耐熱性を有し、かつ該深絞り容器本体全体がポリプロピレンをベースにし、これにポリエチレン又はポリエチレンとスチレン−ブタジエン共重合体とをブレンドしてなり、ポリプロピレン単体を越えた耐寒強度を有している蒸気抜き機能を有するものが開示される(特許文献1参照)。これは冷凍食品用の蒸気抜き機能を有する電子レンジ用包装容器において、真空・脱気状態で深絞り容器本体と蓋材の内面同士が密着されているまま電子レンジで加熱されても、内面同士の融着やブロッキングのない電子レンジ用包装容器である、とされる。
【0003】
また従来、熱可塑性樹脂よりなる耐熱性調理用容器において、該樹脂を、ポリエーテルイミドおよびポリカーボネートのブレンドによって成形したものが開示される(特許文献2参照)。これは、電子レンジにより直接加熱に適した、耐熱性食品容器とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−232280号公報
【特許文献2】特開平6−304063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の包装容器はいずれも電子レンジによるマイクロウェーブ加熱を前提としたものであって、熱風再加熱では容器内の食品全体を中心まで均等に加熱することができない。
また加熱後に閉蓋状態のまま放置した場合、上記包装容器は保湿性または保温性に欠けるため、食品がすぐに乾燥または冷却してしまい、加熱後の状態を長時間確保することができない。また、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の概念に基づき厚生労働省が定める大量調理施設衛生管理マニュアルにより、加熱の際には適切な温度と時間を管理する必要があり、特に食品の中心部が75℃で1分間以上加熱されていることが求められる。ところが食品の中心部が75℃を超えるような場合は、容器内側は加熱されすぎることで食品の容器との接触面や空気に触れる部分が乾燥してしまう。
【0006】
そこで本発明では、熱風再加熱によって容器内の食品全体を均等に加熱することができ、また食品の中心部が75℃で1分間以上加熱されているといった大量調理施設衛生管理マニュアルの基準を満たすように再加熱した時にも、食品の容器との接触面や空気に触れる部分が過加熱によって乾燥するのを防止する調理済食品再加熱用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明では下記手段を講じるものとしている。
(1)本発明の調理済食品再加熱用容器は、
上部が開口した容器本体1と、容器本体1の前記開口を覆ったそれ自体の自重によって半密閉の収容空間を形成する蓋体2とから構成される調理済食品再加熱用容器であって、
前記収容空間を構成する内部露出材において、
収容食品と接する接触部が熱伝導率の比較的低い第一樹脂材(A)で構成されると共に、収容食品と接しない非接触部のうち29%超の表面積部分が、前記第一樹脂材(A)よりも熱伝導率の高い第二樹脂材(B)で構成され、
前記第二樹脂材(B)の第一樹脂材(A)に対する熱伝導率比が2.7超であることを特徴とする。
(2)前記収容空間を構成する内部露出材の表面積の少なくとも16%超が、前記第二樹脂材(B)で構成され、前記表面積の残りが前記第一樹脂材(A)で構成されるものであり、収容空間内の食品を閉蓋状態のまま熱風再加熱可能なものであることが好ましい。
(3)前記第一樹脂材(A)は吸水率が0.01%以下であることが好ましい。
(4)前記いずれかに記載の調理済食品再加熱用容器において、
第二樹脂材(B)が、メラミン樹脂を主材とする樹脂からなるものであって蓋体による内部露出材の表面積のうちの40%超を占めており、
第一樹脂材(A)が、ポリプロピレンを主材とする樹脂からなるものであって蓋体による内部露出材の残りの表面積を占めていることが好ましい。
【0008】
上記のように、収容食品と接する接触部を熱伝導率の比較的低い(例えば熱伝導率1.0×10-1W/m・K未満の)第一樹脂材(A)で構成することで、収容した食品を容器との接触部において均等に再加熱することができる。
また収容食品と接しない非接触部のうちの一部を、第一樹脂材(A)に対して2.7超の熱伝導率比を有した第二樹脂材(B)で構成することで、非接触部からの食品を効率的に再加熱することができる。ここで非接触部における第二樹脂材(B)の構成表面積の割合を所定の範囲内とすることで、食品を過度に乾燥させることなく保湿性を確保することができる。
【0009】
特にメラミン樹脂はポリプロピレン樹脂に対する比重比が約1.5なので、蓋材として使用した場合に重量を確保することができ、自重による半密閉保存を容易に行うことができ、第二樹脂材(B)として使用することで保湿性に優れたものとなる。なおメラミン樹脂を蓋材として使用した場合、絵柄を付した印刷紙をコーティング層として使用することもでき、この場合は耐久性に優れた質感のある調理済食品再加熱用容器を形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記解決手段を講じることで、熱風再加熱によって容器内の食品を中心まで均等に加熱可能であり、食品の中心部が75℃で1分間以上加熱されているといった大量調理施設衛生管理マニュアルの基準を満たすように再加熱した時にも、食品の容器との接触面や空気に触れる部分が過加熱によって乾燥するのを防止する調理済食品再加熱用容器を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に使用する実施例の調理済食品再加熱用容器の食品収容状態を示す断面説明図。
【図2】実施例の調理済食品再加熱用容器の材質の組み合わせを変えた各サンプルを示す断面説明図。
【図3】実施例の調理済食品再加熱用容器の蓋体の構成材質の割合を変えた各サンプルを示す断面説明図。
【図4】比較試験1の試験結果表。
【図5】温度変化のグラフ。
【図6】温度変化のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の調理済食品再加熱用容器について実施例、実験例と共に詳述する。本発明の調理済食品再加熱容器は、調理済の食品を収容空間内に収容して閉蓋状態とし、この閉蓋状態のまま、マイクロウェーブ以外の外部加熱によって収容空間内の調理済食品を再加熱することが可能な、調理済食品再加熱用容器であって、中でも本実施例として特定される第一樹脂材(A)、第二樹脂材(B)を用いる容器は、再加熱カートによる熱風式或いはスチームコンベクションオーブンによるスチコン式で調理済食品を再加熱するニュークックチルの調理システムに適したものである。
【0013】
ここでニュークックチルとは、再加熱する前に、調理済食品を容器に個別に盛り付けし、この盛り付けた状態のまま、容器ごとチルド・再加熱する調理システムをいう。この調理システムは、原材料・人件費などの経費や喫食者の減少を考慮して、例えば病院や福祉施設の給食現場で必要とされるものであり、調理済食品を再加熱後に盛り付けるクックチル方式や調理済食品を真空包装する真空調理方式と異なり、盛り付けから配膳までの衛生上の時間的制限の負担や、朝食時の早朝出勤による個別盛り付けの作業負担が軽減される新たな調理システムとされる。
【0014】
本発明の調理済食品再加熱用容器によって採用される調理方法は具体的には、調理済食品を盛り付け、それぞれ蓋を閉じた状態とする盛り付け工程の後、複数の容器を一旦0℃〜3℃の雰囲気下で保存するチルド保存工程を経て、その後、配膳時間前2時間以内に、熱風式或いはスチコン式の再加熱によって、調理済食品を中心まで均等に加熱する再加熱工程を経ることとしている。
【0015】
なお再加熱工程では、厚生労働省が定める大量調理施設衛生管理マニュアルに基づき、食品の中心部が75℃で1分間以上加熱されていることを満たすように再加熱するものとしている。また再加熱工程、チルド保存工程の際は、調理後30分以内の冷却開始、90分以内に食品の中心部を0〜3℃に冷却する、冷蔵保存時に雰囲気温度が5℃以上に上昇した場合は12時間以内に消費する、10℃以上に上昇した場合は直ちに廃棄するなど、時間および温度管理によって、食品を安全な状態に保ったまま提供する必要がある。
【0016】
ここで再加熱工程における加熱方式としては、配膳車内で再加熱する再加熱カート方式とスチームコンベクションオーブンにより再加熱するスチコン方式に分かれる。再加熱カート方式は、更に熱風の吹き出しによる熱風式、電磁誘導技術を採用したIH(Induction Heating)式、トレー上の複数の電気加熱器によるEH(Electric Heating)式に分かれる。ただし本発明はIH式やEH式の加熱方式を対象外としており、容器外部から収容空間内の盛り付け済食品を加熱することによって食品を適度な加熱・保湿状態とするものである。
【0017】
特に図1に示す実施例の形態は熱風式或いはスチコン式の加熱方式に適したものであり、炊飯後のご飯の収容に使用するご飯茶碗型であって、上部が開口した容器本体1と、容器本体1の前記開口を覆ったそれ自体の自重によって半密閉の収容空間を形成する蓋体2とから構成される。
【0018】
(接触部と非接触部)
収容空間を構成する内部露出材は、収容食品に接する接触部と、収容食品に接しない非接触部に分けられる。このうち接触部はその全体が熱伝導率の比較的低い第一樹脂材(A)で構成され、非接触部は一部の表面積部分が、前記第一樹脂材(A)よりも熱伝導率の高い第二樹脂材(B)で構成され、残りの表面積部分が前記第一樹脂材(A)で構成される。
【0019】
接触部を第二樹脂材(B)と比べて熱伝導率の低い第一樹脂材(A)で構成し、第二樹脂材(B)を含まないようにすることで、過加熱による加熱時の食品接触面の乾燥を防止できる。具体的には例えば熱伝導率1.0×10-1W/m・K未満のものを用いることが好ましい。
【0020】
また非接触部のうちの一部を、第一樹脂材(A)に対して2.7超の熱伝導率比を有した第二樹脂材(B)で構成することで、非接触部から食品を効率的に加熱することができる。
【0021】
(第一樹脂材A)
収容空間を構成する内部露出材全体のうち84%未満が、第二樹脂材(B)よりも熱伝導率の低い第一樹脂材(A)で構成される。第一樹脂材(A)は吸水率が0.01%以下であり、食品と接する接触部の構成材としてなることが好ましい。吸水率の低い第一樹脂材(A)を接触部とすることで、加熱時に容器と接触する部分や空気に触れる部分で食品の表面が乾くのを防ぐことができる。第一樹脂材(A)として熱可塑性材、例えばポリプロピレンを主材とすることができる。
【0022】
(第二樹脂材B)
収容食品と接しない非接触部のうち少なくとも29%超、好ましくは43%以上が前記第一樹脂材(A)よりも熱伝導率の高い第二樹脂材(B)で構成される。第二樹脂材(B)はまた、収容空間を構成する内部露出材全体のうち16%超、好ましくは24%以上であり、内部露出材を構成する他の露出材である第一樹脂材(A)との表面積比が少なくとも19%超、好ましくは32%以上である。収容食品との接触部には第二樹脂材(B)が含まれず、また第二樹脂材(B)として熱硬化性材、特にメラミン樹脂を主材とすることが好ましい。
【0023】
(ご飯茶碗の実施形態例)
図1にご飯茶碗の実施形態例を示す。炊飯されたご飯のほか水炊き調理等された多粒状の穀物を主な収容食品とする。図1の容器本体1は、円形水平面の内部露出材を有する本体底部と、本体底部の周縁の全周方向に連なる上方の緩湾曲面、及びこの緩湾曲面から上方へ連なって拡径する円錐面とからなる内部露出材を有する本体壁部とから一体的に構成される。また緩湾曲面の部分の外面下方から、円筒状の本体脚部が一体的に突出形成される。
【0024】
また図1の蓋体2は、周縁に沿って下方への折り曲げ部を有した一体成形の円形蓋であり、蓋体下面には、中央に蓋全体の略半分の平面視円形の中央凹部が形成され、この中央凹部の周囲に平面視ドーナツ状の下方凸部が形成され、さらにその外縁に沿って内側凹部が形成される。また、この内側凹部のさらに外側の周囲に平面視ドーナツ状の外側凹部が形成されており、この外側凹部のうちの外側部分が折り曲げ部となっている。
【0025】
閉蓋時には、外側凹部の内側部が、容器本体容器本体1の上縁に嵌り込む。また中央凹部の周縁よりもやや内側の部分には、天面に円筒状の蓋脚部が上方突出してなる。
【0026】
(比較試験1)
図1に示す食品収容状態のご飯茶碗型の蓋付き食品再加熱用容器について、図2に示すように容器本体と蓋体とで第一樹脂材(A)、第二樹脂材(B)の材質の組み合わせを変えた3サンプルを作製し、また図3に示すように、蓋体の構成材を第一樹脂材(A)と第二樹脂材(B)で組み合わせたものとすると共に各樹脂材の組み合わせの割合を変えた4サンプルを作製した。
【0027】
図1に示すご飯の収容状態は、内部露出材全表面積SA=350cmのうち、蓋体の内側表面積が140cm、容器本体の内側表面積が210cmである。また容器本体の内側表面積210cmのうち非接触部が55cm、接触部が155cmであり、内部露出材全表面積SA=350cmにおける全体の接触部が155cm、全体の非接触部が55cm(容器本体)+140cm(蓋体)=195cmとなっている。
【0028】
図2は同一形状の容器本体と蓋体を、それぞれ第一樹脂材(A)と第二樹脂材(B)の2種類ずつ用意し、各樹脂材で容器本体と蓋体との組み合わせを変えた3種の実施態様を示すものである。このうち図2の右図(マル3)は蓋体2全体を第二樹脂材(B)たるメラミン樹脂製とし、容器本体1全体を第一樹脂材(A)たるポリプロピレン製としている。この場合、内部露出材全体のうち面積比約60%が第一樹脂材(A)で構成され、残りの約40%が第二樹脂材(B)で構成される。また非接触部を内部露出材全体の55.7%(195cm/350cm)とすると、非接触部のうち面積比28%が第一樹脂材(A)で構成され、非接触部の残りの72%が第二樹脂材(B)で構成される。
【0029】
図3は蓋体においてのみ、第一樹脂材(A)と第二樹脂材(B)の相互の組み合わせ比率を変えた4種の実施態様を示すものである。図3のように、熱伝導率の異なる異種材を同心円状に組み合わせて蓋体を構成すると、収容食品の加熱効率を加熱中心部に近い位置で調整することとなり、部分的な過加熱状態やこれによる食品表面の乾燥の発生を防ぐことができる。特に下方凸部で囲われる中央凹部全体を第二樹脂材(B)とすることで、収容空間中央上部にドーム状の高効率の熱伝導部分が形成され、食品を効率よく加熱することができる。
【0030】
図3の各サンプルでは、蓋体を第一樹脂材(A)と第二樹脂材(B)の2つの構成材で組み合わせ形成し、その境界縁は蓋体と同心の円形としている。具体的には、中心側の第一樹脂材(A):ポリプロピレン(PP)、外周側の第二樹脂材(B):メラミン樹脂(MF)として、サンプル(マル4)、(マル5)、(マル6)、(マル7)の各蓋体を、PP/MFの構成比20%/80%、40%/60%、60%/40%、80%/20%、とした。また各サンプルの容器本体をいずれもPP100%とした。使用サンプルは下表1に纏められる。
【0031】
【表1】


(試験条件)
図2の3サンプル、図3の4サンプルからなる計7サンプルについてそれぞれ、恒温乾燥機での再加熱、自然冷却(放冷)による温度変化の測定、食品の状態観察を行った。
【0032】
再加熱条件として、ご飯200gを試験品の中に入れ、冷蔵庫でチルド状態まで冷却したのち、恒温乾燥機で120℃×50分加熱→20分クールダウン(送風)した。観察条件として、試験中のご飯の中心温度、製品内側温度、製品外側温度の変化を5分毎に確認した。再加熱性能評価として、ご飯の中心部が大量調理施設衛生管理マニュアル管理基準の75℃で1分間以上加熱したかどうかを評価した。温度が規定に達する場合は○(可)、達しない場合は×(不可)とする。ご飯に乾燥がない場合は○(可)、乾燥が見られる場合は×(不可)とする。また総合評価として、ご飯の状態、再加熱性能より総合的に○(可)、×(不可)を判断した。
【0033】
上記試験により図4(測定温度の値及び各サンプルの評価),図5(食材中心温度と容器本体の温度変化グラフ/容器本体(身)と蓋体(蓋)の構成材組み合わせ変更),図6(食材中心温度と容器本体の温度変化グラフ/蓋体のMF構成比変更)の結果を得ることで、蓋体2におけるメラミン樹脂(MF)面積比率を0%、20%、40%、60%、80%、100%とした場合の最適な再加熱性能を維持できる範囲を見出すに至った。
【0034】
(比較試験2)
図1に示す食品収容状態のご飯茶碗型の蓋付き食品再加熱用容器について、容器本体と蓋体とで第一樹脂材(A)、第二樹脂材(B)の材質の組み合わせを変えた5サンプルを作製して、比較試験1と同条件で熱風再加熱時の食品中心温度と食品状態を比較した。5サンプルは、図2に示すサンプル(マル1)〜(マル3)の3サンプルとサンプル(マル8),(マル9)からなる。
【0035】
具体的にはサンプル1を除いて容器本体は全てPP製とし、蓋体をMF製(サンプルマル1及びマル3)、ガラス製(サンプルマル8)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製(サンプルマル9)、PP製(サンプルマル2)に変更した。比較試験2による熱伝導率の関係及び食品状態、観察結果は下表2に纏められる。
【0036】
【表2】

【0037】
(考察)
上記結果より以下のように考察される。
考察1:サンプル(マル1)(MF製容器本体+MF製蓋体)については、再加熱性能を左右する中心温度の上昇が早いため最高温度が89.8℃まで上昇した。製品内側側面温度が加熱50分で100℃を越えるため、ご飯の容器本体との接触面が乾涸びてしまい食品状態が×(不可)となった。
【0038】
考察2:サンプル(マル2)(PP製容器本体+PP製蓋体)については、中心温度の上昇が遅く、ご飯の中心部の最高温度が70.2℃迄しか上昇せず、大量調理施設衛生管理マニュアル管理基準の75℃で1分間以上加熱されていることを満たせないため再加熱性能が×(不可)となった。
【0039】
考察1,2より、熱伝導率の高いMF製は容器・食品共に温度上昇が早く、熱伝導率の低いPP製のものは容器・食品共に温度上昇が遅いことが判明した。
【0040】
考察3:サンプル(マル3)〜(PP製容器本体+MF製蓋体)については、熱伝導率の高いメラミンを蓋体2に使用し空気層からの温度上昇性能の向上で再加熱性を高めながら、容器本体1に熱伝導率の低いポリプロピレンを使用してご飯接触面の温度上昇を抑えられたため、ご飯の乾涸び防止効果も得られた。
【0041】
この熱伝導率の差を考慮して、再加熱カートに使用できる適切なメラミン樹脂の表面積構成比は、対内部露出材全体で構成比24%、対蓋体内部表面積で構成比60%以上、対非接触部表面積で構成比43%以上であることが判明した(サンプルマル3,マル4,マル5)。
【0042】
考察4:容器本体と蓋体の構成材の組み合わせ変更においては、食品との接触部を有する容器本体を3.7×10-1W/m・K未満の低熱伝導率の構成材、非接触部のみからなる蓋体を2.4×10-1W/m・K超の高熱伝導率の構成材とすることが好ましく、中でも容器本体1、蓋体2それぞれの熱伝導率が0.9×10-1W/m・K、3.2×10-1W/m・K〜4.2×10-1W/m・Kであるときに最も良好であることが判明した。
【0043】
考察5:容器本体と蓋体を異種構成材で組み合わせてニュークックチル方式の熱風式で再加熱する場合、食品が乾涸びずかつ効率的に加熱されるために、各構成材の熱伝導率が以下の関係を満たすべきことが判明した。
関係1:熱伝導率差 1.5超5.6未満、特に2.3〜3.3程度が最適
関係2:熱伝導率比 2.7超7.2未満、特に3.6〜4.7程度が最適
関係3:熱伝導率の和差比(熱伝導率の差/熱伝導率の和) 0.5超0.8未満、特に0.6程度が最適
【0044】
なお、上記条件を満たす限り、構成材の主材をMF、PPのほか、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルイミド(PEI)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)といった各種樹脂材から選択することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 容器本体
2 蓋体
A 第一樹脂材
B 第二樹脂材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口した容器本体(1)と、容器本体(1)の前記開口を覆ったそれ自体の自重によって半密閉の収容空間を形成する蓋体(2)とから構成される調理済食品再加熱用容器であって、
前記収容空間を構成する内部露出材において、収容食品と接する接触部が熱伝導率の比較的低い第一樹脂材(A)で構成されると共に、収容食品と接しない非接触部のうち29%超の表面積部分が、前記第一樹脂材(A)よりも熱伝導率の高い第二樹脂材(B)で構成され、前記第二樹脂材(B)の第一樹脂材(A)に対する熱伝導率比が2.7超であることを特徴とする調理済食品再加熱用容器。
【請求項2】
前記収容空間を構成する内部露出材の表面積の少なくとも16%超が、前記第二樹脂材(B)で構成され、前記表面積の残りが前記第一樹脂材(A)で構成されるものであり、収容空間内の食品を閉蓋状態のまま熱風再加熱可能である請求項1記載の調理済食品再加熱用容器。
【請求項3】
前記第一樹脂材(A)は吸水率が0.01%以下である請求項1又は2に記載の調理済食品再加熱用容器。
【請求項4】
前記第二樹脂材(B)が、メラミン樹脂を主材とする樹脂からなるものであって蓋体(2)による内部露出材の表面積のうちの40%超を占めており、
前記第一樹脂材(A)が、ポリプロピレンを主材とする樹脂からなるものであって蓋体(2)による内部露出材の残りの表面積を占めている請求項1,2又は3のいずれかに記載の調理済食品再加熱用容器。


【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200467(P2011−200467A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71145(P2010−71145)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(394008329)国際化工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】