説明

調節装置、特に、車両シートの調節装置

本発明は、少なくとも1つの調節機能を実現する調節装置(1)、特に自動車用シートを調節する調節装置(1)に関し、駆動手段(3)と出力部(25)を有する駆動機構(A)と、前記駆動手段(3)に作用する前記出力部(25)からの如何なるトルクをも大幅に防ぐことができる制動装置(B)から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの調節機能を実現する調節装置、特に自動車用シートを調節する調節装置に関し、駆動手段と出力部を有する駆動機構と、前記駆動手段に作用する前記出力部からの如何なるトルクをも大幅に防ぐことができる制動装置から構成される。
【背景技術】
【0002】
この種の調整装置は、例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3等により知られており、例えば、自動車用シートの高さを調節する装置の電子作動または、好ましくは手動に適している。この場合、この調節装置は、入力駆動トルクをより高い出力トルクに変換し、それに連結される部品、例えばシート高さ調節機の角度調節に用いられる。少なくとも遊星歯車に作用する駆動部からのトルクを減少させるため、この調節装置は、制動装置を備えている。しかしながら、従来から知られている調整装置は、かなり複雑な構造および/または組み立てるのが困難という問題がある。また別の問題としては、望ましい調節行程に用いられる調整装置の作動数が多すぎることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許4,211,451号公報
【特許文献2】ドイツ特許3201309号公報
【特許文献3】米国特許公開2005/0245348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、本発明の目的は上記従来技術の欠点を有しない調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、少なくとも1つの調節機能を実現する調節装置、特に自動車用シートを調節する調節装置により達成されるものであって、駆動手段と出力部を有する駆動機構と、駆動手段に作用する出力部からの如何なるトルクをも大幅に防ぐことができる制動装置から構成される調節装置において、少なくとも1つのばね手段が前記駆動機構と前記制動装置間に配置される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の調節装置によれば、任意の所望の調節を調整機構で実施できる。又一方、本発明の調整装置は、好ましくは自動車用シートに使用される。例えば、本発明の調節方式を用いて、シート面の高さ、シート面に対するバックレストの傾斜、およびシートの形状を変えることができる。本発明の調節方式は手動またはモーターにより駆動することができる。本発明の調節装置は、従来技術による調節装置より簡単な構造により構成され、容易に製造される。本発明の調節装置によれば、同一の調整行程がより少ない作動数で達成される。
【0007】
前記制動装置によれば、駆動機構に作用する出力部からのトルクが少なくとも部分的に、好ましくは完全に除去される。この制動装置は、好ましくは2方向の回転において機能する。
【0008】
本発明によれば、調整装置は前記駆動機構と前記制動装置間に少なくとも1つ、好ましくは複数のばね手段を備える。弾性変形後、元の形を取り戻すことが出来る当業者に知られた如何なるばね手段もばね手段として用いることができる。このばね手段は樹脂および/または鋼により製造することができる。
【0009】
前記ばね手段は、各作動毎に、特に好ましくは各作動直後に駆動機構を初期位置に戻すことが好ましい。この行程において、前記ばね手段は駆動機構と制動装置の結合を解除することが望ましい。この好ましい実施例によれば、本発明の調整装置は、より少ない自由遊びを有する。更に少なくとも制動装置自体が解除されるおそれを防ぐことができる。
【0010】
好ましい実施例では、前記駆動機構はアクチュエイターを備え、前記制動装置は制動部を備える。前記ばね手段はそれらの間に配されている。制動装置の作動を伴わない、少なくとも完全には伴わない、少なくともアクチュエイターの動作中、好ましくは回転中に前記ばね手段が変形するように構成される。駆動力はなくなるとすぐに、前記ばね手段はアクチュエイターおよび/または制動装置をそのまま初期の位置に、特に、もはや互いに係合しない位置に移動させる。
【0011】
前記ばね手段は、好ましくはアクチュエイターおよび/または制動装置内で非ポジテイブ係合および/またはポジテイブ係合状態にある。これは、特に、アクチュエイターおよび/または制動部に位置し、それぞればね手段を部分的に収容する複数の凹み部により実現される。
【0012】
前記制動装置は好ましくは回転の2方向で作動する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は以下に図1から図7を参照して説明する。これらの説明はもっぱら例示として提供されるもので、本発明の趣旨全体を何ら限定するものではない。
【図1】調整装置の分解図である。
【図2】制動装置を示す図である。
【図3】制動装置と駆動機構の相互関係を示す図である。
【図4】本発明による調整装置の分解図である。
【図5】アクチュエイターと制動部の詳細を示す図である。
【図6】アクチュエイターと制動部間に設けられたばね手段を示す図である。
【図7】前記ばね手段が制動部内で配置されている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下の図で概略的に例示される調整装置1は、樹脂製のリブ付きハウジング2を有し、例えば細かな歯部を備え、ハウジング2に支持される駆動軸3がハウジング2から延在する。この調整装置1の手動作動用はずみ車は、この歯部上に続いて取り付けることが出来、またはモーターをその歯部に連結しても良い。ハウジング2は更に例えば、調整装置1をシート部の金属製構造の側方部材に取り付けるための孔4を有する。ハウジング2は、駆動軸3と同軸に延びる内側歯部5をその内側に備え、3個の遊星歯車6が駆動軸3上で外側歯部7を中心にして回転し、その歯部はハウジング2内に延在している。駆動軸3が回転すると、それに従い遊星歯車6の軸8は、駆動軸3より低い回転速度でハウジング2内で円形軌道上を回転する。駆動軸3は補整手段、例えば補整リングを備え、これにより製造許容公差が補償され、ノイズの減少および/または回転に抗するかなりの抵抗力が生じる。駆動軸3の回転は環状遊星キャリアー9に伝達され、これが駆動軸3と同軸に回転できるように構成される。回転軸心と平行に、遊星キャリアーは遊星歯車6に向かって軸方向表面から延びるジャーナルピン10を備えている。遊星歯車6は回転可能にこれらのジャーナルピン10上に取り付けられる。上述した部品(サブアッセンブリA)はこのように遊星歯車を構成する。この遊星歯車は回転の2方向に回転することができる。
【0015】
遊星歯車9は、出力側から調整装置1に加わるトルクの遊星歯車(サブアッセンブリA)への伝達をできるだけ完全に防止することを意図した、一方向クラッチタイプの制動装置(サブアッセンブリB)との接合部を構成する。これらのトルクは回転の2方向に作用することができる。サブアッセンブリ13は、鋼板を打ち抜き加工し、外側に延びるラグ12を備えた制動リング11を備える。この制動リング11は、ハウジング2内の孔4と一致する、ラグ12の孔13を介して相補的形状を有するハウジング2内に押し込まれる。制動リング11は更に駆動軸3と同軸で、制動装置の内側リング15を収容する円形隙間14を備えている。
【0016】
制動リング11と内側リング15間で間隙16には、対の円筒形転がり接触部材17、17‘が配置され、各対のこれら転がり接触部材17、17’はそれらの間にあり、ばね手段として機能する弾性体18により互いに離れる方向に押される。尚、当業者はこの弾性体を他の任意の手段、例えば、らせんばねを用いることもできることを察知できる。内側リング51の外周は、間隙16が各弾性体18の領域では同じように転がり接触部材17、17’より大きく、弾性体18から離れる方向では転がり接触部材17、17’の高さまで狭くなるように構成される。各対のこれら転がり接触部材17、17’は、間隙16の部分的領域に捕捉される。内側リング15は制動リング11に対して回転すると、各対の一方の転がり接触部材17は、転がり接触部材17、17’の方向で内側リング15上のらせん幾何形状部36により間隙16の狭い領域に挟まれ、その結果更なる回転が防止される。内側リング15は反対方向に回転すると、この挟み込みは、対の他方の転がり接触部材17’により実現される。この構成により事故時に生じる相当のトルクが遊星歯車に伝達されるのを防ぐことができる。
【0017】
サブアッセンブリAから離れる方向に面する側には、遊星キャリアー9は、対の転がり接触部材17,17’間で間隙16内に突出する対の突起部19、19’を備える。1対の突起部19、19’間の内部空間21は内側リング15の外周上にあるボス20と遊びを持って相互に作用する一方、内側リング15が回転すると、内部空間21の反対側の突起部19、19’の表面が転がり接触部材17,17’上に交互に作用する。内側リング15が回転すると、挟まれた転がり接触部材17,17’はそれによりまず解除され、各対の突起部19とボス20間の遊びが無くなる。各突起部19が対応するボス20に抗して静止するとすぐに、トルクは遊星キャリアー9から直接内側リング15に伝達される。一方、内側リング15が反対方向に回転する間にも、この事象がボス20と突起部19‘間で接触と通して同じように生じる。
【0018】
内側リング15上にはサブアッセンブリAと反対側で、内側リング15とともに回転し、ハウジングカバー23に抗して静止するスラストワッシャー22が配置される。ハウジング2にロックしうるハウジングカバー23の外形は、制動リング11と一致するように構成され、このようにしてこれらは同じようにハウジング2に挿入できる。ハウジングカバー23は、リム孔24を備え、このリム孔24は駆動軸2と同軸に配置され、その中に出力軸25が支持される。この場合、好ましくは、ハウジングカバー23は金属材料で製造される。尚、ハウジングカバー23は、保護だけを目的にする場合、樹脂製であっても良い。ハウジングカバー23は、予めアッセンブリされたユニットにポジテイブ係合および/または非ポシテイブ係合状態で取り付けられ、例えばそれにネジ止めまたはリベット止めされる。尚、好ましくは、ハウジングカバー23は急解除ファスナー、例えばスナップファスナーによりハウジング4に取り付けられる。駆動軸3と同軸に延びる出力軸25は、支持用円筒形領域26を備え、これと外側に延びる出力ピニオン27が隣接する。反対側では、出力軸25は多角形外形部28を備え、これは内側リング15の対応する形状である隙間29に遊び無く係合している。当業者は、この出力軸25と内側リング15を一体的に設けることができる。
【0019】
調整装置1が作動すると、このようにして駆動トルクが、駆動軸3、遊星歯車6、遊星キャリアー9を介して内側リング15、そこから更に出力ピニオン25に伝達される。出力側から作用するトルクは、出力軸25を介して内側リング15に伝達され、次に転がり接触部材17,17’の挟み込みを介して制動リング11により受けられる。このため、遊星キャリアー9、遊星歯車6、ハウジング2は負荷から開放され、それに従い一定の、さらに小さい寸法にすることができる。この調整装置は、詳細は特許文献2に記載され、特許文献2は参照によりここに合体され、そのため開示の一部として取り扱われる。
【0020】
図4は図1から3による調整装置に基づいた本発明の調整装置の実施例を示し、本発明の調整装置はこの実施例に限定されるもではなく、駆動部と制動部を備える如何なる調整装置も含もことを当業者は察知するであろう。図4から分かるように、ばね手段は駆動機構Aと制動装置Bの間に配置される。特に、駆動部Aは、アクチュエイター9を備え、制動装置Bは、制動部39を備える。
【0021】
ばね手段42は、これらの部材9、39間に配置される。トルクがアクチュエイター9に作用するとすぐに、ばね手段42は、アクチュエイター9のポジテイブおよび/または非ポジテイブ係合手段19、19’が制動部39のポジテイブおよび/または非ポジテイブ係合手段20抗して静止するまで弾性変形する。トルクがもはやアクチュエイター9に作用しなくなるとすぐに、このアクチュエイターは、開始位置に戻り、係合手段20はもはや手段19、19’に抗して静止しない。
【0022】
図5は、アクチュエイター9と制動部39の詳細を示す。両者が少なくとも、それぞれ部分的にばね手段42を収容する凹み部40と41を有することは明確である。
【0023】
図6は、もう一度アクチュエイター9と制動部39と、それらの間に配置されたばね手段42を示す。
【0024】
図7は、ばね手段42が制動部39に嵌合された様子を示す。ばね手段42は、同じようにアクチュエイター9の凹み部40に嵌合する。
【符号の説明】
【0025】
1 調整装置
2 ハウジング
3 駆動手段、駆動軸
4 孔
5 内側歯部
6 遊星歯車
7 外側歯部
8 軸
9 遊星キャリアー、アクチュエイター
10 ジャーナル ピン
11 制動リング
12 ラグ
13 孔
14 隙間
15 内側リング
16 間隙
17、17‘転がり接触部材、制動部材
18 弾性体、ばね手段
19、19‘突起部、凹み部、ポジテイブおよび/または非ポジテイブ係合手段
20 ボス、凹み部、ポジテイブおよび/または非ポジテイブ係合手段
21 内側空間
22 スラストワッシャー
23 ハウジングカバー
24 リム孔
25 出力軸
26 円筒形領域
実出力
28 多角形外形部
29 円筒状領域
30 孔
31 ピン
32 孔
33 内周
34 環状突起部
35 補整手段、補整リング
36 ドライバージオメトリ、らせんジオメトリ
37 肩部
38 突起部、ノーズ
39 制動部
40 凹み部
41 凹み部
42 ばね手段
A 遊星歯車、駆動機構
B 制動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの調節機能を実現する調節装置、特に自動車用シートを調節する調節装置であって、駆動手段(3)と出力部(25)を有する駆動機構(A)と、前記駆動手段(3)に作用する前記出力部(25)からの如何なるトルクも大幅に防ぐことができる制動装置(B)から構成される調整装置において、
少なくとも1つのばね手段(42)が前記駆動機構(A)と前記制動装置(B)の間に配置されることを特徴とする調整装置。
【請求項2】
前記ばね手段(42)は、各作動後、前記駆動機構(A)を開始位置に戻すことを特徴とする請求項1に記載の調整装置。
【請求項3】
前記ばね手段(42)は、前記駆動機構(A)と前記制動装置(B)との連結を解除することを特徴とする請求項1または2に記載の調整装置。
【請求項4】
前記駆動機構(A)はアクチュエイター(9)を備え、前記制動装置(B)は制動部(39)を備え、前記ばね手段(42)はそれらの間に配置されることを特徴とする請求項1から3の1つに記載の調整装置。
【請求項5】
前記ばね手段(42)は、前記アクチュエイター(9)および/または前記制動部(39)内に非ポジテイブおよび/またはポジテイブの係合状態で取り付けられることを特徴とする請求項4に記載の調整装置
【請求項6】
前記制動装置(B)は、2方向の回転で作用することを特徴とする請求項1に記載の調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−528591(P2011−528591A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519086(P2011−519086)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005386
【国際公開番号】WO2010/009893
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(502156098)ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー (142)
【Fターム(参考)】