説明

警報装置

【課題】 本発明の目的は、本格火災状態の誤判定を適切に抑制すると共に、初期火災状態を判定した場合において状況に応じて適切に利用者に注意を促すことができる警報装置を提供する点にある。
【解決手段】 火災に起因して変化する火災環境状態を検出する火災環境状態検出手段を少なくとも1つ備え、少なくとも1つの火災環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が初期火災判定閾値以上となったことを初期火災状態として判定すると共に、火災環境状態検出手段の出力関連値が初期火災判定閾値よりも大きい本格火災判定閾値以上となったことを本格火災状態として判定する判定手段とを備えた警報装置であって、判定手段が、所定の設定継続判定時間t以上継続する初期火災状態の判定を本格火災状態の判定に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災に起因して変化する火災環境状態を検出する火災環境状態検出手段を少なくとも1つ備え、
少なくとも1つの前記火災環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が初期火災判定閾値以上となったことを初期火災状態として判定すると共に、前記火災環境状態検出手段の出力関連値が前記初期火災判定閾値よりも大きい本格火災判定閾値以上となったことを本格火災状態として判定する判定手段とを備えた警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような警報装置として構成される火災警報装置は、上記火災環境状態検出手段により、火災に関する火災環境状態を検出し、上記判定手段により、その火災環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が所定の判定閾値以上となったことを上記本格火災状態や上記初期火災状態として判定し、例えばその判定手段の判定結果に応じて火災警報等の警報を出力するように構成されている。
【0003】
また、警報装置としては、上記火災環境状態としての煙、熱を感知する火災センサと、上記火災環境状態としての火災生成ガスである一酸化炭素濃度を検出するガスセンサとの、複数の火災環境状態検出手段を備え、その複数の火災環境状態検出手段の検出結果に基づいて本格火災状態と初期火災状態とのように複数の火災状態を判定する警報装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
即ち、かかる本格火災状態と初期火災状態とを判定する警報装置は、上記判定手段により、少なくとも1つの火災環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が初期火災判定閾値以上となったことを初期火災状態として判定すると共に、火災環境状態検出手段の出力関連値が初期火災判定閾値よりも大きい本格火災判定閾値以上となったことを本格火災状態として判定し、例えば、警報手段により、その判定手段の判定結果に応じて本格火災警報や初期火災警報等の警報を出力するように構成される。
【0005】
【特許文献1】特開2000−132761号公報(図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の警報装置では、判定手段で初期火災状態を判定しているからといって、火災が小規模又は火災が発生していないとは限らない。即ち、火災環境状態検出手段の種類や設置場所、又は、火災の種類や発生箇所によっては、本格的に火災が発生した場合でも、その火災環境状態検出手段の出力関連値があまり上昇せずに、上記判定手段で初期火災状態が判定され、その初期火災状態の判定に伴って、例えば、本格火災警報よりもレベルが低い初期火災警報が出力されることで、近隣にいる利用者に油断をさせてしまうという問題がある。
【0007】
また、上記のような問題を抑制するために、上記本格火災状態を判定するための本格火災判定閾値を比較的小さくすると、本格火災状態の誤判定が頻繁に発生するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、本格火災状態の誤判定を適切に抑制すると共に、初期火災状態を判定した場合において状況に応じて適切に利用者に注意を促すことができる警報装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る警報装置は、火災に起因して変化する火災環境状態を検出する火災環境状態検出手段を少なくとも1つ備え、
少なくとも1つの前記火災環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が初期火災判定閾値以上となったことを初期火災状態として判定すると共に、前記火災環境状態検出手段の出力関連値が前記初期火災判定閾値よりも大きい本格火災判定閾値以上となったことを本格火災状態として判定する判定手段とを備えた警報装置であって、その第1特徴構成は、前記判定手段が、所定の設定継続判定時間以上継続する前記初期火災状態の判定を前記本格火災状態の判定に変更する点にある。
尚、上記火災環境状態検出手段の出力関連値は、上記火災環境状態検出手段の出力、その出力の増加率、又は、その出力が継続して設定出力以上となる継続時間等のように、火災環境状態検出手段の出力の状態に伴って増減する値として求めることができる。
【0010】
上記第1特徴構成によれば、上記判定手段が、上記設定継続判定時間以上継続して初期火災状態を判定した場合に、その初期火災状態の判定を本格火災状態の判定に変更するので、本格火災状態の誤判定を適切に抑制すると共に、初期火災状態を判定した場合において状況に応じて適切に利用者に注意を促すことができる。
即ち、判定手段は、火災環境状態検出手段の出力関連値が、初期火災判定閾値以上であることを初期火災状態と判定すると共に、その出力関連値が、初期火災判定閾値よりも大きい本格火災判定閾値以上となったことを、初期火災状態よりも火災の規模が大きい又は火災発生の可能性が高い本格火災状態として精度良く判定することができる。
更に、初期火災状態を継続して判定している経過時間である初期火災継続判定時間が上記設定継続判定時間未満である場合には、上記のような初期火災状態として判定するが、上記初期火災継続判定時間が上記設定継続判定時間以上である場合には、本格火災状態と同様に、火災の規模が大きい又は火災発生の可能性が高いと判断して、その初期火災状態の判定を本格火災状態の判定に変更することで、適切に利用者に注意を促すことができる。
【0011】
本発明に係る警報装置の第2特徴構成は、前記火災環境状態検出手段として、前記火災環境状態としての煙、熱又は炎を検出する火災センサ、及び、前記火災環境状態としての火災により生成される火災生成ガスの濃度を検出するガスセンサを備え、
前記判定手段が、前記火災センサの出力関連値である火災センサ出力関連値が前記初期火災判定閾値としての火災センサ初期火災判定閾値以上となり且つ前記ガスセンサの出力関連値であるガスセンサ出力関連値が前記初期火災判定閾値としてのガスセンサ初期火災判定閾値以上となったことを前記初期火災状態として判定し、前記火災センサ出力関連値が前記本格火災判定閾値としての火災センサ本格火災判定閾値以上となったときに本格火災状態として判定する点にある。
尚、上記火災センサ出力関連値や上記ガスセンサ出力関連値は、上記火災センサや上記ガスセンサの出力、その出力の増加率、又は、その出力が継続して設定出力以上となる継続時間等のように、火災センサやガスセンサの出力の状態に伴って増減する値として求めることができる。
【0012】
上記第2特徴構成によれば、上記判定手段が、出力関連値としての火災センサ出力関連値とガスセンサ出力関連値の両方を用いて本格火災状態と初期火災状態とを適切に判定することができる。
即ち、火災センサ出力関連値が上記火災センサ本格火災判定閾値以上となった場合には、火災が発生している可能性が高いとして、ガスセンサ出力関連値の大小に拘わらず本格火災状態として判定し、一方、火災センサ出力関連値が上記火災センサ本格火災判定閾値よりも小さく設定された上記火災センサ初期火災判定閾値以上となった場合には、ガスセンサ出力関連値が上記ガスセンサ初期火災判定閾値以上である場合にのみ火災が発生している可能性があるとして、初期火災状態として判定することができる。
また、このように構成する場合においても、上述した初期火災継続判定時間が上記設定継続判定時間以上である場合、即ち、上記設定継続判定時間以上継続して、火災センサ出力関連値が火災センサ初期火災判定閾値以上となり且つガスセンサ出力関連値がガスセンサ初期火災判定閾値以上となっている場合には、初期火災状態ではなく、本格火災状態として判定して、利用者に注意を促すことができる。
【0013】
本発明に係る警報装置の第3特徴構成は、前記判定手段が、前記設定継続判定時間を、少なくとも1つの前記火災環境状態検出手段の出力関連値に応じて変更する点にある。
【0014】
上記第3特徴構成によれば、上記判定手段により、継続した初期火災状態の判定が開始してからそれを本格火災状態の判定に変更するまでの上記設定継続判定時間を、上記火災環境状態検出手段の出力関連値に応じて適宜変更するので、状況に応じて適切な判定が可能となる。
即ち、判定手段により継続的に初期火災状態を判定している初期火災継続判定時間において、火災環境状態検出手段の出力関連値が大きい場合には、実際に火災が発生している、又は、発生した火災が比較的大規模のものであると判断して、上記設定継続判定時間を比較的短くし、その初期火災状態の判定を早い段階で本格火災状態の判定に変更することにより、できるだけ迅速に、利用者に注意を促すことができる。
一方、判定手段により継続的に初期火災状態を判定している初期火災継続判定時間において、火災環境状態検出手段の出力関連値が小さい場合には、火災が発生していない、又は、発生した火災が比較的小規模のものであると判断して、上記信号出力遅延時間を比較的長くし、その初期火災状態の判定を本格火災状態の判定に変更することをできるだけ遅くすることにより、利用者に対して無用に注意を促すことを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る警報装置の第4特徴構成は、前記判定手段の判定結果に応じて警報を出力する警報手段と、
前記判定手段で本格火災状態を判定したときに火災対策指令信号を外部に出力する信号出力手段とを備えた点にある。
【0016】
上記第4特徴構成によれば、上記警報手段により、判定手段で初期火災状態や本格火災状態を判定した場合に、その判定結果に応じて初期火災警報や本格火災警報等の警報を出力すると共に、上記信号出力手段により、判定手段で本格火災状態を判定した場合には、火災が発生している可能性が高い又は火災の規模が大きいと判断して、その火災に対して何らかの対策を施すことを指令するための火災対策指令信号を外部に出力することができる。
そして、このように構成する場合においても、初期火災状態の判定及びそれに伴う警報の出力が上記設定継続判定時間以上継続した場合には、判定手段がその判定を本格火災状態の判定に変更することで、それに伴って信号出力手段が外部に火災対策指令信号を出力して、外部に火災に対する対策を要求することができる。
【0017】
本発明に係る警報装置の第5特徴構成は、人が存在していない不在状態を検出する不在状態検出手段を備え、
前記判定手段が、前記不在状態検出手段で前記不在状態を検出しているときの前記設定継続判定時間を、前記不在状態検出手段で前記不在状態を検出していないときよりも短くする点にある。
【0018】
上記第5特徴構成によれば、上記判定手段で初期火災状態を判定し警報手段でその判定に伴う警報の出力を開始してから、判定手段でその判定を本格火災状態の判定に変更し信号出力手段でその判定に伴って火災対策指令信号を外部に出力するまでの上記設定継続判定時間を、上記不在状態検出手段の検出結果に応じて適宜変更するので、人の在又は不在の状況に応じて適切な判定が可能となる。
即ち、判定手段により継続的に初期火災状態を判定している初期火災継続判定時間において、不在状態検出手段で不在状態を検出している場合には、初期火災状態の判定及び警報の出力を維持しても、火災の確認及びその火災に対する対処を行うことができる者が存在しないと判断して、上記設定継続判定時間を比較的短くし、その初期火災状態の判定を早い段階で本格火災状態の判定に変更して、できるだけ迅速に、その火災に対して何らかの対策を施すことを指令するための火災対策指令信号を外部に出力することができる。
一方、判定手段により継続的に初期火災状態を判定している初期火災継続判定時間において、不在状態検出手段で不在状態を検出していない場合には、火災の確認及びその火災に対する対処を行うことができる者が存在する判断して、上記信号出力遅延時間を比較的長くし、その初期火災状態の判定を本格火災状態の判定に変更することをできるだけ遅くして、本格火災状態の判定に伴う外部への無用の火災対策指令信号の出力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る警報装置の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
警報装置10は、図1及び図2に示すように、火災の発生に起因して変化する火災環境状態を検出する火災環境状態検出手段11を少なくとも1つ備え、少なくとも1つの火災環境状態検出手段11の出力に関する出力関連値が所定の判定閾値以上となったことを火災状態として判定する判定手段12と、判定手段12の判定結果に応じて警報を出力する警報手段13と、判定手段12で火災状態を判定したときに火災対策指令信号を外部に出力する信号出力手段14とを備え、例えば、本実施形態では、家庭内のキッチンの側壁4に設置され、コンロ2上の調理物による火災Fの発生を判定して、火災警報等を出力するように構成されている。
【0020】
警報装置10は、上記火災環境状態検出手段11として、火災環境状態としての煙、熱又は炎を検出する火災センサ11aと、火災環境状態としての火災Fにより生成される火災生成ガスの濃度を検出するガスセンサ11bとが設けられている。
【0021】
上記火災センサ11aは、火災Fによる煙を感知して、その煙の濃度に関連する出力を発する煙センサ、火災Fによる熱を感知して、その熱量や温度に関連する出力を発する熱センサ、火災Fによる炎が発する赤外線や紫外線等の光を感知して、その光の強度に関連する出力を発する炎センサ等として構成されている。
よって、その火災センサ11aの出力やその単位時間あたりの増加率等が大きいほど、火災Fが発生している可能性が高くなると判断できる。
【0022】
一方、上記ガスセンサ11bは、火災生成ガスとしての一酸化炭素、水素、アルデヒド類、ケトン類、二酸化炭素、塩化水素及びシアン化水素の少なくとも1つの濃度を検出するセンサとして構成されている。
例えば、一酸化炭素は火災Fにより不完全燃焼が発生することにより生成され、水素やアルデヒド類、ケトン類は、発火前に発生する成分や火災Fによる中間生成物として生成され、二酸化炭素、塩化水素及びシアン化水素は火災Fによる燃焼生成物として生成されるものであり、更に、通常の調理時や喫煙時においては、その生成量は少ない。
よって、そのガスセンサ11bの出力やその単位時間あたりの増加率等が大きいほど、火災Fが発生している可能性が高くなると判断できる。
【0023】
また、上記のようなガスセンサ11bとしては、公知の定電位電解型や起電力検出型、酸化還元混合電位検出型、電解質上設置電極反応電流を検出するタイプ等の電気化学式や金属酸化物半導体式や接触燃焼式等の公知のガスセンサを用いることができる。例えば、詳細については説明を割愛するが、一酸化炭素の濃度を検出するガスセンサとしては、金属酸化物半導体として酸化スズ半導体や酸化インジウム半導体等からなる感応部を用いた半導体式のガスセンサや、電解液や固体電解質等の電解質上に設けた電極上で一酸化炭素が反応することにより発生する電流を検出する電気化学式のガスセンサを用いることができ、水素の濃度を検出するガスセンサとしては、金属酸化物半導体として酸化スズ半導体などからなる感応部を用いた半導体式や接触燃焼式のガスセンサ等を用いることができる。
【0024】
上記判定手段12は、上記火災センサ11aの出力関連値である火災センサ出力関連値aとしての火災センサ11aの出力と、上記ガスセンサ11bの出力関連値であるガスセンサ出力関連値bとしてガスセンサ11の出力とを監視し、その火災センサ出力関連値aとガスセンサ出力関連値bとの一方又は両方が、所定の判定閾値以上となったことを、火災が発生している火災状態等として判定するように構成されている。
【0025】
即ち、判定手段12は、その詳細については後述するが、火災環境状態検出手段11の出力関連値を図3に示すデータマップに割り当てる形態で、その出力関連値としての火災センサ出力関連値a及びガスセンサ出力関連値bの一方又は両方が、判定閾値としての初期火災判定閾値以上となったことを初期火災状態(Y)として判定すると共に、火災環境状態検出手段11の出力関連値が、初期火災判定閾値よりも大きい判定閾値としての本格火災判定閾値以上となったことを本格火災状態(Z)として判定する。更に、判定手段12は、上記初期火災状態(Y)及び本格火災状態(Z)を判定していない場合に、ガスセンサ出力関連値bが判定閾値としてのガス異常判定閾値以上となったことをガス異常状態(X)として判定し、上記ガス異常状態(X),上記初期火災状態(Y)及び本格火災状態(Z)を判定していないことを特に異常は無い異常無し状態(W)として判定するように構成されている。
【0026】
更に、判定手段12は、上記のような各種状態を判定するにあたり、遅延時間を設定して、出力関連値が所定の遅延時間継続して判定閾値以上となったことを上記初期火災状態、本格火災状態、又は、ガス異常状態等として判定するように構成しても構わない。
【0027】
以下、判定手段12による上記各種状態の判定方法について、図3を参照して詳細な説明を加える。
【0028】
(本格火災状態の判定)
判定手段12は、火災センサ出力関連値aが本格火災判定閾値として設定された所定の火災センサ本格火災判定閾値A4以上となったことを本格火災状態(Z)として判定する。
尚、上記火災センサ出力関連値aが、火災センサ11aとしての熱センサで検出された熱量により求められる温度である場合には、上記火災センサ本格火災判定閾値A4を例えば65℃程度に設定することで、本格火災状態(Z)を適切に判定することができる。
【0029】
(初期火災状態の判定)
判定手段12は、上記火災センサ出力関連値aが上記本格火災状態(Z)の判定のための火災センサ本格火災判定閾値A4未満である場合において、火災センサ出力関連値aが初期火災判定閾値として設定された所定の火災センサ初期火災判定閾値A3(但しA3<A4)以上となり且つガスセンサ出力関連値bが初期火災判定閾値として設定された所定のガスセンサ初期火災判定閾値B1以上となったことを、火災センサ出力関連値aが初期火災判定閾値として設定された所定の火災センサ初期火災判定閾値A2(但しA2<A3)以上となり且つガスセンサ出力関連値bが初期火災判定閾値として設定された所定のガスセンサ初期火災判定閾値B2以上となったことを、更には、火災センサ出力関連値aが初期火災判定閾値として設定された所定の火災センサ初期火災判定閾値A1(但しA1<A2)以上となり且つガスセンサ出力関連値bが初期火災判定閾値として設定された所定のガスセンサ初期火災判定閾値B3(但しB3>B2)以上となったことを、初期火災状態(Y)として判定する。
【0030】
また、上記のようにガスセンサ出力関連値bが比較的大きい場合(例えば、ガスセンサ出力関連値bがガスセンサ初期火災判定閾値B3以上である場合)において、火災センサ出力関連値aに対して初期火災状態(Y)を判定するための火災センサ初期火災判定閾値A1が、ガスセンサ出力関連値bが中程度の場合(例えば、ガスセンサ出力関連値bがガスセンサ初期火災判定閾値B2以上且つガスセンサ初期火災判定閾値B3未満の範囲内である場合)において、火災センサ出力関連値aに対して初期火災状態(Y)を判定するための火災センサ初期火災判定閾値A2よりも、小さく設定されている。
更に、その火災センサ初期火災判定閾値A2が、ガスセンサ出力関連値bが比較的小さい場合(例えば、ガスセンサ出力関連値bがガスセンサ初期火災判定閾値B1以上且つガスセンサ初期火災判定閾値B2未満の範囲内である場合)において、火災センサ出力関連値aに対して初期火災状態(Y)を判定するための火災センサ初期火災判定閾値A3よりも、小さく設定されている。
即ち、ガスセンサ出力関連値bが大きいほど、高感度で初期火災状態(Y)を判定することができる。
【0031】
尚、上記火災センサ出力関連値aが、火災センサ11aとしての熱センサで検出された熱量により求められる温度である場合には、上記初期火災状態(Y)の判定対象である火災センサ出力関連値aに対する上記火災センサ初期火災判定閾値A1を例えば40℃程度に設定すると共に、上記火災センサ初期火災判定閾値A2を例えば50℃程度に設定すし、火災センサ初期火災判定閾値A3を55℃に設定する。一方、上記ガスセンサ出力関連値bが、ガスセンサ11bとしての一酸化炭素センサで検出された火災生成ガスとしての一酸化炭素の濃度である場合には、上記初期火災状態(Y)の判定対象であるガスセンサ出力関連値bに対する上記ガスセンサ初期火災判定閾値B1を例えば100ppm程度に設定すると共に、上記ガスセンサ初期火災判定閾値B2を例えば200ppm程度に設定し、上記ガスセンサ初期火災判定閾値B3を例えば550ppm程度に設定する。そして、上記のように各種判定閾値を設定することで、初期火災状態(Y)を適切に判定することができる。
【0032】
(初期火災状態から本格火災状態への判定変更)
判定手段12は、所定の設定継続判定時間以上継続する前記初期火災状態(Y)の判定を前記本格火災状態(Z)の判定に変更するように構成されている。
即ち、図4のフロー図も参照して、判定手段12は、初期火災状態(Y)を判定しているか否かを判別し(ステップ#11)、初期火災状態(Y)を判定している場合には、その初期火災状態(Y)を継続して判定している経過時間である初期火災継続判定時間Tを計測し(ステップ#12)、逆に、初期火災状態(Y)の判定が途切れた場合には、上記初期火災継続判定時間Tを0にリセットする(ステップ#13)。
【0033】
次に、上記初期火災継続判定時間Tが、所定の設定継続判定時間t(例えば2分)以上であるか否かを判定し(ステップ#14)、上記初期火災継続判定時間Tが上記設定継続判定時間t以上である場合には、例えば図3に示すデータマップにおける初期火災状態(Y)の領域を本格火災状態(Z)の領域に変更する形態で、現在継続している初期火災状態(Y)の判定を本格火災状態(Z)の判定に変更する(ステップ#15)。
【0034】
(ガス異常状態の判定)
判定手段12は、初期火災状態(Y)及び本格火災状態(Z)を判定していない場合に、ガスセンサ出力関連値bが判定閾値としてのガス異常判定閾値B’以上となったことをガス異常状態(X)として判定する。
尚、上記ガスセンサ関連値bが、ガスセンサ11bとしての一酸化炭素センサで検出された火災生成ガスとしての一酸化炭素の濃度である場合には、上記ガス異常状態(X)の判定対象であるガスセンサ出力関連値bに対する上記ガス異常判定閾値B’を例えば200ppm程度に設定することで、ガス異常状態(X)を適切に判定することができる。
【0035】
また、上記ガス異常状態(X)を判定するためのガス異常判定閾値B’は、上述した初期火災状態(Y)を判定するためのガスセンサ初期火災判定閾値B2と同値とすることができる。
よって、判定手段12は、火災センサ出力関連値aが火災センサ本格火災判定閾値A4未満である場合において、火災センサ出力関連値aが火災センサ初期火災判定閾値A2以上と比較的大きい場合には、ガスセンサ関連値bがガスセンサ初期火災判定閾値B2以上となったことを初期火災状態(Y)と判定し、火災センサ出力関連値aが火災センサ初期火災判定閾値A1未満と比較的小さい場合には、ガスセンサ関連値bがガスセンサ初期火災判定閾値B2以上となったことをガス異常状態(X)として判定することになる。
【0036】
次に、警報手段13の詳細構成について、説明を加える。
警報手段13は、例えば、上記判定手段12でガス異常状態(X)を判定した場合には、火災生成ガスの濃度が異常に高いことを報知すると共に換気を促すための警報として、例えば、「空気が汚れて危険です。窓を開けて換気してください。」という音声ガイダンスを出力し、上記判定手段12で初期火災状態(Y)を判定した場合には、火気使用箇所(例えばコンロ)の状況の確認を促すための警報として、例えば、「火元を確認してください。」という音声ガイダンスを出力し、上記判定手段12で本格火災状態(Z)を判定した場合には、本格火災状態(Z)であることを報知するための警報として、例えば、「火災警報装置が作動しました。確認してください。」という音声ガイダンスを出力するように構成することができる。
【0037】
次に、信号出力手段14の詳細構成について、説明を加える。
信号出力手段14は、判定手段12において初期火災状態の判定が本格火災状態の判定に変更されたときを含め、判定手段12において本格火災状態を判定したときに、判定手段12による判定結果に関する火災対策指令信号を外部に出力して、その火災に対して何らかの対策を施すことを指令するように構成されている。
【0038】
図1も参照して、信号出力手段14は、判定手段12で本格火災状態を判定したときに、ガス供給会社や警備会社等に設置されたセンター装置23(外部システムの一例)に、通信装置21及びインターネット等の通信ネットワーク22を介して、上記火災対策指令信号を送信して、火災発生を通報するように構成することができる。
また、信号出力手段14は、屋外に設置された緊急回転灯24やスピーカ25(外部システムの一例)に上記火災対策指令信号を出力して作動させ、屋外の通行人等に火災の発生を通報するように構成することができる。
更に、信号出力手段14は、判定手段12で本格火災状態を判定したときに、コンロ等の火元へのガスの供給を遮断可能な遮断弁26に、上記火災対策指令信号を出力して、その遮断弁26を遮断するように構成することができる。
尚、この遮断弁26としては、ガスメータ(図示せず)に内蔵されたものを利用することができる。
【0039】
更に、警報装置10が、人が存在していない不在状態を検出する不在状態検出手段15を備え、判定手段12は、不在状態検出手段15で不在状態を検出しているときの設定継続判定時間を、不在状態検出手段15で不在状態を検出していないときよりも短くするように構成することもできる。
【0040】
即ち、警報装置10には、上述した火災センサ11aやガスセンサ11bとは別に、人が存在していない不在状態を検出する不在状態検出手段15が設けられている。
この不在状態検出手段15は、公知の人感センサ15aにより所定の時間継続して人の存在を感知しなかったことを、不在状態として検出するように構成されている。
尚、不在状態検出手段15は、例えば、不在ボタン(図示せず)が押された場合に、不在状態を検出し、不在ボタンが再度押されるなどして解除された場合に、不在状態の検出を解除して設置空間に人が存在していると判断するように構成するなど、適宜改変可能である。
【0041】
そして、判定手段12は、図5に示すフロー図も参照して、上記不在状態検出手段15で不在状態を検出したか否かを判定し(ステップ#21)、不在状態を判定した場合には、図4のフロー図で用いる設定継続判定時間tを比較的短め(例えば0分)のt0に設定し(ステップ#22)、逆に、不在状態を判定しなかった場合には、同設定継続判定時間tを比較的長め(例えば2分)のt1に設定する(ステップ#23)形態で、設定継続判定時間tを不在状態検出手段15の出力関連値に応じて変更する。

そして、上記のように設定継続判定時間tを不在状態に応じて変更することで、不在状態である場合には、上記設定継続判定時間tを0又は短くすることにより、継続する初期火災状態の判定を早い段階で本格火災状態に変更して、できるだけ迅速に、火災に対して何らかの対策を施すことを指令するための火災対策指令信号を外部に出力し、不在状態でない場合には、上記設定継続判定時間tを若干長くすることで、継続する初期火災状態の判定を本格火災状態の判定に変更するをできるだけ遅くすることにより、火災が発生していないとき又は鎮火後の火災対策指令信号の無用の出力を抑制することができる。
【0042】
〔別実施形態〕
(1)上記実施の形態では、火災センサ11aとガスセンサ11bとの複数の火災環境状態検出手段11を設け、別に、一つの火災環境状態検出手段11を設け、その火災環境状態検出手段11の出力関連値を用いて火災状態がガス異常状態の判定を行っても構わない。
【0043】
(2)上記実施の形態では、火災環境状態検出手段11として、火災センサ11aやガスセンサ11bを設けたが、別に、火災により発生するニオイを検出するニオイセンサ等の、別の形態の火災環境状態を検出する火災環境状態検出手段を設けても構わない。
【0044】
(3)上記実施の形態では、火災センサ出力関連値aやガスセンサ出力関連値bとして、火災センサ11aの出力やガスセンサ11bの出力を用いたが、別に、火災センサ11aの出力の単位時間あたりの増加率等やガスセンサ11bの出力の単位時間あたりの増加率等を、火災センサ出力関連値aやガスセンサ出力関連値bとして用いても構わない。
【0045】
(4)上記実施の形態では、判定手段12は、火災環境状態検出手段11の出力関連値を図3に示すデータマップに割り当てる形態で火災状態やガス異常状態等を判定するように構成したが、別に、そのデータマップの代わりに、火災環境検出手段11の出力関連値により火災状態やガス異常状態を判定するための所定の判定処理フローを構築しておいても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】警報装置の設置状態を示す図
【図2】警報装置の概略構成図
【図3】火災状態及びガス異常状態の判定の状態を示す説明
【図4】初期火災状態の本格火災状態への判定変更処理を示すフロー図
【図5】不在状態に基づく設定継続判定時間の変更処理を示すフロー図
【符号の説明】
【0047】
10:警報装置
11:火災環境状態検出手段
11a:火災センサ
11b:ガスセンサ
12:判定手段
13:警報手段
14:信号出力手段
15:不在状態検出手段
a:火災センサ出力関連値(出力関連値)
b:ガスセンサ出力関連値(出力関連値)
t:信号出力遅延時間
A1,A2,A3:火災センサ初期火災判定閾値
A4:火災センサ本格火災判定閾値
B1,B2,B3:ガスセンサ初期火災判定閾値
B’:ガス異常判定閾値
F:火災
Y:初期火災状態
Z:本格火災状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災に起因して変化する火災環境状態を検出する火災環境状態検出手段を少なくとも1つ備え、
少なくとも1つの前記火災環境状態検出手段の出力に関する出力関連値が初期火災判定閾値以上となったことを初期火災状態として判定すると共に、前記火災環境状態検出手段の出力関連値が前記初期火災判定閾値よりも大きい本格火災判定閾値以上となったことを本格火災状態として判定する判定手段とを備えた警報装置であって、
前記判定手段が、所定の設定継続判定時間以上継続する前記初期火災状態の判定を前記本格火災状態の判定に変更する警報装置。
【請求項2】
前記火災環境状態検出手段として、前記火災環境状態としての煙、熱又は炎を検出する火災センサ、及び、前記火災環境状態としての火災により生成される火災生成ガスの濃度を検出するガスセンサを備え、
前記判定手段が、前記火災センサの出力関連値である火災センサ出力関連値が前記初期火災判定閾値としての火災センサ初期火災判定閾値以上となり且つ前記ガスセンサの出力関連値であるガスセンサ出力関連値が前記初期火災判定閾値としてのガスセンサ初期火災判定閾値以上となったことを前記初期火災状態として判定し、前記火災センサ出力関連値が前記本格火災判定閾値としての火災センサ本格火災判定閾値以上となったときに本格火災状態として判定する請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
前記判定手段が、前記設定継続判定時間を、少なくとも1つの前記火災環境状態検出手段の出力関連値に応じて変更する請求項1又は2に記載の警報装置。
【請求項4】
前記判定手段の判定結果に応じて警報を出力する警報手段と、
前記判定手段で本格火災状態を判定したときに火災対策指令信号を外部に出力する信号出力手段とを備えた請求項1〜3の何れか一項に記載の警報装置。
【請求項5】
人が存在していない不在状態を検出する不在状態検出手段を備え、
前記判定手段が、前記不在状態検出手段で前記不在状態を検出しているときの前記設定継続判定時間を、前記不在状態検出手段で前記不在状態を検出していないときよりも短くする請求項4に記載の警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−163636(P2006−163636A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351881(P2004−351881)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】