説明

豚サーコウイルスに対してブタを免疫化するための方法および組成物

本発明は、2B型豚サーコウイルスの2つの新たな株の単離および同定に関する。豚サーコウイルスのこれらの2つの新たな株は、離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対してブタを免疫化するためのワクチンまたは免疫原性組成物の調製に用いることができる。したがって、本発明は、免疫原性上有効な量の、配列番号1もしくは2に示される核酸配列を有する豚サーコウイルスの少なくとも1つを含む2B型豚サーコウイルスワクチンもしくは免疫原性組成物、または本明細書において記載される豚サーコウイルスの2つの新たな2B型株の少なくとも1つ由来の少なくとも1つのタンパク質をブタに投与することにより、病原性豚サーコウイルスに対する防御免疫応答を引き起こすための方法を提供する。本発明はさらに、PMWSに関連する症状または続発症のいずれか1つまたは複数からのブタの防御に関する。
【図1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の健康の分野に関し、豚サーコウイルスの病原性2B型株に対してブタを防御するための方法および組成物を提供する。さらに詳細には、本発明は、新たに同定された病原性2B型豚サーコウイルス株、これらの2B型株をコードする核酸配列、およびこれらの核酸によってコードされるタンパク質に関する。本発明はまた、免疫原性上有効な量のこれらの2B型豚サーコウイルスの少なくとも1つ、またはこれらの2型豚サーコウイルスの少なくとも1つをコードする核酸、またはこれらの核酸によりコードされるタンパク質の少なくとも1つを含む組成物を投与することにより病原性豚サーコウイルスに対する免疫応答を引き起こすための方法および組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
豚サーコウイルス(PCV)は、約1.76kbの一本鎖環状DNAゲノムを含有する、小さな20面体の、エンベロープを有さないウイルスである。それは初め、豚の腎臓細胞系PK−15の細胞培養汚染物質として単離された(I.Tischerら、Nature、295:64〜66(1982);I.Tischerら、Zentralbl.Bakteriol.Hyg.Otg.A.226(2):153〜167(1974))。PCVは、3つの他の動物サーコウイルス(ニワトリ貧血ウイルス(CAV)、オウム嘴羽病ウイルス(PBFDV)、および最近鳩から発見されたハトサーコウイルス(CoCV))、ならびに3つの植物サーコウイルス(バナナ萎縮病ウイルス、ココナッツ葉腐食ウイルス、および地中クローバー発育阻害ウイルス)からなる、サーコウイルス科に分類される(M.R.Bassamiら、Virology、249:453〜459(1998);J.Mankertzら、Virus Genes 16:267〜276(1998);A.Mankertzら、Arch.Virol.145:2469〜2479(2000);B.M.Meehanら、J.Gen.Virol.78:221〜227(1997);B.M.Meehanら、J.Gen.Virol.79:2171〜2179(1998);D.Toddら、Arch.Virol.117:129〜135(1991))。3つのこれまでに認められている動物サーコウイルス(PCV、CAV、およびPBFDV)のメンバーは、ヌクレオチド配列の相同性または抗原決定基を互いに共有していない(上記のM.R.Bassamiら、1998;上記のD.Toddら、1991)。PK−15細胞由来のPCVでブタを実験的に感染させると、臨床的疾患は生じず、したがって、このウイルスはブタに対して病原性であるとは見なされない(G.M.Allanら、Vet.Microbiol.44:49〜64(1995);I.Tischerら、Arch.Virol.91:271〜276(1986))。汚染したPK−15細胞系に由来するこの非病原性PCVは、豚サーコウイルス1型すなわちPCV1と称された。
【0003】
1991年(J.C.HardingおよびE.G.Clark、Swine Health and Production 5:201〜203(1997))に最初に記載された離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)は、次第に蔓延してきている、離乳中の子豚の複合疾患である。PMWSは主に、5〜18週齢のブタに発症する。臨床的なPMWSの徴候には、進行性の体重減少、呼吸困難、多呼吸、貧血、下痢、および黄疸が含まれる。死亡率は1%から2%であり、イギリスにおけるいくつかの合併症のケースでは最大40%である(M.Muirhead、Vet.Rec.150:456(2002))。PMWSの顕微鏡的病変の特徴には、肉芽腫性間質性肺炎、リンパ節症、肝炎、および腎炎が含まれる(G.M.AllanおよびJ.A.Ellis、J.Vet.Diagn.Invest.12:3〜14(2000);J.C.HardingおよびE.G.Clark、Swine Health and Production 5:201〜203(1997))。
【0004】
PCV1はブタにおいて偏在しているが、ブタに対して病原性ではない。PMWSの主な原因作用物質は、通常、豚サーコウイルス2型またはPCV2と称されるPCVの病原性株である(G.M.Allanら、Vet.Rec.142:467〜468(1998);G.M.Allanら、J.Vet.Diagn.Invest.10:3〜10(1998);G.M.Allanら、Vet.Microbiol.66:115〜23(1999);G.M.AllanおよびJ.A.Ellis、J.Vet.Diagn.Invest.12:3〜14(2000);J.Ellisら、Can.Vet.J.39:44〜51(1998);A.L.Hamelら、J.Virol.72:5262〜5267(1998);上記のB.M.Meehanら、1998;I.Morozovら、J.Clin.Microbiol.36:2535〜2541(1998))。PMWSに関連するPCV2の完全なゲノム配列は決定されている(M.Fenauxら、J.Clin.Microbiol.38:2494〜503(2000);上記のA.L.Hamelら、1998;上記のJ.Mankertzら、1998;上記のB.M.Meehanら、1997;上記のB.M.Meehanら、1998;上記のI.Morozovら、1998)。
【0005】
配列分析により、PMWSに関連するPCV2が、非病原性PCV1と約75%のヌクレオチド配列同一性しか有さないことが明らかとなっている。非病原性PCV1および病原性PCV2の両方のORF2遺伝子は、主要な免疫原性ウイルスカプシドタンパク質をコードする(P.Nawagitgulら、Immunol.Clin.Diagn.Lab Immunol.1:33〜40(2002);P.Nawagitgulら、J.Gen.Virol.81:2281〜2287(2000))。
【0006】
PCV2に対するワクチンの開発は、ブタ産業に対する潜在的な影響を有するため、最も重要なものとなっている。例えば、米国特許第6,287,856号(Poetら)およびWO99/45956は、鳥種に感染するサーコウイルスであるオウム嘴羽病ウイルス(BFDV)および豚サーコウイルス(PCV)由来の核酸を記載している。この特許は、裸のDNAまたはmRNAを含むワクチン組成物を提案し、シス作用性の転写調節配列または翻訳調節配列を含む、真核細胞におけるPCVの一過性発現のための核酸ベクターを開示しており、前記配列は、その配列の核酸に機能的に結合しているヒトサイトメガロウイルスの迅速なまたは早期の遺伝子エンハンサーまたはプロモーターに由来する。
【0007】
米国特許第6,217,883号(Allanら)および仏国特許第2,781,159B号は、カナダ、カリフォルニア、およびフランス(ブルターニュ)におけるPMWSに感染したブタから採取した肺または神経節の試料からの5つのPCV株の単離、ならびにワクチン/免疫原性組成物における少なくとも1つの豚パルボウイルス抗原と組み合わせたその使用を記載している。ORF1からORF13からなるPCV2のオープンリーディングフレーム(ORF)によりコードされるタンパク質はこの特許において広く記載されているが、免疫原特性を示す特異的なタンパク質については全く例示されていない。この特許はさらに、PCV抗原をコードする核酸分子を含有しそれをインビボで発現する、DNAプラスミド、線状DNA分子、および組換えウイルスからなるベクターを記載している。
【0008】
いくつかの他の参考文献、例えば米国特許第6,391,314B1号、米国特許第6,368,601B1号、仏国特許第2,769,321号、仏国特許第2,769,322号、WO01/96377A2、WO00/01409、WO99/18214、WO00/77216A2、WO01/16330A2、WO99/29871などは、PCV1もしくはPCV2ポリペプチドまたは様々な株のポリペプチドをコードする核酸をワクチン組成物として投与することを記載している。
【0009】
本明細書におけるあらゆる参考文献の引用は、このような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であるということを承認するものとして判断されるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、その最も広い態様において、2型豚サーコウイルス(PCV2)の2つの新たな株の単離および同定を提供し、これらの株はそれぞれ、単独で、または組み合わせて、病原性PCV2の感染に対するブタの防御において用いるため、または離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に関連する少なくとも1つの症状を改善するためのワクチンまたは免疫原性組成物の調製に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の第1の態様は、ゲノムが配列番号1(FD07と称される)もしくは2(FDJEと称される)のどちらかの核酸分子を含むか、またはゲノムが配列番号1もしくは2のどちらかに対して少なくとも95%の配列相同性を有する核酸分子を含む、単離された豚2型サーコウイルスを提供する。
【0012】
一実施形態において、2つの新たに同定および単離された豚サーコウイルスは、2B型豚サーコウイルス(PCV2B)である。
【0013】
一実施形態において、単離された豚サーコウイルスは、配列番号3(FD07由来)または4(FDJE由来)のどちらかに対して少なくとも92%の配列同一性を有するORF2タンパク質を有する。
【0014】
一実施形態において、単離された豚サーコウイルスは、配列番号3または4のどちらかのアミノ酸配列を含むORF2タンパク質を有する。
【0015】
本発明の第2の態様は、病原性2B型豚サーコウイルスをコードするか、または前記サーコウイルス由来の少なくとも1つのタンパク質をコードする、単離された核酸分子を提供し、この核酸分子は、配列番号1または2のどちらかに対して少なくとも95%の配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0016】
一実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号1または2のどちらかのヌクレオチド配列を含む。
【0017】
一実施形態において、FD07のORF1レプリカーゼタンパク質をコードする単離された核酸分子は、配列番号5の51〜995番残基を含み、FD07のORF2カプシドタンパク質をコードする単離された核酸分子は、配列番号5の1033〜1734番残基を含む。
【0018】
一実施形態において、FDJEのORF1レプリカーゼタンパク質をコードする単離された核酸分子は、配列番号6の51〜995番残基を含み、FDJEのORF2カプシドタンパク質をコードする単離された核酸分子は、配列番号6の1033〜1734番残基を含む。
【0019】
一実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号3または4に示されるアミノ酸配列を有するORF2タンパク質をコードする。
【0020】
本発明の第3の態様は、本明細書において記載される単離された2B型豚サーコウイルスの少なくとも1つもしくはその組み合わせ、本明細書において記載される2B型豚サーコウイルスの少なくとも1つをコードする少なくとも1つの核酸分子、本明細書において記載される2B型豚サーコウイルスの少なくとも1つ由来の少なくとも1つのタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子、または本明細書において記載される2B型豚サーコウイルスの少なくとも1つから得られる少なくとも1つのタンパク質のうち少なくとも1つと、薬学的に許容できるアジュバントとを含む、免疫原性組成物またはワクチン組成物を提供する。
【0021】
一実施形態において、ワクチンまたは免疫原性組成物は、
a)ゲノムが配列番号1もしくは2のどちらかの核酸分子を含む、生/弱毒化、もしくは修飾された生PCV2B、
b)ゲノムが配列番号1もしくは2のどちらかの核酸分子を含む、死滅/不活化PCV2B、
c)PCV2B DNAワクチン(例えば、ゲノムが配列番号1もしくは2のどちらかの核酸分子を含むPCV2BのORF2を発現するプラスミドベクター)、または
d)ゲノムが配列番号1もしくは2のどちらかの核酸分子を含むPCV2BのORF2を発現する、不活化ウイルスベクター(例えば、バキュロウイルス、アデノウイルス、もしくはアライグマポックスウイルスなどのポックスウイルス、または大腸菌(E.coli)などの細菌)
の1つまたは複数を含み得る。
【0022】
一実施形態において、ORF2遺伝子が配列番号1または2の2B型豚サーコウイルスから得られるワクチンまたは免疫原性組成物は、豚の2A型、2C型、もしくは2D型の株または任意の他の変異体での感染に対して交差防御し得る。このようなワクチンまたは免疫原性組成物を投与すると、低毒性/低死亡率の2A型株に対してブタが防御され、また、病原性豚サーコウイルスの高毒性/高死亡率の2B型株に対しても交差防御される。使用されるワクチンまたは免疫原性組成物は、単一用量または複数用量として投与することができる。投与すると、離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に関連する症状または続発症のいずれか1つまたは複数からブタが防御される。さらに、上記の実施形態のいずれかを含むワクチンまたは免疫原性組成物を投与すると、また、豚サーコウイルスの高毒性/高死亡率の2B型株に関連する平均死亡率よりも大きく低減する。
【0023】
一実施形態において、上記の免疫原性組成物またはワクチン組成物は、豚サーコウイルスに対する免疫応答を引き起こすため、または病原性PCV2の感染に対してブタを防御するため、またはその疾患に関連する少なくとも1つの症状を改善するために用いることができる。
【0024】
一実施形態において、上記の免疫原性組成物またはワクチン組成物はさらに、少なくとも1つの他の微生物、またはそれに対する免疫応答が望まれる前記微生物から得られる抗原を含む。一実施形態において、上記の免疫原性組成物またはワクチン組成物はさらに、それに対する免疫応答が望まれる少なくとも1つの他の微生物由来の少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つの他の核酸分子を含む。他の微生物は、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、豚パルボウイルス(PPV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、大腸菌(Escherichia coli)抗原、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、ブタ伝染性胃腸炎の原因である病原体、および豚サーコウイルスの第2の異なる株からなる群から選択され得る。豚サーコウイルスの第2の異なる株は、2A型または2B型サーコウイルスであり得る。
【0025】
一実施形態において、免疫原性組成物またはワクチン組成物は、アジュバントを伴ってまたは伴わずに投与される。
【0026】
一実施形態において、免疫原性組成物またはワクチン組成物は、皮下、筋肉内、鼻腔内、経皮、肝内に、またはリンパ内経路を介して、一回用量または複数用量で投与される。
【0027】
本発明の第4の態様は、ウイルス感染もしくは離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対してブタを免疫化する、またはPCV2の株により生じるブタのPMWSを予防するため、またはPMWSに関連する少なくとも1つの症状を改善するための方法であって、
a)免疫原性上有効な量の、本明細書において記載される、配列番号1もしくは2のどちらかの核酸分子によりコードされる2型豚サーコウイルスの少なくとも1つ、
b)a)の2型豚サーコウイルスの少なくとも1つをコードする核酸分子、
c)免疫原性上有効な量の、a)の2型豚サーコウイルスの少なくとも1つから単離される少なくとも1つのタンパク質、または
d)免疫原性上有効な量の、c)の少なくとも1つのタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子
のいずれか1つまたは複数を含む免疫原性上有効な量の組成物をブタに投与するステップを含む方法を提供する。
【0028】
一実施形態において、本発明は、非毒性の生理学的に許容できる担体と、ゲノムが配列番号1または2のどちらかの核酸分子を含む、本明細書において記載される免疫原性上有効な量の死滅/不活化2型豚サーコウイルスまたは生の弱毒化2型豚サーコウイルスとを含む、ワクチンまたは免疫原性組成物を投与することにより、豚サーコウイルスの少なくとも1つの病原性株に対してブタを免疫化または防御するための方法を提供する。一実施形態において、本発明の方法は、アジュバントをさらに含む上記のワクチンまたは免疫原性組成物を投与することにより、豚サーコウイルス感染に対してブタを免疫化または防御することを提供する。
【0029】
一実施形態において、本発明は、配列番号1または2において示される2型豚サーコウイルスをコードする感染性核酸を含むワクチンまたは免疫原性組成物を投与することにより豚サーコウイルスの病原性2B株に対してブタを免疫化または防御するための方法であって、この投与によって豚サーコウイルス感染の1つまたは複数の症状が改善する方法を提供する。
【0030】
一実施形態において、本発明は、免疫原性上有効な量のワクチンまたは免疫原性組成物を投与することにより2B型豚サーコウイルスの病原性株に対してブタを免疫化または防御するための方法であり、前記組成物が、本発明において記載される2型豚サーコウイルス由来の少なくとも1つのタンパク質、または本発明の2型豚サーコウイルス由来のタンパク質をコードする核酸を含む方法を提供する。一実施形態において、本発明の2B型豚サーコウイルス由来のタンパク質は、ORF2タンパク質である。一実施形態において、FD07およびFDJEと称される、本発明の2B型豚サーコウイルス由来のORF2タンパク質をコードするORF−2遺伝子は、それぞれ、配列番号5および6に示されるヌクレオチド配列の1033〜1074番残基を含み、FD07およびFDJEのORF−2遺伝子によりコードされるタンパク質は、それぞれ、配列番号3または4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
一実施形態において、本発明は、豚サーコウイルスの病原性2B型株に対してブタを免疫化または防御するための方法であって、2型豚サーコウイルスを含むワクチンもしくは免疫原性組成物、または2型豚サーコウイルスをコードする核酸を投与するステップを含み、豚サーコウイルスが、配列番号1もしくは2に示されるヌクレオチド配列、それらの相補鎖、または配列番号1もしくは配列番号2のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の相同性を有する核酸配列によってコードされる方法を提供する。
【0032】
一実施形態において、本発明は、2つの新たな2B型豚サーコウイルスの少なくとも1つ、または本発明の新たな2B型豚サーコウイルスの少なくとも1つをコードする核酸、または本発明の2つの2B型豚株の少なくとも1つ由来の少なくとも1つのタンパク質、またはこれらの2つのタンパク質の少なくとも1つをコードする核酸を含む、ワクチンまたは免疫原性組成物を投与することにより、豚サーコウイルスの病原性2B型株に対してブタを免疫化または防御するための方法であり、豚サーコウイルスの病原性2B型株が、本発明において記載される2B型豚サーコウイルスの2つの株の少なくとも1つのORF2遺伝子によりコードされるカプシドタンパク質と少なくとも92%の配列同一性を示すORF2遺伝子によりコードされるカプシドタンパク質を含有する豚サーコウイルスの株である方法を提供する。本発明の豚サーコウイルスの2B型株のカプシドタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号3および4において示される。
【0033】
一実施形態において、本発明の方法は、2B型豚サーコウイルス、または2B型豚サーコウイルスをコードするかもしくは本発明の前記豚サーコウイルス由来の少なくとも1つのタンパク質をコードする核酸を含む、ワクチンまたは免疫原性組成物をブタに投与することを含む、2B型豚サーコウイルスの病原性株での感染からブタを免疫化または防御することであって、前記投与により、
2B型豚サーコウイルスの毒性形態に曝露されたブタの1つまたは複数のリンパ組織または非リンパ組織における顕微鏡的病変の低減、
豚サーコウイルスの感染に関連するウイルス血症の低減、
1つまたは複数の組織における2A型または2B型核酸のレベルの低減
という臨床症状の1つまたは複数が改善することを提供する。
【0034】
一実施形態において、この方法はさらに、本明細書において記載される2型豚サーコウイルスの免疫原性組成物を投与する前に、その投与と共に、またはその投与の後に、免疫原性上有効な量の第2の異なる免疫原性組成物を投与するステップを含む。
【0035】
一実施形態において、第2の異なる免疫原性組成物は、免疫原性上有効な量の、ブタに対して病原性である少なくとも1つの他の微生物、または前記微生物から得られる少なくとも1つの抗原、または前記抗原をコードする核酸分子を含み、前記微生物は、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、豚パルボウイルス(PPV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、大腸菌(Escherichia coli)抗原、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、ブタ伝染性胃腸炎の原因である病原体、および豚サーコウイルスの第2の異なる株からなる群から選択される。豚サーコウイルスの第2の異なる株は、2A型または2B型サーコウイルスであり得る。
【0036】
本発明の第5の態様は、2A型または2B型豚サーコウイルスタンパク質をコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含むベクターであって、豚サーコウイルスタンパク質がORF2タンパク質であり、前記タンパク質をコードする外因性核酸分子が配列番号5または6の1033〜1734番残基に示されるベクターを提供する。
【0037】
一実施形態において、ベクターは、本明細書において記載されるPCV2AもしくはPCV2B豚サーコウイルスまたはその両方由来の少なくとも1つのタンパク質をコードする核酸分子を含有するアライグマポックスウイルスベクターである。
【0038】
一実施形態において、ベクターはさらに、ブタに対して病原性である微生物由来の抗原をコードする1つまたは複数の外因性核酸分子を含み、微生物は、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、豚パルボウイルス(PPV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、大腸菌(Escherichia coli)抗原、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、ブタ伝染性胃腸炎の原因である病原体、および豚サーコウイルスの第2の異なる株からなる群から選択される。
【0039】
本発明の第6の態様は、豚哺乳動物が離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に罹患しているかまたはそれを発症するリスクがあるかを決定する方法であって、
(I)哺乳動物に由来する組織試料におけるPCV2核酸または前記核酸によりコードされるタンパク質の量を測定するステップであって、前記PCV2核酸またはタンパク質が、
a)配列番号1、2、5、もしくは6のいずれかを含む核酸またはそれらに由来する核酸、
b)配列番号3または4のどちらかを含むタンパク質、
c)配列番号1、2、5、もしくは6のいずれかにハイブリダイズ可能な配列を含む核酸、または高いストリンジェンシー条件下でのそれらの相補体、または前記ハイブリダイズ可能な配列によりコードされる配列を含むタンパク質、
d)配列番号1、2、5、もしくは6のいずれかに対して少なくとも95%相同な核酸、またはNBLASTアルゴリズムを用いて決定されるそれらの相補体、またはそれによりコードされるタンパク質
であるステップ、
(II)PMWSに罹患しているまたはそれを発症するリスクにあることが疑われる哺乳動物由来の組織試料における前記核酸またはタンパク質の量を、正常な哺乳動物由来の組織試料内に存在する核酸もしくはタンパク質の量、または正常な組織試料についてあらかじめ決定された標準と比較するステップであって、PMWSに罹患しているまたは罹患の疑いがある豚哺乳動物由来の組織試料における前記核酸またはタンパク質の量が、正常な組織試料における量または正常な組織試料についてあらかじめ決定された標準と比較して上昇すると、その哺乳動物がPMWSに罹患しているかまたはそれを発症するリスクにあることが示されるステップと
を含む方法を提供する。
【0040】
一実施形態において、豚哺乳動物がPMWSに罹患しているかまたはそれを発症するリスクがあるかを決定するための方法は、浅鼠径リンパ節、気管気管支リンパ節、顎下腺リンパ節、肺、扁桃腺、脾臓、肝臓、腎臓、全血、および血液細胞からなる群から選択される組織試料における本発明のPCV2B核酸またはタンパク質の量を測定することを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノムが配列番号1もしくは2のどちらかの核酸分子を含むか、またはゲノムが配列番号1もしくは2のどちらかに対して少なくとも95%の配列相同性を有する核酸分子を含む、単離された豚サーコウイルス。
【請求項2】
ゲノムが配列番号1または2のどちらかの核酸分子を含む、請求項1に記載の単離された豚サーコウイルス。
【請求項3】
2B型豚サーコウイルスである、請求項1または2に記載の単離された豚サーコウイルス。
【請求項4】
配列番号3または4のどちらかに対して少なくとも92%の配列同一性を有するORF2タンパク質を有する、請求項3に記載の単離された豚サーコウイルス。
【請求項5】
ORF2タンパク質をコードする核酸が、配列番号5または6の1033〜1734番残基を含む、請求項2に記載の単離された豚サーコウイルス。
【請求項6】
病原性2B型豚サーコウイルスをコードするか、または前記サーコウイルス由来の少なくとも1つのタンパク質をコードする、単離された核酸分子であって、配列番号1、2、5、もしくは6のいずれかのヌクレオチド配列を含むか、または配列番号1、2、5、もしくは6のいずれかに対して少なくとも95%の配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項7】
配列番号1、2、5、または6のいずれかのヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
ORF2タンパク質をコードする核酸が、配列番号5またはの1033〜1734番残基で見られる、請求項6または7に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
配列番号3または4に示されるアミノ酸配列を有するORF2タンパク質をコードする、請求項8に記載の単離された核酸分子。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の単離された豚サーコウイルスおよび薬学的に許容できるアジュバントを含む免疫原性組成物。
【請求項11】
単離された豚サーコウイルスが弱毒化または不活化されている、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの他の微生物、またはそれに対する免疫応答が望まれる前記微生物から得られる抗原をさらに含む、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
他の微生物が、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、豚パルボウイルス(PPV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、大腸菌(Escherichia coli)抗原、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、ブタ伝染性胃腸炎の原因である病原体、および豚サーコウイルスの第2の異なる株からなる群から選択される、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
豚サーコウイルスの第2の異なる株が2A型または2B型サーコウイルスである、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
請求項6〜9のいずれかに記載の少なくとも1つの単離された核酸分子および薬学的に許容できるアジュバントを含む免疫原性組成物。
【請求項16】
それに対する免疫応答が望まれる少なくとも1つの他の微生物由来の少なくとも1つの抗原をコードする核酸分子をさらに含む、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
他の微生物が、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、豚パルボウイルス(PPV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、大腸菌(Escherichia coli)抗原、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、ブタ伝染性胃腸炎の原因である病原体、および豚サーコウイルスの第2の異なる株からなる群から選択される、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
豚サーコウイルスの第2の異なる株が2A型または2B型サーコウイルスである、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
皮下、筋肉内、鼻腔内、経皮、肝内に、またはリンパ内経路を介して、一回用量または複数用量で投与される、請求項10または15に記載の組成物。
【請求項20】
ウイルス感染もしくは離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対してブタを免疫化する、またはPCV2の株により生じるブタの離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)を予防するための方法であって、
a)免疫原性上有効な量の、請求項1〜5のいずれかに記載の2型豚サーコウイルス、
b)a)の2型豚サーコウイルスをコードする核酸分子、
c)免疫原性上有効な量の、請求項1〜5のいずれかに記載の2型豚サーコウイルスから単離される少なくとも1つのタンパク質、または
d)c)の少なくとも1つのタンパク質をコードする核酸分子
のいずれか1つまたは複数を含む免疫原性上有効な量の組成物をブタに投与するステップを含む方法。
【請求項21】
2型豚サーコウイルスの免疫原性組成物を投与する前に、その投与と共に、またはその投与の後に、免疫原性上有効な量の第2の異なる免疫原性組成物を投与するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2の異なる免疫原性組成物が、免疫原性上有効な量の、ブタに対して病原性である少なくとも1つの他の微生物、または前記微生物から得られる少なくとも1つの抗原、または前記抗原をコードする核酸分子を含み、前記微生物が、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、豚パルボウイルス(PPV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、大腸菌(Escherichia coli)抗原、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、ブタ伝染性胃腸炎の原因である病原体、および豚サーコウイルスの第2の異なる株からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
豚サーコウイルスの第2の異なる株が2A型または2B型サーコウイルスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
2A型または2B型豚サーコウイルスタンパク質をコードする少なくとも1つの外因性核酸分子を含むベクターであって、豚サーコウイルスタンパク質がORF2タンパク質であり、前記タンパク質をコードする外因性核酸分子が配列番号5または6の1033〜1734番残基に示されるベクター。
【請求項25】
アライグマポックスウイルスベクターである、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
ブタに対して病原性である微生物由来の抗原をコードする1つまたは複数の外因性核酸分子をさらに含み、前記微生物が、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、豚パルボウイルス(PPV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、大腸菌(Escherichia coli)抗原、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、ブタ伝染性胃腸炎の原因である病原体、および豚サーコウイルスの第2の異なる株からなる群から選択される、請求項24または25に記載のベクター。
【請求項27】
豚哺乳動物が離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に罹患しているかまたはそれを発症するリスクがあるかを決定する方法であって、
(I)哺乳動物に由来する組織試料におけるPCV2核酸または前記核酸によりコードされるタンパク質の量を測定するステップであって、前記PCV2核酸またはタンパク質が、
a)配列番号1、2、5、もしくは6のいずれかに対応する核酸またはそれらに由来する核酸、
b)配列番号3または4のどちらかを含むタンパク質、
c)配列番号1、2、5、もしくは6のいずれかにハイブリダイズ可能な配列を含む核酸、または高いストリンジェンシー条件下でのそれらの相補体、または前記ハイブリダイズ可能な配列によりコードされる配列を含むタンパク質、
d)配列番号1、2、5、もしくは6のいずれかに対して少なくとも95%相同な核酸、またはNBLASTアルゴリズムを用いて決定されるそれらの相補体、またはそれによりコードされるタンパク質
であるステップと、
(II)PMWSに罹患しているまたはそれを発症するリスクにあることが疑われる哺乳動物由来の組織試料における前記核酸またはタンパク質の量を、正常な哺乳動物由来の組織試料内に存在する核酸もしくはタンパク質の量、または正常な組織試料についてあらかじめ決定された標準と比較するステップであって、PMWSに罹患しているまたは罹患の疑いがある豚哺乳動物由来の組織試料における前記核酸またはタンパク質の量が、正常な組織試料における量または正常な組織試料についてあらかじめ決定された標準と比較して上昇すると、その哺乳動物がPMWSに罹患しているかまたはそれを発症するリスクにあることが示されるステップと
を含む方法。
【請求項28】
組織試料が、浅鼠径リンパ節、気管気管支リンパ節、顎下腺リンパ節、肺、扁桃腺、脾臓、肝臓、腎臓、全血、および血液細胞からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。

【図1】FD07と称される2B型豚サーコウイルスの完全なゲノム配列(配列番号1)を示す図である。
【図2】FDJEと称される2B型豚サーコウイルスの完全なゲノム配列(配列番号2)を示す図である。
【図3】FD07と称されるPCV2BのORF2カプシドタンパク質のアミノ酸配列(配列番号3)を示す図である。
【図4】FDJEと称されるPCV2BのORF2カプシドタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)を示す図である。
【図5】FD07と称されるORF1およびORF2タンパク質をコードする核酸配列(配列番号5)を示す図である。
【図6】FDJEと称されるORF1およびORF2タンパク質をコードする核酸配列(配列番号6)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本方法および処置の方法論を説明する前に、この発明が特定の方法および記載される実験条件に限定されず、したがって方法および条件が様々となり得ることを理解されたい。また、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定するものではないことも理解されたい。
【0043】
この明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、内容からそうでないことが明らかに示されない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「その方法」という言及には、1つもしくは複数の方法、ならびに/または本明細書において記載され、かつ/もしくはこの開示などを読むことで当業者に明らかとなるタイプのステップが含まれる。
【0044】
したがって、本願において、従来の分子生物学、微生物学、および当技術分野の技術内にある組換えDNA技術を採用し得る。このような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Second Edition(1989)Cold Spring Hoarbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(本明細書において「Sambrookら、1989」);DNA Cloning:A Practical Approach、Volumes IおよびII(D.N.Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis
(M.J.Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編、(1985));Transcription And Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編、(1984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、(1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、(1986));B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0045】
本明細書において記載されるものと類似のまたは等しい任意の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料をこれから記載する。本明細書において述べる全ての刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0046】
定義
本明細書において用いられる用語は、当業者に認識され知られている意味を有するが、利便性および完全性のため、特定の用語およびそれらの意味を以下に説明する。
【0047】
「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を言う。アジュバントは、抗原を緩やかに放出する組織デポーとして、また、免疫応答を非特異的に増強するリンパ系活性化因子として役立ち得る(Hoodら、Immunology、Second Ed.、1984、Benjamin/Cummings:Menlo Park、California、p.384)。状況に応じて、アジュバントの不存在下で抗原のみを用いて一次チャレンジを行うと、液性または細胞性免疫応答を引き起こし損なう可能性がある。アジュバントには、限定はしないが、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、リゾレシチンなどの表面活性基質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット・ゲラン桿菌(bacille Calmette−Guerin))およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に使用可能なヒトアジュバントが含まれる。好ましくは、アジュバントは薬学的に許容できるものである。
【0048】
「抗原」は、抗原が本発明に従って提示される場合に、宿主の免疫系を刺激して細胞抗原特異的な免疫応答または液性抗体応答を生じさせ得る、1つまたは複数のエピトープを含有する分子を意味する。普通、エピトープは、約3〜15個、通常は約5〜15個のアミノ酸を含む。所与のタンパク質のエピトープは、当技術分野において周知のあらゆる数のエピトープマッピング技術を用いて同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、Vol.66(Glenn E.Morris編、1996)Humana Press、Totowa、N.J.を参照されたい。例えば、線状エピトープは、例えばタンパク質分子の部分に対応する多数のペプチドを固体担体上に同時に合成し、ペプチドを抗体と反応させる一方で、ペプチドを依然として担体上に付着したままとすることにより決定され得る。このような技術は当技術分野において知られており、例えば、全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,708,871号;Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998〜4002;Geysenら(1986)Molec.Immunol.23:709〜715において記載されている。同様に、立体構造エピトープは、例えばx線結晶学および2次元核磁気共鳴などによりアミノ酸の空間立体構造を決定することにより簡単に同定される。例えば、上記のエピトープマッピングのプロトコルを参照されたい。さらに、本発明の目的では、「抗原」は、そのタンパク質が免疫学的応答を引き起こす能力を維持している限り、天然の配列に対する欠失、付加、および置換などの修飾(通常、本来は保存性であるが、非保存性でもあり得る)を含むタンパク質を言う。これらの修飾は、部位特異的突然変異生成を介した、もしくは特定の合成手順を介した、もしくは遺伝子操作アプローチを介した、意図的なものであり得るか、または、抗原を産生する宿主の突然変異などを介した、偶発的なものであり得る。
【0049】
例えば「弱毒化ウイルス」などを説明するために本明細書において用いられる「弱毒化」という用語は、微生物、例えばインビトロまたはインビボで成長または複製する能力が限られているウイルスを言う。
【0050】
本明細書において用いられる「サーコウイルス」という用語は、別段の指示がない限り、サーコウイルス科に属するサーコウイルスの任意の株を言う。例えば、本発明において、サーコウイルスは病原性豚サーコウイルスである。特定の実施形態において、病原性豚サーコウイルスは、豚サーコウイルスの低毒性/低死亡率の2A型株または豚サーコウイルスの高毒性/高死亡率の2B型株である。
【0051】
「相補的」は、この定義の目的のために、A→T、U、およびC→G(ならびに逆もまた同様である)というルールに従って別の配列におけるヌクレオチドにハイブリダイズ(アニーリング)して、そのパートナーに「適合」する、1つの配列におけるヌクレオチドを同定するという、その認識されている意味で理解される。酵素転写は、測定可能で周知のエラー率を有し(用いられる特異的な酵素に応じる)、したがって、本明細書において記載される様式を用いた転写精度の限度内において、当業者には、酵素的な相補鎖合成の忠実性が完全ではないことおよび単位複製配列が全てのヌクレオチドにおいて標的RNAまたは鋳型RNAに完全に適合する必要はないことが理解されよう。高いストリンジェンシーの条件を用いた手順は以下の通りである。DNAを含有するフィルターのプレハイブリダイゼーションを、65℃で8時間から一晩、6×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、1mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のFicoll、0.02%のBSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAから構成される緩衝液において実施する。フィルターを65℃で48時間、100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび5〜20×10cpmの32P標識プローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合物においてハイブリダイズする。フィルターの洗浄を、37℃で1時間、2×SSC、0.01%のPVP、0.01%のFicoll、および0.01%のBSAを含有する溶液において実施する。この後、0.1×SSCにおいて50℃で45分間洗浄し、その後、オートラジオグラフィーを行う。用い得る高いストリンジェンシーの他の条件は、当技術分野において周知である(例えば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、2d Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New Yorkを参照されたい、また、Ausubelら編、in the Current Protocols in Molecular Biology series of laboratory technique manuals、1987〜1997 Current Protocols、(c)1994〜1997、John Wiley and Sons,Inc.を参照されたい)。
【0052】
この開示において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(contains)」、「含有している(containing)」などの用語は、米国特許法においてそれらが有する意味を有し得ること、例えば、それらが「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含んでいる(including)」などを意味し得ることに注意されたい。「基本的に〜からなっている(consisting essentially of)」および「基本的に〜からなる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法においてそれらが有する意味を有し、例えば、それらは、本発明の新規なまたは基本的な特徴を損なわないさらなる構成要素またはステップの包含を可能にし、すなわち、それらは、本発明の新規なまたは基本的な特徴を損なうさらなる列挙されていない構成要素またはステップを排除し、本明細書において引用されるかまたは参照により本明細書に組み込まれる当技術分野における文献などの先行技術の構成要素またはステップを排除し、とりわけそれは、この本明細書の目的が、特許可能な、例えば、本明細書において引用されるかまたは参照により本明細書に組み込まれる文献などの先行技術に対して新規な、非自明な、進歩性のある実施形態を規定することであるためである。さらに、「〜からなる(consist of)」および「〜からなっている(consisting of)」という用語は、米国特許法においてそれらが有する意味を有し、すなわち、これらの用語はクローズドエンドのものである。
【0053】
「〜によりコードされる」または「コードする」は、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を言い、ここで、ポリペプチド配列は、少なくとも3から5個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも8から10個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも15から20個のアミノ酸からなるアミノ酸配列、この核酸配列によりコードされるポリペプチドを含有する。また、この配列によりコードされるポリペプチドで免疫学的に同定可能なポリペプチド配列も包含される。したがって、抗原の「ポリペプチド」、「タンパク質」、または「アミノ酸」の配列は、抗原のポリペプチドまたはアミノ酸配列に対して、少なくとも70%の類似性、好ましくは少なくとも80%の類似性、さらに好ましくは約90〜95%の類似性、最も好ましくは約99%の類似性を有し得る。
【0054】
本発明の内容において用いられる「遺伝子」は、遺伝的機能が関連する、核酸分子(染色体、プラスミドなど)におけるヌクレオチドの配列である。遺伝子は遺伝性の単位であり、例えば、生物のゲノム内の特異的な物理的位置(「遺伝子座」または「遺伝子座位」)を占めるポリヌクレオチド配列(例えば、哺乳動物ではDNA配列)を含む、生物の遺伝性の単位である。遺伝子は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えばtRNA)などの発現産物をコードし得る。あるいは、遺伝子は、タンパク質および/または核酸の結合(例えばファージ付着部位)などの特定の事象/機能についてゲノム位置を規定し得、ここで、遺伝子は発現産物をコードしない。典型的には、遺伝子は、ポリペプチドをコードする配列などのコード配列、およびプロモーター配列、ポリアデニル化配列、転写調節配列(例えば、エンハンサー配列)などの非コード配列を含む。真核生物の多くの遺伝子は、「イントロン」(非コード配列)に中断されている「エキソン」(コード配列)を有する。特定のケースにおいて、遺伝子は、1つまたは複数の別の遺伝子(例えば、オーバーラップする遺伝子)と配列を共有し得る。
【0055】
したがって、「相同性」または「同一性」または「類似性」は、2つのペプチドまたは2つの核酸分子の間の配列類似性を言う。相同性は、比較の目的のためにアラインされ得るそれぞれの配列における位置を比較することにより決定することができる。比較された配列における位置が同一の塩基またはアミノ酸で占められている場合、その分子はその位置で同一である。核酸配列間の相同性または類似性または同一性の程度は、核酸配列が共有している位置での同一のまたは適合しているヌクレオチドの数に応じる。アミノ酸配列の同一性の程度は、アミノ酸配列が共有している位置での同一のアミノ酸の数に応じる。アミノ酸配列の相同性または類似性の程度は、アミノ酸配列が共有している位置でのアミノ酸の数、すなわち、構造的に関連しているアミノ酸の数に応じる。「関連していない」または「非相同性」の配列は、本発明の配列の1つと40%未満の同一性を有するが、好ましくは25%未満の同一性を有する。したがって、豚サーコウイルスまたはその断片の「相同体」は、豚サーコウイルスまたはその断片と少なくとも約75%の相同性(好ましくは約80%の相同性、より好ましくは約90〜95%の相同性、および最も好ましくは約99%の相同性)を有する。
【0056】
ワクチンまたは免疫原性組成物に対する「免疫応答」は、対象における、目的の抗原またはワクチン組成物において存在する分子に対する液性および/または細胞介在性免疫応答の発生である。本発明の目的では、「液性免疫応答」は、抗体介在性の免疫応答であり、抗原/本発明のワクチンに対する親和性を有する抗体の生成を伴うが、「細胞介在性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球細胞が介在するものである。「細胞介在性免疫応答」は、主要組織適合性複合体(MHC)のクラスIまたはクラスII分子に関連する抗原性エピトープの提示により引き起こされる。これは、抗原特異的なCD4+Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)を活性化させる。CTLは、主要組織適合性複合体(MHC)によりコードされるタンパク質に関連して提示され細胞の表面上に発現するペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊の誘発および促進、またはこのような微生物に感染した細胞の溶解に役立つ。細胞性免疫の別の態様は、ヘルパーT細胞による抗原特異的な応答を伴う。ヘルパーT細胞は、機能の刺激に役立つように作用し、MHC分子に関連してペプチド抗原をその表面上に提示する細胞に対して、非特異的なエフェクター細胞の活性を焦点化する。「細胞介在性免疫応答」はまた、サイトカインと、ケモカインと、活性化T細胞ならびに/またはCD4+およびCD8+T細胞などに由来するものを含む他の白血球細胞によって産生される他のこのような分子との産生を言う。特定の抗原または組成物が細胞介在性の免疫学的応答を刺激する能力は、感作された対象における抗原に特異的なTリンパ球についてアッセイすることにより、または抗原での再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン産生の測定により、リンパ増殖(リンパ球の活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイなどの、多くのアッセイによって決定することができる。このようなアッセイは当技術分野において周知である。例えば、Ericksonら、J.Immunol.(1993)151:4189〜4199;Doeら、Eur.J.Immunol.(1994)24:2369〜2376を参照されたい。
【0057】
「免疫原性」という用語は、抗原またはワクチンが、液性もしくは細胞介在性の一方、またはその両方の免疫応答を引き起こす能力を言う。本明細書において用いられる「免疫原性上有効な量」は、当業者に知られている標準的なアッセイによって測定される、細胞性(T細胞)もしくは液性(B細胞もしくは抗体)応答の一方、またはその両方の免疫応答を引き起こすために十分な抗原またはワクチンの量を言う。免疫原としての抗原の有効性は、増殖アッセイ、T細胞がその特異的標的細胞を溶解する能力を測定するためのクロム放出アッセイなどの細胞溶解アッセイ、または血清における抗原に特異的な循環抗体のレベルを測定することによるB細胞活性のレベルの測定のいずれかによって測定することができる。さらに、免疫応答の防御のレベルは、免疫化された宿主を、注射されている抗原でチャレンジすることにより測定することができる。例えば、それに対する免疫応答が望まれる抗原がウイルスまたは腫瘍細胞である場合、「免疫原性上有効な量」の抗原により誘発される防御のレベルは、動物をウイルスまたは腫瘍細胞でチャレンジした後の生存率または死亡率を検出することにより測定される。一実施形態において、「免疫原性上有効な量」のワクチンまたは免疫原性組成物は、FAID50法(Kingら、Journal of Comparative Medicine and Vet.Science、29:85〜89(1965))によって測定され、かつ米国特許第4,824,785号における、約1から7Log10ウイルス粒子/mlにわたるウイルス粒子の力価を言う。一実施形態において、「免疫原性上有効な量」のワクチンまたは免疫原性組成物は、FAID50法(Kingら、Journal of Comparative Medicine and Vet.Science、29:85〜89(1965))によって測定され、かつ米国特許第4,824,785号における、約2から5Log10ウイルス粒子/mlにわたるウイルス粒子の力価を言う。一実施形態において、「免疫原性上有効な量」の感染性DNAワクチンまたは免疫原性組成物は、約50から5000μgにわたり得る。一実施形態において、「免疫原性上有効な量」の感染性DNAワクチンまたは免疫原性組成物は、約50から1000μgにわたり得る。特定の実施形態において、「約」という用語は、20%以内、好ましくは10%以内、さらに好ましくは5%以内を意味する。
【0058】
「免疫原性組成物」という用語は、抗原、例えば微生物を含有する任意の医薬組成物に関し、この組成物は、哺乳動物における免疫応答を引き起こすために用いることができる。免疫応答は、T細胞応答、B細胞応答、またはT細胞応答およびB細胞応答の両方を含み得る。組成物は、細胞表面でMHC分子に関連して抗原を提示することにより哺乳動物を感作するために役立ち得る。さらに、抗原特異的Tリンパ球または抗体を生じさせて、免疫化された宿主をさらに防御することを可能にすることができる。「免疫原性組成物」は、細胞介在性(T細胞)免疫応答もしくは抗体介在性(B細胞)免疫応答の一方またはその両方を誘発する微生物全体またはこれに由来する免疫原性部分を含む、生の、弱毒化、または死滅/不活化ワクチンを含有し得、かつ、微生物による感染に関連する1つまたは複数の症状から動物を防御し得るか、または微生物での感染による死亡から動物を防御し得る。
【0059】
「免疫原性ORF」または「免疫原性ORF」は、免疫応答を引き起こすオープンリーディングフレームを言い、例えば、ORF2は免疫原性カプシドタンパク質をコードする。
【0060】
本発明のワクチンおよび免疫原性組成物はさらに、免疫系を混乱させるかまたは改変して液性および/または細胞介在性免疫の上方調節または下方調節のどちらかが観察されるようにする作用物質である、1つまたは複数のさらなる「免疫調節物質」を含み得る。特定の一実施形態において、免疫系の液性および/または細胞介在性の反応の上方調節が好ましい。特定の免疫調節物質の例には、例えば、とりわけ「薬学的に許容できるアジュバント」またはサイトカインが含まれる。本発明のワクチンにおいて用いることができる「薬学的に許容できるアジュバント」の非限定的な例には、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.、Hamilton、Mont.)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲルなどの無機ゲル、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、例えばフロイント完全アジュバントおよび不完全アジュバント、Blockコポリマー(CytRx、Atlanta Ga.)、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge Mass.)、SAF−M(Chiron、Emeryville Calif.)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil A、または他のサポニン画分、モノホスホリル脂質A、およびAvridine脂質−アミンアジュバントなどが含まれる。本発明のワクチンにおいて有用な水中油型エマルジョンの非限定的な例には、修飾SEAM62およびSEAM1/2製剤が含まれる。修飾SEAM62は、5%(v/v)スクアレン(Sigma)、1%(v/v)のSPAN(登録商標)85洗浄剤(ICI Surfactants)、0.7%(v/v)のTWEEN(登録商標)80洗浄剤(ICI Surfactants)、2.5%(v/v)のエタノール、200μg/mlのQuil A、100μg/mlのコレステロール、および0.5%(v/v)のレシチンを含有する水中油型エマルジョンである。修飾SEAM1/2は、5%(v/v)スクアレン、1%(v/v)のSPAN(登録商標)85洗浄剤、0.7%(v/v)のTween80洗浄剤、2.5%(v/v)のエタノール、100μg/mlのQuil A、および50μg/mlのコレステロールを含む水中油型エマルジョンである。ワクチンに含まれ得る他の「免疫調節物質」には、例えば、1つまたは複数のインターロイキン、インターフェロン、または他の既知のサイトカインが含まれる。一実施形態において、アジュバントは、それぞれ米国特許第6,165,995号および米国特許第6,610,310号において記載されているものなどの、シクロデキストリン誘導体またはポリアニオン系ポリマーであり得る。
【0061】
「感染性」という用語は、そのウイルスが何らかの疾患の原因であるか否かに関わらず、ウイルスがブタにおいて複製するかまたは複製可能であることを意味する。本発明において、「感染性」DNAの例は、配列番号1または2のPCV2のDNAとして示される。
【0062】
「単離された」または「精製された」という用語は、材料がその元の環境(例えば、それが自然に生じる場合には、天然の環境)から除去されることを意味する。例えば、「単離された」または「精製された」ペプチドまたはタンパク質は、タンパク質が由来する元である細胞もしくは組織供給源からの細胞材料もしくは他の汚染タンパク質を実質的に有さないか、または化学的に合成されている場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に有さない。「細胞材料を実質的に有さない」という表現は、ポリペプチド/タンパク質が、それが単離されるかまたは組換えにより産生される元である細胞の細胞成分から分離されている、ポリペプチド/タンパク質の調製物を含む。したがって、細胞材料を実質的に有さないポリペプチド/タンパク質は、約30%、20%、10%、5%、2.5%、または1%(乾燥重量で)未満の汚染タンパク質を有するポリペプチド/タンパク質の調製物を含む。ポリペプチド/タンパク質が組換えにより生産される場合、それはまた好ましくは培地を実質的に有さず、すなわち培地がタンパク質調製物の容量の約20%、10%、または5%未満に相当する。ポリペプチド/タンパク質が化学合成により生産される場合、それは好ましくは化学的前駆体または他の化学物質を実質的に有さず、すなわち、タンパク質の合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離される。したがって、ポリペプチド/タンパク質のこのような調製物は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量で)未満の、目的のポリペプチド/タンパク質断片以外の化学的前駆体または化合物を有する。「単離された」または「精製された」核酸分子は、その核酸分子の天然供給源において存在する他の核酸分子から分離されたものである。さらに、cDNA分子またはRNA分子などの「単離された」核酸分子は、組換え技術によって生産される場合には他の細胞物質もしくは培地を実質的に有さないか、または化学的に合成される場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に有さない可能性がある。
【0063】
「死滅」または「不活化」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられ、ワクチン組成物の調製に用いられる1つまたは複数のウイルスの感染性を著しくまたは完全に低減させることを言う。ウイルスの死滅または不活化は、当業者に知られている任意の手順に従って、例えば分子生物学法(PCR)、ウイルス力価の滴定方法、蛍光、免疫学的方法(ELISA、RIAなど)、1つまたは複数のウイルスポリペプチドの検出を可能にする免疫酵素法(ウェスタンなど)によって評価することができる。ホルマリン、アジド、凍結融解、超音波処理、熱処理、急激な圧力低下、洗浄剤(とりわけ、非イオン性洗浄剤)、リゾチーム、フェノール、タンパク質溶解酵素、およびベータプロピオラクトンを含む多くの異なる不活化作用物質および手段が採用されている。
【0064】
「リンパ組織」という用語は、リンパ球ならびにマクロファージおよび細網細胞などのアクセサリー細胞に富み、結合組織の網によって支持されている任意の組織を言う。リンパ組織には、骨髄、胸腺、リンパ節、脾臓、扁桃腺、アデノイド、パイアー斑、および粘膜表面上へのリンパ球の凝集体が含まれる。「非リンパ」組織は、本明細書において定義されるリンパ球およびアクセサリー細胞に富んでいない任意の他の組織を言う。
【0065】
本明細書において用いる場合、「核酸」または「核酸分子」という語句は、DNA、RNA、ならびにDNAおよびRNAまたはそれらから形成されるキメラの任意の既知の塩基類似体を言う。したがって、「核酸」または「核酸分子」は、一本鎖形態または二本鎖ヘリックスのいずれかの、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、もしくはシチジン、「RNA分子」)、またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、もしくはデオキシシチジン、「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態を言う。二本鎖DNA−DNA、DNA−RNA、およびRNA−RNAヘリックスが可能である。核酸分子という用語、およびとりわけDNAまたはRNA分子は、分子の一次構造および二次構造のみを言い、任意の特定の三次形態には限定されない。したがって、この用語は、とりわけ線状または環状DNA分子(例えば、制限断片)で存在する二本鎖DNA、プラスミド、および染色体を含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を議論するに当たり、配列は、DNAの転写されていない鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に従って5Nから3Nの方向の配列のみをもたらす通常の慣例に従って、本明細書において記載され得る。「組換えDNA分子」は、分子生物学的な操作を受けているDNA分子である。
【0066】
「ヌクレオチド」は、含窒素塩基(アデニン、グアニン、シトシン、およびチミン)、リン酸塩分子、ならびに糖分子(DNAにおけるデオキシリボース、RNAにおけるリボース)からなる、DNAまたはRNAのサブユニットを言う。
【0067】
本明細書において用いる「オープンリーディングフレーム」または「ORF」または「ORF」という用語は、停止コドンの介在を伴わない、特定のサーコウイルスタンパク質または抗原をコードするために必要な最小のヌクレオチド配列を言う。
【0068】
「非経口」という用語は、身体内に摂取されるか、または消化管を介する以外の様式で、例えば静脈内もしくは筋肉内注射により投与される物質を言う。
【0069】
「病原性」という用語は、細菌またはウイルスなどの任意の感染作用物質が疾患を生じさせる能力を言う。本発明において、「病原性」という用語は、豚サーコウイルス、とりわけ2型豚サーコウイルスが、「離乳後多臓器消耗症候群」または「PMWS」と呼ばれるブタにおける疾患を生じさせる能力を言う。この疾患は、離乳した豚における消耗性のまたは弱い動作、および、リンパの枯渇およびリンパ組織における濾胞の組織球性の置換を伴う中程度から重度のリンパの病変によって特徴付けされることが多い。PMWSに罹患しているブタはまた、呼吸器疾患、例えば間質性肺炎、リンパ組織球性の肝炎、およびリンパ組織球性の間質性腎炎を有することが知られている。「病原性」2型豚サーコウイルスに関連する他の状態には、散発性の生殖障害、腸炎、および豚皮膚炎腎症症候群(PDNS)が含まれる。「非病原性」微生物とは、豚サーコウイルスの「病原性」株について上記で述べた特徴を有さない微生物を言う。「非病原性」豚サーコウイルスは通常、1型豚サーコウイルスと呼ばれる。豚サーコウイルスの「病原性」株は通常、2型豚サーコウイルスと呼ばれる。「非病原性」豚サーコウイルスは通常、1型豚サーコウイルスと呼ばれる。
【0070】
したがって、「同一性パーセント」または「配列同一性パーセント」という用語は、2つのアミノ酸配列間または2つのヌクレオチド間の配列同一性を言う。FASTA、BLAST、またはENTREZを含む様々なアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムを用いることができる。FASTAおよびBLASTは、GCG配列分析パッケージ(University of Wisconsin、Madison、Wis.)の一部として利用可能であり、例えばデフォルトの設定と共に用いることができる。ENTREZは、メリーランド州のベセスダの国立衛生研究所の国立医学図書館の国立生物工学情報センターを介して入手可能である。一実施形態において、2つの配列の同一性パーセントは、ギャップウェイトが1の、例えば、それぞれのアミノ酸のギャップが、それが2つの配列間での単一のアミノ酸またはヌクレオチドのミスマッチであるかのように加重される、GCGプログラムによって決定することができる。
【0071】
「薬学的に許容できる担体」という用語は、連邦政府の管理機関、州政府、もしくは他の管理機関により認可されている担体、または、ヒトおよびヒトではない哺乳動物を含む動物における使用について米国薬局方もしくは他の一般的に認められている薬局方において列挙されている担体を意味する。「担体」という用語は、医薬組成物が共に投与される希釈剤、アジュバント、添加剤、または賦形剤を言う。このような医薬担体は、石油、動物、植物、または合成由来のものを含む水および油などの無菌液体、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合に好ましい担体である。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、液体担体として、とりわけ注射可能な溶液に採用することができる。適切な医薬添加剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出製剤などの形態を取り得る。組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドなどの担体と共に座剤として製剤することができる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含み得る。適切な医薬担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において記載されている。製剤は、投与様式に適合していなくてはならない。
【0072】
「ポリヌクレオチド」は、生物学的に活性な(例えば免疫原性の)タンパク質またはポリペプチドを典型的にコードする核酸ポリマーである。ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの性質に応じて、例えばポリヌクレオチドが抗原をコードする場合、ポリヌクレオチドはわずか10個のヌクレオチドを含み得る。さらに、「ポリヌクレオチド」は、二本鎖および一本鎖の配列の両方を含み得、限定はしないが、ウイルス、原核生物、または真核生物のmRNA由来のcDNA、ウイルス(例えば、RNAおよびDNAウイルスならびにレトロウイルス)または原核生物のDNA由来のゲノムRNAおよびDNA配列、またさらに合成DNA配列を言う。この用語はまた、DNAおよびRNAの任意の既知の塩基類似体を含む配列も意味する。この用語はさらに、好ましくは核酸分子が例えば抗原タンパク質をコードするようにする、天然の配列に対する欠失、付加、および置換などの修飾(例えば、メチル化およびキャッピング)を含む。これらの修飾は、部位特異的な突然変異生成を介した、もしくは特定の合成手順を介した、もしくは遺伝子操作アプローチを介した、意図的なものであり得るか、または、抗原を産生する宿主の突然変異などを介した、偶発的なものであり得る。「オリゴヌクレオチド」または「オリゴ」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。
【0073】
「豚の(porcine)」および「ブタの(swine)」という用語は、ほぼ同じ意味で用いられ、例えばブタなどの、イノシシ科のメンバーである任意の動物を言う。
【0074】
「防御する」という用語は、特定の病原体、例えばサーコウイルスに対する免疫応答を誘発することにより、感染または疾患から、例えば哺乳動物、とりわけブタを保護することを言う。このような防御は通常、本明細書において記載されるワクチン組成物を用いて哺乳動物を処置することで達成される。
【0075】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを言い、最短の産物に限定されるものではない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体などは、この定義に含まれる。全長タンパク質およびその断片の両方が、この定義に包含される。この用語はまた、好ましくはタンパク質が、そのタンパク質が投与される動物内での免疫学的応答を引き起こす能力を維持するようになる、天然の配列に対する欠失、付加、および置換などの修飾(通常、本来は保存性であるが、非保存性でもあり得る)も含む。また、発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化なども含まれる。
【0076】
本明細書において用いる場合、「配列相同性」という用語は、その全ての文法形式において、異なる種由来の相同なタンパク質を含む、共通の進化上の起源を有するタンパク質間の関係を言う(Reeckら、1987、Cell 50:667)。
【0077】
2つのDNA配列は、少なくとも約75%(好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約90または95%、最も好ましくは約99%)のヌクレオチドが、規定された長さのDNA配列にわたり適合する場合、「実質的に相同」であるかまたは「実質的に類似」している。実質的に相同な配列は、配列データバンクにおいて入手可能な標準的なソフトウェアを用いて配列を比較することにより、または例えばその特定の系について規定されているストリンジェントな条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において、同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件の規定は、当技術分野の技術範囲内である。例えば、上記のManiatisら;上記のDNA Cloning、Vols.I & II;上記のNucleic Acid Hybridizationを参照されたい。
【0078】
同様に、2つのアミノ酸配列は、70%を超えるアミノ酸が同一であるかまたは機能的に同一である場合、「実質的に相同」であるかまたは「実質的に類似」している。好ましくは、類似または相同な配列は、例えばGCG(Genetics Computer Group、Program Manual for the GCG Package、Version 7、Madison、Wisconsin)パイルアッププログラムを使用したアラインメントによって同定される。
【0079】
本明細書において用いる場合、「処置」(その変形、例えば「処置する」または「処置される」を含む)は、(i)従来のワクチンにおけるような、感染または再感染の予防、(ii)症状の重症度の低減または症状の除去、および(iii)問題になっている病原体または病気の実質的なまたは完全な除去の1つまたは複数のいずれかを言う。したがって、処置は、予防的に(感染の前に)または治療的に(感染の後に)行われる。本発明において、予防的な処置が好ましい様式である。本発明の特定の実施形態に従うと、予防的および/または治療的に免疫付与することを含む、ウイルス感染に対して宿主動物を処置する組成物および方法が提供される。本発明の方法は、哺乳動物、好ましくはブタに予防的および/または治療的免疫を付与するために有用である。本発明の方法はまた、生物医学的研究の適用のために哺乳動物に対して実施することができる。
【0080】
ほぼ同じ意味で用いられる「ワクチン」または「ワクチン組成物」という用語は、動物において免疫応答を誘発する少なくとも1つの免疫原性組成物を含む医薬組成物を言う。ワクチンまたはワクチン組成物は、感染による疾患または考えられる死亡から動物を防御し得、活性成分の免疫学的活性を増強する1つまたは複数のさらなる成分を含み得るか、または含まない可能性がある。ワクチンまたはワクチン組成物はさらに、医薬組成物に典型的なさらなる成分を含み得る。ワクチンまたはワクチン組成物はさらに、例えばアジュバントまたは免疫調節物質を含む、ワクチンまたはワクチン組成物に典型的なさらなる成分を含み得る。ワクチンの免疫原性上活性な成分は、完全な生きた生物をその元の形態で含み得るか、修飾された生ワクチンにおいては弱毒化生物として、または死滅もしくは不活化ワクチンにおいては適切な方法によって不活化された生物として、またはウイルスの1つもしくは複数の免疫原性成分を含むサブユニットワクチンとして、または当業者に知られている方法によって調製された、遺伝子操作された、突然変異した、もしくはクローニングされたワクチンとして含み得る。ワクチンは、上記の要素の1つを、または2つ以上を同時に含み得る。本発明において、ワクチン組成物は、限定はしないが、キメラサーコウイルス全体の生、弱毒化、もしくは死滅/不活化形態、キメラ豚サーコウイルスをコードする感染性核酸、またはプラスミド、ベクター、もしくは豚内にDNAを直接注入するための他の担体を含む他の感染性DNAワクチンを含む。
【0081】
概要
ブタ産業に対する潜在的な影響のため、豚サーコウイルス2型(PCV2)の病原性形態に対するワクチンの開発は、最も重要なものである。非病原性PCV1は、PCV2の感染に対して使用が制限されると考えられている。
【0082】
さらに、平均死亡率よりも高いことに一部には特徴を有する、PCV2の新たな毒性株が生じている。これらの高毒性/高死亡率のPCV2の病原性株はPCV2Bと称され、一方で、低毒性、低死亡率の病原性株はPCV2Aと称される。これらの2つの株について最近提案された別の用語は、PCV2A株を「遺伝子型II」または「RFLP422」と言い、一方でPCV2B株を「遺伝子型I」または「RFLP321」と言う。これまでに記載されているワクチン組成物のいくつかは、PCV2Aの低死亡率、低毒性の病原性株に対して有効であることが証明され得るが、これらのいずれも、平均死亡率よりも高いことに一部には特徴を有する、高毒性の病原性PCV2B株に対して有効であることは示されていない。
【0083】
豚サーコウイルスのこれらの高毒性の病原性PCV2B株に関連する、感染の重症度、および平均死亡率よりも高いことを考慮すると、これらの株の1つまたは複数を、離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対してブタを免疫化および防御するための免疫原性組成物またはワクチン組成物を調製するために同定すること、単離すること、および用いることが有利である。
【0084】
PCV2Bのこのような株の同定および単離は、本発明の目的である。
【0085】
一実施形態において、新たに同定および単離された豚サーコウイルスは、配列番号1または2のどちらかに示される核酸配列を有する2B型株である。一実施形態において、単離された豚サーコウイルスは、配列番号1または2の配列に対して少なくとも約95%の配列相同性を有する核酸配列を有する2B型株である。一実施形態において、新たに同定および単離された2B型豚サーコウイルスのORF2タンパク質は、配列番号3または4のどちらかに対して少なくとも92%の配列同一性を有する。
【0086】
本発明の一実施形態において、本方法は、本発明の核酸によってコードされる豚サーコウイルスを含む免疫原性上有効な量の免疫原性組成物を投与することを含む、2Aまたは2B型病原性豚サーコウイルス(PCV2)に対してブタを免疫化することを提供する。
【0087】
とりわけ、本発明の方法は、
a)弱毒化形態もしくは不活化/死滅形態のいずれかの、免疫原性上有効な量の、本明細書において記載される2型豚サーコウイルスの少なくとも1つ、
b)a)の2型豚サーコウイルスの少なくとも1つをコードする核酸分子、
c)免疫原性上有効な量の、a)の2型豚サーコウイルスの少なくとも1つから単離される少なくとも1つのタンパク質、または
d)免疫原性上有効な量の、c)の少なくとも1つのタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸分子
の1つまたは複数を含む、ワクチンまたは免疫原性組成物の使用を提供する。
【0088】
一実施形態において、ワクチンまたは免疫原性組成物は、PCV2B DNAワクチン(例えば、PCV2のORF2を発現するプラスミドベクターを含み得る。一実施形態において、ワクチンまたは免疫原性組成物は、PCV2BのORF2を発現する不活化ウイルスベクター(例えば、バキュロウイルス、アデノウイルス、もしくはアライグマポックスウイルスなどのポックスウイルス、または大腸菌(E.coli)などの細菌)を含み得る。
【0089】
本明細書において記載されるワクチンまたは免疫原性組成物は、離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に関連する症状の1つまたは複数を予防するために有効であることも意図されている。これらの症状には、例えば、呼吸器疾患、1つもしくは複数の組織もしくは器官における顕微鏡的病変、組織球性の炎症、またはリンパの枯渇の、1つまたは複数が含まれ得る。
【0090】
さらに、本明細書において記載されるワクチンまたは免疫原性組成物は、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、豚パルボウイルス(PPV)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、大腸菌(Escherichia coli)抗原、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、およびブタ伝染性胃腸炎の原因である病原体を含む、1つまたは複数の病原性豚ウイルスまたは細菌に対してブタを防御する、第2または第3のワクチンまたは免疫原性組成物とともに用いることができる。例えば、一実施形態において、PCVワクチンまたは免疫原性組成物は、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)ワクチンまたは免疫原性組成物と組み合わせることができる。一実施形態において、PCVワクチンまたは免疫原性組成物は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンまたは免疫原性組成物と組み合わせることができる。一実施形態において、PCVワクチンまたは免疫原性組成物は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンまたは免疫原性組成物および豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)ワクチンまたは免疫原性組成物と組み合わせることができる。
【0091】
PCV1−2ワクチンおよび免疫原性組成物の使用
本発明は、2つの新たな病原性PCV2B豚サーコウイルスの同定および単離を提供する。豚サーコウイルスの病原性株により生じるPMWSを予防するため、またはブタにおけるこの疾患に関連する少なくとも1つの症状を改善するために、ワクチンまたは免疫原性組成物をブタに投与する必要性があることを考慮すると、これらの2つの新たな株の少なくとも1つ、またはこれらの2つの新たな株をコードする核酸の少なくとも1つ、またはこれらの株の少なくとも1つから得られるタンパク質の少なくとも1つを、この疾患に対してブタを免疫化するためにブタに送達するための、ワクチンまたは免疫原性組成物に製剤し、それによりウイルス感染および離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対するブタの防御を提供することが想定される。
【0092】
本研究において免疫原性組成物またはワクチン組成物として使用するために提案された、新たに同定および単離されたPCV2B豚サーコウイルスの少なくとも1つを含むワクチンまたは免疫原性組成物は、本明細書において記載される方法を用いて調製される。
【0093】
本発明の核酸
本明細書において記載される、全長の2B型病原性豚サーコウイルスをコードする精製および単離された核酸分子は、配列番号1および2に示される。当技術分野において周知の従来の方法を用いて、例えば、当技術分野において認められている標準的なまたは高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション技術によって、相補鎖または高い相同性を有するヌクレオチド配列を作製することができる。PCV2のDNAの免疫原性カプシド遺伝子のDNA配列を含む、精製および単離された核酸分子は、配列番号5および6の1033〜1734番残基に示される。
【0094】
したがって、本明細書において記載されるPCV2B核酸分子を含有する任意の適切な動物細胞は、生の感染性豚サーコウイルスを産生することができる。生の感染性ウイルスは、インビトロまたはインビボを介して例えばPK−15細胞をトランスフェクトすることにより、DNAクローンに由来する。上記のように、PCV2のDNAの1つの例は、配列番号1および2に示されるヌクレオチド配列である。本発明はさらに、ウイルスが相補鎖、または、ヌクレオチド配列に対して高い相同性、少なくとも80%、より好ましくは95〜99%の相同性を有するヌクレオチド配列に由来し得ることを想定したものである。
【0095】
本明細書において記載される核酸分子を含有する、生物学的に機能的なプラスミド、ウイルスベクターなど、DNAクローンを含むベクターによりトランスフェクトされる適切な宿主細胞、および免疫原性ポリペプチド発現産物もまた、本発明の範囲内に含まれる。一実施形態において、免疫原性タンパク質は、本明細書において記載される豚サーコウイルスの病原性2B型株由来のORF2によりコードされるカプシドタンパク質である。豚サーコウイルスにおけるこのカプシドタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号3および4に示される。その生物学的に活性な変異体もさらに、本発明に包含される。当業者は、いかにして1つまたは複数のアミノ酸をポリペプチド配列から修飾、置換、欠失などするか、および、不必要な試みを行うことなく、親配列と同一のまたは実質的に同一の活性を保持する生物学的に活性な変異体を産生するかを知っているであろう。
【0096】
この発明の免疫原性ポリペプチド産物を産生するために、プロセスは、適切な栄養条件下で、ポリペプチド産物の発現を可能にする様式で、本明細書において記載される核酸分子でトランスフェクトされた原核または真核宿主細胞を成長させるステップ、および当技術分野において知られている標準的な方法によって所望のポリペプチド産物を単離するステップを含み得る。免疫原性タンパク質を、例えば生化学的合成などの他の技術によって調製し得ることが意図されている。
【0097】
ワクチンおよび免疫原性組成物
本明細書において記載される病原性PCV2Bウイルスを含むワクチンまたは免疫原性組成物の調製、ならびに豚サーコウイルスの病原性株およびPMWSでの感染に対してブタを防御するためにそれらを用いる方法もまた、本発明の範囲内に含まれる。PCV2Bの新たな単離体を、死滅/不活化調製物として用い得ること、またはウイルス感染およびPMWSに対するブタの免疫化に用いるために弱毒化もしくは遺伝的に修飾し得ることが想定される。したがって、本発明は、本明細書において記載される2つの新たな病原性豚サーコウイルスの少なくとも1つ、またはこれらの2つのサーコウイルスの少なくとも1つをコードする少なくとも1つの核酸分子、またはこれらの2つのサーコウイルスの少なくとも1つから得られる少なくとも1つのタンパク質を含む、免疫原性上有効な量のワクチンまたは免疫原性組成物を用いて、病原性サーコウイルスでの感染またはPMWSに対してブタを免疫化する方法を提案する。本方法は、免疫原性上有効な量の本発明に従ったワクチン、例えば免疫原性量のPCV2B DNA、クローニングされたウイルス、PCV2BのDNAを含有するプラスミドまたはウイルスベクター、ポリペプチド発現産物などを含むワクチンなどをブタに投与することにより、ウイルス感染またはPMWSに対する防御が必要なブタを防御することができる。本明細書において記載されるワクチンは、例えばPRRSV、PPV、ならびに、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ブタ連鎖球菌(Streptococcum suis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ブタコレラ菌(Salmonella choleraesuis)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ細菌、ブタインフルエンザウイルス、豚パルボウイルス、大腸菌(Escherichia coli)、豚呼吸器コロナウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病の原因である病原体、およびブタ伝染性胃腸炎抗原の原因である病原体から選択される他の感染性ブタ作用物質を含む、他の豚病原菌に対する、第2または第3のワクチンまたは免疫原性組成物とともに投与することができる。特定の組み合わせには、PRRSVワクチンもしくは免疫原性組成物と組み合わせたPCVワクチンもしくは免疫原性組成物、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンもしくは免疫原性組成物と組み合わせたPCVワクチンもしくは免疫原性組成物、または前述のワクチンもしくは免疫原性組成物の両方と組み合わせたPSVワクチンもしくは免疫原性組成物が含まれ得る。免疫刺激物質は、他のウイルスまたは細菌の感染に対する広範な防御範囲をもたらすために、同時にブタに与えることができる。
【0098】
本発明の方法において用いられるワクチンまたは免疫原性組成物は、調製の任意の特定のタイプまたは方法に制限されるものではない。ワクチンまたは免疫原性組成物には、例えば、豚サーコウイルスタンパク質の1つまたは複数をコードする核酸、感染性DNAワクチン(すなわち、プラスミド、ベクター、もしくはブタ内にDNAを直接注入するための他の従来の担体の使用)、生ワクチン、修飾生ワクチン、不活化ワクチン、サブユニットワクチン、弱毒化ワクチン、遺伝子操作したワクチンなどが含まれ得る。特定の実施形態において、ワクチンは、例えばpSKベクター、非毒性の生ウイルス、不活化ウイルスなどの適切なプラスミドもしくはベクター内でクローニングされたPCVのDNAゲノムである、感染性PCV2BのDNAを含み得るか、限定はしないが、バキュロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、もしくはアライグマポックスウイルスなどのポックスウイルスベクターなどのウイルスベクター、または大腸菌などの細菌ベクターを用いることができる。上記のいずれも、非毒性の生理学的に許容可能な担体と組み合わせて用いることができ、また、1つまたは複数のアジュバントと組み合わせて用いてもよい。
【0099】
不活化ウイルスワクチンまたは免疫原性組成物は、クローニングされたPCVのDNAに由来するウイルスを、ホルマリンまたは疎水性溶媒、酸などの不活化作用物質で処理すること、紫外線光またはX線の照射、加熱などにより、調製することができる。不活化は、当技術分野において理解されている様式で実施される。例えば、化学的不活化において、ウイルスを含有する適切なウイルスサンプルまたは血清サンプルを、ウイルスを不活化するために十分に高い(または、不活化作用物質に応じて低い)温度またはpHで、十分な量または濃度の不活化作用物質を用いて、十分な長さの時間にわたり処理する。加熱による不活化は、ウイルスを不活化させるための温度で、およびウイルスを不活化させるために十分な長さの時間にわたり実施される。照射による不活化は、光または他のエネルギー供給源の波長を用いて、ウイルスを不活化するために十分な長さの時間にわたり実施される。ウイルスは、感染しやすい細胞にウイルスが感染することが不可能である場合、不活化されていると見なされる。
【0100】
サブユニットワクチンの調製は、典型的には、修飾生ワクチンまたは不活化ワクチンの調製と異なる。サブユニットワクチンの調製の前には、ワクチンの防御成分または抗原成分が同定されていなくてはならない。このような防御成分または抗原成分には、ブタにおいて特に強力な防御的または免疫学的応答を生じさせるウイルスカプシドタンパク質の特定のアミノ酸セグメントまたは断片;単一または複数のウイルスカプシドタンパク質自体、そのオリゴマー、およびウイルスの部分構造またはこのような部分構造の同定可能な部分もしくは単位を形成するウイルスカプシドタンパク質の高次の会合;ウイルスの表面上もしくはその近くに存在するかまたはウイルスに関連するリポタンパク質もしくは脂質群などのウイルスの部分構造内に存在する、オリゴグリコシド、糖脂質、または糖タンパク質などが含まれる。好ましくは、ORF2遺伝子によりコードされるタンパク質などのカプシドタンパク質が、サブユニットワクチンの抗原成分として採用される。感染性DNAクローンによりコードされる他のタンパク質もまた用いることができる。これらの免疫原性成分は、当技術分野において知られている方法によって簡単に同定される。同定されると、ウイルスの防御部分または抗原部分(すなわち「サブユニット」)はその後、当技術分野において知られている手順によって精製および/またはクローニングされる。サブユニットワクチンは、生ウイルスに基づいた他のワクチンを超える利点をもたらすが、それは、ワクチンの、高度に精製されたサブユニットなどのサブユニットが、ウイルス全体よりも毒性が低いためである。
【0101】
サブユニットワクチンが組換え遺伝的技術を介して生産される場合、ORF2(カプシド)遺伝子などのクローニングされたサブユニットの発現は、例えば、当業者に知られている方法によって最適化することができる(例えば、Maniatisら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、 Mass.、1989を参照されたい)。採用されるサブユニットが、カプシドタンパク質全体などの、ウイルスのインタクトな構造的特性を示す場合、ウイルスからそれを単離するための手順は最適化されなくてはならない。いずれのケースにおいても、不活化手順の最適化の後、製造の前に、サブユニット精製手順を最適化することができる。
【0102】
病原性クローンから弱毒化ワクチンを調製するために、組織培養に適合化された、生の病原性PCV2はまず、典型的には細胞培養を介した連続的な連続継代により行われる、当技術分野において知られている方法によって、弱毒化される(非病原性または無害にされる)。病原性クローンの弱毒化はまた、遺伝子の欠失またはウイルス産生遺伝子突然変異によっても行うことができる。そして、弱毒化PCV2ウイルスは、PCV1の非病原性の表現型を保持するが組換え技術を介してPCV2ゲノムから選択される免疫原性形質の強度において変化し得る、さらなるPCV2ウイルスを構築するために用いることができる。
【0103】
本発明において所望の、さらなる遺伝的に操作されたワクチンは、当技術分野において知られている技術によって生産される。このような技術は、限定はしないが、組換えDNAのさらなる操作、組換えタンパク質のアミノ酸配列の修飾または当該アミノ酸配列への置換などを伴う。
【0104】
組換えDNA技術に基づいた、遺伝的に操作されたワクチンは、例えば、ブタにおけるさらに強力な免疫応答または防御応答を誘発する原因であるタンパク質をコードするウイルス遺伝子の別の部分(例えば、ORF3、ORF4などに由来するタンパク質)を同定することにより作製される。このような同定された遺伝子または免疫優勢断片は、バキュロウイルスベクターなどの標準的なタンパク質発現ベクター内にクローニングすることができ、適切な宿主細胞を感染させるために用いることができる(例えば、O’Reillyら、「Baculovirus Expression Vectors:A Lab Manual」Freeman & Co.、1992を参照されたい)。宿主細胞は培養され、それにより所望のワクチンタンパク質を発現し、このタンパク質は所望の程度に精製され得、適切なワクチン製品に製剤され得る。
【0105】
クローンが、疾患を生じさせる何らかの所望の天然の能力を保持する場合、毒性の原因であるウイルスゲノムにおけるヌクレオチド配列を突き止めること、および例えば部位特異的突然変異生成を介したウイルスの毒性を遺伝的に操作することも可能である。部位特異的突然変異生成は、1つまたは複数のヌクレオチドを付加、欠失、または変更することが可能である(例えば、Zollerら、DNA 3:479〜488、1984を参照されたい)。オリゴヌクレオチドは、所望の突然変異を含有して合成され、一本鎖ウイルスDNAの一部にアニーリングされる。その手順の結果生じるハイブリッド分子は、細菌を形質転換するために採用される。そして、適切な突然変異を含有して単離された二本鎖DNAは、適切な細胞培養物内にその後トランスフェクトされる後者の制限断片にライゲーションすることにより全長DNAを産生するために用いられる。移入のための適切なベクター内へのゲノムのライゲーションは、当業者に知られている任意の標準的な技術を介して達成することができる。ウイルスの後代を産生するための宿主細胞内へのベクターのトランスフェクションは、カルシウムリン酸またはDEAE−デキストラン介在性のトランスフェクション、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、および他の周知の技術などの従来の任意の方法を用いて行うことができる(例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)。クローニングされたウイルスはその後、所望の突然変異を示す。あるいは、適切な突然変異を含有する2つのオリゴヌクレオチドを合成することができる。これらはアニーリングして二本鎖DNAを形成することができ、このDNAは、全長DNAを産生するためにウイルスDNA内に挿入することができる。
【0106】
ワクチンにおいて有用な、遺伝的に操作されたタンパク質は、例えば、昆虫細胞、酵母細胞、または哺乳動物細胞において発現し得る。従来の方法によって精製または単離され得る、遺伝的に操作されたタンパク質は、ブタ内に直接的に接種して、ウイルス感染またはPCV2により生じる離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対する防御を付与することができる。
【0107】
昆虫細胞系(HI−FIVEなど)は、ウイルスから得られるかまたはウイルスの免疫優勢タンパク質の1つまたは複数をコードするウイルスゲノムからコピーされる核酸分子を含有する移入ベクターで形質転換することができる。移入ベクターは、例えば、線形バキュロウイルスDNA、および所望のポリヌクレオチドを含有するプラスミドを含む。宿主細胞系は、組換えバキュロウイルスを作製するために、線形バキュロウイルスDNAおよびプラスミドでコトランスフェクトすることができる。
【0108】
あるいは、1つまたは複数のカプシドタンパク質をコードする、PMWSに罹患しているブタ由来のDNA、感染性PCV2分子DNAクローン、またはクローニングされたPCVのDNAゲノムを、ポックスウイルスまたはアデノウイルスなどの生ベクター内に挿入することができ、ワクチンとして用いることができる。
【0109】
免疫原性上有効な量の本発明の組成物は、ウイルス感染またはPMWSに対する防御が必要なブタに投与される。ブタを接種する、免疫原性上有効な量または免疫原性量は、通常の試験によって容易に決定することができるかまたは簡単に滴定することができる。有効な量は、PMWSを生じさせるウイルスに曝されたブタを防御するためにワクチンに対する十分な免疫学的応答が得られる量である。好ましくは、ブタは、ウイルス性疾患の不都合な生理学的症状または効果の1つから全てが顕著に低減するか、改善されるか、または完全に予防される程度に防御される。
【0110】
ワクチンまたは免疫原性組成物は、単一用量または反復用量で投与することができる。投与量は、例えば、感染性DNAゲノムを含む50から5000マイクログラムのプラスミドDNA(ワクチンの免疫活性成分の濃度に応じて)で変化し得るが、ウイルス感染の不都合な反応または生理学的症状をもたらすのに十分な量のウイルスベースの抗原は含有するべきではない。ブタの体重、抗原の濃度、および他の典型的な要素に基づいて活性抗原性作用物質の適切な投与量を決定または滴定するための方法は、当技術分野において知られている。好ましくは、感染性ウイルスDNAクローンがワクチンとして用いられるか、または生の感染性ウイルスがインビトロで生成され得、その後、生ウイルスは弱毒化され得、その後ワクチンとして用いられる。このケースにおいて、100から200マイクログラムのクローニングされたPCVのDNA、または約10000の50%組織培養感染量(TCID50)の生弱毒化ウイルスをブタに与えることができる。
【0111】
望ましくは、ワクチンまたは免疫原性組成物は、PCVウイルスにまだ曝されていないブタに投与される。PCV2感染性DNAクローンまたは他のその抗原性形態を含有するワクチンは、経鼻、経皮(すなわち、全身的な吸収のために皮膚表面上または皮膚表面で塗布する)、非経口などで、都合良く投与することができる。投与の非経口経路には、限定はしないが、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内(すなわち、注射されるか、そうでなければ皮膚の下に置かれる)経路などが含まれる。接種の筋肉内および経皮経路は、ウイルスの感染性DNAクローンを用いた他の研究において成功しており(E.E.Spargerら、「Infection of cats by injection with DNA of feline immunodeficiency virus molecular clone」、Virology 238:157〜160(1997);L.Willemsら、「In vivo transfection of bovine leukemia provirus into sheep」、Virology 189:775〜777(1992))、これらの経路は、実用的な鼻腔内経路の投与に加え、最も好ましい。それほど都合良くはないが、ワクチンがリンパ内経路の接種を介してブタに与えられることも意図されている。固有の、非常に好ましい投与方法は、PCV2または(弱毒化もしくは不活化)PCV2ウイルスを含有するプラスミドDNAを、筋肉内、皮内、リンパ内などでブタに直接的に注射することを伴う。
【0112】
液体として投与する場合、本ワクチンは、水性溶液、シロップ、エリキシル、チンキなどの形態で調製することができる。このような製剤は当技術分野において知られており、典型的には、適切な担体または溶媒系内に抗原および他の典型的な添加物を溶解することにより調製される。適切な「生理学的に許容される」担体または溶媒には、限定はしないが、水、生理食塩水、エタノール、エチレングリコール、グリセロールなどが含まれる。典型的な添加物は、例えば、認定されている染料、香料、甘味料、およびチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)などの抗微生物保存料である。このような溶液は、例えば、部分的に加水分解されたゼラチン、ソルビトール、または細胞培養培地を添加することにより安定化することができ、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、その混合物などの、当技術分野において知られている試薬を用いた従来の方法によって緩衝することができる。
【0113】
液体製剤はまた、他の標準的な共製剤と組み合わせた懸濁剤または乳化剤を含む、懸濁液およびエマルジョンも含み得る。これらのタイプの液体製剤は、従来の方法によって調製することができる。懸濁液は例えば、コロイドミルを用いて調製することができる。エマルジョンは例えば、ホモジナイザーを用いて調製することができる。
【0114】
体液系内に注射するために設計されている非経口製剤には、適した等張性、および豚の体液の対応するレベルに緩衝するpHが必要である。等張性は、塩化ナトリウムおよび必要に応じて他の塩を用いて適切に調節することができる。エタノールまたはプロピレングリコールなどの適切な溶媒は、製剤内の構成要素の溶解度および液体調製物の安定性を増大させるために用いることができる。本ワクチンにおいて採用し得るさらなる添加物には、限定はしないが、デキストロース、従来の抗酸化剤、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの従来のキレート剤が含まれる。非経口の投与形態はまた、使用する前に滅菌されなくてはならない。
【0115】
一実施形態において、本明細書において記載される2B型サーコウイルスの少なくとも1つに由来する免疫原性ORF2カプシド遺伝子を、ワクチンまたは免疫原性組成物において用いることができる。
【0116】
アジュバント
本発明は、配列番号1および2の核酸配列によってコードされる2つの新たな2B型豚サーコウイルス(PCV2B)の単離および同定を提供する。これらのPCV2Bの新たな株は、環境的に曝露されそれ自体ワクチンおよび免疫原性組成物の調製において用いるための理想的な候補であり得るブタから単離された。ワクチンまたは免疫原性組成物を調製するために、これらの株を死滅/不活化形態で用いること、またはこれらの2つの株の弱毒化形態を調製することは、本発明の目的である。これらを、アジュバントを伴ってまたは伴わずにブタの集団に送達して、PMWSを予防するかまたはこの疾患に関連する少なくとも1つの症状を改善することもまた、本発明の目的である。
【0117】
したがって、本明細書において記載される、生の弱毒化2B型豚サーコウイルスもしくは死滅/不活化豚サーコウイルス、またはこれらの豚サーコウイルスをコードする核酸、またはこれらのサーコウイルスから得られる少なくとも1つのタンパク質は、アジュバントを伴ってまたは伴わずに送達され得る。一実施形態において、ワクチンは、アジュバントと共に投与される死滅/不活化PCV2Bサーコウイルスである。アジュバントは、ワクチンに対するブタの免疫学的応答を増大させる物質である。アジュバントは、ワクチンと同時に、かつワクチンと同一の部位で投与することができるか、または、異なる時点で、例えば追加投与として投与することができる。アジュバントはまた、有利には、ワクチンを投与する様式または部位とは異なる様式または部位でブタに投与することができる。適切なアジュバントには、限定はしないが、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、免疫刺激複合体(ISCOMS)、非イオン性ブロックポリマーまたはコポリマー、サイトカイン(IL−1、IL−2、IL−7、IFN−α、IFN−β、IFN−γなど)、サポニン、モノホスホリル脂質A(MLA)、ムラミルジペプチド(MDP)などが含まれる。他の適切なアジュバントには、例えば、硫酸アルミニウムカリウム、大腸菌から単離される、熱に不安定な、または熱安定性のエンテロトキシン、コレラ毒素またはそのBサブユニット、ジフテリア毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、フロイント不完全または完全アジュバントなどが含まれる。ジフテリア毒素、破傷風毒素、および百日咳毒素などの毒素ベースのアジュバントは、例えばホルムアルデヒドで処理することにより、使用する前に不活化することができる。
【0118】
免疫応答を測定するためのアッセイ
豚サーコウイルスに対してブタをワクチン接種することの機能的な結果は、細胞性もしくは液性免疫の誘発またはT細胞活性をモニタリングする適切なアッセイによって評価することができる。これらのアッセイは当業者に知られているが、例えばクロム放出アッセイを用いる細胞溶解性T細胞の活性の測定を含み得る。あるいは、T細胞増殖アッセイは、免疫反応性またはその喪失の指標として用いることができる。さらに、インビボの研究を行って、本発明の方法を用いて病原体に対してワクチン接種された哺乳動物における防御のレベルを評価することができる。典型的なインビボでのアッセイは、本明細書において記載されるキメラ豚サーコウイルスなどの抗原で動物をワクチン接種することを伴い得る。通常は注射の約1週間から2週間である、抗体またはT細胞の応答の発生を誘発するために十分な時間にわたり待機した後、動物をいずれかのウイルスなどの抗原でチャレンジし、ウイルス感染に関連する1つもしくは複数の症状の改善または動物の生存をモニタリングする。豚サーコウイルスに対する成功裏のワクチン接種レジメンにより、またはワクチン接種されていない対照と比較して、ウイルス感染に関連する1つもしくは複数の症状の顕著な低減、またはウイルス血症の低減、またはウイルス感染に関連する病変の重症度の数の低減、または生存がもたらされる。血清もまた、当業者に知られている方法により測定される、ワクチン注射に応答して生じた抗体のレベルをモニタリングするために回収することができる。
【0119】
豚サーコウイルス2A型および2B型の単離体を比較するための方法
新たに同定された2B型豚サーコウイルスが、ブタにおいて両方とも病原性である2A型または2B型サーコウイルスのいずれかでの感染に対して防御するためのワクチンまたは免疫原性組成物として有効であり得る可能性があり得る。2A型および2B型株は、制限断片長多型(RFLP)分析の使用を介して区別することができる。RFLPは、ゲル上で視覚化される特異的な切断パターンをもたらす、ウイルス核酸(部分的または全体)の酵素消化を用いる。酵素切断の部位でウイルス間に差異がある場合、異なるパターンが観察され得る。このフィンガープリンティング技術は、DNAウイルスに一般に用いられている。Mengら(米国特許公開第2005/0147966号)は、非病原性の1型豚サーコウイルスと病原性の2型豚サーコウイルスとの間を区別するための、NcoI制限酵素を用いたPCR−RFLPアッセイの使用を記載している。HinfI、HinP1I、KpnI、MseI、およびRsaI酵素を用いる、2000年に記載されたORF2ベースのPCR−RFLPアッセイは、PCV2単離体(PCV2A、B、C、D、およびE)間を区別することができる(Hamel AL、Lin LL、Sachvie C、Grudeski E、Nayar GP:PCR detection and characterization of type−2 porcine circovirus.Can J Vet Res.64:44〜52、2000)。
【0120】
Sau3AI、BanII、NspI、XbaI、およびCfrI酵素を用いる、ORF2ベースのPCR−RFLPアッセイが最近記載されており、9個の異なるPCV2遺伝子型を区別することができる(Wen L、Guo X、Yang H:Genotyping of porcine circovirus type 2 from a variety of clinical conditions in China.Vet Microbiol.110:141〜146、2005)。PCV2のRFLP分析は、カナダのオンタリオ州において2005年に、RFLPの422型から321型で顕著な変化があることを示した(Delay J、McEwen B、Carman S、van Dreuel T、Fairles J:Porcine circovirus type 2−associated disease is increasing.AHL Newsletter.9:22、2005)。
【0121】
2A型と2B型豚サーコウイルス間を区別するためにRFLP分析を用いることに加え、これらの2つの株は配列分析に基づいて区別され得ると考えられている。
【0122】
例えば、配列分析を用いて、遺伝子情報を特徴付けることおよび単離体を互いに比較することが可能である(Choi J、Stevenson GW、Kiupel M、Harrach B、Anothayanontha L、Kanitz CL、Mittal SK:Sequence analysis of old and new strains of porcine circovirus associated with congenital tremors in pigs and their comparison with strains involved with postweaning multisystemic wasting syndrome.Can J Vet Res.66:217〜224、2002;De Boisseson C、Beven V、Bigarre L、Thiery R、Rose N、Eveno E、Madec F、Jestin A:Molecular characterization of porcine circovirus type 2 isolates from post−weaning multisystemic wasting syndrome−affected and non−affected pigs.J Gen Virol.85:293〜304、2004;Fenaux M、Halbur PG、Gill M、Toth TE、Meng XJ:Genetic characterization of type 2 porcine circovirus(PCV−2)from pigs with postweaning multisystemic wasting syndrome in different geographic regions of North America and development of a differential PCR−restriction fragment length polymorphism assay to detect and differentiate between infections with PCV−1 and PCV−2.J Clin Microbiol.38:2494〜2503、2000;Grierson SS、King DP、Sandvik T、Hicks D、Spencer Y、Drew TW、Banks M:Detection and genetic typing of type 2 porcine circovirus in archived pig tissues from the UK.Arch Virol.149:1171〜1183、2004;Kim JH、Lyoo YS:Genetic characterization of porcine circovirus−2 field isolates from PMWS pigs.J Vet Sci.3:31〜39、2002;Mankertz A、Domingo M、Folch JM、LeCann P、Jestin A、Segales J、Chmielewicz B、Plana−Duran J、Soike D:Characterisation of PCV−2 isolates from Spain、Germany and France.Virus Res.66:65〜77、2000)。PCV2単離体の間で可能な差異をさらに調査するために、全PCV2ゲノムを配列決定することまたはORF2のみを配列決定することが可能である。
【0123】
2つの株はまた、疾患自体に関連する病原性、臨床症状、および死亡率に関して異なり、2A型は、2B型株に関連するさらに重度の病変および高い死亡率と比較して、身体の組織におけるあまり重度ではない病変および低い死亡率を示す。これらの臨床パラメーターは、当技術分野において知られている標準的な手順を用いて、本発明において実証されているように測定することができる。
【実施例】
【0124】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を実証するものである。しかし、これらの実施例は例示のためだけのものであり、この発明の条件および範囲として完全に決定的であることを意図したものではないことが理解される。当然のことながら、典型的な反応条件(例えば、温度、反応時間など)が与えられている場合、上記および以下の両方の条件、特定の範囲も用いることができるが、通常はあまり都合の良いものではない。本明細書において言及する全ての部分およびパーセントは、体重に基づいたものであり、全ての温度は、別段の特定がない限り摂氏で表される。
【0125】
(実施例1)
豚サーコウイルスの2つの新たな2B型株の単離および同定
ブタにおいて新たなワクチン製剤を試験して豚サーコウイルスおよびマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)に対するその有効性を評価するために、試験を計画した。試験の過程において、対照群およびワクチン接種群におけるブタの何頭かがPMWSの症状を示すことが観察された。そして、これらのブタがチャレンジの前に環境的PCV2に曝されたことが確認された。これらのブタ由来の血液および組織試料についての分子分析により、これらのブタが、チャレンジに用いた株とは異なる2B型株を有することが明らかにされた。さらに、配列分析により、FD07と称されるPCV2B株および農場のブタから単離された別の新たなPCV2B株(FDJEと称される)が、他の分野の研究において同定された他の2B型株および他者によってこれまでに同定されているもの由来の2B型株と異なることが立証された。PCV2Bのこれらの2つの新たな株の単離および特徴付けのための材料および方法を以下に記載する。
【0126】
材料および方法
試験動物
雑種の雄および雌の従来のブタをこの試験に用いた。24頭のワクチン接種個体および24頭の対照個体を準備した。ブタはワクチン接種の時点で3週齢であった。
【0127】
試験に用いるブタは営利農場から購入し、耳のタグを用いて同定した。ブタは単一供給源の群れから得た。最初のワクチン接種の時点で、ブタは、ELISAにより決定したところ、PCV2に対して血清反応陰性であった(S/P比率≦0.5)。試験の標的集団は、健康な肥育ブタであった。ブタの免疫機能に関して、この試験に選抜された動物は、アメリカ合衆国における肥育ブタの代表として判断された。
【0128】
ブタは、アイオワ州、フォートドッジのFDAHでの隔離施設に収容した。ワクチン接種個体および対照個体は、試験全体を通して同様の環境で混ぜた。子豚はひと腹ごとに部屋を分けた。収容空間は、動物福祉の適用法令を順守したものであった。ブタには標準的な市販の飼料と自由摂取の水および餌とを給餌した。
【0129】
治療が必要なブタを、試験責任者と相談した後に、施設獣医師による、必要であるとの判断に従って処置した。
【0130】
血清試料のPCV2−PCR試験の結果は、実験的チャレンジの前の、部屋の1つにおける、子豚への偶発的/環境的なPCV2への曝露を示した。PCV2はまず、ワクチン接種の28日後に1頭の対照子豚の血清において検出され、DNA配列決定によって豚サーコウイルス2B型株(PCV2B)として同定された。このPCV2Bはさらなる6頭の子豚に感染した。ワクチン接種していない対照ブタの2頭がPCV2に関連する臨床徴候を発症し、健康状態が悪いために、チャレンジの18日後に安楽死させた。この臨床徴候には、限定はしないが、食欲不振、不活発、鬱、くしゃみ、咳、鼻水、眼漏、および呼吸困難が含まれる。安楽死させる前に、サーコウイルスの分析および配列決定のために組織および血液試料を回収した。
【0131】
試料の回収および試験
試料の回収
鼻のスワブ
鼻のスワブを、PCV2の単離のために、ワクチン接種後日数(DPV)0に回収し、ワクチン接種の前に試験動物においてPCV2感染がないことを確認した。鼻のスワブの試料を、ラクトアルブミン加水分解物(LAH)およびゲンタマイシン(60μg/ml)、ペニシリン(100U/mL)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を有する3mLのMEMを含有する個別の無菌試験管内に置き、試験するまで−50℃以下で保管した。
【0132】
血清試料
ブタは、ELISA試験のためにDPV0、13、28、およびDPC−1、7、14、20に、ならびにPCR試験のためにDPV0、13、28、DPC−1、3、7、10、14、17、20に、血清試料のために採血した(10mLのみ)。
【0133】
組織試料
全ての動物を、DPC20/21に剖検した。3つのリンパ節(気管気管支、腸骨、および鼠径)、扁桃腺、ならびに脾臓から切片を回収し、組織病理学検査およびPCV2免疫組織化学(IHC)試験のためにホルマリンで固定した。
【0134】
試料の試験
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
間接的なELISAを用いて、捕捉抗原として組換えPCV2カプシドタンパク質(バキュロウイルスにおいて発現する)を用いて血清試料における抗PCV2抗体を検出した。簡潔に述べると、96ウェルポリスチレンプレートを、陽性捕捉抗原(PCV2カプシドタンパク質を発現する組換えバキュロウイルスで感染させたSf9細胞)で被覆した。対照として、それぞれのプレート上の6個のウェルを、陰性捕捉抗原(SF9昆虫細胞)で被覆した。ブロッキング試薬でプレートを処理した後、プレートを試験血清試料および対照血清試料と共にインキュベートした。試験血清のそれぞれの試料を、陽性捕捉抗原で被覆した免疫プレートのウェル内に加えた(それぞれの試験試料当たり3個のウェル)。陽性の対照血清試料を、陽性捕捉抗原で被覆した免疫プレートの6個のウェル(陽性対照)および陰性捕捉抗原で被覆した免疫プレートの6個のウェル(陰性対照)に加えた。HRP結合ヤギ抗ブタ二次抗体をプレートに加えた。最後に、TMB(ペルオキシダーゼ基質)を加え、適切で一貫性のある時間にわたりインキュベートした。発色をELISAプレートリーダーで定量化した。ELISAプレートにおけるそれぞれの試薬を、明確に定義された様式でインキュベートし、それぞれの連続的なステップの前に、過剰な試薬を除去するために洗浄した。試験試料および陽性対照のODを、試験試料および陽性対照の平均ODから陰性対照の平均ODを差し引くことにより計算した。血清の力価はS/P(試料/陽性対照)の比率として、すなわち、陽性対照試料のODで割った試験試料のODとして表した。
【0135】
PCR試験
PCV2特異的なPCR試験を用いて、血清試料におけるPCV2ウイルスのゲノムDNAの存在を検出した。ウイルスゲノムDNAは、QIAGEN MatAttractウイルスミニキットおよびQIAGEN BioRobot M48ワークステーションを用いて血清から精製した。PCV2特異的配列を検出するために、592bpの断片を、ABI AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ、ならびに遺伝子特異的プライマーであるF1PCV2、すなわち5’−ATGCCCAGCAAGAA GAATGG−3’(配列番号7)、およびRPCV2、すなわち5’−TGGTTTCCAGTATGT GGTTTCC−3’(配列番号8)を用いることによって増幅した。精製したウイルスDNAを鋳型として使用し、95℃で10分間変性した。PCRの反応プログラムは、35サイクルの、94℃で30秒間の変性、59℃で1分間のアニーリング、および72℃で1分間の伸長からなるものであった。PCR産物10μLを用いて、アガロースゲル電気泳動により592bpのPCV2のDNA断片を検出した。
【0136】
組織病理学
脾臓、扁桃腺、ならびに3つ(気管気管支、腸骨、および鼠径)リンパ節の組織試料を、剖検の間にそれぞれの動物から回収し、10%中性緩衝ホルマリンにおいて2から4日間固定し、パラフィン内に包埋した。4マイクロメートルの切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、組織病理学的評価のために光学顕微鏡下で検査した。
【0137】
試料を、リンパ球の枯渇/組織球性の置換の程度について評価した。簡潔に述べると、全ての組織を盲検の様式ならびにリンパ球の枯渇および組織球性の置換のレベルについての所与の主観的スコアで検査した。0から3の、リンパの枯渇のランク付けされたスコアは、0は標準、1は全体的な細胞充実度の喪失を伴う軽度のリンパの枯渇、2は中程度のリンパの枯渇、3はリンパ濾胞構造の枯渇の喪失を伴う重度のリンパの枯渇として割り当てた。0から3の、組織球性の置換のランク付けされたスコアは、同様に、0は標準、1は軽度の細胞球性から肉芽腫性の炎症、2は中程度の細胞球性から肉芽腫性の炎症、3は濾胞の置換を伴う重度の細胞球性から肉芽腫性の炎症として割り当てた。
【0138】
組織病理学的評価は、アイオワ州立大学の獣医学部の家畜診断研究所(アイオワ州、エイムズ)での資格を有する病理学者によって実施された。
【0139】
免疫組織化学(IHC)試験
リンパ節、扁桃腺、および脾臓の組織におけるPCV2特異的な抗原を、免疫組織化学試験によって検出した。簡潔に述べると、組織の4マイクロメートルの切片をスライドガラス上に置き、キシレンで処理してパラフィンを除去した。脱パラフィンした切片は、PBSにおいて20分間、3%のHを用いて内因性ペルオキシダーゼについて消光した。蒸留水ですすいだ後、切片を室温で一晩、PBSにおいて1:1000に希釈したウサギ抗PCV2ポリクローナル血清と共にインキュベートした。PBSですすいだ後、切片を、室温で30分間、ビオチニル化したヤギ抗ウサギIgGと共にインキュベートした。その後、切片を、ストレプトアビジンペルオキシダーゼコンジュゲートと共にインキュベートし、ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド基質で「視覚化」した。PCV2抗原の量は、盲検の様式で、PCV2抗原染色のレベルに基づいて評価した。ランク付けされたスコアは、0は染色なし、1は低い染色レベル、2は中程度の染色レベル、3は高い染色レベルとして割り当てた。組織に対するIHCは、アイオワ州立大学獣医学部における家畜診断研究所(アイオワ州、エイムズ)で実施した。
【0140】
結果
ウイルスの単離
鼻のスワブを、PCV2の単離のために、ワクチン接種後日数(DPV)0に回収し、ワクチン接種の前に試験動物においてPCV2感染がないことを確認した。それぞれの試験動物の鼻のスワブからウイルスは単離されず、このことは、ワクチン接種の時点でこれらのブタが環境的PCV2感染に曝露していないことを示している。
【0141】
PCV2チャレンジ材料の滴定
毒性PCV2チャレンジ材料(株40895)の滴定結果を表1に示す。3回の滴定から得られるチャレンジウイルスの平均力価は4.6Log10FAID50/mLであった。
【0142】
血清学
PCV2特異的抗体のELISAの結果を表2に示す。
【0143】
DPV1 0に、対照個体(C群)におけるELISAのS/P比率は、−0.009から0.366で変化し、平均S/P比率は0.135であった。ワクチン接種の後、対照におけるELISA抗体力価は、DPV13までにバックグラウンドレベルまで低下し、全ての子豚はチャレンジの日まで血清反応陰性のままであった。平均S/P比率はそれぞれ、DPV13では0.049、DPV28では0.023、およびDPV35(DPC−1)では0.004であった。PCV2チャレンジの後、平均S/P比率は、DPC7の0.125、DPC14の0.612から、DPC20の0.922まで顕著に増大した。
【0144】
DPV1 0日に、ワクチン接種個体(V群)におけるELISAのS/P比率は、−0.028から0.364まで変化し、平均S/P比率は0.126であった。ワクチン接種の後、平均S/P比率は、DPV13では0.041、DPV28では0.097、およびDPV35(DPC−1)では0.167であった。PCV2チャレンジの後、この群の子豚におけるELISA力価における顕著な増加がDPC7にすぐ見られ、平均S/P比率は、DPC7では1.069、DPC14では1.373、およびDPC20では1.356であった。
【0145】
PCV2ウイルス血症
ワクチン接種個体および対照個体の血清におけるPCV2特異的PCRによるPCV2ウイルス血症の検出を、表3Aに要約する。このPCV2特異的PCRは、従来の細胞培養方法よりも少なくとも1000倍感度が高い。
【0146】
チャレンジ後日数(DPC)−1に、予想外に、24頭のワクチン接種個体のうち3頭(ブタ#P102、P103、およびP104)、ならびに24頭の対照個体のうち6頭(ブタ#G197、G205、O162、P107、P108、およびP110)が、血清試料においてPCV2のDNAについて陽性であることが検出されたが、一方でその他全てが陰性のままであることが判明した。全ての9頭のPCV2陽性ブタを同一の部屋(#12)に収容した。残念ながら、6頭のPCV2感染ブタ(ブタ#P102、P103、P104、P107、P108、およびP110)ならびに2頭の非感染ブタを部屋#13内に移し、空間上の必要性のため、DPC−1に、部屋#11からの8頭の非感染ブタと混合した。したがって、部屋#12および13における全ての動物は、環境的PCV2に潜在的に曝露された。
【0147】
PCV2への環境的曝露の源を調査するために、DPV0、13、および28に回収した血清試料を、PCV2特異的PCRによって試験した。全てのブタは、DPV13に非常に強い陽性PCRバンドを有するブタ#P108(対照個体、部屋#12)を除いて、PCV2陰性であった。この結果は、偶発的な環境的PCV2曝露がブタ#P108に由来すること、そして部屋#12および#13における他のブタに広がったことを示唆するものであった。このPCV2の正確な起源は分からないが、おそらく、試験に入る前にブタ#P108が検出不可能なレベルで感染した環境または農場によるものである。
【0148】
環境的曝露からのPCV2の遺伝子型を決定するために、ブタ#P108由来のPCR産物を、配列決定のためにクローニングした。DNA配列の分析により、ブタ#P108由来のPCV2は、株#40895(2A)と異なる2B型株であることが示された。これらの2つのPCV2株のゲノムは、95.98%のDNA配列同一性を有していた。実験的PCV2(株#40895)チャレンジを環境的接触チャレンジ(ブタ#P108由来の2B)からさらに区別するために、全てのPCV2ウイルス血症のブタ由来のPCR産物を、DNA配列決定のためにクローニングした。遺伝子型決定の結果を「PCV2チャレンジ」の欄において示し、「A」は、PCV2Bが血清試料において検出されず、チャレンジが実験的PCV2#40895株によってのみ生じたことを表し、「A+B」は、実験的チャレンジに加え、PCV2Bもまた検出され、全てのPCV2Bが同一の配列のためにブタ#P108から得られたことを表し、「A+(B)」は、実験的チャレンジに加え、ブタが部屋#12/13においてブタ#P108と混合されたために、これらのブタが潜在的にPCV2Bに感染していたことを表す。しかし、これらのブタの全てがPCV2チャレンジから防御された。
【0149】
実験的および環境的接触チャレンジの影響を評価するために、PCV2ウイルス血症についてのPCR結果を、全体的な比較(表3A)、実験的チャレンジ(表3B)、ならびに実験的および環境的接触チャレンジ(表3C)という3つのカテゴリーにおいて議論する。
【0150】
群間の全体的な比較は、10/24(41.7%)のワクチン接種個体が、少なくともシングルポジティブで不確定な発生では、血清中のPCV2のDNAの存在について陽性であることを示した。単一の不確定な発生が説明不可能である場合、5/24(20.8%)のワクチン接種個体がPCV2のDNAについて陽性であった。逆に、24/24(100%)の対照個体が、複数の発生について、血清中のPCV2のDNAの存在について陽性であった。対照個体におけるPCV2陽性バンドの頻度および密度は、ワクチン接種個体におけるよりも顕著に高く強いものであった(表3Aを参照されたい)。
【0151】
PCV2の実験的チャレンジに曝露された群間での比較(表3B)は、1/9(11.1%)のワクチン接種個体が、シングルポジティブな発生のみについて、PCV2のDNAについて陽性であることを示した。逆に、14/14(100%)の対照個体が、複数の発生について、PCV2のDNAの存在について陽性であった。
【0152】
PCV2の実験的および環境的接触チャレンジに曝露された群間の比較(表3C)は、4/15(26.7%)のワクチン接種個体が、少なくともシングルポジティブな発生について、PCV2のDNAについて陽性であることを示した。逆に、10/10(100%)の対照個体が、複数の発生について、血清中のPCV2のDNAの存在について陽性であった。
【0153】
顕微鏡的病変−リンパの枯渇
リンパ節、脾臓、および扁桃腺の組織を、リンパの枯渇について顕微鏡で検査した。顕微鏡的病変−リンパの枯渇の全結果を表4Aに要約する(スコア0〜3を有する動物の数)。
【0154】
群間の全体的な比較は、少なくとも1つの組織における異常なリンパ枯渇のスコアが、対照ブタの23/24(95.8%)と比較して、ワクチン接種したブタの15/24(62.5%)において観察されたことを示した。中程度から重度のリンパ枯渇病変は、14/24(58.3%)の対照個体と比較して、4/24(16.7%)のワクチン接種個体において観察された。
【0155】
PCV2の実験的チャレンジに曝露された群間の比較(表4B)は、少なくとも1つの組織における異常なリンパ枯渇のスコアが、対照ブタの13/14(92.9%)と比較して、ワクチン接種したブタの6/9(66.7%)において観察されたことを示した。
【0156】
PCV2の実験的および環境的接触チャレンジに曝露された群間の比較(表4C)は、少なくとも1つの組織における異常なリンパ枯渇のスコアが、対照ブタの10/10(100%)と比較して、ワクチン接種したブタの9/15(60%)において観察されたことを示した。
【0157】
顕微鏡的病変−組織球性の置換
リンパ節、脾臓、および扁桃腺の組織を、濾胞の置換を伴う組織球性から肉芽腫性の炎症について顕微鏡で検査した。顕微鏡的病変−組織球性の置換の全結果を表5に要約する。
【0158】
全体的な比較は、対照個体の22/24(91.7%)と比較して、15/24(62.5%)のワクチン接種個体が少なくとも1つのリンパ組織において異常な組織球性の置換のスコアを有することが観察されたことを示した。
【0159】
免疫組織化学
リンパ節、脾臓、および扁桃腺におけるIHC染色によるPCV2抗原の量の検出の結果を、表6に要約する(スコア0〜3を有する動物の数)。
【0160】
全体的な比較は、対照個体の23/24(95.8%)と比較して、7/24(29.2%)のワクチン接種個体が少なくとも1つのリンパ組織においてPCV2特異的なIHC染色であったことを示した。
【0161】
チャレンジ後の臨床観察
個別のブタにおけるチャレンジ後の臨床徴候について毎日観察した結果を表7に示す。2頭の対照ブタ(#P108およびO162)を除くいずれのブタにおいても、臨床徴候は観察されなかった。
【0162】
ブタ#P108はDPC1に咳をし、DPC10に下痢をし、DPC17に痩せ、下痢をし、かつ不活動であることが観察された。このブタは、消耗性の明らかな臨床徴候を発症した。状態が悪いため、この子豚はDPC18に安楽死させた。剖検により、非常にわずかな皮下脂肪、肺における中程度の頭腹側の硬化、空の胃および腸が明らかになった。ブタはPCV関連疾患を発症し、これは、PCV2ウイルス血症(極めて強いPCV陽性)、重度のリンパの枯渇、およびリンパ組織におけるPCV2抗原の高い負荷(IHC染色による)の所見により裏付けられた。
【0163】
子豚#O162は、DPC14に、痩せて、左後肢が不自由であることが観察された。DPC17に、このブタはまた、痩せて、行動が不可能であり、後肢において足根関節が腫れていることが観察された。状態が悪いため、この子豚はDPC18に安楽死させた。剖検により、線維素の接着を伴う中程度から重度の肺の硬化が明らかになった。肺組織の顕微鏡評価は、重度の急性気管支肺炎および慢性限局性間質性線維症を示した。このブタはPCV関連疾患を発症し、これは、PCV2ウイルス血症(極めて強力なPCR陽性)、重度のリンパの枯渇、およびリンパ組織におけるPCV2抗原の高い負荷(IHC染色による)の所見により裏付けられた。
【0164】
【表1】
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【0165】
【表2−1】
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【0166】
【表2−2】
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【0167】
【表3−1】
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【0168】
【表3−2】
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【0169】
【表3−3】
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【0170】
【表4−1】
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【0171】
【表4−2】
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【0172】
【表5−1】
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【0173】
【表5−2】
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【0174】
【表6】
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【0175】
【表7】
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【0176】
【表8】
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【0177】
【表9】
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【0178】
【表10】
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【0179】
【表11−1】
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【0180】
【表11−2】
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【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−507522(P2011−507522A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539780(P2010−539780)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/087361
【国際公開番号】WO2009/085912
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】