説明

負極および電池

【課題】 負極活物質層の形状崩壊およびそれに伴う電解質との副反応を抑制し、電池容量の減少を抑制することができる負極およびそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】 負極集電体11の上に負極活物質層12が形成されている。負極活物質層12は、Snと、Sn以外でLiと電気化学的に反応可能な第1元素(Al,Zn,Ag,In,Sb,Pbなど)と、負極集電体11の構成元素以外でLiと電気化学的に反応しない第2元素(Mn,Fe,Co,Ni,Crなど)とを含んでおり、それらの濃度が厚み方向において連続的あるいは断続的に変化している。これにより、Liとの反応による膨張率が変化し、膨張収縮により負極集電体11にかかる応力が緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極集電体に負極活物質層が設けられた負極、およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器の高性能化および多機能化に伴い、それらの電源である二次電池の高容量化が切望されている。この要求に応える二次電池としてリチウム二次電池がある。しかし、現在におけるリチウム二次電池の代表的な形態である、正極にコバルト酸リチウム、負極に黒鉛を用いた場合の電池容量は飽和状態にあり、大幅な高容量化は極めて困難な状況である。そこで、古くから負極に金属リチウム(Li)を用いることが検討されているが、この負極を実用化するには、リチウムの析出溶解効率の向上およびデンドライト状の析出形態の制御などを図る必要がある。
【0003】
その一方で、最近、ケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)などを用いた高容量の負極の検討が盛んに行われている。しかし、これらの負極は充放電を繰り返すと、活物質の激しい膨張および収縮により粉砕して微細化し、集電性が低下したり、表面積の増大に起因して電解液の分解反応が促進され、サイクル特性は極めて劣悪であった。そこで、気相法、液相法あるいは焼成法などにより負極集電体に負極活物質層を形成した負極も検討されている(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3参照)。これによれば、粒子状の活物質およびバインダーなどを含むスラリーを塗布した従来の塗布型負極に比べて微細化を抑制することができると共に、負極集電体と負極活物質層とを一体化することができるので負極における電子伝導性が極めて良好となり、容量的にもサイクル寿命的にも高性能化が期待されている。また、従来は負極中に存在した導電材、バインダーおよび空隙などを低減または排除することもできるので、本質的に負極を薄膜化することが可能となる。
【特許文献1】特開平8−50922号公報
【特許文献2】特許第2948205号公報
【特許文献3】特開平11−135115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この負極でも、充放電により負極活物質層の形状崩壊およびそれに伴う電解質との副反応が起こり、充放電を繰り返すにつれて電池容量が減少するという問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、負極活物質層の形状崩壊およびそれに伴う電解質との副反応を抑制し、電池容量の減少を抑制することができる負極およびそれを用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを備え、負極活物質層は、スズと、スズ以外でリチウムと電気化学的に反応可能な第1元素と、負極集電体の構成元素以外でリチウムと電気化学的に反応しない第2元素とを含み、それらの濃度が厚み方向において連続的あるいは断続的に変化しているものである。
【0007】
本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを備え、負極活物質層は、スズと、スズ以外でリチウムと電気化学的に反応可能な第1元素と、負極集電体の構成元素以外でリチウムと電気化学的に反応しない第2元素とを含み、それらの濃度が厚み方向において連続的あるいは断続的に変化しているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の負極によれば、スズと、第1元素と、第2元素とを含み、その濃度が厚み方向において変化するようにしたので、膨張収縮による形状崩壊およびそれに伴う電解質との副反応を抑制することができる。よって、この負極を用いた本発明の電池によれば、充放電による電池容量の減少を抑制することができる。
【0009】
特に、第1元素として、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも1種を含むようにすれば、また、第2元素として、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co),ニッケル(Ni)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0010】
更に、負極活物質層の表面に、酸素化合物およびハロゲン化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む表面層を有するようにすれば、電解質との反応をより抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る負極10の概略構成を表すものである。負極10は、例えば、負極集電体11に負極活物質層12が設けられた構造を有している。負極集電体11の構成材料としては、例えば、銅(Cu)、鉄、ニッケル、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ステンレス、またはそれらの少なくとも1種を含むリチウムとの反応性が低い金属材料が好ましい。リチウムとの反応性が高いと、充放電に伴い負極集電体11が膨張収縮して破壊してしまうからである。中でも、価格および加工性の観点からは、銅、鉄、ニッケル、チタン、またはそれらの少なくとも1種を含む金属材料が好ましい。なお、負極集電体11は単層により構成してもよいが、複数層により構成してもよい。
【0013】
負極活物質層12は、スズと、スズ以外でリチウムと電気化学的に反応可能な第1元素と、負極集電体11の構成元素以外でリチウムと電気化学的に反応しない第2元素とを含んでおり、それらの濃度が厚み方向において連続的あるいは断続的に変化している。これにより、リチウムとの反応による膨張率が変化し、膨張収縮により負極集電体11にかかる応力が緩和されるようになっている。
【0014】
第1元素としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銀、インジウム、アンチモン、あるいは鉛が挙げられ、2種以上を含んでいてもよい。第2元素としては、例えば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルあるいはクロム(Cr)が挙げられ、2種以上を含んでいてもよい。これらスズ、第1元素および第2元素は、単体として存在していてもよく、他の元素と合金あるいは化合物を形成していてもよい。
【0015】
負極活物質層12におけるこれらの含有量は、スズが45原子%以上96原子%以下、第1元素が2原子%以上48原子%以下、第2元素が2原子%以上48%以下であることが好ましい。第1元素および第2元素の含有量が少ないとサイクル特性を十分に向上させることができず、また多くてもサイクル特性が低下してしまうと共に、スズの含有量が少なくなるので容量が低下してしまうからである。
【0016】
また、負極活物質層12は、負極集電体11との界面の少なくとも一部において負極集電体11と合金化していることが好ましい。すなわち、負極集電体11の構成元素が負極活物質層12に、または負極活物質層12の構成元素が負極集電体11に、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。負極集電体11の構成元素の拡散に伴って負極集電体11と負極活物質層12との一体化が促進され、形状崩壊を抑制することができるからである。
【0017】
更に、負極活物質層12は、気相法、液相法、焼成法、または溶射法により形成されたものであることが好ましく、これらの2以上を組み合わせて形成されたものでもよい。充放電に伴う負極活物質層12の膨張および収縮による形状崩壊を抑制することができると共に、負極集電体11と負極活物質層12とを一体化することができ、負極10における電子伝導性を向上させることができるからである。また、従来の塗布型負極と異なり、結着剤および空隙などを低減または排除でき、薄膜化することもできるからである。
【0018】
この負極10は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0019】
図2はその一工程を表すものである。まず、例えば図2に示したように、負極集電体11を用意し、負極集電体11に例えばスズの層12A、第1元素の層12Bおよび第2元素の層12Cを順に形成する。なお、層12A,12B,12Cの積層順はこれに限定されない。例えば、層12A、層12C、12Bの順、層12B、層12A、層12Cの順、層12B、層12C、層12Aの順、層12C、層12A、層12Bの順、層12C、層12B、層12Aの順に積層してもよい。また、積層数も各1層ずつに限らず任意に変えることができ、積層順も繰り返しである必要はない。
【0020】
層12A,12B,12Cは、気相法、液相法、焼成法、または溶射法により形成することが好ましく、これらの2以上を組み合わせてもよい。気相法としては、物理堆積法あるいは化学堆積法が挙げられ、具体的には真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,熱CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法あるいはプラズマCVD法などのいずれを用いてもよい。液相法としては、電解メッキ法あるいは無電解メッキ法などのいずれを用いてもよい。焼成法というのは、原料に粒子状の物質を用い、必要に応じてバインダあるいは溶剤などと混合して成形したのち、加熱する方法を意味している。焼成の方法は、雰囲気焼成法,反応焼成法あるいはホットプレス焼成法などのいずれを用いてもよい。溶射法としては、プラズマ溶射法,高速ガスフレーム溶射法あるいはアーク溶射法などのいずれを用いてもよい。
【0021】
次いで、層12A,12B,12Cを形成した負極集電体11を例えば真空雰囲気中,大気雰囲気中,還元雰囲気中,酸化雰囲気中または不活性雰囲気中において熱処理することが好ましい。これにより、負極集電体11の構成元素が負極活物質層12に拡散すると共に、層12A,12B,12Cの構成元素が互いに拡散する。なお、焼成法による場合には、焼成とこれらの拡散とを同時に行うようにしてもよい。これにより図1に示した負極10が得られる。
【0022】
なお、上記製造方法では、スズの層12A、第1元素の層12B、および第2元素の層12Cをそれぞれ形成する場合について説明したが、それらの合金あるいは化合物の層を形成するようにしてもよく、その組成も連続的あるいは断続的に変化させて形成するようにしてもよい。
【0023】
この負極10は例えば次のようにして二次電池に用いられる。
【0024】
図3は、その二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、いわゆるコイン型といわれるものであり、外装カップ21内に収容された負極10と、外装缶22内に収容された正極23とが、セパレータ24を介して積層されたものである。外装カップ21および外装缶22の周縁部は絶縁性のガスケット25を介してかしめることにより密閉されている。外装カップ21および外装缶22は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウムなどの金属によりそれぞれ構成されている。
【0025】
正極23は、例えば、正極集電体23Aと、正極集電体23Aに設けられた正極活物質層23Bとを有している。正極集電体23Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
【0026】
正極活物質層23Bは、例えば、正極活物質としてリチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料としては、例えば、一般式Lix MIO2 で表されるリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。これを含むことにより、高容量化を図ることができるからである。なお、MIは1種類以上の遷移金属であり、例えばコバルト,ニッケルおよびマンガンからなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム含有金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 あるいはLiNiO2 などが挙げられる。
【0027】
セパレータ24は、負極10と正極23とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものであり、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンにより構成されている。
【0028】
セパレータ24には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩とを含んでおり、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。このように電解液を用いるようにすれば、高いイオン伝導率を得ることができるので好ましい。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート,ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネートあるいはエチルメチルカーボネート等の有機溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
リチウム塩としては、例えば、LiPF6 あるいはLiClO4 が挙げられる。リチウム塩は、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
この二次電池は、例えば、正極23、電解液が含浸されたセパレータ24および負極10を積層して、外装缶22と外装カップ21との中に入れ、それらをかしめることにより製造することができる。
【0031】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極23からリチウムイオンが離脱し、電解液を介して負極10に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極10からリチウムイオンが離脱し、電解液を介して正極23に吸蔵される。その際、負極10は、スズと、第1元素と、第2元素とを含み、その濃度が厚み方向において変化しているので、膨張収縮による形状崩壊およびそれに伴う電解質との副反応が抑制される。
【0032】
本実施の形態に係る負極10は、次のようにして二次電池に用いてもよい。
【0033】
図4は、その二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた電極巻回体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
【0034】
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0035】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と電極巻回体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム33が挿入されている。密着フィルム33は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0036】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0037】
図5は、図4に示した電極巻回体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。電極巻回体30は、負極10と正極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0038】
正極34は、正極集電体34Aの片面あるいは両面に正極活物質層34Bが設けられた構造を有している。負極10も、負極集電体11の片面あるいは両面に負極活物質層12が設けられた構造を有している。正極集電体34A,正極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上述した正極集電体23A,正極活物質層23Bおよびセパレータ24と同様である。
【0039】
電解質層36は、保持体に電解液を保持させたいわゆるゲル状の電解質により構成されている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液あるいは高温における膨れを防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩)の構成は、図4に示したコイン型の二次電池と同様である。
【0040】
保持体は、例えば高分子化合物により構成されている。高分子化合物としては、例えばブロック共重合体であるポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0041】
この二次電池は例えば次のようにして製造することができる。
【0042】
まず、正極34および負極10のそれぞれに、保持体に電解液が保持された電解質層36を形成する。そののち、正極集電体34Aの端部に正極リード31を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体11の端部に負極リード32を溶接などにより取り付ける。
【0043】
次いで、電解質層36が形成された正極34と負極10とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して電極巻回体30を形成する。
【0044】
最後に、例えば、外装部材40の間に電極巻回体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム33を挿入する。これにより、図4,5に示した二次電池が完成する。
【0045】
この二次電池の作用および効果は、図3に示したコイン型の二次電池と同様である。
【0046】
このように本実施の形態によれば、負極10が、スズと、第1元素と、第2元素とを含み、その濃度が厚み方向において変化するようにしたので、膨張収縮による形状崩壊およびそれに伴う電解質との副反応を抑制することができる。よって、充放電による電池容量の減少を抑制することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る負極50の概略構成を表すものである。負極50は、負極活物質層12の表面に、酸素化合物またはハロゲン化合物を含む表面層51を有することを除き、第1の実施の形態と同様の構成を有している。よって、同一の構成要素には同一の符号を付し、同一部分についての詳細な説明は省略する。
【0048】
表面層51は、負極50における電解質の副反応をより抑制するためのものである。酸素化合物としては、酸化リチウム(Li2 O)、炭酸リチウム(Li2 CO3 )または酸化スズ(Sn3 4 ,SnO,SnO2 )などが挙げられ、ハロゲン化合物としては、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、またはヨウ化リチウム(LiI)などが挙げられる。
【0049】
表面層51は、1種類の酸素化合物またはハロゲン化合物を含んでいてもよいが、2種以上の酸素化合物またはハロゲン化合物を含んでいてもよく、酸素化合物とハロゲン化合物とを共に含んでいてもよい。また、表面層51は単層構造でも多層構造でもよい。特に、ハロゲン化合物を含有するようにすれば、電解質の反応をより抑制することができ、高温保存特性などを向上させることができるので好ましい。表面層51の厚みは10nm以上であればより高い効果が得られるので好ましい。
【0050】
なお、表面層51は、負極活物質層12との間において、それらの構成元素が互いに拡散していてもよい。
【0051】
表面層51は、例えば、気相法、液相法、焼成法、または溶射法により形成することができ、それらを組み合わせてもよい。また、負極活物質層12を形成したのち、その表面を空気酸化させたり、電解液に浸漬して電気化学的に反応させることにより形成するようにしてもよい。
【0052】
この負極50は、第1の実施の形態と同様にして二次電池に用いられ、同様の作用および効果を有する。特に、負極50では、表面層51を有するようにしたので、電解質の副反応をより抑制することができ、高温保存特性などを向上させることができる。
【実施例】
【0053】
更に、本発明の具体的な実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0054】
(実施例1−1〜1−8)
図1に示した負極10を作製した。まず、表面粗さ(算術平均粗さRa)が0.05μm、厚みが15μmの銅箔を負極集電体11として用い、この負極集電体11の表面に真空蒸着法により厚み5μmのスズの層12Aを形成した。次いで、スズの層12Aの上に、真空蒸着法により第2元素であるコバルトの層12Cを形成した。その際、表1に示したように実施例1−1〜1−8でコバルトの層12Cの厚みを0.03μm,0.05μm,0.1μm,0.5μm,1μmまたは2μmと変化させ、コバルトの含有量を変化させた。続いて、コバルトの層12Cの上に、真空蒸着法により第1元素である亜鉛の層12Bを形成した。その際、表1に示したように実施例1−1〜1−8で亜鉛の層12Bの厚みを0.03μm,0.05μm,0.1μm,0.5μm,1μm,1.5μm,2μmまたは2.7μmと変化させ、亜鉛の含有量を変化させた。そののち、真空雰囲気中において200℃で30時間熱処理し、実施例1−1〜1−8の負極10を得た。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例1−1〜1−8に対する比較例1−1として、コバルトの層および亜鉛の層を形成しないことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして負極を作製した。また、比較例1−2〜1−6として、コバルトの層を形成せず、亜鉛の層の厚み表1に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして負極を作製した。更に、比較例1−7〜1−12として、亜鉛の層を形成せず、コバルトの層の厚みを表1に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして負極を作製した。
【0057】
作製した実施例1−1〜1−8の負極10について、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;X線光電子分光法),AES( Auger Electron Spectroscopy;オージェ電子分光法),EDX(Energy Dispersive X-Ray Spectroscope;エネルギー分散型X線検出器),TEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)およびXRD( X-Ray Diffraction;X線回折法)により分析したところ、負極集電体11の構成元素が負極活物質層12に拡散していることが確認された。また、負極活物質層12においては、スズとコバルトと亜鉛とが相互に拡散していることが確認された。比較例1−1〜1−12の負極についても調べたところ、同様の結果が確認された。
【0058】
更に、作製した実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−12の負極10について、成膜中に水晶発振式成膜コントローラで測定した各層12A,12B,12Cの厚みと構成元素の理論密度とから負極活物質層12における各元素の含有量を算出した。その結果を表1に示す。
【0059】
次いで、作製した実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−12の負極10を用いて、図3に示した直径20mm、厚み1.6mmのコイン型の二次電池を作製した。その際、正極23は、平均粒径5μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2 )粉末とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデンとを92:3:5の質量比で混合し、これをN−メチル−2−ピロリドン中に投入してスラリー状とし、厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体23Aに塗布して乾燥させたのちプレスを行って正極活物質層23Bを形成することにより作製した。電解液には、エチレンカーボネート40質量%とジメチルカーボネート60質量%とを混合した溶媒に、LiPF6 を1.0mol/lとなるように溶解させたものを用いた。セパレータ24には厚み25μmのポリプロピレン製微多孔膜を用いた。
【0060】
作製した実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−12の二次電池について、上限電圧4.2V、電流密度1mA/cm2 の条件で定電流定電圧充電を行ったのち、電流密度1mA/cm2 、終止電圧2.5Vの条件で定電流放電を行うという充放電を繰り返し、初期放電容量を100%として15サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を表1および図7,8に示す。図7は横軸を亜鉛の含有量、縦軸を容量維持率とし、コバルトを含む実施例1−1〜1−8とコバルトを含まない比較例1−1〜1−6とを比較して表したものである。図8は横軸をコバルトの含有量、縦軸を容量維持率とし、亜鉛を含む実施例1−1〜1−8と亜鉛を含まない比較例1−1,1−7〜1−12とを比較して表したものである。
【0061】
表1および図7,8から分かるように、実施例1−1〜1−8によれば、比較例1−1〜1−12に比べて高い容量維持率が得られた。すなわち、スズと第1元素と第2元素とを含み、それらの濃度が厚み方向において変化するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0062】
(実施例2−1,2−2)
実施例2−1として、負極集電体11の上にコバルトの層12C、亜鉛の層12Bおよびスズの層12Aをこの順に積層したことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極10および二次電池を作成した。また、実施例2−2として、負極集電体11の上にスズの層12A、亜鉛の層12Bおよびコバルトの層12Cをこの順に積層したことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極10および二次電池を作成した。実施例2−1,2−2の負極10についても実施例1−5と同様にして分析したところ、負極集電体11の構成元素が負極活物質層12に拡散していることが確認され、負極活物質層12においては、スズとコバルトと亜鉛とが相互に拡散していることが確認された。
【0063】
また、実施例2−1,2−2の二次電池についても、実施例 1−5 と同様にして充放電を行い、15サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を実施例 1−5 および比較例1−1,1−5,1−9の結果と合わせて表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2から分かるように、実施例2−1,2−2についても、実施例1−5と同様に、比較例に比べて高い容量維持率が得られた。すなわち、スズの層12A、第1元素の層12Bおよび第2元素の層12Cの積層の順番を変えても、すなわちスズ、第1元素および第2元素の濃度変化の順番が変わっても同様の効果を得られることが分かった。
【0066】
(実施例3−1〜3−4)
負極集電体11の上に厚み5μmのスズの層12A、厚み1.0μmの亜鉛の層12Bおよび厚み0.3μmの第2元素の層12Cをこの順に積層し、第2元素を実施例3−1〜3−4でマンガン、鉄、ニッケルまたはクロムと変えたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極10および二次電池を作成した。
【0067】
実施例3−1〜3−4の負極10についても実施例1−5と同様にして分析したところ、負極集電体11の構成元素が負極活物質層12に拡散していることが確認され、負極活物質層12においては、スズと第2元素と亜鉛とが相互に拡散していることが確認された。また、負極活物質層12における各元素の含有量についても実施例1−5と同様にして算出した。更に、実施例3−1〜3−4の二次電池についても、実施例1−5と同様にして充放電を行い、15サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を比較例1−1,1−4の結果と合わせて表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3から分かるように、実施例3−1〜3−4についても、実施例1−5と同様に、比較例に比べて高い容量維持率が得られた。すなわち、第2元素としてマンガン、鉄、ニッケルまたはクロムを用いても同様の効果を得られることが分かった。
【0070】
(実施例4−1〜4−5)
負極集電体11の上に厚み5μmのスズの層12A、厚み1.0μmの第1元素の12Bおよび厚み0.3μmのコバルトの層12Cをこの順に積層し、第1元素を実施例4−1〜4−5で銀、アンチモン、インジウム、アルミニウムまたは鉛と変えたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極10および二次電池を作成した。
【0071】
実施例4−1〜4−5の負極10についても実施例1−5と同様にして分析したところ、負極集電体11の構成元素が負極活物質層12に拡散していることが確認され、負極活物質層12においては、スズとコバルトと第1元素とが相互に拡散していることが確認された。また、負極活物質層12における各元素の含有量についても実施例1−5と同様にして算出した。更に、実施例4−1〜4−5の二次電池についても、実施例1−5と同様にして充放電を行い、15サイクル目の容量維持率を求めた。その結果を比較例1−1,1−8の結果と合わせて表4に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
表4から分かるように、実施例4−1〜4−5についても、実施例1−5と同様に、比較例に比べて高い容量維持率が得られた。すなわち、第1元素としてアルミニウム、銀、インジウム、アンチモンまたは鉛を用いても同様の効果を得られることが分かった。
【0074】
(実施例5−1〜5−8)
図6に示した負極50を作製した。まず、実施例1−5と同様にして、負極集電体11の上に、厚み5μmのスズの層12A、厚み0.5μmのコバルトの層12Cおよび厚み1.5μmの亜鉛の層12Bをこの順に積層した。次いで、その上に、真空蒸着法によりスズ酸化物またはリチウム−酸素化合物により表面層51を形成した。その際、表5に示したように実施例5−1〜5−8で表面層51の厚みを10nm、100nm、300nm、または1μmと変化させた。そののち、真空雰囲気中において200℃で30時間熱処理し、実施例5−1〜5−8の負極50を得た。なお、スズ酸化物はSnOとSnO2 とSn3 4 との混合物であり、リチウム−酸素化合物はLi2 OとLi2 CO3 との混合物である。
【0075】
作製した実施例5−1〜5−8の二次電池について、上限電圧4.2V、電流密度1mA/cm2 の定電流定電圧充電と電流密度1mA/cm2 、終止電圧2.5Vの定電流放電とを1サイクル行い、同一の条件で2サイクル目の定電流定電圧充電を行ったのち、40℃、60℃または80℃の恒温槽に7日間保存し、同一の条件で2サイクル目の定電流放電を行った。1サイクル目の放電容量を100%として高温保存後の2サイクル目の容量維持率を求めた。また、実施例1−5の二次電池についても同様にして高温保存後の容量維持率を求めた。それらの結果を表5に示す。
【0076】
【表5】

【0077】
表5から分かるように、実施例5−1〜5−8によれば、実施例1−5よりも高温保存特性を向上させることができた。すなわち、酸素化合物よりなる表面層51を設けるようにすれば、高温においても電解質の反応を抑制することができ、高温保存特性を向上させることができることが分かった。
【0078】
(実施例6−1〜6−12)
表面層51の材料および厚みを表6に示したように変えたことを除き、他は実施例5−1〜5−8と同様にして負極50および二次電池を作製した。その際、実施例6−1〜6−4では表面層51をフッ化リチウムにより形成し、実施例6−5〜6−8では塩化リチウムにより形成し、実施例6−9〜6−12ではヨウ化リチウムにより形成し、厚みを10nm、100nm、300nm、または1μmと変化させた。表面層51は実施例5−1〜5−8と同様に真空蒸着法により形成した。作製した実施例6−1〜6−12の二次電池についても、実施例5−1〜5−8と同様にして高温保存後の容量維持率を求めた。それらの結果を実施例1−5の結果と共に表6に示す。
【0079】
【表6】

【0080】
表6から分かるように、実施例6−1〜6−12によれば、実施例1−5よりも高温保存特性を向上させることができた。すなわち、ハロゲン化合物よりなる表面層51を設けるようにしても、高温保存特性を向上させることができることが分かった。
【0081】
(実施例7―1〜7−9)
表面層51として、酸素化合物層とハロゲン化合物層とを形成したことを除き、他は実施例5−1〜5−8と同様にして負極50および二次電池を作製した。その際、酸素化合物およびハロゲン化合物の材料および各層の厚みは実施例7−1〜7−9で表7に示したように変化させた。なお、酸素化合物のスズ酸化物はSnOとSnO2 とSn3 4 との混合物であり、リチウム−酸素化合物はLi2 OとLi2 CO3 との混合物である。作製した実施例7−1〜7−9の二次電池についても、実施例5−1〜5−8と同様にして高温保存後の容量維持率を求めた。それらの結果を実施例1−5,5−2,5−6,6−2,6−6,6−10と共に表7に示す。
【0082】
【表7】

【0083】
表7から分かるように、実施例7−1〜7−9によれば、表面層を形成しなかった実施例1−5、および酸素化合物層またはハロゲン化合物層のいずれかを形成した実施例5−2,5−6,6−2,6−6,6−10よりも高温保存特性を向上させることができた。また、2種以上の酸素化合物またはハロゲン化合物を用いた実施例7−7〜7−9によればより高い効果を得ることができた。
【0084】
すなわち、酸素化合物とハロゲン化合物とを組み合わせることにより、または2種以上の酸素化合物またはハロゲン化合物を組み合わせることにより、高温保存特性をより向上させることができることが分かった。
【0085】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、液状の電解質である電解液、またはいわゆるゲル状の電解質を用いる場合について説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0086】
なお、固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。高分子固体電解質の高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはリン酸リチウムなどを含むもの用いることができる。
【0087】
また、上記実施の形態および実施例では、負極集電体11に負極活物質層12を形成するようにしたが、負極集電体と負極活物質層との間に他の層を形成するようにしてもよい。
【0088】
更に、上記実施の形態および実施例では、コイン型または巻回ラミネート型の二次電池について説明したが、本発明は、円筒型,角型,ボタン型,薄型,大型あるいは積層ラミネート型などの他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る負極の構成を簡略化して表す断面図である。
【図2】図1に示した負極の製造工程を表す断面図である。
【図3】図1に示した負極を用いた二次電池の構成を表す断面図である。
【図4】図1に示した負極を用いた他の二次電池の構成を表す断面図である。
【図5】図4に示した二次電池のI−I線に沿った構造を表す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る負極の構成を簡略化して表す断面図である。
【図7】亜鉛の含有量と容量維持率との関係を表す特性図である。
【図8】コバルトの含有量と容量維持率との関係を表す特性図である。
【符号の説明】
【0090】
10,50…負極、11…負極集電体、12…負極活物質層、21…外装カップ、22…外装缶、23,34…正極、23A,34A…正極集電体、23B,34B…正極活物質層、24,35…セパレータ、25…ガスケット、30…電極巻回体、31…正極リード、32…負極リード、33…密着フィルム、36…電解質層、37…保護テープ、40…外装部材、51…表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを備え、
前記負極活物質層は、スズ(Sn)と、スズ以外でリチウム(Li)と電気化学的に反応可能な第1元素と、前記負極集電体の構成元素以外でリチウムと電気化学的に反応しない第2元素とを含み、それらの濃度が厚み方向において連続的あるいは断続的に変化していることを特徴とする負極。
【請求項2】
前記負極集電体の構成元素が前記負極活物質層に拡散していることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項3】
前記負極活物質層は、気相法,液相法,焼成法および溶射法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成されたことを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項4】
前記第1元素は、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項5】
前記第2元素は、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項6】
前記負極集電体は、銅(Cu)、鉄、ニッケルおよびチタン(Ti)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項7】
前記負極活物質層におけるスズの含有量は45原子%以上96原子%以下であり、第1元素の含有量は2原子%以上48原子%以下であり、第2元素の含有量は2原子%以上48%以下であることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項8】
更に、前記負極活物質層の表面に、酸素化合物およびハロゲン化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む表面層を有することを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項9】
前記表面層は、酸素化合物として、酸化リチウム,炭酸リチウムおよび酸化スズからなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項8記載の負極。
【請求項10】
前記表面層は、ハロゲン化合物として、フッ化リチウム,塩化リチウムおよびヨウ化リチウムからなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項8記載の負極。
【請求項11】
前記表面層の厚みは、10nm以上であることを特徴とする請求項8記載の負極。
【請求項12】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを備え、
前記負極活物質層は、スズ(Sn)と、スズ以外でリチウム(Li)と電気化学的に反応可能な第1元素と、前記負極集電体の構成元素以外でリチウムと電気化学的に反応しない第2元素とを含み、それらの濃度が厚み方向において連続的あるいは断続的に変化している
ことを特徴とする電池。
【請求項13】
前記負極集電体の構成元素が前記負極活物質層に拡散していることを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項14】
前記負極活物質層は、気相法,液相法,焼成法および溶射法からなる群のうちの少なくとも1つの方法により形成されたことを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項15】
前記第1元素は、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)および鉛(Pb)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項16】
前記第2元素は、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co),ニッケル(Ni)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項17】
前記負極集電体は、銅(Cu)、鉄、ニッケルおよびチタン(Ti)からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項18】
前記負極活物質層におけるスズの含有量は45原子%以上96原子%以下であり、第1元素の含有量は2原子%以上48原子%以下であり、第2元素の含有量は2原子%以上48%以下であることを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項19】
前記負極は、更に、前記負極活物質層の表面に、酸素化合物およびハロゲン化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む表面層を有することを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項20】
前記表面層は、酸素化合物として、酸化リチウム,炭酸リチウムおよび酸化スズからなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項19記載の電池。
【請求項21】
前記表面層は、ハロゲン化合物として、フッ化リチウム,塩化リチウムおよびヨウ化リチウムからなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項19記載の電池。
【請求項22】
前記表面層の厚みは、10nm以上であることを特徴とする請求項19記載の負極。
【請求項23】
前記電解質は、保持体と、溶媒と、電解質塩とを含むことを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項24】
更に、前記正極、負極および電解質を収容するフィルム状の外装部材を備えたことを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項25】
前記正極は、リチウム含有金属複合酸化物を含むことを特徴とする請求項12記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−59712(P2006−59712A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241213(P2004−241213)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】