説明

負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置

【課題】負極性負スプレッドコロナ放電極の構造などを改善してコロナ放電空間を大幅に広大化して大流量のガスを高効率で処理する負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置を提供する。
【解決手段】負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置において、接地電極の中間に位置し処理ガスの流動方向に平行または直交して長尺平板の負放電極本体を配置し、前記負放電極本体の横断面の外周面形状を扁平、放物、円形等の曲面形状としその長軸方向又は短軸方向又は径方向の両側に突出する複数の直線型放電極を平行配列した(串型の放電極)。前記各直線型放電極は先端を尖頭型、半球型、横断面型等又は輪郭の中空パイプにし、また負放電極本体と直線型放電極はガス供給噴射可能な連通中空にし、場合によっては、直線型放電極の先端の近傍周囲に網目型接地電極を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電プラズマによるガス処理効率および処理エネルギー効率を格段に改善して,さらにウィルスなどの滅菌にも効果を示す負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コロナ放電装置を利用した装置として例えば、空気清浄装置がある。これは、帯電部と集塵部とを備える。帯電部は、平行に置かれた放電極と平板電極との間に直流の高電圧を印加してコロナ放電を発生させて、電極間に流される空気をイオン化し、これに含まれる浮遊粒子を単極性に帯電させる。集塵部は、平行に置かれた集塵電極と接地電極間に直流の高電圧を加えて静電界を形成し、集塵電極が帯電部で帯電された浮遊粒子をクーロン力により吸引して捕集する。これにより、帯電部の上流の入口から送風機等により浮遊粒子を含有した汚染空気を供給すると、集塵部の下流の出口から浮遊粒子の除かれた清浄空気を取り出すことができる。
このように利用されるコロナ放電装置は、一般に正極性コロナ放電または、負極性コロナ放電によるものである。
【0003】
一方、大気圧放電プラズマによるオゾン発生,NOx処理,揮発性有機物の処理を目的とした空気浄化およびウィスル滅菌処理では,高エネルギーの電子と高速の電子衝突により生成される活性種(ラジカル)が主要な役割を担う。そのため,放電プラズマの「電流値」,「エネルギー」,および「電離発光領域」の3パラメータを最適化して,有害ガス状部物質処理率,処理エネルギー効率などの処理性能を向上させることが重要である。
産業界では誘電体バリア放電,沿面放電,コロナ放電などの種々の大気圧放電プラズマが使用されている。それぞれの放電プラズマには,長所と短所があるのが現状であるが,ほとんどの放電プラズマはこの20年間で多くの研究者により詳しく調べられている。放電プラズマ化学反応を利用するのに適した新しい放電プラズマ形態を応用面から開発するのは産業上にもとても重要である。
【0004】
而して、負コロナ放電装置ではこれまで主に前記の空気清浄装置、電気集じん装置、イオナイザー等で、粒子または誘電体の荷電・帯電に使われることが多く,放電プラズマ化学反応に適したコロナ放電ではないとされてきた。
負極性コロナ放電は、正極性ストリーマ放電に比較して、放電プラズマ反応の処理率、エネルギー効率が低いとされてきた。これは,負極性コロナ放電の研究分野では放電極の近傍の小さな電離域しかないトリチェルパルスやブラシコロナが主に研究されてきたためである。
本発明者は、放電極から接地電極まで電離発生領域の広がった負コロナ放電を負極性スプレッドコロナ放電と名づけて放電プラズマ化学処理装置に利用するものである。これらの負コロナ放電を放電プラズマ化学処理装置として応用した例は無かった。
そこで本発明者等は、負極性スプレッドコロナ放電はグロー状の放電が接地電極まで広がる電離発光領域を有し,ほぼパルスレス状態で定常的に存在していて,オゾン発生,NOx処理,揮発性有機物の処理を目的とした大気圧放電プラズマとして有意な効果を有することを確認した。
他の放電プラズマ装置と比較するとそれぞれ長所と短所があるが,これまでにない新しい負スプレッドコロナ放電を応用すると,十分使用法,使用条件によっては他の大気圧放電プラズマと競合できる。特に負極性スプレッドコロナ放電装置は,他の大気圧放電プラズマと比較して優れており,誘電体を使わないため放電空間を広くとることができ,圧損が少なく流量がおおきくできること,正極性ストリーマ放電に比べて安定で,パルスレスの定常な放電プラズマを容易に作ることができること,きわめて放電による雑音が少ないことなど多くの長所を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、負極性負コロナ放電極の構造などを改善してコロナ放電空間を大幅に拡張して大流量のガスを高効率で処理する負極性スプレッドコロナ放電装置を提供し、以って負極性スプレッドコロナ放電装置の利点を最大限に活かし放電プラズマ化学反応に用いることを有利に可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を満足する画期的なものでありその技術的特徴は、次の(1)〜(3)の通りである。
(1)、負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置において、接地電極間に位置し処理ガスの流動方向に平行または直交して長尺平板の負放電極本体を配置し、前記負放電極本体の横断面の外周面形状を扁平、放物、円形等の曲面形状としその長軸方向又は短軸方向或いは径方向の両側に突出する複数の直線型放電極を平行配列した負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
(2)、前記各直線型放電極の先端を尖頭型にしたことを特徴とする前記(1)に記載の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
(3)、前記各直線型放電極を中空パイプにしたことを特徴とする前記(1)に記載の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
(4)、前記負放電極本体を中空にして中空パイプの直線型放電極に連通しその先端からガス噴射可能にしたことを特徴とする前記(3)に記載の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
(5)、前記直線型放電極の先端の近傍周囲を覆う単一湾曲型又は多点湾曲型、衝立型、お椀網目型接地電極を配置した前記(1)〜(4)に記載の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、コロナ放電空間を大幅に拡張して大流量のガスを高効率で処理し、以って負極性スプレッドコロナ放電の利点を最大限に活かし放電プラズマ化学反応に用いることを有利に可能にした負極性スプレッドコロナ放電装置である。
すなわち、前記平行配列した複数の直線型放電極は、消耗して後退しても接地電極との放電距離に変化がなく安定維持し,その寿命を大幅に向上させ,しかも電離領域を図2に紹介のように広大に確保して,ガス処理効率を格段に高めることができた。
これにより、これまでにない高いVOCの処理効率.オゾン発生効率,ウィルス,菌,カビの殺菌能力を得ることができた。
【0008】
<利用形態>
本発明の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、上述の作用効果により次のように用途が広く世界的市場性もある。
本発明の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、電子、ラジカルを発生させて、鶏舎の空気清浄機に付け,新型インフルエンザウィルスのみを殺菌することに応用が可能である。
また、企業・学校のビル空調システムあるいは家庭のエアコンに利用して、ウィルス、カビ、花粉、悪臭等を除去することができる。そして、水やカテキンをノズル型の直線型放電極から噴出すれば滅菌効果を格段に向上させることができる。
更に、処理する排ガスが特定されている場合は,分解する反応性ガス種をノズル型の直線型放電極から噴出することができ、また電気的負性ガスを導入して放電作用をより安定化させることができる.
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、小電流・高電圧下でも安定な負極性スプレッドコロナを利用する.安価な直流電源で生成可能であるが,交流・パルスでもよい.
本発明の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置において、図1に負極性コロナ放電極の代表概念図を示し、図2にそのコロナ放電発生状況を示すように、長尺平板の負放電極本体(100,200,300)は、接地電極(010、020、030)の中間に位置し処理ガスの流動方向に平行または直交して配置し、負放電極本体の横断面の外周面形状を扁平、放物、円形等の曲面形状としその長軸方向、短軸方向、径方向の両側に中空パイプのノズル型,棒型,針型等の複数本の直線型放電極(110,210,310)を突出させて、平行配列する。ノズル型にすると電離領域に選択的に処理ガスを導入できる.直線型放電極の材質はステンレス,タングステン、炭素等のいずれでもよい.炭素にした場合は、放電消耗時に微量のカーボン微粒子又はCO2となるのみで,装置寿命低減や健康被害をもたらす粉塵を出さない.
これらにより、図2に示すように、直線型放電極の先端と両接地電極間のコロナ放電は、大幅に拡張された空間に発生している。
本発明の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置において、前記網目型接地電極は、前記接地電極本体と同一の材質にして、処理ガスの流通を阻害しない網目構造、例えばハニカム構造体、碁盤目配線体などを用いて半円曲面に成型し、直線型放電極の先端を接地電極と等距離の半径にしで覆うことにより、コロナ放電空間を更に大幅に拡張して大流量のガスを高効率で処理するものである。
【実施例1】
【0010】
実施例1の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、図2に示し、対面間隔20mmの一対の接地電極010の中間に位置し処理ガスの流動方向に直交して長尺平板の負放電極本体100(長さ(長軸)185mm、幅(短軸)8mm)を配置し、前記負放電極本体のガス接触表面は角を無くし、横断面の外周面形状を扁平、放物、円形等の曲面形状としその長軸方向、短軸方向、径方向の両側に直径0.1〜0.5mmの複数のタングステン製直線型放電極110を負放電極本体の左右から5mmずつ突出させ,5〜30mm間隔(突出長さの1〜10倍)で平行に配列し、前記各直線型放電極110の先端111を横断面型,尖頭型,半球型、輪郭型(パイプ先端形状)などにした負極性スプレッドコロナ放電装置である。直線型放電極110は交換可能に嵌入や螺合などにより接続してある。
上記各種サイズ、取り合い寸法等は、以下の実施例も共通する。
【実施例2】
【0011】
実施例2の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、図4に示し、接地電極020の中間に位置し処理ガスの流動方向に直交して長尺平板の負放電極本体200を配置し、前記負放電極本体200の横断面の外周面形状を扁平、放物、円形等の曲面形状としその長軸方向、短軸方向、径方向の両側に突出する複数の直線型放電極210を平行配列し、前記各直線型放電極210のみを外径1.5mm内径0.7mmにしたステンレス製中空パイプ211にした負極性スプレッドコロナ放電装置である。直線型放電極210は交換可能に嵌入や螺合などにより接続してある。
【実施例3】
【0012】
実施例3の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、図5に示し、接地電極030の中間に位置し処理ガスの流動方向に直交して長尺平板の負放電極本体300を配置し、前記負放電極本体300の横断面の外周面形状を扁平、放物、円形等の曲面形状としその長軸方向、短軸方向、径方向の両側に、突出し外径1.5mm内径0.7mmの中空311のステンレス製パイプにした複数の直線型放電極310を平行配列し、前記各直線型放電極310と前記負放電極本体300とを連通させ直線型放電極310の先端からガス320噴射可能にした負極性スプレッドコロナ放電装置である。直線型放電極310は交換可能に嵌入や螺合などにより接続してある。
【実施例4】
【0013】
実施例4の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、図6に示し、実施例1から実施例3の負極性スプレッドコロナ放電装置を対象にして、処理ガスの流動方向に直交する長尺平板の負放電極本体(100、200、300)の両側に設けた直線型放電極(110、210、310)の先端を接地電極(010、020、030)と等距離10mmの半径Rにした半円曲面で覆う網目型接地電極400を配置した負極性スプレッドコロナ放電装置である。網目型接地電極400は直径0.7mmの金属線で3mm方眼に編んだ碁盤目配線体である。
【実施例5】
【0014】
実施例5の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、図7に示し、接地電極(010、020、030)の中間にそれと平行に長尺平板の負放電極本体(100、200、300)を処理ガスの流動方向に沿って配置したもので、負放電極本体(100、200、300)と直線型放電極(110、210、310)自体の構成は、実施例1、実施例2、実施例3に紹介のいずれかをそのまま適用した負極性スプレッドコロナ放電装置である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置は、前記のように企業・学校のビル空調システムあるいは家庭、鶏舎の空気清浄機に活用して、ウィルス殺菌・滅菌、カビ、花粉、悪臭等の除去清浄を高効率で行うもので、用途が広く世界的市場性もありこの種産業に多大な貢献を呈するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置における負極性コロナ放電極の代表概念図斜視図を示す。
【図2】コロナ放電発生状況を示す写真である。
【図3】実施例1の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置を示す側面図である。
【図4】実施例2の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置を示す側面図である。
【図5】実施例3の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置を示す側面図である。
【図6】実施例4の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置を示す側面図である。
【図7】実施例5の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置を示す側面図(1)と、(1)の矢視A−Aからの平面図(2)である。
【符号の説明】
【0017】
010、020、030 接地電極
100、200、300 負放電極本体
110、210、310 直線型放電極
400 網目型接地電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置において、接地電極間に位置し処理ガスの流動方向に平行または直交して長尺平板の負放電極本体を配置し、前記負放電極本体の横断面の外周面形状を扁平、放物、円形等の曲面形状としその長軸方向又は短軸方向或いは径方向の両側に突出する複数の直線型放電極を平行配列した負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
【請求項2】
前記直線型放電極の先端を尖頭型にしたことを特徴とする請求項1記載の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
【請求項3】
前記直線型放電極を中空パイプにしたことを特徴とする請求項1記載の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
【請求項4】
前記負放電極本体を中空にして中空パイプの直線型放電極に連通しその先端からガス噴射可能にしたことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。
【請求項5】
前記直線型放電極の先端の近傍周囲を覆う網目型接地電極を配置した請求項1〜請求項4に記載の負極性スプレッドコロナ放電プラズマ化学処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104558(P2011−104558A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264767(P2009−264767)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】