貧血検出、監視、および治療用のシステム
埋込可能な状態で患者の貧血状態を判定し、貧血を治療するためのシステムが記述される。血液粘度を一つ以上の閾値と比較することで、患者の貧血状態を判定する。電気刺激治療、もしくは患者の腎臓または視床下部に送出される薬剤の投与の形態の治療は、貧血状態に基づき制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、貧血の検出と治療に関する。
【背景技術】
【0002】
貧血は、赤血球の全容量、および/または赤血球内のヘモグロビンの量が、正常値よりも低くなったときに発生する血液疾患である。貧血は、全身疲労、衰弱、集中の妨げ、息切れ等の症状を引き起こす。心不全(HF)は、貧血を伴う一般的な共存疾患である。重篤な貧血は、心拍出量を増加させようと身体に促し、これは心不全に至る虞がある。一方、重症の心不全は、心不全代償不全に至り、これは血液内の体液過剰を発生させ、それに応じて赤血球が増加することなく血漿を増加させ、さらに貧血をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/025459号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/119907号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lacombe,Catherineなどの「傍尿細胞は、マウス低酸素性腎臓の赤血球促進因子合成の部位である」(Peritubular cells are the site of erythropoietin synthesis in the murine hypoxic kidney)、J.Clin.Invest.Vol.81,1988年2月、620〜623。
【非特許文献2】Tilmann Dittingなどの「腎交感神経は、ラット内の一過性出血後に赤血球促進因子の血漿レベルを調節する」(Renal sympothtic nerves modulates erythropoietin plasma levels after transient hemorrhage in rats)、Am J Physol Renal Physiol 293:F1099−F1106,2007。
【非特許文献3】Segal,Rらの「ラット内の赤血球生成および破壊への視床下部の電気刺激の影響(The effect of electrical stimulation of the hypothalamus on red cell production and destruction in the rat)」、Isr J Med Sci,1971年7〜8月;7(7):1017〜24。
【非特許文献4】Medado P,Izak G,Feldman S.の「ラット内の赤血球生成への中枢神経系の電気刺激の影響、II.赤血球生成を増大可能な特定の脳構造の場所(The effect of electrical stimulation of the central nervous system on erythropoiesis in the rat II. Localization of a specific brain structure capable of enhancing red cell production)」、J Lab Clin Med 1967年5月;69(5):776〜86。
【非特許文献5】Segal,R.,Izak G,Feldman S.の「ラットの後方視床下部の長期の電気刺激後の増大された赤血球分離(Augmented red cell sequenstration after prolonged electrical stimulation of the posterior hypothalamus in rats.)」、J Reticuloendothel Soc 1971 3月;9(3):225〜36。
【非特許文献6】Halvorsen,S.の「無傷および腎摘出したウサギの赤血球生成および赤血球生成促進因子の生成への視床下部刺激の影響(Effects of hypothalamic stimulation on erythropoiesis and on the production of erythropoiesis−stimulating factors in intact and nephrectomized rabbits)」、Ann N Y Acad Sci,1968年3月29日;149(1):88〜93。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貧血は、たとえば鉄分補給食品、ビタミンB12、葉酸、組換え赤血球生成因子、および/またはエポエチンおよび/またはダーベポエチン等の赤血球生成促進剤を投与すること等、薬学的に治療されることが多い。赤血球生成促進剤は最終的には、赤血球の生成の増加を促進させる。赤血球生成促進剤、および/または他の薬剤の投与は、貧血の治療には有益であり、同時に心不全の症状を改善させるかもしれないが、このような治療は、血栓塞栓症の危険性を増大させる虞がある。重症の貧血に対する他の治療には輸血が含まれるが、これも患者に危険性をもたらす。
【0006】
貧血は、ヘモグロビン(赤血球の鉄保有部)を測定することを含む、患者外部の血液検査を行うことによって、またはヘマトクリット(所定量の血液内の赤血球の容量)を判定することによって、最も一般的に検出される。貧血評価は通常、臨床的状況で実行されるので、検査に数日または数週間かかる虞がある。検査の間は、治療を適宜行えないようになる。
【0007】
上記の理由、および本明細書を読めば、当業者には明らかになる下記の理由のため、当分野では、特に心不全を伴う患者の場合、貧血を検出し治療するための改善された方式を提供する方法およびシステムの必要性がある。本発明は、これらのおよび他の必要性を満たし、従来技術を超える他の改善を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貧血を検出し治療するシステムおよび方法を対象とする。一実施形態は、埋込可能な医学的システムを動作させる方法を含んでいる。血液粘度は、血管または心臓内に埋込むように構成されたセンサを用いることで検出される。血液粘度は、一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と比較される。患者の貧血状態は、一つ以上の閾値と血液粘度との比較に基づき判定される。患者の腎臓または視床下部の一方または両方に送出される電気刺激は、貧血状態に少なくとも部分的に基づき制御される。
【0009】
いくつかの実装形態によると、貧血状態は時間経過傾向を生成し、格納することができる。電気刺激治療を制御するために、貧血状態の増大または減少の速度を用いることもできる。
【0010】
検出された血液温度を用いることで、血液粘度を温度補償することもできる。
貧血状態の傾向に基づき、心不全の進行または回復を評価することもできる。貧血状態の傾向に基づき、心不全治療を修正することもできる。
【0011】
貧血状態の傾向に基づき、血液希釈貧血を検出することもできる。血液希釈貧血の検出に基づき、心不全代償不全事象の開始を検出することもできる。
胸部インピーダンスを検出することもできる。心不全代償不全事象の開始を検出するために、貧血状態と共に、胸部インピーダンスを用いることもできる。
【0012】
血栓塞栓症の危険性の評価に部分的に基づき、電気刺激治療を制御することもできる。
電気刺激は、約0.1Hz〜10kHzの間の周波数を備え、約0.1V/cm〜10V/cmの電界強度を生成する信号を用いることができる。
【0013】
本発明の別の実施形態は、貧血状態を判定する医療システムを対象とする。埋込可能センサは血液粘度を検出し、この血液粘度によって変調された信号を生成する。埋込可能回路は血液粘度信号を受取り、この血液粘度を格納する。貧血モジュールは、ヘマトクリットに関連付けられた一つ以上の閾値と、血液粘度とを比較し、この比較に基づき、患者の貧血状態を判定する。貧血モジュールは、貧血状態の時間経過傾向を生成し格納することもできる。
【0014】
システムは、貧血状態の傾向に基づき心不全代償不全の開始を検出するように構成された心不全診断モジュールを含むことができる。
いくつかの実装形態によると、埋込可能回路および貧血モジュールは、埋込可能な心臓治療装置内に組込まれ、この装置は、貧血状態の傾向に基づき、心臓ペーシング治療を制御するように構成された心臓治療コントローラを含んでいる。
【0015】
貧血モジュールは、貧血状態の傾向に基づき、警告信号を生成するように構成できる。
貧血モジュールは、血栓塞栓症の危険性を評価し、血栓塞栓症の危険性に基づき、警告信号を生成できる。
【0016】
別の実施形態は、貧血を治療する埋込可能な医療システムを対象とする。医療システムは、血液粘度によって変調された信号を生成するように構成された埋込可能センサを含んでいる。貧血モジュールは、一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と、血液粘度とを比較し、この比較に基づき、患者の貧血状態を判定する。治療モジュールは、貧血状態または血液粘度に基づき、患者に治療を送出する。
【0017】
いくつかの構成では、貧血モジュールは、血栓塞栓症の危険性を評価するように構成され、治療モジュールは、血栓塞栓症の危険性に基づき、患者に治療を送出するように構成される。
【0018】
治療モジュールは、薬剤ポンプ、または腎臓または視床下部の一方または両方に電気刺激治療を送出するように構成された電気刺激器を含むことができる。治療モジュールは、心不全用の心臓再同期ペーシングを提供するように構成することもできる。
【0019】
貧血モジュールは、貧血状態に基づき、心不全代償不全の開始を検出し、心不全代償不全の開始の検出に応じて、警告信号を生成するように構成できる。
貧血モジュールは、貧血状態に基づき、警告信号を生成するように構成できる。
【0020】
血液粘度センサは、弾性センサであってもよい。
本発明の上記の概要は、本発明の各実施形態またはあらゆる実装形態を記述するものではない。本発明のより完全な理解と共に、利点および実現形態は、添付の図面と関連させながら、以降の詳細な説明および特許請求の範囲を参照することによって、明らかになり認識される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】血液粘度センサの出力に基づき、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の判定を行う方法を示すフローチャート。
【図1B】血液粘度の温度補正を含む処理を用いることで、貧血状態の判定、および/または貧血の検出を行う方法を示すフローチャート。
【図1C】血液希釈貧血の徴候に基づき、心不全代償不全を早期に警告する処理を示すフローチャート。
【図2A】貧血状態の検出、および/または監視に用いられる医療システムを示すブロック図。
【図2B】貧血、および心不全を監視する医療システムのブロック図。
【図3A】本発明の実施形態による貧血治療の処理を示すフローチャート。
【図3B】貧血監視と貧血治療の両方を提供可能な医療システムのブロック図。
【図3C】貧血治療、および心臓治療と共に、貧血監視と心不全監視を提供する医療システムを示すブロック図。
【図4】心臓内誘導部上に展開された血液粘度センサを含む医療システムを示す図。
【図5】血管内に展開された血液粘度センサを含む医療システムを示す図。
【図6】血管内に展開された無線センサを用いることで、貧血状態を監視し、患者の外部装置に通信可能なように結合された医療システムを示す図。
【図7A】血管内の粘度センサを固定するように構成された拡張可能な固定部を示す様々な図。
【図7B】血管内の粘度センサを固定するように構成された拡張可能な固定部を示す様々な図。
【図7C】血管内の粘度センサを固定するように構成された拡張可能な固定部を示す様々な図。
【図8A】血液粘度を検出するように構成された圧電表面弾性波(SAW)センサを示す図。
【図8B】血液粘度を検出するように構成されたバルク弾性波(BAW)センサを示す図。
【図9】腎臓の一方または両方、および/または心臓に電気エネルギ刺激を送出可能な医療システムを示す図。
【図10】患者の腎臓に電気エネルギ刺激を送出するように構成された医療システムを示す図。
【図11】電流、および関連の電界の形態で、対象者の腎臓へエネルギ刺激を送出することを示す図。
【図12】貧血を治療するために腎神経を刺激するように構成された医療システムを示す図。
【図13】脳の視床下部領域を電気的刺激し、貧血状態を改善、または安定化させるように構成された医療システムの図。
【図14】腎臓、腎神経、視床下部、および/または貧血の治療用の他の身体構造の刺激用のフィードバック処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、様々な修正、および代替形態に適用可能であるが、図面において一例としてその具体例を示し、以降で詳しく説明する。しかし、その意図は、説明される特定の実施形態に本発明を限定するものではないと理解される。逆に、本発明は、添付の請求項によって定義される本発明の範囲内にある全ての修正形態、等価形態、および代替形態を対象とするものとする。
【0023】
例示された実施形態の以降の説明では、その一部を構成し、本発明を実施するために用いられる様々な実施形態は、一例として示されている添付の図面を参照する。他の実施形態も可能であり、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された実施形態に構造的および機能的変更を行ってもよいと理解される。
【0024】
本発明によるシステム、装置、または方法は、本明細書に記述されている特徴、構造、
方法、またはそれらの組合せの一つ以上を含んでいてもよい。たとえば装置、またはシステムは、記述された有意な特徴、および/または処理の一つだけまたは任意の数を含むように実装される。このような装置、またはシステムは、本明細書に記述された特徴の全てを含む必要はないが、有用な構造、および/または機能性を備える選択された特徴を含むように実装されるものとする。このような装置またはシステムは、様々な治療、および/または診断機能を提供するように実装される。
【0025】
貧血の罹患率は、重症の心不全を備えている患者の50%程度である。貧血は、これらの患者が入院することになる際の重要な徴候であることが示されており、該患者は、ヘマトクリットが1%低下するごとに、死亡の危険性が3%上昇することに直面する。本発明の実施形態は、貧血の検出、貧血状態の監視、および/または貧血の治療を行うシステムおよび方法を対象とする。これらの実施形態は、心不全を同時に患っている患者に対して特に有用である。
【0026】
赤血球は、ヘモグロビン、つまり鉄含有酸素運搬金属タンパク質を含み、これは酸素を身体組織に送出する機構を提供する。貧血は、血液内のヘモグロビンの量の低下を含み、それは赤血球の容量の減少、または赤血球の酸素運搬能力の低下によって発生する虞がある。ヘモグロビンは、貧血評価用の一般的な方法である。ヘモグロビンの正常値は、年齢と性別によって変化する。ヘモグロビンの正常値は、男性の場合には約13〜18gm/dLよりも大きく、女性の場合には約12〜16gm/dLよりも大きい。ヘマトクリットもまた、赤血球に占有されている血液容量の割合を提供するので、貧血評価の有用な測定である。血液容量内の赤血球の割合(ヘマトクリット)が低下すると、それに応じて、血液容量の酸素運搬能力が低下する。低下が十分大きいと、患者は貧血になる。ヘマトクリットの正常値は、男性の場合には約45±7%よりも大きく、女性の場合には約42±5%よりも大きい。赤血球数の正常値は、男性の場合には約5〜6百万/mm2よりも大きく、女性の場合には約4〜5百万/mm2よりも大きい。ヘモグロビン濃度の正常値は、男性の場合には約13g/dlよりも大きく、女性の場合には約12g/dlよりも大きい。これらの正常な閾値よりも低い血液パラメータ値は、貧血を示す虞がある。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、貧血状態を監視し報告することを対象とする。一つ以上の血液パラメータを監視し、それらを用いることで、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の判定を行う。血液パラメータは、血液粘度、血液インピーダンス、および/または血液温度等の直接検出されるパラメータであってもよい。追加的にまたは代替的に、血液パラメータは、直接検出された血液パラメータから導出することもできる。たとえばヘマトクリットは、検出された血液粘度または血液インピーダンスから導出される血液パラメータであり、ヘモグロビン濃度および赤血球数は、レーザ散乱、および/または他の光学的測定から導出される血液パラメータである。
【0028】
一つ以上の血液パラメータは、一つ以上の完全にまたは部分的に埋込可能な埋込可能センサ、および/または一つ以上の患者外部センサを用いることで検出される。たとえば血液パラメータは、患者外部センサモジュールを用いることで、光学的技術によって測定される。外部センサモジュールは、有線を介してまたは無線で、患者インタフェース装置に結合される。患者インタフェースは、埋込可能な医療(治療または診断)装置、および/または高度患者管理(APM)サーバ等の患者外部装置にリンクできる。患者インタフェースは、患者のベッドの側らに配置することもでき、および/または測定を容易におよび頻繁に行えるように、一日中、患者が実施することができる。患者インタフェースは、画面、スピーカ、および/または振動要素を含むことができ、それらは、血液パラメータ測定を行うことが予定されているとき、聴覚的、視覚的、または振動性の警告等によって、患者に思い出させるようにするために用いられる。いくつかの構成では、患者外部センサモジュール、たとえば接着剤付きセンサモジュール等は、患者に貼り付けられ、光学的測
定を用いることで、ヘモグロビンおよびヘマトクリット等の血液パラメータを判定できる。埋込可能、および/または患者外部センサは、自動的に、および/または患者や、たとえばAPMサーバを介して患者の健康管理提供者の命令で、血液パラメータ情報を収集するために用いられる。
【0029】
いくつかの実施形態は、血液粘度または血液インピーダンスと、ヘマトクリットレベルとの間の関係に基づき、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の定量化を行う。一般に、所定温度に対して、血液粘度と血液インピーダンスは両方とも、ヘマトクリットと共に増大する。しかし、温度と共に、血液粘度およびインピーダンスのバラツキが一般に存在し、ヘマトクリットの正確な測定を曖昧にする虞がある。血液温度が既知であれば、温度バラツキに対する適切な補正を行うことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、貧血は、血液パラメータ値と閾値との比較に基づき検出される。たとえば医療装置は、現在の血液パラメータ値と、装置内にプログラムされている所定閾値とを比較できる。血液パラメータ値が閾値よりも低い(または閾値が許容可能な最大値を表す場合、閾値よりも高い)場合、患者は貧血であると断言される。いくつかの実施形態では、患者の貧血状態の判定または貧血の検出の前に、一定期間、患者に対して行われる血液パラメータ測定から、基準閾値が最初に判定される。基準閾値を最初に判定した後、以降の血液パラメータ値を基準閾値と比較する。いくつかの実施形態では、血液パラメータの変化率が、閾値の変化率と比較され、血液パラメータの変化率が閾値の変化率を超える場合、貧血と断言される。
【0031】
図1Aのフローチャートは、埋込可能な血液粘度センサの出力に基づき、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の判定を行う方法を示している。血液粘度は、たとえば下大静脈、上大静脈等の大血管内、または右心室等の心腔内に埋込まれたセンサを用いることで検出される。センサはステップS110で、血液粘度によって変調された信号を生成する。血液粘度信号は、ヘマトクリット、つまり貧血状態を示すパラメータ用の代替値として用いられる。
【0032】
血液粘度はステップS120で、一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と比較される。患者の貧血状態はステップS130で、血液粘度と閾値との比較に基づき判定される。たとえば測定された血液粘度は、ヘマトクリット範囲に関連付けられた一つ以上の閾値と比較され、測定された血液粘度がどの範囲内にあるかに基づき、貧血状態が判定される。血液粘度が、ヘマトクリットの正常値よりも低い等、ヘマトクリットの所定値に関連付けられた閾値よりも低い場合、貧血が検出される。患者の貧血状態に関連付けられた情報は、格納することもできる。たとえば格納された情報はステップS140で、貧血状態、たとえば血液粘度測定に関連付けられた範囲、貧血状態の判定に用いられる測定が行われた日時、および/または貧血が検出されたかどうか、を含むことができる。貧血状態、ヘマトクリット値、および/または血液粘度の時間に対する傾向を生成することもできる。
【0033】
血液粘度は、血液温度と共に変化する。図1Bのフローチャートによって示されている、いくつかの実装形態では、貧血状態の判定、および/または貧血の検出は、血液粘度の温度補正を含む処理を用いることで行われる。たとえば血液粘度と血液温度信号がステップS115とステップS125で、埋込可能センサによって生成される。血液粘度はステップS135で、血液温度信号を用いることで温度のバラツキに対して補正される。温度補正された血液粘度はステップS145で、ヘマトクリットレベルに関連付けられた一つ以上の閾値と比較され、ステップS155でこの比較に基づき、患者の貧血状態が判定される。温度補正された血液粘度が、正常なヘマトクリット値に関連付けられた閾値よりも低下した場合、貧血が検出される。
【0034】
心不全代償不全は、血漿の膨張を引き起こし、これは血液内の赤血球の割合を希釈し、ヘマトクリット値を低下させ、血液希釈貧血と呼ばれる状態にする。いくつかの実施形態では、図1Cのフローチャートによって示されるように、血液希釈貧血の徴候を用いることで、ステップS156で心不全代償不全を早期に警告できる。これらの実施形態では、一つ以上のセンサがステップS116で、一つ以上の血液パラメータを示す一つ以上の信号を生成する。検出される血液パラメータ、またはそれらから導出された血液パラメータは、センサ信号に基づきステップS126で測定される。検出、および/または導出された血液パラメータはステップS136で、一定期間、傾向が生成される。血液パラメータの急速な変化は、血液内の血漿容量の突然の膨張を示す虞があり、これは血液希釈貧血をもたらす。血液パラメータの傾向はステップS146で、血液希釈貧血の開始の徴候に対して解析される。たとえば測定された血液粘度(または測定された血液粘度から導出されたヘマトクリット値)が、前の測定から所定量だけ減少した場合、またはこの減少が、所定速度を超える場合、血液希釈貧血を示すことができる。ステップS156では警告信号が生成され、検出された血液パラメータ内の変化に基づき、心不全代償不全の開始の虞を示す。警告信号は、テキストメッセージまたは電子メール等を介して、患者、および/または患者の健康管理提供者にメッセージを送信することを含んでいてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、複数センサ方式を用いることで、心不全代償不全事象の検出または予測を行うことができる。心不全代償不全は一般に、浮腫、つまり身体組織内の流体の蓄積を伴う。浮腫は、胸部インピーダンス測定、体重測定を含む様々な方法で、および/または患者の入力によって監視される。いくつかの実施形態では、代償不全事象の早期警告は、患者の浮腫状態の変化と共に、血液希釈貧血の徴候に基づく。
【0036】
いくつかの実施形態では、複数閾値方式が用いられる。血液パラメータ測定または血液パラメータ傾向(血液粘度、血液インピーダンス、導出されたヘマトクリット等)は、所定の貧血閾値と比較される。たとえば胸部インピーダンス、体重、または患者の入力等によって得られた浮腫パラメータは、所定の浮腫閾値と比較される。心不全代償不全の開始は、これらの比較の両方に基づき検出される。警告は、複数レベル警告であってもよい。たとえば一つのパラメータだけが閾値よりも低い場合、より低い優先度の警告が提供される。両方のパラメータが閾値よりも低い場合には、より高い優先度の警告が提供される。
【0037】
いくつかの実施形態では、単一の閾値だけが用いられ、第1パラメータをこの閾値と比較し、第2パラメータを用いることでこの閾値を調整する。第2パラメータによる閾値の調整は、心不全代償不全の検出感度を適切に増大させるために用いられる。たとえば血液粘度が血液粘度閾値と比較され、浮腫レベルが、血液粘度閾値の調整に用いられる状況を考える。浮腫レベルの増大は、血液粘度閾値を上昇させ、それによって、警告の生成に必要な血液粘度の減少を低減する。言い換えると、浮腫測定は、より好感度にする方向に血液粘度閾値を調整する。浮腫レベルの減少は、血液粘度閾値をより低くし、それによって、血液粘度が、警告を引き起こすために低下しなければならない量を増大させる。
【0038】
図2Aは、貧血状態の検出、および/または監視を行うために用いられる医療システムを示すブロック図である。この特定の実施形態では、血液パラメータセンサ210は血液パラメータを検出し、この血液パラメータによって変調された信号を生成する。埋込可能回路220は、血液パラメータ信号を受取るように構成され、この血液パラメータ信号から導出した情報をメモリ240に格納できる。メモリ240は、貧血の検出に用いられる一つ以上の閾値を格納できる。メモリ240は、貧血状態の傾向または貧血に関連した他の情報を格納することもできる。
【0039】
貧血モジュール230は、たとえば血液パラメータ信号から導出したパラメータを計算
すること、この血液パラメータ信号の基準値またはこの血液パラメータ信号から導出したパラメータを計算すること、検出または導出した血液パラメータの一日、一週間、および/または一ヶ月の平均値を計算すること、貧血の検出、および/または貧血状態の判定のために、検出または導出した血液パラメータを基準、および/または一つ以上の閾値と比較すること、および/または検出または導出した血液パラメータの時間経過傾向を生成することを含む、複数の選択的機能の一つ以上を実現するように構成される。
【0040】
貧血状態に基づき、貧血モジュールは、貧血、および/または貧血状態の変化の検出、および/または心不全代償不全の検出を示す警告信号を生成できる。埋込可能回路、貧血モジュールまたは両方は、心臓モニタ、ペースメーカ、除細動器、または心臓再同期治療装置等の埋込可能な心臓治療または監視装置の筐体内に組込まれる。いくつかの実施形態では、貧血モジュール230は、患者の外部にあり、埋込可能回路220に無線通信を行う。
【0041】
既に議論したように、赤血球生成刺激剤を含む薬剤を用いることで貧血を治療するが、これらの薬剤は、血栓塞栓症の危険性を増大させる虞がある。血栓塞栓症の危険性は、血液粘度と共に増大する。所定の実施形態では、貧血モジュール230は、たとえば血栓塞栓症の危険性のレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と、血液粘度とを比較することによって、血栓塞栓症の危険性を評価できる。貧血状態に対して本明細書に記述されたものと同様の方法に従って、患者の血栓塞栓症の危険性に関連した情報を格納し、傾向を生成することができる。さらに血液粘度が、血栓塞栓症の危険性の所定の許容可能な最大値に関連した閾値を超える場合、貧血モジュール230は血栓塞栓症の警告を発することができ、それは貧血モジュール230によって提供される他の警告と区別することができる。
【0042】
図2Bは、貧血および心不全を監視する医療システムのブロック図である。図2Bに示したように、医療システムの第1部分は、患者の身体内に埋込まれた患者内部部品を含み、第2部分は患者外部にある。患者内部の部分は、血液粘度センサ211を含み、選択的に血液温度センサ205を含んでいる。粘度および温度センサ211、205は、血管または心腔内に埋込まれるように構成される。血液粘度センサ211は、血液粘度によって変調された信号を受取り、この信号は貧血モジュール231によって受取られる。血液温度センサ205によって生成された血液温度信号は、貧血モジュール231によって用いられ、血液温度の測定、および/または血液粘度、または血液粘度信号から導出されたヘマトクリット等のパラメータの温度補正を行う。
【0043】
貧血モジュール231は、温度補正された血液粘度またはヘマトクリットを、基準または一つ以上の閾値と比較し、貧血の検出または患者の貧血状態の判定、および/または血栓塞栓症の危険性の判定を行う。たとえば貧血の検出、および/または貧血状態の判定を行うために、貧血モジュール231によって実装される処理の一つは、血液粘度、または血液粘度信号から導出されたパラメータ値を、一つ以上のプログラム可能な閾値と比較することを含んでいる。別の処理は、血液粘度またはヘマトクリットの以前の測定に基づき、特定の患者に対して時間経過にわたって生成された基準値を使用することを含んでいる。基準は、たとえば一週間や一ヶ月等の所望の時間間隔で測定された一連の血液粘度値の、たとえば平均値、中央値、フィルタ処理値等の中心傾向を計算することによって確立される。それから、血液粘度を基準と比較し、貧血状態の変化を検出する。
【0044】
たとえば一つの状況では、血液粘度が、少なくとも一つのオフセット閾値だけ基準血液粘度よりも低下すると、貧血が起こっていると断言される。一例では、オフセット値は、基準血液粘度の固定されたまたはプログラム可能な割合(たとえば5%、10%、20%等)である。オフセット値は一般に、血液粘度の正常な生理学的バラツキが、貧血検出を
起動しないようにするために設定される。別の例では、異なる閾値を選択することによって、貧血が起こりそうであることを、その比較が予測する(たとえば血液粘度が、その基準値より少なくとも10%低くなると、後に貧血が起こることが予想され、血液粘度が、その基準値より少なくとも20%低くなると、現在貧血が起こっていると断言される)。貧血であることが予測または断言される場合、その情報は、通信回路251を介して、遠隔計測されるか、もしくは、患者の健康管理提供者に通信される。
【0045】
別の状況では、患者の血液粘度が、血栓塞栓症の危険性の最大値に関連した少なくとも一つの血栓塞栓症のオフセット値だけ、プログラム可能な閾値レベル、または既に判定されている基準血液粘度より上昇した場合、血栓塞栓症警告が生成される。上記の貧血検出処理と同様に、血栓塞栓症のオフセット値は、基準血液粘度の固定されたまたはプログラム可能な割合(たとえば5%、10%、20%等)であってもよい。血栓塞栓症に対する警告は、患者が、貧血に効くが、血栓塞栓症の危険性を増大させる薬剤を摂取しているときに特に有用である。
【0046】
患者の貧血状態、および/または血液粘度についての情報、および/または検出された貧血事象は、メモリ241内に格納される。たとえば貧血モジュールは、メモリ内に格納された貧血状態情報の傾向を生成することができる。この傾向からの偏差は、貧血状態が悪化または改善していることを示す可能性がある。貧血モジュール231は、通信回路251を介して、患者の外部装置260に通信できる。外部装置260は、簡単な警告から、患者の情報の格納および管理、および/または一つ以上の治療装置の制御を行うように構成された高度患者管理サーバへの装置プログラム部の範囲の回路を含むことができる。
【0047】
医療装置は、心不全診断モジュール242を選択的に含んでいてもよい。一つの実装形態では、心不全の状態は、貧血モジュール231から受取った情報に少なくとも部分的に基づき、心不全診断モジュール242によって判定される。たとえば患者の貧血状態の変化に基づき、心不全代償不全が示される。いくつかの構成では、心不全の状態は、浮腫の存在(胸部インピーダンスを用いることで示される)、および/または貧血状態(血液粘度、および/またはヘマトクリットレベルによって示される)に基づき判定される。上で議論したように、心不全代償不全は、浮腫を伴うことが多く、それは胸腔内を含む身体内に存在する流体の増加である。胸部インピーダンスの測定は、浮腫を検出するため、および/または胸腔内の流体の蓄積量を測定するために用いられる。心不全診断モジュール242は、心不全状態の判定、心不全の進行または回復の監視、および/または貧血状態および/または胸部流体測定に基づき、心不全代償不全の検出を行うことができる。
【0048】
貧血モジュール231または心不全診断モジュール242の一方または両方は、通信回路251を介して、患者外部装置260に結合されている。一つの構成では、貧血モジュール231、および/または心不全モジュール242は、患者外部装置260を介して、患者または健康管理提供者に送られる警告を生成できる。たとえば警告は、聴覚的または視覚的警告、テキストメッセージまたは電子メールの形態をとることができる。患者の貧血、および/または心不全状態についての情報は、患者外部装置260に通信してもよく、モニタ270を介してグラフィック的にまたはテキスト的に表示してもよい。
【0049】
一例では、警告通信は、プログラム部または他の外部装置260によって、埋込可能な医療装置が問合せを受けた次に発生する。別の例では、埋込可能な医療装置自体が、外部装置260に警告情報の遠隔計測通信を開始する。さらに別の例では、たとえば患者が認識可能な音または振動の形態で、埋込可能な医療機器によって患者に貧血であることが警告される。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態は、患者に薬剤を投与すること、または一つ以上の身体構
造を電気的刺激すること等によって、貧血を治療するシステムおよび方法を対象とする。図3Aは、本発明の実施形態による貧血治療の処理を示すフローチャートである。一つ以上の血液パラメータはステップS310で検出され、この血液パラメータによって変調されたセンサ信号が生成される。いくつかの実装形態によると、血液パラメータの検出は、埋込可能センサを用いることで実現される。他の実装形態では、血液パラメータは、患者外部センサを用いることで検出される。さらに他の実装形態では、埋込可能センサと患者外部センサの両方が用いられる。
【0051】
血液パラメータはステップS315で、一つ以上の閾値と比較される。貧血状態はステップS320で、血液パラメータと一つ以上の閾値との比較に基づき判定される。一つ以上の血液パラメータが、閾値よりも低下している(または閾値およびパラメータに依存して閾値よりも高い)ことを、この比較が示す場合、貧血が検出される。貧血治療はステップS330で、貧血状態に基づき行われる。貧血状態は、選択的に格納され、および/または貧血状態の時間経過傾向が生成され格納される。いくつかの実施形態では、ステップS310〜330は連続的なループで行われ、血液パラメータ信号を用いることでフィードバック信号を生成し、貧血治療を制御する。
【0052】
図3Bは、貧血監視と貧血治療の両方を提供可能な医療システムのブロック図である。血液パラメータセンサ312は、貧血に関連した生理学的パラメータによって変調された信号を生成する。貧血モジュール331は、血液パラメータ信号を受取り、この血液パラメータと閾値または基準値とを比較し、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の判定を行う。貧血状態は、一定期間にわたっての傾向が生成され、メモリ341内に格納される。貧血が検出されるか、または患者の貧血状態が悪化している場合、貧血モジュール331は警告を生成し、患者、および/または患者の健康管理提供者に通知する。
【0053】
さらに上記の貧血監視機能に加えて、図3Bの医療システムは、貧血を治療するための処置を行う機能を備えている。医療システムは、貧血治療モジュール333を含み、それは患者内部、および/または患者外部治療送出モジュール390の動作を制御する。
【0054】
たとえばいくつかの構成では、貧血治療は、赤血球生成を増加させるための一方または両方の腎臓、中枢神経系、脊髄、または脳等の身体構造の電気的刺激を含んでいる。たとえば腎臓は、赤血球生成促進因子(EPO)生成の主要源であり、これは赤血球を生成するための骨髄を刺激するホルモンである。腎臓構造(腎臓の傍尿細胞、糸球体領域または腎臓の他の領域等)の電気刺激は、赤血球生成促進因子の生成を増加させ、それはさらに赤血球の生成を刺激し、貧血を緩和すると信じられている。いくつかの構成では、貧血治療は、腎神経、および/または視床下部の電気刺激を含んでいる。いくつかの構成では、貧血治療は、患者への薬剤の投与を含んでいる。たとえば薬剤は、ダーベポエチンα、および/またはエポエチンα等の赤血球生成刺激剤、つまり赤血球生成刺激剤を含んでいてもよい。薬剤は、電気駆動の薬剤ポンプまたは薬剤パッチによって患者に投与される。
【0055】
貧血治療モジュール333は、一つ以上の血液パラメータセンサからの情報に基づき、制御信号を生成し、患者に行われる貧血治療を制御できる。一つの状況では、血液粘度センサが、血液パラメータセンサ312として用いられる。治療制御信号の生成は、血液粘度測定から判定される血栓塞栓症の危険性を考慮することもできる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態は、心臓ペーシング治療の送出と共に貧血治療の送出を含んでいる。図3Cは、貧血および心臓治療用の追加の部品と共に、図2Bの部品等の貧血監視部品を含む医療システムを示している。図3Cに示した医療システムは、心臓に電気的結合された心臓電極373を含み、それは心臓信号を検出し、心臓組織に電気刺激を送出し、ペーシング、および/または他の種類の心臓電気刺激治療を行う。心臓治療モジュ
ール372は、検出した心臓信号、および/または他の情報に基づき、心臓電極373を介して、心臓刺激治療の送出を制御する回路を含んでいる。たとえば心不全診断モジュール242、および/または貧血モジュール231によって提供された情報は、心臓治療の調整または起動に考慮される。
【0057】
従って、いくつかの構成では、心臓治療モジュールは、心不全状態、および/または貧血状態に関する情報を自動的に処理し、患者の貧血状態、および/または心不全状態の変化に応じて、心臓治療を調整する。いくつかの構成では、貧血状態、および/または心不全状態は、患者外部装置260を介して、患者の健康管理提供者に報告される。健康管理提供者は、プログラミング命令を入力し、心臓治療モジュールに対してこれらをアップロードすることによって、患者の治療の調整を行うことができる。いくつかの実施形態では、医療システムは、貧血状態情報、心不全状態情報、および/またはシステム内に手動で入力され、システムによって自動的に検出された患者についての他の情報に基づき、所定の選択肢または推奨された治療パラメータを健康管理提供者に提示できる。いくつかの実装では、貧血状態または貧血の検出に基づき、心臓再同期ペーシング治療パラメータが推奨されても、心臓再同期ペーシング治療が、心臓治療モジュール372によって自動的に開始されても調整されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、患者外部センサ265も、患者外部装置を介して提供される。患者外部センサ265は、体重センサ、血圧センサ、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットの測定用のセンサを含んでいてもよい。たとえば光学的、および/またはレーザ散乱検査を用いることで、患者のヘモグロビン、および/またはヘマトクリットレベルを検査できる。患者外部センサ265によって提供される情報は、貧血モジュール231、および/または心不全診断モジュール342によって用いられ、貧血および心不全状態をそれぞれ判定する。患者外部センサ265からの情報は、本明細書に記述された患者内部センサから獲得された情報と共に用いられ、高度診断を提供する。
【0059】
図3Cに示した医療システムは、貧血治療モジュール333を含んでいる。貧血治療モジュール333は、外部または内部貧血治療用の送出回路390を制御するために用いられる。いくつかの実施形態では、貧血治療制御は、薬剤ポンプまたは電気的起動可能なパッチを介して、抗貧血薬剤を開放することを含んでもよい。薬剤ポンプまたはパッチが、患者外部治療部品390を含む場合、貧血治療モジュール333は、これらの部品390に無線通信を行い、薬剤治療送出を制御する。別の構成では、患者外部装置260は、薬剤ポンプまたは他の治療送出部品390に通信を行い、貧血治療を制御する。
【0060】
いくつかの実装形態では、貧血治療モジュール333は、患者内部の電気刺激治療を提供するように構成された電気刺激部390を制御できる。たとえば腎臓または脳構造の電気刺激は、赤血球の生成に役立ち、貧血状態を緩和すると信じられている。たとえば電気刺激治療は、赤血球生成促進因子の生成を増加させるように実装され、それはさらに、赤血球の生成を刺激し、それによって患者の貧血状態を改善する。
【0061】
既に議論したように、血液粘度は、貧血状態の判定、および/または貧血検出の基準として用いられる。いくつかの構成では、血液粘度は、血管または心腔内に展開される弾性センサを用いることで測定される。図4は、心臓リズム管理(CRM)装置405の導線系410上に展開された心臓内血液粘度センサ496を示している。心臓リズム管理装置405の筐体401内に、血液粘度信号の生成、貧血モジュール、および/または貧血治療モジュールに含まれる追加のセンサ回路を組込むこともできる。心臓リズム管理装置405は、心不全診断の提供、心臓不整脈の検出、および徐脈ペーシング、心拍感応型ペーシング、抗頻脈性不整脈ペーシング、細動除去/心臓除細動衝撃、閾値以下の心臓刺激、および/または心臓再同期治療等の様々な心臓電気刺激治療を提供する回路を含んでいて
もよい。
【0062】
図4に示したように、心臓内導線系410は、患者の心臓内に挿入される。心臓内導線系410は、心臓の電気的心臓活動を検出し、心臓に電気刺激を送出するように構成された心臓電極451〜456に加えて、血液粘度センサ495を含んでいる。心臓装置405の筐体401に一部は、一つまたは複数の缶電極または不関電極として選択的に機能できる。心臓電極451〜456は、患者の胸部インピーダンスを検出するために用いることもできる。導線系410を介して、追加のセンサを展開することもできる。たとえば心臓内導線系は、圧力センサ496、および/または血液温度センサ497を含んでいてもよい。
【0063】
図4に示した心臓電極451〜456とセンサ495〜497は、一つの可能な構成を示している。心臓内、および/または皮下胸腔内および胸腔外電極を含む多くの他の構成を用いることもでき、本発明の範囲内にあると考えられる。導線系410は、有線、および/または無線結合のセンサを含んでいてもよい。無線の構成では、センサからの検出信号は、埋込可能な心臓装置405に無線で通信すること、および/または患者外部装置に無線で通信することができる。
【0064】
図5は、血管内に展開した血液粘度センサ550を含む医療システムの代替の実施形態を示している。この実施形態では、埋込可能な医療装置(IMD)520は、血液粘度センサ550に結合され、心臓510の一つ以上の心腔内に展開された心臓内導線系530をさらに含んでいてもよい。埋込医療装置520は、心臓活動の監視、および/または心臓内導線系530を介して、心臓に送出される電気刺激による心臓治療の送出を行う検出、監視および治療機能を備えていてもよい。図5に示されているように、血液粘度センサ550は、下大静脈や上大静脈等の血管内に展開される。血管粘度センサ550は導線540を介して、埋込医療装置520の筐体内に展開可能な貧血モジュールに結合される。埋込医療装置520は、患者外部装置570および選択的表示部580に、無線リンク560を介して通信可能なように結合される。
【0065】
図6は、貧血状態を監視する医療システムの実施形態を示している。システムは、血管内に展開され、固定部630によって固定されている血液粘度センサ620を含んでいる。血液粘度センサ620は、粘度センサ620と、患者外部装置650および表示部660との間の無線通信リンク640を確立可能な通信回路を含んでいる。血液粘度センサ620は、たとえば患者外部装置650の部品である、センサ読取部によって放出されたRFエネルギによって駆動される。血液粘度センサ620は、血液粘度を検出し、血液粘度を示す信号を外部装置650に送信できる。
【0066】
いくつかの実装形態では、血液粘度センサ620は粘度を検出し、貧血モジュールが展開されている患者外部装置650に、血液粘度と共に変化する信号を送信する。たとえばいくつかの構成では、粘度センサ620によって生成される信号の周波数が、血液粘度と共に変化してもよい。
【0067】
いくつかの実装形態では、粘度センサ620は、貧血モジュール回路と共に血管内に展開される。この追加の回路は、バッテリまたは充電可能な電源等の患者内部の部品用に追加のエネルギ蓄積機能を必要としてもよい。この実装形態では、患者外部装置650に送られる信号は、たとえば検出された信号から導出されたヘマトクリットの測定、貧血状態、および/または検出された血液粘度から判定された貧血事象等、検出された血液粘度から導出され、格納される可能性がある情報を含んでいてもよい。
【0068】
図7A〜図7Cは、血管604内に粘度センサ620を固定するように構成された拡張
可能な固定部630をより詳細に示している。粘度センサ620は、繋ぎ部625によって、拡張可能な固定部630に固定される。拡張可能な固定部630は、血管604内に挿入される際、折り畳み状態(図7A)で経脈管的に送出される網面を含むステント状構造を備えていてもよい。この例では、拡張可能な固定部630は、カテーテル790の遠端部またはその近傍に結合される。拡張可能な固定部630を拡張するために、カテーテル790は、膨張可能な風船792を含んでいてもよく、粘度センサ620が、血管604内に適切に配置された後、風船790は膨張される。風船792の膨張は、拡張可能な固定部630が、血管604の壁に隣接するまで、拡張可能な固定部630を拡張する。拡張可能な固定部630は、十分な力で血管604の壁に隣接し、血管604内で膨張可能な固定部630と血液粘度センサ620を受動的に固定する。いったん拡張可能な固定部630が拡張され、血管604内に固定されると、風船790は収縮し、血管604からカテーテル790を除去しやすくする。血液粘度センサに適した追加の固定技術は、同一所有の特許文献1に記述され、参照によって本明細書に組込まれる。
【0069】
図8Aを参照すると、一例では、血液粘度センサは、圧電表面弾性波(SAW)センサ830を含んでいる。この例では、センサ面832は、入力櫛形電極834、出力櫛形電極836、および絶縁層を結合させた圧電層831を含んでいる。一例では、少なくとも入出力電極834、836は、圧電層831の上部に結合させる。この例では、少なくとも一つの櫛形電極834は、たとえば交流電圧信号を用いることで駆動され、圧電表面弾性波変換器を駆動し、ある周波数で表面832に沿って表面弾性波を生成する。振動面832は、血液等の流体に接触している。この例では、血液の粘度は、表面832の振動数を変化させる。たとえば血液粘度が高いと振動数は低下し、血液粘度が低いと、振動数は上昇する。表面832に接触している血液も、この血液に送られる弾性波によって、共振減衰および挿入損失を引き起こし、これも血液の粘度に関連付けられる。この振動数のシフトまたは電力挿入損失を用いることで粘度信号を生成し、血液の粘度測定に変換できる。所定例では、圧電表面弾性波センサ830は、異なる圧電材料配置を選択することによって、異なる表面弾性波モードを備えている。たとえば一例では、センサ830は、圧電表面弾性波の横方向の変位が、表面832に対して法線方向である、剪断垂直表面弾性波(SV−SAW)モードで動作する。一例では、センサ830は、圧電表面弾性波の横方向の変位が、表面832に対して平行である、剪断水平表面弾性波(SH−SAW)モードで動作する。
【0070】
図8Bを参照すると、別の例では、弾性粘度センサは、バルク弾性波(BAW)センサ840を含んでいる。バルク弾性波センサの例は、たとえば厚み剪断モード(TSM)共振器および剪断水平弾性板モード(SH−APM)センサを含んでいる。所定例では、バルク弾性波センサ840は、上部および底部薄膜電極844、846の間に挟持された圧電層841を含んでいる。この例では、交流電圧を電極844、846に印加し、ある周波数で厚み剪断モードで圧電層841を振動させる。振動面842に接触している血液等の流体は、振動面842と機械的に相互作用する。図8Bに示されている曲線は、バルク弾性波センサ840、流体、およびそれらの間の固体液体界面の断面にわたる変位を表している。表面842は、基本周波数で振動されると想定されるが、他の周波数が用いられる可能性も、高調波等を生じさせる可能性もあると理解されるべきである。上記の圧電圧電表面弾性波センサ830の例のように、血液の粘度は、弾性波の振動数を変化させ、たとえば流体粘度が高くなると、振動数は低下し、流体粘度が低くなると、振動数は上昇する。表面842に接触している液体は、共振減衰および周波数シフトを引き起こし、それは血液の粘度に関連付けられる。一例では、周波数変化を用いることで、弾性粘度センサ840は、血液の弾性測定に変換される信号を生成する。
【0071】
一例では、弾性血液粘度センサは、微小電気機械システム(MEMS)ベースのセンサを含んでいる。一例では、MEMSベースのセンサは、微小機械加工を用いることで製造
される固体状態弾性波変換器を含んでいる。一例では、MEMSセンサは、固体状態表面弾性波(SAW)変換器を含んでいる。別の例では、MEMSセンサは、固体状態バルク弾性波(BAW)変換器を含んでいる。これらの例では、弾性センサ830、840何れかの変換器は、一つの基板内の信号処理または調整回路と共に製造される。別の例では、センサ830、840何れかの変換器は、一つのパッケージ内の信号処理または調整回路と共にパッケージされる。別の例では、弾性粘度センサは、弾性センサ830、840何れかの変換器だけを含み、信号処理または調整回路は、患者の内部または外部のいずれかの別の装置内に配置される。一例では、センサおよび回路は、チタンまたは他の生体適合性材料の筐体または箱内にパッケージされ、検出面を露出させる。所定例では、センサパッケージは、薬剤溶出物質の被膜を含んでいる。一例では、センサパッケージは、少なくとも検出面に薬剤溶出物質の被膜を含んでいる。
【0072】
いくつかの構成は、貧血を治療するために、一つ以上の身体構造に電気的刺激治療を提供する機能を備えている医療装置を含んでいる。上で議論したように、腎臓はホルモン赤血球生成促進因子の生成の主要な部位であり、それはさらに、骨髄に赤血球を生成させることを担っている。赤血球促進因子の生成を含む腎機能に影響を与える電気刺激治療は、同一所有の特許文献2で議論され、参照によって本明細書に組込まれる。特許文献2は、糸球体、ボーマン嚢、緻密斑、尿細管、傍尿細管網、集合管、糸球体輸入細動脈、または腎顆粒細胞の一つ以上の電気刺激によって腎機能を調節することを記述している。たとえば傍尿細胞が、赤血球促進因子の刺激用の適切な部位であってもよい。いくつかの研究によると、腎臓の傍尿細胞は、赤血球促進因子合成の部位である。たとえば非特許文献1参照。腎交感神経が、赤血球促進因子の生成を少なくとも部分的に担っていることも示されている。たとえば非特許文献2を参照。
【0073】
貧血の治療は、腎構造の電気刺激を含んでいる。電気刺激は赤血球促進因子の生成を増加させ、それによって赤血球濃度を増加させ、貧血を緩和すると信じられている。いくつかの実施形態では、電気エネルギ刺激は、たとえば糸球体、傍尿細管網、または腎神経等の一つ以上の腎構造に印加され、それによって赤血球促進因子の生成を調節する。
【0074】
図9は、腎臓904の一方または両方等の対象者の身体の一つ以上の部分に、電気エネルギ刺激を送出する機能を備えた医療システム900の一実施形態を示している。選択的に、医療システムは、心臓906に電気刺激を送出する機能を備えていてもよい。この実施形態では、システム900は、心臓治療機能(たとえば徐脈治療、頻脈治療、または心臓再同期治療の一つ以上を提供できる)を含むパルス発生器等の埋込可能な医療装置(IMD)910を含み、それは一本以上の導線912を介して、腎臓904、心臓906、および/または他の身体構造に結合されている。埋込医療装置910は、対象者の胸部、腹部、または他の場所の皮下に埋込むことができる。腎臓に刺激を加える導線912は、導線の近端部から遠端部に延び、遠端部は、埋込医療装置910によって生成された電気エネルギ刺激を腎臓904に送出する一つ以上の電極を含んでいる。
【0075】
さらに医療システム900は、血液粘度センサまたは血液インピーダンスセンサ等の一つ以上のセンサ925を含み、このセンサを用いることでフィードバック信号を生成し、腎臓904に送出される電気刺激を制御する。図9に示した構成では、センサ925は、導線926を介して埋込医療装置910に電気的結合されているが、無線接続も可能である。既に議論したように、埋込医療装置910内の貧血モジュールは、センサ925によって生成されたセンサ信号を受取る。貧血モジュールは、センサ信号を用いることで、貧血の検出、貧血状態の判定、および/または腎臓904に送出される電気刺激治療を制御するためのフィードバック信号の生成を行うことができる。
【0076】
さらに図の医療システム900は、外部ユーザインタフェース918として機能する患
者外部装置を含んでいる。外部ユーザインタフェース918は、埋込医療装置910から情報を受取り、埋込医療装置910に情報を送ることができる。たとえば一つ以上の腎構造(糸球体、ボーマン嚢、緻密斑、尿細管、傍尿細管網、集合管、糸球体輸入細動脈、糸球体輸出細動脈、腎顆粒細胞、または腎神経等)に印加される一つ以上の電気エネルギパラメータ(たとえばエネルギ注入場所、エネルギ注入持続時間、エネルギ注入強度、エネルギ注入周波数、エネルギ注入極性、エネルギ注入電極構成、またはエネルギ注入波形等)の新しい値は、外部ユーザインタフェース918に手動で入力され、埋込医療装置910に送られ、電気エネルギ刺激のパラメータを変更し、腎臓の赤血球促進因子の生成の所望の変化をもたらすことができる。追加的に、外部ユーザインタフェース918を用いることで、患者の健康関連の情報の一つ以上の入力を受取ることもできる。所定の実施形態では、外部ユーザインタフェース918は、システム900用の情報を外部で処理するために用いられる。外部ユーザインタフェース918は、遠隔測定を用いることで、埋込医療装置910に無線通信920を行う。外部ユーザインタフェース918は、LCDまたはLED表示部等の視覚的表示ユニットまたは他の表示ユニットを含み、システム900の動作または結果に関する情報を、患者または健康管理提供者にテキスト的にまたはグラフィック的に表示する。
【0077】
図10の簡略化されたブロック図は、システム900の一つの概念的実施形態を示し、システム900は、患者の腎臓904に電気エネルギ刺激を送出できる。図のように、システム900は、一つ以上の導線912を介して、一方または両方の腎臓904に結合されたパルス発生器等の埋込医療装置910を含んでいる。この実施形態では、一つ以上の導線912は、腎静脈1002を介して、腎臓904への血管アクセスを提供する。
【0078】
各導線912は、埋込医療装置910の絶縁ヘッダ1006に結合されている導線近端部から、腎臓領域に配置されている導線遠端部916まで延びている。各導線遠端部916は、一つ以上の電極1008を含み、埋込医療装置910によって生成された電気エネルギ刺激を腎臓に送出する。一つ以上の電極1008は、一つ以上の腎機能関連のパラメータについての情報を検出するためにも用いられる。導線電極1008に加えて、埋込医療装置910の密閉容器1010(一般に缶電極1012と呼ばれる)上、または絶縁ヘッダ1006(一般にヘッダ電極1014と呼ばれる)上に、電気エネルギ刺激の送出に利用可能な他の電極を配置できる。
【0079】
図のように、埋込医療装置910は、密閉容器1010内に配置されている貧血治療モジュール1018、電源1016、電気刺激回路1022、電子構成スイッチ回路1024、貧血モジュール1026、通信モジュール1028等の電子回路部品を含んでいる。電源1016は、上記の埋込医療装置内部のモジュールおよび回路の全てに動作電力を提供する。
【0080】
貧血治療モジュール1018は、とりわけ、プロセッサ1030、メモリ1032、およびタイミング回路1034を含んでいる。プロセッサ1030は、患者の貧血状態についての情報を用いることで、治療制御信号を判定するように構成される。治療制御信号は、次に電気刺激回路1022に通信されるが、電気刺激回路1022は、一つ以上の選択された電極1008、1012、または1014によって腎臓904に送出可能な電気エネルギ信号を生成するように構成される。様々な例では、一つ以上の送出電極を選択し、実質的に大部分の電気エネルギ信号が、一つ以上の腎構造(たとえば糸球体、ボーマン嚢、緻密斑、尿細管、傍尿細管網、集合管、糸球体輸入細動脈、糸球体輸出細動脈、または腎顆粒細胞等)を通過するようにする。電気刺激回路1022は、電子構成スイッチ回路1024によって一つ以上の電極1008、1012、または1014に選択的に結合される。
【0081】
電気エネルギ刺激は、様々な方法で腎臓904に送出される。たとえば電極1008、1012、1014によって腎臓904に送出される電気エネルギ刺激は、約0.1Hz〜10kHzの間の周波数を含んでいる。このような実施形態の一つでは、信号周波数は、約1Hz等の実質的に1KHzよりも低いバースト周波数を備えた一つ以上のバーストで送出される。別の実施形態では、電極1008、1012、1014によって腎臓904に送出される電気エネルギ刺激は、約50KHzよりも高い周波数を含んでいる。さらに別の実施形態では、電極1008、1012、または1014によって腎臓904に送出される電気エネルギ刺激は、連続周期またはパルス周期の電流または電圧を含んでいる。
【0082】
図10に示した医療システム900は、血液パラメータセンサを用いることで提供されるフィードバック信号を介して、電気刺激回路1022によって送出される電気刺激治療の継続的な調整を実現する。埋込可能な血液パラメータセンサ1027は、血液粘度または血液インピーダンス等の貧血に関連した血液パラメータを連続的または周期的に測定し、貧血モジュール1026にセンサ信号を提供する。たとえば血液粘度が検出されるパラメータである場合、貧血モジュール1026は、血液粘度の現在のレベルと前のレベルとを比較し、患者の血液粘度が上昇しているか下降しているかを判定する。血液粘度が変化すると、貧血モジュールは、患者の血液粘度(または計算されている場合には、ヘマトクリット値)、および/または貧血状態を貧血治療モジュール1018に通信する。患者の貧血状態が悪化している場合、この悪化は、貧血治療モジュール1018を起動し、腎臓904に送出される電気刺激治療を修正し、より強い治療を提供する。その一方、患者の貧血状態が改善している場合、これは腎臓904に送出される電気刺激治療を一定に保つように、貧血治療モジュール1018を起動するか、またはより弱い治療を提供するようにできる。従って、図10の構成は、患者の貧血状態が変化している場合、電気刺激治療の継続的フィードバックおよび調整を実現する。
【0083】
さらにこの実施形態の医療システム900は、患者外部ユーザインタフェース918を含んでいる。たとえば患者外部ユーザインタフェース918は、貧血治療に関連した手動で入力された所望の値を受取り、通信モジュール1028を介して、この値を埋込医療装置910に通信する。手動で入力した値は、メモリ1032に格納された事前にプログラムしたパラメータ値の代わりに用いることもできる。いくつかの実施形態では、外部ユーザインタフェース918は、血液パラメータの測定に用いられる外部センサを含むことも、この外部センサにリンクすることもできる。外部センサからの情報を用いることで、フィードバック信号を提供し、電気刺激治療を制御することもできる。
【0084】
埋込医療装置910は、複数の個別にプログラム可能な電気刺激チャネルを含むことができ、各刺激チャネルは、複数の電極に接続可能である。各チャネルの電極構成および刺激特性は、自動的にまたは手動で選択される。たとえば各チャネルは、任意の数の電極に結合されている。さらに各チャネルは、振幅、パルス幅、パルス振幅、周波数、デューティサイクル、および他の刺激チャネル信号に対する位相シフトに関して別個にプログラム可能であってもよい。この刺激特性の柔軟性によって、検出された血液パラメータによって示されるように、患者の貧血状態の所望の変化が実現されるまで、医療システムの刺激出力の閉ループフィードバック調整を可能にする。
【0085】
図10および本明細書に図示されている他の図面は、様々なモジュール、回路、および様々なシステムのインタフェースの所定の概念化を示しており、これはハードウェア内に実装することも、マイクロプロセッサまたは他のコントローラ上で実行される一つ以上の連続のステップとして実装できることにも注意すべきである。このようなモジュール、回路、およびインタフェースは、概念的な明確化のために別個に示されているが、図示されている様々なモジュール、回路、およびインタフェースは、別個に具現化する必要はなく
、組合わせる、もしくは実装することもできる。
【0086】
図11は、電流1104および関連の電界1106の形態で、対象者の腎臓904に電気エネルギ刺激を送出する処理のシステム900を示している。所定の実施形態では、電気エネルギ刺激は、ほぼゼロの平均振幅、約0.1Hz〜約1MHzの周波数、および約0.1〜10V/cmの電界強度の生成に十分な最大振幅を備えているパルス電圧信号を含んでいる。
【0087】
腎臓904は豆形の構造を備え、その円形の外側凸部は、対象者の身体の側部に面している。門と呼ばれる腎臓904の内側の凹面は、腎動脈、腎静脈1002、神経、尿管1004によって貫通され、尿管1004は、腎臓904から膀胱に尿を運ぶ。図のように、システム900は、少なくとも一つの導線912を介して、腎臓904に電気的結合された埋込医療装置910を含んでいる。導線は、埋込医療装置910の絶縁ヘッダ1006に結合された、導線近端部914から、腎静脈1002内に配置された導線遠端部916まで延びている。導線遠端部は、腎臓構造の双極刺激(図示せず)または単極刺激に使用するための一つ以上の電極を含んでいてもよい。図11は単極刺激を示しており、電界1106は、缶電極1012、および/またはヘッダ電極1014と、腎臓内またはその近傍に配置された導線電極1008との間に生成される。この実施形態では、導線912は、下大静脈1102を介して、腎静脈1002に血管アクセスされる。別の実施形態では、導線遠端部916は、弓状静脈、葉間静脈、または腎区静脈内等の腎臓904内に深く配置される。さらに別の実施形態では、導線912は、尿道−膀胱−尿管1004のアクセスを介して送出される。
【0088】
図のように(しかし変更も可能なように)、導線遠端部916は、腎臓904の近傍(つまり、腎臓904内、上、または周り)に配置した少なくとも一つの埋込可能な電極1008を含み、密閉容器1010(缶電極1012を介して)または絶縁ヘッダ1006(ヘッダ電極1014を介して)は、少なくとも部分的に導電性であることによって、別の埋込可能な電極として機能する。このように埋込医療装置910によって提供され、腎臓904内、上、または周りに配置された導線電極1008によって送出される電気エネルギ信号は、腎臓の一部を介して、缶電極1012またはヘッダ電極1014に戻ることができる。所定の実施形態では、電気エネルギ刺激は、対応する電界1106を備えている電流1104の形態で送出される。
【0089】
電流1104および対応する電界1106は、腎臓904の一つ以上の構造が、一つ以上の腎機能に影響を及ぼす、および、より詳細には、腎臓による赤血球生成促進因子の生成に影響を及ぼすのに十分な電流1104または電界1106内に浸されるようにする。本システム900は、図11に示した電極構成に加えて、様々な電極構成、および様々な電気接点(たとえばパッチ)または電極で動作するように適応させる。たとえば複数の導線912を腎臓の異なる場所に配置し、電流1104または電界1106の分布を改善できる。代替的にまたは追加的に、導線912は、一つ以上の追加の電極を備えることができ、たとえばこの一つ以上の電極は、電流1104および対応する電界1106用の陰極として動作する。
【0090】
上で議論したように、腎神経は、赤血球生成促進因子の生成に重要であり、血液ヘマトクリットの維持に関与していることが、研究により示されている。従って、いくつかの実施形態による貧血の治療は、赤血球生成促進因子の生成に影響を与えるための腎神経の電気刺激を含んでいる。図12は、電気刺激パルスを介して、または薬剤注入によって、腎神経を刺激するように構成された医療システムを示している。腎神経を刺激するように構成された埋込医療装置1210は、心臓ペースメーカまたは神経刺激部と同様の電気装置であってもよく、および/または化学物質注入装置であってもよい。図12に示したよう
に、埋込医療装置1210は、心臓刺激治療、並びに腎神経の電気および/または薬剤注入刺激を送出することによって、二重の目的を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、埋込医療装置1210は、腎神経の電気刺激を提供するだけで、腎神経に薬剤注入を提供する機能は備えていない。いくつかの実施形態は、埋込医療装置は、薬剤注入を提供するだけで、腎神経に電気刺激を提供する機能は備えていない。赤血球生成促進因子の生成を促進するための適切な薬剤は、赤血球生成刺激剤(ESA)を含んでいる。
【0091】
図10と共に既に示したように、埋込医療装置1210は、複数の別個にプログラム可能な電気刺激チャネルを含むことができ、各刺激チャネルは、複数の電極に接続可能である。各チャネルの電極構成および刺激特性は、自動的にまたは手動で選択される。たとえば各チャネルは、任意の数の電極に結合されている。さらに各チャネルは、振幅、パルス幅、パルス振幅、周波数、デューティサイクル、および他の刺激チャネル信号に対する位相シフトに関して別個にプログラム可能であってもよい。この刺激特性の柔軟性によって、検出された血液パラメータによって示されるように、患者の貧血状態の所望の変化が実現されるまで、医療システムの刺激出力の閉ループフィードバック調整を可能にする。
【0092】
埋込医療装置1210は、腎神経に送出される電気信号の調整、および/または薬剤注入動作の制御に用いられる電源および制御回路を含んでいる。薬剤注入が用いられる場合、埋込医療装置1210は、薬物を備えた容器を含んでいる。埋込医療装置の電気刺激回路に取付けた導線1220は、腎神経の近傍に埋込んだ、またはこの腎神経に取付けた導線1220の遠端の一つ以上の電極に電気信号を送る。薬剤が注入される場合、カテーテル1221は、腎神経の適切な場所に薬物を送る。
【0093】
腎神経は、交換神経幹1203から腎臓1204に輸出交換神経刺激を導く。交換神経幹1203は、患者の背骨1207内の脊髄に接続されている。刺激電極および/または薬剤注入場所は、腎臓1204と、背骨1207の第10番目、11番目、および12番目の胸部および最初の腰部の領域の後方腎臓または他の腎神経節(図示せず)との間に配置される。
【0094】
電気刺激は、腎神経の近傍、上または周りに配置された一つ以上のカフ電極または他の種類の電極を介して、腎神経に送出される。たとえば一つ以上のカフ電極は、導線1220の遠端部に配置される。これらのカフ電極は、腎神経の周りを包み込み、この電極と神経の間に電気的接触を提供し、埋込医療装置1210によって提供された電気信号が、腎神経に印加されるようにする。代替的に、螺旋電極等の他の種類の電極を用いることもできる。
【0095】
埋込医療装置1210は、血液パラメータセンサ1225で終端されたセンサ導線1226に結合されている。たとえば血液パラメータセンサは、血液粘度または血液インピーダンスセンサであってもよい。センサ1225は、血管または心腔内に配置される。センサ1225によって生成された血液パラメータ信号は、腎臓1204への電気刺激信号、および/または薬剤注入の調整に必要な情報を埋込医療装置1210に提供し、赤血球生成促進因子の生成に影響を与えるために用いられる。埋込医療装置1210への情報の供給に合わせて、一つよりも多くのセンサを用いることもできる。これらのセンサは、身体内に埋込むことも、身体外に配置することもできる。たとえばいくつかの実施形態では、外部血液パラメータセンサは、患者の外部装置1218を介して、埋込医療装置1210に結合されている。外部血液パラメータセンサから得られる情報を使用して、フィードバック信号を生成し、電気刺激または薬剤注入を制御することもできる。
【0096】
視床下部および/または他の脳深部の刺激は、赤血球の生成に関連していることが、研究によって示されている。たとえば非特許文献3〜非特許文献6を参照。これらの脳領域
を電気的刺激し、赤血球数を増加させることができる。図13は、視床下部の電気刺激に関連したこのような例の一つを提供する。
【0097】
図13は、貧血状態を改善または安定化させるために、視床下部領域1305内の脳を電気的刺激するように構成された医療システム1300を示している。システム1300は埋込医療装置1310を含み、埋込医療装置1310は、図12に関して既に議論した電気刺激部等の電気刺激部を含んでいる。埋込医療装置1310は、導線1320と共に胸部領域に埋込可能であり、導線1320は、視床下部1305にアクセスするのに適した場所まで延びている。代替的に、埋込医療装置1310用の埋込場所として、腹部等の胸部領域以外の領域を用いることもできる。
【0098】
導線1320は、埋込医療装置1310および電極アレイ1330に結合され、電極アレイ1330は、視床下部領域1305に到達するまで、脳を介して挿入される。電極アレイ1330は複数の電極1331を含み、貧血状態に所望の応答を提供する電極構成を選択可能にする。埋込医療装置1310の筐体上に、一つ以上の追加の電極1332を設けることもできる。埋込医療装置1310内のスイッチング回路によって、任意の刺激チャネルに任意の組合せの電極を選択的に結合できる。刺激特性も、各チャネルに対して別個に調整できる。埋込医療装置1310は、複数チャネルの電気刺激部を組込むことができ、この電気刺激部は、貧血状態に所望の変化が検出されるまで、血液パラメータセンサ(図13には図示せず)からの閉ループフィードバックに基づき、各チャネルの電極構成および/または刺激特性を自動的に調整できる。刺激特性は、刺激振幅、極性、パルス幅、デューティサイクル、周波数、位相および/または他の刺激特性を含んでいる。
【0099】
いくつかの実施形態では、埋込医療装置1310は、貧血治療を自動的に調整する。いくつかの実施形態では、埋込医療装置1310は、自動フィードバック制御を利用しなくてもよいが、患者または患者の健康管理提供者によって、患者外部プログラム部を介して手動で制御される。別の構成では、埋込医療装置1310は、電極構成および刺激特性の手動および自動調整の両方を利用できる。
【0100】
図14は、腎臓、腎神経、視床下部、および/または貧血の治療用の他の身体構造の刺激用のフィードバック処理を示すフローチャートである。最初に、ステップS1405で所望の貧血状態を示す血液パラメータ閾値が、メモリから入力または読込まれる。各チャネルに対する電極構成の最初の組、および刺激チャネルが調整される順番と共に、最初の刺激パラメータも検索される。ステップS1410で血液パラメータセンサによって生成された信号が得られ、血液パラメータは閾値と比較される。閾値の上下の偏差は、調整の必要性を示す。ステップS1415で調整が必要とされる場合、ステップS1430でチャネルが最大振幅ではない限り、ステップS1435で第1刺激チャネルの振幅が調整される。刺激チャネルが最大振幅である場合、ステップS1445でパルス幅が調整される。ステップS1440でパルス幅が最大値である場合、ステップS1455でデューティサイクルが調整される。ステップS1450で刺激パラメータがそのチャネルに対する最大である場合、ステップS1460で調整されるよりも多くのチャネルがあれば、次のチャネルが調整される。全ての刺激チャネルが最大値である場合、ステップS1470で異なる組の電極構成が識別され、所望の血液パラメータ値が実現されるまで、調整はステップS1420〜1460に従って進行する。刺激パラメータの変化は、ステップS1475でログを取る。フィードバック処理によって識別された刺激構成は、次に送出される治療の開始点として用いられる。
【0101】
本発明の範囲から逸脱することなく、これまで議論した好ましい実施形態に、様々な修正および追加を行うことができる。従って、本発明の範囲は、上記の特定の実施形態によって限定されるべきではなく、以降に述べる請求項、およびそれらの等価物によってのみ
規定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、貧血の検出と治療に関する。
【背景技術】
【0002】
貧血は、赤血球の全容量、および/または赤血球内のヘモグロビンの量が、正常値よりも低くなったときに発生する血液疾患である。貧血は、全身疲労、衰弱、集中の妨げ、息切れ等の症状を引き起こす。心不全(HF)は、貧血を伴う一般的な共存疾患である。重篤な貧血は、心拍出量を増加させようと身体に促し、これは心不全に至る虞がある。一方、重症の心不全は、心不全代償不全に至り、これは血液内の体液過剰を発生させ、それに応じて赤血球が増加することなく血漿を増加させ、さらに貧血をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/025459号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/119907号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lacombe,Catherineなどの「傍尿細胞は、マウス低酸素性腎臓の赤血球促進因子合成の部位である」(Peritubular cells are the site of erythropoietin synthesis in the murine hypoxic kidney)、J.Clin.Invest.Vol.81,1988年2月、620〜623。
【非特許文献2】Tilmann Dittingなどの「腎交感神経は、ラット内の一過性出血後に赤血球促進因子の血漿レベルを調節する」(Renal sympothtic nerves modulates erythropoietin plasma levels after transient hemorrhage in rats)、Am J Physol Renal Physiol 293:F1099−F1106,2007。
【非特許文献3】Segal,Rらの「ラット内の赤血球生成および破壊への視床下部の電気刺激の影響(The effect of electrical stimulation of the hypothalamus on red cell production and destruction in the rat)」、Isr J Med Sci,1971年7〜8月;7(7):1017〜24。
【非特許文献4】Medado P,Izak G,Feldman S.の「ラット内の赤血球生成への中枢神経系の電気刺激の影響、II.赤血球生成を増大可能な特定の脳構造の場所(The effect of electrical stimulation of the central nervous system on erythropoiesis in the rat II. Localization of a specific brain structure capable of enhancing red cell production)」、J Lab Clin Med 1967年5月;69(5):776〜86。
【非特許文献5】Segal,R.,Izak G,Feldman S.の「ラットの後方視床下部の長期の電気刺激後の増大された赤血球分離(Augmented red cell sequenstration after prolonged electrical stimulation of the posterior hypothalamus in rats.)」、J Reticuloendothel Soc 1971 3月;9(3):225〜36。
【非特許文献6】Halvorsen,S.の「無傷および腎摘出したウサギの赤血球生成および赤血球生成促進因子の生成への視床下部刺激の影響(Effects of hypothalamic stimulation on erythropoiesis and on the production of erythropoiesis−stimulating factors in intact and nephrectomized rabbits)」、Ann N Y Acad Sci,1968年3月29日;149(1):88〜93。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貧血は、たとえば鉄分補給食品、ビタミンB12、葉酸、組換え赤血球生成因子、および/またはエポエチンおよび/またはダーベポエチン等の赤血球生成促進剤を投与すること等、薬学的に治療されることが多い。赤血球生成促進剤は最終的には、赤血球の生成の増加を促進させる。赤血球生成促進剤、および/または他の薬剤の投与は、貧血の治療には有益であり、同時に心不全の症状を改善させるかもしれないが、このような治療は、血栓塞栓症の危険性を増大させる虞がある。重症の貧血に対する他の治療には輸血が含まれるが、これも患者に危険性をもたらす。
【0006】
貧血は、ヘモグロビン(赤血球の鉄保有部)を測定することを含む、患者外部の血液検査を行うことによって、またはヘマトクリット(所定量の血液内の赤血球の容量)を判定することによって、最も一般的に検出される。貧血評価は通常、臨床的状況で実行されるので、検査に数日または数週間かかる虞がある。検査の間は、治療を適宜行えないようになる。
【0007】
上記の理由、および本明細書を読めば、当業者には明らかになる下記の理由のため、当分野では、特に心不全を伴う患者の場合、貧血を検出し治療するための改善された方式を提供する方法およびシステムの必要性がある。本発明は、これらのおよび他の必要性を満たし、従来技術を超える他の改善を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貧血を検出し治療するシステムおよび方法を対象とする。一実施形態は、埋込可能な医学的システムを動作させる方法を含んでいる。血液粘度は、血管または心臓内に埋込むように構成されたセンサを用いることで検出される。血液粘度は、一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と比較される。患者の貧血状態は、一つ以上の閾値と血液粘度との比較に基づき判定される。患者の腎臓または視床下部の一方または両方に送出される電気刺激は、貧血状態に少なくとも部分的に基づき制御される。
【0009】
いくつかの実装形態によると、貧血状態は時間経過傾向を生成し、格納することができる。電気刺激治療を制御するために、貧血状態の増大または減少の速度を用いることもできる。
【0010】
検出された血液温度を用いることで、血液粘度を温度補償することもできる。
貧血状態の傾向に基づき、心不全の進行または回復を評価することもできる。貧血状態の傾向に基づき、心不全治療を修正することもできる。
【0011】
貧血状態の傾向に基づき、血液希釈貧血を検出することもできる。血液希釈貧血の検出に基づき、心不全代償不全事象の開始を検出することもできる。
胸部インピーダンスを検出することもできる。心不全代償不全事象の開始を検出するために、貧血状態と共に、胸部インピーダンスを用いることもできる。
【0012】
血栓塞栓症の危険性の評価に部分的に基づき、電気刺激治療を制御することもできる。
電気刺激は、約0.1Hz〜10kHzの間の周波数を備え、約0.1V/cm〜10V/cmの電界強度を生成する信号を用いることができる。
【0013】
本発明の別の実施形態は、貧血状態を判定する医療システムを対象とする。埋込可能センサは血液粘度を検出し、この血液粘度によって変調された信号を生成する。埋込可能回路は血液粘度信号を受取り、この血液粘度を格納する。貧血モジュールは、ヘマトクリットに関連付けられた一つ以上の閾値と、血液粘度とを比較し、この比較に基づき、患者の貧血状態を判定する。貧血モジュールは、貧血状態の時間経過傾向を生成し格納することもできる。
【0014】
システムは、貧血状態の傾向に基づき心不全代償不全の開始を検出するように構成された心不全診断モジュールを含むことができる。
いくつかの実装形態によると、埋込可能回路および貧血モジュールは、埋込可能な心臓治療装置内に組込まれ、この装置は、貧血状態の傾向に基づき、心臓ペーシング治療を制御するように構成された心臓治療コントローラを含んでいる。
【0015】
貧血モジュールは、貧血状態の傾向に基づき、警告信号を生成するように構成できる。
貧血モジュールは、血栓塞栓症の危険性を評価し、血栓塞栓症の危険性に基づき、警告信号を生成できる。
【0016】
別の実施形態は、貧血を治療する埋込可能な医療システムを対象とする。医療システムは、血液粘度によって変調された信号を生成するように構成された埋込可能センサを含んでいる。貧血モジュールは、一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と、血液粘度とを比較し、この比較に基づき、患者の貧血状態を判定する。治療モジュールは、貧血状態または血液粘度に基づき、患者に治療を送出する。
【0017】
いくつかの構成では、貧血モジュールは、血栓塞栓症の危険性を評価するように構成され、治療モジュールは、血栓塞栓症の危険性に基づき、患者に治療を送出するように構成される。
【0018】
治療モジュールは、薬剤ポンプ、または腎臓または視床下部の一方または両方に電気刺激治療を送出するように構成された電気刺激器を含むことができる。治療モジュールは、心不全用の心臓再同期ペーシングを提供するように構成することもできる。
【0019】
貧血モジュールは、貧血状態に基づき、心不全代償不全の開始を検出し、心不全代償不全の開始の検出に応じて、警告信号を生成するように構成できる。
貧血モジュールは、貧血状態に基づき、警告信号を生成するように構成できる。
【0020】
血液粘度センサは、弾性センサであってもよい。
本発明の上記の概要は、本発明の各実施形態またはあらゆる実装形態を記述するものではない。本発明のより完全な理解と共に、利点および実現形態は、添付の図面と関連させながら、以降の詳細な説明および特許請求の範囲を参照することによって、明らかになり認識される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】血液粘度センサの出力に基づき、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の判定を行う方法を示すフローチャート。
【図1B】血液粘度の温度補正を含む処理を用いることで、貧血状態の判定、および/または貧血の検出を行う方法を示すフローチャート。
【図1C】血液希釈貧血の徴候に基づき、心不全代償不全を早期に警告する処理を示すフローチャート。
【図2A】貧血状態の検出、および/または監視に用いられる医療システムを示すブロック図。
【図2B】貧血、および心不全を監視する医療システムのブロック図。
【図3A】本発明の実施形態による貧血治療の処理を示すフローチャート。
【図3B】貧血監視と貧血治療の両方を提供可能な医療システムのブロック図。
【図3C】貧血治療、および心臓治療と共に、貧血監視と心不全監視を提供する医療システムを示すブロック図。
【図4】心臓内誘導部上に展開された血液粘度センサを含む医療システムを示す図。
【図5】血管内に展開された血液粘度センサを含む医療システムを示す図。
【図6】血管内に展開された無線センサを用いることで、貧血状態を監視し、患者の外部装置に通信可能なように結合された医療システムを示す図。
【図7A】血管内の粘度センサを固定するように構成された拡張可能な固定部を示す様々な図。
【図7B】血管内の粘度センサを固定するように構成された拡張可能な固定部を示す様々な図。
【図7C】血管内の粘度センサを固定するように構成された拡張可能な固定部を示す様々な図。
【図8A】血液粘度を検出するように構成された圧電表面弾性波(SAW)センサを示す図。
【図8B】血液粘度を検出するように構成されたバルク弾性波(BAW)センサを示す図。
【図9】腎臓の一方または両方、および/または心臓に電気エネルギ刺激を送出可能な医療システムを示す図。
【図10】患者の腎臓に電気エネルギ刺激を送出するように構成された医療システムを示す図。
【図11】電流、および関連の電界の形態で、対象者の腎臓へエネルギ刺激を送出することを示す図。
【図12】貧血を治療するために腎神経を刺激するように構成された医療システムを示す図。
【図13】脳の視床下部領域を電気的刺激し、貧血状態を改善、または安定化させるように構成された医療システムの図。
【図14】腎臓、腎神経、視床下部、および/または貧血の治療用の他の身体構造の刺激用のフィードバック処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、様々な修正、および代替形態に適用可能であるが、図面において一例としてその具体例を示し、以降で詳しく説明する。しかし、その意図は、説明される特定の実施形態に本発明を限定するものではないと理解される。逆に、本発明は、添付の請求項によって定義される本発明の範囲内にある全ての修正形態、等価形態、および代替形態を対象とするものとする。
【0023】
例示された実施形態の以降の説明では、その一部を構成し、本発明を実施するために用いられる様々な実施形態は、一例として示されている添付の図面を参照する。他の実施形態も可能であり、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された実施形態に構造的および機能的変更を行ってもよいと理解される。
【0024】
本発明によるシステム、装置、または方法は、本明細書に記述されている特徴、構造、
方法、またはそれらの組合せの一つ以上を含んでいてもよい。たとえば装置、またはシステムは、記述された有意な特徴、および/または処理の一つだけまたは任意の数を含むように実装される。このような装置、またはシステムは、本明細書に記述された特徴の全てを含む必要はないが、有用な構造、および/または機能性を備える選択された特徴を含むように実装されるものとする。このような装置またはシステムは、様々な治療、および/または診断機能を提供するように実装される。
【0025】
貧血の罹患率は、重症の心不全を備えている患者の50%程度である。貧血は、これらの患者が入院することになる際の重要な徴候であることが示されており、該患者は、ヘマトクリットが1%低下するごとに、死亡の危険性が3%上昇することに直面する。本発明の実施形態は、貧血の検出、貧血状態の監視、および/または貧血の治療を行うシステムおよび方法を対象とする。これらの実施形態は、心不全を同時に患っている患者に対して特に有用である。
【0026】
赤血球は、ヘモグロビン、つまり鉄含有酸素運搬金属タンパク質を含み、これは酸素を身体組織に送出する機構を提供する。貧血は、血液内のヘモグロビンの量の低下を含み、それは赤血球の容量の減少、または赤血球の酸素運搬能力の低下によって発生する虞がある。ヘモグロビンは、貧血評価用の一般的な方法である。ヘモグロビンの正常値は、年齢と性別によって変化する。ヘモグロビンの正常値は、男性の場合には約13〜18gm/dLよりも大きく、女性の場合には約12〜16gm/dLよりも大きい。ヘマトクリットもまた、赤血球に占有されている血液容量の割合を提供するので、貧血評価の有用な測定である。血液容量内の赤血球の割合(ヘマトクリット)が低下すると、それに応じて、血液容量の酸素運搬能力が低下する。低下が十分大きいと、患者は貧血になる。ヘマトクリットの正常値は、男性の場合には約45±7%よりも大きく、女性の場合には約42±5%よりも大きい。赤血球数の正常値は、男性の場合には約5〜6百万/mm2よりも大きく、女性の場合には約4〜5百万/mm2よりも大きい。ヘモグロビン濃度の正常値は、男性の場合には約13g/dlよりも大きく、女性の場合には約12g/dlよりも大きい。これらの正常な閾値よりも低い血液パラメータ値は、貧血を示す虞がある。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、貧血状態を監視し報告することを対象とする。一つ以上の血液パラメータを監視し、それらを用いることで、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の判定を行う。血液パラメータは、血液粘度、血液インピーダンス、および/または血液温度等の直接検出されるパラメータであってもよい。追加的にまたは代替的に、血液パラメータは、直接検出された血液パラメータから導出することもできる。たとえばヘマトクリットは、検出された血液粘度または血液インピーダンスから導出される血液パラメータであり、ヘモグロビン濃度および赤血球数は、レーザ散乱、および/または他の光学的測定から導出される血液パラメータである。
【0028】
一つ以上の血液パラメータは、一つ以上の完全にまたは部分的に埋込可能な埋込可能センサ、および/または一つ以上の患者外部センサを用いることで検出される。たとえば血液パラメータは、患者外部センサモジュールを用いることで、光学的技術によって測定される。外部センサモジュールは、有線を介してまたは無線で、患者インタフェース装置に結合される。患者インタフェースは、埋込可能な医療(治療または診断)装置、および/または高度患者管理(APM)サーバ等の患者外部装置にリンクできる。患者インタフェースは、患者のベッドの側らに配置することもでき、および/または測定を容易におよび頻繁に行えるように、一日中、患者が実施することができる。患者インタフェースは、画面、スピーカ、および/または振動要素を含むことができ、それらは、血液パラメータ測定を行うことが予定されているとき、聴覚的、視覚的、または振動性の警告等によって、患者に思い出させるようにするために用いられる。いくつかの構成では、患者外部センサモジュール、たとえば接着剤付きセンサモジュール等は、患者に貼り付けられ、光学的測
定を用いることで、ヘモグロビンおよびヘマトクリット等の血液パラメータを判定できる。埋込可能、および/または患者外部センサは、自動的に、および/または患者や、たとえばAPMサーバを介して患者の健康管理提供者の命令で、血液パラメータ情報を収集するために用いられる。
【0029】
いくつかの実施形態は、血液粘度または血液インピーダンスと、ヘマトクリットレベルとの間の関係に基づき、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の定量化を行う。一般に、所定温度に対して、血液粘度と血液インピーダンスは両方とも、ヘマトクリットと共に増大する。しかし、温度と共に、血液粘度およびインピーダンスのバラツキが一般に存在し、ヘマトクリットの正確な測定を曖昧にする虞がある。血液温度が既知であれば、温度バラツキに対する適切な補正を行うことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、貧血は、血液パラメータ値と閾値との比較に基づき検出される。たとえば医療装置は、現在の血液パラメータ値と、装置内にプログラムされている所定閾値とを比較できる。血液パラメータ値が閾値よりも低い(または閾値が許容可能な最大値を表す場合、閾値よりも高い)場合、患者は貧血であると断言される。いくつかの実施形態では、患者の貧血状態の判定または貧血の検出の前に、一定期間、患者に対して行われる血液パラメータ測定から、基準閾値が最初に判定される。基準閾値を最初に判定した後、以降の血液パラメータ値を基準閾値と比較する。いくつかの実施形態では、血液パラメータの変化率が、閾値の変化率と比較され、血液パラメータの変化率が閾値の変化率を超える場合、貧血と断言される。
【0031】
図1Aのフローチャートは、埋込可能な血液粘度センサの出力に基づき、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の判定を行う方法を示している。血液粘度は、たとえば下大静脈、上大静脈等の大血管内、または右心室等の心腔内に埋込まれたセンサを用いることで検出される。センサはステップS110で、血液粘度によって変調された信号を生成する。血液粘度信号は、ヘマトクリット、つまり貧血状態を示すパラメータ用の代替値として用いられる。
【0032】
血液粘度はステップS120で、一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と比較される。患者の貧血状態はステップS130で、血液粘度と閾値との比較に基づき判定される。たとえば測定された血液粘度は、ヘマトクリット範囲に関連付けられた一つ以上の閾値と比較され、測定された血液粘度がどの範囲内にあるかに基づき、貧血状態が判定される。血液粘度が、ヘマトクリットの正常値よりも低い等、ヘマトクリットの所定値に関連付けられた閾値よりも低い場合、貧血が検出される。患者の貧血状態に関連付けられた情報は、格納することもできる。たとえば格納された情報はステップS140で、貧血状態、たとえば血液粘度測定に関連付けられた範囲、貧血状態の判定に用いられる測定が行われた日時、および/または貧血が検出されたかどうか、を含むことができる。貧血状態、ヘマトクリット値、および/または血液粘度の時間に対する傾向を生成することもできる。
【0033】
血液粘度は、血液温度と共に変化する。図1Bのフローチャートによって示されている、いくつかの実装形態では、貧血状態の判定、および/または貧血の検出は、血液粘度の温度補正を含む処理を用いることで行われる。たとえば血液粘度と血液温度信号がステップS115とステップS125で、埋込可能センサによって生成される。血液粘度はステップS135で、血液温度信号を用いることで温度のバラツキに対して補正される。温度補正された血液粘度はステップS145で、ヘマトクリットレベルに関連付けられた一つ以上の閾値と比較され、ステップS155でこの比較に基づき、患者の貧血状態が判定される。温度補正された血液粘度が、正常なヘマトクリット値に関連付けられた閾値よりも低下した場合、貧血が検出される。
【0034】
心不全代償不全は、血漿の膨張を引き起こし、これは血液内の赤血球の割合を希釈し、ヘマトクリット値を低下させ、血液希釈貧血と呼ばれる状態にする。いくつかの実施形態では、図1Cのフローチャートによって示されるように、血液希釈貧血の徴候を用いることで、ステップS156で心不全代償不全を早期に警告できる。これらの実施形態では、一つ以上のセンサがステップS116で、一つ以上の血液パラメータを示す一つ以上の信号を生成する。検出される血液パラメータ、またはそれらから導出された血液パラメータは、センサ信号に基づきステップS126で測定される。検出、および/または導出された血液パラメータはステップS136で、一定期間、傾向が生成される。血液パラメータの急速な変化は、血液内の血漿容量の突然の膨張を示す虞があり、これは血液希釈貧血をもたらす。血液パラメータの傾向はステップS146で、血液希釈貧血の開始の徴候に対して解析される。たとえば測定された血液粘度(または測定された血液粘度から導出されたヘマトクリット値)が、前の測定から所定量だけ減少した場合、またはこの減少が、所定速度を超える場合、血液希釈貧血を示すことができる。ステップS156では警告信号が生成され、検出された血液パラメータ内の変化に基づき、心不全代償不全の開始の虞を示す。警告信号は、テキストメッセージまたは電子メール等を介して、患者、および/または患者の健康管理提供者にメッセージを送信することを含んでいてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、複数センサ方式を用いることで、心不全代償不全事象の検出または予測を行うことができる。心不全代償不全は一般に、浮腫、つまり身体組織内の流体の蓄積を伴う。浮腫は、胸部インピーダンス測定、体重測定を含む様々な方法で、および/または患者の入力によって監視される。いくつかの実施形態では、代償不全事象の早期警告は、患者の浮腫状態の変化と共に、血液希釈貧血の徴候に基づく。
【0036】
いくつかの実施形態では、複数閾値方式が用いられる。血液パラメータ測定または血液パラメータ傾向(血液粘度、血液インピーダンス、導出されたヘマトクリット等)は、所定の貧血閾値と比較される。たとえば胸部インピーダンス、体重、または患者の入力等によって得られた浮腫パラメータは、所定の浮腫閾値と比較される。心不全代償不全の開始は、これらの比較の両方に基づき検出される。警告は、複数レベル警告であってもよい。たとえば一つのパラメータだけが閾値よりも低い場合、より低い優先度の警告が提供される。両方のパラメータが閾値よりも低い場合には、より高い優先度の警告が提供される。
【0037】
いくつかの実施形態では、単一の閾値だけが用いられ、第1パラメータをこの閾値と比較し、第2パラメータを用いることでこの閾値を調整する。第2パラメータによる閾値の調整は、心不全代償不全の検出感度を適切に増大させるために用いられる。たとえば血液粘度が血液粘度閾値と比較され、浮腫レベルが、血液粘度閾値の調整に用いられる状況を考える。浮腫レベルの増大は、血液粘度閾値を上昇させ、それによって、警告の生成に必要な血液粘度の減少を低減する。言い換えると、浮腫測定は、より好感度にする方向に血液粘度閾値を調整する。浮腫レベルの減少は、血液粘度閾値をより低くし、それによって、血液粘度が、警告を引き起こすために低下しなければならない量を増大させる。
【0038】
図2Aは、貧血状態の検出、および/または監視を行うために用いられる医療システムを示すブロック図である。この特定の実施形態では、血液パラメータセンサ210は血液パラメータを検出し、この血液パラメータによって変調された信号を生成する。埋込可能回路220は、血液パラメータ信号を受取るように構成され、この血液パラメータ信号から導出した情報をメモリ240に格納できる。メモリ240は、貧血の検出に用いられる一つ以上の閾値を格納できる。メモリ240は、貧血状態の傾向または貧血に関連した他の情報を格納することもできる。
【0039】
貧血モジュール230は、たとえば血液パラメータ信号から導出したパラメータを計算
すること、この血液パラメータ信号の基準値またはこの血液パラメータ信号から導出したパラメータを計算すること、検出または導出した血液パラメータの一日、一週間、および/または一ヶ月の平均値を計算すること、貧血の検出、および/または貧血状態の判定のために、検出または導出した血液パラメータを基準、および/または一つ以上の閾値と比較すること、および/または検出または導出した血液パラメータの時間経過傾向を生成することを含む、複数の選択的機能の一つ以上を実現するように構成される。
【0040】
貧血状態に基づき、貧血モジュールは、貧血、および/または貧血状態の変化の検出、および/または心不全代償不全の検出を示す警告信号を生成できる。埋込可能回路、貧血モジュールまたは両方は、心臓モニタ、ペースメーカ、除細動器、または心臓再同期治療装置等の埋込可能な心臓治療または監視装置の筐体内に組込まれる。いくつかの実施形態では、貧血モジュール230は、患者の外部にあり、埋込可能回路220に無線通信を行う。
【0041】
既に議論したように、赤血球生成刺激剤を含む薬剤を用いることで貧血を治療するが、これらの薬剤は、血栓塞栓症の危険性を増大させる虞がある。血栓塞栓症の危険性は、血液粘度と共に増大する。所定の実施形態では、貧血モジュール230は、たとえば血栓塞栓症の危険性のレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と、血液粘度とを比較することによって、血栓塞栓症の危険性を評価できる。貧血状態に対して本明細書に記述されたものと同様の方法に従って、患者の血栓塞栓症の危険性に関連した情報を格納し、傾向を生成することができる。さらに血液粘度が、血栓塞栓症の危険性の所定の許容可能な最大値に関連した閾値を超える場合、貧血モジュール230は血栓塞栓症の警告を発することができ、それは貧血モジュール230によって提供される他の警告と区別することができる。
【0042】
図2Bは、貧血および心不全を監視する医療システムのブロック図である。図2Bに示したように、医療システムの第1部分は、患者の身体内に埋込まれた患者内部部品を含み、第2部分は患者外部にある。患者内部の部分は、血液粘度センサ211を含み、選択的に血液温度センサ205を含んでいる。粘度および温度センサ211、205は、血管または心腔内に埋込まれるように構成される。血液粘度センサ211は、血液粘度によって変調された信号を受取り、この信号は貧血モジュール231によって受取られる。血液温度センサ205によって生成された血液温度信号は、貧血モジュール231によって用いられ、血液温度の測定、および/または血液粘度、または血液粘度信号から導出されたヘマトクリット等のパラメータの温度補正を行う。
【0043】
貧血モジュール231は、温度補正された血液粘度またはヘマトクリットを、基準または一つ以上の閾値と比較し、貧血の検出または患者の貧血状態の判定、および/または血栓塞栓症の危険性の判定を行う。たとえば貧血の検出、および/または貧血状態の判定を行うために、貧血モジュール231によって実装される処理の一つは、血液粘度、または血液粘度信号から導出されたパラメータ値を、一つ以上のプログラム可能な閾値と比較することを含んでいる。別の処理は、血液粘度またはヘマトクリットの以前の測定に基づき、特定の患者に対して時間経過にわたって生成された基準値を使用することを含んでいる。基準は、たとえば一週間や一ヶ月等の所望の時間間隔で測定された一連の血液粘度値の、たとえば平均値、中央値、フィルタ処理値等の中心傾向を計算することによって確立される。それから、血液粘度を基準と比較し、貧血状態の変化を検出する。
【0044】
たとえば一つの状況では、血液粘度が、少なくとも一つのオフセット閾値だけ基準血液粘度よりも低下すると、貧血が起こっていると断言される。一例では、オフセット値は、基準血液粘度の固定されたまたはプログラム可能な割合(たとえば5%、10%、20%等)である。オフセット値は一般に、血液粘度の正常な生理学的バラツキが、貧血検出を
起動しないようにするために設定される。別の例では、異なる閾値を選択することによって、貧血が起こりそうであることを、その比較が予測する(たとえば血液粘度が、その基準値より少なくとも10%低くなると、後に貧血が起こることが予想され、血液粘度が、その基準値より少なくとも20%低くなると、現在貧血が起こっていると断言される)。貧血であることが予測または断言される場合、その情報は、通信回路251を介して、遠隔計測されるか、もしくは、患者の健康管理提供者に通信される。
【0045】
別の状況では、患者の血液粘度が、血栓塞栓症の危険性の最大値に関連した少なくとも一つの血栓塞栓症のオフセット値だけ、プログラム可能な閾値レベル、または既に判定されている基準血液粘度より上昇した場合、血栓塞栓症警告が生成される。上記の貧血検出処理と同様に、血栓塞栓症のオフセット値は、基準血液粘度の固定されたまたはプログラム可能な割合(たとえば5%、10%、20%等)であってもよい。血栓塞栓症に対する警告は、患者が、貧血に効くが、血栓塞栓症の危険性を増大させる薬剤を摂取しているときに特に有用である。
【0046】
患者の貧血状態、および/または血液粘度についての情報、および/または検出された貧血事象は、メモリ241内に格納される。たとえば貧血モジュールは、メモリ内に格納された貧血状態情報の傾向を生成することができる。この傾向からの偏差は、貧血状態が悪化または改善していることを示す可能性がある。貧血モジュール231は、通信回路251を介して、患者の外部装置260に通信できる。外部装置260は、簡単な警告から、患者の情報の格納および管理、および/または一つ以上の治療装置の制御を行うように構成された高度患者管理サーバへの装置プログラム部の範囲の回路を含むことができる。
【0047】
医療装置は、心不全診断モジュール242を選択的に含んでいてもよい。一つの実装形態では、心不全の状態は、貧血モジュール231から受取った情報に少なくとも部分的に基づき、心不全診断モジュール242によって判定される。たとえば患者の貧血状態の変化に基づき、心不全代償不全が示される。いくつかの構成では、心不全の状態は、浮腫の存在(胸部インピーダンスを用いることで示される)、および/または貧血状態(血液粘度、および/またはヘマトクリットレベルによって示される)に基づき判定される。上で議論したように、心不全代償不全は、浮腫を伴うことが多く、それは胸腔内を含む身体内に存在する流体の増加である。胸部インピーダンスの測定は、浮腫を検出するため、および/または胸腔内の流体の蓄積量を測定するために用いられる。心不全診断モジュール242は、心不全状態の判定、心不全の進行または回復の監視、および/または貧血状態および/または胸部流体測定に基づき、心不全代償不全の検出を行うことができる。
【0048】
貧血モジュール231または心不全診断モジュール242の一方または両方は、通信回路251を介して、患者外部装置260に結合されている。一つの構成では、貧血モジュール231、および/または心不全モジュール242は、患者外部装置260を介して、患者または健康管理提供者に送られる警告を生成できる。たとえば警告は、聴覚的または視覚的警告、テキストメッセージまたは電子メールの形態をとることができる。患者の貧血、および/または心不全状態についての情報は、患者外部装置260に通信してもよく、モニタ270を介してグラフィック的にまたはテキスト的に表示してもよい。
【0049】
一例では、警告通信は、プログラム部または他の外部装置260によって、埋込可能な医療装置が問合せを受けた次に発生する。別の例では、埋込可能な医療装置自体が、外部装置260に警告情報の遠隔計測通信を開始する。さらに別の例では、たとえば患者が認識可能な音または振動の形態で、埋込可能な医療機器によって患者に貧血であることが警告される。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態は、患者に薬剤を投与すること、または一つ以上の身体構
造を電気的刺激すること等によって、貧血を治療するシステムおよび方法を対象とする。図3Aは、本発明の実施形態による貧血治療の処理を示すフローチャートである。一つ以上の血液パラメータはステップS310で検出され、この血液パラメータによって変調されたセンサ信号が生成される。いくつかの実装形態によると、血液パラメータの検出は、埋込可能センサを用いることで実現される。他の実装形態では、血液パラメータは、患者外部センサを用いることで検出される。さらに他の実装形態では、埋込可能センサと患者外部センサの両方が用いられる。
【0051】
血液パラメータはステップS315で、一つ以上の閾値と比較される。貧血状態はステップS320で、血液パラメータと一つ以上の閾値との比較に基づき判定される。一つ以上の血液パラメータが、閾値よりも低下している(または閾値およびパラメータに依存して閾値よりも高い)ことを、この比較が示す場合、貧血が検出される。貧血治療はステップS330で、貧血状態に基づき行われる。貧血状態は、選択的に格納され、および/または貧血状態の時間経過傾向が生成され格納される。いくつかの実施形態では、ステップS310〜330は連続的なループで行われ、血液パラメータ信号を用いることでフィードバック信号を生成し、貧血治療を制御する。
【0052】
図3Bは、貧血監視と貧血治療の両方を提供可能な医療システムのブロック図である。血液パラメータセンサ312は、貧血に関連した生理学的パラメータによって変調された信号を生成する。貧血モジュール331は、血液パラメータ信号を受取り、この血液パラメータと閾値または基準値とを比較し、貧血の検出、および/または患者の貧血状態の判定を行う。貧血状態は、一定期間にわたっての傾向が生成され、メモリ341内に格納される。貧血が検出されるか、または患者の貧血状態が悪化している場合、貧血モジュール331は警告を生成し、患者、および/または患者の健康管理提供者に通知する。
【0053】
さらに上記の貧血監視機能に加えて、図3Bの医療システムは、貧血を治療するための処置を行う機能を備えている。医療システムは、貧血治療モジュール333を含み、それは患者内部、および/または患者外部治療送出モジュール390の動作を制御する。
【0054】
たとえばいくつかの構成では、貧血治療は、赤血球生成を増加させるための一方または両方の腎臓、中枢神経系、脊髄、または脳等の身体構造の電気的刺激を含んでいる。たとえば腎臓は、赤血球生成促進因子(EPO)生成の主要源であり、これは赤血球を生成するための骨髄を刺激するホルモンである。腎臓構造(腎臓の傍尿細胞、糸球体領域または腎臓の他の領域等)の電気刺激は、赤血球生成促進因子の生成を増加させ、それはさらに赤血球の生成を刺激し、貧血を緩和すると信じられている。いくつかの構成では、貧血治療は、腎神経、および/または視床下部の電気刺激を含んでいる。いくつかの構成では、貧血治療は、患者への薬剤の投与を含んでいる。たとえば薬剤は、ダーベポエチンα、および/またはエポエチンα等の赤血球生成刺激剤、つまり赤血球生成刺激剤を含んでいてもよい。薬剤は、電気駆動の薬剤ポンプまたは薬剤パッチによって患者に投与される。
【0055】
貧血治療モジュール333は、一つ以上の血液パラメータセンサからの情報に基づき、制御信号を生成し、患者に行われる貧血治療を制御できる。一つの状況では、血液粘度センサが、血液パラメータセンサ312として用いられる。治療制御信号の生成は、血液粘度測定から判定される血栓塞栓症の危険性を考慮することもできる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態は、心臓ペーシング治療の送出と共に貧血治療の送出を含んでいる。図3Cは、貧血および心臓治療用の追加の部品と共に、図2Bの部品等の貧血監視部品を含む医療システムを示している。図3Cに示した医療システムは、心臓に電気的結合された心臓電極373を含み、それは心臓信号を検出し、心臓組織に電気刺激を送出し、ペーシング、および/または他の種類の心臓電気刺激治療を行う。心臓治療モジュ
ール372は、検出した心臓信号、および/または他の情報に基づき、心臓電極373を介して、心臓刺激治療の送出を制御する回路を含んでいる。たとえば心不全診断モジュール242、および/または貧血モジュール231によって提供された情報は、心臓治療の調整または起動に考慮される。
【0057】
従って、いくつかの構成では、心臓治療モジュールは、心不全状態、および/または貧血状態に関する情報を自動的に処理し、患者の貧血状態、および/または心不全状態の変化に応じて、心臓治療を調整する。いくつかの構成では、貧血状態、および/または心不全状態は、患者外部装置260を介して、患者の健康管理提供者に報告される。健康管理提供者は、プログラミング命令を入力し、心臓治療モジュールに対してこれらをアップロードすることによって、患者の治療の調整を行うことができる。いくつかの実施形態では、医療システムは、貧血状態情報、心不全状態情報、および/またはシステム内に手動で入力され、システムによって自動的に検出された患者についての他の情報に基づき、所定の選択肢または推奨された治療パラメータを健康管理提供者に提示できる。いくつかの実装では、貧血状態または貧血の検出に基づき、心臓再同期ペーシング治療パラメータが推奨されても、心臓再同期ペーシング治療が、心臓治療モジュール372によって自動的に開始されても調整されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、患者外部センサ265も、患者外部装置を介して提供される。患者外部センサ265は、体重センサ、血圧センサ、赤血球数、ヘモグロビン、および/またはヘマトクリットの測定用のセンサを含んでいてもよい。たとえば光学的、および/またはレーザ散乱検査を用いることで、患者のヘモグロビン、および/またはヘマトクリットレベルを検査できる。患者外部センサ265によって提供される情報は、貧血モジュール231、および/または心不全診断モジュール342によって用いられ、貧血および心不全状態をそれぞれ判定する。患者外部センサ265からの情報は、本明細書に記述された患者内部センサから獲得された情報と共に用いられ、高度診断を提供する。
【0059】
図3Cに示した医療システムは、貧血治療モジュール333を含んでいる。貧血治療モジュール333は、外部または内部貧血治療用の送出回路390を制御するために用いられる。いくつかの実施形態では、貧血治療制御は、薬剤ポンプまたは電気的起動可能なパッチを介して、抗貧血薬剤を開放することを含んでもよい。薬剤ポンプまたはパッチが、患者外部治療部品390を含む場合、貧血治療モジュール333は、これらの部品390に無線通信を行い、薬剤治療送出を制御する。別の構成では、患者外部装置260は、薬剤ポンプまたは他の治療送出部品390に通信を行い、貧血治療を制御する。
【0060】
いくつかの実装形態では、貧血治療モジュール333は、患者内部の電気刺激治療を提供するように構成された電気刺激部390を制御できる。たとえば腎臓または脳構造の電気刺激は、赤血球の生成に役立ち、貧血状態を緩和すると信じられている。たとえば電気刺激治療は、赤血球生成促進因子の生成を増加させるように実装され、それはさらに、赤血球の生成を刺激し、それによって患者の貧血状態を改善する。
【0061】
既に議論したように、血液粘度は、貧血状態の判定、および/または貧血検出の基準として用いられる。いくつかの構成では、血液粘度は、血管または心腔内に展開される弾性センサを用いることで測定される。図4は、心臓リズム管理(CRM)装置405の導線系410上に展開された心臓内血液粘度センサ496を示している。心臓リズム管理装置405の筐体401内に、血液粘度信号の生成、貧血モジュール、および/または貧血治療モジュールに含まれる追加のセンサ回路を組込むこともできる。心臓リズム管理装置405は、心不全診断の提供、心臓不整脈の検出、および徐脈ペーシング、心拍感応型ペーシング、抗頻脈性不整脈ペーシング、細動除去/心臓除細動衝撃、閾値以下の心臓刺激、および/または心臓再同期治療等の様々な心臓電気刺激治療を提供する回路を含んでいて
もよい。
【0062】
図4に示したように、心臓内導線系410は、患者の心臓内に挿入される。心臓内導線系410は、心臓の電気的心臓活動を検出し、心臓に電気刺激を送出するように構成された心臓電極451〜456に加えて、血液粘度センサ495を含んでいる。心臓装置405の筐体401に一部は、一つまたは複数の缶電極または不関電極として選択的に機能できる。心臓電極451〜456は、患者の胸部インピーダンスを検出するために用いることもできる。導線系410を介して、追加のセンサを展開することもできる。たとえば心臓内導線系は、圧力センサ496、および/または血液温度センサ497を含んでいてもよい。
【0063】
図4に示した心臓電極451〜456とセンサ495〜497は、一つの可能な構成を示している。心臓内、および/または皮下胸腔内および胸腔外電極を含む多くの他の構成を用いることもでき、本発明の範囲内にあると考えられる。導線系410は、有線、および/または無線結合のセンサを含んでいてもよい。無線の構成では、センサからの検出信号は、埋込可能な心臓装置405に無線で通信すること、および/または患者外部装置に無線で通信することができる。
【0064】
図5は、血管内に展開した血液粘度センサ550を含む医療システムの代替の実施形態を示している。この実施形態では、埋込可能な医療装置(IMD)520は、血液粘度センサ550に結合され、心臓510の一つ以上の心腔内に展開された心臓内導線系530をさらに含んでいてもよい。埋込医療装置520は、心臓活動の監視、および/または心臓内導線系530を介して、心臓に送出される電気刺激による心臓治療の送出を行う検出、監視および治療機能を備えていてもよい。図5に示されているように、血液粘度センサ550は、下大静脈や上大静脈等の血管内に展開される。血管粘度センサ550は導線540を介して、埋込医療装置520の筐体内に展開可能な貧血モジュールに結合される。埋込医療装置520は、患者外部装置570および選択的表示部580に、無線リンク560を介して通信可能なように結合される。
【0065】
図6は、貧血状態を監視する医療システムの実施形態を示している。システムは、血管内に展開され、固定部630によって固定されている血液粘度センサ620を含んでいる。血液粘度センサ620は、粘度センサ620と、患者外部装置650および表示部660との間の無線通信リンク640を確立可能な通信回路を含んでいる。血液粘度センサ620は、たとえば患者外部装置650の部品である、センサ読取部によって放出されたRFエネルギによって駆動される。血液粘度センサ620は、血液粘度を検出し、血液粘度を示す信号を外部装置650に送信できる。
【0066】
いくつかの実装形態では、血液粘度センサ620は粘度を検出し、貧血モジュールが展開されている患者外部装置650に、血液粘度と共に変化する信号を送信する。たとえばいくつかの構成では、粘度センサ620によって生成される信号の周波数が、血液粘度と共に変化してもよい。
【0067】
いくつかの実装形態では、粘度センサ620は、貧血モジュール回路と共に血管内に展開される。この追加の回路は、バッテリまたは充電可能な電源等の患者内部の部品用に追加のエネルギ蓄積機能を必要としてもよい。この実装形態では、患者外部装置650に送られる信号は、たとえば検出された信号から導出されたヘマトクリットの測定、貧血状態、および/または検出された血液粘度から判定された貧血事象等、検出された血液粘度から導出され、格納される可能性がある情報を含んでいてもよい。
【0068】
図7A〜図7Cは、血管604内に粘度センサ620を固定するように構成された拡張
可能な固定部630をより詳細に示している。粘度センサ620は、繋ぎ部625によって、拡張可能な固定部630に固定される。拡張可能な固定部630は、血管604内に挿入される際、折り畳み状態(図7A)で経脈管的に送出される網面を含むステント状構造を備えていてもよい。この例では、拡張可能な固定部630は、カテーテル790の遠端部またはその近傍に結合される。拡張可能な固定部630を拡張するために、カテーテル790は、膨張可能な風船792を含んでいてもよく、粘度センサ620が、血管604内に適切に配置された後、風船790は膨張される。風船792の膨張は、拡張可能な固定部630が、血管604の壁に隣接するまで、拡張可能な固定部630を拡張する。拡張可能な固定部630は、十分な力で血管604の壁に隣接し、血管604内で膨張可能な固定部630と血液粘度センサ620を受動的に固定する。いったん拡張可能な固定部630が拡張され、血管604内に固定されると、風船790は収縮し、血管604からカテーテル790を除去しやすくする。血液粘度センサに適した追加の固定技術は、同一所有の特許文献1に記述され、参照によって本明細書に組込まれる。
【0069】
図8Aを参照すると、一例では、血液粘度センサは、圧電表面弾性波(SAW)センサ830を含んでいる。この例では、センサ面832は、入力櫛形電極834、出力櫛形電極836、および絶縁層を結合させた圧電層831を含んでいる。一例では、少なくとも入出力電極834、836は、圧電層831の上部に結合させる。この例では、少なくとも一つの櫛形電極834は、たとえば交流電圧信号を用いることで駆動され、圧電表面弾性波変換器を駆動し、ある周波数で表面832に沿って表面弾性波を生成する。振動面832は、血液等の流体に接触している。この例では、血液の粘度は、表面832の振動数を変化させる。たとえば血液粘度が高いと振動数は低下し、血液粘度が低いと、振動数は上昇する。表面832に接触している血液も、この血液に送られる弾性波によって、共振減衰および挿入損失を引き起こし、これも血液の粘度に関連付けられる。この振動数のシフトまたは電力挿入損失を用いることで粘度信号を生成し、血液の粘度測定に変換できる。所定例では、圧電表面弾性波センサ830は、異なる圧電材料配置を選択することによって、異なる表面弾性波モードを備えている。たとえば一例では、センサ830は、圧電表面弾性波の横方向の変位が、表面832に対して法線方向である、剪断垂直表面弾性波(SV−SAW)モードで動作する。一例では、センサ830は、圧電表面弾性波の横方向の変位が、表面832に対して平行である、剪断水平表面弾性波(SH−SAW)モードで動作する。
【0070】
図8Bを参照すると、別の例では、弾性粘度センサは、バルク弾性波(BAW)センサ840を含んでいる。バルク弾性波センサの例は、たとえば厚み剪断モード(TSM)共振器および剪断水平弾性板モード(SH−APM)センサを含んでいる。所定例では、バルク弾性波センサ840は、上部および底部薄膜電極844、846の間に挟持された圧電層841を含んでいる。この例では、交流電圧を電極844、846に印加し、ある周波数で厚み剪断モードで圧電層841を振動させる。振動面842に接触している血液等の流体は、振動面842と機械的に相互作用する。図8Bに示されている曲線は、バルク弾性波センサ840、流体、およびそれらの間の固体液体界面の断面にわたる変位を表している。表面842は、基本周波数で振動されると想定されるが、他の周波数が用いられる可能性も、高調波等を生じさせる可能性もあると理解されるべきである。上記の圧電圧電表面弾性波センサ830の例のように、血液の粘度は、弾性波の振動数を変化させ、たとえば流体粘度が高くなると、振動数は低下し、流体粘度が低くなると、振動数は上昇する。表面842に接触している液体は、共振減衰および周波数シフトを引き起こし、それは血液の粘度に関連付けられる。一例では、周波数変化を用いることで、弾性粘度センサ840は、血液の弾性測定に変換される信号を生成する。
【0071】
一例では、弾性血液粘度センサは、微小電気機械システム(MEMS)ベースのセンサを含んでいる。一例では、MEMSベースのセンサは、微小機械加工を用いることで製造
される固体状態弾性波変換器を含んでいる。一例では、MEMSセンサは、固体状態表面弾性波(SAW)変換器を含んでいる。別の例では、MEMSセンサは、固体状態バルク弾性波(BAW)変換器を含んでいる。これらの例では、弾性センサ830、840何れかの変換器は、一つの基板内の信号処理または調整回路と共に製造される。別の例では、センサ830、840何れかの変換器は、一つのパッケージ内の信号処理または調整回路と共にパッケージされる。別の例では、弾性粘度センサは、弾性センサ830、840何れかの変換器だけを含み、信号処理または調整回路は、患者の内部または外部のいずれかの別の装置内に配置される。一例では、センサおよび回路は、チタンまたは他の生体適合性材料の筐体または箱内にパッケージされ、検出面を露出させる。所定例では、センサパッケージは、薬剤溶出物質の被膜を含んでいる。一例では、センサパッケージは、少なくとも検出面に薬剤溶出物質の被膜を含んでいる。
【0072】
いくつかの構成は、貧血を治療するために、一つ以上の身体構造に電気的刺激治療を提供する機能を備えている医療装置を含んでいる。上で議論したように、腎臓はホルモン赤血球生成促進因子の生成の主要な部位であり、それはさらに、骨髄に赤血球を生成させることを担っている。赤血球促進因子の生成を含む腎機能に影響を与える電気刺激治療は、同一所有の特許文献2で議論され、参照によって本明細書に組込まれる。特許文献2は、糸球体、ボーマン嚢、緻密斑、尿細管、傍尿細管網、集合管、糸球体輸入細動脈、または腎顆粒細胞の一つ以上の電気刺激によって腎機能を調節することを記述している。たとえば傍尿細胞が、赤血球促進因子の刺激用の適切な部位であってもよい。いくつかの研究によると、腎臓の傍尿細胞は、赤血球促進因子合成の部位である。たとえば非特許文献1参照。腎交感神経が、赤血球促進因子の生成を少なくとも部分的に担っていることも示されている。たとえば非特許文献2を参照。
【0073】
貧血の治療は、腎構造の電気刺激を含んでいる。電気刺激は赤血球促進因子の生成を増加させ、それによって赤血球濃度を増加させ、貧血を緩和すると信じられている。いくつかの実施形態では、電気エネルギ刺激は、たとえば糸球体、傍尿細管網、または腎神経等の一つ以上の腎構造に印加され、それによって赤血球促進因子の生成を調節する。
【0074】
図9は、腎臓904の一方または両方等の対象者の身体の一つ以上の部分に、電気エネルギ刺激を送出する機能を備えた医療システム900の一実施形態を示している。選択的に、医療システムは、心臓906に電気刺激を送出する機能を備えていてもよい。この実施形態では、システム900は、心臓治療機能(たとえば徐脈治療、頻脈治療、または心臓再同期治療の一つ以上を提供できる)を含むパルス発生器等の埋込可能な医療装置(IMD)910を含み、それは一本以上の導線912を介して、腎臓904、心臓906、および/または他の身体構造に結合されている。埋込医療装置910は、対象者の胸部、腹部、または他の場所の皮下に埋込むことができる。腎臓に刺激を加える導線912は、導線の近端部から遠端部に延び、遠端部は、埋込医療装置910によって生成された電気エネルギ刺激を腎臓904に送出する一つ以上の電極を含んでいる。
【0075】
さらに医療システム900は、血液粘度センサまたは血液インピーダンスセンサ等の一つ以上のセンサ925を含み、このセンサを用いることでフィードバック信号を生成し、腎臓904に送出される電気刺激を制御する。図9に示した構成では、センサ925は、導線926を介して埋込医療装置910に電気的結合されているが、無線接続も可能である。既に議論したように、埋込医療装置910内の貧血モジュールは、センサ925によって生成されたセンサ信号を受取る。貧血モジュールは、センサ信号を用いることで、貧血の検出、貧血状態の判定、および/または腎臓904に送出される電気刺激治療を制御するためのフィードバック信号の生成を行うことができる。
【0076】
さらに図の医療システム900は、外部ユーザインタフェース918として機能する患
者外部装置を含んでいる。外部ユーザインタフェース918は、埋込医療装置910から情報を受取り、埋込医療装置910に情報を送ることができる。たとえば一つ以上の腎構造(糸球体、ボーマン嚢、緻密斑、尿細管、傍尿細管網、集合管、糸球体輸入細動脈、糸球体輸出細動脈、腎顆粒細胞、または腎神経等)に印加される一つ以上の電気エネルギパラメータ(たとえばエネルギ注入場所、エネルギ注入持続時間、エネルギ注入強度、エネルギ注入周波数、エネルギ注入極性、エネルギ注入電極構成、またはエネルギ注入波形等)の新しい値は、外部ユーザインタフェース918に手動で入力され、埋込医療装置910に送られ、電気エネルギ刺激のパラメータを変更し、腎臓の赤血球促進因子の生成の所望の変化をもたらすことができる。追加的に、外部ユーザインタフェース918を用いることで、患者の健康関連の情報の一つ以上の入力を受取ることもできる。所定の実施形態では、外部ユーザインタフェース918は、システム900用の情報を外部で処理するために用いられる。外部ユーザインタフェース918は、遠隔測定を用いることで、埋込医療装置910に無線通信920を行う。外部ユーザインタフェース918は、LCDまたはLED表示部等の視覚的表示ユニットまたは他の表示ユニットを含み、システム900の動作または結果に関する情報を、患者または健康管理提供者にテキスト的にまたはグラフィック的に表示する。
【0077】
図10の簡略化されたブロック図は、システム900の一つの概念的実施形態を示し、システム900は、患者の腎臓904に電気エネルギ刺激を送出できる。図のように、システム900は、一つ以上の導線912を介して、一方または両方の腎臓904に結合されたパルス発生器等の埋込医療装置910を含んでいる。この実施形態では、一つ以上の導線912は、腎静脈1002を介して、腎臓904への血管アクセスを提供する。
【0078】
各導線912は、埋込医療装置910の絶縁ヘッダ1006に結合されている導線近端部から、腎臓領域に配置されている導線遠端部916まで延びている。各導線遠端部916は、一つ以上の電極1008を含み、埋込医療装置910によって生成された電気エネルギ刺激を腎臓に送出する。一つ以上の電極1008は、一つ以上の腎機能関連のパラメータについての情報を検出するためにも用いられる。導線電極1008に加えて、埋込医療装置910の密閉容器1010(一般に缶電極1012と呼ばれる)上、または絶縁ヘッダ1006(一般にヘッダ電極1014と呼ばれる)上に、電気エネルギ刺激の送出に利用可能な他の電極を配置できる。
【0079】
図のように、埋込医療装置910は、密閉容器1010内に配置されている貧血治療モジュール1018、電源1016、電気刺激回路1022、電子構成スイッチ回路1024、貧血モジュール1026、通信モジュール1028等の電子回路部品を含んでいる。電源1016は、上記の埋込医療装置内部のモジュールおよび回路の全てに動作電力を提供する。
【0080】
貧血治療モジュール1018は、とりわけ、プロセッサ1030、メモリ1032、およびタイミング回路1034を含んでいる。プロセッサ1030は、患者の貧血状態についての情報を用いることで、治療制御信号を判定するように構成される。治療制御信号は、次に電気刺激回路1022に通信されるが、電気刺激回路1022は、一つ以上の選択された電極1008、1012、または1014によって腎臓904に送出可能な電気エネルギ信号を生成するように構成される。様々な例では、一つ以上の送出電極を選択し、実質的に大部分の電気エネルギ信号が、一つ以上の腎構造(たとえば糸球体、ボーマン嚢、緻密斑、尿細管、傍尿細管網、集合管、糸球体輸入細動脈、糸球体輸出細動脈、または腎顆粒細胞等)を通過するようにする。電気刺激回路1022は、電子構成スイッチ回路1024によって一つ以上の電極1008、1012、または1014に選択的に結合される。
【0081】
電気エネルギ刺激は、様々な方法で腎臓904に送出される。たとえば電極1008、1012、1014によって腎臓904に送出される電気エネルギ刺激は、約0.1Hz〜10kHzの間の周波数を含んでいる。このような実施形態の一つでは、信号周波数は、約1Hz等の実質的に1KHzよりも低いバースト周波数を備えた一つ以上のバーストで送出される。別の実施形態では、電極1008、1012、1014によって腎臓904に送出される電気エネルギ刺激は、約50KHzよりも高い周波数を含んでいる。さらに別の実施形態では、電極1008、1012、または1014によって腎臓904に送出される電気エネルギ刺激は、連続周期またはパルス周期の電流または電圧を含んでいる。
【0082】
図10に示した医療システム900は、血液パラメータセンサを用いることで提供されるフィードバック信号を介して、電気刺激回路1022によって送出される電気刺激治療の継続的な調整を実現する。埋込可能な血液パラメータセンサ1027は、血液粘度または血液インピーダンス等の貧血に関連した血液パラメータを連続的または周期的に測定し、貧血モジュール1026にセンサ信号を提供する。たとえば血液粘度が検出されるパラメータである場合、貧血モジュール1026は、血液粘度の現在のレベルと前のレベルとを比較し、患者の血液粘度が上昇しているか下降しているかを判定する。血液粘度が変化すると、貧血モジュールは、患者の血液粘度(または計算されている場合には、ヘマトクリット値)、および/または貧血状態を貧血治療モジュール1018に通信する。患者の貧血状態が悪化している場合、この悪化は、貧血治療モジュール1018を起動し、腎臓904に送出される電気刺激治療を修正し、より強い治療を提供する。その一方、患者の貧血状態が改善している場合、これは腎臓904に送出される電気刺激治療を一定に保つように、貧血治療モジュール1018を起動するか、またはより弱い治療を提供するようにできる。従って、図10の構成は、患者の貧血状態が変化している場合、電気刺激治療の継続的フィードバックおよび調整を実現する。
【0083】
さらにこの実施形態の医療システム900は、患者外部ユーザインタフェース918を含んでいる。たとえば患者外部ユーザインタフェース918は、貧血治療に関連した手動で入力された所望の値を受取り、通信モジュール1028を介して、この値を埋込医療装置910に通信する。手動で入力した値は、メモリ1032に格納された事前にプログラムしたパラメータ値の代わりに用いることもできる。いくつかの実施形態では、外部ユーザインタフェース918は、血液パラメータの測定に用いられる外部センサを含むことも、この外部センサにリンクすることもできる。外部センサからの情報を用いることで、フィードバック信号を提供し、電気刺激治療を制御することもできる。
【0084】
埋込医療装置910は、複数の個別にプログラム可能な電気刺激チャネルを含むことができ、各刺激チャネルは、複数の電極に接続可能である。各チャネルの電極構成および刺激特性は、自動的にまたは手動で選択される。たとえば各チャネルは、任意の数の電極に結合されている。さらに各チャネルは、振幅、パルス幅、パルス振幅、周波数、デューティサイクル、および他の刺激チャネル信号に対する位相シフトに関して別個にプログラム可能であってもよい。この刺激特性の柔軟性によって、検出された血液パラメータによって示されるように、患者の貧血状態の所望の変化が実現されるまで、医療システムの刺激出力の閉ループフィードバック調整を可能にする。
【0085】
図10および本明細書に図示されている他の図面は、様々なモジュール、回路、および様々なシステムのインタフェースの所定の概念化を示しており、これはハードウェア内に実装することも、マイクロプロセッサまたは他のコントローラ上で実行される一つ以上の連続のステップとして実装できることにも注意すべきである。このようなモジュール、回路、およびインタフェースは、概念的な明確化のために別個に示されているが、図示されている様々なモジュール、回路、およびインタフェースは、別個に具現化する必要はなく
、組合わせる、もしくは実装することもできる。
【0086】
図11は、電流1104および関連の電界1106の形態で、対象者の腎臓904に電気エネルギ刺激を送出する処理のシステム900を示している。所定の実施形態では、電気エネルギ刺激は、ほぼゼロの平均振幅、約0.1Hz〜約1MHzの周波数、および約0.1〜10V/cmの電界強度の生成に十分な最大振幅を備えているパルス電圧信号を含んでいる。
【0087】
腎臓904は豆形の構造を備え、その円形の外側凸部は、対象者の身体の側部に面している。門と呼ばれる腎臓904の内側の凹面は、腎動脈、腎静脈1002、神経、尿管1004によって貫通され、尿管1004は、腎臓904から膀胱に尿を運ぶ。図のように、システム900は、少なくとも一つの導線912を介して、腎臓904に電気的結合された埋込医療装置910を含んでいる。導線は、埋込医療装置910の絶縁ヘッダ1006に結合された、導線近端部914から、腎静脈1002内に配置された導線遠端部916まで延びている。導線遠端部は、腎臓構造の双極刺激(図示せず)または単極刺激に使用するための一つ以上の電極を含んでいてもよい。図11は単極刺激を示しており、電界1106は、缶電極1012、および/またはヘッダ電極1014と、腎臓内またはその近傍に配置された導線電極1008との間に生成される。この実施形態では、導線912は、下大静脈1102を介して、腎静脈1002に血管アクセスされる。別の実施形態では、導線遠端部916は、弓状静脈、葉間静脈、または腎区静脈内等の腎臓904内に深く配置される。さらに別の実施形態では、導線912は、尿道−膀胱−尿管1004のアクセスを介して送出される。
【0088】
図のように(しかし変更も可能なように)、導線遠端部916は、腎臓904の近傍(つまり、腎臓904内、上、または周り)に配置した少なくとも一つの埋込可能な電極1008を含み、密閉容器1010(缶電極1012を介して)または絶縁ヘッダ1006(ヘッダ電極1014を介して)は、少なくとも部分的に導電性であることによって、別の埋込可能な電極として機能する。このように埋込医療装置910によって提供され、腎臓904内、上、または周りに配置された導線電極1008によって送出される電気エネルギ信号は、腎臓の一部を介して、缶電極1012またはヘッダ電極1014に戻ることができる。所定の実施形態では、電気エネルギ刺激は、対応する電界1106を備えている電流1104の形態で送出される。
【0089】
電流1104および対応する電界1106は、腎臓904の一つ以上の構造が、一つ以上の腎機能に影響を及ぼす、および、より詳細には、腎臓による赤血球生成促進因子の生成に影響を及ぼすのに十分な電流1104または電界1106内に浸されるようにする。本システム900は、図11に示した電極構成に加えて、様々な電極構成、および様々な電気接点(たとえばパッチ)または電極で動作するように適応させる。たとえば複数の導線912を腎臓の異なる場所に配置し、電流1104または電界1106の分布を改善できる。代替的にまたは追加的に、導線912は、一つ以上の追加の電極を備えることができ、たとえばこの一つ以上の電極は、電流1104および対応する電界1106用の陰極として動作する。
【0090】
上で議論したように、腎神経は、赤血球生成促進因子の生成に重要であり、血液ヘマトクリットの維持に関与していることが、研究により示されている。従って、いくつかの実施形態による貧血の治療は、赤血球生成促進因子の生成に影響を与えるための腎神経の電気刺激を含んでいる。図12は、電気刺激パルスを介して、または薬剤注入によって、腎神経を刺激するように構成された医療システムを示している。腎神経を刺激するように構成された埋込医療装置1210は、心臓ペースメーカまたは神経刺激部と同様の電気装置であってもよく、および/または化学物質注入装置であってもよい。図12に示したよう
に、埋込医療装置1210は、心臓刺激治療、並びに腎神経の電気および/または薬剤注入刺激を送出することによって、二重の目的を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、埋込医療装置1210は、腎神経の電気刺激を提供するだけで、腎神経に薬剤注入を提供する機能は備えていない。いくつかの実施形態は、埋込医療装置は、薬剤注入を提供するだけで、腎神経に電気刺激を提供する機能は備えていない。赤血球生成促進因子の生成を促進するための適切な薬剤は、赤血球生成刺激剤(ESA)を含んでいる。
【0091】
図10と共に既に示したように、埋込医療装置1210は、複数の別個にプログラム可能な電気刺激チャネルを含むことができ、各刺激チャネルは、複数の電極に接続可能である。各チャネルの電極構成および刺激特性は、自動的にまたは手動で選択される。たとえば各チャネルは、任意の数の電極に結合されている。さらに各チャネルは、振幅、パルス幅、パルス振幅、周波数、デューティサイクル、および他の刺激チャネル信号に対する位相シフトに関して別個にプログラム可能であってもよい。この刺激特性の柔軟性によって、検出された血液パラメータによって示されるように、患者の貧血状態の所望の変化が実現されるまで、医療システムの刺激出力の閉ループフィードバック調整を可能にする。
【0092】
埋込医療装置1210は、腎神経に送出される電気信号の調整、および/または薬剤注入動作の制御に用いられる電源および制御回路を含んでいる。薬剤注入が用いられる場合、埋込医療装置1210は、薬物を備えた容器を含んでいる。埋込医療装置の電気刺激回路に取付けた導線1220は、腎神経の近傍に埋込んだ、またはこの腎神経に取付けた導線1220の遠端の一つ以上の電極に電気信号を送る。薬剤が注入される場合、カテーテル1221は、腎神経の適切な場所に薬物を送る。
【0093】
腎神経は、交換神経幹1203から腎臓1204に輸出交換神経刺激を導く。交換神経幹1203は、患者の背骨1207内の脊髄に接続されている。刺激電極および/または薬剤注入場所は、腎臓1204と、背骨1207の第10番目、11番目、および12番目の胸部および最初の腰部の領域の後方腎臓または他の腎神経節(図示せず)との間に配置される。
【0094】
電気刺激は、腎神経の近傍、上または周りに配置された一つ以上のカフ電極または他の種類の電極を介して、腎神経に送出される。たとえば一つ以上のカフ電極は、導線1220の遠端部に配置される。これらのカフ電極は、腎神経の周りを包み込み、この電極と神経の間に電気的接触を提供し、埋込医療装置1210によって提供された電気信号が、腎神経に印加されるようにする。代替的に、螺旋電極等の他の種類の電極を用いることもできる。
【0095】
埋込医療装置1210は、血液パラメータセンサ1225で終端されたセンサ導線1226に結合されている。たとえば血液パラメータセンサは、血液粘度または血液インピーダンスセンサであってもよい。センサ1225は、血管または心腔内に配置される。センサ1225によって生成された血液パラメータ信号は、腎臓1204への電気刺激信号、および/または薬剤注入の調整に必要な情報を埋込医療装置1210に提供し、赤血球生成促進因子の生成に影響を与えるために用いられる。埋込医療装置1210への情報の供給に合わせて、一つよりも多くのセンサを用いることもできる。これらのセンサは、身体内に埋込むことも、身体外に配置することもできる。たとえばいくつかの実施形態では、外部血液パラメータセンサは、患者の外部装置1218を介して、埋込医療装置1210に結合されている。外部血液パラメータセンサから得られる情報を使用して、フィードバック信号を生成し、電気刺激または薬剤注入を制御することもできる。
【0096】
視床下部および/または他の脳深部の刺激は、赤血球の生成に関連していることが、研究によって示されている。たとえば非特許文献3〜非特許文献6を参照。これらの脳領域
を電気的刺激し、赤血球数を増加させることができる。図13は、視床下部の電気刺激に関連したこのような例の一つを提供する。
【0097】
図13は、貧血状態を改善または安定化させるために、視床下部領域1305内の脳を電気的刺激するように構成された医療システム1300を示している。システム1300は埋込医療装置1310を含み、埋込医療装置1310は、図12に関して既に議論した電気刺激部等の電気刺激部を含んでいる。埋込医療装置1310は、導線1320と共に胸部領域に埋込可能であり、導線1320は、視床下部1305にアクセスするのに適した場所まで延びている。代替的に、埋込医療装置1310用の埋込場所として、腹部等の胸部領域以外の領域を用いることもできる。
【0098】
導線1320は、埋込医療装置1310および電極アレイ1330に結合され、電極アレイ1330は、視床下部領域1305に到達するまで、脳を介して挿入される。電極アレイ1330は複数の電極1331を含み、貧血状態に所望の応答を提供する電極構成を選択可能にする。埋込医療装置1310の筐体上に、一つ以上の追加の電極1332を設けることもできる。埋込医療装置1310内のスイッチング回路によって、任意の刺激チャネルに任意の組合せの電極を選択的に結合できる。刺激特性も、各チャネルに対して別個に調整できる。埋込医療装置1310は、複数チャネルの電気刺激部を組込むことができ、この電気刺激部は、貧血状態に所望の変化が検出されるまで、血液パラメータセンサ(図13には図示せず)からの閉ループフィードバックに基づき、各チャネルの電極構成および/または刺激特性を自動的に調整できる。刺激特性は、刺激振幅、極性、パルス幅、デューティサイクル、周波数、位相および/または他の刺激特性を含んでいる。
【0099】
いくつかの実施形態では、埋込医療装置1310は、貧血治療を自動的に調整する。いくつかの実施形態では、埋込医療装置1310は、自動フィードバック制御を利用しなくてもよいが、患者または患者の健康管理提供者によって、患者外部プログラム部を介して手動で制御される。別の構成では、埋込医療装置1310は、電極構成および刺激特性の手動および自動調整の両方を利用できる。
【0100】
図14は、腎臓、腎神経、視床下部、および/または貧血の治療用の他の身体構造の刺激用のフィードバック処理を示すフローチャートである。最初に、ステップS1405で所望の貧血状態を示す血液パラメータ閾値が、メモリから入力または読込まれる。各チャネルに対する電極構成の最初の組、および刺激チャネルが調整される順番と共に、最初の刺激パラメータも検索される。ステップS1410で血液パラメータセンサによって生成された信号が得られ、血液パラメータは閾値と比較される。閾値の上下の偏差は、調整の必要性を示す。ステップS1415で調整が必要とされる場合、ステップS1430でチャネルが最大振幅ではない限り、ステップS1435で第1刺激チャネルの振幅が調整される。刺激チャネルが最大振幅である場合、ステップS1445でパルス幅が調整される。ステップS1440でパルス幅が最大値である場合、ステップS1455でデューティサイクルが調整される。ステップS1450で刺激パラメータがそのチャネルに対する最大である場合、ステップS1460で調整されるよりも多くのチャネルがあれば、次のチャネルが調整される。全ての刺激チャネルが最大値である場合、ステップS1470で異なる組の電極構成が識別され、所望の血液パラメータ値が実現されるまで、調整はステップS1420〜1460に従って進行する。刺激パラメータの変化は、ステップS1475でログを取る。フィードバック処理によって識別された刺激構成は、次に送出される治療の開始点として用いられる。
【0101】
本発明の範囲から逸脱することなく、これまで議論した好ましい実施形態に、様々な修正および追加を行うことができる。従って、本発明の範囲は、上記の特定の実施形態によって限定されるべきではなく、以降に述べる請求項、およびそれらの等価物によってのみ
規定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込可能な医療システムの動作方法であって、前記動作方法は、
血管または心臓内の埋込用に構成されたセンサを用いることで、血液粘度を検出することと;
一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ対応する一つ以上の閾値と、前記血液粘度とを比較することと;
前記血液粘度と、前記一つ以上の閾値との比較に基づき、患者の貧血状態を判定することと;
前記貧血状態の少なくとも一部に基づき、患者の一方または両方の腎臓、または視床下部に送出される電気刺激治療を制御することと
を含む、動作方法。
【請求項2】
前記動作方法はさらに、患者の貧血状態の時間経過傾向を生成することを含み、
前記電気刺激治療を制御することは、前記貧血状態の傾向の変化速度に基づき、電気刺激治療を制御することを含む、
請求項1記載の動作方法。
【請求項3】
前記動作方法はさらに、
血液温度を検出することと;
前記血液温度を用いることで、血液粘度を補償することと
を含む、
請求項1または2記載の動作方法。
【請求項4】
前記動作方法はさらに、
患者の貧血状態の時間経過傾向を生成することと;
前記貧血状態の傾向に基づき、心不全の進行を監視することと
を含む、
請求項1〜3何れか一項記載の動作方法。
【請求項5】
前記動作方法はさらに、貧血状態の傾向に基づき、心不全治療を修正することを含む、
請求項4記載の動作方法。
【請求項6】
前記動作方法はさらに、貧血状態の傾向に基づき、両心室ペーシングを調整することを含む、
請求項4記載の動作方法。
【請求項7】
貧血状態を判定することは、血液希釈貧血を検出することを含み、
前記動作方法はさらに、前記血液希釈貧血の検出に基づき、心不全代償不全の開始を検出することを含む、
請求項1〜6何れか一項記載の動作方法。
【請求項8】
前記動作方法はさらに、
胸部インピーダンスを検出することと;
前記貧血状態と前記胸部インピーダンスに基づき、心不全代償不全の開始を検出することと
を含む、
請求項1〜7何れか一項記載の動作方法。
【請求項9】
電気刺激治療を制御することは、血栓塞栓症の危険性の評価に少なくとも部分的に基づ
き、電気刺激治療を制御することを含む、
請求項1〜8何れか一項記載の動作方法。
【請求項10】
電気刺激治療を制御することは、0.1Hz〜10kHzの間の周波数を備える信号を用いることで、腎臓を電気的刺激することを含む、
請求項1〜9何れか一項記載の動作方法。
【請求項11】
電気刺激治療を制御することは、0.1V/cm〜10V/cmの電界強度を生成するのに十分な振幅を備えている信号を用いることで、腎臓を電気的刺激することを含む、
請求項1〜10何れか一項記載の動作方法。
【請求項12】
血液粘度を検出するように、かつ前記血液粘度によって変調された信号としての血液年度信号を生成するように構成された回路を含む埋込可能センサと;
前記血液粘度信号を受取り、前記血液粘度を格納するように構成された埋込可能回路と;
前記埋込可能回路に結合された貧血モジュールと
を有する医療システムであって、
前記貧血モジュールは、ヘマトクリットに関連付けられた一つ以上の閾値と、前記血液粘度とを比較し、前記比較に基づき患者の貧血状態を判定し、前記貧血状態の時間経過傾向を格納するように構成される、
医療システム。
【請求項13】
前記医療システムはさらに心不全診断モジュールを含み、
前記心不全診断モジュールは、貧血状態の傾向に基づき、心不全代償不全の開始を検出するように構成される、
請求項12記載の医療システム。
【請求項14】
前記埋込可能回路と前記貧血モジュールとは、埋込可能な心臓治療装置内に組込まれ、
前記心臓治療装置はさらに、貧血状態の傾向に基づき心臓ペーシング治療を制御するように構成された心臓治療コントローラを有する、
請求項12または13記載の医療システム。
【請求項15】
前記貧血モジュールはさらに、貧血状態の傾向に基づき、警告信号を生成するように構成される、
請求項12〜14何れか一項記載の医療システム。
【請求項16】
前記貧血モジュールはさらに、血栓塞栓症の危険性を評価し、前記血栓塞栓症の危険性に基づき警告信号を生成するように構成される、
請求項12〜15何れか一項記載の医療システム。
【請求項17】
埋込可能な医療システムであって、前記医療システムは、
血液粘度を検出するように構成された埋込可能センサと;
一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と、前記血液粘度とを比較し、前記血液粘度と一つ以上の閾値との比較に基づき、患者の貧血状態を判定するように構成された貧血モジュールと;
前記貧血状態または血液粘度に基づき、前記患者に治療を送出するように構成された治療モジュールと
を含む、医療システム。
【請求項18】
前記貧血モジュールは、血栓塞栓症の危険性を評価するように構成され、
前記治療モジュールは、前記血栓塞栓症の危険性に基づき、患者に治療を送出するように構成される、
請求項17記載の医療システム。
【請求項19】
前記治療モジュールは、薬剤を送出する、
請求項17または18記載の医療システム。
【請求項20】
前記治療モジュールは、一方または両方の腎臓に電気刺激治療を送出するように構成された電気刺激部を含む、
請求項17〜19何れか一項記載の医療システム。
【請求項21】
前記治療モジュールは、心不全用の心臓再同期ペーシングを提供するように構成される、
請求項20記載の医療システム。
【請求項22】
前記貧血モジュールは、貧血状態に基づき心不全代償不全の開始を検出し、前記心不全代償不全の開始の検出に応じて警告信号を生成するように構成される、
請求項17〜21何れか一項記載の医療システム。
【請求項23】
前記貧血モジュールは、前記貧血状態に基づき、警告信号を生成するように構成される、
請求項17〜22何れか一項記載の医療システム。
【請求項24】
前記治療モジュールは、視床下部を電気的刺激するように構成される、
請求項17〜23何れか一項記載の医療システム。
【請求項25】
前記埋込可能センサは、弾性センサを含む、
請求項17〜24何れか一項記載の医療システム。
【請求項1】
埋込可能な医療システムの動作方法であって、前記動作方法は、
血管または心臓内の埋込用に構成されたセンサを用いることで、血液粘度を検出することと;
一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ対応する一つ以上の閾値と、前記血液粘度とを比較することと;
前記血液粘度と、前記一つ以上の閾値との比較に基づき、患者の貧血状態を判定することと;
前記貧血状態の少なくとも一部に基づき、患者の一方または両方の腎臓、または視床下部に送出される電気刺激治療を制御することと
を含む、動作方法。
【請求項2】
前記動作方法はさらに、患者の貧血状態の時間経過傾向を生成することを含み、
前記電気刺激治療を制御することは、前記貧血状態の傾向の変化速度に基づき、電気刺激治療を制御することを含む、
請求項1記載の動作方法。
【請求項3】
前記動作方法はさらに、
血液温度を検出することと;
前記血液温度を用いることで、血液粘度を補償することと
を含む、
請求項1または2記載の動作方法。
【請求項4】
前記動作方法はさらに、
患者の貧血状態の時間経過傾向を生成することと;
前記貧血状態の傾向に基づき、心不全の進行を監視することと
を含む、
請求項1〜3何れか一項記載の動作方法。
【請求項5】
前記動作方法はさらに、貧血状態の傾向に基づき、心不全治療を修正することを含む、
請求項4記載の動作方法。
【請求項6】
前記動作方法はさらに、貧血状態の傾向に基づき、両心室ペーシングを調整することを含む、
請求項4記載の動作方法。
【請求項7】
貧血状態を判定することは、血液希釈貧血を検出することを含み、
前記動作方法はさらに、前記血液希釈貧血の検出に基づき、心不全代償不全の開始を検出することを含む、
請求項1〜6何れか一項記載の動作方法。
【請求項8】
前記動作方法はさらに、
胸部インピーダンスを検出することと;
前記貧血状態と前記胸部インピーダンスに基づき、心不全代償不全の開始を検出することと
を含む、
請求項1〜7何れか一項記載の動作方法。
【請求項9】
電気刺激治療を制御することは、血栓塞栓症の危険性の評価に少なくとも部分的に基づ
き、電気刺激治療を制御することを含む、
請求項1〜8何れか一項記載の動作方法。
【請求項10】
電気刺激治療を制御することは、0.1Hz〜10kHzの間の周波数を備える信号を用いることで、腎臓を電気的刺激することを含む、
請求項1〜9何れか一項記載の動作方法。
【請求項11】
電気刺激治療を制御することは、0.1V/cm〜10V/cmの電界強度を生成するのに十分な振幅を備えている信号を用いることで、腎臓を電気的刺激することを含む、
請求項1〜10何れか一項記載の動作方法。
【請求項12】
血液粘度を検出するように、かつ前記血液粘度によって変調された信号としての血液年度信号を生成するように構成された回路を含む埋込可能センサと;
前記血液粘度信号を受取り、前記血液粘度を格納するように構成された埋込可能回路と;
前記埋込可能回路に結合された貧血モジュールと
を有する医療システムであって、
前記貧血モジュールは、ヘマトクリットに関連付けられた一つ以上の閾値と、前記血液粘度とを比較し、前記比較に基づき患者の貧血状態を判定し、前記貧血状態の時間経過傾向を格納するように構成される、
医療システム。
【請求項13】
前記医療システムはさらに心不全診断モジュールを含み、
前記心不全診断モジュールは、貧血状態の傾向に基づき、心不全代償不全の開始を検出するように構成される、
請求項12記載の医療システム。
【請求項14】
前記埋込可能回路と前記貧血モジュールとは、埋込可能な心臓治療装置内に組込まれ、
前記心臓治療装置はさらに、貧血状態の傾向に基づき心臓ペーシング治療を制御するように構成された心臓治療コントローラを有する、
請求項12または13記載の医療システム。
【請求項15】
前記貧血モジュールはさらに、貧血状態の傾向に基づき、警告信号を生成するように構成される、
請求項12〜14何れか一項記載の医療システム。
【請求項16】
前記貧血モジュールはさらに、血栓塞栓症の危険性を評価し、前記血栓塞栓症の危険性に基づき警告信号を生成するように構成される、
請求項12〜15何れか一項記載の医療システム。
【請求項17】
埋込可能な医療システムであって、前記医療システムは、
血液粘度を検出するように構成された埋込可能センサと;
一つ以上のヘマトクリットレベルにそれぞれ関連付けられた一つ以上の閾値と、前記血液粘度とを比較し、前記血液粘度と一つ以上の閾値との比較に基づき、患者の貧血状態を判定するように構成された貧血モジュールと;
前記貧血状態または血液粘度に基づき、前記患者に治療を送出するように構成された治療モジュールと
を含む、医療システム。
【請求項18】
前記貧血モジュールは、血栓塞栓症の危険性を評価するように構成され、
前記治療モジュールは、前記血栓塞栓症の危険性に基づき、患者に治療を送出するように構成される、
請求項17記載の医療システム。
【請求項19】
前記治療モジュールは、薬剤を送出する、
請求項17または18記載の医療システム。
【請求項20】
前記治療モジュールは、一方または両方の腎臓に電気刺激治療を送出するように構成された電気刺激部を含む、
請求項17〜19何れか一項記載の医療システム。
【請求項21】
前記治療モジュールは、心不全用の心臓再同期ペーシングを提供するように構成される、
請求項20記載の医療システム。
【請求項22】
前記貧血モジュールは、貧血状態に基づき心不全代償不全の開始を検出し、前記心不全代償不全の開始の検出に応じて警告信号を生成するように構成される、
請求項17〜21何れか一項記載の医療システム。
【請求項23】
前記貧血モジュールは、前記貧血状態に基づき、警告信号を生成するように構成される、
請求項17〜22何れか一項記載の医療システム。
【請求項24】
前記治療モジュールは、視床下部を電気的刺激するように構成される、
請求項17〜23何れか一項記載の医療システム。
【請求項25】
前記埋込可能センサは、弾性センサを含む、
請求項17〜24何れか一項記載の医療システム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2012−521799(P2012−521799A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502197(P2012−502197)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/028434
【国際公開番号】WO2010/111349
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/028434
【国際公開番号】WO2010/111349
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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