説明

貨物自動車寸法測定装置、及び貨物自動車寸法測定方法

【目的】カメラやレーザー等の光学系手段を用いて測定効率の向上に貢献する手段を利用しつつ、さらに測定精度が高く、貨物自動車に関する的確なデータ管理が可能な貨物自動車寸法の測定装置及び測定方法とする。
【構成】貨物自動車の製造施設において、反射部を有するターゲット部と、所定位置に固定でターゲット部に反射される光を出力する複数の光学系手段と、反射光でターゲット部の座標位置を決定して貨物自動車の寸法を算定する制御部がある。ターゲット部の一部は、貨物自動車後方の灯火部に取り付けられている。光学系手段は、灯火部用のターゲット部に光を出力する灯火部用光学系手段を含む。ターゲット部の反射光データは制御部に入力され、貨物自動車の全長、全幅又は全高の少なくとも一つが算定され、灯火部用光学系手段の撮影データに基づいて灯火部の取り付け位置が算定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車を製造する施設内またはその近傍において、貨物自動車の各種の寸法を測定する装置、及びその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物自動車は製造完了後に全長、全幅、全高等の寸法が測定され、適した値であるか否かについて判定される。貨物自動車の形状は様々であり、各寸法の測定対象となる部位は貨物自動車ごとに異なるため、担当者によって手作業で直接測定されていた。具体的には、貨物自動車の前端や後端、又は左右両端の部位から錘を振り下げ、鉛直に振り下げられた床面位置をマークする。貨物自動車の全長や全幅は、貨物自動車を移動させた後にそのマーク位置を床面上で測定して得ることができる。全高の測定に関しては、別に、貨物自動車の最高部位に当接部位を当接させて高さを測定する測定器具を用いている。
【0003】
こうした測定、特に全長や全幅の測定では、作業者の技量の差による測定誤差の発生や、測定に大きな作業コストを要すること等が懸念されていた。そこで、カメラ等を用いて貨物自動車の各寸法を測定する手法(例えば、特許文献1)が自動車検査独立行政法人等の自動車検査の際に用いられている。また、カメラで撮影可能なターゲット部(反射部)を貨物自動車に取り付ける手法を用い、その撮影データのカメラ測定精度が測定場の照明等によって阻害されない手段も紹介されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3637416号公報
【特許文献2】特開2010−181325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにカメラを用いて貨物自動車寸法を測定すれば、作業コストを低減することができるが、以下の点で未だ改善の余地がある。
【0006】
カメラは貨物自動車全体を撮影領域に含めるため、貨物自動車の上方に配される。しかし、上方からは視認し難い部位の測定も求められる貨物自動車もある。そのような部位は他の部位と比較して、撮影画像の質に大きな違いが生じ易い。例えば、シャシフレーム上に荷箱が搭載された貨物自動車だと、テールランプ等の灯火部は、シャシフレーム後端部に配されるので荷箱の下方に位置する。また、荷箱が後方にダンプ(傾動)する場合には、荷箱との干渉を回避するため、灯火部が貨物自動車後端部(荷箱後端部)よりさらに前方に位置する。カメラは予め所定箇所に固定されるので、こうした貨物自動車に対しては、カメラ角度を調整しても灯火部がカメラ撮影領域に入らない。
【0007】
また、単に「貨物自動車寸法の測定」だけを目的とすると、例えば全幅の寸法測定の場合、貨物自動車の中で最も幅広部分の測定だけで良い。しかし、測定すべき部位の特定が困難な貨物自動車もある。特に、荷箱が搭載された貨物自動車では、運転室(キャブ)の幅と荷箱の幅とのいずれが大きいかについて、目視では正確に判断できない場合もある。また、荷箱をシャシフレームに搭載する製造業者としては、貨物自動車の幅寸法だけでなく、シャシフレームに搭載される荷箱の平衡状態を把握することも求められる。特に、シャシフレームに運転室(キャブ)を搭載する製造業者と、キャブが搭載されたシャシフレームに対して荷箱を搭載する製造業者とは一般的に異なる。そのため、シャシフレームへの荷箱の搭載について、別体となるキャブと相対的に比較するデータがなければ、荷箱等の製造又は搭載担当者に荷箱搭載の精度に関する情報をフィードバックすることもできない。
【0008】
本発明は、これらの点を鑑みてなされており、カメラ等の撮影部を用いて測定効率の向上に貢献する手段を利用しつつ、さらに測定精度が高く、貨物自動車に関する的確なデータ管理が可能な貨物自動車寸法の測定装置及び測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の測定装置及び測定方法を用いる。
第一の測定装置は次のとおりである。
【0010】
貨物自動車の製造施設において、前記貨物自動車に取り付けられて光を反射する反射部を有するターゲット部と、所定位置に固定されて前記ターゲット部に反射される光を出力する複数の光学系手段と前記複数の光学系手段による光が反射されることで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法を算定する制御部とが配された貨物自動車寸法測定装置を対象とする。この寸法測定装置はターゲット部の一部は、貨物自動車の後方に配された灯火部に取り付けられ、前記複数の光学系手段は、前記灯火部に取り付けられたターゲット部に対して光を出力する灯火部用光学系手段を含んでなり、前記ターゲット部によって反射された光のデータは前記制御部に入力され、前記制御部によって、前記貨物自動車の全長、全幅または全高のうちの少なくとも一つが算定され、前記灯火部用光学系手段の撮影データに基づいて前記灯火部の取り付け位置が算定される構成とする。
【0011】
ここで、「前記ターゲット部に反射される光を出力する」とは、複数の光学系手段が出力する光を指しており、直接的又は間接的に前記ターゲット部に達して反射される光のいずれも含んでいる。また、制御部に入力される「前記ターゲット部によって反射された光のデータ」とは、画像センサによって検知されるデータや光検知センサ等で検知される光が移動する時間や距離に関するデータ等が含まれている。これらのデータが制御部に入力されることで貨物自動車の所望部位の長さの算定及び灯火部の取り付け位置の算定が可能となる。また、前記貨物自動車は、具体的には前後方向に延びるシャシフレーム上に荷箱が搭載されたものであって、前記灯火部は前記荷箱の下方に配されており、前記灯火部用撮影部は、前記灯火部が撮影領域に含まれるように配されている構成とする。ここで、「荷箱」とは立方体や直方体の箱状のものに限定されず、略円柱状のものや他の荷物や積載物等の運搬物(固体、液体、気体等)を運搬可能なものであれば他の形状のものも含まれる。
【0012】
さらに、上記の貨物自動車寸法装置において、光学系手段の一例としては、所定位置に固定されて前記ターゲット部を撮影する複数の撮影部(カメラ等)がある。これらの複数の撮影部で撮影された撮影データのうち、少なくとも二つの撮影データで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法及び灯火部の取り付け位置が前記制御部によって算定される。
【0013】
そして、前記荷箱の内表面における前後の壁部と、左右の壁部と、前記荷箱の床面および壁部の上面との少なくとも一組に、前記ターゲット部が取り付けられるものとする。
次に第二の測定装置は以下のとおりである。
【0014】
貨物自動車の製造施設において、前記貨物自動車に取り付けられて光を反射する反射部を有するターゲット部と、所定位置に固定されて前記ターゲット部に反射される光を出力する複数の光学系手段と、前記複数の光学系手段による光が反射されることで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法を算定する制御部とが配された貨物自動車寸法測定装置を対象とする。この寸法装置において、前記貨物自動車の左右の側面には、前記ターゲット部が貨物自動車の前後方向に複数組取り付けられ、これら複数のターゲット部によって、複数位置における貨物自動車の幅方向の長さが算定される構成とする。
【0015】
この場合においても、光学系手段の一例としては、前記ターゲット部を撮影する複数の撮影部(カメラ等)がある。前記複数の撮影部で撮影された撮影データのうち、少なくとも二つの撮影データで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法を算定する制御部と、が配された貨物自動車測定装置であって、前記貨物自動車の左右の側面には、前記ターゲット部が貨物自動車の前後方向に複数組取り付けられ、これら複数のターゲット部によって、複数位置における貨物自動車の幅方向の長さが算定される構成とすることができる。
【0016】
前記貨物自動車は、具体的には貨物自動車の前後方向に延びるシャシフレーム上に運転室と荷箱とがそれぞれ搭載された構成を有したものであって、前記貨物自動車の側面に取り付けられるターゲット部は、前記運転室と前記荷箱とに配されるものとする。そして、前記複数算定された貨物自動車幅方向における長さのうち、最大値を前記全幅として選択される寸法選択部を有する。
次に本発明に係る測定方法は次のとおりである。
【0017】
第一の測定方法は、貨物自動車の製造施設において、停止した前記貨物自動車に光を反射する反射部を有するターゲット部を取り付けるターゲット部取付工程と、所定位置に固定された複数の光学系手段で前記ターゲット部に対して光を出力する光出力工程と、前記複数の光学系手段で出力した光が前記ターゲット部で反射されることで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法を算定する算定工程と、を順に行う貨物自動車寸法測定方法を対象としている。この寸法測定方法は、前記取付工程には、前記貨物自動車の後方に配された灯火部に前記ターゲット部の一部を取り付ける灯火部用ターゲット部の取付作業を含み、前記光出力工程には、複数の光学系手段の一部で前記灯火部用ターゲット部に対して光を出力する灯火部出力作業を含み、前記算定工程において、前記反射された光のデータに基づいて前記貨物自動車の全長、全幅または全高のうちの少なくとも一つを算定し、前記一部の光学系手段に基づく光のデータに基づいて前記灯火部の取り付け位置を算定するものである。
【0018】
第二の測定方法も第一の測定方法と同様に、貨物自動車の製造施設において、前記ターゲット部取付工程と、前記光出力工程と、前記算定工程とを順に行う貨物自動車寸法測定方法を対象としている。この寸法測定方法において、前記ターゲット部取付工程には、前記貨物自動車の左右両側面に対して、前後方向に複数のターゲット部を取り付ける側面ターゲット部取付作業を含み、前記算定工程では、左右両側面に取り付けられた前記複数のターゲット部の前記座標位置で、前記貨物自動車における複数組の幅方向の長さを算定するものとなっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の装置のように、灯火部を撮影するための灯火部用撮影部を別に設けることで、荷箱下方に配されて貨物自動車上方側からは撮影し難い灯火部を良好に撮影することができ、灯火部の取り付け位置を的確に算定することができる。
【0020】
また、貨物自動車の側面の左右それぞれに複数のターゲット部を取り付けることで、複数の部位で寸法を算定することができる。複数の算定値の中から貨物自動車の全幅等として最適値を選択すれば、様々な形状の貨物自動車にも正確な全幅等の測定が可能となる。例えば、湾曲した側面を有する貨物自動車や、運転室(キャブ)と荷箱とが別にシャシフレームに搭載され、目視では略同等の幅を有している貨物自動車等でも、複数部位での測定結果を得ることができる。よって、作業者の誤認識に基づく全幅値の測定ミスを防止することができる。また、シャシフレームにキャブや荷箱が別体として搭載されている貨物自動車では、それぞれにターゲット部を取り付けてその座標位置および寸法を算定することで、シャシフレームに対する荷箱等の搭載状況を相対的に把握することができる。その結果、荷箱の搭載状況の良否について、製造担当者等にその情報をフィードバックすることができ、搭載手法等の向上に役立てることができる。なお、複数のターゲット部が取り付けられていても、カメラ等で一括して撮影されるので簡易であり、各座標位置のデータ等も全て管理することができる。
【0021】
本発明の方法に関しても、ターゲット部を撮影する撮影工程の中に、貨物自動車後方の灯火部に取り付けられたターゲット部を撮影する灯火部撮影作業を含んでいる。そのため、灯火部の取り付け位置の算定が必要な貨物自動車において、的確にその取り付け位置を得ることができる。
【0022】
また、貨物自動車の前後方向に複数のターゲット部を取り付ける側面ターゲット部取付作業を行うと、1回の撮影工程で貨物自動車側面の複数の位置座標を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る測定場所の貨物自動車寸法測定装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る測定場所の貨物自動車寸法測定装置を示す模式平面図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係る貨物自動車の灯火部を示す要部側方図であり、(b)は同貨物自動車に搭載された荷箱の断面側方図である。
【図4】本発明の実施形態に係るターゲット部の座標位置を決定する手法を示す概念図である。
【図5】本発明の実施形態に係る貨物自動車寸法測定方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る測定場所の貨物自動車寸法の測定装置及び測定方法の一実施形態について、図面を用いて説明する。
1.貨物自動車の寸法測定装置の構成について
【0025】
図1は、貨物自動車1の寸法測定装置の全体概要を貨物自動車の側方からみた模式図である。貨物自動車1は測定場所に停止している。この測定場所は、貨物自動車1を製造する施設において、例えば最終工程として運び込まれる場所となる。
【0026】
貨物自動車1の上方には光学系手段の一例として知られるカメラを用いた撮影部は配されている。この撮影部としては4つのカメラ(第1群カメラ)21、22、23、24が所定の角度で貨物自動車1を向いた状態で固定されている(図中では21、22の2つのみ示されている)。この4つのカメラ21〜24で貨物自動車1の全体を撮影することができる。貨物自動車1の後方には、同じく光学系手段であり、上記4つのカメラ21〜24よりも低い位置に別の撮影部となる2つのカメラ(第2群カメラ)2a、2bが固定されている(図中では2aの1つのみ示されている)。この2つのカメラ2a、2bによって、荷箱11の下方でシャシフレーム12の後端に配された灯火部13を良好に撮影することができる。これら6つのカメラ21〜24、2a、2bは、測定場所内のPCに接続されている。PCに備え付けられた外部入出力部31を介して、PCと各カメラ21〜24、2a、2bとの間でカメラ撮影の指令出力や撮影データの入力が可能となっている。各カメラ21〜24、2a、2bは、貨物自動車の所定の部位に取り付けられたターゲット部を撮影ポイントとしているが、図1では説明の便宜上、ターゲット部の表示は省略している。
【0027】
各ターゲット部にはカメラ21〜24、2a、2bが発光する光を反射する反射部が設けられており、撮影データには、その反射光が含まれてPC内の制御部30によって各ターゲット部の座標位置や貨物自動車1の所定寸法の算定に用いられる。
【0028】
光学系手段による光がターゲット部で反射され、その反射光が検知される。制御部30は、その検知された反射光のデータ(撮影データ)からターゲット部の座標位置を決定する座標位置決定部34と、その座標位置から貨物自動車1の寸法等を算定する寸法算定部35とが含まれてなる。これらの座標位置や算定寸法等の出力結果は、PC内にデータ保管されるとともに、画面上や所定フォーマットを有する書面に出力される。
【0029】
座標位置決定部34と外部入出力部31との間には、撮影データ読み取り部33が配されている。入力された撮影データは撮影データ読み取り部33に読み取られ、PC画面上にその撮影画像が表示される。作業者は、表示された画像で撮影状態の良否を即時に判断できる。なお、カメラ撮影を行う際、外部入出力部31に接続されたカメラ選定部32が用いられる。カメラ選定部32によって、上記の6つのカメラ21〜24、2a、2bのいずれを用いるか選定される。これにより、作業者は所望するカメラ撮影をすることができる。なお、カメラ選定部32では、1つのカメラによる撮影や、複数のカメラによる同時撮影のいずれも選定することができる。
【0030】
座標位置決定部34では、第1群カメラ21〜24によるそれぞれの撮影データの中で、適宜2つの撮影データを用いて、撮影ポイント(ターゲット部)の三次元座標位置が決定される。また、座標位置決定部34では、第2群カメラ2a、2bのそれぞれの撮影データを用いて灯火部13の撮影ポイント(ターゲット部)の座標位置が決定される。例えば、第1群カメラ21〜24の撮影データの中に、灯火部13のターゲット部が含まれていても、灯火部13のターゲット部の座標位置決定には用いない。ただし、異なる種類の貨物自動車で、上記のカメラ選定部32に対して第2群カメラ2a、2bは駆動させない(第2群カメラ2a、2bによる撮影は行わない)場合には、第1群カメラ21〜24の撮影データを灯火部13のターゲット部の座標位置決定に用いても構わない。
【0031】
座標位置決定部34の決定データ(ターゲット部の座標)は、寸法算定部35に出力される。寸法算定部35は、第1群カメラ21〜24の画像データで決定した座標位置から貨物自動車1の前後方向、幅方向、及び高さ方向の長さを算定する第1寸法算定部35aと、第2群カメラ2a、2bの画像データで決定した座標位置から灯火部13の取り付け位置を算定する第2寸法算定部35bと、第1寸法算定部35aによって算定された複数データから最大値を選択する寸法選択部35cとを有している。
【0032】
第1寸法算定部35aは、ターゲット部の各三次元座標を所定平面(水平面)上に投影させ、投影された各点同士の距離を算定する機能を有する。なお、この機能に関しては、この算定手法に限定されるものではなく、決定された三次元座標の各点同士の距離を算定するものでも良い。
【0033】
第2寸法算定部35bは、灯火部13に取り付けられたターゲット部の座標位置を基準として灯火部13が取り付けられている領域を算定する機能を有する。灯火部13は、テールランプ等の複数の部材が組み合わされてなるユニット体であり、予めその幅、高さ及び厚みが管理されている。そこで、基準となるターゲット部の三次元座標位置を基に、灯火部13の取り付け位置(どの領域に灯火部13が配されているか)の算定が行われる。なお、予め管理されている幅値等を用いないで、灯火部13に複数のターゲット部を取り付けて、複数のターゲット部から得られる複数の三次元座標位置から灯火部13の取り付け位置を算定するようにしても良い。
【0034】
寸法選択部35c及び第2寸法算定部35bによって選択及び算定されたデータは、寸法判定部36に出力される。寸法判定部36は、予め入力されたデータと、それぞれ入力されたデータとの差異が所望する範囲内であるかを判定する機能を有する。
PC内には、データ保管部37及びデータ出力部38も配されており、算定されたデータ等が保管され、必要時には出力することが可能となっている。
2.撮影部及びターゲット部のレイアウトについて
【0035】
次に、貨物自動車1に対する6つのカメラ21〜24、2a、2bのレイアウトと、ターゲット部の取り付け位置とに関して図2を用いて説明する。図2は、貨物自動車1に対する6つのカメラ21〜24、2a、2bを示す模式平面図である。
【0036】
第1群カメラ21〜24は、停止した貨物自動車1の前側で斜め前の位置に配された2つの前側カメラ21、23と、後側で斜め後に配された2つの後側カメラ22、24とで構成されている。
【0037】
2つの前側カメラ21、23のうち、一方の前側カメラ21は、貨物自動車1の前面、左側の面及び貨物自動車の上面を撮影領域とし、他方の前側カメラ23は、貨物自動車右側の面を撮影領域とすることを除き、上記の前側カメラ21と同様の機能を有する。
【0038】
2つの後側カメラ22、24のうち、一方の後側カメラ22は、貨物自動車1の後面、左側の面及び貨物自動車の上面を撮影領域とし、他方の後側カメラ24は、貨物自動車右側の面を撮影領域とすることを除き、上記の後側カメラ22と同様の機能を有する。
【0039】
第2群カメラ2a、2bは、貨物自動車の後側で後側カメラ22、24よりも互いに近い位置(中心線Lcに近い位置)に配されている。いずれの第2群カメラ2a、2bも荷箱11下方の灯火部13を良好に撮影領域に含めることが可能な状態で固定されている。
【0040】
なお、カメラ21〜24、2a、2bには、例えばデジタルカメラが採用されているが画像撮影が可能であれば他の機器を用いても良い。これらのカメラ21〜24、2a、2bはストロボを有しており、撮影の際にはフラッシュを発生させる。
【0041】
貨物自動車1には、カメラ撮影の撮影ポイントとなるターゲット部(図中、T11、12、・・・とTを冠した符号が付された19個の部材)が、図示する位置に取り付けられている。いずれのターゲット部も同じ構成を有する。その構成について図示は省略するが、1辺が約50mmの長さの略正方形状のシートの中央に、約30mmの外径を有する円状の反射部が配されてなる。この反射部は各カメラ21〜24、2a、2bから発せられたフラッシュ(もしくはカメラ近傍の装置によるストロボ)の光を反射する。各ターゲット部はシート裏面が磁石によって簡易に貨物自動車1に貼り付け可能な構成となっている。
各ターゲット部の詳細な取り付け位置は以下のとおりである。
先ず、貨物自動車1の全長測定用として、前方ターゲット部T11と後方ターゲット部T12、T13とが配されている。
【0042】
前方ターゲット部T11は、図示のように貨物自動車1の前面に配されている。貨物自動車1の最前方となる位置、例えば、貨物自動車1前側のバンパ上でナンバープレート取り付け用孔の中央部となる位置に配される。前方ターゲット部T11は、反射部が上方を向いて配され、前方ターゲット部T11が低い位置に配されていても、上方の前側カメラ21、23が良好に撮影することができる。前方ターゲット部T11の貼り付け状態は、特に限定されるものではなく、反射部の反射光が前側カメラ21、23の撮影データに含まれれば、反射部が前方に向いたものでも構わない。
【0043】
貨物自動車1の後方には後方ターゲット部T12、T13が配されている。具体的には、これら後方ターゲット部T12、T13は、荷箱11を構成する後面煽戸(テールゲート)11aの上側端面で左右両側の縁部に配されている。テールゲート11aが貨物自動車1の最後方に位置する部材であるためであり、他の部材が最後方となる場合には、後方ターゲット部T12、T13はその最後方となる部材に配される。
【0044】
後方ターゲット部T12、T13の中間部と、前方ターゲット部T11との距離が貨物自動車1の全長Lとされる。本実施形態のように荷箱11が搭載された貨物自動車1では、貨物自動車後端が角形状を有するため、正確に貨物自動車1の最後方となる位置が特定しやすい。つまり、テールゲート11aの上側端面の後方側の縁が貨物自動車1の正確な最後端となるので、全長Lの算定を高精度に行うことができる。また、後方ターゲット部T12、T13が上記の位置に配されているので、両ターゲット部T12、T13の三次元座標位置からテールゲート11a(荷箱11)の両端の高さ位置を比較することができる。その比較結果により、水平状態でシャシフレーム12に搭載されているか否かも判断することもできる。
【0045】
また、貨物自動車1の全幅測定用として、以下の6組のターゲット部が配されている。これらのターゲット部は、各組とも図示のように貨物自動車幅方向に沿った線上に位置している。
【0046】
1組目として、左右の前側車輪14のそれぞれの中心部に前車輪ターゲット部T21、T22が配されている。また、2組目として、後側車輪15のそれぞれにも中心部に後車輪ターゲット部T61、T62が配されている。前車輪ターゲット部T21、T22の中間点P1と、後車輪ターゲット部T61、T62の中間点P2とを結ぶ仮想線が貨物自動車1の中心線(車軸)Lcとされる。
【0047】
3組目として、運転室(キャブ)16の左右両側の面にキャブ用ターゲット部T31、T32が配されている。図中、キャブ用ターゲット部T31、T32はキャブ16の後方に配されているが、最も左右に張り出す部分があれば、その部分に配された構成とする。キャブ16の幅の最大値を測定するためである。
【0048】
4組目として、荷箱11の左右両側の面で前方部に荷箱前方ターゲット部T41、T42が配されている。具体的には、荷箱前方の固定柱の外表面に配されている。荷箱11の前方部で固定柱より側方に張り出す部分があれば、その部分に配された構成とする。荷箱11の前方における幅の最大値を測定するためである。同様の目的で、貨物自動車前後方向における荷箱11の中央部には、5組目となる荷箱中央ターゲット部T51、T52が配される。荷箱11の後方部で固定柱の外表面には、6組目となる荷箱後方ターゲット部T71、T72が配されている。
【0049】
これら6組のターゲット部の配される位置に関しては、各部位の隅部等と予め設定されている。各組における取り付け高さや前後方向の位置ズレなどが生じないようにするためである。そして、各組のターゲット部の座標位置が、それぞれ貨物自動車幅を算定するデータとして用いられる。複数の算定結果を得ることができるので、その中の最大値が全幅Wとして選択される。いずれのターゲット部も貨物自動車1の左側面又は右側面で貨物自動車前後方向に並んだ状態で配されているが、キャブ16と荷箱11とのそれぞれに少なくとも1つのターゲット部が配されていれば、その個数や取り付け位置は適宜変更可能である。
【0050】
その他、テールゲート側端面の左右それぞれの下縁部には、テールゲート側端ターゲット部T81、T82が配されている。貨物自動車1のリアオーバーハングを測定するためである。
【0051】
さらに、荷箱11の下方に配されて貨物自動車1の上方からは視認し難い灯火部13の測定用として、灯火部13の照射面(貨物自動車後面)には、灯火部用ターゲット部T91、T92が配されている。灯火部用ターゲット部T91、T92は、それぞれユニット体となる灯火部13において、上部側でかつ外側端部となる隅部に配されている。ただし、配設位置は当該隅部には限定されず、他隅部でも良い。
【0052】
以上のように配されたターゲット部のうち、灯火部用ターゲット部T91、T92は第2群カメラ2a、2bで一括して撮影され、その他のターゲット部は第1群カメラ21〜24、及び第2群カメラ2a、2bで一括して撮影される。簡易に各部位の座標位置を決定し、全長L及び全幅Wが算定されるので、各部位を床面にマークする等の投影作業を行う必要がなく、作業コストを大きく低減することができる。
【0053】
また、貨物自動車1の全高Hの測定に関しては、本実施形態では高さ可変式の装置が用いられる。例えば、測定場所内を移動自在に車輪付の基部と、その基部に対して鉛直方向に延びた柱状部材と、柱状部材に沿って昇降自在な水平部材とで構成された装置等が用いられる。この水平部材には同種のターゲット部を貼り付けられている。水平部材を貨物自動車の最も高い位置に当接させた状態でカメラ撮影(例えば、後側カメラ22、24)することで、全高Hを算定することができる。なお、最も高い部位に簡易にターゲット部を貼り付けることができる貨物自動車であれば、上記の装置を用いなくても構わない。
上記レイアウトで配された複数のカメラ及びターゲット部によって以下の効果がある。
【0054】
第1の効果として、良質な撮影データを得るために、第1群カメラ21〜24と、第2群カメラ2a、2bとの使い分けが可能な点がある。第1群カメラ21〜24で貨物自動車1の全体を撮影し、全幅等の寸法を簡易に算定する。一方、貨物自動車1の上方から撮影が困難な部位は、第2群カメラ2a、2bで適宜撮影することができる。特に、本実施形態に係る貨物自動車1が連続して運び込まれてくる測定場所内では、使い分け可能な撮影部を有していることで、第1群カメラ21〜24で撮影困難な灯火部13等のために別に測定し直す必要がなく、作業効率を大きく向上させることができる。なお、第2群カメラ2a、2bの位置は、図3(a)のような荷箱11後端よりL10の長さだけ貨物自動車前方に位置する灯火部13(及び、灯火部用ターゲット部T91、T92)を良好に撮影することができるように配されていれば、荷箱11より高い位置でも低い位置でも構わない。第2群カメラ2a、2bで、テールゲート側端ターゲット部T81、T82等も良好に撮影することができる場合には、これらも撮影対象としても良い。
【0055】
第2の効果として、荷箱11の内側表面の測定の高精度化がある。第2群カメラ2a、2bが設けられていることで、第1群カメラ21〜24は荷箱11下方まで撮影領域に含めなくても良い。その結果、荷箱11の内側表面を良好に撮影することが可能となる。具体的に、図3(b)を用いて説明する。図3(b)は、図2における荷箱11のA1−A2断面図で、その内側に複数のターゲット部T101〜T104が配されている。
【0056】
荷箱11を構成する前壁部11bで貨物自動車後方を向いた面に、前壁ターゲット部T101が配されている。前壁ターゲット部T101は、車幅方向の中央部で荷箱11を構成する側方側煽戸(サイドゲート)11cの上面部と同等の高さ位置に配されている。
テールゲート11aの上端面で車幅方向の中央部にはテールゲート中央ターゲット部T102が配されている。
【0057】
前壁ターゲット部T101とテールゲート中央ターゲット部T102は、貨物自動車前後方向における荷箱11の内側長さの測定に用いられる。両ターゲット部T101、T102の貼り付けに関しては、目視によってそれぞれの中央部になされるが、サイドゲート11cの前後両縁部にターゲット部が配された構成とし、上記の内側長さの測定に用いられるようにしても良い。
【0058】
次に、サイドゲート11cの上端面のうち、貨物自動車前後方向における中央部にサイドゲート中央ターゲット部T103が配されている。また、貨物自動車前後方向における同じ中央部となる位置で反対側のサイドゲートの上端面にも同様にターゲット部(不図示)が配されている。これらのターゲット部は荷箱11の内側幅の測定に用いられている。
【0059】
また、床面部11dの上面には、中央部に床面ターゲット部T104が配されている。このターゲット部T104は、荷箱の内側長さ及び内側幅の測定に用いられる上記のターゲット部T101〜T103と組み合わせることで荷箱11の内側高さの測定に用いられている。
【0060】
これらのターゲット部T101〜T104は、第1群カメラ21〜24によって撮影することができる。第1群カメラ21〜24のうち、後側カメラ22、24は、第2群カメラ2a、2bと組み合わされて以下の効果を有する。
【0061】
後側カメラ22、24は、図3(b)に示すように、貨物自動車1のテールゲート11aから水平距離で距離Lbだけ離れた位置に配されている。この距離Lbは、仮に第2群カメラ2a、2bが配されていない場合(図中の一点鎖線部)と比較して小さく設定できる。第2群カメラ2a、2bが配されていることで、後側カメラ22、24は灯火部13まで撮影領域に含めなくても良いためである。その結果、貨物自動車1との水平距離Lbを小さくすることができ、荷箱11の内側表面の寸法測定を良好に行うことが可能となる。つまり、荷箱11の近い位置(図中の実線部)に後側カメラ22、24が配されていることで、凹形状の荷箱11の内側表面のうち死角となる部位が少なくなり、荷箱11の内側表面に関しても良好な撮影データを得ることができる。
【0062】
このように、第1群カメラ21〜24と第2群カメラ2a、2bとを組み合わせることで、貨物自動車1の外表面だけでなく、荷箱11の下方に配された灯火部13や荷箱11の内側表面に関しても良好に撮影することができる。同時に、後側カメラ22、24を車両1に比較的近い位置に配することができるので、測定施設の拡大を抑制することができる。
【0063】
なお、撮影データの取得には既知の方法を用いている。後方ターゲット部T12の座標位置決定の際、図4で示すように、後側カメラ22、24による撮影面R1、R2に、後方ターゲット部T12の反射部からの反射光が写し出される。その写し出された位置u1、u2が座標位置決定部34によって抽出される。後側カメラ22、24は測定場所内の固定されており、撮影面R1、R2も固有の位置データを備える。両面R1、R2における位置u1、u2を関連付けて後方ターゲット部T12の三次元座標位置が決定される。他のカメラでも同様にして座標位置決定が行われる。撮影面R1、R2に関しては、精度を上げるために3つ以上としても良い。
3.貨物自動車の寸法測定方法について
次に、貨物自動車寸法測定方法に関して、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0064】
測定場所内で先ずカメラ座標位置決定工程S11〜S13を行う。次に貨物自動車1の中心線決定工程S21〜S25を行う。その後、停止した貨物自動車に対して各ターゲットに光を出力する、具体的には各ターゲットを撮影する撮影工程(光出力工程)S31〜S34と、各ターゲット部座標位置決定工程S41と、座標位置から必要な貨物自動車寸法を算定する工程S51〜S54とを順に行う。最後に、算定寸法が所定値に適合するか否かの判定及び保管工程を行う(S61〜S62)。
【0065】
カメラ座標位置決定工程では、先ず、基準ターゲットを第1群カメラ21〜24、及び第2群カメラ2a、2bで撮影する(S11)。基準ターゲットは、測定場所内の三次元座標の中心位置となり、測定場所内に固設されている。撮影データがPCに出力され(S12)、基準ターゲットの固有の座標位置と、撮影データとを対応させて各カメラ21〜24、2a、2bの座標位置を決定する(S13)。各カメラ21〜24、2a、2bの座標を固定することで、貨物自動車の種類の同異に関わらず、迅速な測定が可能となる。
【0066】
カメラ座標位置決定工程の後に、測定場所内に運び入れた貨物自動車1の幅方向に対して垂直方向に延びる中心線を決定する工程を行う。この工程では次の作業を行う。
【0067】
測定位置の手前(予備停止位置)での貨物自動車停止作業を行う(S21)。このとき、貨物自動車1が直進できる状態に運転用ハンドルを調整する。次に、貨物自動車の前輪及び後輪の前方位置となる床部に塗料を拭きつける着色作業を行う。着色作業は、2つの前輪の前方位置(前輪対応領域)と、2つの後輪の前方位置(後輪対応領域)とを対象としており、塗料拭きつけ部分を同一の形状及び面積で形成する。そして、拭きつけられた塗料の各領域に貨物自動車1の車輪跡を付着させる作業を行う(S22)。貨物自動車1は、撮影工程(S31〜S34)で撮影するための撮影位置まで前進させる。その後、2つの前輪対応領域の中心線の中間点P1(図2参照)を作業者がマークする。後輪対応領域でも同様にマークする。中間点となるマーク位置を第1群カメラ21〜24で撮影し(S23)、PCに撮影データが適切に入力されていることを確認する(S24)。2つのマーク位置P1、P2の座標が決定され、これらを通過する直線が貨物自動車1の中心線(車軸)となる(S25)。なお、車輪跡の両端部をマークし、そのマークを撮影する手法でも良い。貨物自動車1の中心線の決定により、後述する貨物自動車の幅の算定等を正確に行うことができる。
撮影工程(S31〜S34)では、撮影位置に停止した貨物自動車1に次の作業を行う。
【0068】
上述した位置に各ターゲット部を貼り付け(S31)、第1群カメラ21〜24と、第2群カメラ2a、2bとで撮影する(S32〜S33)。全てのカメラ21〜24、2a、2bによる撮影データをPCの画面上で確認する(S34)。キャブ用ターゲット部T31、T32等の貨物自動車の幅の測定用のターゲット部に関しては、各組のターゲット部のそれぞれの反射部が反対方向を向いた状態で貼り付ける。つまり、キャブ16や荷箱11の各側面の外表面に貼り付ける。外表面に貼り付けることで、特に荷箱11の外方寸法を測ることになる。その結果、ターゲット部の貼り付け工程において作業者による差異が生じることがなく、精度の良い貨物自動車幅の測定につなげることができる。
撮影工程の後に、2つの撮影面R1、R2に含まれる撮影データを用いて、各ターゲット部の座標位置を決定する(図4参照)。
【0069】
座標位置決定工程S41の後、貨物自動車1の全長L、全幅W及び全高Hの算定工程S51と、灯火部13の取り付け位置の算定工程を行う(S52)。両工程S51、S52の順序はいずれを先に行っても良く、同時でも構わない。
【0070】
全幅W等の算定は第1寸法算定部35a及び寸法算定部35cで行う(S51)。全長Lは、1つの数値が算定される。一方、全幅Wに関しては、複数部位での数値が算定される。対象部位は、キャブ用ターゲット部T31、T32と、荷箱前方ターゲット部T41、T42と、荷箱中央ターゲット部T51、T52と、荷箱後方ターゲット部T71、T72との4組である。
【0071】
先ず、貨物自動車1の中心線Lcから右側の各ターゲット部T31、T41、T51、T71までの距離を算定する。同様に中心線Lcから左側の各ターゲット部T32、T42、T52、T72までの距離を算定する。これらの各距離を算定して、合算することでT31とT32、T41とT42、T51とT52、T71とT72の4組の幅値を求まることができる。次に、これら4組の幅値のうち、最大値となるものを貨物自動車1の全幅Wとして選択する。このとき、各幅値だけでなく、中心線Lcから側面までの左右両側の距離も、PC画面上にそれぞれ表示する。中心線Lcから各部位への距離を表示することで、シャシフレーム12に荷箱11の搭載状態を把握することができる。具体的には、荷箱11における各部位が貨物自動車1の中心線Lcからどの程度の距離を有しているかが分かることで、荷箱11が中心線Lcに対して線対称に配されているか判断することができる。さらには、他のターゲット部(例えば、後方ターゲット部T12、T13など)の高さ位置等も用いて、シャシフレーム12に対する荷箱11の平衡状態について判断することもできる。
【0072】
なお、貨物自動車1の全幅算定に関して、車両幅方向に沿って並ぶターゲット部同士の間の距離を用いているが、例えば、「中心線Lcから左側の前車輪ターゲット部T22までの距離」と、「中心線Lcから右側の荷箱後方ターゲット部T71までの距離」の合計値Ltを算定する手法でも構わない。仮に荷箱11が右側にずれて搭載されている場合や、荷箱11の後方が右側にずれて中心線Lcに対して傾斜した状態で搭載されている場合は、後方への投影図で判断する場合には、上記の合計値Ltが貨物自動車1の幅値として最大値となるため、さらに車両全幅として適した値となる。このように、車両幅方向に沿って配されたターゲット部とは異なるターゲット部を用いて、複数の合計値を算定し、その中で最も大きな値を車両全幅の値としても良い。
【0073】
貨物自動車1の幅に関して、複数部位で測定するので、測定場所内に貨物自動車1や他種の貨物自動車が連続して運び込まれても、微細な形状変化や荷箱11搭載位置の変化を簡易に確認することができる。また、運び込まれる貨物自動車ごとに形状が微小に異なっていても、全幅Wを測定する最適部位の検討に作業者が大きな時間を要することもない。
【0074】
また、キャブ16と荷箱11とは、いずれもシャシフレーム上に別々に搭載されているので、両方の幅寸法を測定することで、貨物自動車1の中心線Lcに対する互いの位置を比較することもできる。キャブ16と荷箱11との測定を独立して行っていることで、一方がシャシフレームに対して不適な状態で配されていても、迅速な不適箇所の選定に貢献する。
なお、上述のとおり、中心線Lcを用いた算定方法なので、ターゲット部の数を増やした際に次の効果も備える。
【0075】
ターゲット部の取り付け位置は、各部位の隅部となるので、高さ方向及び前後方向において、各組のターゲット部はほぼ同じ位置に配することができる。一方、側面が湾曲するようなキャブ16の場合、隅部以外にもターゲット部を配する必要があり、隅部と比較して左右のターゲット部の高さ方向及び前後方向の位置が異なった場合、中心線Lcからの距離を比較することで、ターゲット部の配設位置が適切か否かを判断することもできる。
こうした算定結果を確認後、算定もれが無いことを確認すると貨物自動車寸法算定工程が完了する(S54)。
【0076】
そして、PCの制御部30を用いて算定した貨物自動車1の寸法について所定値となっているかの判定を行い(S61)、これまでのデータを保存する(S62)。
【0077】
上記の寸法測定方法では、荷箱11の内側表面に配したターゲット部T101等(図3(b)参照)の座標位置から、内側長さ、内側幅及び内側高さの算定も併せて行う。
【0078】
上記の各工程の中で中心線決定工程(S21〜S25)に関しては、貨物自動車を前進させる距離を小さくし、撮影工程(S31〜S34)の終了後に上記のマーク位置の撮影等を行っても良い。この場合、貨物自動車の前進距離が小さいので、第1群カメラ21〜24の撮影領域を抑制することができる。貨物自動車1の中心線に関するデータは貨物自動車寸法算定工程(S51〜S54)の中で入力されるようにしても良い。
4.その他
【0079】
上述した実施形態では、第1群カメラ21〜24及び第2群カメラ2a、2bを用いて画像撮影を行っているが、各ターゲット部の座標位置を把握し、所望部位の測長をすることができれば他の手段を用いても構わない。例えば、光学系手段としてレーザーを用いてターゲット部までの距離や、ターゲット部の座標位置を計測する手段も知られている。勿論、測定に用いることのできるものであれば、他の波長を有するものも適用可能である。この場合、上述した実施形態に係る第1群カメラ21〜24及び第2群カメラ2a、2bと2つのグループで設置位置や撮影対象を区分けしたように、他の光学系手段を用いる際にも区分けすることが必要である。つまり、貨物自動車1の製造施設において、カメラによる撮影部やレーザー光線を利用した座標測定部などの光学系手段が複数配され、この複数の光学系手段は、貨物自動車1の灯火部用の光学系手段(灯火部用光学系手段)と、それ以外の部位の測定に関する利用を目的とした光学系手段とで構成されていることで、光学系手段の種類に限定されることなく同等の効果を得ることができる。
【0080】
上記のレーザーを用いた光学系手段は、レーザー光をターゲット部に直接出力する出力部を備えている。さらに光学系手段は、出力部からのレーザー光の反射光を検知して入力する入力部を備えている場合、入力部から上述した座標位置決定部34に入力データを出力する。また、光学系手段に入力部が設けられていない場合でも同様の機能を有する入力部が別途設けられ、座標位置決定部34への出力が行われる。なお、入力部は、画像センサで感知して各ターゲット部が置かれているレイアウトを把握するものや、反射光を検知して検知時間から各ターゲットの位置を計測するものなどがある。
【0081】
また、貨物自動車1では、前側に配されたターゲット部は1つ(前側ターゲット部T11)のみだが、貨物自動車前端が湾曲している等で、測定精度を上げる必要がある場合には、複数のターゲット部を配した構成としても良い。光学系手段、例えばカメラ等の撮影部の数も、第1群カメラ21〜24及び第2群カメラ2a、2bは上記の個数に限定されない。第1群カメラ21〜24で測定する寸法に関しては、全長、全幅及び全高の全てを算定することに限定されず、1つだけ算定するものでも良い。
【0082】
なお、以上の装置及び方法は、本実施形態では荷箱11が搭載された貨物自動車1を対象としたが、様々な種類の車両に対しても適用可能である。特に、シャシフレーム12上にキャブ以外を搭載し、荷物、土砂、廃棄物、気体、液体、又は作業機械等を運ぶ車両(特装車両)に対して同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、寸法測定の効率化に寄与するので、様々な貨物自動車が運び込まれる測定場所内、特に荷箱が搭載された貨物自動車が運び込まれる測定場所内における寸法測定装置及びその寸法測定方法として有用である。
【符号の説明】
【0084】
1 貨物自動車
11 荷箱
12 シャシフレーム
13 灯火部
21、23 前側カメラ(第1群カメラ)
22、24 後側カメラ(第1群カメラ)
2a、2b 第2群カメラ
30 制御部
31 外部入力端子部
32 カメラ選択部
33 撮影データ読み取り部
34 座標位置決定部
35 寸法算定部
35a 第1寸法算定部
35b 第2寸法算定部
35c 寸法選択部
36 寸法判定部
37 データ保管部
38 データ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車の製造施設において、
前記貨物自動車に取り付けられて光を反射する反射部を有するターゲット部と、
所定位置に固定されて前記ターゲット部に反射される光を出力する複数の光学系手段と
前記複数の光学系手段による光が反射されることで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法を算定する制御部と、
が配された貨物自動車寸法測定装置であって、
前記ターゲット部の一部は、貨物自動車の後方に配された灯火部に取り付けられ、
前記複数の光学系手段は、前記灯火部に取り付けられたターゲット部に対して光を出力する灯火部用光学系手段を含んでなり、
前記ターゲット部によって反射された光のデータは前記制御部に入力され、
前記制御部によって、前記貨物自動車の全長、全幅または全高のうちの少なくとも一つが算定され、前記灯火部用光学系手段の撮影データに基づいて前記灯火部の取り付け位置が算定される
ことを特徴とする貨物自動車寸法測定装置。
【請求項2】
前記複数の光学系手段は、前記ターゲット部を撮影する複数の撮影部で構成されており、
前記制御部は、前記複数の撮影部で撮影された撮影データのうち、少なくとも二つの撮影データで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法及び前記灯火部の取り付け位置を算定する
ことを特徴とする請求項1に記載の貨物自動車寸法測定装置。
【請求項3】
前後方向に延びるシャシフレーム上に荷箱が搭載された前記貨物自動車において、前記灯火部は前記荷箱の下方に配されており、
前記灯火部用光学系手段は、出力される光が前記灯火部に取り付けられる前記ターゲット部の一部に対して反射されるように配されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の貨物自動車寸法測定装置。
【請求項4】
前記荷箱の内表面における前後の壁部と、左右の壁部と、前記荷箱の床面および壁部の上面との少なくとも一組に、前記ターゲット部が取り付けられる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の貨物自動車寸法測定装置。
【請求項5】
貨物自動車の製造施設において、
前記貨物自動車に取り付けられて光を反射する反射部を有するターゲット部と、
所定位置に固定されて前記ターゲット部に反射される光を出力する複数の光学系手段と、
前記複数の光学系手段による光が反射されることで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法を算定する制御部と、
が配された貨物自動車寸法測定装置であって、
前記貨物自動車の左右の側面には、前記ターゲット部が貨物自動車の前後方向に複数組取り付けられ、
これら複数のターゲット部によって、複数位置における貨物自動車の幅方向の長さが算定される
ことを特徴とする貨物自動車寸法測定装置。
【請求項6】
前記貨物自動車は、貨物自動車の前後方向に延びるシャシフレーム上に運転室と荷箱とがそれぞれ搭載された構成を有し、
前記貨物自動車の側面に取り付けられるターゲット部は、前記運転室と前記荷箱とに配される
ことを特徴とする請求項5に記載の貨物自動車寸法測定装置。
【請求項7】
前記複数算定された貨物自動車幅方向における長さのうち、最大値を前記全幅として選択される寸法選択部を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の貨物自動車寸法測定装置。
【請求項8】
貨物自動車の製造施設において、
停止した前記貨物自動車に光を反射する反射部を有するターゲット部を取り付けるターゲット部取付工程と、
所定位置に固定された複数の光学系手段で前記ターゲット部に対して光を出力する光出力工程と、
前記複数の光学系手段で出力した光が前記ターゲット部で反射されることで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の所定寸法を算定する算定工程と、
を順に行う貨物自動車寸法測定方法であって、
前記取付工程には、前記貨物自動車の後方に配された灯火部に前記ターゲット部の一部を取り付ける灯火部用ターゲット部の取付作業を含み、
前記光出力工程には、複数の光学系手段の一部で前記灯火部用ターゲット部に対して光を出力する灯火部出力作業を含み、
前記算定工程において、前記反射された光のデータに基づいて前記貨物自動車の全長、全幅または全高のうちの少なくとも一つを算定し、前記一部の光学系手段に基づく光のデータに基づいて前記灯火部の取り付け位置を算定する
ことを特徴とする貨物自動車寸法測定方法。
【請求項9】
貨物自動車の製造施設において、
停車した前記貨物自動車に光を反射する反射部を有するターゲット部を取り付けるターゲット部取付工程と、
所定位置に固定された複数の光学系手段で前記ターゲット部に対して光を出力する光出力工程と、
前記複数の光学系手段で出力した光が前記ターゲット部で反射されることで前記ターゲット部の座標位置を決定し、前記貨物自動車の全長、全幅または全高のうちの少なくとも一つを算定する算定工程と、
を順に行う貨物自動車寸法測定方法であって、
前記ターゲット部取付工程には、前記貨物自動車の左右両側面に対して、前後方向に複数のターゲット部を取り付ける側面ターゲット部取付作業を含み、
前記算定工程では、左右両側面に取り付けられた前記複数のターゲット部の前記座標位置で、前記貨物自動車における複数組の幅方向の長さを算定する
ことを特徴とする貨物自動車寸法測定方法。
【請求項10】
前記ターゲット部取付工程の前、または前記撮影工程の後に、前前記貨物自動車の幅方向における中心線を決定する中心線決定工程を有しており、
当該中心線決定工程では、
前記貨物自動車を所望位置で予備停止させる予備停止作業と、
予備停止した貨物自動車の車輪の前方床部または後方床部に着色する着色作業と、
前記貨物自動車を移動させて前記前方床部または前記後方床部に車輪跡を付する車輪跡付着作業と、
前記貨物自動車の左右の前輪による前記車輪跡の間における前側中央部と、前記貨物自動車の左右の後輪による前記車輪跡の間における後側中央部とで前記中心線を決定する決定作業と、
を順に行う
ことを特徴とする請求項9に記載の貨物自動車寸法測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−33027(P2013−33027A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128687(P2012−128687)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】