説明

貨物船内のタンクを支持するシステム及び方法

カーゴタンクの縦軸に沿って間隔を置いた一連の脚部を設置することによって液化ガス輸送船の船倉内でカーゴタンクを支持するためのシステム及び方法を開示する。前記脚部は、船舶の構造コンポーネントと関連して位置決めされる。これらの脚部は、右舷側及び左舷側のカーゴタンクの両側面に沿ってカーゴタンクの周径より下のカーゴタンクに対して固定された木材又はその他の適当な断熱及び耐荷重材からなる。脚部は、水平面の左舷及び右舷にあり船体構造によって固定及び支持された構造縦通材に載置される。脚部の前後方向及び横方向の動きは、脚部の1個所以上で縦通材に取付けられた止め具によって制御される。止め具は、脚部を一方向に制約するが他方向への動きを許容するベアリングパッドを介して脚部と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、「海洋用途における液化大容量ガスを収容する円筒形カーゴタンクのための支持システム」と題する2008年7月9日に出願された仮特許出願整理番号61/129,639、及び「貨物船内のタンクを支持するシステム及び方法」と題する2009年6月15日に出願された米国実用特許出願番号:12/484,772に対する優先権を主張するものであり、これらは参考として本明細書で援用される。
【0002】
本開示は、概して、液化ガスを収容する単独のカーゴタンクのための支持システムに関し、特に、大径の極低温タンクが液化ガス輸送船に安全に設置されて運用されることを可能にするのに有効である。
【背景技術】
【0003】
液化ガスやその他の物質を、貨物船の船倉内に位置決めされたタンクに入れて輸送することは今日一般的である。特に、LPG、エチレン及びLNG等の液化ガスを貨物船の船倉内に永久的に取付けられたタンクに入れて輸送可能なことは周知である。
【0004】
液化ガス輸送船の設計及び構成は、国際海事機関(IMO)によって主に国際ガスキャリアコード(IGCコード)によって規制されている。IGCコードは、幅広い貨物格納システムを認可している。円筒形タンクシステムは、約22,000m未満の収容能力を有する液化ガス輸送船に最も広く採用されている格納システムである。このシステムでは、円筒形タンクが、円筒形タンクの各端部の近くに1個配置された2個の横方向サドルによって支持される。このタンクは、各サドルの個所に内部リングフレームを有し、サドル荷重の安定化及びタンク外殻への分散を促す。2個のサドルのシステムは、どちらも船舶の動きによって加えられる力を受けて撓む船体とタンクの間の相互作用及びその結果生じる応力を最小にする。このようなタンクの直径及び長さは技術的及び経済的制約によって制限されており、これまでに建造されている公知の最大の単一のタンクが約6,000mの収容能力を有するというように、最大の船舶の収容能力は約12,000mであると考えられている。
【0005】
より大きな液化ガス輸送船は、並べて取付けられた2個のより小径のタンク又はいわゆるバイローブ型タンクのいずれかを採用している。バイローブ型タンクは、直径の約80%が互いに重複している2個の並列した同じ直径の水平円筒から構成される。この2個の「ローブ」が結合する個所に内部前後方向隔壁が嵌合される。円筒形タンクの場合と同様、バイローブ型タンクは、各端部付近に1個ずつ2個のサドルによって支持されている。このようなタンクは15m前後の直径に建造される。これまでに建造されている公知のそのようなタンクの最大のものは約7,500mであり、バイローブ型タンクを採用しているそのような液化ガス輸送船の最大のものは、22,000m前後の収容能力を有する。現在、40,000mの範囲内のより大きな輸送船の研究が進行している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タンクと船体との間の夫々の変形による相互作用は複雑で支持点の数を2個に制限している。そのようなタンクの直径は、事実上、貨物密度、タンクの設計圧力、サドル間隔、製造上の制約事項及び経済的要因によって制限される。
【0007】
各タンクにつき2個の支持サドルという制限によって、非常に大きく高い集中的荷重が船舶の底部構造に加わることになる。そのような「点」荷重は、船舶の満載排水量(水中重量)の25%を超過する可能性がある。従って、これらの集中荷重は、梁及び格子枠組みの複雑なシステムによって船体構造全体に分散させなければならない。このような船体は、製造が困難であり、船舶の長さに沿って均一に貨物荷重が分散される船体よりも多くの鋼鉄を必要とする。
【0008】
上記のタンクの型式は両方ともIGCコードに従うC型タンクとして設計されている。C型タンクは、通常、アメリカ機械工学会(ASME)のDiv.VIII等の地上圧力容器コード(land-based pressure vessel code)に従うよう設計されている。しかし、そのようなタンクが海上で受ける動荷重から、IGCコードは、液化ガス輸送船のタンクが地上のタンクに比較して高い設計圧力、加速力及び安全係数を持つように設計されるよう要求している。従って、C型タンクは、それらが使用期間に実際に経験するものよりも著しく高い圧力及び荷重に対して設計されることが多い。これは、より大きな外殻材料厚、高いタンク重量、及び過剰なコストを引き起こす。ほとんどの液化ガスは大気圧下で輸送されるので、C型タンクは重量及びコストの点で不利である。
【0009】
球形タンクもまた、液化ガス、通常、−162℃の液化天然ガスを輸送するのに使用される。そのようなタンクは、IGCコードのB型タンクとして設計される。B型は、船舶がその使用期間に実際に経験する可能性のある圧力、加速度及び疲労寿命に対してタンクが設計されることを認可する。実際に経験すると予想される設計荷重を決定することは、時間のかかる高額のプロセスであるが、そのようなタンクは、C型タンクと比較して低い材料厚及び重量で設計してよい。しかし、球形タンクは、製造が高額であり、通常、大きな液化天然ガス(LNG)輸送船にしか使用されない。これまでに建造された最大のタンクは、約43mの直径及び約40,000mの体積を有する。コスト面での不利に加えて、球形タンクは、円筒形タンクほどには船舶の貨物倉の利用可能空間を利用せず、従って、同じ輸送能力を得るためにより大きな船舶を設計しなければならない。
【0010】
独立角柱状タンクは、主に、可能な限り船舶の形状を利用するように整形された平面から構成される。これらのタンクは、B型タンク又はA型タンクのいずれかの可能性がある。A型は、万一、主液化ガスタンクが漏れたり故障したりした場合に、防御として周囲の船体構造が二次的な液体バリアとして作用することを必要とする。従って、周囲の船体構造は、液化ガス(大抵、LPG、プロパン又はアンモニア)の沸点でも頑丈で亀裂を生じないでいる高価な低温鋼によって構成されなければならない。B型の角柱状タンクは、完全な二次的バリアを必要としないので、船体は主として通常の船舶用鋼から建造可能である。B型の球形タンクと同様に、疲労又は亀裂伝播のリスクを最小にするために著しく詳細な応力分析が必要とされる。どちらのタンク形式も、オイルタンカーの内部船体構造に類似した十分な内部支持構造を有する。角柱状タンクは、円筒形又は球形タンクよりも優れた船体における体積効率を有するが、これらの角柱状タンクは著しく多くの材料を必要とし、設計応力が制限されている。
【0011】
座礁又は衝突による貨物倉の浸水の場合は、カーゴタンクが浮上して貨物倉の上部を突き破ったりすることを防止しなければならない。これは、従来のC型タンクでは、通常、2個のリングフレームに近接してタンクの上側に設置された4個の大型ブラケットによって達成される。そして、浮動荷重がブラケットを介して上部船体側部に伝達される。球形タンクでは、タンクの均分円は、いわゆるスカートを介して船舶構造に溶接されているので、支持構造もまた浮動に対してタンクを保持する。角柱状タンクでは、タンクの上側に位置し、船体の側面の多数個所に取付けられたブラケットによって、タンクの押下げが達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
タンクの縦軸に沿って間隔を置いた一連の脚部を設置することによって液化ガス輸送船の船倉内でカーゴタンクを支持するためのシステム及び方法を開示する。前記脚部は、船舶の構造コンポーネントに関連して位置決めされる。これらの脚部は、右舷及び左舷のタンクの両側面に沿ってタンクの周径より下のタンクに対して固定された木材又はその他の適当な断熱及び耐荷重材からなる。脚部は、水平面の左舷及び右舷にあり船体構造によって固定及び支持された構造縦通材に載置される。前後方向及び横方向の脚部の動きは、脚部の一個所以上で縦通材に取付けられた止め具によって制御される。止め具は、脚部を一方向に制約するが他の方向への動きを許容するベアリングパッドを介して脚部と接触する。ベアリングパッドは、脚部と止め具との摩擦を軽減し、それによって前記所望の方向への自由な動きを可能にする。
【0013】
このように、B型カーゴタンクの重量及び材料厚の利点に加えて円筒形C型タンクの製造上の利点を有する円筒形カーゴタンクは、球形タンクよりも優れた貨物スペースの利用、及び角柱状又はC型タンクの材料及び製造コストの軽減をもたらす。加えて、間隔を置いた脚部は、タンク又は複数のタンクから船体構造への荷重の均一な分散を促し、それによって、過度な船体の撓みを無くし、スロッシング荷重による脆弱性を減少しながら、より単純且つより軽量の船体構造を可能にする。脚部、止め具及びベアリングパッドの設計は、伝熱を最小にし、悪影響の無い正常なカーゴタンクと船体の撓みを可能にする。本明細書で論じられる概念によって、単独で15,000m以上の収容能力のタンクが実現されることができる。
【0014】
上記には、以下の本発明の詳細な記述がよりよく理解されるように、本発明の特徴及び技術的利益の概要をかなり大まかに示した。本発明の更なる特徴及び利益を以下に記述するが、それらは本発明の請求項の主題を形成する。当業者は、開示された概念及び具体的な実施形態が、本発明と同じ目的を達成するためのその他の構造を修正又は設計する基礎として容易に利用される可能性があることを理解すべきである。また、当業者は、そのような等価の構成が添付の請求項に明記された本発明の趣旨及び範囲から逸脱するものではないことを認識すべきである。本発明の特性と見なされる新規の特徴は、更なる目的及び利益と共に、構成及び動作方法の両方に関して、添付の図面と結び付けて考えられた時、以下の記述からより良く理解されるだろう。しかし、各図面は、図解及び記述の目的で提供されるものであり、本発明の制限を定義すると意図していないことは当然理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のより完全な理解のため、添付の図面を併用して以下の記述を参照する:
【図1】内部にタンクが配列された液化ガス輸送船の上面図である。
【図2】本明細書に記述されたシステム及び方法によって支持されている、船尾向きのカーゴタンクの横断面図である。
【図2A】右舷の支持部の拡大図である。
【図2B】左舷の支持部の拡大図である。
【図3】本明細書に記述されたシステム及び方法によって支持されているカーゴタンクの側面図である。
【図4】本明細書に記述されたシステム及び方法によって支持されているカーゴタンクの上面図である。
【図5A】液化ガス輸送船での使用のための先行技術の支持配置による円筒形のC型タンクの一例を示す図である。
【図5B】液化ガス輸送船での使用のための先行技術の支持配置による円筒形のC型タンクの一例を示す図である。
【図6】脚部がその上に構成されたタンクの一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、カーゴタンク20−1乃至20−4が配列された液化ガス輸送船10の上面図を示す。これらのカーゴタンクは、船舶の縦軸に沿って直線的に変位させて示されているが、本明細書で論じられる概念は、任意のタンク配列及び任意のタンク数とともに用いられることが出来ることに留意されたい。
【0017】
図2は、本明細書に記述されるシステム及び方法によって支持されるタンク20の横断面図を示す。本発明の支持システムを支援するため、図2A及び2Bに示すように、横ウェブフレーム11及び縦隔壁13又は梁14からなる船舶の船体構造体に一体化された縦通材12等の支持構造体を追加することが有益である。構造体12,13及び14は、好ましくは、必要な場合に限り断続して設置できる、連続構造体であることに留意されたい。
【0018】
本発明の発明概念を論じる前に、図5A及び5Bに示すような先行技術の支持構造体を概観することは有効であると思われる。図5Aに示すように、円筒形タンク20は、リングフレーム52によって内部から支持されている。
【0019】
図5Bでは、船舶の底部57及び側部船体58によって横サドル51が支持されている。通常は、タンクと鋼製サドルとの間に木製ベアリング54が存在する。各リングフレーム52の個所では、押下ブラケット56が外殻に取り付けられている。押下ブラケット56は、ストッパ55を船舶の側部船体58に対して押圧してタンクの浮動を防止する。押下ブラケット56は、タンクの左舷及び右舷側にある。タンクの一方の端部の底部には前後方向止め具53が存在する。前後方向止め具を除いて、同一の構造が、図5Aに示すようにタンク20の他方の端部で繰り返されている。各サドルは、静タンク荷重の約50%を支え、この荷重は船舶の動きによってほぼ2倍になる可能性がある。このような荷重下で、船体及びタンクの両者は、複雑な相互作用において著しく撓み、それによって、カーゴタンク及び支持構造体の両者の応力を増加する。構造体破損を防止するため、詳細な構造分析を使用して重厚かつ複雑な支持構造を設計しなければならない。
【0020】
これから本発明の概念を参照するが、図2、2A、及び2Bに示すように、タンク20(図6に単体で示す)は、図3に拡大して示すように、船舶の貨物倉の長さに沿って前後方向配置された一連の支持構造体上に効果的に載置される。
【0021】
一実施形態では、タンクの縦軸に対して平行にタンクの各側サイドに沿って間隔を置いてタンクの支持部27の底面の下に脚部26が位置決めされる。脚部は、船舶のウェブフレーム11に対応する位置に有効に位置する。好適な実施形態は、脚部がタンクに取り付けられるものだが、その代わりとなる別の実施形態は、脚部をタンクの前後方向支持部と結合するように縦通材に沿って位置決めすることも可能である。そのような実施形態では、止め具はタンク支持部上にある。
【0022】
タンクの両端部は、半球状、クローバー(Kloeber)又はその他の適当な型でよく、両端が同一である必要はない。タンクの直径は、25m以上でもよい。タンクの円筒の長さ対直径比は、主に2つの要因によって制限される。一つは、静水圧荷重及びカーゴタンク荷重下での船体側部の変形、及びそのタンク変形への影響である。船体の変形は、貨物倉隔壁間の距離の2乗に比例して変わる。従って、短い船倉ほど、船体の変形を著しく小さくすることになる。
【0023】
二つ目の重要な長さ対直径比の要因は、スロッシング荷重の制限である。円筒形タンク内の横スロッシングが総タンク荷重にほとんど影響しないことは周知である。しかし、円筒形タンク内の縦方向のスロッシングはいくつかの要因によって異なり、その内の最も重大な要因が、タンクの直径に対する長さである。通常、C型の円筒形タンクは、最大で3:1の長さ対直径比を有し、サドルリングフレームに取付けられたタンクの両端付近の制水隔壁を利用してスロッシング荷重を軽減する。しかし、15mを超えるタンク直径では、制水隔壁の使用が技術的課題となる。円筒の長さ対直径比を2:1未満に制限することによって、縦スロッシング荷重を十分に小さくし、制水隔壁の必要をなくしてもよい。直径の小さいタンクほど、1枚以上の制水隔壁を併用してより高い長さ対直径比を実施できる可能性がある。
【0024】
円筒形カーゴタンクの軸は、船舶の船首及び船尾の前後方向に水平に向けられる。先に述べたように、タンクは、タンクの水平中心線軸(図6の601)に対して平行且つ若干下方のタンクの両側上に間隔を置いて配列された脚部26によって支持されている。脚部26は、一実施形態では、含浸合板又はその他の適当な断熱及び耐荷重材から構成され、タンク下部前後方向梁29に固定される。垂直支持部27が下部梁29と上部梁28との間に補強を施す。図示の実施形態では、上部梁28、下部梁29及び垂直支補強材27の個所で溶接部24によってタンクの両側にタンク支持部602(図6)が溶接されている。脚部は、タンクとその貨物の重量及び垂直荷重を、縦通材12を介して船舶の構造体に伝達する。
【0025】
同様に、脚部は、タンクとその貨物の横方向及び縦方向の荷重を、縦通材12に固定された止め具30及び41(夫々図3及び4に見られる)に伝達する。止め具は、ある一方向への脚部の動きを制約するが、他の方向への動きを許容することで、予期されるタンクの熱膨張及び収縮、タンク及び船舶の構造体の撓み、及びそれらの相互作用に適応する。止め具は、脚部と止め具との間での滑りを促すために、含浸木材、研磨ステンレス鋼、テフロン等の低摩擦係数の表面を有するベアリングパッドを含む。
【0026】
先に述べたように、脚部は、図2、2A、2B及び6に示すようにタンク20の外側に対して溶接24(或いは固定)された下部前後方向梁29の下に固定される。梁29は、縦方向及び横方向の荷重をタンクから脚部へ伝達するように設計されている。タンクの各側の下部梁は、タンク外殻203の底部とその水平中心線軸との間の高さの水平面内に位置する。この底部上方の水平面の高さは、最も小さい全曲げ応力及びせん断応力が円筒形タンクに加えられる個所の高さを算出することによって決定する。この底部上方の高さは、タンクの形状及び船舶の動きによってタンクに加わる力によって変わる。下部前後方向梁29の高さは、通常、タンク底部の上のタンク直径の約20%〜40%である。
【0027】
より小さな上部前後方向梁28は、タンクを更に強化するよう作用し、図2、2A、2B及び6に示すようにタンク20の外側に溶接24(或いは固定)されている。上部及び下部梁は、脚部の位置にタンクの縦軸に沿って位置決めされた一連の外部垂直補強材27によって接続されている。各脚部の個所のタンク内部リングフレーム25は、横方向及び縦方向のタンク荷重を脚部に伝達するための主要な構造部材として作用する。垂直補強材27は、横方向及び縦方向のタンク荷重をリングフレーム25から下部前後方向梁29を介して脚部に伝達する。脚部とリングフレームとの間隔は、船舶の横ウェブフレーム間隔と略一致する。リングフレームは、場合によってはタンクの外側にあることも可能であるが、船舶の船幅は既定の積載重量のために制限されるので、外側のリングフレームは、タンクの大きさ、ひいては既定の船幅の船舶の積載運搬能力を減少することになる。
【0028】
先に述べたように、船舶の船体は、船体の各側の脚部の底面の高さに前後方向棚部又は縦通材12を含む。縦通材と脚部との間にベアリングパッドを嵌合してもよい。縦通材は、垂直方向及び横方向の荷重をタンクから船舶のウェブフレームに分散する垂直フレーム15(図2A及び2B)によって支持される。垂直方向及び横方向支持部の反復性は、タンク荷重を船体構造体に対してほぼ均等に分散する。これによって、C型タンクの船体と比較して、単純明快な船体構造レイアウトが可能になる。脚部は互いにほぼ同じ高さであり、且つ船舶の喫水線と同じ高さである。留意すべきは、このリングフレームが、荷重を支えて脚部から分散するように作用し、現在の海洋での実体よりもはるかに大きい直径のカーゴタンクの設計を可能にすることである。
【0029】
タンクは、脚部26上に載置したタンク自体の重量によって、回転動作をしないように垂直方向下方に固定されており、脚部26は、同様に、船舶の構造体によって支持されている。船倉が浸水した場合、各脚部の個所に、又は、必要に応じて、少なくとも4個、即ち各側に2個ずつの脚部の個所に位置する鎖204又は同様の押下装置によって、タンクは浮上しないよう緩やかに拘束される。鎖204又は同様の押下装置は、縦通材12、隔壁13又は同じ防止目的を達成する同様の位置に取り付けられる。
【0030】
横方向位置は、図3に示す、船舶の片側(図示の実施形態では右舷側)にのみ有利に配置された横方向止め具30によって制御される。この片側配置によって、タンクは非拘束側で自在に膨張及び収縮することが出来る。
【0031】
図3は、タンク20の側方長さに沿う脚部200の各個所の横方向止め具30を示す。タンクが船舶の片側でのみ横方向に拘束されている場合、全ての横方向荷重は、船舶の船体の前記片側に伝達される。タンクの支持されていない側は、自在に横方向に動き、変形及び熱収縮に対応する。
【0032】
必要に応じて、タンクの側方長さに沿って船舶の両側に横方向止め具を設置することが可能である。この横方向止め具システムのバリエーションは、例えば、タンクの両側で横方向止め具を使用することである。このような場合、横方向荷重は、船舶の両側に対して多かれ少なかれ均等に伝達される。以下のバリエーション例が考えられる。
a)各脚部の左舷船内側に1個の横方向止め具及び右舷船内側に1個の横方向止め具;
b)各脚部の左舷船内側及び船外側に止め具及び右舷船内側に1個の止め具;及び
c)各脚部の左舷船内側及び船外側に止め具及び右舷船内側及び船外側に止め具。
【0033】
c)の場合、一組の止め具は、船内側止め具が「冷たい(cold)」タンク状態で脚部と接触し、船外側止め具が「暖かい(warm)」タンク状態で脚部と接触するように配置され、即ち、タンクが横方向止め具に拘束されることなく熱サイクルを通して膨張及び収縮出来るように、止め具同士は間隔をあけて配置される。別の構成では、タンクが冷えた後に上記船外側横方向止め具が調節され、脚部と止め具の間隔を最小にすることができる。
【0034】
理想的な横方向止め具の設計解は変数に依存し、船体構造、タンクの大きさ、液化ガス密度、圧力等に依存する各船舶の設計によって異なる可能性がある。
【0035】
前後方向位置は、図4に示す、前後方向止め具41によって制御され、図示のように、タンクの左舷側及び右舷側に設置可能である。止め具は、下部梁29に固定され且つ前方及び船尾の両方向の前後方向荷重に対応する大きさにされる脚部に作用する。左舷及び右舷止め具は一組だけ嵌合される必要があり、これらの止め具は、通常、充填及び注入管がタンクに接続されたタンクドーム205の前後方向位置の左舷及び右舷に位置する。この止め具の位置によって、タンクが、タンク管と船舶の構造との間の固定位置を維持するように、ローディングパイプ(図示せず)から離れるように前後方向に膨張及び収縮することが出来る。図3に示すように、タンクの船尾側端部32は、船舶の後端部に最も近接し、タンクの前方端部31は船舶の前端部に最も近接している。タンクドーム205は、通常、船尾側端部の円筒形タンクの頂部に取付けられた垂直円筒形の半球天井である。これは、蒸気を収集するための液体を含まない蒸気空間として作用する。カーゴタンク配管、注入管、排出ポンプ、蒸気線等が、このドームを介してタンクを貫通している。
【0036】
横方向止め具は、前後方向へのタンクの動きを許容する。前後方向止め具は、横方向へのみの動きを許容する。止め具及び脚部に取付けられたベアリングパッド間には間隙が存在してもよい。前後方向及び横方向の止め具の目的は、タンクと船舶の船体が互いに過度の応力を加えることなく撓むことが出来るようにすることである。ある時点で、タンク及び/船舶の構造体の撓みは望ましくなくなるか安全ではなくなるので、システムは、これらの撓みを許容範囲内に維持し、タンク又は船舶が過度に増強される必要が無いように設計される。
【0037】
本発明及びその利益を詳細に記述したが、ここでは、添付の請求項によって規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、様々な変更、置換及び修正が可能であることを理解するべきである。更に、本出願の範囲は、本明細書に記述されたプロセス、機械、製造、化学物質、手段、方法及び工程の特定の実施形態に制限されることを意図していない。当業者は、本発明の開示から、本明細書に記述された対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たす又は実質的に同じ結果を達成する既存又は後に開発される、プロセス、機械、製造、化学物質、手段、方法又は工程を本発明に従って利用してもよいことを容易に理解するであろう。従って、添付の請求項は、各請求項の範囲内で、そのようなプロセス、機械、製造、化学物質、手段、方法及又は工程を含むことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物船内で使用するためのカーゴタンク支持システムであって、
前記貨物船の縦軸に略平行に配置された縦軸を有する円筒形カーゴタンクと、
各カーゴタンクに関して、前記カーゴタンクの縦軸に平行な配置に前記カーゴタンクの両側に沿って固定且つ位置決めされた複数の脚部と、を備え、
前記複数の脚部の夫々は、前記貨物船の船体に固定された構造要素によって、前記貨物船の底部に向かう下方移動を制約され、
少なくとも幾つかの前記脚部が、前記船舶の底部の上方に前記カーゴタンクの底部を支持し、
少なくとも幾つかの前記脚部が、前記カーゴタンクを横方向に制約するように前記構造要素と協働して作用し、且つ、
少なくとも幾つかの前記脚部が、前記カーゴタンクを前後方向に制約するように前記構造要素と協働して作用する、カーゴタンク支持システム。
【請求項2】
前記脚部が、前記カーゴタンクの周径よりも下方の位置で前記カーゴタンクに対して夫々固定される請求項1に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項3】
前記カーゴタンクの一方側に位置する各脚部に関して、対応する脚部が前記カーゴタンクの反対側の同じ軸位置に位置する請求項1に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項4】
前記脚部が、前記カーゴタンクの外殻に取付けられた前後方向梁に固定される請求項1に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項5】
前記前後方向梁が、各脚部より上方の前記カーゴタンクの外側に位置する垂直補強材によって支持される請求項4に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項6】
前記カーゴタンクの内側のリングフレームが、荷重を支えて各脚部から分散するように、各脚部の個所に位置する請求項1に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項7】
前記脚部と前記リングフレームとの軸方向間隔が、前記貨物船の横方向構造部材同士の倍数の間隔と一致する請求項6に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項8】
前記脚部が、断熱特性を有する耐荷重材から構成される請求項1に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項9】
船倉内に位置決めされた少なくとも1個のカーゴタンクを有する貨物船であって、
2個の端部、2個の側部、底部及び頂部を有する貨物倉と、
横方向構造部材が前記貨物倉内に互いに間隔を置いて配置されている前記船倉内の横方向及び前後方向構造部材と、
前記カーゴタンクの周径よりも下方の前記カーゴタンクの外表面に嵌合された少なくとも3対の脚部を有し、前記各対の脚部が、前記横方向構造部材の一つと一致する位置で前記カーゴタンク上に位置決めされた円筒形カーゴタンクと、
前記横方向構造部材に固定されると共に前記脚部を支持するよう位置決めされた、前記船倉の各側部上の縦通材と、
前記カーゴタンクの脚部の動きを横方向に制約するが前後方向には制約しないように、前記縦通材に対して固定される横方向止め具と、
前記脚部を前記前後方向に制約するが前記横方向には制約しないように、一軸方向位置にある前後方向止め具と、
前記貨物倉が浸水した場合に、前記カーゴタンクが前記底部から離れるように上方へ浮動することを防止するように、前記横方向構造部材に取付けられた複数の押下装置と、
を備える貨物船。
【請求項10】
液化ガスが前記カーゴタンクに格納され、圧力下且つ極低温で輸送されることが可能である請求項9に記載の貨物船。
【請求項11】
液体が前記カーゴタンクに格納され、圧力下且つ周囲温度を上回る温度で輸送されることが可能である請求項9に記載の貨物船。
【請求項12】
前記カーゴタンクの直径に対する長さが、前記カーゴタンクに特別の対策を必要とすることなくスロッシングの悪影響を取り除くように構成される請求項9に記載の貨物船。
【請求項13】
前記横方向及び前後方向止め具及び前記脚部下の縦通材が、低摩擦係数の耐荷重材を有するベアリングパッドによって当接される請求項9に記載の貨物船。
【請求項14】
前記縦通材が前記貨物船の側部を補強し、それによって前記貨物倉の側部の横方向撓みを軽減する請求項9に記載の貨物船。
【請求項15】
前記横方向構造部材が、垂直方向及び横方向荷重を前記カーゴタンクの脚部から分散する請求項9に記載の貨物船。
【請求項16】
前記止め具同士が離間し、前記カーゴタンクの応力を安全な水準の範囲内に維持するために、前記止め具同士の間で前記脚部の限定的移動を許容する請求項9に記載の貨物船。
【請求項17】
前記押下装置が4個以上の前記脚部の個所に位置し、前記カーゴタンクが所定量を超えて浮上することを防止する請求項9に記載の貨物船。
【請求項18】
液体の輸送のために貨物船内にカーゴタンクを設置する方法であって、
一対の貨物倉縦通材に対して各縦通材に沿う所定位置に止め具を取付ける際に、前記止め具同士を離間させて、前記カーゴタンク側部に沿って取付けられた前後方向梁の下側に取付けられた脚部の限定的移動を許容するように取付ける工程と、
前記止め具と前記脚部に当接する前記縦通材とに対して低摩擦係数のベアリング表面を位置決めする工程と、
前記脚部が前記縦通材上に載置されるように貨物倉内に前記カーゴタンクを挿入する工程と、
前記カーゴタンクが浮上することを防止するように前記貨物船の構造体と前記カーゴタンクとの間に押下装置を取付ける工程と、を有する方法。
【請求項19】
前記縦通材が、夫々船首及び船尾の方に延出している前記船倉の左舷側及び右舷側に沿い、前記縦通材が互いに相対的に同じ高さであり、前記貨物船の喫水線と同じ高さである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カーゴタンクの底部が、前記貨物船と前記カーゴタンクの両方の応力レベルを最小にする距離だけ前記貨物船の底部の底の上方に位置するように、前記縦通材が前記カーゴタンクを支持する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ベアリング表面が、前記船倉内で船首及び船尾から等間隔に配置されている請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記前後方向梁が、離間した垂直補強材によって接続された連続的な上部及び下部前後方向梁を備える請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記止め具が、物質が前記カーゴタンクに積載される個所である前記カーゴタンクの一端部にのみ位置し、それによって前記カーゴタンクが前記物質の積載端部から離れるように前後方向に自在に膨張することを許容する請求項18に記載の方法。
【請求項24】
貨物船内での使用のためのカーゴタンク支持システムであって、
前記貨物船の縦軸に略平行に配置された縦軸を有する円筒形カーゴタンクと、
各カーゴタンクに関して、前記カーゴタンクの縦軸に平行な配置に前記カーゴタンクの両側に沿って位置決めされた複数の脚部と、を備え、
前記複数の脚部の夫々は、前記貨物船の船体に固定された構造要素によって、前記貨物船の底部に向かう下方移動を制約され、
少なくとも幾つかの前記脚部が、前記縦軸と平行に位置決めされ、前記脚部と関連して前記カーゴタンクを横方向に制約する第1の一組の止め具と協働で作用し、
少なくとも幾つかの前記脚部が、前記縦軸と平行に位置決めされ、前記脚部と関連して前記カーゴタンクを前後方向に制約する第2の一組の止め具と協働で作用する、カーゴタンク支持システム。
【請求項25】
前記第1及び第2の一組の止め具が実際に前記脚部に当接しているが、前記脚部に対して永久的に取り付けられてはいない請求項24に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項26】
前記当接が前記カーゴタンクの周径よりも下方の位置で起こる請求項25に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項27】
前記脚部が前記カーゴタンクに永久的に取付けられ、前記止め具が前記構造要素に永久的に取付けられている請求項25に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項28】
前記脚部が前記構造要素に永久的に取付けられ、前記止め具が前記カーゴタンクに永久的に取付けられている請求項25に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項29】
前記カーゴタンクの一方側に位置する各脚部に関して、対応する脚部が前記カーゴタンクの反対側の同じ軸位置に位置する請求項25に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項30】
前記脚部が、前記カーゴタンクの軸中心線より下方の前記カーゴタンクの外殻に取付けられた前後方向梁に固定される請求項24に記載のカーゴタンク支持システム。
【請求項31】
液体の輸送のために貨物船内にカーゴタンクを設置する方法であって、
前記カーゴタンクの前後方向長さに沿って所定の位置に止め具を取付ける際に、前記止め具同士を離間させて、前記カーゴタンク側部に沿って取付けられた前後方向梁の下側と接触するように位置決めされた脚部の限定的移動を許容する取付ける工程と、
前記止め具に対して且つ前記脚部に対して低摩擦係数のベアリング表面を位置決めする工程と、
前記脚部が前記船倉内で前記船舶の構造体に取付けられた縦通材上に載置されるように前記貨物船の船倉内に前記カーゴタンクを挿入する工程と、
前記カーゴタンクが浮上することを防止するように前記縦通材と前記カーゴタンクとの間に押下装置を取付ける工程と、を有する方法。
【請求項32】
前記縦通材が、夫々船首及び船尾の方に延出している前記船倉の左舷側及び右舷側に沿い、前記縦通材が互いに相対的に同じ高さであり、前記貨物船の喫水線と同じ高さである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記カーゴタンクの底部が、前記貨物船と前記カーゴタンクの両方の応力レベルを最小にする距離だけ前記貨物船の底部の上方に位置するように、前記縦通材が前記カーゴタンクを支持する請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記ベアリング表面が、前記船倉内で船首及び船尾から等間隔に配置されている請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記脚部が前記カーゴタンクに取付けられた前後方向梁に抗する支持によって前記カーゴタンクを支持し、前記前後方向梁は、離間した垂直補強材によって接続された連続的な上部及び下部前後方向梁を備える請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記止め具が、物質が前記カーゴタンクに積載される個所である前記カーゴタンクの一端部にのみ位置し、それによって前記カーゴタンクが前記物質の積載端部から離れるように前後方向に自在に膨張することを許容する請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−527656(P2011−527656A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517557(P2011−517557)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/049894
【国際公開番号】WO2010/006023
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510334631)
【Fターム(参考)】