説明

貯湯タンクのソケット溶接構造

【課題】溶接時に過加熱とはならず、しかも溶接箇所の内、内側に隙間が生じないようにした、貯湯タンクのソケット溶接構造を提供する。
【解決手段】タンク本体に設けた開口部115aにソケット本体123を挿入し、該挿入部を溶接することで、タンク本体とソケット本体とを連結した貯湯タンクのソケット溶接構造において、ソケット本体123の外周に周方向に延びた環状の凸部301を形成し、該凸部がタンク本体に当たるまでソケット本体を挿入し、タンク本体の外側から該凸部301を溶かすように溶接したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯湯タンクのソケット溶接構造に係り、特にソケットの溶接の容易化が図れるソケット溶接構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圧縮機、室外熱交換器、およびアキュムレータ等の室外機要素を収容した室外機と、蓄熱コイルを有した蓄熱槽と、室内機とを接続した空気調和装置が知られている(特許文献1)。この種のものでは、電力料金の比較的安価な深夜電力を利用して、蓄熱槽に冷熱または温熱を蓄え、昼間の時間帯に、この蓄熱槽内の熱を一部または全部利用して冷暖房運転を実現している。ところで、上記蓄熱槽では、タンク本体の外周胴部に開口部を形成し、この開口部にソケット本体を挿入し、該挿入部を溶接することで、タンク本体とソケット本体とを連結すると共に、該ソケットにはお湯の取り入れ用、お湯の取り出し用の各配管を接続し、さらに温度センサを接続している。
【特許文献1】特開2002−310458
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のソケット溶接構造では、ソケット本体の外周部を溶接により溶かして、タンク本体とソケット本体とを連結しているが、タンク本体の薄型化を図る場合等に、これでは、溶接熱が大きくなり過ぎて、溶接時に過加熱となり、タンク本体への溶接不良が発生し易いという問題があった。
また、従来では、タンク本体にオーステナイト系のステンレス鋼を使用しているが、該ステンレス鋼は高価なため、安価な低カーボンのフェライト系のステンレス鋼を使用することが試みられている。しかし、フェライト系のステンレス鋼は熱を与えた場合に脆くなるという欠点がある。
さらに、ソケット本体の溶接作業は、一般的に、タンク本体の外側から行われるが、これだと、タンク本体の内側の溶接箇所に隙間が生じ易くなり、隙間が生じた場合には、該隙間部が錆びるという問題があった。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、溶接時に過加熱とはならず、しかも溶接箇所の内、内側に隙間が生じないようにした、貯湯タンクのソケット溶接構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、タンク本体に設けた開口部にソケット本体を挿入し、該挿入部を溶接することによりタンク本体とソケット本体とを連結した貯湯タンクのソケット溶接構造において、前記ソケット本体の外周に周方向に延びた環状の凸部を形成し、該凸部がタンク本体に当たるまでソケット本体を挿入し、タンク本体の外側から該凸部を溶かすように溶接したことを特徴とするものである。
前記凸部の体積が、タンク本体の開口部と、ソケット本体の外周部との間の隙間を埋めて、タンク本体の内側に裏ビードとして突出するのに十分な体積であってもよい。
これらの発明では、周方向に延びた環状の凸部を溶かすように溶接するため、溶接時に過加熱となることがなく、しかも凸部の溶接時には、タンク本体の開口部とソケット本体の外周部との間の隙間を埋めて、タンク本体の内側に裏ビードとして突出するように溶接することで、溶接箇所の内、内側に隙間が生じない。
【0005】
前記ソケット本体の外径が前記凸部の外径と略等しく、前記凸部の外側にはソケット本体の外周部を切り欠いた環状凹溝を備えてもよい。
該ソケット本体は、一般的に、ソケット本体と配管との接続時にソケットレンチ等の工具が引っ掛けられるため、所定の肉厚であることが求められる。本構成では、凸部の外径が、ソケット本体の外径と略等しく、凸部の外側に、ソケット本体の外周部を切り欠いた環状凹溝を備えるため、ソケット本体の外径、および肉厚を変更することなく、環状の凸部を設けることができる。
前記タンク本体がフェライト系のステンレス鋼であり、前記ソケット本体がオーステナイト系のステンレス鋼であってもよい。
本構成では、タンク本体に、熱に弱いフェライト系のステンレス鋼を使用しても、上述したように、溶接時に過加熱となることがないため、タンク本体とソケット本体とを容易に溶接することができる。
【発明の効果】
【0006】
これらの発明では、周方向に延びた環状の凸部を溶かすように溶接するため、溶接時に過加熱となることがなく、しかも凸部の溶接時には、タンク本体の開口部とソケット本体の外周部との間の隙間を埋めて、タンク本体の内側に裏ビードとして突出するように溶接することで、溶接箇所の内、内側に隙間が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、1は圧縮機を示しており、この圧縮機1には四方弁3を介して室外熱交換器5が接続されている。この室外熱交換器5には室外電動弁6を介してレシーバタンク7が接続され、このレシーバタンク7には管路9を介して蓄熱槽電動弁11、サブクール弁13、逆止弁14および電動弁15が接続され、この電動弁15は管路20を介して室内機17の室内熱交換器19に接続されている。この室内機17の室内熱交換器19は管路20を介して四方弁3に接続され、この四方弁3にはアキュムレータ21および圧縮機1が接続されている。
【0008】
本空気調和装置では、上述したサブクール弁13、逆止弁14、電動弁15および室内機17をバイパスするように管路22が接続され、この管路22には蓄熱コイル23および二方弁24が接続されている。上述した蓄熱コイル23は蓄熱槽25中に水没状態で設置されている。レシーバタンク7は、解氷弁26および逆止弁27を有した管路28を介して、蓄熱コイル23と二方弁24を接続する管路22に接続され、また、レシーバタンク7は液ライン弁29を有した管路30を介して逆止弁14と電動弁15を接続する管路9に接続されている。室外電動弁6とレシーバタンク7の間にはリキッド弁31およびキャピラリチューブ32を有した管路32が接続され、この管路32は圧縮機21の吸込に接続されている。
【0009】
製氷運転時には、四方弁3が実線位置に切り替わり、圧縮機1から吐出された冷媒が、四方弁3、室外熱交換器5、室外電動弁6の順に流れてレシーバタンク7に入り、ここから管路9、蓄熱槽電動弁11、管路22を経て、蓄熱槽25中の蓄熱コイル23に流入し、ここで蒸発して蓄熱槽25中に製氷し、二方弁24、四方弁3、アキュムレータ21を経て圧縮機1に戻される。
通常冷房運転時には、四方弁3が実線位置に切り替わり、圧縮機1から吐出された冷媒が、四方弁3、室外熱交換器5、室外電動弁6の順に流れてレシーバタンク7に入り、ここから管路30、液ライン弁29に至り、さらに電動弁15を経て、室内機17の室内熱交換器19に流入し、ここで蒸発して気化し、管路20、四方弁3、アキュムレータ21を経て圧縮機1に戻される。
【0010】
蓄熱冷房運転時には、四方弁3が実線位置に切り替わり、圧縮機1から吐出された冷媒が、四方弁3、室外熱交換器5、室外電動弁6の順に流れてレシーバタンク7に入り、ここから管路28、解氷弁26、逆止弁27を経て、蓄熱槽25中の蓄熱コイル23に流入し、ここで冷却され氷から冷熱を得て、管路22、サブクール弁13、逆止弁14に至り、さらに電動弁15を経て、室内機17の室内熱交換器19に流入し、ここで蒸発して気化し、管路20、四方弁3、並びにアキュムレータ21を経て圧縮機1に戻される。
暖房運転時には、四方弁3が破線位置に切り替わり、圧縮機1から吐出された冷媒が、四方弁3を介して、室内機17の室内熱交換器19に流入し、ここで凝縮した後に、電動弁15、液ライン弁29を経てレシーバタンク7に入り、ここから室外電動弁6を経て、室外熱交換器5に流入し、ここで蒸発して気化した後、四方弁3、アキュムレータ21を経て圧縮機1に戻される。
【0011】
本構成では、圧縮機1、室外熱交換器5およびアキュムレータ21等の室外機要素と、蓄熱コイル23を有した蓄熱槽25とが、一の筐体100の内部にまとめて収容されている。この筐体100は、図2および図3に示すように、略直方体状を有し、この筐体の一方の室100Aには圧縮機1、室外熱交換器5、室外ファン4、レシーバタンク7、アキュムレータ21等の室外機要素が配置され、筐体100の他方の室100Bには蓄熱コイル23を有した略円筒状の蓄熱槽25が配置されている。
【0012】
一方の室100Aと他方の室100Bとが横並びに配置されると共に、一方の室100A側の筐体100の奥行き寸法L1が、他方の室100B側の筐体100の奥行き寸法L2に比べて小さく形成されている。本構成では、一方の室100A側の筐体100の奥行き寸法L1が奥行き寸法L2に比べて小さく形成されているため、例えば、上記筐体100が、仕切壁200に隣接して設置されたとしても、一方の室100A側の筐体100と仕切壁200との間には大きな空間201が形成される。
この大きな空間201がいわゆる吸込空間となるため、室外熱交換器5に供給される空気量を増大させることができる。
【0013】
図4は、蓄熱槽25を示す。
該蓄熱槽25は、厚みが約0.8mmのフェライト系のステンレス鋼(例えば、SUS430)製のタンク本体(貯湯タンクを構成する。)111と、蓄熱コイル23の束からなるコイルユニット113とを備える。タンク本体111は、胴部115と、底部117と、天部119とを一体に溶接して構成され、その内側には、コイルユニット113を支持したホルダ121が配置される。上記胴部115には3つの開口部115aがあけられ、これら開口部115aには、オーステナイト系のステンレス鋼(例えば、SUS304)製のソケット123,124,125が溶接により取り付けられる。
そして、上下に位置した2つのソケット123,124には、お湯の取り入れ用、お湯の取り出し用の各配管126,127(図1参照)が接続され、別のソケット125には温度センサ128が接続される。
【0014】
図5は、ソケットの溶接構造を示す。
上記ソケット123,124,125の各溶接構造は同じであるため、以下、一例としてソケット123の溶接構造について説明する。
【0015】
このソケット(以下、ソケット本体という。)123は、上記胴部115の開口部115aに挿入される挿入部123aを備え、この挿入部123aは、ソケット本体123の外径よりも小径に形成され、該小径部には周方向に延びた環状の凸部301が一体的に形成されている。該凸部301の外径は、ソケット本体123の外径と略等しく、凸部301の外側にはソケット本体123の外周部を切り欠いた環状凹溝303が一体に形成されている。凸部301は、例えば、高さH=1.5mm、幅W=2mmの設計であり、該凸部301の体積は、溶接時において、タンク本体の開口部115と、ソケット本体123の外周部との間の隙間δを埋めて、タンク本体123の内側に裏ビードとして突出するのに十分な体積に設定されている。
【0016】
この実施の形態では、該凸部301がタンク本体の胴部115の外面に当たるまで、タンク本体の開口部115にソケット本体を挿入し、タンク本体123の外側から該凸部301を溶かすように溶接する。
【0017】
本構成では、周方向に延びた環状の凸部301に溶接時の熱を集中させて、該凸部301を溶かすように溶接しているため、溶かす対象となる凸部301の体積が小さい分だけ溶接時に過加熱となることがない。本構成では、タンク本体111がフェライト系のステンレス鋼であり、ソケット本体がオーステナイト系のステンレス鋼である。タンク本体111に使用したステンレス鋼は、熱に弱いフェライト系のステンレス鋼であるが、本構成では、上述したように、溶接時に過加熱となることがないため、タンク本体111とソケット本体123とを容易に溶接することができる。しかも、凸部301の溶接時には、タンク本体の開口部115とソケット本体123の外周部との間の隙間δを埋めて、タンク本体123の内側に裏ビードとして突出するように溶接するため、これら溶接箇所の内、タンクの内側に隙間が生じない。従って、貯湯タンクのお湯が、隙間に浸入するようなことがなく、タンクの内側が防錆される。
【0018】
ソケット本体123には、上述したように、お湯の取り入れ用や、お湯の取り出し用の各配管126が接続されるが、この接続時には、一般的に、ソケット本体123の外周にソケットレンチ(図示せず)等の工具が引っ掛けられる。
このため、ソケット本体123の周壁には、強度的に、所定の肉厚(例えば、t=3.5mm)が求められている。
本構成によれば、ソケット本体123の外周部を切り欠くことにより、周方向に延びた環状凹溝303を形成し、その先に環状の凸部301を形成しているため、ソケット本体123の外径、および肉厚tを維持したまま、それを変更することなく、環状の凸部301を形成することができる。
【0019】
以上、一実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものでないことは明らかである。
【0020】
例えば、図6に示すように、ソケット本体123の外周に、その外形から突出した環状の凸部301を形成してもよい。この場合においても、該凸部301がタンク本体の胴部115の外面に当たるまで、タンク本体の開口部115にソケット本体を挿入し、タンク本体123の外側から該凸部301を溶かすように溶接する。これによっても、周方向に延びた環状の凸部301に溶接時の熱を集中させて、該凸部301を溶かすように溶接しているため、溶かす対象となる凸部301の体積が小さい分だけ溶接時に過加熱となることがなく、熱には弱いが安価なフェライト系のステンレス鋼等を、タンク本体111の素材に使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による空気調和装置の一実施形態を示す回路図である。
【図2】空気調和装置の平面図である。
【図3】空気調和装置の側面断面図である。
【図4】蓄熱槽の分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態を示す断面図である。
【図6】別の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 圧縮機
5 室外熱交換器
23 蓄熱コイル
25 蓄熱槽
111 タンク本体
115 胴部
115a 開口部
123,124,125 ソケット
123a 挿入部
301 凸部
303 環状凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体に設けた開口部にソケット本体を挿入し、該挿入部を溶接することによりタンク本体とソケット本体とを連結した貯湯タンクのソケット溶接構造において、前記ソケット本体の外周に周方向に延びた環状の凸部を形成し、該凸部がタンク本体に当たるまでソケット本体を挿入し、タンク本体の外側から該凸部を溶かすように溶接したことを特徴とする貯湯タンクのソケット溶接構造。
【請求項2】
前記凸部の体積が、タンク本体の開口部とソケット本体の外周部との間の隙間を埋めて、タンク本体の内側に裏ビードとして突出するのに十分な体積であることを特徴とする請求項1に記載の貯湯タンクのソケット溶接構造。
【請求項3】
前記ソケット本体の外径が前記凸部の外径と略等しく、前記凸部の外側にはソケット本体の外周部を切り欠いた環状凹溝を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の貯湯タンクのソケット溶接構造。
【請求項4】
前記タンク本体がフェライト系のステンレス鋼であり、前記ソケット本体がオーステナイト系のステンレス鋼であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の貯湯タンクのソケット溶接構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−209033(P2008−209033A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44137(P2007−44137)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(593131666)東京フォーミング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】