説明

貯湯式給湯システム及びその給湯配管保温運転方法

【課題】貯湯式給湯システムにおいて、排熱利用により無駄なエネルギーを消費することなく、即湯システムを実現できる技術を提供する。
【解決手段】発電運転中は弁V1が開となる。これにより、保温回路R4内の低温となった滞留水は回路内を循環し、合流点P3において熱交換器5を通過して加熱された貯湯回路R3を流れる循環水(湯)と混合する。これにより、給湯配管L2、保温配管L5内の低温水も加熱・保温されることになる。この場合、発電運転制御が給湯使用頻度の高い時間帯に合わせて行われるため、保温回路R4内の水もこの時間帯には保温状態にあり、使用者は湯待ちすることなく快適な給湯使用が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯システム及びその運転方法に係り、特に、貯湯式給湯システムの給湯配管保温に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電等に伴い発生する排熱を回収して貯湯タンクに蓄える貯湯式給湯システムが、家庭用コージェネレーション・システムとして注目されている。図8に、この方式による貯湯式給湯システム100を示す。貯湯式給湯システム100においては、発電ユニット102の運転開始に伴い循環ポンプ105の運転が開始され、排熱回収回路R11を熱媒が循環する。同時に循環ポンプ104の運転が開始され、貯湯タンク101内の水(湯)が貯湯回路R10を循環する。排熱回収回路R11と貯湯回路R10は熱交換器103で熱交換し、貯湯タンク101の水は加熱されて蓄えられる。一方、給湯使用時には、貯湯タンク内のお湯は開栓により給湯配管106を経由して給湯栓107に供給される。
【0003】
しかしながら、貯湯式給湯システムにおいては複数箇所にお湯を供給する例が一般的であり、貯湯タンク設置場所と給湯栓設置箇所が離れていることが多い。従って、給湯栓を開いてからお湯が到達するまでの待ち時間が長くなり、特に短時間の給湯栓開閉が繰り返される場合、お湯が到達する前に使用終了してしまうこともあり得る。このため、冬季には常に冷水が供給されることになり、快適性に欠けるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、給湯管内のお湯を循環する回路を設けて、回路を断続的に加熱することにより、即湯を可能とする技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。図9は、このような即湯タイプ貯湯式給湯システム200の構成を示すものである。給湯システム200は、貯湯タンク201と加熱器202と循環ポンプ207とこれらを結ぶ配管L22、L24、L20により構成される第一の循環回路210と、加熱器202と給湯栓204とこれらを結ぶ配管L24、L21、L23により構成される第二の循環回路211と、により構成されている。さらに第一の循環回路210と第二の循環回路211とは、切替バルブ203a、203bにより、お湯の流路を適宜切り替えることができるように構成されている。
【0005】
このようなシステムにおいて、給湯時には貯湯タンク201から配管L20→L21を経由して給湯栓204にお湯が供給される。また、第二の循環回路内に温度センサ206を備え、所定の温度以下になったときは第二の循環回路を加熱器202で加熱して保温する。
【特許文献1】特開平9−243174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の即湯システムにおいては、即湯運転を行うためにバルブの切替えが必要であり、また加熱器を稼動させるために余分なエネルギーを消費するという問題がある。また、配管内温度に基づいて保温制御を行うため、給湯使用しない時間帯にも保温運転が行われるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためのものであって、貯湯式給湯システムにおいて、排熱利用により無駄なエネルギーを消費することなく、即湯システムを実現できる技術を提供するものである。本発明は、以下の内容を要旨とする。すなわち、
請求項1の発明は、排熱源から排熱を回収する排熱回収回路と、貯湯タンクと、循環ポンプと、を備え、排熱回収回路から受熱して、お湯として貯湯タンクに蓄える貯湯回路と、
貯湯タンク内のお湯を端末給湯栓に供給する給湯配管と、を備えた貯湯式給湯システムであって、端末給湯栓近傍で給湯配管から分岐して、循環ポンプ上流側で貯湯回路に接続する保温用配管を、さらに備え、かつ、給湯配管と、保温用配管と、前記循環ポンプと、を含んで給湯保温回路を構成して成ることを特徴とする貯湯式給湯システムである。
上記発明において、排熱源としてガスエンジンによる発電排熱を用いることができる(請求項2)。
さらに、給湯配管経路中に補助熱源機を、さらに備えることができる(請求項3)。
【0008】
請求項4の発明は、上記各貯湯式給湯システムにおいて、貯湯回路が排熱回収回路から受熱するときに、給湯保温回路内の滞留水を循環することを特徴とする貯湯式給湯システムにおける給湯配管保温運転方法である。
請求項5の発明は、請求項3に記載の貯湯式給湯システムにおいて、前記貯湯回路が前記排熱回収回路から受熱していないときに前記給湯保温回路内の滞留水の循環を行うときは、前記補助熱源機を稼動させることを特徴とする貯湯式給湯システムにおける給湯配管保温運転方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排熱を利用して給湯配管部の保温が可能となるため、別途エネルギーを要することなく省エネ性の向上に資する。
また、前記排熱源としてガスエンジンによる発電排熱を用いる発明にあっては、発電排熱が発生する時間帯は電力及び熱需要が大きい時間帯でもあるため、使用者が必要とするタイミングで給湯配管部の保温が可能となる。
また、既に実用化されている製品の構成を利用して、システム構築できるため、コストダウンが可能という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至7を参照してさらに詳細に説明する。なお、重複符号による混乱回避のため、各図において同一構成には同一符号を用いている。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0011】
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る貯湯式給湯システム1の全体構成を示す図である。貯湯式給湯システム1は、貯湯タンク2と、ガスエンジン、発電機、排熱熱交換器等を備えた発電ユニット3と、発電排熱を回収する熱交換器5と、循環ポンプ6、7と、端末給湯栓8と、これらを結ぶ配管L1乃至L5と、を主要構成として備えている。これらにより、以下に示す給水・給湯系統R1と、3つの循環回路R2〜R4が構成されている。なお、貯湯タンク2、熱交換器5、循環ポンプ6、7等は、同図一点鎖線で示す貯湯ユニットとして筐体10内に格納されている。
給水・給湯系統R1は、貯湯タンク2と、貯湯タンク2に水道水を供給する給水配管L1と、貯湯タンク内のお湯を給湯栓8に供給する給湯配管L2により構成されており、給湯需要時には給湯栓8の開栓により、同図太線で示す経路で貯湯タンク内のお湯が供給される。
【0012】
排熱回収回路R2は、発電ユニット3と、熱交換器5と、循環ポンプ7と、これらを結ぶ配管L4を備え、回路内を熱媒が循環するように構成されている。
貯湯回路R3は、貯湯タンク2と、熱交換器5と、循環ポンプ6と、開閉弁V2と、これらを結ぶ配管L3及び給湯配管L2の一部(P1−P5間)により構成されている。貯湯タンク内には温度センサS1乃至S4が配設されており、タンク内各部温度を計測して貯湯状態を確認できるように構成されている。
保温回路R4は、給湯配管L2と、配管L3と給湯栓8とを結ぶ保温配管L5と、配管L3の一部(P1−P2間)と、配管L5経路中に配設された開閉弁V1及び循環ポンプ6により構成されている。
さらに、貯湯式給湯システム1は不図示の制御部を備えており、給湯使用頻度の高い時間帯に予め貯湯タンク2にお湯が蓄えられた状態にするため、タイマー又は手動により発電ユニット3の発停を制御し、発電排熱をお湯として貯湯タンク2に回収するように構成されている。
【0013】
次に図2を参照して、発電運転時の貯湯タンク2への貯湯制御と、同時に行われる保温回路R4の保温制御について説明する。発電運転の開始に伴い循環ポンプ7の運転が開始され、排熱回収回路R2内を熱媒が循環する。同時に弁V2開及び循環ポンプ6の運転が開始され、貯湯貯湯タンク2内の水(湯)が回路R3内を循環する。両回路は熱交換器5において熱交換し、貯湯タンク内の水は加熱されてお湯として蓄えられる。この間、タンク内のお湯の温度は温度センサS1乃至S4により計測され、各温度センサの読み値から貯湯タンク2に貯湯されている熱量が演算され、必要熱量に到達した時点で発電運転が停止される。
【0014】
発電運転中は弁V1が開となる。これにより、保温回路R4内の低温となった滞留水は回路内を循環し、合流点P3において熱交換器5を通過して加熱された貯湯回路R3を流れる循環水(湯)と混合する。これにより、給湯配管L2、保温配管L5内の低温水も加熱・保温されることになる。この場合、上述のように発電運転制御が給湯使用頻度の高い時間帯に合わせて行われるため、保温回路R4内の水もこの時間帯には保温状態にある。従って、使用者は湯待ちすることなく、快適な給湯使用が可能となる。
なお、本実施形態では貯湯タンク2の貯湯を、発電ユニットの排熱のみに依存する形態としたが、貯湯タンク内にヒータ等の他の熱源を持ち、両者により加熱する形態とすることもできる。
また、本実施形態では発電排熱を回収して貯湯する形態を示したが、これに限らず、例えばヒートポンプサイクルによる凝縮熱を回収して貯湯する貯湯システムに応用することも可能である。
【0015】
(第二の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図3は、本実施形態に係る貯湯式給湯システム20の全体構成を示す図である。貯湯式給湯システム20が貯湯式給湯システム1と異なる点は、給湯配管L2経路中に補助熱源機22を備えていることである。これにより、貯湯温度が低い場合に補助熱源機22により加熱することによって、設定温度の給湯が可能となる。
また、給水配管L1からP2で分岐して給湯配管L2に接続する、給水配管L6を備えていることである。配管L2との接続点には混合比例弁23が配設されており、貯湯タンク2から供給される高温のお湯を設定温度にして給湯できるように構成されている。
さらに、給湯配管L2経路中に配管内温度計測用の温度センサS5を備えている。その他の構成は貯湯式給湯システム1と同一であるので、説明を省略する。
以下、貯湯式給湯システム20における保温回路R4の保温制御方法について説明する。まず、発電運転時の保温制御については、第一の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0016】
次に、図4を参照して、発電運転時間帯でなく、かつ、貯湯タンク内の湯温が低い場合の保温運転制御について説明する。この場合、温度センサS5の検知温度が下限温度(例えば15℃)以下になったときは、弁V1開、循環ポンプ6及び補助熱源機22の運転を開始する。そして上限温度(例えば25℃)に達したときは運転を停止する。これにより、同図太線で示すように保温回路R4内の滞留水は循環し、一定温度範囲に収まるように加熱制御されるため、回路内の保温が可能となる。
【0017】
(第三の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。図5は、貯湯式給湯システム30の全体構成を示す図である。貯湯式給湯システム30が貯湯式給湯システム20と異なる点は、暖房回路R5及び暖房加熱回路R6をさらに備えていることである。
暖房回路R5は、配管L5経路中に設けられた高温暖房熱交換器33と、配管L4経路中に設けられた低温暖房熱交換器32と、循環ポンプ34と、不図示の端末機器(床暖房パネル等)及びこれらを結ぶ暖房配管L7により構成されている。
【0018】
暖房加熱回路R6は、補助熱源機22と、給湯配管L2(P1−P7間)と、給湯配管L2と保温配管L5を結ぶ配管L8と、保温配管L5(P8−P3間)及びその経路中に設けられた熱交換器33と、開閉弁V1と、分岐P7に設けられた三方弁V4と、により構成されている。さらに保温配管L5の配管L8との合流点P8の上流側には、開閉弁V3が配設されている。その他の構成は貯湯式給湯システム20と同一であるので、説明を省略する。なお、貯湯式給湯システム20と同様に、設定給湯温度維持のための分岐給水配管及び混合比例弁を備えているが、図示を省略している。
【0019】
次に、貯湯式給湯システム30の給湯及び保温制御について説明する。
給湯制御については、給湯栓8の開栓により貯湯タンク内のお湯が供給される点については、第一の実施形態と同一である。また、貯湯温度が低いときに補助熱源機22により加熱して設定温度の給湯可能とする点についても、第二の実施形態と同一である。
次に図6を参照して、発電運転時の貯湯タンク2への貯湯制御、及び同時に行われる保温回路R4の保温制御について説明する。排熱回収回路R2及び貯湯回路R3の運転制御については、上述の各実施形態と同一である。さらに、発電運転中は弁V1、V3開、三方弁V4は給湯配管L2→保温配管L5側全開に設定される。これにより、保温回路R4内の低温となった滞留水は回路内を循環し、合流点P3において熱交換器5を通過して加熱された貯湯回路R3を流れる循環水(湯)と混合する。これにより、給湯配管L2、保温配管L5内の低温水も加熱・保温されることになる。
【0020】
さらに図7を参照して、発電運転と暖房運転が同時に行われるときの制御について説明する。この場合は、三方弁V4は配管L8と保温配管L5の流量バランスを考慮した開度に設定される。これにより、循環水(湯)は同図太線で示すように循環回路R2乃至R6全て循環状態となる。
なお、発電運転がなく暖房運転のみのときは、暖房回路R5及び暖房加熱回路R6のみ循環となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、熱源、排熱供給源を問わず、貯湯タンクを備えたシステムに広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第一の実施形態に係る貯湯式給湯システム1の構成を示す図である。
【図2】貯湯式給湯システム1の発電運転中における給湯配管保温制御を示す図である。
【図3】第二の実施形態に係る貯湯式給湯システム20の構成を示す図である。
【図4】貯湯式給湯システム20の発電運転中における給湯配管保温制御を示す図である。
【図5】第三の実施形態に係る貯湯式給湯システム30の構成を示す図である。
【図6】貯湯式給湯システム30の発電運転中における給湯配管保温制御を示す図である。
【図7】貯湯式給湯システム30の発電運転及び暖房運転中における給湯配管保温制御を示す図である。
【図8】従来の排熱回収型貯湯式給湯システム100の構成を示す図である。
【図9】従来の即湯タイプ貯湯式給湯システム200の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1、20、30・・・・貯湯式給湯システム
2・・・・貯湯タンク
3・・・・発電ユニット
5・・・・熱交換器
6、7、34・・・・循環ポンプ
8・・・・給湯栓
22・・・・補助熱源機
23・・・・混合比例弁
32、33・・・・暖房熱交換器
L1、L6・・・・給水配管
L2・・・・給湯配管
L5・・・・保温配管
L7・・・・暖房配管
R1・・・・給湯系統
R2・・・・排熱回収回路
R3・・・・貯湯回路
R4・・・・保温回路
R5・・・・暖房回路
R6・・・・暖房加熱回路
S1〜S5・・・・温度センサ
V1〜V3・・・・開閉弁
V4・・・・三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排熱源から排熱を回収する排熱回収回路と、
貯湯タンクと、循環ポンプと、を備え、排熱回収回路から受熱して、お湯として貯湯タンクに蓄える貯湯回路と、
貯湯タンク内のお湯を端末給湯栓に供給する給湯配管と、
を備えた貯湯式給湯システムであって、
端末給湯栓近傍で給湯配管から分岐して、循環ポンプ上流側で貯湯回路に接続する保温用配管を、さらに備え、
かつ、給湯配管と、保温用配管と、前記循環ポンプと、を含んで給湯保温回路を構成して成ることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項2】
前記排熱源が、ガスエンジンによる発電排熱であることを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項3】
前記給湯配管は、経路中に補助熱源機を、さらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記貯湯回路が前記排熱回収回路から受熱するときに、前記給湯保温回路内の滞留水を循環することを特徴とする貯湯式給湯システムにおける給湯配管保温運転方法。
【請求項5】
請求項3に記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記貯湯回路が前記排熱回収回路から受熱していないときに前記給湯保温回路内の滞留水の循環を行うときは、前記補助熱源機を稼動させることを特徴とする貯湯式給湯システムにおける給湯配管保温運転方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−267652(P2008−267652A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108950(P2007−108950)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】