説明

貯蔵タンクのアンカー

【課題】貯蔵タンクの外槽またはセカンダリーバリアに作用するせん断応力を、低コストに低減することができるアンカーを提供する。
【解決手段】アンカー本体11は、内槽2と外槽との周方向の相対的な変位を許容する搖動固定部12,14を介して内槽2及び外槽に固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯蔵タンクのアンカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、LNGタンク等の貯蔵タンクに用いられるアンカーが知られている。このアンカーは、貯蔵タンクの内槽の側板の下部に、内槽の周方向に所要の間隔で取り付けられ、内槽の内圧や地震時の応答により内槽の隅角部が浮き上がるのを防止するためのものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
貯蔵タンクのアンカーは、内槽を外槽に係留するために、例えば帯板状のストラッププレートを備えている。ストラッププレートの上部には、ストラッププレートを係止するためのストッパプレートが取り付けられている。内槽の側板には、ストラッププレートの上部が下方に抜けないようにするためのストッパーが溶接されている。ストッパーは、例えば内槽の側板に溶接された一対の底板と、底板に立設された一対のブラケットと、対峙する一対のブラケット間に横架されたカバープレートとからなる。
【0004】
また、内槽と外槽との間にセカンダリーバリアを設けた貯蔵タンクも知られている。セカンダリーバリアは、例えば内槽からLNG等の液体が漏洩した場合に、その液体が貯蔵タンクの外部に漏洩するのを防止して、貯蔵タンクの液密性を確保するために設けられる。
【特許文献1】特開2003−269698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のアンカーでは、セカンダリーバリアが設けられない場合には、ストラッププレートの長さを十分に確保することができる。そのため、地震時の応答等により内槽が周方向に変位して、ストラッププレートの上部に内槽の周方向の力が作用した場合であっても、ストラッププレートの下端では、概ねストラッププレートの長さ方向の軸力として作用する。したがって、ストラッププレートの下端ではストラッププレート幅方向(内槽の周方向)に発生するせん断力は軽微である。しかし、このような軽微なせん断力であってもアンカーや貯蔵タンクに悪影響を及ぼす場合がある。
【0006】
また、貯蔵タンクの内槽と外槽との間にセカンダリーバリアが設けられる場合には、ストラッププレートとセカンダリーバリアとの溶接部に大きなせん断応力が発生するという課題がある。セカンダリーバリアが設けられる場合には、セカンダリーバリアを貫通するようにストラッププレートが設けられる。セカンダリーバリアの液密性を確保するために、ストラッププレートはセカンダリーバリアに溶接される。このとき、ストッパプレートから溶接部までのストラッププレートの長さは、セカンダリーバリアが設けられない場合のストラッププレートの長さよりも大幅に短くなる。
【0007】
そのため、地震時の応答等により内槽が周方向に変位して、ストラッププレートの上部に内槽の周方向の力が作用すると、ストラッププレートとセカンダリーバリアとの溶接部に大きなせん断応力が内槽の周方向に発生する。このせん断応力が許容値を超えると、セカンダリーバリアが破損して液密性や健全性を確保できなくなる虞がある。
【0008】
このような問題を回避するために、内槽の側板からセカンダリーバリアまでのストラッププレートの長さを十分に長くすることが考えられる。しかし、ストラッププレートの長さを長くすると、側板のストッパーの取り付け位置が上方に移動する。すると、強度確保の観点から、底板からストッパーの取り付け位置までの側板の肉厚を厚くする必要があり、大幅なコスト増大に繋がってしまう。
【0009】
そこで、この発明は、貯蔵タンクの外槽またはセカンダリーバリアに作用する内槽の周方向のせん断応力を、低コストに低減することができるアンカーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の貯蔵タンクのアンカーは、内槽と外槽とを備えた貯蔵タンクの前記内槽を、アンカー本体により前記外槽に係留する貯蔵タンクのアンカーであって、
前記アンカー本体は、前記内槽と前記外槽との周方向の相対的な変位を許容する搖動固定部を介して前記内槽及び前記外槽に固定されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、内槽の内圧や地震時の応答により内槽の隅角部が浮き上がろうとすると、内槽は、搖動固定部を介してアンカー本体から隅角部が浮き上がろうとする力に抗する引張力を受ける。
この状態で、内槽と外槽とが周方向に相対的に変位すると、搖動固定部が内槽と外槽との相対的な変位に追従して搖動し、アンカー本体による引張力と反対方向の抗力を発生する。そのため、搖動固定部には、内槽の周方向のせん断力は作用せず、アンカー本体の引張方向の軸力のみが作用する。
したがって、アンカー本体に引張力が作用した状態で、外槽に対して内槽が周方向に相対的に変位した場合であっても、アンカー本体によって外槽に内槽の周方向のせん断力が作用することを防止できる。
【0012】
また、本発明の貯蔵タンクのアンカーは、前記アンカー本体は、ワイヤーであることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、アンカー本体から搖動固定部にアンカー本体の引張方向の軸力のみが伝達される。したがって、アンカー本体によって外槽に内槽の周方向のせん断力が作用することをより効果的に防止できる。
【0014】
また、本発明の貯蔵タンクのアンカーは、前記アンカー本体は、棒材であることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、帯板状のアンカー本体と比較して、アンカー本体が搖動固定部の搖動に追従しやすくなる。したがって、アンカー本体によって外槽に内槽の周方向のせん断力が作用することをより効果的に防止できる。
【0016】
また、本発明の貯蔵タンクのアンカーは、前記貯蔵タンクは前記内槽と前記外槽との間にセカンダリーバリアを備え、前記アンカー本体は前記搖動固定部を介して前記セカンダリーバリアに固定されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、内槽とセカンダリーバリアとが周方向に相対的に変位すると、搖動固定部が内槽とセカンダリーバリアとの相対的な変位に追従して搖動し、アンカー本体による引張力と反対方向の抗力を発生する。そのため、搖動固定部には、内槽の周方向のせん断力は作用せず、アンカー本体の引張方向の軸力のみが作用する。
したがって、アンカー本体に引張力が作用した状態で、セカンダリーバリアに対して内槽が周方向に相対的に変位した場合であっても、アンカー本体によってセカンダリーバリアに内槽の周方向のせん断力が作用することを防止できる。
【0018】
また、本発明の貯蔵タンクのアンカーは、前記アンカー本体は、前記内槽側の前記搖動固定部と、前記外槽側の前記搖動固定部との間に弾性部材が挿入されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、内槽と外槽とが相対的に変位したときに、その変位を弾性部材の伸縮によって許容することができる。したがって、アンカー本体によって他の部材に内槽の周方向のせん断力が作用することを防止できる。
【0020】
また、本発明の貯蔵タンクのアンカーは、前記搖動固定部は、ヒンジ構造であることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、搖動固定部は、ヒンジ構造の支点となる部分を中心として搖動する。したがって、ヒンジ構造の搖動固定部の支点には、アンカー本体の引張力のみが作用し、アンカー本体によるせん断応力は作用しない。したがって、アンカー本体によってセカンダリーバリアに内槽の周方向のせん断力が作用することを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、内槽と外槽またはセカンダリーバリアとが相対的に周方向に変位したときに、アンカー本体の上部に作用する力を低減し、外槽またはセカンダリーバリアに作用する内槽の周方向のせん断応力を低コストに低減することができる。したがって、外槽またはセカンダリーバリアの破損を防止して、液密性および健全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮尺を適宜変更している。
【0024】
図1は、本実施形態の貯蔵タンク1の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、貯蔵タンク1は、例えば液化天然ガス(LNG)等の低温の液体を貯蔵する内槽2と、内槽2を包囲して防液提として機能する外槽3とを備えている。また、内槽2と外槽3との間には、地震等の応答により内槽2が貯蔵する液体が漏洩した場合に、その液体を収容して外部に漏洩するのを防止するセカンダリーバリア4が設けられている。
【0025】
内槽2は、例えば9%ニッケル鋼、ステンレス鋼等の低温用鋼材により形成されている。内槽2の底板2bの下方には保冷ブロック5が設置され、内槽2の側板2sの外側には、例えばフォームグラス等の保冷材6が充填されている。内槽2の外側には、保冷ブロック5及び保冷材6を介して内槽2を包囲するセカンダリーバリア4が配置されている。
【0026】
セカンダリーバリア4は、例えば内槽2と同様の低温用鋼材により形成され、外部に液体が漏洩するのを防止するために液密に設けられている。セカンダリーバリア4の底板4bの下方には、保冷ブロック7が配置されて保冷底部が形成されている。セカンダリーバリア4の外側には、セカンダリーバリア4を包囲する外槽3が設けられている。
【0027】
外槽3は、例えばプレストレストコンクリート(PC)等により形成されている。外槽3の底板3bには、アンカーボックス8が埋設されている。アンカーボックス8には、内槽2を外槽3に係留するアンカー10のストラップワイヤー(アンカー本体)11の下端部11eが固定される。
【0028】
内槽2の側板2sの下方には、ストラップワイヤー11の上部11tを係止するためのストッパー20が設けられている。アンカー10及びストッパー20は内槽2の周方向に所定の間隔で複数設置されている。内槽2の直径が例えば約80m程度の場合には、内槽2の周囲に約120〜180組程度のアンカー10及びストッパー20が設置される。
【0029】
図2は、アンカー10及びストッパー20の拡大正面図である。図3は、図2のA−A線に沿う断面図である。
ストラップワイヤー11は、例えば内槽2と同様の低温用鋼材により形成され、図2及び図3に示すように、上部11tがヒンジ部(搖動固定部)12を介してストッパー20に固定されている。
【0030】
図2に示すように、ストッパー20は、内槽2の側板2sに固定された一対の座板21と、座板21に立設された一対のブラケット22と、一対のブラケット22間に掛け渡されたカバープレート23と、を備えている。座板21、ブラケット22及びカバープレート23はそれぞれ、例えば9%ニッケル鋼等の低温用鋼材により形成されている。座板21は内槽2の側壁2sに溶接され、ブラケット22は座板21に溶接され、カバープレート23はブラケット22に溶接されている。また、カバープレート23には、ヒンジ部12が設けられている。
【0031】
図2及び図3に示すように、ヒンジ部12は、カバープレート23に支持された軸12aと、軸12aによってカバープレート23に搖動可能に取り付けられた搖動部材12sと、によって構成されている。ヒンジ部12の搖動部材12sは、内槽2とセカンダリーバリア4との周方向の相対的な変位を許容するように、内槽2の周方向に沿って搖動可能に設けられている。搖動部材12sには、ストラップワイヤー11が例えば結束されて固定されている。すなわち、ストラップワイヤー11は、ヒンジ部12及びストッパー20を介して内槽2の側壁2sに固定されている。
【0032】
また、ストラップワイヤー11は、ヒンジ部(搖動固定部)14を介してセカンダリーバリア4を貫通するコネクター13に固定されている。
コネクター13は、例えばセカンダリーバリア4と同様の低温用鋼材により形成されている。そして、セカンダリーバリア4を貫通する部分において、セカンダリーバリア4の液密性を保持するために、セカンダリーバリア4に溶接されている。
【0033】
ヒンジ部14は、コネクター13に支持された軸14aと、軸14sによってコネクター13に搖動可能に取り付けられた搖動部材14sと、によって構成されている。ヒンジ部14は、内槽2とセカンダリーバリア4との周方向の相対的な変位を許容するように、内槽2の周方向に沿って搖動可能に設けられている。搖動部材14sには、ストラップワイヤー11が、例えば結束されて固定されている。すなわち、ストラップワイヤー11は、ヒンジ部14及びコネクター13を介してセカンダリーバリア4に固定されている。
【0034】
また、図示は省略するが、セカンダリーバリア4を貫通したコネクター13の下端部には、図1示すストラップワイヤー11の下端部11eを固定するための固定部が設けられている。
コネクター13の固定部に固定されたストラップワイヤー11の下端部11eは、図1に示すように、外槽3の底板3bに埋設されたアンカーボックス8に固定されている。
【0035】
ストラップワイヤー11は、図3に示すように、下方側ほど内槽2の径方向外側方向に広がるように設置され、下方側ほど内槽2から離間するような傾斜角度θ1で配置されている。傾斜角度θ1は、内槽2の側壁2sに対して例えば約10°程度となっている。
また、一対のブラケット22間に横架されたカバープレート23は側板2sに対して傾斜させて設けられている。カバープレート23の傾斜角度θ2はストラップワイヤー11の傾斜角度θ1と略等しく、ストラップワイヤー11の引張方向と略平行になっている。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えば内槽2の内圧や地震時の応答により、図1に示す内槽2の隅角部2cが上方に浮き上がろうとすると、ストラップワイヤー11は、内槽2の側板2sに設けられたストッパー20及びストッパー20に設けられたヒンジ部12を介して引張力Fを受ける。これにより、内槽2は、ストラップワイヤー11からヒンジ部12及びストッパー20を介して、内槽2の隅角部2cが浮き上がろうとする力に抗する引張力Fを受ける。したがって、内槽2の隅角部2cの浮き上がりをストラップワイヤー11の引張力Fによって防止することができる。
【0037】
また、例えば地震時の応答では、内槽2の隅角部2cが浮き上がろうとすると共に、内槽2がセカンダリーバリア4に対して周方向に相対的に変位する場合がある。
このとき、本実施形態では、図2、図3に示すように、内槽2にストッパー20を介して固定されたヒンジ部12と、セカンダリーバリア4にコネクター13を介して固定されたヒンジ部14とが設けられている。また、ヒンジ部12及びヒンジ部14は、内槽2とセカンダリーバリア4との周方向の相対的な変位を許容するように、内槽2の周方向に沿って搖動可能に設けられている。そして、ストラップワイヤー11がヒンジ部12及びヒンジ部14に結束されて固定されている。
【0038】
そのため、ヒンジ部12及びヒンジ部14が内槽2とセカンダリーバリア4との相対的な変位に追従して搖動し、ストラップワイヤー11による引張力Fと反対方向の抗力を発生する。そのため、ヒンジ部12及びヒンジ部14には、内槽2の周方向のせん断力は作用せず、ストラップワイヤー11の引張方向の軸力のみが作用する。
したがって、ストラップワイヤー11に引張力Fが作用した状態で、セカンダリーバリア4に対して内槽2が周方向に相対的に変位した場合であっても、ヒンジ部12及びヒンジ部14によってこの変位を許容することができる。よって、ストラップワイヤー11によりセカンダリーバリア4にせん断力が作用することを防止できる。
【0039】
加えて、内槽2と外槽3とを繋ぐアンカー10のアンカー本体としてストラップワイヤー11を用いているので、ヒンジ部12及びヒンジ部14には、ストラップワイヤー11の引張方向の軸力のみが伝達される。したがって、アンカー本体として棒材や板材を用いる場合と比較してセカンダリーバリア4にせん断力が作用することをより効果的に防止できる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のアンカー10によれば、内槽2とセカンダリーバリア4とが周方向に相対的に変位したときに、ヒンジ部12及びヒンジ部14に周方向のせん断力が作用することを防止できる。これにより、セカンダリーバリア4に作用するせん断応力を低減することができる。
したがって、内槽2の内圧や地震時の応答等によるセカンダリーバリア4の破損を防止して、セカンダリーバリア4の液密性及び健全性を確保することができる。
【0041】
また、セカンダリーバリア4に作用するせん断応力を低減するためにストラップワイヤー11の長さを必要以上に長くする必要が無い。
したがって、内槽2の側板2sの肉厚増加によるコストの増大を防止して、低コストにせん断応力の低減を実現することができる。
【0042】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図1〜図3を援用し、図4を用いて説明する。本実施形態では、ヒンジ部12とヒンジ部14との間のストラップワイヤー11の途中に弾性部材が挿入されている点で上述の第一実施形態で説明したアンカー10と異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0043】
図4は、第一実施形態の図3に相当する本実施形態のアンカー10B及びストッパー20の拡大断面図である。
図4に示すように、本実施形態のアンカー10Bは、ストラップワイヤー11の内槽2側のヒンジ部12とセカンダリーバリア4側のヒンジ部14との間に、弾性部材としてスプリング15が挿入されている。
【0044】
このように構成することで、内槽2の隅角部2cが浮き上がろうとすると共に、内槽2がセカンダリーバリア4に対して周方向に相対的に変位したときに、その変位をスプリング15の伸縮によって許容することができる。したがって、セカンダリーバリア4に内槽2の周方向のせん断力が作用することを防止できる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果を得られる。加えて、スプリング15によってストラップワイヤー11からセカンダリーバリア4に作用するせん断応力をより効果的に低減することができる。
【0046】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図1〜図3を援用し、図5及び図6を用いて説明する。本実施形態では、アンカー本体として棒材を用い、内槽2側の搖動固定部としてカバープレートとストッパプレートを用いる点で上述の第一実施形態で説明したアンカー10と異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0047】
図5は、本実施形態のアンカー及びストッパーの拡大正面図である。図6は、図5のB−B線に沿う断面図である。
図5に示すように、本実施形態では、アンカー10Cのアンカー本体として、棒状のストラップバー16を用いている。ストラップバー16は、例えばストッパー20と同様の低温用鋼材により形成されている。
【0048】
ストラップバー16は、図5及び図6に示すように、上部16tが内槽2の側板2sとカバープレート23との間に差し込まれるようにして配置されている。ストラップバー16の上部16tには、ストッパプレート17が固定されている。ストッパプレート17は、例えばストラップバー16と同様の低温用鋼材により形成され、ストラップバー16に溶接されて固定されている。
【0049】
また、本実施形態では図示を省略するが、ストラップバー16のセカンダリーバリア4側には、例えば図2及び図3に示すヒンジ部14と同様のヒンジ部(搖動固定部)が設けられている。そして、例えば第一実施形態と同様のコネクター13を介して、ストラップバー16の下端部が、図1に示すように、アンカーボックス8に固定されている。
【0050】
図5に示すように、ストッパプレート17の下端面17bは、略半円筒状に形成されている。そして、ストッパプレート17は、ストッパー20のカバープレート23の上端面23tに形成された略半円状の凹部23cに嵌合している。このストッパプレート17とカバープレート23とによりヒンジ構造(搖動固定部)が構成され、ストラップバー16がストッパプレート17を中心として搖動可能に設けられている。
【0051】
本実施形態では、棒状のストラップバー16を用いている。そのため、内槽2の隅角部2cが浮き上がろうとすると共に、内槽2がセカンダリーバリア4に対して周方向に相対的に変位したときに、帯板状のストラッププレートと比較して、ストラップバー16が搖動固定部の搖動に追従しやすくなる。
また、本実施形態では、搖動固定部がストッパプレート17とカバープレート23のヒンジ構造により構成されている。そのため、搖動固定部は、ヒンジ構造の支点となるカバープレート23を中心として搖動する。したがって、搖動固定部の支点であるストッパプレート17とカバープレート23との接触点(接触面)には、ストラップバー16の引張力Fのみが作用する。
また、セカンダリーバリア4側のヒンジ部(図示省略)には、第1実施形態と同様にストラップバー16の引張力のみが作用し、せん断応力は作用しない。したがって、ストラップバー16によってセカンダリーバリア4にせん断力が作用することを防止できる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果が得られる。加えて、第一実施形態と比較して単純な構造の搖動固定部を用いることで、搖動固定部の信頼性、生産性を向上させ、製造コストやメンテナンスコストを低減することができる。
【0053】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の実施形態ではセカンダリーバリアが設けられている貯蔵タンクについて説明したが、セカンダリーバリアが設けられていない貯蔵タンクに本発明のアンカーを適用できることは言うまでもない。セカンダリーバリアが設けられていない貯蔵タンクに本発明のアンカーを適用することで、例えば外槽のアンカーボックスに作用する内槽の周方向のせん断力を低減することができる。これにより、地震時の応答等により内槽が周方向に変位した場合であっても、アンカーや外槽に破損や変形等の悪影響が及ぶことを防止できる。
また、上述の実施形態では、ヒンジ部を介してワイヤーを内槽及びセカンダリーバリアに固定したが、搖動固定部はヒンジ構造に限られない。例えば、内槽の側壁及びセカンダリーバリアに設けたブラケット及びコネクター等にそれぞれワイヤーを直接結束することで搖動固定部を構成してもよい。このように構成することで、ワイヤーがブラケット及びコネクターの結束箇所を中心として搖動し、内槽とセカンダリーバリアとの周方向の相対的な変位を許容することができる。
また、弾性部材はスプリングでなくてもよい。例えばゴム材等、弾力性、伸縮性、引張強度を有し、弾性変形可能なものを弾性部材として用いることができる。
また、弾性部材は棒状のアンカー本体の途中に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第一実施形態に係る貯蔵タンクの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るアンカー及びストッパーの拡大正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿うアンカー及びストッパーの断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るアンカー及びストッパーの断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係るアンカー及びストッパーの拡大正面図である。
【図6】図5のB−B線に沿うアンカー及びストッパーの断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 貯蔵タンク、2 内槽、2s 側板、3 外槽、4 セカンダリーバリア、10,10B,10C アンカー、11 ストラップワイヤー(アンカー本体)、11t 上部、12,14 ヒンジ部(搖動固定部)、15 スプリング(弾性部材)、16 ストラップバー(アンカー本体)、17 ストッパプレート(搖動固定部)、23 カバープレート(搖動固定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内槽と外槽とを備えた貯蔵タンクの前記内槽を、アンカー本体により前記外槽に係留する貯蔵タンクのアンカーであって、
前記アンカー本体は、前記内槽と外槽との周方向の相対的な変位を許容する搖動固定部を介して前記内槽及び前記外槽に固定されていることを特徴とする貯蔵タンクのアンカー。
【請求項2】
前記アンカー本体は、ワイヤーであることを特徴とする請求項1記載の貯蔵タンクのアンカー。
【請求項3】
前記アンカー本体は、棒材であることを特徴とする請求項1記載の貯蔵タンクのアンカー。
【請求項4】
前記貯蔵タンクは前記内槽と前記外槽との間にセカンダリーバリアを備え、
前記アンカー本体は前記搖動固定部を介して前記セカンダリーバリアに固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の貯蔵タンクのアンカー。
【請求項5】
前記アンカー本体は、前記内槽側の前記搖動固定部と、前記外槽側の前記搖動固定部との間に弾性部材が挿入されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の貯蔵タンクのアンカー。
【請求項6】
前記搖動固定部は、ヒンジ構造であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の貯蔵タンクのアンカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−144864(P2010−144864A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323897(P2008−323897)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】