説明

貯蔵・輸送用水素の製造方法

【解決課題】有機ケミカルハイドライド法を円滑に推進する上で必要な貯蔵・輸送用水素を工業的に効率良く、かつ、安価に製造することができる貯蔵・輸送用水素の製造方法を提供する。
【解決手段】有機ケミカルハイドライド法において、貯蔵・輸送用水素を製造するための方法であり、芳香族化合物の水素化工程において、その反応用水素源として、改質反応で合成された合成ガスをシフト反応によって水素濃度30〜70vol%に調整された反応用ガスを用い、また、この水素化工程で得られた反応混合物から水素化芳香族化合物を分離精製することを特徴とする貯蔵・輸送用水素の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水素を貯蔵・輸送用に適した形で製造するための貯蔵・輸送用水素の製造方法に係り、特に有機ケミカルハイドライド法により水素の大量貯蔵及び/又は長距離輸送に適した水素キャリアとなる水素化芳香族化合物(有機ケミカルハイドライド)を工業的に安価にかつ効率良く製造するための貯蔵・輸送用水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化ガスである炭酸ガスの排出抑制に関する気運が高まり、定置型燃料電池、水素自動車、燃料電池自動車等の水素エネルギー利用技術の開発や実用化が進み、これらの定置型燃料電池、水素自動車、燃料電池自動車等にその燃料としての水素を供給するための水素貯蔵・輸送技術の開発が精力的に進められており、また、水素自動車や燃料電池自動車に水素を供給するインフラとしては水素ステーションの開発が実証段階にまできている。
【0003】
そして、この水素ステーションについては、ステーション内で水素を製造するオンサイト型水素ステーションと、外部で製造された水素をステーションに輸送するオフサイト型水素ステーションとがあるが、前者のオンサイト型水素ステーションでは、製造時に一酸化炭素(CO)が多量に副生し、最終的には相当量の二酸化炭素(CO2)が不可避的に排出されるという問題点があり、現在ではオフサイト型水素ステーションが主流になりつつある。
【0004】
このオフサイト型水素ステーションにおいては、外部で製造された水素を水素ステーションまで輸送する必要があるが、この方法としては、水素を圧縮水素又は液体水素として貯蔵及び/又は輸送する方法(例えば、特許文献1参照)や、トルエン等の芳香族化合物を貯蔵すべき水素によって水素化し、メチルシクロヘキサン(MCH)等の水素化芳香族化合物に転換し、常温・常圧で液体状態の化学品として貯蔵及び/又は輸送する、いわゆる有機ケミカルハイドライド法が知られており、特に後者の有機ケミカルハイドライド法は、前者の如き超高圧や極低温に起因する潜在的危険性がないことから、着目されている。
【0005】
例えば、「水素エネルギー最先端技術」(太田時男監修)NTS出版社(1995)には、この有機ケミカルハイドライド法が、カナダの豊富な水力による電力を利用して水素を製造し、大西洋を横断してヨーロッパに輸送するユーロ・ケベック計画のなかで、トルエンを水添してメチルシクロヘキサンとして輸送することができる、MCH法として検討されたことが紹介されている。
【0006】
また、特許文献2(特開2002-134,141号公報)には、トルエン等の液状有機水素貯蔵体を収容する水素貯蔵体収容部と、メチルシクロヘキサン等の液状有機水素供給体(水素化芳香族類)を収容する水素供給体収容部と、金属担持触媒を有して液状有機水素貯蔵体の水素化反応及び液状有機水素供給体の脱水素反応を行う反応容器と、上記の水素貯蔵体収容部又は水素供給体収容部から上記反応容器に液状有機水素貯蔵体又は液状有機水素供給体を必要時に供給する供給手段と、上記反応容器で生成した水素を分離する水素分離器とを備え、金属担持触媒による液状有機水素貯蔵体の水素化反応及び液状有機水素供給体の脱水素反応を利用して水素の貯蔵又は供給を行う水素の貯蔵・供給システムが提案されている。
【0007】
更に、特許文献3(特開2007-269,522号公報)には、水素を水素化芳香族として貯蔵する水素貯蔵システムと、脱水素反応によって水素と芳香族を製造する水素供給システムと、水素貯蔵システムから水素供給システムまで水素化芳香族を輸送する手段と、水素供給システムから水素貯蔵システムまで芳香族を輸送する回収芳香族輸送手段を備えた有機ケミカルハイドライド法による水素の貯蔵輸送システムであり、このシステム系内に、脱水素触媒及び/又は水添触媒の被毒物質である反応阻害物質を除去する反応阻害物質除去装置を備え、水素の貯蔵効率が高く、また、反応装置の構造や制御を複雑化させることなく、有機ケミカルハイドライド法(OCH法)により容易に水素エネルギーの貯蔵輸送を図ることができる水素の貯蔵輸送システムが提案されている。
【0008】
ところで、水素エネルギーとして消費される水素の供給源としては、水の電解プロセス、石炭やコークスのガス化プロセス、製油所の副生水素等があるが、今日では、石油精製のための水素化分解や重質油の水素化脱硫に必要な大量の水素を賄うために、石油精製工場に併設されている水素製造装置による製造が主流になっており、この水素製造装置においては、主として天然ガスを原料としてスチームリホーミング反応、自動酸化改質反応、及び部分酸化改質反応等の改質反応が行われている。
【0009】
そして、これら改質反応による水素の製造においては、この改質反応で製造された合成ガス中に大量の一酸化炭素が含まれているので、この一酸化炭素(CO)を水蒸気(H2O)と反応させて二酸化炭素と(CO2)と水素(H2)とに変換し(シフト反応)、次にこのシフト反応後に得られた水素リッチの合成ガスを酸性ガス除去処理して二酸化炭素の含有量を0.1〜0.5vol%程度にまで低減し、更に残留する少量の一酸化炭素を水素化触媒の存在下にメタン(CH4)に変換した後に、必要な場合は冷却して副生メタンの除去を行い精製するか、近年では、シフト反応後のガスをPSA(Pressure Swing Adsorption)装置によって、酸性ガス、一酸化炭素およびメタンの除去を行う水素精製を行い、高純度水素(99vol%以上)として製品化することが多く行われている。
【0010】
また、非特許文献1(石油化学プロセス)においては、改質反応プロセスには、スチームリフォーミングプロセスのほかに、原料の炭化水素の一部を酸素燃焼させて反応熱を供給する部分酸化プロセスと、部分酸化とスチームリフォーミングを組み合わせて1つの反応器で行うオートサーマルリフォーミングとがあり、従来のスチームリフォーミングに比べて大型化に対応できること、及び環境保全に対応できることが挙げられている。更に、高価な空気分離装置を使わず、純酸素の変わりに空気を用いるプロセスの開発も進んでいるが、反応後のガスから窒素を分離する際に同伴した合成ガスの処理が必要である旨が記載されている。
【0011】
これに対して、非特許文献2のプロセスハンドブックでは、有機ケミカルハイドライド法において利用することができる芳香族の水素化プロセスの1つが紹介されている。水添触媒の存在下に水素化反応を行ってトルエン等の芳香族化合物をメチルシクロヘキサン等の水素化芳香族化合物に変換する水素化工程では、水素化反応の発熱量が大きいために各種の除熱方法が工夫されている。これらの1つの方法に水素を予め窒素ガス等の不活性ガスで水素濃度約70vol%以下に希釈してから反応に供することが行われており、効率的な除熱によって副生物が少ない比較的に低温で反応を行うことができると考えられるが、この水素化工程を大規模で実施するためには大量の窒素ガスが必要であり、余剰の窒素が得られない場合は、水素化反応装置に隣接して窒素製造装置を併設することが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4,279,546号公報
【特許文献2】特開2002-134,141号公報
【特許文献3】特開2007-269,522号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】石油化学プロセス、石油学会編、pp57〜67(1998)
【非特許文献2】プロセスハンドブック、石油学会編、p.141(1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明者らは、世界的な問題として課せられた二酸化炭素の排出削減の上で必要な水素エネルギーの有効活用のために、有機ケミカルハイドライド法を円滑に推進する上で必要な貯蔵・輸送用水素を如何に工業的に効率良く、かつ、安価に製造するかを課題に、改質反応により水素を製造する水素製造工程から芳香族化合物の水素化反応を行って水素化芳香族化合物からなる貯蔵・輸送用水素を製造する水素化工程までの反応工程をトータル的に検証し、また、鋭意検討した結果、意外なことには、改質反応で製造される水素を完全には精製することなく芳香族化合物の水素化工程に導入することにより、水素の製造に必要とされてきた酸性ガス除去工程やPSA装置による水素精製工程を省くことができるほか、自動酸化改質反応や部分酸化改質反応の場合には酸素製造装置による酸素製造工程を省くことができ、しかも、有機ケミカルハイドライド法における芳香族化合物の水素化工程では窒素製造装置による窒素製造工程を省くことができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
従って、本発明の目的は、有機ケミカルハイドライド法を円滑に推進する上で必要な貯蔵・輸送用水素を工業的に効率良く、かつ、安価に製造することができる貯蔵・輸送用水素の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明は、水添触媒の存在下に芳香族化合物の水素化反応を行う水素化工程で水素化芳香族化合物を製造し、得られた水素化芳香族化合物を貯蔵・輸送用水素として貯蔵及び/又は輸送した後、脱水素触媒の存在下に水素化芳香族化合物の脱水素反応を行って水素を製造し、得られた水素を利用に供する有機ケミカルハイドライド法において、前記貯蔵・輸送用水素を製造するための方法であり、前記芳香族化合物の水素化工程において、その反応用水素源として、改質反応で合成された合成ガスをシフト反応によって水素濃度30〜70vol%に調整された反応用ガスを用い、また、この水素化工程で得られた反応混合物から水素化芳香族化合物を分離精製することを特徴とする貯蔵・輸送用水素の製造方法である。
【0017】
本発明において、水素化工程での反応ガスを製造する改質反応については、特に制限されるものではなく、好適には、製油所等で合成ガスの製造方法として知られているスチームリホーミング反応や、自動酸化改質反応又は部分酸化改質反応を挙げることができる。
【0018】
ここで、前記スチームリホーミング反応は、天然ガス及び/又は天然ガス製造時に副生する随伴ガス等の炭化水素類と水蒸気とを反応させて40〜70vol%の水素、40〜70vol%の一酸化炭素、1〜20vol%の二酸化炭素、及び1〜30vol%の水を含む合成ガスを製造する反応である。
【0019】
また、前記部分酸化改質反応及び自動酸化改質反応は、天然ガス及び/又は天然ガス製造時に副生する随伴ガスと酸素とを反応させて40〜70vol%の水素、40〜70vol%の一酸化炭素、1〜20vol%の二酸化炭素、1〜30vol%の水を含む合成ガスを製造する反応であり、好ましくは、反応用酸素源として空気を用い、これによって40〜70vol%の水素、40〜70vol%の一酸化炭素、1〜20vol%の二酸化炭素、1〜30vol%の水、及び1〜40vol%の窒素を含む合成ガスを製造する反応である。
【0020】
前記の改質反応における反応条件については、従来の改質反応での反応条件と同様の条件でよく、これまで製油所等に設けられている設備をそのまま用いることができる。
【0021】
次に、前記の改質反応で得られた合成ガスは、COコンバーターに導入され、この合成ガス中の一酸化炭素(CO)を水蒸気(H2O)と反応させて水素(H2)と二酸化炭素(CO2)に変換するシフト反応に付される。ここで、各種の改質反応由来の合成ガスからは、通常、高温(Fe2O3-Cr2O3系触媒の存在下に350〜450℃)及び低温(CuO-Cr2O3-ZnO系触媒の存在下に200〜300℃)の2段階の反応条件で反応させて、50〜70vol%の水素、30〜50vol%の二酸化炭素、1〜20vol%の水、及び1〜10vol%の残留一酸化炭素を含む水素リッチの合成ガスが製造される。
【0022】
このシフト反応後に水素リッチとなったガスについては、少なくともその水素濃度が30vol%以上70vol%以下、好ましくは50vol%以上70vol%以下である必要があり、これによって、有機ケミカルハイドライド法における芳香族化合物の水素化工程において、この水素リッチなガスを水素源の反応用ガスとしてそのまま用いることができる。この反応用ガスの水素濃度が30vol%より低いと、
希釈ガスの割合が大きくなり反応器が必要以上に大きくなるという問題があり、反対に、70vol%より高くなると、希釈ガスの割合が少なくなり希釈効果が得難くなるという問題が生じる。
【0023】
次に、本発明においては、シフト反応により製造された水素濃度30〜70vol%の合成ガスからなる反応用ガスは、次に有機ケミカルハイドライド法における芳香族化合物の水素化工程に導入され、この水素化工程では、水添触媒の存在下に芳香族化合物の水素化反応を行ってこの芳香族化合物を貯蔵・輸送用水素としての水素化芳香族化合物に変換すると共に、同時に反応ガス中に残存する残留一酸化炭素のメタネーション反応が行われる。
【0024】
この芳香族化合物の水素化工程における水素化反応では、前記の反応用ガスを水素源として、水添触媒の存在下に芳香族化合物を反応温度150℃以上250℃以下、好ましくは160℃以上220℃以下及び反応圧力0.1MP以上5MP以下、好ましくは0.5MP以上3MP以下の条件で水素化して水素化芳香族化合物に変換し、また、同時に起こるメタネーション反応では、反応ガス中の一酸化炭素をメタンに変換する。
【0025】
本発明において、この水素化工程で用いる芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン等を用いることができるが、地球環境において溶媒を使用せずに液相を維持できる沸点と融点を有する観点から、好ましくはトルエンであり、また、水添触媒としては、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム等の活性金属をアルミナ、シリカ、シリカアルミナ等の担体に担持させた触媒を用いることができるが、反応の選択性の観点から、好ましくはニッケルを活性金属とするニッケル又はニッケル酸化物である。
【0026】
この芳香族化合物の水素化工程で得られた反応生成ガスは、次に70℃以下、好ましくは40℃以下に冷却された後に気液分離されて二酸化炭素が除去され、また、水が分離除去されて水素化芳香族化合物が製品の貯蔵・輸送用水素として回収される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の貯蔵・輸送用水素の製造方法によれば、有機ケミカルハイドライド法を円滑に推進する上で必要な貯蔵・輸送用水素を工業的に効率良く、かつ、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、改質反応としてスチームリホーミング反応を採用した場合における本発明の第一実施形態に係る貯蔵・輸送用水素の製造方法のプロセスフローを示す説明図である。
【0029】
【図2】図2は、改質反応として部分酸化反応を採用した場合における本発明の第二実施形態に係る貯蔵・輸送用水素の製造方法のプロセスフローを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に示すプロセスフローに従って、本発明の実施の形態をより具体的に説明する。
【0031】
[第一実施形態]
図1に、本発明の第一実施形態に係る改質反応としてスチームリホーミング反応を採用した場合のプロセスフローが示されている。
この図1のプロセスフローにおいて、改質工程での改質反応の反応条件を900℃、2.15MPaGと設定し、また、シフト工程でのシフト反応の反応条件を250℃、2.0MPaGと設定し、更に、水素化工程での水素化反応の反応条件を250℃、1.9MPaGと設定し、プロセスフローの各ポイントにおける物質収支のシミュレーションを行った。結果を下記の表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
[第二実施形態]
図2に、本発明の第二実施形態に係る改質反応として部分酸化反応を採用した場合のプロセスフローが示されている。
この図1のプロセスフローにおいて、改質工程での改質反応の反応条件を1050℃、2.15MPaGと設定し、また、シフト工程でのシフト反応の反応条件を250℃、2.0MPaGと設定し、更に、水素化工程での水素化反応の反応条件を250℃、1.9MPaGと設定して、プロセスフローの各ポイントにおける物質収支のシミュレーションを行った。結果を下記の表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
上記の表1及び表2に示す第一実施形態及び第二実施例体に係る物質収支のシミュレーション結果から、シフト反応によって製造された水素リッチの合成ガスが、水素化工程で芳香族化合物の水素化反応に用いる水素源の反応用ガスとして使用できることが示唆された。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
第一実施形態のシミュレーションの結果を検証するために、図1及び表1のプロセスフローの第5ポイント(図1及び表1中の丸囲い数字5)に示された組成の模擬原料を用いて水素化反応試験を行った。触媒として水添反応用に市販されているNi担持シリカアルミナ触媒を用い、触媒10ccを流通式反応試験装置の反応管に充填した。水素流通下に反応管の圧力を2.0MPaまで昇圧し、さらに触媒層の温度を400℃に昇温して3時間保持して触媒の予備還元を行い、窒素流通下で触媒層の温度を220℃まで下げた後に窒素を止めて模擬原料ガスに切り替えた。このとき、模擬原料ガスの組成は、水素67%、一酸化炭素1.0%、二酸化炭素17.0%、水15%として反応器に供給した。更に模擬原料ガス中の水素量の1/3に相当するトルエンを供給して水素化反応を行った。
【0037】
反応開始5時間後の反応管出口留分を気液分離後に気相サンプルと液相サンプルのガスクロ分析を行いと共に液相サンプル中の水分測定を行った。反応管出口留分の組成を求めたところ、水素5.5%、一酸化炭素0.1%以下、二酸化炭素31.1%、メタン2.7%、水14.8%、トルエン0.7%、MCH32.2%の組成を得た。この結果より、トルエンの水添反応条件下にニッケル触媒の存在下では二酸化炭素、水は不活性であると共に、一酸化炭素はメタネーション反応によってメタンに転化されることがわかった。また、水素の転化率は約96%であり第一実施形態に係るシミュレーションの結果にほぼ一致する良好な反応を実施できることがわかった。
【0038】
[実施例2]
次に、第二実施形態のシミュレーションの結果を検証するために、図2及び表2のプロセスフローの第6ポイント(図2及び表2中の丸囲い数字6)に示された組成の模擬原料を用いた以外は、実施例1と同様に水素化反応試験を行った。模擬ガスの組成は、水素38.0%、一酸化炭素1.0%、二酸化炭素14.0%、窒素30.0%、水17.0%として反応器に供給した。反応開始5時間後の反応管出口留分組成を実施例1と同様に求めたところ、水素2.6%、一酸化炭素0.1%以下、二酸化炭素18.4%、メタン2.6%、窒素39.4%、水22.3%、トルエン0.7%、MCH14.0%の組成を得た。これより水素の転化率は約95%であり第1実施形態にかかるシミュレーションの結果にほぼ一致する良好な反応を実施できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添触媒の存在下に芳香族化合物の水素化反応を行う水素化工程で水素化芳香族化合物を製造し、得られた水素化芳香族化合物を貯蔵・輸送用水素として貯蔵及び/又は輸送した後、脱水素触媒の存在下に水素化芳香族化合物の脱水素反応を行って水素を製造し、得られた水素を利用に供する有機ケミカルハイドライド法において、前記貯蔵・輸送用水素を製造するための方法であり、
前記芳香族化合物の水素化工程において、その反応用水素源として、改質反応で合成された合成ガスをシフト反応によって水素濃度30〜70vol%に調整された反応用ガスを用い、また、この水素化工程で得られた反応混合物から水素化芳香族化合物を分離精製することを特徴とする貯蔵・輸送用水素の製造方法。
【請求項2】
改質反応がスチームリホーミング反応、自動酸化改質反応、又は部分酸化改質反応である請求項1に記載の貯蔵・輸送用水素の製造方法。
【請求項3】
自動酸化改質反応又は部分酸化改質反応で用いる反応用酸素源が空気である請求項1又は2に記載の貯蔵・輸送用水素の製造方法。
【請求項4】
水素化工程では、反応用ガス中の残留一酸化炭素のメタネーション反応を芳香族化合物の水素化反応と同時に行う請求項1〜3のいずれかに記載の貯蔵・輸送用水素の製造方法。
【請求項5】
芳香族化合物がトルエンであって貯蔵・輸送用水素の水素化芳香族化合物がメチルシクロヘキサンである請求項1〜4のいずれかに記載の貯蔵・輸送用水素の製造方法。
【請求項6】
芳香族化合物の水素化工程で用いる水添触媒がニッケル又はニッケル酸化物である請求項1〜5のいずれかに記載の貯蔵・輸送用水素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−207641(P2011−207641A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74818(P2010−74818)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【Fターム(参考)】