説明

貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法

【課題】 高温雰囲気下での耐久性に優れた貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法を提供すること。
【解決手段】 配位元素を含む配位元素原料を配合して、得られた1次前駆体組成物を1次熱処理することにより、ペロブスカイト型複合酸化物やホタル石型複合酸化物などの1次熱処理組成物(結晶格子)を形成する。次いで、この1次熱処理組成物に、Pt、Rh、Pdなどの貴金属元素を含む貴金属元素原料を配合し、さらに、こうして得られた2次前駆体組成物を、1次熱処理温度よりも高温で、かつ、600℃以上で、2次熱処理(焼成)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒などの触媒として好適に用いられる貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)および窒素酸化物(NOx)を同時に浄化することができる三元触媒の触媒活性成分としては、Pt(白金)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)などの貴金属元素が広く知られている。
従来、上記貴金属元素は、ペロブスカイト型構造、ホタル石型構造などの耐熱性酸化物の表面に担持して使用している。例えば、特許文献1には、ペロブスカイト型構造の耐熱性酸化物を形成する2以上の元素の硝酸塩を共沈させて、800℃で焼成した後、得られた耐熱性酸化物を含む担体粉末に、貴金属元素の硝酸塩水溶液を含浸させて、600℃で焼成することにより、上記耐熱性酸化物の表面に貴金属元素を担持させる方法が記載されている。
【特許文献1】特開平1−168343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記耐熱性酸化物の表面に、単に貴金属元素を担持させるのみでは、例えば、自動車用エンジンから排出される高温の排ガスに長時間曝されることによって、貴金属元素がシンタリング(粒成長)することから、貴金属元素の分散度が小さくなって、触媒活性が低下するという不具合が生じる。
そこで、本発明の目的は、高温雰囲気下での耐久性に優れた貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法は、配位元素および貴金属元素を含み、熱処理により耐熱性酸化物となる貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法であって、前記配位元素を含む配位元素原料を配合して、1次前駆体組成物を調製する工程、前記1次前駆体組成物を、1次熱処理する工程、前記1次熱処理により得られた1次熱処理組成物に、貴金属元素を含む貴金属元素原料を配合して、2次前駆体組成物を調製する工程、および、前記2次前駆体組成物を、前記1次熱処理温度よりも高温で、かつ、600℃以上で2次熱処理する工程を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法によれば、高温雰囲気下で長時間にわたって使用した後においても、比較的低温で優れた触媒活性を発揮することができる、高温雰囲気下での耐久性に優れた貴金属含有耐熱性酸化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法は、配位元素を含む配位元素原料を配合して、1次前駆体組成物を調製する工程、上記1次前駆体組成物を、1次熱処理(焼成)することにより、上記配位元素を含む1次熱処理組成物(結晶格子)を調製する工程、上記1次熱処理により得られた1次熱処理組成物(結晶格子)に、貴金属を含む貴金属元素原料を配合して、2次前駆体組成物を調製する工程、および、上記2次前駆体組成物を、上記1次熱処理温度よりも高く、かつ、600℃以上で2次熱処理(焼成)する工程を備えている。
【0007】
本発明において、上記2次前駆体組成物に2次熱処理(焼成)を施して得られる貴金属含有耐熱性酸化物としては、下記一般式(1):
ABM13 (1)
(一般式(1)中、Aは、希土類元素およびアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、Bは、貴金属元素および希土類元素を除く遷移金属元素、および、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、M1は、貴金属元素を示す。)
で示されるペロブスカイト型複合酸化物、および、下記一般式(2):
CDM22 (2)
(一般式(2)中、Cは、希土類元素、アルカリ土類金属元素、アルミニウムおよびケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、Dは、貴金属元素および希土類元素を除く遷移金属元素を示し、M2は、貴金属元素を示す。)
で示されるホタル石型複合酸化物が挙げられる。
【0008】
上記ペロブスカイト型複合酸化物のうち、上記一般式(1)中のAに相当する、希土類元素およびアルカリ土類金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、上記Bに相当する、貴金属元素および希土類元素を除く遷移金属元素、および、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とが、上記1次前駆体組成物を形成する配位元素に相当する。
【0009】
また、上記ホタル石型複合酸化物のうち、上記一般式(2)中のCに相当する、希土類元素、アルカリ土類金属元素、アルミニウムおよびケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、上記Dに相当する、貴金属元素および希土類元素を除く遷移金属元素が、上記1次前駆体組成物を形成する配位元素に相当する。
上記希土類元素としては、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Gd(ガドリニウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Lu(ルテチウム)などの3価以外に価数変動しない希土類元素、例えば、Ce(セリウム)、Tb(テルビウム)、Pr(プラセオジム)などの3価または4価に価数変動する希土類元素、例えば、Eu(ユーロピウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Sm(サマリウム)などの2価または3価に価数変動する希土類元素などが挙げられる。これらの希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、La、Nd、Y、Ce、Prが挙げられる。
【0010】
上記アルカリ土類金属元素としては、例えば、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)などが挙げられる。これらのアルカリ土類金属は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。
上記貴金属元素および希土類元素を除く遷移金属元素としては、周期律表(IUPAC、1990年)において、原子番号22(Ti)〜原子番号30(Zn)、原子番号40(Zr)〜原子番号48(Cd)、および、原子番号72(Hf)〜原子番号80(Hg)の各元素(ただし、貴金属(原子番号44〜47および76〜78)を除く)が挙げられる。これらの貴金属および希土類元素を除く遷移金属は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Zr(ジルコニウム)が挙げられる。
【0011】
上記一般式(1)中のM1および上記一般式(2)中のM2に相当する貴金属元素としては、白金属元素およびAg(銀)が挙げられる。
上記白金族元素としては、例えば、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)などが挙げられる。
【0012】
上記貴金属元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、Rh、Pd、Ptが挙げられる。
上記ペロブスカイト型複合酸化物は、例えば、M1がRhである場合には、下記一般式(11)で示されるRh含有ペロブスカイト型複合酸化物であることが好ましい。
A’1-aA''aB’1-bRhb3 (11)
(一般式(11)中、A’は、La、NdおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、A''は、Ceおよび/またはPrを示し、B’は、Fe、MnおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、aは、0≦a<0.5の数値範囲のA''の原子割合を示し、bは、0<b≦0.8の数値範囲のRhの原子割合を示す。)
例えば、M1がPdである場合には、下記一般式(12)で示されるPd含有ペロブスカイト型複合酸化物であることが好ましい。
A’B’1-cPdc3 (12)
(一般式(12)中、A’は、La、NdおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、B’は、Fe、MnおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、cは、0<c<0.5の数値範囲のPdの原子割合を示す。)
また、例えば、M1がPtである場合には、下記一般式(13)で示されるPt含有ペロブスカイト型複合酸化物であることが好ましい。
A’1-dA''dB’1-e-fB''ePtf3 (13)
(一般式(13)中、A’は、La、NdおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、A''は、Mg、Ca、Sr、BaおよびAgからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、B’は、Fe、MnおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、B''は、RhおよびRuからなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、dは、0<d≦0.5の数値範囲のA''の原子割合を示し、eは、0≦e<0.5の数値範囲のB''の原子割合を示し、fは、0<f≦0.5の数値範囲のPtの原子割合を示す。)
上記ホタル石型複合酸化物は、例えば、下記一般式(21)で示されるジルコニア系複合酸化物、または、下記一般式(22)で示されるセリア系複合酸化物であることが好ましい。
Zr1-(g+h)CegC’h2-i (21)
(一般式(21)中、C’は、アルカリ土類金属元素、および、Ceを除く希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、gは、0.1≦g≦0.65の数値範囲のCeの原子割合を示し、hは、0≦h≦0.55の数値範囲のC’の原子割合を示し、1−(g+h)は、0.35≦1−(g+h)≦0.9の数値範囲のZrの原子割合を示し、iは、酸素欠陥量を示す。)
Ce1-(j+k)ZrjC''k2-m (22)
(一般式(22)中、C''は、アルカリ土類金属元素、および、Ceを除く希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の配位元素を示し、jは、0.2≦j≦0.7の数値範囲のZrの原子割合を示し、kは、0≦k≦0.2の数値範囲のC''の原子割合を示し、1−(j+k)は、0.3≦1−(j+k)≦0.8の数値範囲のCeの原子割合を示し、mは、酸素欠損量を示す。)
本発明において、1次前駆体組成物は、適宜の方法によって調製することができ、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などによって、調製することができる。
【0013】
共沈法では、例えば、配位元素原料として、上記配位元素の塩が用いられる。ペロブスカイト型構造やホタル石型構造などの耐熱性酸化物の前駆体である1次前駆体組成物は、上記配位元素の塩を所定の化学量論比で含む混合塩水溶液を調製し、この混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥することにより、得ることができる。
【0014】
配位元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。また、混合塩水溶液は、例えば、各元素の塩を、所定の化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
中和剤としては、例えば、アンモニア、例えば、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類などの有機塩基、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、炭酸カリ、炭酸アンモンなどの無機塩基が挙げられる。なお、中和剤は、その中和剤を加えた後の溶液のpHが6〜10程度となるように加えられる。
【0015】
得られた共沈物は、必要により水洗した上で、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させる。
クエン酸錯体法では、例えば、配位元素原料として、上記配位元素の塩が用いられる。上記耐熱性酸化物の前駆体である1次前駆体組成物は、上記配位元素の塩に、上記配位元素に対して化学量論比よりやや過剰のクエン酸水溶液を加えることにより、クエン酸混合塩水溶液を調製し、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記配位元素のクエン酸錯体を形成させた後、得られたクエン酸錯体を仮焼成することにより、得ることができる。
【0016】
配位元素の塩としては、上記と同様の塩が挙げられる。また、クエン酸混合塩水溶液は、例えば、上記と同様に混合塩水溶液を調製して、その混合塩水溶液に、クエン酸の水溶液を加えることにより、調製することができる。
クエン酸混合塩水溶液の乾固は、形成されるクエン酸錯体が分解しない温度、例えば、室温〜150℃程度で、水分を除去することにより、実施することができる。
【0017】
クエン酸錯体の仮焼成は、例えば、真空または不活性雰囲気下において250〜350℃で加熱する。
アルコキシド法では、例えば、配位元素原料として、上記配位元素のアルコキシドが用いられる。上記耐熱性酸化物の前駆体である1次前駆体組成物は、上記配位元素のアルコキシドを所定の化学量論比で含む混合アルコキシド溶液を調製し、この混合アルコキシド溶液に水を加えて、加水分解により沈殿を生成させ、得られた沈殿物を乾燥することにより、得ることができる。
【0018】
アルコキシドとしては、例えば、上記配位元素と、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシとから形成されるアルコラートや、下記一般式(3)で示される上記配位元素のアルコキシアルコラートなどが挙げられる。
E[OCH(R1)−(CH2p−OR2q (3)
(一般式(3)中、Eは、配位元素を示し、R1は、水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、pは、1〜3の整数を示し、qは、2〜4の整数を示す。)
アルコキシアルコラートは、より具体的には、例えば、メトキシエチレート、メトシキプロピレート、メトキシブチレート、エトキシエチレート、エトキシプロピレート、プロポキシエチレート、ブトキシエチレートなどが挙げられる。
【0019】
混合アルコキシド溶液は、例えば、各配位元素のアルコキシドを、所定の化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。有機溶媒としては、各配位元素のアルコキシドを溶解することができれば、特に制限されないが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などが挙げられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0020】
得られた上記沈殿物は、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させる。
本発明において、1次熱処理は、上記共沈法、上記クエン酸錯体法または上記アルコキシド法によって得られた1次前駆体組成物を、例えば、大気中、例えば、約200〜700℃、好ましくは、約300〜700℃、より好ましくは、約450〜650℃で焼成(熱処理)する。
【0021】
上記1次熱処理において、1次前駆体組成物を焼成することにより、ペロブスカイト型構造やホタル石型構造などの耐熱性酸化物を形成し得る、1次熱処理組成物が得られる。
本発明において、2次前駆体組成物は、上記1次熱処理により得られた1次熱処理組成物に、上記貴金属元素を含む貴金属元素原料を配合することによって調製することができる。具体的には、上記貴金属元素原料として、上記貴金属を含む硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸水溶液、塩化物水溶液などを調製し、これらの水溶液を、上記1次熱処理組成物に含浸させることにより、調製することができる。
【0022】
上記貴金属元素原料として、より具体的には、例えば、上記貴金属元素がRhである場合には、例えば、硝酸ロジウム水溶液、塩化ロジウム水溶液などのロジウム塩水溶液が挙げられる。例えば、上記貴金属元素がPdである場合には、例えば、硝酸パラジウム水溶液、塩化パラジウム水溶液などのパラジウム塩水溶液が挙げられる。例えば、上記貴金属元素がPtである場合には、例えば、ジニトロジアンミン白金の硝酸水溶液、塩化白金酸水溶液、4価白金アンミン溶液などの白金塩溶液が挙げられる。
【0023】
上記含浸は、例えば、上記1次熱処理組成物を、上記貴金属を含む硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸水溶液、塩化物水溶液などの水溶液に配合した後、乾燥させる。
本発明において、2次熱処理は、上記貴金属元素原料を配合させて得られた2次前駆体組成物を、例えば、大気中、上記1次熱処理時における熱処理温度よりも高温で、かつ、600℃以上、好ましくは、650〜1050℃、より好ましくは、750〜1000℃で焼成(熱処理)する。
【0024】
2次熱処理温度が1次熱処理温度以下である場合には、後述する実施例より明らかなように、貴金属含有耐熱性酸化物の高温雰囲気下での耐久性を向上させることができず、長時間にわたり、例えば、800〜1000℃もの高温雰囲気に曝された場合には、貴金属含有耐熱性酸化物の触媒活性の低下が生じる。
なお、1次前駆体組成物としての共沈物、クエン酸錯体、沈殿物や、2次前駆体組成物としての貴金属元素原料を配合した1次熱処理組成物について、これらを乾燥、仮焼きする加温処理温度または熱処理温度は、通常、600℃未満である。それゆえ、2次前駆体組成物を焼成する2次熱処理温度は、1次熱処理温度の如何にかかわらず、600℃以上であることが必要である。
【0025】
本発明の製造方法により得られた貴金属含有耐熱性酸化物を、排ガス浄化用触媒として用いる場合には、2次前駆体組成物に対して2次熱処理(焼成)を施した状態で、そのまま、排ガス浄化用触媒として用いることもできるが、触媒担体上に担持させるなど、公知の方法により、適宜の形態に調製することができる。
触媒担体としては、特に制限されず、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体など、公知の触媒担体が用いられる。
【0026】
触媒担体上に担持させるには、例えば、まず、得られた2次前駆体組成物に、水を加えてスラリーとした後、触媒担体上にコーティングし、乾燥させ、その後、約300〜800℃、好ましくは、約300〜600℃で熱処理する。
なお、このような排ガス浄化用触媒として調製する際には、他の公知の触媒成分(例えば、貴金属が担持されているアルミナや、貴金属が担持されている他の公知の複合酸化物など)を、本発明の方法により得られた貴金属含有耐熱性酸化物と、適宜併用してもよい。
【0027】
また、本発明の貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法においては、1次熱処理により得られた1次熱処理組成物に対して、貴金属元素を含む貴金属元素原料を配合する処理を施す前に、上記1次熱処理組成物を、触媒担体に担持させてもよい。
上記1次熱処理組成物を触媒担体に担持させるには、上記1次熱処理組成物に水を加えてスラリーとした後、これを触媒担体上にコーティングし、乾燥させ、その後、2次熱処理温度よりも低く、かつ、約200〜700℃、好ましくは、約300〜700℃で熱処理する。こうして1次熱処理組成物がその表面にコーティングされた触媒担体を、さらに、上記貴金属を含む硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸水溶液、塩化物水溶液などの水溶液に配合して、乾燥した後、2次熱処理することにより、貴金属含有耐熱性酸化物が得られる。
【0028】
上記1次熱処理組成物を担持させる触媒担体としては、例えば、本発明の貴金属含有耐熱性酸化物を担持させる触媒担体と同様のものが挙げられる。
このようにして得られる本発明の貴金属含有耐熱性酸化物は、高温雰囲気下での耐久性に優れており、後述する実施例に示すように、高温雰囲気下で長時間にわたって使用した後においても、比較的低温で優れた触媒活性を発揮することができる。
【0029】
上記の説明では、主として、本発明の貴金属含有耐熱性酸化物を排ガス浄化用触媒として用いる場合を説明したが、その用途は、特に制限されず、上記貴金属を触媒として使用する分野において広く用いることができる。例えば、有機合成のカップリング反応触媒、還元反応触媒、水素化触媒、水素化分解触媒などが挙げられる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<耐熱性酸化物の製造>
実施例1
ランタンエトキシエチレート[La(OC24OEt)3]40.6g(0.100モル)および鉄エトキシエチレート[Fe(OC24OEt)3]30.7g(0.095モル)を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。次いで、上記丸底フラスコ中に、脱イオン水200mLを約15分かけて滴下した。そうすると、加水分解により褐色の粘稠沈殿が生成した。その後、室温下で2時間攪拌した後、減圧下でトルエンおよび水分を留去して、LaFe複合酸化物(1次前駆体組成物)を得た。
【0031】
次に、上記1次前駆体組成物をシャーレに移して、60℃にて24時間通風乾燥後、大気中、電気炉を用いて600℃で1時間熱処理することにより(1次熱処理)、黒褐色の粉体を得た。
さらに、上記粉末に、硝酸パラジウム水溶液(Pd分4.399質量%)12.1g(Pd換算0.53g、0.005モルに相当)を含浸させて、2次前駆体組成物を得た。得られた2次前駆体組成物を100℃で乾燥後、800℃で1時間焼成することにより(2次熱処理)、貴金属含有耐熱性酸化物の粉末を得た。
【0032】
この貴金属含有耐熱性酸化物は、粉末X線回折の結果から、LaFe0.95Pd0.053のペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる単一結晶相であると同定された。また、複合酸化物中におけるPdの含有率は、2.17重量%であった。
実施例2
ランタンエトキシエチレート40.7g(0.100モル)、鉄エトキシエチレート18.4g(0.057モル)、およびコバルトエトキシエチレート[Co(OC24OEt)2]9.0g(0.038モル)を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。次いで、上記丸底フラスコ中に、脱イオン水200mLを約15分かけて滴下した。そうすると、加水分解により褐色の粘稠沈殿が生成した。その後、室温下で2時間攪拌した後、減圧下でトルエンおよび水分を留去して、LaFeCo複合酸化物(1次前駆体組成物)を得た。
【0033】
次に、上記1次前駆体組成物をシャーレに移して、60℃にて24時間通風乾燥後、大気中、電気炉を用いて600℃で1時間熱処理することにより(1次熱処理)、黒褐色の粉体を得た。
さらに、上記粉末に、硝酸パラジウム水溶液(Pd分4.399質量%)12.1g(Pd換算0.53g、0.005モルに相当)を含浸させて、2次前駆体組成物を得た。得られた2次前駆体組成物を800℃で1時間焼成することにより(2次熱処理)、貴金属含有耐熱性酸化物の粉末を得た。
【0034】
この貴金属含有耐熱性酸化物は、粉末X線回折の結果から、LaFe0.57Co0.38Pd0.053のペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる単一結晶相であると同定された。また、複合酸化物中におけるPdの含有率は、2.16重量%であった。
実施例3
硝酸カルシウム・4水和物[Ca(NO32・4H2O]23.6g(0.100モル)および塩化チタン水溶液(TiCl4濃度40重量%(Ti分10.1質量%))45.1g(0.095モル)を、500mL容量の丸底フラスコに入れ、脱イオン水200mLに撹拌溶解して混合塩水溶液を調製した。次いで、別途調製した10重量%苛性ソーダ溶液200g(NaOHとして0.50モルに相当)を、室温下、上記混合塩水溶液に滴下して共沈物を得た。得られた共沈物を2時間撹拌混合後、ろ過して脱イオン水で十分に水洗した。
【0035】
上記共沈物の水を減圧下で留去乾固して、1次前駆体組成物を得た。得られた1次前駆体組成物を、大気中、電気炉にて800℃で2時間熱処理することにより(1次熱処理)、褐色の粉末を得た。
さらに、上記粉末に、硝酸ロジウム水溶液(Rh分4.478質量%)11.5g(Rh換算で0.51g、0.005モルに相当)を含浸させて、2次前駆体組成物を得た。得られた2次前駆体組成物を100℃で乾燥後、1000℃で1時間焼成することにより(2次熱処理)、貴金属含有耐熱性酸化物の粉末を得た。
【0036】
この貴金属含有耐熱性酸化物は、粉末X線回折の結果から、CaTi0.95Rh0.053のペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる単一結晶相であると同定された。また、複合酸化物中におけるRhの含有率は、3.71重量%であった。
実施例4
硝酸カルシウム4水和物23.6g(0.100モル)および塩化チタン水溶液(TiCl4濃度40重量%(Ti分10.1質量%))45.1g(0.095モル)を、500mL容量の丸底フラスコに入れ、脱イオン水200mLに撹拌溶解して混合塩水溶液を調製し、次いで、別途調製したクエン酸水溶液を加えて、クエン酸混合塩水溶液を調製した。
【0037】
上記クエン酸混合塩水溶液の水を減圧下で留去乾固して、クエン酸錯体(1次前駆体組成物)を得た。得られた1次前駆体組成物を、大気中、電気炉にて500℃で2時間熱処理することにより(1次熱処理)、褐色の粉末を得た。
さらに、上記粉末に、ジニトロジアンミン白金の硝酸水溶液(Pt分8.50質量%)11.5g(Pt換算で0.98g、0.005モルに相当)を含浸させて、2次前駆体組成物を得た。得られた2次前駆体組成物を100℃で乾燥後、700℃で1時間焼成することにより(2次熱処理)、貴金属含有耐熱性酸化物の粉末を得た。
【0038】
この貴金属含有耐熱性酸化物は、粉末X線回折の結果から、CaTi0.95Pt0.053のペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる単一結晶相であると同定された。また、複合酸化物中におけるPtの含有率は、6.81重量%であった。
実施例5
オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)24.2g(0.075モル)、硝酸セリウム(Ce(NO33・6H2O)6.5g(0.015モル)、硝酸ランタン(La(NO33・6H2O)0.4g(0.001モル)、および硝酸ネオジウム(Nd(NO33・6H2O)1.8g(0.004モル)を、脱イオン水100mLに溶解させて、混合塩水溶液を調製した。次いで、炭酸ナトリウム(Na2CO3)の25.0gを脱イオン水200mLに溶解させて、中和共沈剤溶液を調製し、この中和共沈剤溶液中に、上記混合塩水溶液を徐々に滴下して、共沈物を得た。
【0039】
得られた共沈物を、十分に水洗して濾過した後、イソプロピルアルコール100mLを加えて、市販のジルコニア製(3モルY23安定化ZrO2)ボールミル中にて24時間粉砕した。粉砕後、得られたスラリーを濾過して、80℃にて真空乾燥し、十分に乾燥することにより、1次前駆体組成物を得た。
その後、得られた1次前駆体組成物を、大気中、600℃にて3時間焼成することにより(1次熱処理)、粉末を得た。
【0040】
さらに、上記粉末に、硝酸ロジウム水溶液(Rh分4.478質量%)11.5g(Rh換算で0.51g、0.005モルに相当)を含浸させて、2次前駆体組成物を得た。得られた2次前駆体組成物を110℃で12時間乾燥後、800℃で3時間焼成することにより(2次熱処理)、貴金属含有耐熱性酸化物の粉末を得た。
この貴金属含有耐熱性酸化物は、粉末X線回折の結果から、Zr0.75Ce0.15La0.01Nd0.04Rh0.052のホタル石型構造の複合酸化物からなる単一結晶相であると同定された。また、複合酸化物中におけるRhの含有率は、3.85重量%であった。
【0041】
実施例6
オキシ塩化ジルコニウム24.2g(0.075モル)を、脱イオン水100mLに溶解させて、上記塩の水溶液を調製した。次いで、実施例5と同様にして調製された中和共沈剤溶液中に、上記塩の水溶液を徐々に滴下して、共沈物を得た。
得られた共沈物を、十分に水洗して濾過した後、イソプロピルアルコール100mLを加えて、市販のジルコニア製(3モルY23安定化ZrO2)ボールミル中にて24時間粉砕した。粉砕後、得られたスラリーを濾過して、80℃にて真空乾燥した。十分に乾燥した後、大気中、300℃にて1時間仮焼することにより、粉末を得た。
【0042】
次に、上記粉末と、硝酸ランタン6.5g(0.015モル)および硝酸ネオジウム2.2g(0.005モル)とを、脱イオン水100mLに溶解させて、混合塩水溶液を調製した。さらに、実施例5と同様にして調製された中和共沈剤溶液中に、上記混合塩水溶液を徐々に滴下して、共沈物を得た。
得られた共沈物を、十分に水洗して濾過した後、イソプロピルアルコール100mLを加えて、市販のジルコニア製(3モルY23安定化ZrO2)ボールミル中にて24時間粉砕した。粉砕後、得られたスラリーを濾過して、80℃にて真空乾燥し、十分に乾燥することにより、1次前駆体組成物を得た。
【0043】
その後、得られた1次前駆体組成物を、大気中、550℃にて3時間焼成することにより(1次熱処理)、粉末を得た。
さらに、上記粉末に、硝酸ロジウム水溶液(Rh分4.478質量%)11.5g(Rh換算で0.51g、0.005モルに相当)を含浸させて、2次前駆体組成物を得た。得られた2次前駆体組成物を110℃で12時間乾燥後、850℃で3時間焼成することにより(2次熱処理)、貴金属含有耐熱性酸化物の粉末を得た。
【0044】
この貴金属含有耐熱性酸化物は、粉末X線回折の結果から、Zr0.75La0.15Nd0.05Rh0.052のホタル石型構造の複合酸化物からなる単一結晶相であると同定された。また、複合酸化物中におけるRhの含有率は、3.85重量%であった。
実施例7
硝酸セリウム21.7g(0.050モル)、オキシ塩化ジルコニウム14.5g(0.045モル)および硝酸イットリウム(Y(NO33・6H2O)1.1g(0.003モル)を、純水100mLに溶解させて、均一に混合することにより、混合塩水溶液を調整し、次いで、別途調製したクエン酸水溶液を加えて、クエン酸混合塩水溶液を調製した。上記クエン酸混合塩水溶液中の水を、ロータリーエバポレータで真空引きしながら、60〜80℃の湯浴中で蒸発乾固させ、3時間程度で溶液が飴状になった時点から上記湯浴の温度をゆっくりと上昇させ、最終的に250℃で1時間真空乾燥することにより、クエン酸錯体(1次前駆体組成物)を得た。
【0045】
次いで、上記クエン酸錯体を、大気中、450℃で3時間焼成して(1次熱処理)、1次熱処理組成物を得た。得られた1次熱処理組成物に、ジニトロジアンミン白金(Pt分8.50質量%)4.6g(Pt換算で0.39g、0.002モルに相当)の硝酸水溶液を含浸させて、2次前駆体組成物を得た。得られた2次前駆体組成物を100℃で乾燥後、650℃で1時間焼成することにより(2次熱処理)、貴金属含有耐熱性酸化物の粉末を得た。
【0046】
この貴金属含有耐熱性酸化物は、粉末X線回折の結果から、Ce0.5Zr0.450.03Pt0.022のホタル石型構造の複合酸化物からなる単一結晶相であると同定された。また、複合酸化物中におけるPtの含有率は、2.60重量%であった。
比較例1
2次熱処理時の焼成温度(2次熱処理温度)を450℃としたこと以外は、実施例2と同様にして、LaFe0.57Co0.38Pd0.053からなる貴金属含有耐熱性酸化物の粉末を得た。
【0047】
比較例2
オキシ塩化ジルコニウム25.8g(0.080モル)、硝酸セリウム6.5g(0.015モル)、硝酸ランタン0.4g(0.001モル)および硝酸ネオジウム1.8g(0.004モル)を、脱イオン水100mLに溶解させて、混合塩水溶液を調製した。
次いで、実施例5と同様にして調製された中和共沈剤溶液中に、上記混合塩水溶液を徐々に滴下して、共沈物を得た。得られた共沈物を、十分に水洗して濾過した後、イソプロピルアルコール100mLを加えて、市販のジルコニア製(3モルY23安定化ZrO2)ボールミル中にて24時間粉砕した。粉砕後、得られたスラリーを濾過して、80℃にて真空乾燥し、十分に乾燥することにより、1次前駆体組成物を得た。
【0048】
その後、1次前駆体組成物を、大気中、600℃にて3時間焼成することにより(1次熱処理)、粉末を得た。
さらに、上記粉末に、硝酸ロジウム水溶液(Rh分4.478質量%)11.5g(Rh換算で0.51g、0.005モルに相当)を含浸させて、2次前駆体組成物を得た。得られた2次前駆体組成物を110℃で12時間乾燥後、350℃で3時間焼成することにより(2次熱処理)、Rhが担持されたRh/Zr0.80Ce0.15La0.01Nd0.042からなる貴金属含有耐熱酸化物の粉末を得た。
【0049】
<性能評価>
1)触媒担体に対するコーティング
上記実施例および比較例で得られた各貴金属含有耐熱性酸化物の粉体100gを、脱イオン水100mLと混合し、さらに、ジルコニアゾル(日産化学(株)製「NZS−30B」、固形分30質量%)17.5gを加えてスラリーを調製した。このスラリーを、コージェライト質ハニカム(直径80mm、長さ95mm、格子密度400セル/(0.025m)2)からなる触媒担体にコーティングした。
【0050】
コーティング後、余剰のスラリーをエアブロウにて吹き払い、粉体のコーティング量が157.5g/触媒担体1L(75.1g/個)となるように調整した。その後、120℃にて12時間通風乾燥後、大気中、600℃で3時間焼成することによって、実施例1〜7および比較例1、2の貴金属含有耐熱性酸化物(粉体)を含有するモノリス状触媒をそれぞれ得た。
【0051】
2)耐久試験
V型8気筒、排気量4Lのエンジンの両バンク各々に、上記「1)触媒担体に対するコーティング」で調製した実施例1〜7および比較例1、2の各モノリス状触媒を、それぞれ装着し、触媒床内温度が1000℃となる、900秒で1サイクルの耐久パターンを、5時間繰り返した。
【0052】
耐久パターンは、0〜870秒(870秒間)は、理論空燃比(λ=1)であるA/F=14.6(A/F=air to fuel ratio=空燃比)を中心として、△λ=±4%(△A/F=±0.6A/F)の振幅を、周波数0.6Hzで与え、870〜900秒(30秒間)は、各触媒の上流側から2次元空気を導入して、λ=1.25となる条件にて強制酸化した。
【0053】
3)活性評価
直列4気筒、排気量1.5Lのエンジンを用い、理論空燃比(λ=1)を中心として、△λ=±3.4%(△A/F=±0.5A/F)の振幅を、周波数1Hzで与え、上記「2)耐久試験」に供した後の各モノリス状触媒について、HCの浄化率を測定した。
測定は、エンジンにストイキ状態(A/F=14.6±0.2)の混合ガスを供給し、この混合ガスの燃焼によって排出される排気ガスの温度を30℃/分の割合で上昇させつつ、各触媒に供給し、排ガス中のHCが50%浄化されるときの温度(℃)を測定した。
【0054】
測定結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

表1中、「ABM13型」は、結晶構造がペロブスカイト型であることを示し、「CDM22型」は、結晶構造がホタル石型であることを示している。熱処理温度の欄の「1次」および「2次」は、ぞれぞれ、1次熱処理および2次熱処理を示している。また、「浄化温度」は、炭化水素(HC)を50%浄化する温度T50(℃)を示している。
【0056】
<耐熱性酸化物の製造>
実施例8
硝酸ランタン43.3g(0.100モル)および硝酸鉄(Fe(NO32・9H2O)38.4g(0.095モル)を、500mL容量の丸底フラスコに加え、脱イオン水200mLを加えて撹拌溶解させることにより、混合塩水溶液を調製した。
【0057】
次いで、別途調製した10重量%苛性ソーダ溶液200g(NaOHとして0.50モルに相当)を、室温下、上記混合塩水溶液に滴下して共沈物を得た。得られた共沈物を2時間撹拌混合後、ろ過して脱イオン水で十分に水洗した。
水を減圧下で留去乾固することにより、1次前駆体組成物を得た。得られた1次前駆体組成物を、大気中、電気炉にて600℃で2時間熱処理することにより(1次熱処理)、褐色の粉末を得た。
【0058】
さらに、上記粉末に水を加えて、スラリーとした後、触媒担体(コージェライトモノリス)上にコーティングして、500℃で焼成した(コート処理後の焼成)。
次いで、LaFeがコーティングされた触媒担体に、硝酸パラジウム水溶液(Pd分4.399質量%)12.1g(Pd換算で0.53g、0.005モルに相当)を含浸させ、800℃で焼成することにより(2次熱処理)、貴金属含有耐熱性酸化物がその表面にコーティングされた触媒担体を得た。
【0059】
上記貴金属含有耐熱性酸化物は、粉末X線回折の結果から、LaFe0.95Pd0.053のペロブスカイト型構造の複合酸化物からなる単一結晶相であると同定された。
実施例9
2次熱処理時の焼成温度(2次熱処理温度)を650℃としたこと以外は、実施例8と同様にして、LaFe0.95Pd0.053のペロブスカイト型の結晶構造からなる貴金属含有耐熱性酸化物がその表面にコーティングされた触媒担体を得た。
【0060】
比較例3
2次熱処理時の焼成温度(2次熱処理温度)を450℃としたこと以外は、実施例8と同様にして、表面にLaFe0.95Pd0.053のペロブスカイト型の結晶構造からなる貴金属含有耐熱性酸化物がその表面にコーティングされた触媒担体を得た。
比較例4
2次熱処理時の焼成温度(2次熱処理温度)を250℃としたこと以外は、実施例8と同様にして、表面にLaFe0.95Pd0.053のペロブスカイト型の結晶構造からなる貴金属含有耐熱性酸化物がその表面にコーティングされた触媒担体を得た。
【0061】
<性能評価>
i)耐久試験
V型8気筒、排気量4Lのエンジンの両バンク各々に、実施例8、9および比較例3、4で得られた、貴金属含有耐熱性酸化物が担持されている触媒担体(モノリス状触媒)を、それぞれ装着し、触媒床内温度が900℃となる、900秒で1サイクルの耐久パターンを、100時間繰り返した。
【0062】
耐久パターンは、0〜870秒(870秒間)は、理論空燃比(λ=1)であるA/F=14.6を中心として、△λ=±4%(△A/F=±0.6A/F)の振幅を、周波数1.0Hzで与え、870〜900秒(30秒間)は、各触媒の上流側から2次元空気を導入して、A/F=17.5となる条件にて強制酸化した。
ii)活性評価
直列4気筒、排気量1.5Lのエンジンを用い、理論空燃比(λ=1)を中心として、△λ=±3.4%(△A/F=±0.5A/F)の振幅を、周波数1Hzで与え、上記i)の耐久試験に供した後の各モノリス状触媒について、HCの浄化率を測定した。
【0063】
測定は、エンジンにストイキ状態(A/F=14.6±0.2)の混合ガスを供給し、この混合ガスの燃焼によって排出される排気ガスの温度を30℃/分の割合で上昇させつつ、各触媒に供給し、排ガス中のHCが50%浄化されるときの温度(℃)を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

表2中、「ABM13型」は、結晶構造がペロブスカイト型であることを示している。熱処理温度の欄の「1次」、「コート後」および「2次」は、ぞれぞれ、1次熱処理、触媒担体上への1次前駆体組成物のコーティング処理後における熱処理、および、2次熱処理を示している。また、「浄化温度」は、炭化水素(HC)を50%浄化する温度T50(℃)を示している。
【0065】
上記表1および表2に示すように、実施例1〜9の貴金属含有耐熱性酸化物によれば、耐久試験に供した後においても、比較的低温で、優れた触媒活性を発揮させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位元素および貴金属元素を含み、熱処理により耐熱性酸化物となる貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法であって、
前記配位元素を含む配位元素原料を配合して、1次前駆体組成物を調製する工程、
前記1次前駆体組成物を、1次熱処理する工程、
前記1次熱処理により得られた1次熱処理組成物に、貴金属元素を含む貴金属元素原料を配合して、2次前駆体組成物を調製する工程、および、
前記2次前駆体組成物を、前記1次熱処理温度よりも高温で、かつ、600℃以上で2次熱処理する工程
を備えることを特徴とする、貴金属含有耐熱性酸化物の製造方法。

【公開番号】特開2006−131457(P2006−131457A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322580(P2004−322580)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】