説明

貼付材

【課題】 皮膚への密着性、追従性、低剥離刺激等の良好な特性を有し、基材と粘着剤層とが剥離し難い貼付材を提供する。
【解決手段】 基材と、基材の一方の面に形成されたシリコーンを主体とする第1の層と、第1の層の基材とは反対側の面に形成されたシリコーンを主体とする粘着性の第2の層とを備え、第1の層の表面硬度が第2の層の表面硬度より大きいことを特徴とする貼付材。基材と、基材の一方の面に形成されたシリコーンを主体とする第1の層と、第1の層の基材とは反対側の面に形成されたシリコーンを主体とする粘着性の第2の層とを備え、第1の層のtanδが第2の層のtanδより小さいことを特徴とする貼付材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用、家庭用、スポーツ用等として、医療材料の人体への固定、皮膚や傷の保護や治療、等に用いる貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患の処置や治療に用いるチューブ、ガーゼ、包帯等の医療材料の人体への固定、傷や皮膚等の治療や保護、美容、等のために、シート状又はロール状の貼付材が使用されている。この貼付材は、基材とその基材の表面を被覆する粘着剤層とから構成されており、粘着剤の種類としては、アクリル系やゴム系のものが多く使用されている。しかしながら、これらの粘着剤は、皮膚等の被着体に対する粘着力が高い場合があり、剥離時に角層が過度に剥離されたり、毛が引っ張られたりして、痛みや不快感を与える場合があった。
【0003】
また、粘着剤としてシリコーンゲルを使用する貼付材も知られている。シリコーンゲルは、皮膚への高い密着性、追従性、貼付時の適度な弾性及び粘着性を示し、皮膚に対する剥離時の刺激や不快感がアクリル系やゴム系の粘着剤よりも少ない。そのため、処置や清潔のために、皮膚の同一部位に複数回貼付することが多い医療用や家庭用の貼付材の粘着剤としては、シリコーンゲルは好適な粘着剤成分と考えられる。しかしながら、シリコーンゲル系粘着剤は、貼付材の基材との接着性に欠けるため、皮膚等の被着体から貼付材を剥離する際に、粘着剤層と基材との界面で剥離が生じ、被着体表面に粘着剤層が残るという問題があった。
【0004】
特許文献1には、プラスチックフィルム層に粒子や短繊維から構成される固定要素を固定し、その粒子や短繊維を接着性のシリコーンエラストマーで被覆した手当て用品又は貼付テープが開示されている。この手当て用品等においては、粒子や短繊維をプラスチックフィルム層に固定するために、フィルム層に接着剤を被覆する等の操作が必要であるので、製法が煩雑になり、また、粒子や短繊維とシリコーンエラストマーとの間で接触面積を増大させ、十分な接着力を得るためには、多量のシリコーンエラストマーが必要になる。
【0005】
【特許文献1】特表2002−516152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、皮膚への密着性、追従性、低剥離刺激等の良好な特性を有し、基材と粘着剤層とが剥離し難い貼付材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく、基材とシリコーンゲル粘着剤とを架橋させる架橋剤を添加し、基材と粘着剤層との結合を高めることを検討したが、この方法では、シリコーンゲル粘着剤層の内部構造自体が架橋されてしまうため、粘着剤層が硬くなり、皮膚に対して好適な特性が得られ難いことが分かった。
そこで、本発明者は、粘着剤層の構成について、更に鋭意研究を進めた結果、基材の表面に特定のシリコーンを主体とする第1の層を形成し、更にその第1の層の表面に特定のシリコーンを主体とする粘着性の第2の層を形成すればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、基材と、基材の一方の面に形成されたシリコーンを主体とする第1の層と、第1の層の基材とは反対側の面に形成されたシリコーンを主体とする粘着性の第2の層とを備え、第1の層の表面硬度が第2の層の表面硬度より大きいことを特徴とする貼付材が提供される。
本発明の貼付材において、第2の層の表面硬度が0であることが好ましい。
また、本発明によれば、基材と、基材の一方の面に形成されたシリコーンを主体とする第1の層と、第1の層の基材とは反対側の面に形成されたシリコーンを主体とする粘着性の第2の層とを備え、第1の層のtanδが第2の層のtanδより小さいことを特徴とする貼付材が提供される。
本発明の貼付材において、第1の層のtanδが0.01〜0.19であり、第2の層のtanδが0.2〜1.0であることが好ましい。
【0009】
本発明の貼付材において、第1の層及び第2の層のシリコーンがビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなることが好ましい。
また、本発明の貼付材において、第1の層の厚みが0.05〜20μmであり、第2の層の厚みが10〜900μmであることが好ましい。
更に、本発明の貼付材において、透湿度が600g/m・24時間以上であることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、ポリエステル、エステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリウレタン、ウレタン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択された樹脂からなる基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる第1の層と、第1の層の基材フィルムと反対側の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる粘着性の第2の層とを備え、第1の層は、表面硬度が0より大きく、厚みが0.05〜20μmであり、第2の層は表面硬度が0で、厚みが10〜900μmであることを特徴とする貼付材が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、ポリエステル、エステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリウレタン、ウレタン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選択された樹脂からなる基材フィルムと、フィルム基材の一方の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる第1の層と、第1の層の基材フィルムとは反対側の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる粘着性の第2の層とを備え、第1の層は、tanδが0.01〜0.19で、厚みが0.05〜20μmであり、第2の層はtanδが0.2〜1.0で、厚みが10〜900μmであることを特徴とする貼付材が提供される。
【0012】
更に本発明によれば、ポリエステル、エステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリウレタン、ウレタン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択された樹脂からなる基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物とシリカとを含有してなる第1の層と、第1の層の基材フィルムと反対側の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる粘着性の第2の層と、を備えたことを特徴とする貼付材が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の貼付材は、シリコーンを主体とする粘着剤層を有するので、皮膚等に対する密着性及び追従性に優れ、更に貼付部位から剥離する際に、刺激や不快感を与えないので、皮膚用の貼付材として非常に好適である。また、基材とシリコーンを主体とする粘着剤層との接着性が良く基材と粘着剤層とが剥離し難いため、貼付材を被着体から除去した後に被着体に粘着剤層が残留することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の貼付材は、基材と、基材の一方の面に形成されたシリコーンを主体とする第1の層と、第1の層の基材とは反対側の面に形成されたシリコーンを主体とする粘着性の第2の層とを備え、第1の層の表面硬度が第2の層の表面硬度より大きいことを特徴とする。
本発明において用いる基材の形態としては、フィルム、不織布・編布・織布等の布帛、発泡シート、紙等が挙げられ、これらの基材を単独で使用してもよいし、同一又は異なる種類の形態の基材をラミネートした積層構造の基材を使用してもよい。これらのうち、フィルム形態の基材が好ましく、透湿性及び伸縮性のあるものが特に好ましい。また、フィルムと布帛とをラミネートした複合フィルムを用いて、粘着剤層と反対側の表面に布帛を配置するように貼付材を構成すれば、貼付中に肌触りの良い貼付材が得られる。
【0015】
フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル及びポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマー;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリウレタン及びウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリルニトリル;ポリスチレン及びスチレン系熱可塑性エラストマー;シリコーン;等をあげることができる。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0016】
布帛の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル及びポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマー;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;アクリル;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;ポリウレタン及びウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリアクリルニトリル;ポリスチレン及びスチレン系熱可塑性エラストマー;シリコーン;等をあげることができる。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
発泡シートの材料としては、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル、クロロプレンゴム、シリコーン等をあげることができる。
紙としては、従来から知られている上質紙、クラフト紙、グラシン紙、コート紙等が使用できる。
【0017】
基材は、10〜150g/mの目付けを有するものが好ましく、10〜100g/mの目付けを有するものが更に好ましい。目付けが10g/mより低いと、基材の強度が十分でなく、使用時に繰り返し摩擦によって破れる可能性がある。他方、目付けが150g/mより高いと、嵩高になり皮膚に貼付したときに違和感が生じ、特に曲面部位への追従性が悪くなる恐れがある。また、基材は、皮膚の生理機能を妨げないように、透湿性及び伸縮性のあるものが好ましい。
【0018】
基材の一方の面に形成する第1の層は、シリコーンを主体とする。
本発明において使用するシリコーンは、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物であることが好ましい。
ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応は、ビニルシリル基(Si−CH=CH)とヒドロシリル基(Si−H)との付加反応であり、白金化合物が反応触媒として用いられる。付加反応は常温硬化、加熱硬化いずれも可能であり、さらに開放系、密閉系のどちらでも硬化できる。
【0019】
本発明においては、シリコーンは、好適には、ポリジオルガノシロキサンを主成分とする組成物を架橋して得られるものである。
ポリジオルガノシロキサンを主成分とする組成物は、通常、ポリジオルガノシロキサン及び架橋剤を含有してなり、このほかに、充填剤、顔料、低温度硬化抑制剤等を含有していてもよい。
特に、シリカ等の充填材を添加すれば、第1の層の硬度や粘弾性を容易に調整できる。
架橋剤は、特に限定されないが、アルコキシラン又はアルキルハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
【0020】
アルキルハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノシロキサンであり、その具体例としては、1分子内に水素原子を2個以上もつオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。第1の層は、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの量や、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子内のヒドロシリル基(Si−H)の量を変化させることで、第1の層の架橋密度を調整し、第1の層の硬度や粘弾性を容易に調整できる。
発明の第1の層は、シリカの添加量、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量、又はオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子内のヒドロシリル基(Si−H)の量を、第2の層より多くすることにより、第2の層より硬度を大きくする、又は第2の層よりtanδを小さくすることが好ましい。
ポリジオルガノシロキサンの架橋方法は、特に限定されず、架橋剤を用いる方法、有機過酸化物等の硬化剤を添加して加熱する方法、電磁線に暴露する方法が利用できる。
【0021】
基材の一方の面にシリコーンを主体とする第1の層を形成するには、ポリジオルガノシロキサンを主成分とする組成物を基材に塗布し、これを硬化させればよい。
塗工は、ポリジオルガノシロキサンを主成分とする組成物をそのまま塗布してもよく、また、ヘキサン等の適当な溶媒で希釈して塗布してもよい。
また、塗工は、基材の一方の面を部分的に被覆してもよいし、全面を被覆してもよい。
塗工パターンとしては、フィルム状、格子状、ネット状、粒状、唐草模様等の任意の形態を選択できる。
【0022】
本発明においては、硬化後の第1の層は、非粘着性であることが好ましく、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、白金の化合物又は錯化合物等の反応触媒とを主成分とする組成物を好適に使用できる。本発明における、非粘着性とは、ねばつきがなく、被着体に付着しない、又は付着しにくい性質をいい、後述のJIS Z 0237−2000「粘着力」の試験で測定不能なものをいう。
この組成物は、そのままで直接基材に塗工することができるが、ヘキサンなどの溶媒で希釈した方が好適な厚みの層を得やすい。硬化に関しては比較的低い温度、例えば約30℃〜約150℃で、反応触媒の存在下、基材上に硬化させることができる。
【0023】
シリコーンを主体とする第1の層の基材とは反対側の面に形成される第2の層は、シリコーンを主体とする粘着性の第2の層である。
本発明における、粘着性とは、ねばつきのある性質のことで、第2の層と被着体との間にねばつきを生じ、第2の層が被着体に付着できる性質をいう。
この第2の層は、ケイ素原子に結合したビニル基、アリル基又はへキセニル基を有するアルケニル置換ポリジオルガノシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、Si−H基とケイ素に結合したアルケニル基との反応のための触媒とを主成分とする組成物から好適に形成することができる。
【0024】
第2の層は、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの量や、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子内のヒドロシリル基(Si−H)の量を変化させることで、架橋密度を調整し、第2の層の硬度や粘弾性を容易に調整できる。
特に、付加反応に関与しない低分子ジメチルポリシロキサン等のシリコーンオイルを添加すれば、第2の層の硬度や粘弾性を容易に調整できる。
SiH基とケイ素に結合したアルケニル基との反応の触媒としては、白金又はその化合物もしくは錯化合物が使用できる。
【0025】
本発明の第2の層は、シリコーンオイルを添加するか、又はオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量若しくはオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子内のヒドロシリル基(Si−H)の量を第1の層より少なくすることにより、第1の層より硬度を小さくする、又はtanδを大きくすることが好ましい。
本発明の第1の層と第2の層の結合においては、次のようなことが想定される。第1の層及び第2の層の双方に含まれるシリコーンが、互いに架橋可能な官能基を有するようにすることにより、双方の層に含まれるシリコーンの未架橋点同士が架橋し、第1の層と第2の層との結合が強まる。
【0026】
第1の層の基材とは反対側の面にシリコーンを主体とする第2の層を形成するには、アルケニル置換ポリジオルガノシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを主成分とする組成物を基材に塗布し、これを硬化させればよい。
塗工は、上記組成物をそのまま塗布してもよく、また、ヘキサン等の適当な溶媒で希釈して塗布してもよい。
また、塗工は、第1の層の基材とは反対側の面を部分的に被覆してもよいし、全面を被覆してもよい。
塗工パターンとしては、フィルム状、格子状、ネット状、粒状、唐草模様等の任意の形態を選択できる。
塗工後、室温環境下に放置するか、所望により、約30℃〜約150℃に加熱することにより、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応を進行させる。
【0027】
第2の層を形成するための、アルケニル置換ポリジオルガノシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを主成分とする組成物の塗工は、第1の層の形成・硬化後、間を置かずに行うことが好ましい。というのも、第2の層のシリコーン組成物は、液状の状態で塗工することで、第1の層への濡れが良く、第1と第2の層との接触面積が増えるからである。
【0028】
本発明の貼付材において、タイプAデュロメーターで測定したときの第1の層の表面硬度が第2の層の表面硬度より大きいことが必要である。
第1の層の表面硬度は、0より大きいことが好ましく、特に、15〜50の範囲が好ましい。上限は100である。
他方、第2の層の表面硬度は、第1の層の表面硬度より小さいことが必要であり、0であることが好ましい。
第2の層の表面硬度が第1の層のそれより小さいことにより、第1の層と第2の層との界面において、第2の層が過度に変形することが抑制され、変形による第2の層の界面剥離を防ぎ、更に、第1の層が、基材に強固に固定され、第1の層と基材とが剥がれ難くなる。
また、第2の層の表面硬度が上記範囲内にあることにより、貼付材が皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがない。また、剥離時に痛みや不快感が生じることがない。
【0029】
本発明の貼付材において、第1の層の粘弾性測定方法によるtanδが、第2の層のそれより大きいことが必要である。tanδは、物質が持つ弾性的性質と粘性的性質のバランスを表すもので、tanδが小さいほど、その物質は弾性的性質を多くもっていると言える。なお、本発明において、tanδは、温度:37℃、周波数:0.1〜10Hz、応力:100Paの条件で測定したものである。
第1の層のtanδは、0.01〜0.19の範囲であることが好ましい。
第2の層のtanδは、0.2〜1.0の範囲であることが好ましい。
第1の層が第2の層より小さなtanδを有することにより、第1の層と第2の層との界面において、第2の層が過度に変形することが抑制され、変形による第2の層の界面剥離を防ぎ、更に、第1の層が、基材に強固に固定され、第1の層と基材とが剥がれ難くなる。
また、第2の層のtanδが上記範囲内にあることにより、界面接着力がないシリコーンであっても皮膚の凹凸によく馴染んで広い接触面積を確保して皮膚に対する粘着力を発揮できる。
【0030】
本発明の貼付材において、第1の層は、第2の層より薄いことが好ましい。第1の層は、厚みが0.05〜20μmであることが好ましく、0.05〜10μmであることが更に好ましい。第1の層の厚みが上記範囲内にあることにより、基材と第1の層とを剥がれ難くすることができ、皮膚に追従し違和感がなく、皮膚に対して良好な透湿性をもつ貼付材を提供できる。
また、第2の層は、厚みが10〜900μmであることが好ましく、10〜500μmであることが更に好ましい。第2の層の厚みがこの範囲内にあることにより、被着体に対する良好な密着性(粘着性)、追従性が得られる。
各層は、コンマダイレクト、ナイフコーター、グラビアダイレクト等の公知の塗工方式を利用して、厚みや塗工パターンを制御することができる。
【0031】
本発明の貼付材は、600(g/m・24時間)以上の透湿度を有することが好ましい。透湿度がこの範囲内にあることにより、皮膚の生理機能が好適に保持される。透湿度は、3500(g/m・24時間)以下であることが好ましい。
透湿性は、透湿性のよい基材を選択するか、第1又は第2の層の厚みを薄くすることで、透湿性を上げることができる。
【0032】
本発明の貼付材は、0.05〜0.70(N/25mm)の粘着力を有することが好ましい。粘着力がこの範囲内にあることにより、剥離時に角層の過度な剥離や、毛の引張り等を引き起こさず、痛みや不快感を与えることがない。
また、本発明の貼付材は、7.0N/25mm以下の40%変位時の引張荷重を有することが好ましい。これにより、貼付材が皮膚の伸展に良好に追従するので、貼付中に違和感が生じない。
【0033】
本発明の貼付材の形態としては、三角形、四角形、菱形等の多角形や、円形、楕円形、又はこれらの形状を適宜組み合わせたシート状の形態や、特定の方向に連続的に製造したロール状の形態が利用できる。
また、所望により、粘着性の第2の層を保護するために、第2の層に剥離可能な保護層を設けてもよい。保護層としては、ポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のフィルムや、フッ素又はフッ素化合物等による剥離処理をしたフィルムや紙が使用できる。また、これらのフィルムにエンボス等の凹凸を設けても良い。
また、保護層を設けなくとも、連続的に製造した貼付材の第2の層を基材背面(基材の第1の層が存在する側とは反対側の面)に剥離可能に仮着し、ロール状の形態にすることもできる。
また、これまで基材の片側に、第1の層と第2の層を形成した貼付材の例について説明したが、基材の両側に第1の層と第2の層を形成する、いわゆる両面粘着タイプの貼付材にしてもよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、貼付材の各特性は、以下の方法により測定した。
【0035】
[表面硬度(A)]
第1の層又は第2の層を構成する組成物から、厚さ6.0mm以上の試験片を作成し、JIS K 6253−1997「デュロメータ硬さ試験」に準じ、タイプAデュロメーターを使用して測定する。
【0036】
[粘弾性]
第1の層又は第2の層を構成する組成物から、厚さ0.7mm、直径20mmの試験片を作成し、相対湿度20%、温度20℃の環境下で回転式レオメーター(HAAKE社製 商品名「レオストレスRS150」)を用いて、測定温度37度、せん断応力100Pa、周波数域0.1〜10Hzの条件にてオシレーション測定を実施し、測定周波数範囲で計測されたtanδの範囲を測定する。
【0037】
[粘着力]
JIS Z 0237−2000「180度引きはがし粘着力」に準じて測定する。ただし、被着体にはベークライト板を使用する。
【0038】
[透湿度]
JIS L 1099−1993 A−2「ウォーター法」に準じて測定する。なお、測定の際は、貼付材の粘着剤層を透湿カップの水側に向けて設置する。
【0039】
[40%変位時の引張荷重]
JIS Z 0237「引張強さ及び伸び」に準じて測定したときの、試験片の40%変位時の荷重(N/25mm)を測定する。
【0040】
[基材と粘着剤層の剥がれ難さ]
貼付材から、幅25mm、長さ75mmの大きさの試験片を作成する。この試験片を皮膚に貼付し、剥離する際の基材と粘着剤層との剥がれ難さを次の4段階で評価する。
◎:基材から粘着剤層が剥がれない。粘着剤層を基材から指で無理に剥がそうとすると粘着剤層が凝集破壊する。
○:貼付、剥離の通常の使用範囲では、粘着剤層は、基材から剥がれない。ただし貼付材に大きな負荷がかかる場合には、粘着剤層と基材が、剥がれることもある。
×:貼付、剥離の通常の使用範囲で、粘着剤層は、基材から浮いたり、剥がれたりする。粘着剤層を基材から指で無理に剥がそうとすると、粘着剤層と基材が、容易に剥離する。
【0041】
[実施例1]
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、補強用シリカ及び白金触媒を主体とする2成分形シリコーン(ダウコーニング社製 DOW CORNING Class VI Elastomer(C6−540))の2液を混合した。得られた混合液を、目付け70g/mのポリエステルエラストマーフィルムとポリエステル不織布との積層シートのフィルム側に塗工し、120℃にて5分間加熱して硬化させ、厚み3μmの第1の層を形成した。
次いで、ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分形シリコーン(ダウコーニング社製 DOW CORNING 7−9800)の2液を混合した。得られた混合液を、第1の層の表面に塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚み50μmの第2の層を形成し、貼付材を得た。
この貼付材について、各特性を評価した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
[実施例2]
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、補強用シリカ及び白金触媒を主体とする2成分形シリコーン(ダウコーニング社製 DOW CORNING Class VI Elastmer(C6−540))の2液を混合した。得られた混合液を、目付け21g/mのポリウレタンフィルムに塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚み7μmの第1の層を形成した。
次いで、ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分形シリコーン(ダウコーニング社製 DOW CORNING 7−9800)の2液を混合した。得られた混合液を、第1の層の表面に塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚み70μmの第2の層を形成し、貼付材を得た。
この貼付材について、各特性を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分形シリコーン(ダウコーニング社製 DOW CORNING 7−9800)の2液を混合した。得られた混合液を、目付け70g/mのポリエステルエラストマーフィルムとポリエステル不織布との積層シートのフィルム側に塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、厚み50μmの粘着剤層を形成し、粘着剤層を1層のみ有する貼付材を得た。
この貼付材について、各特性を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例2]
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分形シリコーン(ダウコーニング社製 DOW CORNING 7−9800)の2液を混合した。得られた混合液を、目付け70g/mのポリエステルエラストマーフィルムとポリエステル不織布との積層シートのフィルム側に塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、硬度が0で、厚み3μmの第1の層を形成した。
次いで、ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分形シリコーン(ダウコーニング社製 DOW CORNING 7−9800)の2液を混合した。得られた混合液を、第1の層の表面に塗工し、120℃で5分間加熱して硬化させ、硬度が0で、厚み50μmの第2の層を形成し、貼付材を得た。
この貼付材について、各特性を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
表1の結果から、以下のことが分かる。
基材上にただ1層の粘着剤層しか設けなかった比較例1及び第1層と第2層との硬度とtanδを同一にした比較例2の貼付材は、粘着剤層が、基材から浮いたり、剥がれたりした。また、粘着剤層を基材から指で無理に剥がそうとすると、粘着剤層と基材が、容易に剥離した。
これに対して本発明の実施例では、基材と粘着剤層が剥がれ難いことが分かる。
【0047】
本発明にかかる貼付材は、前記したように医療用、家庭用、又はスポーツ用として、医療材料の人体への固定や、皮膚や傷の保護や治療等に使用するのが特に好適であるが、それ以外に次のような使用もできる。
例えば、粘着剤層中に薬剤を添加し、経皮吸収製剤用粘着剤として使用することができ、特に、シリコーンを主体とした粘着剤層が脂溶性薬剤の薬剤貯留層として利用でき経済的である。
また、カルボキシメチルセルロース等の吸水性高分子等を粘着剤層に分散することで、オストミー装具のストーマ周辺部に貼付する皮膚保護剤として使用できる。
また、貼付材に多数の貫通孔を設け、粘着剤層と反対側の基材にガーゼ等の吸収体を配置することで、熱傷や褥瘡等の滲出液を伴う患部に貼付し、貫通孔から滲出液を吸い上げる処置、治療用貼付材として構成することも可能である。特に、本発明の貼付材は、基材としてヒートシール可能なプラスチックフィルムを使用できるため、このような2次加工製品の製造を容易に行うことができる。
【0048】
また、ストッキング、靴下、サポーター、義肢等の装着物と、その装着部位における滑り止めや、緩衝材として、基材の両面に粘着層を設けた両面タイプの貼付材が利用できる。また、これらの装着物自体を貼付材の基材とし、その基材に第1と第2のシリコーン層を設ける形態を採用しても良い。
その他、本発明で使用するシリコーンを主体とする粘着剤層は、耐熱性、耐寒性にすぐれているため、医療機器、光学ディスプレー等の保護テープ、振動緩衝テープ等耐久性の求められる用途にも適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材の一方の面に形成されたシリコーンを主体とする第1の層と、第1の層の基材とは反対側の面に形成されたシリコーンを主体とする粘着性の第2の層とを備え、第1の層の表面硬度が第2の層の表面硬度より大きいことを特徴とする貼付材。
【請求項2】
第2の層の表面硬度が0であることを特徴とする請求項1に記載の貼付材。
【請求項3】
基材と、基材の一方の面に形成されたシリコーンを主体とする第1の層と、第1の層の基材とは反対側の面に形成されたシリコーンを主体とする粘着性の第2の層とを備え、第1の層のtanδが第2の層のtanδより小さいことを特徴とする貼付材。
【請求項4】
第1の層のtanδが0.01〜0.19であり、第2の層のtanδが0.2〜1.0であることを特徴とする請求項3に記載の貼付材。
【請求項5】
第1の層及び第2の層のシリコーンがビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項6】
第1の層の厚みが0.05〜20μmであり、第2の層の厚みが10〜900μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項7】
透湿度が600g/m・24時間以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項8】
ポリエステル、エステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリウレタン、ウレタン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択された樹脂からなる基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる第1の層と、第1の層の基材フィルムと反対側の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる粘着性の第2の層とを備え、第1の層は、表面硬度が0より大きく、厚みが0.05〜20μmであり、第2の層は表面硬度が0で、厚みが10〜900μmであることを特徴とする貼付材。
【請求項9】
ポリエステル、エステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリウレタン、ウレタン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選択された樹脂からなる基材フィルムと、フィルム基材の一方の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる第1の層と、第1の層の基材フィルムとは反対側の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる粘着性の第2の層とを備え、第1の層は、tanδが0.01〜0.19で、厚みが0.05〜20μmであり、第2の層はtanδが0.2〜1.0で、厚みが10〜900μmであることを特徴とする貼付材。
【請求項10】
ポリエステル、エステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリウレタン、ウレタン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択された樹脂からなる基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物とシリカとを含有してなる第1の層と、第1の層の基材フィルムと反対側の面に形成されたビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物を含有してなる粘着性の第2の層と、を備えたことを特徴とする貼付材。

【公開番号】特開2006−230930(P2006−230930A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53655(P2005−53655)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】