質量分析計システム
【課題】イオンが選択的に順方向へ進むことを確実にし、質量分析計内へ効率的にイオンを渡すことができる真空インターフェースを提供すること。
【解決手段】本発明は、拡散ノズルから形成された質量分析計システム向けの真空インターフェースを説明する。この真空インターフェースは、質量分析器による分析のために、大気圧イオン化源から真空チャンバ内へイオンビームを移動するために使用することができる。
【解決手段】本発明は、拡散ノズルから形成された質量分析計システム向けの真空インターフェースを説明する。この真空インターフェースは、質量分析器による分析のために、大気圧イオン化源から真空チャンバ内へイオンビームを移動するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析計システムと共に使用する構成要素に関する。具体的には、本発明は、様々な構成で、ある場所から別の場所へイオンビームを移動する手段として働くインターフェース構成要素を提供する。インターフェースは、対象のイオンビームを、質量電荷比による分析のために、イオン源から質量分析計検出器すなわち質量分析器内へ移動するか、導くか、方向づけるか、あるいは視準するのに使用することができる。このインターフェース構成要素は、真空インターフェースとして大気圧イオン化(API)質量分析計(MS)システムに使用することができる。そのようなインターフェース構成要素は、望ましくは、イオンが通過するときイオンを加速する発散部分を有するノズルを備える。ノズルは、発散部分しかないように構成されてよく、または収束部分も有するように構成されてもよい。ラバール(de Laval)ノズルすなわち収束−発散ノズルとして既知のそのような機構は、API−MSシステムの質量分析計による分析のために、大気圧イオン化源から真空チャンバ内へイオンビームを移動するための真空インターフェースとしての用途向けに説明されている。
【背景技術】
【0002】
質量分析(MS)は、有機分子、ペプチド、蛋白質および核酸の質的同定および量的同定に用いられる有力な分析手法である。MSによって、速さ、精度および高感度がもたらされる。質量分析計の主要な構成要素は、イオン源、イオンを結合する光学部品、質量分析器および検出器である。イオン源は電子付加または電子除去のプロセスによって被分析分子を荷電粒子すなわちイオンの流れに変換する。イオンは、電界または磁界を用いて「導かれ」得る。イオンを結合する光学部品またはレンズは、質量分析器内へイオン源からのイオン流束を視準する。分析器は、イオンの質量電荷比によってイオンを分離する。磁場型、4重極型、イオントラップ型、飛行時間型、およびサイクロイド型を含むがこれらに限定されない、いくつかの異なる種類の質量分析器が当技術分野で既知である。イオンは、質量電荷比の順に分析器を出ることで、検体に関する固有のシグナチュアすなわち「フィンガープリント」である質量スペクトルを生成する。イオンは検出器に向けられ、そこで衝突してイオン電流を放電するが、イオン電流は、質量スペクトルとしてコンピュータ画面に表示される前に、信号電子装置によってカウントされ、増幅され得る。検出器は、通常は電子増倍装置である。これらの構成要素は、質量分析計システムの分析サブシステムを共に形成する。質量分析計システムの他の構成要素は、真空ポンプ、真空チャンバ、駆動電子装置、データ収集電子装置、電源および囲壁を含む。
【0003】
ある分子が、特に大気圧で液相または固相であり、高い沸点を有して低揮発性であると、これをイオン化するのが必要なことがある。したがって、大気圧で生成されるイオンは真空チャンバの外部にある。一般的なAPI技法は、電子スプレイイオン化(ESI)、ナノスプレイイオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、脱着電子スプレイイオン化(DESI)、大気圧グロー放電イオン化(APGDI)またはリアルタイム直接分析(DART)を含むがこれらには限定されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空チャンバ内にて大気圧で生成されたイオンを移動するのに、真空インターフェースが必要である。真空インターフェースの機能は、大気圧で生成されたイオンが、質量分析計による分析用の高真空システム内へ渡されることを可能にする手段を与えることである。理想的には、真空インターフェースは、分析のために、イオンが選択的に順方向へ進むことを確実にし、その結果質量分析計内へ効率的にイオンを渡すことができる。真空インターフェースは、容易には詰まらない十分なサイズのオリフィスを使用するべきであるが、同時に、質量分析計の効果的な動作のために真空を維持することを保証するように、イオンの流速と真空ポンプのポンピング速度に対してはるかに大きな関連する中性粒子の流れをマッチングさせるべきである。最終的に、理想的な真空インターフェースによって、中性粒子と比較してイオンの伝送も向上し、あるいは中性粒子に対してイオンの濃度が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらおよび他の課題は、大気圧イオン化源と、イオンビームが分析用の質量分析計内へ移動するときイオンビームの加速を可能にする働きをする発散部分を備える質量分析計システムの間の、インターフェースによって対処される。ノズルは、収束−発散ノズルすなわち「中細」ノズルとしても知られているラバールノズルによって与えられるものなどの収束区間も備えてよい。
【0006】
真空ポンプによって設定される漏れ率における限界が与えられると、真空インターフェースは、利用可能なイオンを、選択的な軸方向にイオンガイドまたは質量分析器内へ強制的に進めることによって、よりよく利用する必要がある。本発明者らは、タービンエンジンまたはロケットエンジンではそのような結果も望まれることを理解している。タービンエンジンの場合には、分子の流れが回転するインペラ上に効果的に作用することができるように、またロケットエンジンでは最大推力をもたらすように、これら両方の既知の機構では、分子を軸方向へできるだけ速く強制的に進めるという要求がある。それぞれの場合において、ラバールノズルとして既知の、収束する入力に拡散する出力が後続することに基づく改善されたタービンノズルを使用して、これを達成することができる。ラバールノズルは、初期の開発者ロバートゴッダートによって、まずロケットエンジンに適用された。本発明者らは、イオン源と質量分析器の間のインターフェース構成要素は、ある情況においてそのような形状を有効に用いることができることを理解している。
【0007】
ラバールノズルは、直観に反する圧縮性流れの挙動を利用する。非圧縮性流れ(すなわち液体の流れ)では、連続性は、流れチャンネルの断面が減少すると必ず流速が増すことを意味する。圧縮性流れ(すなわち気体の流れ)では、この増加は、マッハ1(音速)までしか維持され得ない。一旦マッハ1に到達すると、チャンネル断面が減少しても、いかなる差異もさらに生じることはない。これに対し、チャンネル断面を増大させると、流速のさらなる増加のみを得ることができる。分子を冷却することによりエントロピー一定のプロセスで速度の増加が得られ、その結果、分子の熱エネルギーは、所望の軸方向における運動エネルギーの増加と交換される。同時に圧力が低下する。
【0008】
(均等な流れに関して)噴出源に対する有効な中心線流束における予期される改善はγM2/2+3/2であると示すことができ、この式でγは比熱の比であり、Mはマッハ数である。都合よく設計されたジェット膨張システムでは、γが約1であり、一般にM>20であるので、改善は非常に顕著(すなわち数百倍)であり得る。
【0009】
本発明の一実施形態では、ラバールノズルは、真空室の内部で大気圧イオン化源と質量分析計の間のインターフェースとして働く。APIからのイオンを真空チャンバへ直接移動するラバールノズルは、質量分析計内へ所望の軸流をもたらすはずである。ノズルの収束区間の流れは、入力での簡単なオリフィスへの局所流によく似ているが、拡散区間は流れを方向づけし、かつ加速する。
【0010】
したがって、ラバールノズルによって与えられるものなど、拡散する内部経路を画定する部分を有するノズルを使用することによって、有効なイオン流束を大幅に改善することが可能である。
【0011】
特定の構成では、大気圧と真空チャンバの間の単一ステージのインターフェースとして使用されるラバールノズルは、望ましくは簡単なオリフィスと同一の開口絞りサイズまたはスロートサイズを有して設けられるべきであることが判明した。そのような機構では、ノズルの詰まりが生じる恐れがあることが理解されよう。そのような問題を回避するために、より大きなスロートを設けることができる。しかし、これには、真空を維持するために、より大きなポンプが必要になるという欠点がある。
【0012】
この問題に対し、本発明の別の実施形態では、非常に小さな開口の問題に対する解決策は2ステージまたはマルチステージのシステムを用いることである。第1ステージでは、気体の拡張は中間圧力まで実行されるのみである。中間圧力で動作するポンプは、ターボ式などの真空ポンプより同一の圧力ではるかに高いポンプ流量を得ることができるので、このときはるかに大きな入力オリフィスを使用することができる。また、中間圧力で動作するポンプは大気中でポンピングを開始することができ、これは実用的な動作のために必要なことである。分子の過剰流束は、第2の低真空チャンバに到達する前に簡単に遠ざけられる。第1の中間真空チャンバと第2の主真空チャンバの間の第2のオリフィスは、主真空チャンバ内へイオンおよび中性粒子の流れを移動する。この実施形態では、ラバールノズルまたは代わりに単に拡散するノズルが、入力オリフィスまたは第2のオリフィスのいずれかまたは両方に対して置き換えられてよい。同様に、マルチステージシステムでは、様々な圧力に維持された1つまたは複数の真空チャンバの間で、ノズルの組合せがインターフェースとして使用されてよい。使用されるこれら複数のノズル向けの特定の構成は、必要とされるインターフェースの仕様次第である。しかし、さらに拡張する必要があるとき、望ましい選択肢は拡散ノズルだけであることが理解されよう。
【0013】
別の実施形態では、分析用の質量分析器へ効率的にイオンを移動するために、ノズルの後に直流または交流のイオンガイドを使用することができる。イオンガイドは、流れの中のイオンを捕えて合焦するのと同時に中性粒子を遠ざけることにより、イオンの濃度を増加する。イオンビームは、イオンガイドの電極間の静電界または動的電界(electrodynamic field)によって合焦され得る。RFイオンガイドの場合には、変化する電界によって電極間に疑似的電位の(pseudopotential)ウェルが形成される。疑似的電位のウェルは、イオンガイドの軸の下流へイオンビームを合焦し、視準する。一定の圧力で、中性ガス分子の存在下では、平均自由行程が十分に短く中性粒子とイオンの間の衝突の頻度が比較的高いところで、イオンビームをさらに合焦するために衝突性の合焦を誘導してよい。
【0014】
あるいは、どちらかのノズルに直流バイアスを印加することによって、ノズルの近傍でのイオン濃度の強化を達成してよい。
【0015】
別の実施形態では、4重極質量分析器の前置フィルタを単に伸長することによりイオンガイドとして使用し、その結果、これがノズルの拡散区間から出るときイオンおよび中性粒子の超音速の流れを捕捉する。この実施形態では、前置フィルタのロッドがノズルを出るイオンの超音速の流れを捕捉するか阻止するように、ロッドの先端がノズルの拡散区間の内側または外側に据えられるように前置フィルタすなわちイオンガイドを配置する。次いで前置フィルタのロッド間で生成された電磁界がイオンを捕えて導く。前置フィルタすなわちイオンガイドは、中性粒子が遠ざけられ易い長さにわたって存続し、イオンガイドの疑似的電位の電磁界内のイオンを捕えて合焦することになり、その結果、イオンが質量分析器に到達するときまでにはイオンだけが残る。
【0016】
ノズルは、理想的な拡散区間を形成するのに必要な寸法および寸法公差を得ることができるプロセスを用いて製作されてよく、また、同様に収束区間を設けるのであれば、次いで、プロセスは、望ましくは理想的な収束区間およびスロート部分の寸法およびプロファイルも生成する。スロートの直径は、真空チャンバの内部に真空を維持することができるほど十分に小さい(例えばスロートの直径は約50μm)必要性があるが、イオンおよび中性粒子のビームを視準しかつ超音速に加速するのに正確な収束−拡散ノズルのプロファイルが必要である。個々のノズルが複数の領域から製作される場合、収束部分がスロート部分に先行し、スロート部分が拡散部分に先行することが望ましい。
【0017】
そのようなノズルを製作するためのいくつかの可能な技法には以下が含まれる。
・ポリマーからの適切な形状の直接光造形または急速プロトタイピング
・平滑な表面を作製するため研磨などにいくつかの後処理が後続する、ポリマーからの適切な形状の直接光造形または急速プロトタイピング
・次に型として使用することができる、ポリマーからのネガの光造形
・プラスチック、複合材料または導電性複合材料の射出成形
・電気めっきが後続するプラスチック、複合材料の射出成形
・金属からの電気鋳造(electroforming)
・理想的なノズル形状の近似を生成するための、半導体材料の1つまたは複数の側面の結晶面エッチング
・ノズルプロファイルを生成するための、半導体材料の2つの側面の深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)
・ノズルプロファイルを生成するための、金属の放電加工
・上記のプロセスのいくつかまたはすべてを使用して製作されたサブコンポーネントから組み立てたハイブリッドデバイスからの理想的なノズルプロファイルの生成
【0018】
別の機構では、ノズルは、マイクロ加工されたスロート部分と結合された、機械加工された収束区間および拡散区間に基づくハイブリッドデバイスでよい。ハイブリッドデバイスでは、質量分析器内へイオンおよび中性ガス分子をさらに加速し合焦するために、ノズルの一部(例えばスロート)を製作して、より大きな、従来の方法で機械加工された(または回転された、またはEDM機械加工された、あるいは射出成形または微細機械加工された、または電気鋳造された)拡散ノズル部分に正確な幾何学的配置で付加することができる。ハイブリッドデバイスの利点は、拡散区間が、より大きなマッハ数へ加速を助長するのに必要な、より大きな寸法および形状を有し得ることである。また、機械加工された金属部分を固定して、より廉価な微細機械加工された部品を使い捨てにすることができる。
【0019】
そのようなハイブリッド手法向けの別の構成には、半導体材料から、より狭いスロート部分をエッチングすることによってハイブリッドノズルを製作し、この微細機械加工された部品を、従来の方法で回転されるかまたはEDM製作された、より長い拡散ノズル部分に付加するものがある。この構成でも、微細機械加工された部品は、詰まったとき廃棄処分されることになる。
【0020】
これらおよび他の特徴および利点は、以下の例示的実施形態を参照しながら理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】典型的なラバールノズルの図である。
【図1B】収束部分のないラバールノズルの図である。
【図2】大気圧イオン化質量分析計向けの真空インターフェースとして使用するラバールノズルを示す図である。
【図3】大気圧イオン化質量分析計向けの真空インターフェースとして使用するラバールノズルを示す図である。
【図4A】2つの真空チャンバならびに簡単なオリフィスおよびノズルの別個の構成を有する質量分析計システムの概略図である。
【図4B】2つの真空チャンバならびに簡単なオリフィスおよびノズルの別個の構成を有する質量分析計システムの概略図である。
【図5】単一の真空チャンバ、ノズル、一般的な質量分析器および一般的なイオンガイドを有する質量分析計システムの概略図である。
【図6】単一の真空チャンバ、ノズル、4重極質量分析器および4重極イオンガイドを有する質量分析計システムの概略図である。
【図7】簡単なオリフィスがAPI源と第1のチャンバ内のイオンガイドの間を連絡する、2つの真空チャンバを有する質量分析計システムの概略図である。
【図8】図7のシステムで第1のオリフィスをノズルで置換した質量分析計システムの概略図である。
【図9A】図7のシステムで、イオンガイドがRF4重極であり、分析器が4重極質量分析計である質量分析計システムの概略図である。
【図9B】図8のシステムで、イオンガイドがRF4重極であり、分析器が4重極質量分析計である質量分析計システムの概略図である。
【図10】1つまたは複数の個々の組立体から全体的に製作するかまたは形成することができる、3つの別々の領域へ線引きされた典型的なラバールノズルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい例示的実施形態の詳細な説明が、図1から図10および表1を参照しながら提供される。
【0023】
図1Aは、収束区間、スロートおよび拡散区間を有する典型的なラバールノズルの図である。収束区間の目的は、スロートでマッハ1の流れを実現することである。拡散区間の出口の下流で、軸流は超音速に加速され、流れは主としてノズルの中心線のまわりに視準される。
【0024】
図1Bは、図1Aでは見てとれた収束区間がないノズルの例である。そのような実施形態は拡散部分をもたらし、本明細書に開示された実施形態のうち任意のものにおいて、図1Aに示された典型的な例を置換することができる。
【0025】
図2は、大気圧イオン化(API)源と質量分析器の間でイオンを移動する真空インターフェースとしてラバールノズルが使用される本発明の質量分析計システムを示す。一般的なAPI技法は、電子スプレイイオン化(ESI)、ナノスプレイイオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、脱着電子スプレイイオン化(DESI)、大気圧グロー放電イオン化(APGDI)またはリアルタイム直接分析(DART)を含むが、これらには限定されない。
【0026】
図3で、本発明の質量分析計システムのノズル306は、大気圧イオン化(API)源304と質量分析器301の間のインターフェースとして働き、真空チャンバ302の内部に配置された拡散区間の出口で十分に視準されたイオンおよび中性粒子の超音速ビーム307を生成する。真空チャンバは、真空ポンプ303によって質量分析器の動作に適当な圧力に維持される。この、合焦された超音速ビーム307が質量分析器301に渡され、ここでイオンがその質量電荷比によって分析される。質量分析器は、4重極型、イオントラップ型、飛行時間型、「軌道トラップ(orbitrap)」型、磁場セクタ型、フーリエ変換型、円形MS型または他の何らかの質量分析器でよい。
【0027】
図4Aは、2つの真空チャンバ410Aおよび411Aを有する本発明の質量分析計システムである。第1の真空チャンバ410Aは、簡単なオリフィス403Aを介してAPI源401Aと連絡する。API源401Aからのイオンおよび中性粒子402Aは、第1の真空チャンバ410Aへ進むが、このチャンバは、第1の真空ポンプすなわちポンプ406による第2のチャンバ411Aの圧力より高い中間圧力に保持される。このポンプ406は、好ましくは小さなダイヤフラムまたは回転ポンプである。イオンおよび中性粒子の流れは、404Aで中間チャンバへ噴出するように入る。これらのイオンおよび中性粒子のいくらかの部分は第1のポンプ406A内へ遠ざけられ、残りの粒子はノズル407Aを介して第2のチャンバへ移動され、最終的には十分に視準されたイオンおよび中性粒子の超音速ビーム408Aとして第2の高真空チャンバに入り、次いで質量分析器409Aによって分析される。第2の真空チャンバ411Aは、真空ポンプすなわちポンプ405Aによって第1のチャンバより低い圧力に維持される。ポンプ405Aは、好ましくはターボ分子ポンプである。
【0028】
図4Bは、2つの真空チャンバを有する図4Aの本発明の質量分析計システムであるが、第1の簡単なオリフィスが本発明のノズルで置換されている。API源401Bでイオンが生成され、ノズル403Bによって空中の中性粒子と共に移送され、加速され、かつ視準されて超音速の流れ404Bになり、中間圧力で第1の領域410Bへ入る。イオンおよび中性粒子のいくらかの部分は遠ざけられ、残りの部分は、第2のノズル407Bによって再び移送され、加速され、かつ視準されて超音速ビーム408Bになり、より低い圧力に保持された第2のチャンバ411Bに入ってそこで質量分析器409Bに渡される。残りのイオンは、質量分析器内でそれらの質量電荷比によって分析される。
【0029】
図5は、本発明の質量分析計システムの一実施形態の概略図であり、質量分析器506およびイオンガイド505を収容する単一の真空チャンバ508を特徴とする。真空チャンバ508は、ノズル503を介して大気圧イオン化源501と連絡する。502をランダムに移動するイオンおよび中性粒子は、ノズル503内へ結合される。ノズル503は、その拡散区間への出口でイオンおよび中性粒子の超音速ビーム504を生成する。このビームは視準され、イオンガイド505によって容易に阻止されるか、あるいはイオンガイド505内へ容易に受け取られ得る。イオンガイド505の機能は、イオンを捕えて電界または磁界の中へ搬送することによってイオンビームを強化する一方で、真空システム509のポンプによって中性粒子が遠ざけられるのを可能にすることである。イオンガイドを出るビーム507は、より低い中性粒子の割合およびより高いイオンの割合を有するべきである。このイオンビーム507は、分析のために質量分析器506に渡される。イオンガイド505は、電極の何らかの機構によって生成された直流または交流の電磁界でよい。様々な配列の電極または様々な配置の電極形状が、捕えかつ合焦する電磁界を生成するために用いられてよい。当技術分野で既知のイオンガイドは、4重極型、6重極型、8重極型、スタック化リング型のイオンガイドまたは一連のダイヤフラム電極を含む。
【0030】
図6は、本発明の質量分析計システムの別の実施形態であり、質量分析器607およびイオンガイド605を収容する単一の真空チャンバ608を特徴とする。真空チャンバ608は、ノズル603を介して大気圧イオン化源601と連絡する。ノズル603は、その拡散区間への出口でイオンおよび中性粒子の超音速ビーム604を生成する。このビームは視準され、したがって、イオンガイド605によって阻止されるかあるいはイオンガイド605内へ受け取られ得る。この実施形態では、イオンガイド605は4重極イオンガイドであり、質量分析器は4重極質量分析器607である。4重極イオンガイド605は、超音速でノズル603の拡散区間を出るイオンおよび中性分子の平行(collimated)ビーム604を効率的に阻止するかまたは捕捉する。中性のガス分子はイオンガイド605内のポンプ609によって徐々に遠ざけられ、イオンの濃縮ビーム606が残って4重極質量分析器607へ搬送される。
【0031】
図7は、簡単なオリフィス703を介して第1の中間圧力のチャンバ712と連絡するAPI源701から成る、2つのチャンバの質量分析計システムである。第1のチャンバはイオンガイド704を含む。第2のチャンバ711は、ノズル706を介して第1のチャンバのイオンガイド704と連絡する。API源701は、真空システムの外部でイオンを生成する。イオンと中性分子の混合物702は、簡単なオリフィス703を介して第1の真空チャンバへ移動される。これらのイオンは噴出するようにオリフィス703を出る。このイオンと中性粒子の混合物のいくらかの部分はイオンガイド704に入る。イオンガイド704は、4重極型、6重極型、8重極型、またはリング電極のスタック、あるいは環状または平面状の直流の収束電極などのRFデバイスでよい。イオンガイド704は、イオンを保持する一方で中性粒子が710へ遠ざかるのを可能にする。イオンは、イオンガイド705を出てノズル706に入り、残されている中性粒子と共にそこで加速されて第2のチャンバ内へ入る。イオンは、707でノズルを超音速で出て質量分析器708によって受け取られる。代替実施形態では、第2のノズル706に直流バイアスを印加することによりイオン強化が実現され得て、イオンは、同ノズルの収束区間へ引き込まれるか、あるいは同ノズルの表面からはね返されることにより同ノズルの中心線の下流へ集中する。
【0032】
図8は、第1のノズル812を介して第1の中間圧力チャンバ806と連絡するAPI源801、および第2のノズル813を介して第1のチャンバ806と連絡する第2の高真空チャンバ810から成る、2つのチャンバの質量分析計システムの実施形態である。第1のチャンバはイオンガイド804を含む。第2のチャンバは、ノズル813を介して第1のチャンバおよび第1のチャンバのイオンガイド804と連絡する。API源801は、真空システムの外部でイオン802を生成する。イオンと中性粒子の混合物802は、第1のノズル812を介して第1の真空チャンバ806へ移動される。これらのイオンおよび中性粒子は、ノズルを超音速で出てイオンガイド804に入る。イオンガイド804は、4重極型、6重極型、8重極型、またはリング電極のスタック、あるいは環状または平面状の直流の収束電極などのRFデバイスでよい。イオンガイドは、イオンを保持する一方で、中性粒子が807へ遠ざかるのを可能にする。イオンは、イオンガイド805を出て第2のノズル813に入り、そこで、残されている中性粒子と共に再び808で加速されて第2のチャンバ810の中へ入る。イオンは、808でノズルを超音速で出て、質量分析器809によって受け取られる。
【0033】
図9Aは、簡単なオリフィス904Aを介して第1の真空チャンバ907Aと連絡するAPI源901Aを有する、2つのチャンバの質量分析計システムの一実施形態の図である。第1のチャンバ907Aは、第2のチャンバの圧力と大気圧の間の中間の圧力に保持される。第1のチャンバ907Aは、好ましくはRFモードでイオン移送またはイオン搬送の働きをする4重極イオンガイドであるイオンガイド905Aを含む。イオンおよび中性粒子は、903Aで第1のチャンバへ噴出するように入る。この噴出する混合物のいくらかの部分は、RFイオンガイド905Aによって阻止される。真空システム908Aによって中性のガス分子が徐々に遠ざけられる一方でイオンが保持される。イオン906Aは第2のノズル909Aを通ってイオンガイド905Aを出るが、ここで加速されかつ視準されて、ビーム910Aとして第2のチャンバ912Aに入る。第2のチャンバ912Aは、真空システム913Aによってより低圧の高真空に保持される。このイオンおよび残りの中性粒子のビーム910Aは、好ましくは4重極質量分析計である質量分析器911Aによって、阻止されるか、捕捉されるか、あるいは受け取られる。イオンは、高真空チャンバ912A内の4重極質量分析計911Aによって分析される。
【0034】
図9Bは、API源901Bならびに2つの真空チャンバ911Bおよび910Bを特徴とする本発明の質量分析計システムの別の実施形態であり、イオンおよび中性粒子の902Bは、簡単なオリフィスではなく第1のノズル903Bを介して第1の中間圧力チャンバ911Bへ移送される。イオンおよび中性ガス分子は、超音速ビーム904Bとして第1のノズルの拡散区間を出る。このビーム904Bは視準されているので、中間圧力チャンバ911Bの内部の第1のノズル903Bの出口に配置されたRFイオンガイド905Bによって、阻止されるか、捕捉されるか、あるいは受け取られ得る。イオンは、捕えられ、好ましくはRF4重極であるRFイオンガイド905Bの中心線を下流へ導かれ、その一方で中性ガス分子は、真空システムによって徐々に遠ざけられる。イオンガイド905Bの出口では、中性粒子906Bに対してイオンの濃度がより高い。これらのイオンおよび残りの中性粒子は、第2のノズル907Bを介して第2の高真空チャンバ910Bへ移動される。このノズル907Bは、高真空チャンバの内部の第2のノズルの拡散区間を出る十分に視準された超音速ビーム908Bを生成する。このビーム908Bは、この実施形態では好ましくは4重極質量分析計である質量分析器909Bによって阻止されるかまたは受け取られる。イオンは、その電荷質量比によって分析され、4重極質量分析計909Bの出口に置かれたチャンネルトロンすなわち増倍検出器において質量スペクトルを生成する。
【0035】
図10は、典型的なラバールノズルすなわち収束−拡散ノズルの概略図である。この実施形態では、ノズルのプロファイルはその次に組み立てられ得る1つ以上の部分の製造を通して生成されてよい。1つの製造工程からのプロファイルに従って要求される必要な公差および寸法を得るのが不可能であるとき、このハイブリッド手法は特に有効であり得る。説明のために、図10には3つの区間が示されている。
【0036】
一実施形態では、区間10A、10Bおよび10Cは、表1の最右列および最上行の領域によって表されたプロセスと材料の組合せを用いて、別個に製作することができる。表1のそれらの領域は、列挙された材料について、好ましいすべての可能な機械加工技法を表す。材料は、複合材料(導電性ポリマーを含む)、ポリマー、ポリイミド、Su8、半導体材料、ガラス、パイレックス(登録商標)およびセラミックおよびダイヤモンドである。列挙されたプロセスは、マイクロ射出成形、エキシマレーザ加工、電気鋳造、結晶面エッチング、ウェットエッチング、LIGA、深堀り反応性イオンエッチング、反応性イオンエッチング、放電加工、光造形、ならびにレーザ加工、超音波研磨および研磨による金属線引きである。
【0037】
これらのプロセスと材料のいくつかの組合せを用いて製作された区間10A、10Bおよび10Cは、その後一緒に組み立てられてよく、API−MSで使用されるノズル真空インターフェースを形成する。
【0038】
表1の方法はノズルの製造では有益に用いることができるが、次に図10を参照しながら特に有効な方法が説明される。
【0039】
インターフェース構成要素として使用されるノズルが発散部分を含むことは、これまでの議論から理解されよう。そのようなノズルは、スロート部分および収束部分も含んでよい。そのような後者の機構では、ノズルは、典型的にはラバールノズルと称されるノズルのタイプに類似することになる。本教示に従って設けられたノズルは、他の2つの部分のうち1つまたは複数と組み合わせて発散部分を組み込むことができるので、これらを、一体成形物として総体的に形成することができる別個の領域または別個に製作してから互いに関連して取り付けて完成したインターフェース構成要素を形成することができる別個の領域と見なすことは有益である。これを説明するために、図10は、収束部分10A、スロート部分10Bおよび発散部分10Cの3つの別個の領域に線引きされたラバールノズルの機構を示す。図3の検討から、収束部分の側壁間離隔距離および発散部分の側壁間離隔距離は、スロート部分のそれよりはるかに大きいことが理解されよう。この中心領域を通過するほとんどのイオンの側壁との近さは、ほとんどのイオンの収束領域および発散領域の側壁との近さよりはるかに近いものである。
【0040】
側壁にイオンがより接近しているので、側壁の表面処理によってこの領域を通るイオンの飛行に影響を及ぼすことが可能である。本発明は、この中心領域の側壁を高度に研磨することにより、そのような影響の最小化をもたらす。中心領域は、望ましくは少なくともスロート部分10Bを含んでよく、任意選択で収束部分の後続部(すなわちスロート部分10Bの直前にある収束部分の一部)、および発散部分の先導部(すなわちスロート部分10Bの直後にある発散部分の一部)の少なくとも1つを備えてもよいことが理解されよう。高度に研磨された表面の供給を可能にするために、例えばダイヤモンドまたはセラミックなど超硬質材料からこの中心領域の側壁を設けることが望ましい。材料の選択は最終構造の所望の耐用寿命および必要とされる研磨の度合い次第であるが、これらの材料からモース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料を選択するのが望ましいことが理解されよう。
【0041】
そのような硬質材料を供給することによって、その硬質材料から製作された領域の側壁の表面処理が可能になり、高度に研磨された表面をもたらす。例示的機構では、この表面処理は、超音波研磨を用いることにより、かつ/または金属線を適当なつや出しコンパウンドを用いて中心領域を通って引き出し、回転させることにより、与えることができる。
【0042】
この中心領域の側壁が、後続の研磨向けの硬い表面を設けるような材料から製作されるなら、この領域の本体に対して別個の側壁を形成することが可能である。しかし、好ましい機構は、同一材料から全領域を製作するものである。そのような硬質材料のブロックを設けることにより、この超硬質材料で正確な内部の発散プロファイルおよびスロートを形成するために1つまたは複数のレーザを使用することができる。反対側で必要とされれば、収束プロファイルが付加されることになる。完全な内部プロファイルは、金属または類似の容易に切削可能な材料から製作された残りの部分の中へ機械加工されることになり、集合ノズル形状を生成する。
【0043】
本明細書で説明されたものは、イオン源内で生成されたイオンを、それに続く分析のために質量分析計内へ結合するためのインターフェース構成要素の例示的機構であることが理解されよう。インターフェース構成要素は、イオンが通過することができる内部経路を画定するノズルを含む。この内部経路の少なくとも一部は、互いに分かれる表面を含む。結果として、この拡散領域を通過するイオンは、超音速に迫り得る速度および/または超音速を越え得る速度まで加速される。ノズルの拡散部分の形状は望ましくは鐘形の形状である。ノズルの実際の寸法は、必要な所望の加速度およびインターフェースの入口部分と出口部分の間の圧力差にも左右されることになる。そのような設計パラメータの影響は、圧縮性流れおよび流体ダイナミクスの当業者には理解されよう。本教示の文脈中に与えられたそのようなノズルは、動作可能に少なくとも超音速への加速度を与え、ノズルを通過するイオンの視準ももたらす。ノズルの側壁の間隔は、望ましくは、流れに影響を及ぼすイオン流れの加速から結果として生じるいかなる衝撃波も最小化するように最適化される。
【0044】
本発明が様々な機構または構成に関して説明されてきたが、これらは、本発明の教示についての理解を助けるために提供されたものであり、本発明の範囲を、本明細書に説明されたいかなる特定の機構または実施形態にも限定するようには意図されていないことが理解されよう。本発明の教示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書で説明されたものに対する変更形態を作製することができる。その上、任意の図または実施形態に関して特定の整数または構成要素が記述されているところでは、本発明の教示から逸脱することなく、これらを別の図のものと(あるいは実際には本明細書に説明されていない要素によって)置換または交換することもできることが理解されよう。本発明は、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると見なされる限りにおいてのみ、限定されるものとして解釈されることになっている。
【0045】
「備える(comprises/comprising)」という語は、本明細書で用いられたときには、明示された特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を規定するものであるが、それらの1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはそれらの群の存在または付加を排除するものではない。
【0046】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析計システムと共に使用する構成要素に関する。具体的には、本発明は、様々な構成で、ある場所から別の場所へイオンビームを移動する手段として働くインターフェース構成要素を提供する。インターフェースは、対象のイオンビームを、質量電荷比による分析のために、イオン源から質量分析計検出器すなわち質量分析器内へ移動するか、導くか、方向づけるか、あるいは視準するのに使用することができる。このインターフェース構成要素は、真空インターフェースとして大気圧イオン化(API)質量分析計(MS)システムに使用することができる。そのようなインターフェース構成要素は、望ましくは、イオンが通過するときイオンを加速する発散部分を有するノズルを備える。ノズルは、発散部分しかないように構成されてよく、または収束部分も有するように構成されてもよい。ラバール(de Laval)ノズルすなわち収束−発散ノズルとして既知のそのような機構は、API−MSシステムの質量分析計による分析のために、大気圧イオン化源から真空チャンバ内へイオンビームを移動するための真空インターフェースとしての用途向けに説明されている。
【背景技術】
【0002】
質量分析(MS)は、有機分子、ペプチド、蛋白質および核酸の質的同定および量的同定に用いられる有力な分析手法である。MSによって、速さ、精度および高感度がもたらされる。質量分析計の主要な構成要素は、イオン源、イオンを結合する光学部品、質量分析器および検出器である。イオン源は電子付加または電子除去のプロセスによって被分析分子を荷電粒子すなわちイオンの流れに変換する。イオンは、電界または磁界を用いて「導かれ」得る。イオンを結合する光学部品またはレンズは、質量分析器内へイオン源からのイオン流束を視準する。分析器は、イオンの質量電荷比によってイオンを分離する。磁場型、4重極型、イオントラップ型、飛行時間型、およびサイクロイド型を含むがこれらに限定されない、いくつかの異なる種類の質量分析器が当技術分野で既知である。イオンは、質量電荷比の順に分析器を出ることで、検体に関する固有のシグナチュアすなわち「フィンガープリント」である質量スペクトルを生成する。イオンは検出器に向けられ、そこで衝突してイオン電流を放電するが、イオン電流は、質量スペクトルとしてコンピュータ画面に表示される前に、信号電子装置によってカウントされ、増幅され得る。検出器は、通常は電子増倍装置である。これらの構成要素は、質量分析計システムの分析サブシステムを共に形成する。質量分析計システムの他の構成要素は、真空ポンプ、真空チャンバ、駆動電子装置、データ収集電子装置、電源および囲壁を含む。
【0003】
ある分子が、特に大気圧で液相または固相であり、高い沸点を有して低揮発性であると、これをイオン化するのが必要なことがある。したがって、大気圧で生成されるイオンは真空チャンバの外部にある。一般的なAPI技法は、電子スプレイイオン化(ESI)、ナノスプレイイオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、脱着電子スプレイイオン化(DESI)、大気圧グロー放電イオン化(APGDI)またはリアルタイム直接分析(DART)を含むがこれらには限定されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空チャンバ内にて大気圧で生成されたイオンを移動するのに、真空インターフェースが必要である。真空インターフェースの機能は、大気圧で生成されたイオンが、質量分析計による分析用の高真空システム内へ渡されることを可能にする手段を与えることである。理想的には、真空インターフェースは、分析のために、イオンが選択的に順方向へ進むことを確実にし、その結果質量分析計内へ効率的にイオンを渡すことができる。真空インターフェースは、容易には詰まらない十分なサイズのオリフィスを使用するべきであるが、同時に、質量分析計の効果的な動作のために真空を維持することを保証するように、イオンの流速と真空ポンプのポンピング速度に対してはるかに大きな関連する中性粒子の流れをマッチングさせるべきである。最終的に、理想的な真空インターフェースによって、中性粒子と比較してイオンの伝送も向上し、あるいは中性粒子に対してイオンの濃度が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらおよび他の課題は、大気圧イオン化源と、イオンビームが分析用の質量分析計内へ移動するときイオンビームの加速を可能にする働きをする発散部分を備える質量分析計システムの間の、インターフェースによって対処される。ノズルは、収束−発散ノズルすなわち「中細」ノズルとしても知られているラバールノズルによって与えられるものなどの収束区間も備えてよい。
【0006】
真空ポンプによって設定される漏れ率における限界が与えられると、真空インターフェースは、利用可能なイオンを、選択的な軸方向にイオンガイドまたは質量分析器内へ強制的に進めることによって、よりよく利用する必要がある。本発明者らは、タービンエンジンまたはロケットエンジンではそのような結果も望まれることを理解している。タービンエンジンの場合には、分子の流れが回転するインペラ上に効果的に作用することができるように、またロケットエンジンでは最大推力をもたらすように、これら両方の既知の機構では、分子を軸方向へできるだけ速く強制的に進めるという要求がある。それぞれの場合において、ラバールノズルとして既知の、収束する入力に拡散する出力が後続することに基づく改善されたタービンノズルを使用して、これを達成することができる。ラバールノズルは、初期の開発者ロバートゴッダートによって、まずロケットエンジンに適用された。本発明者らは、イオン源と質量分析器の間のインターフェース構成要素は、ある情況においてそのような形状を有効に用いることができることを理解している。
【0007】
ラバールノズルは、直観に反する圧縮性流れの挙動を利用する。非圧縮性流れ(すなわち液体の流れ)では、連続性は、流れチャンネルの断面が減少すると必ず流速が増すことを意味する。圧縮性流れ(すなわち気体の流れ)では、この増加は、マッハ1(音速)までしか維持され得ない。一旦マッハ1に到達すると、チャンネル断面が減少しても、いかなる差異もさらに生じることはない。これに対し、チャンネル断面を増大させると、流速のさらなる増加のみを得ることができる。分子を冷却することによりエントロピー一定のプロセスで速度の増加が得られ、その結果、分子の熱エネルギーは、所望の軸方向における運動エネルギーの増加と交換される。同時に圧力が低下する。
【0008】
(均等な流れに関して)噴出源に対する有効な中心線流束における予期される改善はγM2/2+3/2であると示すことができ、この式でγは比熱の比であり、Mはマッハ数である。都合よく設計されたジェット膨張システムでは、γが約1であり、一般にM>20であるので、改善は非常に顕著(すなわち数百倍)であり得る。
【0009】
本発明の一実施形態では、ラバールノズルは、真空室の内部で大気圧イオン化源と質量分析計の間のインターフェースとして働く。APIからのイオンを真空チャンバへ直接移動するラバールノズルは、質量分析計内へ所望の軸流をもたらすはずである。ノズルの収束区間の流れは、入力での簡単なオリフィスへの局所流によく似ているが、拡散区間は流れを方向づけし、かつ加速する。
【0010】
したがって、ラバールノズルによって与えられるものなど、拡散する内部経路を画定する部分を有するノズルを使用することによって、有効なイオン流束を大幅に改善することが可能である。
【0011】
特定の構成では、大気圧と真空チャンバの間の単一ステージのインターフェースとして使用されるラバールノズルは、望ましくは簡単なオリフィスと同一の開口絞りサイズまたはスロートサイズを有して設けられるべきであることが判明した。そのような機構では、ノズルの詰まりが生じる恐れがあることが理解されよう。そのような問題を回避するために、より大きなスロートを設けることができる。しかし、これには、真空を維持するために、より大きなポンプが必要になるという欠点がある。
【0012】
この問題に対し、本発明の別の実施形態では、非常に小さな開口の問題に対する解決策は2ステージまたはマルチステージのシステムを用いることである。第1ステージでは、気体の拡張は中間圧力まで実行されるのみである。中間圧力で動作するポンプは、ターボ式などの真空ポンプより同一の圧力ではるかに高いポンプ流量を得ることができるので、このときはるかに大きな入力オリフィスを使用することができる。また、中間圧力で動作するポンプは大気中でポンピングを開始することができ、これは実用的な動作のために必要なことである。分子の過剰流束は、第2の低真空チャンバに到達する前に簡単に遠ざけられる。第1の中間真空チャンバと第2の主真空チャンバの間の第2のオリフィスは、主真空チャンバ内へイオンおよび中性粒子の流れを移動する。この実施形態では、ラバールノズルまたは代わりに単に拡散するノズルが、入力オリフィスまたは第2のオリフィスのいずれかまたは両方に対して置き換えられてよい。同様に、マルチステージシステムでは、様々な圧力に維持された1つまたは複数の真空チャンバの間で、ノズルの組合せがインターフェースとして使用されてよい。使用されるこれら複数のノズル向けの特定の構成は、必要とされるインターフェースの仕様次第である。しかし、さらに拡張する必要があるとき、望ましい選択肢は拡散ノズルだけであることが理解されよう。
【0013】
別の実施形態では、分析用の質量分析器へ効率的にイオンを移動するために、ノズルの後に直流または交流のイオンガイドを使用することができる。イオンガイドは、流れの中のイオンを捕えて合焦するのと同時に中性粒子を遠ざけることにより、イオンの濃度を増加する。イオンビームは、イオンガイドの電極間の静電界または動的電界(electrodynamic field)によって合焦され得る。RFイオンガイドの場合には、変化する電界によって電極間に疑似的電位の(pseudopotential)ウェルが形成される。疑似的電位のウェルは、イオンガイドの軸の下流へイオンビームを合焦し、視準する。一定の圧力で、中性ガス分子の存在下では、平均自由行程が十分に短く中性粒子とイオンの間の衝突の頻度が比較的高いところで、イオンビームをさらに合焦するために衝突性の合焦を誘導してよい。
【0014】
あるいは、どちらかのノズルに直流バイアスを印加することによって、ノズルの近傍でのイオン濃度の強化を達成してよい。
【0015】
別の実施形態では、4重極質量分析器の前置フィルタを単に伸長することによりイオンガイドとして使用し、その結果、これがノズルの拡散区間から出るときイオンおよび中性粒子の超音速の流れを捕捉する。この実施形態では、前置フィルタのロッドがノズルを出るイオンの超音速の流れを捕捉するか阻止するように、ロッドの先端がノズルの拡散区間の内側または外側に据えられるように前置フィルタすなわちイオンガイドを配置する。次いで前置フィルタのロッド間で生成された電磁界がイオンを捕えて導く。前置フィルタすなわちイオンガイドは、中性粒子が遠ざけられ易い長さにわたって存続し、イオンガイドの疑似的電位の電磁界内のイオンを捕えて合焦することになり、その結果、イオンが質量分析器に到達するときまでにはイオンだけが残る。
【0016】
ノズルは、理想的な拡散区間を形成するのに必要な寸法および寸法公差を得ることができるプロセスを用いて製作されてよく、また、同様に収束区間を設けるのであれば、次いで、プロセスは、望ましくは理想的な収束区間およびスロート部分の寸法およびプロファイルも生成する。スロートの直径は、真空チャンバの内部に真空を維持することができるほど十分に小さい(例えばスロートの直径は約50μm)必要性があるが、イオンおよび中性粒子のビームを視準しかつ超音速に加速するのに正確な収束−拡散ノズルのプロファイルが必要である。個々のノズルが複数の領域から製作される場合、収束部分がスロート部分に先行し、スロート部分が拡散部分に先行することが望ましい。
【0017】
そのようなノズルを製作するためのいくつかの可能な技法には以下が含まれる。
・ポリマーからの適切な形状の直接光造形または急速プロトタイピング
・平滑な表面を作製するため研磨などにいくつかの後処理が後続する、ポリマーからの適切な形状の直接光造形または急速プロトタイピング
・次に型として使用することができる、ポリマーからのネガの光造形
・プラスチック、複合材料または導電性複合材料の射出成形
・電気めっきが後続するプラスチック、複合材料の射出成形
・金属からの電気鋳造(electroforming)
・理想的なノズル形状の近似を生成するための、半導体材料の1つまたは複数の側面の結晶面エッチング
・ノズルプロファイルを生成するための、半導体材料の2つの側面の深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)
・ノズルプロファイルを生成するための、金属の放電加工
・上記のプロセスのいくつかまたはすべてを使用して製作されたサブコンポーネントから組み立てたハイブリッドデバイスからの理想的なノズルプロファイルの生成
【0018】
別の機構では、ノズルは、マイクロ加工されたスロート部分と結合された、機械加工された収束区間および拡散区間に基づくハイブリッドデバイスでよい。ハイブリッドデバイスでは、質量分析器内へイオンおよび中性ガス分子をさらに加速し合焦するために、ノズルの一部(例えばスロート)を製作して、より大きな、従来の方法で機械加工された(または回転された、またはEDM機械加工された、あるいは射出成形または微細機械加工された、または電気鋳造された)拡散ノズル部分に正確な幾何学的配置で付加することができる。ハイブリッドデバイスの利点は、拡散区間が、より大きなマッハ数へ加速を助長するのに必要な、より大きな寸法および形状を有し得ることである。また、機械加工された金属部分を固定して、より廉価な微細機械加工された部品を使い捨てにすることができる。
【0019】
そのようなハイブリッド手法向けの別の構成には、半導体材料から、より狭いスロート部分をエッチングすることによってハイブリッドノズルを製作し、この微細機械加工された部品を、従来の方法で回転されるかまたはEDM製作された、より長い拡散ノズル部分に付加するものがある。この構成でも、微細機械加工された部品は、詰まったとき廃棄処分されることになる。
【0020】
これらおよび他の特徴および利点は、以下の例示的実施形態を参照しながら理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】典型的なラバールノズルの図である。
【図1B】収束部分のないラバールノズルの図である。
【図2】大気圧イオン化質量分析計向けの真空インターフェースとして使用するラバールノズルを示す図である。
【図3】大気圧イオン化質量分析計向けの真空インターフェースとして使用するラバールノズルを示す図である。
【図4A】2つの真空チャンバならびに簡単なオリフィスおよびノズルの別個の構成を有する質量分析計システムの概略図である。
【図4B】2つの真空チャンバならびに簡単なオリフィスおよびノズルの別個の構成を有する質量分析計システムの概略図である。
【図5】単一の真空チャンバ、ノズル、一般的な質量分析器および一般的なイオンガイドを有する質量分析計システムの概略図である。
【図6】単一の真空チャンバ、ノズル、4重極質量分析器および4重極イオンガイドを有する質量分析計システムの概略図である。
【図7】簡単なオリフィスがAPI源と第1のチャンバ内のイオンガイドの間を連絡する、2つの真空チャンバを有する質量分析計システムの概略図である。
【図8】図7のシステムで第1のオリフィスをノズルで置換した質量分析計システムの概略図である。
【図9A】図7のシステムで、イオンガイドがRF4重極であり、分析器が4重極質量分析計である質量分析計システムの概略図である。
【図9B】図8のシステムで、イオンガイドがRF4重極であり、分析器が4重極質量分析計である質量分析計システムの概略図である。
【図10】1つまたは複数の個々の組立体から全体的に製作するかまたは形成することができる、3つの別々の領域へ線引きされた典型的なラバールノズルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい例示的実施形態の詳細な説明が、図1から図10および表1を参照しながら提供される。
【0023】
図1Aは、収束区間、スロートおよび拡散区間を有する典型的なラバールノズルの図である。収束区間の目的は、スロートでマッハ1の流れを実現することである。拡散区間の出口の下流で、軸流は超音速に加速され、流れは主としてノズルの中心線のまわりに視準される。
【0024】
図1Bは、図1Aでは見てとれた収束区間がないノズルの例である。そのような実施形態は拡散部分をもたらし、本明細書に開示された実施形態のうち任意のものにおいて、図1Aに示された典型的な例を置換することができる。
【0025】
図2は、大気圧イオン化(API)源と質量分析器の間でイオンを移動する真空インターフェースとしてラバールノズルが使用される本発明の質量分析計システムを示す。一般的なAPI技法は、電子スプレイイオン化(ESI)、ナノスプレイイオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、脱着電子スプレイイオン化(DESI)、大気圧グロー放電イオン化(APGDI)またはリアルタイム直接分析(DART)を含むが、これらには限定されない。
【0026】
図3で、本発明の質量分析計システムのノズル306は、大気圧イオン化(API)源304と質量分析器301の間のインターフェースとして働き、真空チャンバ302の内部に配置された拡散区間の出口で十分に視準されたイオンおよび中性粒子の超音速ビーム307を生成する。真空チャンバは、真空ポンプ303によって質量分析器の動作に適当な圧力に維持される。この、合焦された超音速ビーム307が質量分析器301に渡され、ここでイオンがその質量電荷比によって分析される。質量分析器は、4重極型、イオントラップ型、飛行時間型、「軌道トラップ(orbitrap)」型、磁場セクタ型、フーリエ変換型、円形MS型または他の何らかの質量分析器でよい。
【0027】
図4Aは、2つの真空チャンバ410Aおよび411Aを有する本発明の質量分析計システムである。第1の真空チャンバ410Aは、簡単なオリフィス403Aを介してAPI源401Aと連絡する。API源401Aからのイオンおよび中性粒子402Aは、第1の真空チャンバ410Aへ進むが、このチャンバは、第1の真空ポンプすなわちポンプ406による第2のチャンバ411Aの圧力より高い中間圧力に保持される。このポンプ406は、好ましくは小さなダイヤフラムまたは回転ポンプである。イオンおよび中性粒子の流れは、404Aで中間チャンバへ噴出するように入る。これらのイオンおよび中性粒子のいくらかの部分は第1のポンプ406A内へ遠ざけられ、残りの粒子はノズル407Aを介して第2のチャンバへ移動され、最終的には十分に視準されたイオンおよび中性粒子の超音速ビーム408Aとして第2の高真空チャンバに入り、次いで質量分析器409Aによって分析される。第2の真空チャンバ411Aは、真空ポンプすなわちポンプ405Aによって第1のチャンバより低い圧力に維持される。ポンプ405Aは、好ましくはターボ分子ポンプである。
【0028】
図4Bは、2つの真空チャンバを有する図4Aの本発明の質量分析計システムであるが、第1の簡単なオリフィスが本発明のノズルで置換されている。API源401Bでイオンが生成され、ノズル403Bによって空中の中性粒子と共に移送され、加速され、かつ視準されて超音速の流れ404Bになり、中間圧力で第1の領域410Bへ入る。イオンおよび中性粒子のいくらかの部分は遠ざけられ、残りの部分は、第2のノズル407Bによって再び移送され、加速され、かつ視準されて超音速ビーム408Bになり、より低い圧力に保持された第2のチャンバ411Bに入ってそこで質量分析器409Bに渡される。残りのイオンは、質量分析器内でそれらの質量電荷比によって分析される。
【0029】
図5は、本発明の質量分析計システムの一実施形態の概略図であり、質量分析器506およびイオンガイド505を収容する単一の真空チャンバ508を特徴とする。真空チャンバ508は、ノズル503を介して大気圧イオン化源501と連絡する。502をランダムに移動するイオンおよび中性粒子は、ノズル503内へ結合される。ノズル503は、その拡散区間への出口でイオンおよび中性粒子の超音速ビーム504を生成する。このビームは視準され、イオンガイド505によって容易に阻止されるか、あるいはイオンガイド505内へ容易に受け取られ得る。イオンガイド505の機能は、イオンを捕えて電界または磁界の中へ搬送することによってイオンビームを強化する一方で、真空システム509のポンプによって中性粒子が遠ざけられるのを可能にすることである。イオンガイドを出るビーム507は、より低い中性粒子の割合およびより高いイオンの割合を有するべきである。このイオンビーム507は、分析のために質量分析器506に渡される。イオンガイド505は、電極の何らかの機構によって生成された直流または交流の電磁界でよい。様々な配列の電極または様々な配置の電極形状が、捕えかつ合焦する電磁界を生成するために用いられてよい。当技術分野で既知のイオンガイドは、4重極型、6重極型、8重極型、スタック化リング型のイオンガイドまたは一連のダイヤフラム電極を含む。
【0030】
図6は、本発明の質量分析計システムの別の実施形態であり、質量分析器607およびイオンガイド605を収容する単一の真空チャンバ608を特徴とする。真空チャンバ608は、ノズル603を介して大気圧イオン化源601と連絡する。ノズル603は、その拡散区間への出口でイオンおよび中性粒子の超音速ビーム604を生成する。このビームは視準され、したがって、イオンガイド605によって阻止されるかあるいはイオンガイド605内へ受け取られ得る。この実施形態では、イオンガイド605は4重極イオンガイドであり、質量分析器は4重極質量分析器607である。4重極イオンガイド605は、超音速でノズル603の拡散区間を出るイオンおよび中性分子の平行(collimated)ビーム604を効率的に阻止するかまたは捕捉する。中性のガス分子はイオンガイド605内のポンプ609によって徐々に遠ざけられ、イオンの濃縮ビーム606が残って4重極質量分析器607へ搬送される。
【0031】
図7は、簡単なオリフィス703を介して第1の中間圧力のチャンバ712と連絡するAPI源701から成る、2つのチャンバの質量分析計システムである。第1のチャンバはイオンガイド704を含む。第2のチャンバ711は、ノズル706を介して第1のチャンバのイオンガイド704と連絡する。API源701は、真空システムの外部でイオンを生成する。イオンと中性分子の混合物702は、簡単なオリフィス703を介して第1の真空チャンバへ移動される。これらのイオンは噴出するようにオリフィス703を出る。このイオンと中性粒子の混合物のいくらかの部分はイオンガイド704に入る。イオンガイド704は、4重極型、6重極型、8重極型、またはリング電極のスタック、あるいは環状または平面状の直流の収束電極などのRFデバイスでよい。イオンガイド704は、イオンを保持する一方で中性粒子が710へ遠ざかるのを可能にする。イオンは、イオンガイド705を出てノズル706に入り、残されている中性粒子と共にそこで加速されて第2のチャンバ内へ入る。イオンは、707でノズルを超音速で出て質量分析器708によって受け取られる。代替実施形態では、第2のノズル706に直流バイアスを印加することによりイオン強化が実現され得て、イオンは、同ノズルの収束区間へ引き込まれるか、あるいは同ノズルの表面からはね返されることにより同ノズルの中心線の下流へ集中する。
【0032】
図8は、第1のノズル812を介して第1の中間圧力チャンバ806と連絡するAPI源801、および第2のノズル813を介して第1のチャンバ806と連絡する第2の高真空チャンバ810から成る、2つのチャンバの質量分析計システムの実施形態である。第1のチャンバはイオンガイド804を含む。第2のチャンバは、ノズル813を介して第1のチャンバおよび第1のチャンバのイオンガイド804と連絡する。API源801は、真空システムの外部でイオン802を生成する。イオンと中性粒子の混合物802は、第1のノズル812を介して第1の真空チャンバ806へ移動される。これらのイオンおよび中性粒子は、ノズルを超音速で出てイオンガイド804に入る。イオンガイド804は、4重極型、6重極型、8重極型、またはリング電極のスタック、あるいは環状または平面状の直流の収束電極などのRFデバイスでよい。イオンガイドは、イオンを保持する一方で、中性粒子が807へ遠ざかるのを可能にする。イオンは、イオンガイド805を出て第2のノズル813に入り、そこで、残されている中性粒子と共に再び808で加速されて第2のチャンバ810の中へ入る。イオンは、808でノズルを超音速で出て、質量分析器809によって受け取られる。
【0033】
図9Aは、簡単なオリフィス904Aを介して第1の真空チャンバ907Aと連絡するAPI源901Aを有する、2つのチャンバの質量分析計システムの一実施形態の図である。第1のチャンバ907Aは、第2のチャンバの圧力と大気圧の間の中間の圧力に保持される。第1のチャンバ907Aは、好ましくはRFモードでイオン移送またはイオン搬送の働きをする4重極イオンガイドであるイオンガイド905Aを含む。イオンおよび中性粒子は、903Aで第1のチャンバへ噴出するように入る。この噴出する混合物のいくらかの部分は、RFイオンガイド905Aによって阻止される。真空システム908Aによって中性のガス分子が徐々に遠ざけられる一方でイオンが保持される。イオン906Aは第2のノズル909Aを通ってイオンガイド905Aを出るが、ここで加速されかつ視準されて、ビーム910Aとして第2のチャンバ912Aに入る。第2のチャンバ912Aは、真空システム913Aによってより低圧の高真空に保持される。このイオンおよび残りの中性粒子のビーム910Aは、好ましくは4重極質量分析計である質量分析器911Aによって、阻止されるか、捕捉されるか、あるいは受け取られる。イオンは、高真空チャンバ912A内の4重極質量分析計911Aによって分析される。
【0034】
図9Bは、API源901Bならびに2つの真空チャンバ911Bおよび910Bを特徴とする本発明の質量分析計システムの別の実施形態であり、イオンおよび中性粒子の902Bは、簡単なオリフィスではなく第1のノズル903Bを介して第1の中間圧力チャンバ911Bへ移送される。イオンおよび中性ガス分子は、超音速ビーム904Bとして第1のノズルの拡散区間を出る。このビーム904Bは視準されているので、中間圧力チャンバ911Bの内部の第1のノズル903Bの出口に配置されたRFイオンガイド905Bによって、阻止されるか、捕捉されるか、あるいは受け取られ得る。イオンは、捕えられ、好ましくはRF4重極であるRFイオンガイド905Bの中心線を下流へ導かれ、その一方で中性ガス分子は、真空システムによって徐々に遠ざけられる。イオンガイド905Bの出口では、中性粒子906Bに対してイオンの濃度がより高い。これらのイオンおよび残りの中性粒子は、第2のノズル907Bを介して第2の高真空チャンバ910Bへ移動される。このノズル907Bは、高真空チャンバの内部の第2のノズルの拡散区間を出る十分に視準された超音速ビーム908Bを生成する。このビーム908Bは、この実施形態では好ましくは4重極質量分析計である質量分析器909Bによって阻止されるかまたは受け取られる。イオンは、その電荷質量比によって分析され、4重極質量分析計909Bの出口に置かれたチャンネルトロンすなわち増倍検出器において質量スペクトルを生成する。
【0035】
図10は、典型的なラバールノズルすなわち収束−拡散ノズルの概略図である。この実施形態では、ノズルのプロファイルはその次に組み立てられ得る1つ以上の部分の製造を通して生成されてよい。1つの製造工程からのプロファイルに従って要求される必要な公差および寸法を得るのが不可能であるとき、このハイブリッド手法は特に有効であり得る。説明のために、図10には3つの区間が示されている。
【0036】
一実施形態では、区間10A、10Bおよび10Cは、表1の最右列および最上行の領域によって表されたプロセスと材料の組合せを用いて、別個に製作することができる。表1のそれらの領域は、列挙された材料について、好ましいすべての可能な機械加工技法を表す。材料は、複合材料(導電性ポリマーを含む)、ポリマー、ポリイミド、Su8、半導体材料、ガラス、パイレックス(登録商標)およびセラミックおよびダイヤモンドである。列挙されたプロセスは、マイクロ射出成形、エキシマレーザ加工、電気鋳造、結晶面エッチング、ウェットエッチング、LIGA、深堀り反応性イオンエッチング、反応性イオンエッチング、放電加工、光造形、ならびにレーザ加工、超音波研磨および研磨による金属線引きである。
【0037】
これらのプロセスと材料のいくつかの組合せを用いて製作された区間10A、10Bおよび10Cは、その後一緒に組み立てられてよく、API−MSで使用されるノズル真空インターフェースを形成する。
【0038】
表1の方法はノズルの製造では有益に用いることができるが、次に図10を参照しながら特に有効な方法が説明される。
【0039】
インターフェース構成要素として使用されるノズルが発散部分を含むことは、これまでの議論から理解されよう。そのようなノズルは、スロート部分および収束部分も含んでよい。そのような後者の機構では、ノズルは、典型的にはラバールノズルと称されるノズルのタイプに類似することになる。本教示に従って設けられたノズルは、他の2つの部分のうち1つまたは複数と組み合わせて発散部分を組み込むことができるので、これらを、一体成形物として総体的に形成することができる別個の領域または別個に製作してから互いに関連して取り付けて完成したインターフェース構成要素を形成することができる別個の領域と見なすことは有益である。これを説明するために、図10は、収束部分10A、スロート部分10Bおよび発散部分10Cの3つの別個の領域に線引きされたラバールノズルの機構を示す。図3の検討から、収束部分の側壁間離隔距離および発散部分の側壁間離隔距離は、スロート部分のそれよりはるかに大きいことが理解されよう。この中心領域を通過するほとんどのイオンの側壁との近さは、ほとんどのイオンの収束領域および発散領域の側壁との近さよりはるかに近いものである。
【0040】
側壁にイオンがより接近しているので、側壁の表面処理によってこの領域を通るイオンの飛行に影響を及ぼすことが可能である。本発明は、この中心領域の側壁を高度に研磨することにより、そのような影響の最小化をもたらす。中心領域は、望ましくは少なくともスロート部分10Bを含んでよく、任意選択で収束部分の後続部(すなわちスロート部分10Bの直前にある収束部分の一部)、および発散部分の先導部(すなわちスロート部分10Bの直後にある発散部分の一部)の少なくとも1つを備えてもよいことが理解されよう。高度に研磨された表面の供給を可能にするために、例えばダイヤモンドまたはセラミックなど超硬質材料からこの中心領域の側壁を設けることが望ましい。材料の選択は最終構造の所望の耐用寿命および必要とされる研磨の度合い次第であるが、これらの材料からモース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料を選択するのが望ましいことが理解されよう。
【0041】
そのような硬質材料を供給することによって、その硬質材料から製作された領域の側壁の表面処理が可能になり、高度に研磨された表面をもたらす。例示的機構では、この表面処理は、超音波研磨を用いることにより、かつ/または金属線を適当なつや出しコンパウンドを用いて中心領域を通って引き出し、回転させることにより、与えることができる。
【0042】
この中心領域の側壁が、後続の研磨向けの硬い表面を設けるような材料から製作されるなら、この領域の本体に対して別個の側壁を形成することが可能である。しかし、好ましい機構は、同一材料から全領域を製作するものである。そのような硬質材料のブロックを設けることにより、この超硬質材料で正確な内部の発散プロファイルおよびスロートを形成するために1つまたは複数のレーザを使用することができる。反対側で必要とされれば、収束プロファイルが付加されることになる。完全な内部プロファイルは、金属または類似の容易に切削可能な材料から製作された残りの部分の中へ機械加工されることになり、集合ノズル形状を生成する。
【0043】
本明細書で説明されたものは、イオン源内で生成されたイオンを、それに続く分析のために質量分析計内へ結合するためのインターフェース構成要素の例示的機構であることが理解されよう。インターフェース構成要素は、イオンが通過することができる内部経路を画定するノズルを含む。この内部経路の少なくとも一部は、互いに分かれる表面を含む。結果として、この拡散領域を通過するイオンは、超音速に迫り得る速度および/または超音速を越え得る速度まで加速される。ノズルの拡散部分の形状は望ましくは鐘形の形状である。ノズルの実際の寸法は、必要な所望の加速度およびインターフェースの入口部分と出口部分の間の圧力差にも左右されることになる。そのような設計パラメータの影響は、圧縮性流れおよび流体ダイナミクスの当業者には理解されよう。本教示の文脈中に与えられたそのようなノズルは、動作可能に少なくとも超音速への加速度を与え、ノズルを通過するイオンの視準ももたらす。ノズルの側壁の間隔は、望ましくは、流れに影響を及ぼすイオン流れの加速から結果として生じるいかなる衝撃波も最小化するように最適化される。
【0044】
本発明が様々な機構または構成に関して説明されてきたが、これらは、本発明の教示についての理解を助けるために提供されたものであり、本発明の範囲を、本明細書に説明されたいかなる特定の機構または実施形態にも限定するようには意図されていないことが理解されよう。本発明の教示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書で説明されたものに対する変更形態を作製することができる。その上、任意の図または実施形態に関して特定の整数または構成要素が記述されているところでは、本発明の教示から逸脱することなく、これらを別の図のものと(あるいは実際には本明細書に説明されていない要素によって)置換または交換することもできることが理解されよう。本発明は、添付の特許請求の範囲に照らして必要であると見なされる限りにおいてのみ、限定されるものとして解釈されることになっている。
【0045】
「備える(comprises/comprising)」という語は、本明細書で用いられたときには、明示された特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を規定するものであるが、それらの1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはそれらの群の存在または付加を排除するものではない。
【0046】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源を質量分析器に結合するためのインターフェース構成要素であって、前記イオン源内で生成されたイオンを、動作可能に超音速へ加速し、かつ前記質量分析器内への導入の前に視準する拡散ノズルを備えることを特徴とするインターフェース構成要素。
【請求項2】
前記ノズルが、前記イオン源から前記質量分析器の中へ前記イオンが通過することができる内部経路を画定し、前記ノズルの拡散部分内で、前記内部経路を画定する表面が、前記内部経路を通過するイオンが加速されるように互いに分かれることを特徴とする請求項1に記載のインターフェース構成要素。
【請求項3】
前記ノズルが収束部分を含み、前記収束部分内で前記内部経路を画定する表面が互いに収束することを特徴とする請求項2に記載のインターフェース構成要素。
【請求項4】
前記収束部分がスロート部分によって前記拡散部分から分離されることを特徴とする請求項3に記載のインターフェース構成要素。
【請求項5】
前記収束部分が前記拡散部分の前に設けられることを特徴とする請求項3に記載のインターフェース構成要素。
【請求項6】
前記ノズルが、イオンが動作可能に超音速で前記インターフェース構成要素を出るように構成された収束−拡散ノズルであることを特徴とする請求項4に記載のインターフェース構成要素。
【請求項7】
前記ノズルの少なくとも一部が、モース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から製作された側壁を有することを特徴とする請求項1に記載のインターフェース構成要素。
【請求項8】
前記ノズルが前記拡散部分の前に設けられたスロート部分を備え、前記スロート部分の側壁がモース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から製作されることを特徴とする請求項7に記載のインターフェース構成要素。
【請求項9】
前記材料がダイヤモンドまたはセラミックから選択されることを特徴とする請求項7に記載のインターフェース構成要素。
【請求項10】
前記硬質材料から製作された前記側壁が研磨されることを特徴とする請求項7に記載のインターフェース構成要素。
【請求項11】
イオン源および質量分析器を備える質量分析計システムであって、前記イオン源と質量分析器がインターフェース構成要素を介して互いに結合され、前記インターフェース構成要素が、
a.前記イオン源内で生成されたイオンを、前記質量分析器内への導入の前に動作可能に加速する拡散ノズルを備えることを特徴とする質量分析計システム。
【請求項12】
前記ノズルが、前記イオン源から質量分析器内へ前記イオンが通過することができる内部経路を画定し、前記ノズルの拡散部分内で、前記内部経路を画定する表面が、これらを通過するイオンが加速されるように互いに分かれることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ノズルが収束部分を含み、前記収束部分内で前記内部経路を画定する表面が互いに収束することを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記収束部分がスロート部分によって前記拡散部分から分離されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記収束部分が前記拡散部分の前に設けられることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記ノズルが、イオンが動作可能に超音速で前記インターフェース構成要素を出るように構成された収束−拡散ノズルであることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記ノズルの少なくとも一部が、モース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から製作された側壁を有することを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記ノズルが前記拡散部分の前に設けられたスロート部分を備え、前記スロート部分の側壁がモース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から製作されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記材料がダイヤモンドまたはセラミックから選択されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記硬質材料から製作された前記側壁が研磨されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記イオン源が大気圧イオン源であることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項22】
真空チャンバをさらに備え、前記質量分析器が前記真空チャンバ内に設けられることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項23】
前記拡散ノズルが前記真空チャンバ内で終結することを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
第1および第2の真空チャンバを含むマルチステージシステムとして構成されたシステムであって、前記第1の真空チャンバ内の圧力が前記第2の真空チャンバ内の圧力より高く、前記第1の真空チャンバが前記イオン源と流体連絡であり、前記質量分析器が前記第2の真空チャンバ内に設けられることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の真空チャンバを出て前記第2の真空チャンバ内に入るイオンが加速されるように、前記ノズルが前記第1の真空チャンバと前記第2の真空チャンバの間に設けられることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記イオン源と前記第1の真空チャンバの間に設けられた第2のノズルを備えることを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1および第2の真空チャンバの少なくとも1つの中に設けられたイオンガイドを備えることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記インターフェース構成要素を出るイオンビームが前記質量分析器に入る前に前記イオンガイド内へ向けられるように、前記ノズルと前記質量分析器の間に設けられたイオンガイドを備えることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記イオンガイドが第1の真空チャンバ内に設けられ、前記質量分析器が第2の真空チャンバ内に設けられることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記イオンガイドが交流または直流の構成で動作可能であることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記イオンガイドが4重極イオンガイドであることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
前記インターフェース構成要素に対して直流バイアス電圧が動作可能に結合されることを特徴とする請求項11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
大気中のイオン源を質量分析器に結合するためのインターフェース構成要素であって、前記イオン源内で生成されたイオンを、前記質量分析器内への導入の前に動作可能に超音速へ加速する拡散ノズルを含むことを特徴とするインターフェース構成要素。
【請求項34】
大気中のイオン源を質量分析器に結合するためのインターフェース構成要素を製造する方法であって、
a.スロートおよび拡散部分を有するノズルを画定するステップと、
b.モース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から少なくとも前記スロートの側壁を製作するステップと、
c.前記スロートの前記側壁を研磨するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
イオン源を質量分析器に結合するためのインターフェース構成要素であって、前記イオン源内で生成されたイオンを、動作可能に超音速へ加速し、かつ前記質量分析器内への導入の前に視準する拡散ノズルを備えることを特徴とするインターフェース構成要素。
【請求項2】
前記ノズルが、前記イオン源から前記質量分析器の中へ前記イオンが通過することができる内部経路を画定し、前記ノズルの拡散部分内で、前記内部経路を画定する表面が、前記内部経路を通過するイオンが加速されるように互いに分かれることを特徴とする請求項1に記載のインターフェース構成要素。
【請求項3】
前記ノズルが収束部分を含み、前記収束部分内で前記内部経路を画定する表面が互いに収束することを特徴とする請求項2に記載のインターフェース構成要素。
【請求項4】
前記収束部分がスロート部分によって前記拡散部分から分離されることを特徴とする請求項3に記載のインターフェース構成要素。
【請求項5】
前記収束部分が前記拡散部分の前に設けられることを特徴とする請求項3に記載のインターフェース構成要素。
【請求項6】
前記ノズルが、イオンが動作可能に超音速で前記インターフェース構成要素を出るように構成された収束−拡散ノズルであることを特徴とする請求項4に記載のインターフェース構成要素。
【請求項7】
前記ノズルの少なくとも一部が、モース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から製作された側壁を有することを特徴とする請求項1に記載のインターフェース構成要素。
【請求項8】
前記ノズルが前記拡散部分の前に設けられたスロート部分を備え、前記スロート部分の側壁がモース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から製作されることを特徴とする請求項7に記載のインターフェース構成要素。
【請求項9】
前記材料がダイヤモンドまたはセラミックから選択されることを特徴とする請求項7に記載のインターフェース構成要素。
【請求項10】
前記硬質材料から製作された前記側壁が研磨されることを特徴とする請求項7に記載のインターフェース構成要素。
【請求項11】
イオン源および質量分析器を備える質量分析計システムであって、前記イオン源と質量分析器がインターフェース構成要素を介して互いに結合され、前記インターフェース構成要素が、
a.前記イオン源内で生成されたイオンを、前記質量分析器内への導入の前に動作可能に加速する拡散ノズルを備えることを特徴とする質量分析計システム。
【請求項12】
前記ノズルが、前記イオン源から質量分析器内へ前記イオンが通過することができる内部経路を画定し、前記ノズルの拡散部分内で、前記内部経路を画定する表面が、これらを通過するイオンが加速されるように互いに分かれることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ノズルが収束部分を含み、前記収束部分内で前記内部経路を画定する表面が互いに収束することを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記収束部分がスロート部分によって前記拡散部分から分離されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記収束部分が前記拡散部分の前に設けられることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記ノズルが、イオンが動作可能に超音速で前記インターフェース構成要素を出るように構成された収束−拡散ノズルであることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記ノズルの少なくとも一部が、モース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から製作された側壁を有することを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記ノズルが前記拡散部分の前に設けられたスロート部分を備え、前記スロート部分の側壁がモース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から製作されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記材料がダイヤモンドまたはセラミックから選択されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記硬質材料から製作された前記側壁が研磨されることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記イオン源が大気圧イオン源であることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項22】
真空チャンバをさらに備え、前記質量分析器が前記真空チャンバ内に設けられることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項23】
前記拡散ノズルが前記真空チャンバ内で終結することを特徴とする請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
第1および第2の真空チャンバを含むマルチステージシステムとして構成されたシステムであって、前記第1の真空チャンバ内の圧力が前記第2の真空チャンバ内の圧力より高く、前記第1の真空チャンバが前記イオン源と流体連絡であり、前記質量分析器が前記第2の真空チャンバ内に設けられることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の真空チャンバを出て前記第2の真空チャンバ内に入るイオンが加速されるように、前記ノズルが前記第1の真空チャンバと前記第2の真空チャンバの間に設けられることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記イオン源と前記第1の真空チャンバの間に設けられた第2のノズルを備えることを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1および第2の真空チャンバの少なくとも1つの中に設けられたイオンガイドを備えることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項28】
前記インターフェース構成要素を出るイオンビームが前記質量分析器に入る前に前記イオンガイド内へ向けられるように、前記ノズルと前記質量分析器の間に設けられたイオンガイドを備えることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記イオンガイドが第1の真空チャンバ内に設けられ、前記質量分析器が第2の真空チャンバ内に設けられることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記イオンガイドが交流または直流の構成で動作可能であることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記イオンガイドが4重極イオンガイドであることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
前記インターフェース構成要素に対して直流バイアス電圧が動作可能に結合されることを特徴とする請求項11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
大気中のイオン源を質量分析器に結合するためのインターフェース構成要素であって、前記イオン源内で生成されたイオンを、前記質量分析器内への導入の前に動作可能に超音速へ加速する拡散ノズルを含むことを特徴とするインターフェース構成要素。
【請求項34】
大気中のイオン源を質量分析器に結合するためのインターフェース構成要素を製造する方法であって、
a.スロートおよび拡散部分を有するノズルを画定するステップと、
b.モース尺度で少なくとも8の硬度値を有する材料から少なくとも前記スロートの側壁を製作するステップと、
c.前記スロートの前記側壁を研磨するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公開番号】特開2009−245933(P2009−245933A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−39756(P2009−39756)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(505037981)マイクロサイク システムズ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39756(P2009−39756)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(505037981)マイクロサイク システムズ リミテッド (8)
【Fターム(参考)】
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