説明

赤外線吸収性化合物および該化合物からなる微粒子

【課題】近赤外領域に吸収を有し、400〜700nmの領域に吸収を有さず不可視性に優れた、高堅牢な近赤外線吸収性化合物および微粒子を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物からなる微粒子。


(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近赤外領域に吸収を有し、かつ可視域に吸収を有さない赤外線吸収化合物および該化合物からなる微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外吸収色素は、プラズマディスプレイパネル(PDP)やCCD用の赤外線カットフィルムや熱線遮蔽フィルムとしての光学フィルタ用途や、追記型光ディスク(CD−R)やフラッシュ溶融定着材料としての光熱変換材料用途、セキュリティーインクや、不可視バーコードインクとしての情報表示材料として用いられており、特に近赤外色素に特長的な性能として、近赤外領域に強い吸収を有することに併せて、目に見えないと言う不可視性への高い要求がある。また、同時に色素全般に要求される性能として高い堅牢性が要求されている。
【0003】
400nm〜700nmの領域に吸収をほとんど持たない不可視性に優れる色素としては、第一にシアニンメチン色素やそのJ会合体が挙げられるが、長いメチン共役鎖は、フレキシブルであるため異性化に伴う吸収形の変化や熱や酸素、求核剤との反応による分解が起こりやすく、堅牢性が低い。
剛直な骨格をもち高堅牢な近赤外吸収色素としては、日本触媒(株)から上市されているバナジルナフタロシアニン色素やBASF(株)から上市されているクオータリレン色素があるが、バナジルフタロシアニンは不可視性が不十分である。また、クオータリレンは溶液など分子分散状態では良好な不可視性を有するものの、濃度を上げると会合により可視域に吸収を生じ、不可視性が失われ、使用形態が限定される。
不可視性に優れ、赤外領域を広くカバーする色素としては、日本化薬(株)等から上市されているジインモニウム色素があるが、還元されやすく、堅牢性は不十分であり、使用形態が限定されてしまう。
このように、現在、不可視性と堅牢性を両立する近赤外色素は上市されておらず、これら性能を両立する近赤外色素の開発が望まれている。
【0004】
また、新規赤外色素としてピロロピロール系色素が知られている(例えば非特許文献1を参照)。非特許文献1には、赤外蛍光色素を目指し検討した結果が記載されており、ホウ素錯体化し、分子の剛直性を挙げることで、高い蛍光量子収率を達成することが記載されている。また、この骨格群に特徴的な蛍光色素を応用した例として有機エレクトロルミネッセンス素子への応用が知られている(例えば特許文献1〜3を参照)。
一般に、強い蛍光を発するには、蛍光色素を濃度消光を起こさない希薄状態で用い、ホスト材料を共蒸着を行い分子分散状態で使用される。また、このような蛍光色素は、一般に耐光性が低いことが知られている。
【0005】
【特許文献1】特許3704748号公報
【特許文献2】特開2003−027049号号公報
【特許文献3】国際公開WO2003/048268号パンフレット
【非特許文献1】「アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション・オブ・イングリッシュ(Angewante Chemie International Edition of English)」,第46巻,第3750〜3753ページ(2007年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、近赤外領域に吸収を有し、400〜700nmの領域に吸収を有さない不可視性に優れた高堅牢な近赤外吸収色素および色素微粒子を提供することであり、それを用いた組成物、フィルタを提供することである。また、それをピロロピロール系色素で達成するためには、堅牢性(特に光堅牢性)や、不可視性の改善が課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
<1>下記一般式(1)で表される化合物からなる微粒子。
【0008】
【化1】

(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
<2>前記R3がヘテロ環である、<1>項に記載の微粒子。
<3><1>又は<2>項に記載の微粒子であって、波長700nm以上1000nm以下の赤外線を吸収する、赤外線吸収性微粒子。
<4><1>〜<3>のいずれか1項に記載の微粒子を含む組成物。
<5><1>〜<3>のいずれか1項に記載の微粒子を含む塗布物。
<6>下記一般式(2)で表される赤外線吸収性化合物。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Z1a及びZ1bは各々独立にアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。R5a及びR5bは各々独立に炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表し、R5a又はR5bとZ1a又はZ1bとが結合して縮合環を形成しても良い。R22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、R23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
<7>下記一般式(3)で表される赤外線吸収性化合物。
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R31a及びR31bは各々独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R32はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。R6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数4〜10のヘテロアリール基を表し、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、又は炭素数3〜10のヘテロアリール環である。R8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数3〜10のヘテロアリール基を表す。Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表し、R及びR’は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表す。)
<8>下記一般式(4)で表される赤外線吸収性化合物。
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R41a及びR41bは互いに異なる基を表し、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R42はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。Z2は−C=N−と共に含窒素ヘテロ5又は6員環を形成する原子団を表し、含窒素ヘテロ環としてはピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環、又はこれら縮環の複合体を表す。R44は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、Z2が形成する含窒素ヘテロ環と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【発明の効果】
【0015】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物からなる微粒子は、優れた赤外吸収特性、不可視性、堅牢性をすべて満足する性能を有する。特に、前記一般式(1)におけるR3がヘテロ環である微粒子は良好な性能を示す。また、該微粒子は700nm以上、1000nm以下の赤外線を選択的に吸収することができる。
また、本発明の微粒子を含む組成物および塗布物(インクやフィルタ)は、優れた赤外吸収能を有し、優れた不可視性と優れた耐久性とを両立する。
また、本発明の前記一般式(2)で表される赤外線吸収性化合物は、新規化合物であり、特に優れた不可視性を有する。また、本発明の前記一般式(3)で表される赤外線吸収性化合物も、新規化合物であり、高い堅牢性および高い不可視性を両立する。また、本発明の前記一般式(4)で表される赤外線吸収性化合物も、新規化合物であり、高い堅牢性、高い不可視性、優れた分散性、および高い有機溶媒溶解性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の微粒子は、下記一般式(1)で表される化合物からなる。本発明の微粒子は、優れた赤外吸収特性、不可視性、堅牢性をすべて満足する性能を有する。
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【0019】
一般式(1)中、R1a又はR1bで表されるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30(本発明では、「A〜B」は、「A以上B以下」の意味で用いる。)、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
また、R1a又はR1bで表されるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、o−メチルフェニル、p−メチルフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。
1a又はR1bで表されるヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロアリール基である。ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基としては、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ナフトチアゾリル、ベンズオキサゾリル、m−カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。
一般式(1)中のR1a及びR1bは、互いに同一でも異なってもよい。
【0020】
2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。置換基としては例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0021】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、
【0022】
芳香族ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0023】
2又はR3で表される電子吸引性基としては、好ましくはHammettのσp値(シグマパラ値)が0.2以上の電子吸引性基を表し、例えばシアノ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、ヘテロ環基などが挙げられる。これら電子吸引性基はさらに置換されていても良い。
【0024】
ハメットの置換基定数σ値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページなどに詳しい。本発明におけるハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基とは電子求引性基であることを示している。σp値として好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.35以上である。
【0025】
具体例としては、シアノ基(0.66)、カルボキシル基(-COOH:0.45)、アルコキシカルボニル基(-COOMe:0.45)、アリールオキシカルボニル基(-COOPh:0.44)、カルバモイル基(-CONH2:0.36)、アルキルカルボニル基(-COMe:0.50)、アリールカルボニル基(-COPh:0.43)、アルキルスルホニル基(-SO2Me:0.72)、またはアリールスルホニル基(-SO2Ph:0.68)などが挙げられる。本明細書において、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、括弧内の値は代表的な置換基のσp値をChem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページから抜粋したものである。
【0026】
さらに、R2及びR3が結合して環を形成する場合は、5ないし7員環(好ましくは5ないし6員環)の環を形成し、形成される環としては通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオンなど。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オンなど。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オンなど。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドールなど。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸または2−チオバルビツル酸およびその誘導体など。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2−ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニンおよびその誘導体など。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオンなど。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイドなど。
(i)2−チオ−2,5−チオゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオンなど。
(j)2,4−チオゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオンなど。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノンなど。
(l)4−チアゾリジノン核:例えば2−エチルメルカプト−5−チアゾリン−4−オン、2−アルキルフェニルアミノ−5−チアゾリン−4−オンなど。
(m)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオンなど。
(n)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオンなど。
(o)イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オンなど。
(p)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオンなど。
(q)ベンゾチオフェン−3−オン核:例えばベンゾチオフェン−3−オン、オキソベンゾチオフェンー3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オンなど。
(r)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニル−1−インダノン、3−メチル−1−インダノン、3,3−ジフェニル−1−インダノン、3,3−ジメチル−1−インダノンなど。
【0027】
なお、環を形成する場合のR2及びR3のσp値を規定することができないが、本発明においてはR2及びR3にそれぞれ環の部分構造が置換しているとみなして、環形成の場合のσp値を定義することとする。例えば1,3−インダンジオン環を形成している場合、R2及びR3にそれぞれベンゾイル基が置換したものとして考える。
【0028】
2及びR3が結合して形成される環としては、好ましくは1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン−3−オン核、またはインダノン核であり、更に好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェン−3−オン核、またはインダノン核である。
【0029】
3はヘテロ環であることが特に好ましい。
一般式(1)中の2つのR2は、互いに同一でも異なってもよく、また、2つのR3は、互いに同一でも異なってもよい。
【0030】
4で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、R1a及びR1bで説明した置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4で表される置換ホウ素の置換基は、R2及びR3について上述した置換基と同義であり、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。また、R4で表される金属原子は、好ましくは遷移金属、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、又はスズであり、より好ましくはアルミニウム、亜鉛、スズ、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、イリジウム、又は白金であり、特に好ましくはアルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、又は白金である。
4は、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。
一般式(1)中の2つのR4は、互いに同一でも異なってもよい。
【0031】
前記一般式(1)で表される化合物は、好ましくは下記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される赤外線吸収性化合物である。
【0032】
【化6】

【0033】
(式中、Z1a及びZ1bは各々独立にアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。R5a及びR5bは各々独立に炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表し、R5a又はR5bとZ1a又はZ1bとが結合して縮合環を形成しても良い。R22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、R23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、R31a及びR31bは各々独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R32はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。R6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数4〜10のヘテロアリール基を表し、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、又は炭素数3〜10のヘテロアリール環である。R8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数3〜10のヘテロアリール基を表す。Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表し、R及びR’は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表す。)
【0036】
【化8】

【0037】
(式中、R41a及びR41bは互いに異なる基を表し、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R42はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。Z2は−C=N−と共に含窒素ヘテロ5又は6員環を形成する原子団を表し、含窒素ヘテロ環としてはピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環、又はこれら縮環の複合体を表す。R44は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、Z2が形成する含窒素ヘテロ環と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【0038】
前記一般式(2)について説明する。
前記一般式(2)中、Z1a及びZ1bは各々独立にアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。形成されるアリール環、ヘテロアリール環は、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基として説明したアリール基、ヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。Z1a及びZ1bは同一であることが好ましい。
5a及びR5bは各々独立に炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表す。具体例には、前記一般式(1)におけるR2及びR3で説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R5a及びR5bは同一であることが好ましい。
5a又はR5bとZ1a又はZ1bとが結合し縮合環を形成しても良く、該縮合環としてはナフチル環、キノリン環などが挙げられる。
1a又はZ1bが形成するアリール環もしくはヘテロアリール環にR5a又はR5bで表される基を導入することで、不可視性を大きく向上することができる。
【0039】
22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3で説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4は前記一般式(1)におけるR4と同義であり、好ましい範囲も同様である。R4はR23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。
【0040】
前記一般式(2)で表される化合物は更に置換基を有しても良く、該置換基としてはR2及びR3の置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0041】
前記一般式(2)における好ましい組合せとしては、Z1a及びZ1bが各々独立にベンゼン環もしくはピリジン環を形成し、R5a及びR5bが各々独立にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基であり、R22及びR23が各々独立にヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はR22及びR23が結合した環状酸性核であり、R4が水素原子、置換ホウ素、遷移金属原子、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、スズである場合である。特に好ましい組合せとしては、Z1a及びZ1bが共にベンゼン環を形成し、R5a及びR5bが共にアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基であり、R22及びR23が各々独立に含窒素ヘテロ環基とシアノ基もしくはアルコキシカルボニル基との組合せ、又はR22及びR23が結合した環状酸性核であり、R4が水素原子、置換ホウ素、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、白金である場合である。
【0042】
前記一般式(3)について説明する。
一般式(3)中、R31a及びR31bは各々独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR1a及びR1bで説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。R31a及びR31bは同一であることが好ましい。
32はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0043】
6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数4〜10のヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、炭素数3〜10のヘテロアリール環であり、好ましい例としてはベンゼン環やナフタレン環、ビリジン環などが挙げられる。
6及びR7が置換した5員含窒素ヘテロ環を導入し、更にホウ素錯体とすることで、高い堅牢性、高い不可視性を両立する赤外線吸収色素を実現することができる。
【0044】
8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数3〜10のヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2及びR3の置換基の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表す。R及びR’は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表し、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基である。
【0045】
前記一般式(3)における好ましい組合せとしては、R31a及びR31bが各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、ベンゼン環もしくはピリジン環であり、R32がシアノ基、アルコキシカルボニル基であり、R6及びR7が結合してベンゼン環もしくはピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環を形成し、R8及びR9が各々独立に炭素原子1〜6のアルキル基、フェニル基、ナフチル基であり、Xが酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−であり、R及びR’が各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基である場合である。特に好ましい組合せとしては、R31a及びR31bが共に炭素数1〜10のアルキル基またはベンゼン環であり、R32がシアノ基であり、R6及びR7が結合してベンゼン環もしくはピリジン環であり、R8及びR9が各々独立に炭素原子1〜6のアルキル基、フェニル基、ナフチル基であり、Xが酸素、硫黄である場合である。
【0046】
前記一般式(4)について説明する。
一般式(4)中、R41a及びR41bは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表し、具体的には、前記一般式(1)におけるR1a及びR1bで説明した例と同義であり、好ましい範囲も同様である。ただし、R41a及びR41bは互いに異なる基を表す。
42はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基であり、具体的には、前記一般式(1)におけるR2の例と同義であり、好ましい範囲も同様である。
2は−C=N−と共に含窒素ヘテロ5又は6員環を形成する原子団を表し、含窒素ヘテロ環としてはピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環、又はこれら縮環の複合体を表す。
44は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子または置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、Z2が形成する含窒素ヘテロ環と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。
互いに異なるR41a及びR41bで表される基を導入し、Z2が−C=N−と共に形成する含窒素ヘテロ5又は6員環を導入することで、高い堅牢性、高い不可視性、優れた分散性、および高い有機溶媒溶解性を付与することができる。
【0047】
前記一般式(4)における好ましい組合せとしては、R41a及びR41bが各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、ベンゼン環もしくはピリジン環であり、R42がシアノ基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルコキシカルボニル基であり、Z2が−C=N−と共にチアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、又はこれらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環を形成し、R44が水素原子、置換ホウ素、遷移金属原子、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、又はスズである場合である。特に好ましい組合せとしては、R41a及びR41bが各々独立に炭素数1〜10のアルキル基またはベンゼン環であり、R42がシアノ基であり、Z2が−C=N−と共にチアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、又はこれらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環を形成し、R44が水素原子、置換ホウ素(置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、ベンゼン環、ピリジン環、又はチオフェン環)、アルミニウム、亜鉛、バナジウム、鉄、銅、パラジウム、イリジウム、又は白金である場合である。
【0048】
以下に、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物(色素化合物)の具体例を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
次に、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物の合成法について説明する。
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、該当するジケトピロロピロール化合物に、活性メチレン化合物を縮合させ、場合によっては、さらに、ホウ素や金属を反応させることで合成することができる。ジケトピロロピロール化合物は、「ハイパフォーマンス・ピグメンツ(High Performance Pigments)」,Wiley−VCH,2002年,160〜163ページに記載の方法で合成でき、より具体的な例としては米国特許第5,969,154号明細書や特開平9−323993号公報に記載の方法で合成できる。また、ジケトピロロピロール化合物と活性メチレン化合物との縮合反応やその後のホウ素化については、先述の非特許文献1に従って合成できる。ホウ素化試薬はJ.Med.Chem.第3巻356〜360頁(1976年)を参考にして合成することができる。また、例えばブロモカテコールボランは東京化成工業社より購入して使用することができる。
【0060】
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、特に限定されないが、好ましくは700〜1050nm、より好ましくは700〜1000nmに吸収極大を有する。前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、波長700nm以上1000nm以下の赤外線を選択的に吸収することが好ましい。
また、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、モル吸光係数εは特に限定されないが、好ましくは50,000〜300,000であり、より好ましくは100,000〜250,000である。
【0061】
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、IR色素として好ましく用いることができる。不可視であるため化合物の色は透明であることが好ましいが、ごくわずかに緑色、灰色に着色していてもよい。
【0062】
本発明の微粒子は、前記一般式(1)で表される化合物からなる。
本発明の微粒子の粒径は、好ましくは1〜1000nmであり、より好ましく5〜600nmであり、特に好ましくは20〜200nmである。微粒子の粒径は、動的光散乱法を用いたナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)などを用いて測定することができる。
以下に、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物を用いた微粒子の調製方法について説明する。
【0063】
〔微粒子の調製方法〕
上記した化合物の合成方法によって、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は粗結晶として得られるが、本発明の微粒子として用いる場合、後処理を行うことが好ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の摩砕処理、溶媒加熱処理などによる微粒子制御工程、樹脂、界面活性剤および分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0064】
前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物は、後処理として溶媒加熱処理を行っても良い。溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの後処理によって顔料の平均粒子径を0.01μm〜1μmに調整することが好ましい。
【0065】
〔組成物〕
本発明の微粒子を含有する組成物は、水系であっても非水系であってもよい。本発明の水系微粒子組成物において微粒子を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。
前記親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の他価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0066】
さらに、本発明の水系微粒子組成物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては、水に溶解する水溶解性の樹脂,水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、またはそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には、アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0067】
(水に分散する水分散性の樹脂)
本発明において用いられる水分散性の樹脂は、主成分が水である分散媒(本明細書では溶媒と呼ぶこともある)に疎水性の合成樹脂が分散された分散物である。
溶媒中に含まれる水の含量は、30%〜100%が好ましく、50%〜100%がより好ましい。水以外の溶媒としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランやブチルセロソルブなど、水に溶解性を有する溶剤が好ましく用いられる。
合成樹脂(ポリマー)としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等、ポリアミド樹脂、フッ素系樹脂など種々のポリマーを使用することができる。また、水溶性の樹脂としてはゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0068】
アクリル樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーである。
【0069】
上記ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホリマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくは、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。上記ビニル樹脂は、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより架橋可能なポリマーとする。
【0070】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0071】
上記ポリエステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記ポリエステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。もちろん、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加してもよい。
【0072】
なお、ポリマーの水性分散物の分散状態としては、ポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持つもの等、いずれでもよい。なお、ポリマーの水性分散物(または単に水分散物と呼ぶ)については、「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))等に記載されている。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限はなく、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0073】
なお、水分散物としては下記のような市販ポリマーを用いてもよい(いずれも商品名)。スーパフレックス830、460、870、420、420NS(第一工業製薬製ポリウレタン)、ボンディック1370NS、1320NS、ハイドランHw140SF、WLS201、WLS202、WLS213(大日本インキ化学工業製ポリウレタン)、オレスターUD350、UD500、UD600(三井化学製ポリウレタン)、ネオレッツR972、R966、R9660(楠本化成製ポリウレタン)、ファインテックスEs650、Es2200(大日本インキ化学工業製ポリエステル)、バイロナールMD1100、MD1400、MD1480(東洋紡製ポリエステル)、ジュリマーET325、ET410、AT−613、SEK301(日本純薬製アクリル)、ボンコートAN117、AN226(大日本インキ化学工業製アクリル)、ラックスターDS616、DS807(大日本インキ化学工業製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX110、LX206、LX426、LX433(日本ゼオン製スチレン−ブタジエンゴム)、ニッポールLX513、LX1551、LX550、LX1571(日本ゼオン製アクリロニトリル−ブタジエンゴム)。
【0074】
本発明の組成物のバインダとして用いられるポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
【0075】
近赤外線吸収層のバインダとして用いられるポリマーの分子量には特に制限はないが、通常、重量平均分子量で3000〜1000000程度のものが好ましい。重量平均分子量が3000未満のものは塗布層の強度が不十分になる場合があり、1000000を超えるものは塗布面状が悪い場合がある。
【0076】
さらに、微粒子の分散および画像の品質を向上させるため、界面活性剤および分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性または非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0077】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0078】
非水系微粒子組成物は、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0079】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0080】
本発明の組成物は、前記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物と水系または非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。使用できる分散装置としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アトライター、超音波分散機、ディスパー等が挙げられる。
【0081】
本発明において、微粒子の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、微粒子の体積平均粒子径とは、微粒子そのものの粒子径、又は微粒子に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、微粒子の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)を用いることができる。その測定は、微粒子分散体3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行う。なお、即提示に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には微粒子の密度を用いる。
【0082】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上250nm以下であり、更に好ましくは30nm以上230nm以下である。顔料分散物中の粒子の数平均粒子径が10nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0083】
本発明の組成物に含まれる微粒子の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。濃度が1質量%に満たないと、微粒子組成物を単独で用いるときに十分な色濃度が得られない場合がある。濃度が35質量%を超えると、分散安定性が低下する場合がある。
【0084】
本発明の微粒子の用途としては、画像、特に不可視画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、インクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料である。
【0085】
また、CCDなどの固体撮像素子やPDP等のディスプレイで用いられる赤外カットフィルタ、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
また、分子状態で扱い場合には、上記用途に加え、人体透過性に優れる近赤外領域に吸収をもつことから、診断用マーカーや、光線力学療法にも適応できる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とは質量部を表す。
【0087】
実施例1
(例示化合物(D−1)の調製)
下記スキームに従って、例示化合物(D−1)を調製した。
【0088】
【化19】

【0089】
まず、ジケトピロロピロール化合物(DPP)を、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゾニトリルを原料にして、米国特許第5,969,154号明細書に記載された方法に従って、合成した。
【0090】
ジケトピロロピロール化合物(DPP)3グラム(1等量)とピリジンアセトニトリル1.6グラム(2.5等量)とをトルエン60mL中で攪拌し、オキシ塩化リン6.5グラム(8等量)を加えて4時間加熱還流した。室温に冷却してクロロホルム50mL及び水20mLを加え、さらに30分攪拌した。分液操作により有機層を取り出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒クロロホルム)で精製し、さらにクロロホルム/アセトニトリル溶媒を用いて再結晶し、目的化合物(D−1)を3グラム、収率77%で得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.3−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.95(d,4H),7.0(t,2H),7.1(d,4H),7.6(m,4H),7.7(d,4H),8.45(d,2H)
【0091】
実施例2
(例示化合物(D−25)の調製)
前記スキームに従い例示化合物(D−25)を調製した。
例示化合物(D−1)0.75グラム(1等量)とクロロジフェニルホウ素0.5グラム(2.5等量)とをオルトジクロロベンゼン20mL中で3時間加熱還流した。室温に冷却して水10mLを加えた後、分液操作により有機層を取り出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒)で精製し、さらにクロロホルム/メタノール溶媒を用いて再結晶し、目的化合物(D−25)を0.58グラム、収率53%で得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.3−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.75(d,4H),6.35(d,4H),6.65(d,4H),6.7(t,2H),7.1−7.2(m,20H),7.35(d,2H),7.45(t,2H),7.8(d,2H)
【0092】
実施例3
(例示化合物(D−30)の調製)
前記スキームに従い例示化合物(D−30)を調製した。
例示化合物(D−1)1グラム(1等量)と三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.5グラム(2.5等量)とをオルトジクロロベンゼン20mL中で1時間加熱還流した後、ジイソプロピルメチルアミン0.75グラム(5等量)を加えさらに一時間加熱還流した。室温に冷却して水10mLを加えた後、分液操作により有機層を取り出し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒)で精製し、さらにクロロホルム/メタノール溶媒を用いて再結晶し、目的化合物(D−30)を0.8グラム、収率70%で得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.3−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.95(d,4H),7.05(d,4H),7.6(d,4H),7.7(t,2H),7.85(t,2H),8.35(d,2H)
【0093】
実施例4
以下の例示化合物を、実施例1における原料を代えたこと以外は実施例1と同様にして調製した。構造同定した1H−NMRを示す。
【0094】
例示化合物(D−2)
1H−NMR(CDCl3):0.9(t,6H),1.25−1.45(m,16H),1.7(m,4H),2.75(t,4H),7.0(t,2H),7.4(d,4H),7.6(d,4H),7.65(m,4H),8.45(d,2H)
【0095】
例示化合物(D−3)
1H−NMR(CDCl3):0.9(t,6H),1.2−1.6(m,36H),1.7(m,4H),3.15(m,4H),7.0(t,2H),7.4−7.5(m,4H),7.55−7.7(m,4H),8.5(d,2H)
【0096】
例示化合物(D−4)
1H−NMR(CDCl3):2.5(s,6H),7.0(m,2H),7.35−7.45(m,4H),7.5(t,4H),7.5(m,4H),8.4(d,2H)
【0097】
例示化合物(D−9)
1H−NMR(CDCl3):2.5(s,6H),7.3(m,2H),7.4−7.5(m,6H),7.55(m,2H),7.65(d,2H),7.8(m,4H)
【0098】
例示化合物(D−10)
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.35−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.85(d,4H),6.45(s,8H),7.0(d,4H),7.15(m12H),7.2(m,2H),7.25(m,4H+4H),7.5(m,2H)
【0099】
例示化合物(D−15)
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.1(m,12H),1.4−1.6(m,16H),1.85(m,2H),4.0(d,4H),7.15(d,4H),7.4(m4H),7.6(t,2H),7.75(d,4H),7.8−7.9(m,6H)
【0100】
例示化合物(D−17)
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.35−1.6(m,16H),1.8(m,2H),3.95(d,4H),7.1(d,4H),7.4−7.5(m,4H),7.7(d,4H),7.75(d,2H),8.0(d,2H)
【0101】
例示化合物(D−21)
1H−NMR(CDCl3):δ1.0(m,12H),1.4−1.55(m,16H),1.8(m,2H),3.85(d,4H),6.5(s,8H),7.1(d,2H),7.15(m,12H),7.3(m,4H+4H),7.4(d,4H),7.5(m,2H),7.7(t,4H)
【0102】
例示化合物(D−28)
1H−NMR(CDCl3):1.9(s,6H),6.65(d,2H),6.7−6.8(m,6H),6.95(m,8H),7.0−7.1(m,4H),7.25−7.35(m,12H),7.5(m,2H),7.85(d,2H)
【0103】
例示化合物(D−31)
1H−NMR(CDCl3):1.7(s,6H),6.45(t,2H),6.75−7.0(m,16H),7.0−7.15(m,4H),7.2−7.35(m,8H),7.5(m,4H),7.6(d,2H)
【0104】
例示化合物(D−33)
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.35−1.55(m,16H),1.8(m,2H),3.95(d,4H),7.1(d,4H),7.35−7.5(m,4H),7.7(d,4H),7.75(m,2H),8.0(m,2H)
【0105】
実施例5
(例示化合物(D−101)の調製)
下記スキームに従って、例示化合物(D−101)を調製した。
【化20】

【0106】
まず、ジケトピロロピロール化合物(DPP)を、「Tetrahedron」,58,(2002),p.5547-5565に記載された方法に従って、合成した。
【0107】
ジケトピロロピロール化合物(DPP)0.5グラム(1等量)とチアゾールアセトニトリル0.53グラム(2.5等量)とをオルトジクロロベンゼン10mL中で攪拌し、オキシ塩化リン0.9mlを加えて1時間加熱還流した。室温に冷却してクロロホルム10mL及び水5mLを加え、さらに30分攪拌した。分液操作により有機層を取り出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去し、メチルアルコールを添加し、得られた結晶をろ過し、目的化合物(D−101)を180mg、収率28%で得た。λmaxはクロロホルム中で727nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、9.77×104dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,6H),1.3−1.6(m,8H),1.8(m,1H),3.85(d,2H),7.1(d,2H),7.3(m,2H),7.4(m,2H),7.6(m,3H),7.7−7.8(m,8H)
【0108】
実施例6
(例示化合物(D−102)の調製)
前記スキームに従い例示化合物(D−102)を調製した。
例示化合物(D−101)0.18グラム(1等量)、ジフェニルボリン酸2−アミノエチル0.125グラム(2.2等量)及び四塩化チタン0.19gをトルエン4mL中で1時間加熱還流した。室温に冷却してメチルアルコール5mLを加えた後ろ過し、結晶を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒)で精製し、目的化合物(D−102)を0.2グラム、収率77%で得た。λmaxはクロロホルム中で780nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、2.15×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,6H),1.3−1.6(m,8H),1.8(m,1H),3.8(d,2H),6.4(s,4H),6.5(d,2H),7.0(m,6H),7.1−7.2(m,15H),7.3(m,8H),7.5(d,2H)
【0109】
実施例7
(例示化合物(D−106)の調製)
まず、実施例1における原料を代えたこと以外は実施例1と同様にして、例示化合物(D−105)を調製した。
次に、例示化合物(D−105)0.15グラム(1等量)、ジフェニルボリン酸2−アミノエチル0.11グラム(2.2等量)及び四塩化チタン0.17gをトルエン4mL中で1時間加熱還流した。室温に冷却してメチルアルコール5mLを加えた後ろ過し、結晶を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒)で精製し、目的化合物(D−106)を0.1グラム、収率45%で得た。λmaxはクロロホルム中で779nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、2.24×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ1.3(s,9H),6.5(m,4H),6.9−7.0(m,8H),7.1−7.2(m,14H),7.2−7.3(m,9H),7.5(d,2H)
【0110】
実施例8
(例示化合物(D−107)の調製)
実施例1における原料を代えたこと以外は実施例1と同様にして、例示化合物(D−107)を調製した。λmaxはクロロホルム中で727nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、8.14×104dm3/mol・cmであった。
【0111】
実施例9
(例示化合物(D−108)の調製)
例示化合物(D−107)0.71グラム(1等量)、ジフェニルボリン酸2−アミノエチル0.48グラム(2.2等量)及び四塩化チタン0.72gをトルエン10mL中で1時間加熱還流した。室温に冷却してメチルアルコール10mLを加えた後ろ過し、結晶を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒)で精製し、目的化合物(D−108)を0.7グラム、収率70%で得た。λmaxはクロロホルム中で779nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、1.94×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,6H),1.3−1.6(m,8H),1.8(m,1H),3.8(s、3H),3.85(d,2H),6.5(s,8H),7.0(m,4H),7.1−7.2(m,14H),7.3(m,8H),7.5(d,2H)
【0112】
実施例10
(例示化合物(D−131)の調製)
例示化合物(D−17)2.6グラム(1等量)とブロモカテコールボラン(東京化成工業社製)2.4グラム(4等量)とをトルエン20mL中、3時間加熱還流した。室温に冷却してメタノールを20mL加え、析出した結晶をろ過した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒クロロホルム)で精製し、さらにクロロホルム/メタノール溶媒を用いて再結晶し、目的化合物(D−131)を2.3グラム、収率70%で得た。
1H−NMR(CDCl3):δ0.95−1.05(m,12H),1.35−1.6(m,16H),1.7−1.8(m,2H),3.75(d,4H),6.4(m,4H),6.5−6.65(m,8H),7.1(d,2H),7.15−7.3(m,8H),7.45(t,2H),7.7(d,2H)
【0113】
実施例11
(例示化合物(D−138)の調製)
下記スキームに従って、例示化合物(D−138)を調製した。
【化21】

【0114】
化合物(B1)は、「Heterocycles」,57,(2002),p.1319-1326に記載された方法に従って、合成した。
【0115】
化合物(D−17)0.86グラム(1等量)、化合物(B1)0.57グラム(2.4等量)及び四塩化チタン0.86gをトルエン20mL中で1時間加熱還流した。室温に冷却してメチルアルコール5mLを加えた後ろ過し、結晶を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒)で精製し、目的化合物(D−138)を1.0グラム、収率83%で得た。λmaxはクロロホルム中で765nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、1.99×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.3−1.7(m,16H),1.8(m,2H),3.8(d,4H),6.5(m,8H),6.9(m,4H),7.0(m,4H),7.0−7.2(m,4H),7.4(d,4H),7.5(d,2H)7.6(d,2H)
【0116】
実施例12
以下の例示化合物を、実施例11における原料を代えたこと以外は実施例11と同様にして調製した。収率、λmax、モル吸収係数、構造同定した1H−NMRについてそれぞれ示す。
例示化合物(D−135)
収率92%。λmaxはクロロホルム中で779nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、2.16×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.3−1.7(m,16H),1.8(m,2H),3.8(d,4H),6.5(m,8H),6.9(d,2H),7.0−7.2(m,20H),7.6(d,2H)
【0117】
例示化合物(D−136)
収率89%。λmaxはクロロホルム中で779nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、1.77×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.2(s,36H),1.3−1.7(m,16H),1.8(m,2H),3.8(d,4H),6.5(m,8H),7.0−7.2(m,20H),7.5(d,2H),7.6(d,2H)
【0118】
例示化合物(D−137)
収率56%。λmaxはクロロホルム中で802nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、1.97×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.7(t,12H),0.9−1.0(m,12H),1.1−1.2(m,12H),1.3−1.4(m,12H),1.3−1.7(m,16H),1.8(m,2H),3.8(d,4H),6.9(d,4H),7.3−7.4(m,4H),7.5(d,4H),7.7(d,2H)7.9(d,2H)
【0119】
例示化合物(D−139)
収率80%。λmaxはクロロホルム中で782nmだった。モル吸収係数は、クロロホルム中、1.96×105dm3/mol・cmであった。
1H−NMR(CDCl3):δ0.9−1.0(m,12H),1.3−1.7(m,16H),1.8(m,2H),3.5(d,4H),6.1(m,4H),6.4(m,4H),6.9−7.2(m,4H),7.4−7.6(m,14H),7.6−7.8(m,16H)
【0120】
実施例13
[溶液吸収スペクトルの評価による不可視性評価]
例示化合物(D−17)及び例示化合物(D−9)のクロロホルム中での溶液スペクトルをそれぞれ規格化し、比較した。結果を図1に示す。図1中、横軸は波長を、縦軸は吸光度を示す。図1から明らかなように、例示化合物(D−9)は、例示化合物(D−17)に比較して400〜500nmの吸収が小さく、不可視性が更に優れることがわかった。
【0121】
また、同様にして、例示化合物(D−1)と例示化合物(D−4)、例示化合物(D−25)と例示化合物(D−28)、例示化合物(D−10)と例示化合物(D−31)との間で比較したところ、前記一般式(2)で表される例示化合物(D−4)、(D−28)及び(D−31)はいずれも400〜500nmの吸収が小さく、不可視性が更に優れることがわかった。
また、例示化合物(D−6)、例示化合物(D−11)、例示化合物(D−12)や、その他の本発明の前記一般式(2)で表される化合物はいずれも400〜500nmの吸収が小さく、不可視性が更に優れることがわかった。
【0122】
実施例14
(微粒子の調製)
例示化合物(D−10)を10部および分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)2部に水を加え500部とした。これにさらに0.1mmφのジルコニアビーズを500部添加し、遊星型ボールミルにて300rpmで5時間処理を行い、微細粒子からなる水分散液を作製した。
その後、前記水分散物からビーズを濾過で分離し、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150、商品名、日機装社製)を用い粒径を測定したところ、平均粒径は0.05μmであった。
【0123】
(微粒子分散膜の作製)
得られた水分散物にゼラチン水溶液を添加し、ゼラチン下塗りしたポリエチレンテレフタレート(PET)板に塗布し、例示化合物(D−10)微粒子のゼラチン分散膜を作製した。得られたゼラチン膜の吸収スペクトルを測定し、例示化合物(D−10)の吸収のλmax光学濃度が1.5となるよう水分散物濃度を調節した。
図2に、例示化合物(D−10)のゼラチン分散膜の吸収スペクトルと例示化合物(D−10)のクロロホルム溶液中での吸収スペクトルとをλmaxで規格化して併せて示す。図2中、横軸は波長を、縦軸は吸光度を示す。図2から明らかなように、微粒子化することで、溶液中における吸収に比べて60nm以上長波長化し、吸収のλmaxは843nmに到達し、良好な赤外光吸収性が得られた。また、ゼラチン分散膜の吸収スペクトルは、400〜700nmにほとんど吸収を有せず、優れた不可視性を実現した。
【0124】
また、例示化合物(D−28)についても同様にして、分散膜を作製し、吸収を測定した。結果を図3に示す。その結果、例示化合物(D−10)と同様に、優れた赤外光吸収能、不可視性を有することがわかった。さらに同様の実験を他の例示化合物について行ったところ、本発明の化合物は、微粒子化することで、いずれも吸収スペクトルが長波長化し、赤外光吸収性向上に有利であることがわかった。
【0125】
(耐光性評価)
比較例として、赤外吸収剤イーエクスカラーIR−10A(商品名、日本触媒製)を用い、上記実施例と同様の方法でゼラチン分散膜を作製した。
上記実施例及び比較例で得られた分散膜の耐光性評価を行った。耐光性試験機(スーパーキセノンウエザーメーター、商品名、スガ試験機(株)社製; 放射照度180W/m2 at 290nm)を用い、Xe光(UVフィルタなし)を照射した。結果を図4に示す。図4中、横軸は時間(時間)を、縦軸は残存率(%)を示す。図4の結果から明らかなように、例示化合物(D−10)又は(D−28)の微粒子を用いた分散膜は、比較例の分散膜と同等以上の優れた耐光性を有することがわかった。
【0126】
なお、別途、例示化合物(D−10)又は(D−28)のアモルファス膜を作製し、その耐光性を評価したところ、比較例に比べて大きく劣ることがわかった。このことから、本発明の化合物は、微粒子化することで耐光性を向上させることがわかった。
【0127】
以上の結果、本発明の化合物の微粒子は、良好な赤外線吸収性と不可視性を有すると共に高い耐光性を有する、という優れた特徴を有し、フィルタやインク等のマーカー、産業用光熱変換材料や、医療用材料として応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、例示化合物(D−17)及び例示化合物(D−9)のクロロホルム中での溶液スペクトルを表す。
【図2】図2は、例示化合物(D−10)のゼラチン分散膜の吸収スペクトル及びクロロホルム溶液中での吸収スペクトルを表す。
【図3】図3は、例示化合物(D−28)のゼラチン分散膜の吸収スペクトル及びクロロホルム溶液中での吸収スペクトルを表す。
【図4】図4は、実施例及び比較例で得られた各分散膜の耐光性評価の結果を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物からなる微粒子。
【化1】

(式中、R1a及びR1bは同じであっても異なっても良く、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。R2及びR3は各々独立に水素原子または置換基を表し、少なくとも一方は電子吸引性基であり、R2及びR3は結合して環を形成しても良い。R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、置換ホウ素、金属原子を表し、R1a、R1b及び/又はR3と共有結合もしくは配位結合しても良い。)
【請求項2】
前記R3がヘテロ環である、請求項1記載の微粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微粒子であって、波長700nm以上1000nm以下の赤外線を吸収する、赤外線吸収性微粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子を含む組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子を含む塗布物。
【請求項6】
下記一般式(2)で表される赤外線吸収性化合物。
【化2】

(式中、Z1a及びZ1bは各々独立にアリール環もしくはヘテロアリール環を形成する原子団を表す。R5a及びR5bは各々独立に炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20のカルバモイル基、ハロゲン原子、又はシアノ基のいずれか1つを表し、R5a又はR5bとZ1a又はZ1bとが結合して縮合環を形成しても良い。R22及びR23は各々独立にシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜20の含窒素ヘテロアリール基を表し、又はR22及びR23が結合して環状酸性核を表す。R4は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、R23と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)
【請求項7】
下記一般式(3)で表される赤外線吸収性化合物。
【化3】

(式中、R31a及びR31bは各々独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R32はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。R6及びR7は各々独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数4〜10のヘテロアリール基を表し、R6及びR7は結合して環を形成してよく、形成する環としては炭素数5〜10の脂環、炭素数6〜10のアリール環、又は炭素数3〜10のヘテロアリール環である。R8及びR9は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数3〜10のヘテロアリール基を表す。Xは酸素原子、イオウ原子、−NR−、−CRR’−を表し、R及びR’は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表す。)
【請求項8】
下記一般式(4)で表される赤外線吸収性化合物。
【化4】

(式中、R41a及びR41bは互いに異なる基を表し、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R42はシアノ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、又は炭素数3〜10の含窒素ヘテロアリール基を表す。Z2は−C=N−と共に含窒素ヘテロ5又は6員環を形成する原子団を表し、含窒素ヘテロ環としてはピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、これらのベンゾ縮環もしくはナフト縮環、又はこれら縮環の複合体を表す。R44は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、金属原子、又は置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数4〜20のヘテロアリール基を有する置換ホウ素を表し、Z2が形成する含窒素ヘテロ環と共有結合もしくは配位結合を有しても良い。また、当該化合物は更に置換基を有しても良い。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−263614(P2009−263614A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227005(P2008−227005)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】