説明

赤外線検出装置

【課題】ファンを使用せずに検出精度の向上を図った赤外線検出装置を提供する。
【解決手段】光源7から赤外線が出力される。サーモパイル14a、14bが、赤外線のエネルギによって上昇する周囲温度に応じた起電力を発生する。演算増幅器A1、A2は、電源電圧Vccを固定抵抗R1と可変抵抗DP1とで分圧した分圧を加算したサーモパイル14a、14bの起電力を増幅して、A/D変換器32に対して出力する。CPU33aは、光源7から赤外線が出力されていないときの演算増幅器A1、A2の出力VA、VBが基準値になるように可変抵抗DP1の抵抗値を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線検出装置に係り、例えばガス濃度を検出するために用いられる赤外線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスは赤外線波長領域において特有の吸収波長帯をもっているものが多いことから、ガスを充填するセルと、セルにパルス状の赤外線を入射する光源と、セルを通った赤外線のうちガスの吸収波長帯のみを通過するフィルタと、フィルタを透過した赤外線の強度を検出する赤外線センサとを設けたガス濃度測定装置が提案されている。
【0003】
上述した赤外線センサは、赤外線のエネルギによって上昇する周囲温度に応じた起電力が発生する温度センサとしてのサーモパイルから構成されている。サーモパイルの起電力は、増幅器で増幅された後に、アナログ/デジタル(A/D)変換器でデジタル値に変換されて、マイクロコンピュータに出力される。マイクロコンピュータは、増幅された起電力のデジタル値に基づいてガス濃度を検出する。
【0004】
しかしながら、上述したサーモパイルは、光源が赤外線を出力していないときの起電力であるオフセットが使用温度範囲で変動してしまうため、増幅器の増幅率を大きくすると大きいオフセットが発生したときに増幅器の出力がA/D変換器の変換範囲を超えてしまう。そこで、従来では、使用温度範囲において最も大きいオフセットが発生したときに増幅器の出力がA/D変換器の変換範囲を超えないように増幅器の増幅率を決定する必要があった。このように増幅器の増幅率を小さくしなければならないため、濃度に対する増幅器からの出力の変化量が少なく、検出精度が低下する、という問題があった。
【0005】
また、オフセットの変動を低減するために、光源や電源部によって発生する熱をセル外に放出するためのファンを設ける赤外線分析計が特許文献1に記載されている。しかしながら、上記従来の赤外線分析計では、ファンをセル内に納めるために構造上大きくなる、という問題があった。また、ファンを動作させるので消費電力が大きい、という問題もあった。
【特許文献1】特開2003−270114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、サーモパイルの起電力に加算する加算電圧を制御することにより、また、増幅器に入力する基準電圧を制御することにより、ファンを使わなくても検出精度の向上を図った赤外線検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、赤外線を出力する光源と、前記赤外線のエネルギによって上昇する周囲温度に応じた起電力を発生するサーモパイルと、前記起電力に加算電圧を加算する加算手段と、前記加算電圧が加算された前記起電力を増幅する増幅器と、を有する赤外線検出装置において、前記光源から前記赤外線が出力されていないときの前記増幅器の出力が基準値になるように、前記加算電圧を制御するオフセットキャンセル手段が設けられていることを特徴とする赤外線検出装置に存する。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記加算手段が、所定電圧を分圧する複数の分圧抵抗で構成され、前記複数の分圧抵抗が、前記分圧を前記サーモパイルのマイナス側に供給することにより前記起電力に前記分圧を加算するように構成され、前記複数の分圧抵抗の少なくとも一つが可変抵抗で構成され、そして、前記オフセットキャンセル手段が、前記光源から前記赤外線が出力されていないときの前記増幅器の出力が基準値になるように前記可変抵抗の抵抗値を制御するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出装置に存する。
【0009】
請求項3記載の発明は、赤外線を出力する光源と、前記赤外線のエネルギによって上昇する周囲温度に応じた起電力を発生するサーモパイルと、基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記起電力又は前記起電力に応じた値と前記基準電圧との差分を増幅する増幅器と、を有する赤外線検出装置において、前記光源から前記赤外線が出力されていないときの前記増幅器の出力が基準値になるように前記基準電圧を制御するオフセットキャンセル手段が設けられていることを特徴とする赤外線検出装置に存する。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記基準電圧発生手段が、所定電圧を分圧して当該分圧を基準電圧として出力する複数の分圧抵抗で構成され、前記複数の分圧抵抗の少なくとも一つが可変抵抗で構成され、そして、前記オフセットキャンセル手段が、前記光源から前記赤外線が出力されていないときの前記増幅器の出力が基準値になるように前記可変抵抗の抵抗値を制御するように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の赤外線検出装置に存する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、オフセットキャンセル手段が、光源から赤外線が出力されていないときの増幅器の出力が基準値になるように加算電圧を制御する。これにより、増幅器のオフセットを基準値に一定にすることができるため、増幅器の増幅率を大きく設定することができる。そして、増幅器の出力の変化率を大きくでき、ファンを使用しなくても検出精度の向上を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、オフセットキャンセル手段が、光源から赤外線が出力されていないときの増幅器の出力が基準値になるように可変抵抗の抵抗値を制御するように設定されているので、可変抵抗の抵抗値を制御するだけで簡単に増幅器のオフセットを基準値に一定にすることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、オフセットキャンセル手段が、光源から赤外線が出力されていないときの増幅器の出力が基準値になるように基準電圧を制御する。これにより、増幅器のオフセットを基準値に一定にすることができるため、増幅器の増幅率を大きく設定することができる。そして、増幅器の出力の変化率を大きくでき、ファンを使用しなくても検出精度の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、オフセットキャンセル手段が、光源から赤外線が出力されていないときの増幅器の出力が基準値になるように可変抵抗の抵抗値を制御するように設定されているので、可変抵抗の抵抗値を制御するだけで簡単に増幅器のオフセットを基準値に一定にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1実施形態
以下、本発明に係る赤外線検出装置を組み込んだガス濃度測定装置1を、図1乃至図8に基づいて説明する。ガス濃度測定装置1は、図1及び図2に示すように、濃度の測定対象となるガスを含んだ雰囲気が充填される気体サンプル室2と、濃度演算回路3と、光源駆動回路5と、を備えている。
【0016】
気体サンプル室2は、図1に示すように、本体部としてのセル6と、光源7と、受光ユニット8とを備えている。セル6は、筒状に形成されている。図示例では、セル6は、四角筒状に形成されている。セル6には、セル6内に雰囲気を導くガス吸入口9aと、セル6内の雰囲気を外部に導くガス出口9bとが設けられている。即ち、気体サンプル室2は、ガス吸入口9a、ガス出口9bを備えている。ガス吸入口9a、ガス出口9bは、セル6の外壁6aを貫通していて、セル6内の気体を雰囲気と等しくするものである。
【0017】
光源7は、セル6内でかつ当該セル6の一端部に設けられている。光源7は、電圧が印加されることで、光としての赤外線をセル6の他端部に向かって放射する。光源7として、例えば黒体炉、電球等が用いられる。
【0018】
受光ユニット8は、図3及び図4に示すように、ユニット本体11と、複数の受光器12a、12bと、集光部材13と、を備えている。ユニット本体11即ち受光ユニット8は、セル6内でかつ当該セル6の他端部に設けられている。ユニット本体11は、箱状に形成されている。
【0019】
図示例では、受光ユニット8には、二酸化炭素(CO2)受光器12a、基準受光器12bの2つが設けられている。CO2受光器12aは、サーモパイル14aと、フィルタ15aと、を備えている。基準受光器12bは、サーモパイル14bと、フィルタ15bと、を備えている。サーモパイル14a、14bは、ユニット本体11に取り付けられている。また、サーモパイル14a、14bは、同一平面上に配置されている。サーモパイル14a、14bは、光源7が発しかつフィルタ15a、15bを透過した赤外線の熱エネルギによって上昇する周囲温度に応じた起電力を発生する。サーモパイル14a、14bは、起電力を濃度演算回路3に出力する。
【0020】
フィルタ15a、15bは、ユニット本体11に取り付けられて、サーモパイル14a、14bと光源7との間に配置されている。フィルタ15a、15bは、同一平面上に配置されている。フィルタ15a、15bは、それぞれ、光源7からの赤外線のうち予め定められた波長の赤外線のみを透過して、当該透過した波長の赤外線をサーモパイル14a、14bまで導く。フィルタ15a、15bは、互いに透過する赤外線の波長が異なる。
【0021】
フィルタ15aは、その透過する赤外線の波長は、ガス濃度測定装置1のガスに応じて定められる。つまり、フィルタ15aを透過する赤外線の波長は、測定対象ガスに対する透過率が小さくなる吸収波長帯にされる。詳しくは、CO2受光器12aは、図5にその透過率が示されたガスとしてのCO2の濃度を測定するために用いられ、そのフィルタ15aがCO2の吸収波長帯である4.3μmの赤外線のみを透過する。
【0022】
また、図示例では、基準受光器12bは、基準として用いられ、そのフィルタ15bが大気中で全く吸収されない非吸収波長帯(4.0μm)の赤外線のみを透過する。なお、図5は、CO2に対する赤外線の透過率を示しており、図5中の横軸は赤外線の波長(μm)を示し、図5中の縦軸は赤外線の透過率(%)を示している。図5によれば、波長が4.3μmの赤外線のCO2中の透過率が、略零であることが示されており、波長が4.3μmの赤外線は、CO2を殆ど透過しない(殆ど吸収されてしまう)ことが示されている。
【0023】
集光部材13は、例えば300度などの所定の角度の範囲の赤外線を集光して、フィルタ15a、15bつまりサーモパイル14a、14bに集中させる。すると、光源7から直接入射する赤外線以外にも、セル6の外壁6aの内面で反射する赤外線もサーモパイル14a、14bに集めることができるので、赤外線の受光効率を良くすることができる。なお、集光部材13として、フレーネルレンズ等を用いることができる。
【0024】
濃度演算回路3は、図2に示すように、固定抵抗R1と、可変抵抗DP1と、演算増幅器A1、A2と、マルチプレクサ(以下MUX)31と、A/D変換器32と、μCOM33と、を備えている。上記固定抵抗R1及び可変抵抗DP1は、電源電圧Vcc(所定電圧)を分圧する分圧抵抗として働き、電源電圧Vcc−グランド間に直列接続されている。上記可変抵抗DP1は、後述するμCOM33によってその抵抗値が制御される。上記固定抵抗R1及び可変抵抗DP1の接続点は、サーモパイル14a、14bのマイナス側に接続されている。これにより、サーモパイル14aのプラス側電圧Vaは、下記の式(1)に示すように、サーモパイル14aに生じる起電力Eaに電源電圧Vccを固定抵抗R1、可変抵抗DP1で分圧した分圧Vcc×DP1/(R1+DP1)を加算した値となる。
Va=Ea+Vcc×DP1/(R1+DP1) …(1)
【0025】
同様に、サーモパイル14bのプラス側電圧Vbは、下記の式(2)に示すように、サーモパイル14bに生じる起電力Ebに電源電圧Vccを固定抵抗R1、可変抵抗DP1で分圧した分圧Vcc×DP1/(R1+DP1)を加算した値となる。
Vb=Eb+Vcc×DP1/(R1+DP1) …(2)
以上のことから明らかなように、電源電圧Vcc、固定抵抗R1、可変抵抗DP1が請求項中の加算手段に相当する。
【0026】
演算増幅器A1には、+入力端にプラス側電圧Vaが供給されると共に、−入力端がグランドに接地されている。演算増幅器A1は、下記の式(3)に示すように、プラス側電圧Vaを増幅率G1で増幅した出力VAをMUX31に対して出力する。
VA=G1×Va
=G1×{Ea+Vcc×DP1/(R1+DP1)} …(3)
【0027】
演算増幅器A2には、+入力端にプラス側電圧Vbが供給されると共に、−入力端がグランドに接地されている。演算増幅器A2は、下記の式(4)に示すように、プラス側電圧Vbを演算増幅率A2の増幅率G1と等しい増幅率G1で増幅した出力VBをMUX31に対して出力する。
VB=G1×Vb
=G1×{Eb+Vcc×DP1/(R1+DP1)} …(4)
【0028】
なお、上記演算増幅器A1、A2の増幅率G1は、基準温度例えば20℃において出力VA、VBがA/D変換器32の変換範囲を超えないような値に設定されている。
【0029】
MUX31は、演算増幅器A1、A2の出力VA、VBのうちμCOM33によって選択された一つをA/D変換器32に対して出力する。A/D変換器32は、出力VA、VBをデジタル値に変換した後にμCOM33に対して出力する。μCOM33は、処理プログラムに従って各種の処理を行う中央演算処理ユニット(以下、CPU)33a、CPU33aが行う処理のプログラムなどを格納した読出専用のメモリであるROM33b、及び、CPU33aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM33c、を有し、これらがバスラインによって接続されている。光源駆動回路5は、μCOM33によって制御されていて、パルス状の駆動電圧を光源7に印加して、光源7を点滅させる。
【0030】
上述した構成のガス濃度測定装置1の動作について、図6及び図7に基づいて説明する。まず、ガス濃度測定装置1の電源がオンすると、CPU33aは処理を開始する。まず、CPU33aは、光源7のオフ期間TOFF(図7(A))が経過するのを待って(ステップS1でY)、出力VA、VBの何れか一方のデジタル値をオフセット電圧VOFFSETとしてA/D変換器32から取り込む(ステップS2)。このように光源7がオフ、即ち赤外線が出力されていないときの出力VA、VBであるオフセット電圧VOFFSETは、赤外線の強さやガス濃度に影響されず、外気温度に影響された出力となる。なお、光源7がオフの間は出力VA=VBとなり、オフセット電圧VOFFSETとしては出力VA、VBの何れでも良い。
【0031】
その後、CPU33aは、オフセットキャンセル手段として働き、取り込んだオフセット電圧VOFFSETと予め定めた基準値Vrefとを比較して、図7(B)に示すように、オフセット電圧VOFFSETが基準値Vrefと等しくなるように可変抵抗DP1の抵抗値を調整する(ステップS3)。例えば、オフセット電圧VOFFSETが基準値Vrefより小さければ、可変抵抗DP1を大きくして起電力Ea又はEbに加算する分圧Vcc×DP1/(DP1+R1)を大きくする。これにより、オフセット電圧VOFFSETを大きくして、基準値Vrefに近づける。逆に、オフセット電圧VOFFSETが基準値Vrefより大きければ、可変抵抗DP1を小さくして起電力Ea又はEbに加算する分圧Vcc×DP1/(DP1+R1)を小さくする。これにより、オフセット電圧VOFFSETを小さくして、基準値Vrefに近づける。なお、上記基準値Vrefは、基準温度、例えば20℃のときのオフセット電圧VOFFSETを予め計測してその測定した値に設定する。
【0032】
その後、CPU33aは、光源駆動回路5を制御して光源7に駆動電圧を供給して光源7をオンする(ステップS4)。次に、CPU33aは、所定のオン期間TON(図7(A))が経過するのを待って(ステップS5でY)、演算増幅器A1の出力VAをA/D変換器32に出力するようにMUX31を制御した後に(ステップS6)、A/D変換器32から出力された出力VAのデジタル値をセンサ出力として取り込む(ステップ7)。このように光源7がオン、即ち赤外線が出力されているときの出力VAであるセンサ出力は、赤外線の強さ、ガス濃度、外気温度に影響された出力となる。
【0033】
次に、演算増幅器A2の出力VBをA/D変換器32に出力するようにMUX31を制御した後に(ステップS8)、A/D変換器32から出力された出力VBのデジタル値を基準出力として取り込む(ステップS9)。このように光源7がオンのときの出力VBである基準出力は、ガス濃度に影響されず、赤外線の強さ、外気温度に影響された出力となる。その後、CPU33aは、光源駆動回路5を制御して光源7をオフする(ステップS10)。次に、CPU33aは、基準出力に基づいてセンサ出力から光源7から発生する赤外線の強さの変動や外気温度の変動に起因する変動分をキャンセルして、ガス濃度を演算した後に(ステップS11)、ステップS1に戻る。
【0034】
上述したようにCPU33aが、オフセットキャンセル手段として働き、光源7から赤外線が出力されていないときの演算増幅器A1、A2の出力VA、VBであるオフセット電圧VOFFSETが基準値Vrefになるように起電力Ea、Ebに加算する分圧Vcc×DP1/(R1+DP1)を制御する。これにより、演算増幅器A1、A2のオフセット電圧VOFFSETを基準値Vrefに一定にすることができるため、演算増幅器A1、A2の増幅率G1を大きく設定することができる。つまり、本発明においては、基準値Vrefのオフセット電圧VOFFSETが発生したときに出力VA、VBがA/D変換器32の変換範囲を超えないように演算増幅器A1、A2の増幅率を決定すればよく、従来のように使用温度範囲において最も大きいオフセット電圧VOFFSETが発生したときに出力VA、VBがA/D変換器32の変換範囲を超えないように演算増幅器A1、A2の増幅率を決定する必要がなくなった。そして、演算増幅器A1、A2の出力VA、VBの変化率を大きくでき、ファンを使用しなくても検出精度の向上を図ることができる。
【0035】
また、CPU33aが、光源7から赤外線が出力されていないときの演算増幅器A1、A2の出力VA、VBであるオフセット電圧VOFFSETが基準値Vrefになるように可変抵抗DP1の抵抗値を制御するように設定されているので、可変抵抗DP1の抵抗値を制御するだけで簡単に演算増幅器A1、A2のオフセット電圧VOFFSETを基準値Vrefに一定にすることができる。
【0036】
なお、上述した第1実施形態では、サーモパイル14a、14bに共通の固定抵抗R1と可変抵抗DP1との接続点を接続していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図8に示すように、サーモパイル14a用の固定抵抗R11、可変抵抗DP11を設けると共にサーモパイル14b用の固定抵抗R12、可変抵抗DP12を設けて、μCOM33によって、サーモパイル14a、14bのマイナス側に供給する電圧を可変抵抗DP11、DP12によってそれぞれ別々に制御できるようにしてもよい。
【0037】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態と第1実施形態とで大きく異なる点は濃度演算回路3の構成である。図9に示すように、濃度演算回路3は、固定抵抗R2、R3と、固定抵抗R4と、可変抵抗DP21と、固定抵抗R5と、可変抵抗DP22と、第1実施形態と同様に、演算増幅器A1、A2と、MUX31と、A/D変換器32と、μCOM33と、を備えている。固定抵抗R2、R3は電源電圧Vccを分圧する分圧抵抗として働き、電源電圧Vcc−グランド間に直列に接続されている。上記固定抵抗R2及び固定抵抗R3の接続点は、サーモパイル14a、14bのマイナス側に接続されている。これにより、サーモパイル14aのプラス側電圧Vaは、下記の式(5)に示すように、サーモパイル14aに生じる起電力Eaに電源電圧Vccを固定抵抗R2、R3で分圧した分圧Vcc×R3/(R2+R3)を加算した値となる。
Va=Ea+Vcc×R3/(R2+R3) …(5)
上記プラス側電圧Vaは、演算増幅器A1に入力される。
【0038】
同様に、サーモパイル14bのプラス側電圧Vbは、下記の式(6)に示すように、サーモパイル14bに生じる起電力Ebに電源電圧Vccを固定抵抗R2、R3で分圧した分圧Vcc×R3/(R2+R3)を加算した値となる。
Vb=Eb×Vcc×R3/(R2+R3) …(6)
上記プラス側電圧Vbは、演算増幅器A2に入力される。
【0039】
固定抵抗R4と可変抵抗DP21とは、電源電圧Vccを分圧する分圧抵抗として働き、電源電圧Vcc−グランド間に直列接続されている。上記可変抵抗DP21は、μCOM33によってその抵抗値が制御される。上記固定抵抗R4及び可変抵抗DP21の接続点は、演算増幅器A1の−入力端に供給される。これにより、演算増幅器A1の−入力端には、下記の式(7)に示す基準電圧Vrefaが供給される。
Vrefa=Vcc×DP21/(R4+DP21) …(7)
そして、演算増幅器A1の出力VAは、下記の式(8)に示すように、サーモパイル14aのプラス側電圧Vaと基準電圧Vrefaとの差分を増幅率G2で増幅した電圧となる。
VA=G2(Va−Vrefa) …(8)
【0040】
また、固定抵抗R5と可変抵抗DP22とは、電源電圧Vccを分圧する分圧抵抗として働き、電源電圧Vcc−グランド間に直列接続されている。上記可変抵抗DP22は、後述するμCOM33によってその抵抗値が制御される。上記固定抵抗R5及び可変抵抗DP22の接続点は、演算増幅器A2のマイナス入力端に供給される。これにより、演算増幅器A2のマイナス入力端には、下記の式(9)に示す基準電圧Vrefbが供給される。
Vrefb=Vcc×DP22/(R5+DP22) …(9)
そして、演算増幅器A2の出力VBは、下記の式(10)に示すように、サーモパイル14bのプラス側電圧Vbと基準電圧Vrefbとの差分を増幅率G2で増幅した電圧を出力する。
VB=G2(Vb−Vrefb) …(10)
【0041】
以上のことから明らかなように、電源電圧Vcc、固定抵抗R4、可変抵抗DP21が請求項中の基準電圧発生手段を構成し、電源電圧Vcc、固定抵抗R5、可変抵抗DP22が請求項中の基準電圧発生手段を構成する。
【0042】
なお、上記演算増幅器A1、A2の増幅率G2は、第1実施形態と同様に、基準温度例えば20℃において出力VA、VBがA/D変換器32の変換範囲を超えないような値に設定されている。
【0043】
上記濃度演算回路3を構成するMUX31、A/D変換器32、及び、μCOM33と、上記濃度演算回路3以外の部分は、第1実施形態と同様のため、その詳細な説明は省略する。上記構成のガス濃度測定装置1の動作について図6のフローチャートを参照して以下説明する。第2実施形態において、CPU33aは、第1実施形態と同様にステップS1を行う。続く、ステップS2においてCPU33aは、MUX31を制御して、演算増幅器A1の出力VAのデジタル値をオフセット電圧VOFFSETAとして、演算増幅器A2の出力VBのデジタル値をオフセット電圧VOFFSETBとして順次取り込む。その後、ステップS3において、CPU33aは、オフセットキャンセル手段として働き、オフセット電圧VOFFSETAと予め定めた基準値Vrefとを比較して、オフセット電圧VOFFSETAが基準値Vrefと等しくなるように可変抵抗DP21の抵抗値を制御する。同時に、CPU33aは、オフセット電圧VOFFSETBと予め定めた基準値Vrefとを比較して、オフセット電圧VOFFSETBが基準Vrefと等しくなるように可変抵抗DP22の抵抗値を制御する。基準値Vrefも第1実施形態と同様に基準温度例えば20℃のときのオフセット電圧VOFFSETA、VOFFSETBの何れかを予め測定してその測定した値に設定する。
【0044】
ステップ3において、CPU33aは、オフセット電圧VOFFSETA、VOFFSETBが基準値Vrefより大きければ、可変抵抗DP21、DP22を大きくして、基準電圧Vrefa、Vrefbを大きくする。これにより、オフセット電圧VOFFSETA、VOFFSETBが小さくなり基準値Vrefに近づく。逆に、オフセット電圧VOFFSETA、VOFFSETBが基準値Vrefより小さければ、可変抵抗DP21、DP22を小さくして、基準電圧Vrefa、Vrefbを小さくする。これにより、オフセット電圧VOFFSETA、VOFFSETBが大きくなり基準値Vrefに近づく。その後、CPU33aは、第1実施形態と同様にステップS4〜S11の処理を行う。
【0045】
上述したように、CPU33aが、光源7から赤外線が出力されていないときの演算増幅器A1、A2の出力VA、VBが基準値Vrefになるように基準電圧Vrefa、Vrefbを制御する。これにより、第1実施形態と同様に、演算増幅器A1、A2のオフセット電圧VOFFSETA、VOFFSETBを基準値Vrefに一定にすることができるため、演算増幅器A1、A2の増幅率G2を大きく設定することができる。そして、演算増幅器A1、A2の出力VA、VBの変化率を大きくでき、ファンを使用しなくても検出精度の向上を図ることができる。
【0046】
また、CPU33aが、光源7から赤外線が出力されていないときの演算増幅器A1、A2の出力VA、VBが基準値Vrefになるように可変抵抗DP21、DP22の抵抗値を制御するように設定されているので、可変抵抗DP21、DP22の抵抗値を制御するだけで簡単に演算増幅器A1、A2のオフセット電圧VOFFSETA、VOFFSETBを基準値Vrefに一定にすることができる。
【0047】
なお、上述した第1及び第2実施形態では、吸収波長帯である波長4.3μmの赤外線を受光するサーモパイル14aと、非吸収波長帯である波長4.0μmの赤外線を受光するサーモパイル14bと、を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。検出精度的に問題がなければ、非吸収波長帯である波長4.0μmの赤外線を受光するサーモパイル14bについては設けなくても良い。
【0048】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る赤外線検出装置を組み込んだガス濃度測定装置の気体サンプル室の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】第1実施形態における赤外線検出装置を組み込んだガス濃度測定装置の濃度演算回路を示す回路図である。
【図3】図1に示された気体サンプル室の受光ユニットの正面を模式的に示す説明図である。
【図4】図3中のVI−VI線の断面を模式的に示す説明図である。
【図5】二酸化炭素に対する赤外線の透過率を示したグラフである。
【図6】図2に示すCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】(A)は光源のオンオフを示すタイムチャートであり、(B)出力VA及びVBのタイムチャートである。
【図8】他の実施形態における濃度演算回路を示す回路図である。
【図9】第2実施形態における濃度演算回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0050】
7 光源
14a サーモパイル
14b サーモパイル
33a CPU(オフセットキャンセル手段)
A1 演算増幅器(増幅器)
A2 演算増幅器(増幅器)
DP1 可変抵抗(加算手段、分圧抵抗)
DP11 可変抵抗(加算手段、分圧抵抗)
DP12 可変抵抗(加算手段、分圧抵抗)
DP21 可変抵抗(基準電圧発生手段、分圧抵抗)
DP22 可変抵抗(基準電圧発生手段、分圧抵抗)
R1 固定抵抗(加算手段、分圧抵抗)
R11 固定抵抗(加算手段、分圧抵抗)
R12 固定抵抗(加算手段、分圧抵抗)
R4 固定抵抗(基準電圧発生手段、分圧抵抗)
R5 固定抵抗(基準電圧発生手段、分圧抵抗)
VA 出力(増幅器の出力)
VB 出力(増幅器の出力)
Vref 基準値
Vrefa 基準電圧
Vrefb 基準電圧
Vcc 電源電圧(所定電圧、加算手段、基準電圧発生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を出力する光源と、前記赤外線のエネルギによって上昇する周囲温度に応じた起電力を発生するサーモパイルと、前記起電力に加算電圧を加算する加算手段と、前記加算電圧が加算された前記起電力を増幅する増幅器と、を有する赤外線検出装置において、
前記光源から前記赤外線が出力されていないときの前記増幅器の出力が基準値になるように、前記加算電圧を制御するオフセットキャンセル手段が設けられている
ことを特徴とする赤外線検出装置。
【請求項2】
前記加算手段が、所定電圧を分圧する複数の分圧抵抗で構成され、
前記複数の分圧抵抗が、前記分圧を前記サーモパイルのマイナス側に供給することにより前記起電力に前記分圧を加算するように構成され、
前記複数の分圧抵抗の少なくとも一つが可変抵抗で構成され、そして、
前記オフセットキャンセル手段が、前記光源から前記赤外線が出力されていないときの前記増幅器の出力が基準値になるように前記可変抵抗の抵抗値を制御するように設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出装置。
【請求項3】
赤外線を出力する光源と、前記赤外線のエネルギによって上昇する周囲温度に応じた起電力を発生するサーモパイルと、基準電圧を発生する基準電圧発生手段と、前記起電力又は前記起電力に応じた値と前記基準電圧との差分を増幅する増幅器と、を有する赤外線検出装置において、
前記光源から前記赤外線が出力されていないときの前記増幅器の出力が基準値になるように前記基準電圧を制御するオフセットキャンセル手段が設けられている
ことを特徴とする赤外線検出装置。
【請求項4】
前記基準電圧発生手段が、所定電圧を分圧して当該分圧を基準電圧として出力する複数の分圧抵抗で構成され、
前記複数の分圧抵抗の少なくとも一つが可変抵抗で構成され、そして、
前記オフセットキャンセル手段が、前記光源から前記赤外線が出力されていないときの前記増幅器の出力が基準値になるように前記可変抵抗の抵抗値を制御するように設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載の赤外線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−109344(P2009−109344A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281929(P2007−281929)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】