説明

赤色顔料分散物、及びそれを含有するカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物

【課題】流動性や分散安定性に優れる赤色顔料分散を提供。
【解決手段】赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254、塩基性基を有する顔料分散剤、顔料分散助剤として式1で表される化合物及び有機溶剤を含有する赤色顔料分散物。


〔Mは、H、Na、K、NH又はNR(R、R、R及びRは、置換されていてもよいC1〜10の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよいC6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)を表す。mは1以上の整数を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料を微細に分散した状態においても、流動性や分散安定性に優れる赤色顔料分散に関し、さらに詳しくは、印刷インキ、塗料、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物、インクジェット用インキ等の広い分野で使用され、特にカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に使用されたときに、透明性やコントラストをより高いレベルに引き上げることができる赤色顔料分散物、及び、それを含有するカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキや塗料はもとより、最近では、カラーフィルター用レジスト組成物やインクジェットインクといった鮮明な色相が求められる分野においても、着色剤として顔料が利用されている。このような顔料の分散技術は、近年著しい進歩を遂げており、製造の合理化のために顔料濃度をできるだけ高くして分散する方法も検討されている。しかしながら、基本的に、顔料の濃度を高くすると、流動性、分散安定性が低下するという問題がある。
更に、これらカラーフィルターやインクジェット記録の分野では、高堅牢度が要求されるために高級顔料を使用し、より鮮明な色相を得るために、粒子径を微細化する方法が検討されている。しかしながら、もともと高級顔料は、他の顔料と比較して分散安定性に乏しい上に、微細化すればするほど凝集を起こしやすくなり、安定な分散体を得ることが困難となる問題を有している。
【0003】
ここで、カラーフィルター用赤色レジスト組成物についてさらに詳細に説明する。
カラーフィルターは、ガラスなどの透明な基板の表面に2種以上の異なる色相の微細な帯(ストライプ)を平行に配置したもの、あるいは微細な画素を縦横一定の配列で配置したものからなっている。画素サイズは、数10〜数100μmと微細であり、しかも色相毎に所定の順序で整然と配列される。この様なカラーフィルターの製造法については、印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィー法等の種々の方法が提案されている。
【0004】
カラーフィルターを製造するにあたっては、顔料分散組成物に光重合性化合物、光重合開始剤等を加えた顔料分散レジスト組成物の塗膜を基板に設けた後、所望のパターンを有するマスクを介して放射線で露光して塗膜を硬化させ、未露光の塗膜を現像液で除去し、その後、ポストベークすることにより、各色のパターンを形成するという、フォトリソグラフィーによる手法が、主として行なわれている。
【0005】
このようなカラーフィルターを具備する液晶表示素子は、最近ではさらなる高輝度化が求められており、そのためにはカラーフィルターにおいてますます高い光透過率が要求される。また、画像の鮮明性を向上させるために、カラーフィルターにはより高いコントラストも要求されている。このような要求を満足するため、カラーフィルターの画素等を形成する顔料分散レジスト組成物について種々の検討がなされている。
【0006】
その中でも、赤色画素については、高い透過率やコンストラストを得るのに効果的な例えば、赤色有機顔料であるC.I.ピグメントレッド177と、イエロー顔料と、さらに535〜555nmに最大吸収を有する赤色有機顔料(ピグメントレッド166等)を配合した顔料を使用した例(例えば、特許文献1参照)、赤色顔料としてジケトピロロピロール、顔料誘導体としてジケトピロロピロールスルホン酸誘導体を感光性樹脂組成物に分散させた赤色カラーレジストインキ(例えば、特許文献2参照)等が開示されている。
しかしながら、これらの系では、透過率やコントラストは向上するが、上記の要求レベルに対しては充分ではなく、より一層の向上が望まれるものであった。
また、これらの系では、露光及び現像後にポストベークを行うと、着色パターンから昇華異物が発生し、この昇華異物が着色パターンに混入して製品不良が発生するといった輝度やコントラストとは別の問題を有するものであった。
【特許文献1】特開平10−148712号公報
【特許文献2】特開2000−160084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、流動性や分散安定性に優れ、より高い透明性やコントラストが要求される分野に使用できる赤色顔料分散物を提供することにある。さらに、従来のものと比較して、透過率やコントラストが、同等以上に高いレベルにあり、且つ昇華物の発生が改善されたカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、赤色顔料としてのC.I.ピグメントレッド254を、顔料分散助剤としてのC.I.ピグメントイエロー151のスルホン酸誘導体及び顔料分散剤としての塩基性基を有する顔料分散剤で分散させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254、塩基性基を有する顔料分散剤、顔料分散助剤として下記一般式(1)で表される化合物及び有機溶剤を含有する赤色顔料分散物に関する。
【化1】

〔式中、Mは、H、Na、K、NH又はNR(R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、他の置換基で置換されていてもよい炭素数1〜10の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、他の置換基で置換されていてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)を表す。mは1以上の整数を表す。〕
【0010】
また、本発明は、(2)赤色顔料が微粒子化処理された有機顔料である上記(1)項に記載の赤色顔料分散物に関する。
また、本発明は、(3)微粒子化処理がソルトミリング処理である上記(2)項に記載の赤色顔料分散物に関する
また、本発明は、(4)有機顔料、水溶性の無機塩及び前記無機塩を実質的に溶解しない水溶性分散媒体を含む混合物を、3本の攪拌ブレードを自転運動させながら公転運動させる混練装置で混練した後、上記無機塩及び上記水溶性分散媒体を除去することにより得られたソルトミリング処理された有機顔料を用いる上記(3)項に記載の赤色顔料分散物に関する。
また、本発明は、(5)上記(1)項〜(4)項に記載のいずれかに記載の赤色顔料分散物、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物及び光重合性開始剤を少なくとも含有するカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物に関する。
以下、本発明の赤色顔料分散物及びその用途であるカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物について詳細に説明する。
【0011】
<赤色顔料分散物>
まず、本発明の赤色顔料分散物の基本的な構成である赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254、塩基性基を有する顔料分散剤、顔料分散助剤としてC.I.ピグメントイエロー151のスルホン酸誘導体、及び有機溶剤について説明する。
【0012】
本発明の赤色顔料分散物を構成する赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド254を使用する。
本発明において、上記C.I.ピグメントレッド254の配合量は、本発明の赤色顔料分散物(100質量%)中1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜20質量%である。1質量%未満であると、カラーフィルターやインクジェット印刷で使用した場合に充分な色濃度を得ることができないことがあり、40質量%を超えると、上記赤色顔料の分散性が低下することがある。
【0013】
カラーフィルターやインクジェット印刷の透過率とコントラストを高くするために、上記C.I.ピグメントレッド254としては、微粒子化処理されたものが好ましい。
また、上記微粒子化処理としては、ソルトミリング処理であることがより好ましい。すなわち、上記赤色顔料は、ニーダーや3本の攪拌ブレードをそれぞれ自転運動させながら公転運動させる混練装置等を用いて、有機顔料を無機塩で摩砕して、有機顔料の一次粒子径を更に微細になるようにソルトミリング処理したものがより好ましい。なかでも、3本の攪拌ブレードをそれぞれ自転運動させながら公転運動させる混練装置を用いソルトミリング処理して得られる有機顔料を用いることが好ましい。この場合、有機顔料の一次粒子径を更に微細かつ均一になるようにソルトミリング処理できる。3本の攪拌ブレードをそれぞれ自転運動させながら公転運動させる混練装置を用いたソルトミリング処理を、特にトリミックス処理ともいう。
【0014】
上記トリミックス処理とは、国際公開WO06/098261号等に記載されている処理である。
具体的には、上記トリミックス処理は、有機顔料、水溶性の無機塩(塩化ナトリウム等)及び上記無機塩を実質的に溶解しない水溶性分散媒体(アルコキシアルコール類、グリコール類、エーテル類等)を含む混合物を、3本の攪拌ブレードを自転運動させながら公転運動させる混練装置で混練した後、上記無機塩及び上記水溶性分散媒体を除去することにより行われる。
【0015】
本発明の赤色顔料分散物を構成する顔料分散助剤としては、下記一般式(1)で表される化合物を使用する。下記一般式(1)で表される化合物を、後述する赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254の顔料分散助剤として用いることで、本発明の赤色分散物は、流動性、分散安定性に優れたものとなり、後述するカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物としたときに、透明性、コントラストをより高いレベルに引き上げることが可能となる。更に、該カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を用いて着色パターンを形成する際に、露光及び現像後にポストベークを行った場合であっても、着色パターンから昇華異物が発生することがない。
【0016】
【化2】

〔式中、Mは、H、Na、K、NH又はNR(R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、他の置換基で置換されていてもよい炭素数1〜10の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、他の置換基で置換されていてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)を表す。mは1以上の整数を表す。〕
【0017】
このような顔料分散助剤は、新規な化合物であり、現在、市販されているものはない。
上記一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、例えば、下記式(2)のモノアゾ化合物(C.I.ピグメントイエロー151)を従来公知のスルホン化処理を行う方法がある。より具体的には、例えば、下記式(2)のモノアゾ化合物(C.I.ピグメントイエロー151)を濃硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸又はそれらの混合液に溶解し、室温ないし80〜90℃に加熱し、次いで多量の水で希釈して得た懸濁液を濾過後、水洗し、得られたフィルターケーキを乾燥、粉砕して製造することができる。
【0018】
【化3】

【0019】
顔料分散助剤の使用量は、赤色顔料のC.I.ピグメントレッド254の100質量部に対して、通常30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部である。顔料分散助剤の使用量が前記範囲より多くなっても、上限の使用量での顔料分散効果に対してあまり向上が望めない傾向となる。
【0020】
本発明の赤色顔料分散物を構成する顔料分散剤について説明する。
上記顔料分散剤としては、塩基性基を有するものを必須成分として使用する。
上記塩基性基を有する顔料分散剤としては、従来から印刷インキ、塗料、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物、インクジェット印刷用インキ等で使用されている塩基性高分子顔料分散剤が使用でき、例えば、以下のものが挙げられる。なお、この様な顔料分散剤は、使用する有機顔料の種類や後述する有機溶剤の種類等により適宜選択される。
【0021】
(1)ポリアミン化合物(例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンポリイミン等のポリ(低級アルキレンアミン)等)のアミノ基及び/又はイミノ基と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド及びポリエステルアミドからなる群より選択される少なくとも1種との反応生成物(特開2001−59906号公報等で詳述されている)。
(2)分子内にポリエステル側鎖、ポリエーテル側鎖及びポリアクリル側鎖からなる群より選択される少なくとも1種の側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(国際公開WO04/000950号公報等で詳述されている)。
(3)ポリ(低級)アルキレンイミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の低分子アミノ化合物と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応生成物(特開昭54−37082号公報、特開平01−311177号公報等で詳述されている)。
(4)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、メトキシポリエチレングリコール等のアルコール類やカプロラクトンポリエステル等の水酸基を1個有するポリエステル類、2〜3個のイソシアネート基反応性官能基を有する化合物、イソシアネート基反応性官能基と第3級アミノ基とを有する脂肪族又は複素環式炭化水素化合物を順次反応させてなる反応生成物(特開平02−612号公報等で詳述されている)。
(5)アルコール性水酸基を有するアクリレートの重合物にポリイソシアネート化合物とアミノ基を有する炭化水素化合物とを反応させた反応生成物。
(6)低分子アミノ化合物にポリエーテル鎖を付加させてなる反応生成物。
(7)イソシアネート基を有する化合物にアミノ基を有する化合物を反応させてなる反応生成物(特開平04−210220号公報等で詳述されている)。
(8)ポリエポキシ化合物に遊離のカルボキシル基を有する線状ポリマー及び2級アミノ基を1個有する有機アミン化合物を反応させた反応生成物(特開平09−87537号公報等で詳述されている)。
(9)片末端にアミノ基と反応し得る官能基を有するポリカーボネート化合物とポリアミン化合物との反応生成物(特開09−194585号公報等で詳述されている)。
(10)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート等のメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種と、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アミノ基とポリカプロラクトン骨格を有するモノマー等の塩基性基含有重合性モノマーの少なくとも1種と、スチレン、スチレン誘導体、その他の重合性モノマーの少なくとも1種との共重合体(特開平01−164429号公報等で詳述されている)。
(11)3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等の塩基性基を有するブロックと塩基性官能基を有していないブロックとからなるアクリル系ブロック共重合体等(特開2005−55814号の明細書中に記載のアクリル系ブロック共重合体の説明欄等で詳述されている)。
(12)ポリアリルアミンにポリカーボネート化合物をマイケル付加反応させて得られる顔料分散剤(特開平09−194585号公報等で詳述されている)。
(13)ポリブタジエン鎖と塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(特開2006−257243号公報等で詳述されている)。
(14)分子内にアミド基を有する側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(特開2006−176657号公報等で詳述されている)。
(15)エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有する構成単位を有し、且つ四級化剤により四級化されたアミノ基を有するポリウレタン樹脂(特開平10−246812号公報、特願2008−16404号等で詳述されている)。
【0022】
本発明における顔料分散剤の使用量は、使用する上記赤色顔料のC.I.ピグメントレッド254の100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは1〜60質量部である。顔料分散剤の使用量が1質量部未満では、上記赤色顔料の分散性が低下する場合がある。一方、200質量部を超える場合は、後述するカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物としたときに、該レジスト組成物の現像性が低下する等のおそれがある。
【0023】
本発明の赤色顔料分散物を構成する有機溶剤としては、インキ、塗料、カラーフィルター、インクジェットの分野で好適に利用される有機溶剤が例示される。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、δ−ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、蟻酸n−アミル等のエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤等を例示できる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
上記有機溶剤は、赤色顔料分散物の用途や所望される物性等により適宜選択される。
【0024】
以上の構成材料から本発明の赤色顔料分散物を製造するには、従来公知の製法を用いることができ、例えば、以下の製法により製造することができる。
先ず、C.I.ピグメントレッド254、一般式(1)で表される顔料分散助剤、塩基性基を有する顔料分散剤、有機溶剤からなる混合物を得る。得られた混合物を、ロールミル、ニーダー、高速攪拌装置ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散機等の各種分散機を用いて、混練し、分散処理し、赤色顔料分散物を得る。
尚、本発明の赤色顔料分散物には、予めバインダー樹脂(皮膜形成樹脂、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物等)を含有させておくこともできる。
【0025】
このようにして得られた赤色顔料分散物は、必要に応じて各種バインダー樹脂、有機溶剤、界面活性剤、その他の各種添加剤を含有させて、印刷インキ、塗料、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物、インクジェット用インキ、筆記具用インキ、リボンインキ、液体現像剤等の用途で好適に利用されることになる。
【0026】
<カラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物>
本発明の赤色顔料分散物の好ましい用途の一例として本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物について更に詳細に説明する。
【0027】
上記カラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物は、活性エネルギー線硬化性を有し、アルカリ現像可能なレジスト組成物であり、上記赤色顔料分散物に加えて、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物及び光重合開始剤を少なくとも含有し、必要に応じて、有機溶剤、熱重合禁止剤、基板との密着性を向上させるためのシランカップリング剤やチタネートカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜含有させたものである。
【0028】
本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を構成する赤色顔料C.I.ピグメントレッド254の使用量は、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の全固形分に対して質量分率で、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲である。5質量%未満であると、充分な色濃度の薄膜を形成できないことがあり、80質量%を超えると、相対的にアルカリ可溶性樹脂や光硬化性化合物の含有量が低下するため、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物のアルカリ現像性の低下や、光硬化性能が不充分となることがある。
【0029】
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を構成するアルカリ可溶性樹脂としては、カラーフィルターを製造する際に、その現像処理工程において用いられる現像液、特に好ましくはアルカリ現像液に対して可溶性を有するものであれば、特に限定されるものではない。なかでも、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体が好ましい。
【0030】
具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なスチレン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、グリセロールメタクリレート、N−フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマー及びポリメチルメタクリレートマクロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体を挙げることができる。
【0031】
上記共重合体の酸価としては、50〜300mgKOH/gが好ましい。この場合、酸価が50mgKOH/g未満では、レジスト組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。一方300mgKOH/gを超えると、アルカリ現像液に対する溶解性が過大となり、アルカリ現像液により現像する際に、着色層の基板からの脱落や着色層表面の膜荒れを来たしやすくなる傾向がある。
なお、本発明書においては、酸価は理論酸価であり、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とその使用量に基づいて算術的に求めた値をいう。
【0032】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、通常、1,000〜100,000が好ましい。アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が1,000未満では、アルカリ現像剤に対する溶解性が上がり現像特性が低下する場合がある。一方100,000を超える場合は、有機溶剤への溶解性が低下し、レジスト組成物の粘度が高くなる場合がある。
なお、本発明において、上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、GPCに基づいて得られるポリスチレン換算の重量平均分子量である。本発明において、装置としてはWater 2690(ウォーターズ社製)、カラムとしては PLgel 5μ MIXED−D(Polymer Laboratories社製)を用いる。
【0033】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の使用量は、使用する全有機顔料100質量部に対して、通常、10〜1,000質量部、好ましくは20〜500質量部である。アルカリ可溶性樹脂の使用量が10質量部未満では、例えば、アルカリ現像性が低下したり、未露光部の基板上あるいは遮光層上に地汚れや膜残りが発生するおそれがある。一方1,000質量部を超えると、相対的に有機顔料の濃度が低下するため、薄膜として目的とする色濃度を達成することが困難となるおそれがある。
【0034】
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を構成する光重合性化合物について説明する。
上記光重合性化合物としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する単量体、オリゴマー等を挙げることができる。
【0035】
光重合性不飽和結合を分子内に1個有する単量体としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレート又はアクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレート又はアクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート又はアクリレート;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレート又はアクリレート;ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル;イソボニルメタクリレート又はアクリレート;グリセロールメタクリレート又はアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート又はアクリレート等が例示できる。
また、光重合性不飽和結合を分子内に2個以上有する単量体としては、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスルトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスルトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明において、上記光重合性化合物の使用量は、本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物中の全固形分に対して質量分率で、好ましくは3〜50質量%の範囲である。3質量%未満であると、光硬化性性能が不充分となり、充分な硬度の薄膜を形成できないことがあり、50質量%を超えると、アルカリ可溶性が不充分となったり形成する薄膜の色濃度が不充分となったりすることがある。
【0037】
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を構成する光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0038】
本発明において、上記光重合開始剤の使用量は、本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物中の全固形分に対して質量分率で、好ましくは1〜20質量%の範囲である。1質量%未満であると、本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物の光硬化性能が不充分となることがあり、20質量%を超えても、光硬化性能の向上は望めない傾向となる。
【0039】
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散組成物を構成する有機溶剤としては、好ましくは、常圧(1.013×10kPa)における沸点が100〜220℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素溶剤及び含窒素系有機溶剤等である。
【0040】
これら有機溶剤として、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、δ−ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、蟻酸n−アミル等のエステル系有機溶剤;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤等を例示できる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
これらの有機溶剤の中でも、溶解性、分散性、塗布性等より、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、蟻酸n−アミル等が好ましく、更に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0042】
更に、本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物は、上述した常圧における沸点が100〜220℃の有機溶剤以外の有機溶剤も含有していてもよい。ただし、この場合、上記常圧における沸点が100〜220℃の有機溶剤は、上記アルカリ可溶性樹脂の溶解性、顔料分散性、塗布性等より、本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物に使用される全有機溶媒中50質量%以上、更には、70質量%以上含有させることが好ましい。
【0043】
なお、沸点が220℃を超える有機溶剤を多量に含有していると、塗布形成された塗膜をプレベークする際に有機溶剤が充分に蒸発せずに乾燥塗膜内に残存し、乾燥塗膜の耐熱性が低下するおそれがある。また、沸点100℃未満の有機溶剤を多量に含有していると、ムラなく均一に塗布することが困難になり、表面平滑性に優れた塗膜が得られなくなるおそれがある。
【0044】
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物には、必要に応じて、他の光重合性化合物、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0045】
さらに、本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物には、目的に応じて本発明の赤色顔料分散物以外の顔料分散物を適宜併用することができる。本発明の赤色顔料分散物以外の顔料分散物としては、例えば、本発明の赤色顔料分散物と組成の異なる赤色顔料分散物、黄色顔料分散物、橙色顔料分散物等が挙げられる。
【0046】
以上の構成材料を用いて本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を製造する方法を説明する。
本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を製造する方法は、本発明の好ましい実施形態の一例であり、本発明ではこれに限定されるものではない。
先に記載した構成材料から、本発明のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を製造するためには、上記の方法により得られた本発明の赤色顔料分散物に、上記光重合性化合物、光重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂、必要に応じて有機溶剤、本発明の赤色顔料分散物以外の顔料分散物、その他添加剤を加え、攪拌装置等を用いて攪拌混合する方法が利用できる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の赤色顔料分散物は、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254、塩基性基を有する顔料分散剤、顔料分散助剤として上記一般式(1)で表される化合物(C.I.ピグメントイエロー151のスルホン酸誘導体)、及び、有機溶剤を含有するものであるため、流動性や分散安定性に優れ、より高い透明性やコントラストが要求される分野に使用できる。また、ソルトミリング処理された赤色顔料を使用することにより、コントラストと可視光領域の透過率と着色力をともに高く維持できる新規なカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0049】
実施例1〜3及び比較例1〜2
<顔料分散助剤>
(顔料分散助剤1)
100ml三角フラスコに濃硫酸を30ml仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながらピグメントイエロー151(Ciba社製 Y2088、上記式(2)で表される化合物)を10g投入し、90℃で30分攪拌した。1Lビーカーに水50gと氷50gの混合物を入れ、上記反応物をこの氷水中に注ぎ、マグネチックスターラーで30分攪拌した。これを減圧下で濾過・水洗し、得られた固体を乾燥させて、目的物の顔料分散助剤1(上記一般式(1)で表される化合物:M=H)12gを得た。
【0050】
(顔料分散助剤2)
100ml三角フラスコに濃硫酸を30ml仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながらピグメントレッド2を10g投入し、室温で30分攪拌した。1Lビーカーに水50gと氷50gの混合物を入れ、上記反応物をこの氷水中に注ぎ、マグネチックスターラーで30分攪拌した。これを減圧下で濾過・水洗し、得られた固体を乾燥させて、目的物の顔料分散助剤212gを得た。
【0051】
(顔料分散助剤3)
市販の顔料分散助剤
ソルスパース22000(アビシア社製)
【0052】
<有機顔料>
調製例1(トリミックス処理ピグメントレッド254)
トリミックスTX−15(商品名、井上製作所社製)のタンクにC.I.ピグメントレッド254を750質量部、粒径20μmの塩化ナトリウムを7500質量部、ジエチレングリコールを1800質量部投入した。定格電流値9.3Aの70%となる範囲で、且つ45℃で3時間混練し、ソルトミリングを行った。次に得られた混練物1300質量部を3リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌しスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返し塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、40℃にて一昼夜乾燥し、95質量部のトリミックス処理ピグメントレッド254(PR254)を得た。
【0053】
調製例2(ニーダーを用いたソルトミリング処理ピグメントレッド254)
ニーダー(商品名:KHD−2、井上製作所)のタンクに、C.I.ピグメントレッド254を100質量部、粒径20μmの塩化ナトリウムを1000質量部、ジエチレングリコールを240質量部投入し、75℃で10時間混練し、ソルトミリングを行った。次に得られた混練物1300質量部を3リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌しスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返し塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、40℃にて乾燥し、95質量部のソルトミリング処理ピグメントレッド254(ニーダー処理PR254)を得た。
【0054】
調製例3(トリミックス処理ピグメントレッド177)
トリミックスTX−15(商品名、井上製作所社製)のタンクにC.I.ピグメントレッド177を750質量部、粒径20μmの塩化ナトリウムを7500質量部、ジエチレングリコールを1800質量部投入した。定格電流値9.3Aの70%となる範囲で、且つ45℃で3時間混練し、ソルトミリングを行った。次に得られた混練物1300質量部を3リットルの温水に投入し、70℃に加熱しながら1時間攪拌しスラリー状とした。ろ過、水洗を繰り返し塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、40℃にて一昼夜乾燥し、95質量部のトリミックス処理ピグメントレッド177を得た。
【0055】
<塩基性基を有する顔料分散剤>
Disperbyk−2001(DB−2001、ビックケミー社製、塩基性基を有するアクリル系ブロック共重合体)
【0056】
<アルカリ可溶性樹脂>
BMM/MAA共重合体(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、酸価:120mgKOH/g、重量平均分子量:25,000)
【0057】
<光重合性化合物>
DPEHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
【0058】
<光重合開始剤>
イルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)
【0059】
<有機溶剤>
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0060】
<赤色顔料分散組成物>
表1の組成で、ビーズミルで、40〜50℃の温度で3時間混練し、赤色顔料分散物を得た。尚、表1中、組成を表す数値の単位は、質量部である。
【0061】
<カラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物>
上記赤色顔料分散物と他の材料とを表1の組成になるように高速攪拌機を用いて均一に混合した後、孔径3μmのフィルターでろ過し、カラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を得た。尚、表1中、組成を表す数値の単位は、質量部である。
【0062】
(評価方法)
下記評価を行い、結果を表2に示した。
<流動性>
実施例及び比較例のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物について、それぞれガラス瓶に採り、密栓し室温で1日保存した後、B型粘度計(トキメック社製)を用いて25℃における粘度を測定し、流動性を評価した。
【0063】
<分散安定性>
実施例及び比較例のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物について、それぞれガラス瓶に採り、密栓し室温で1日保存した後の25℃の粘度、40℃において7日保存した後の粘度をB型粘度計(トキメック社製)を用いて測定した。分散安定性は、(40℃において7日保存した後の粘度)/(室温で1日保存した後の粘度)を求め、評価した。
【0064】
<カラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物のコントラスト>
実施例及び比較例のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物をスピンコーターを用いて膜厚が1.0μmになるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で30分間ポストベークした。
次いで、レジスト組成物が塗布されたガラス基板を2枚の偏光板(日東電工社製、型番:SEG1224Du)で挟み、蛍光灯(波長範囲380〜780nm)で照射しつつ前面側の偏光板を回転させ、前面側の偏光板と後面側の偏光板の偏光面が平行であるとき及び直角であるときの透過する光強度を色彩輝度計(トプコン社製、BM−5A)で測定した。前面側の偏光板と後面側の偏光板の偏光面が平行であるときの輝度と、前面側の偏光板と後面側の偏光板の偏光面が直角であるときの輝度との比をコントラスト比として評価した。
コントラスト比=(前面側の偏光板と後面側の偏光板の偏光面が平行であるときの輝度/前面側の偏光板と後面側の偏光板の偏光面が直角であるときの輝度)。
【0065】
<カラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物の色特性の評価>
上記膜厚が1.2μmの実施例及び比較例の各レジストの色特性(x,y,Y)を分光光度計(島津製作所社製、UV−2500PC、C光源2°視野)で測定した。ここで、実施例1〜3及び比較例1〜2ではx=0.600の色度y、明度Yを求めた。
【0066】
<カラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物の耐熱性の評価>
実施例及び比較例のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物をスピンコーターを用いて膜厚が1.0μmになるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に270℃で60分間ポストベークした。その後、得られたレジスト塗膜の表面をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHS−500、倍率500倍)で観察し、ポストベーク中の顔料昇華に伴う表面荒れの程度を観察した。表2において「昇華異物あり」とは、ポストベーク中の顔料の昇華に伴う表面の荒れが多いことを意味し、耐熱性が悪いことを意味する。観察例として、実施例1及び比較例2についての観察倍率450倍におけるマイクロスコープ写真を図1に示す。なお、図1(a)は、実施例1の結果を示し、図1(b)は、比較例2の結果を示す。
【0067】
<要求される色特性>
テレビ用途で要求される赤の色度について(x,y)=(0.654,0.329)として明度Yを求めた。
但し、最適の色度が得られるように、調色顔料としてピグメントレッド(PR)177を混合して調色したカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物で評価した。
【0068】
調色したカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物の製造法及びそれを用いた評価方法は下記の通りである。
表1の組成で、ビーズミルで、40〜50℃の温度で3時間混練し、PR177の赤色顔料分散物を得た。尚、表1中、組成を表す数値の単位は、質量部である。
次いで、上記PR177の赤色顔料分散物と他の材料とを表1の組成になるように高速攪拌機を用いて均一に混合した後、孔径3μmのフィルターでろ過し、PR177のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を得た。尚、表1中、組成を表す数値の単位は、質量部である。
次いで、実施例1〜3、比較例1〜2のPR254を用いたカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物とPR177のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を表2の割合となるように高速攪拌機を用いて均一に混合した後、孔径3μmのフィルターでろ過し、調色した実施例1〜3、比較例1〜2のカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物を得た。
得られた実施例1〜3及び比較例1〜2の調色したカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物をスピンコーターを用いて膜厚が1.2μmになるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で30分間ポストベークした。その後、実施例1〜3及び比較例1〜2の各レジストのテレビ用途で要求される赤の色度(x,y)=(0.654,0.329)として明度Yを分光光度計(島津製作所社製、UV−2500PC、C光源2°視野)で測定した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表から、赤色顔料としてPR254、塩基性基を有する顔料分散剤(DB−2001)及び顔料分散助剤としてP.Y151スルホン化物を含有する実施例においては、優れた流動性及び分散安定性が得られ、明度、コントラストにも優れていた。一方、顔料分散助剤としてP.Y151スルホン化物を用いなかった比較例では、これら全ての特性に優れたものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の赤色顔料分散物は、カラーフィルター分野の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(a)は、実施例1に係る耐熱性の評価結果を示すマイクロスコープ写真であり、(b)は、比較例2に係る耐熱性の評価結果を示すマイクロスコープ写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254、塩基性基を有する顔料分散剤、顔料分散助剤として下記一般式(1)で表される化合物及び有機溶剤を含有することを特徴とする赤色顔料分散物。
【化1】

〔式中、Mは、H、Na、K、NH又はNR(R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、他の置換基で置換されていてもよい炭素数1〜10の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、他の置換基で置換されていてもよい炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)を表す。mは1以上の整数を表す。〕
【請求項2】
赤色顔料が微粒子化処理された有機顔料である請求項1記載の赤色顔料分散物。
【請求項3】
微粒子化処理がソルトミリング処理である請求項2記載の赤色顔料分散物。
【請求項4】
有機顔料、水溶性の無機塩及び前記無機塩を実質的に溶解しない水溶性分散媒体を含む混合物を、3本の攪拌ブレードを自転運動させながら公転運動させる混練装置で混練した後、前記無機塩及び前記水溶性分散媒体を除去することにより得られたソルトミリング処理された有機顔料を用いる請求項3記載の赤色顔料分散物。
【請求項5】
請求項1〜4記載のいずれかに記載の赤色顔料分散物、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物及び光重合開始剤を少なくとも含有するカラーフィルター用赤色顔料分散レジスト組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−280741(P2009−280741A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135917(P2008−135917)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】