説明

走査型荷電粒子顕微鏡及び試料観察方法

【課題】 絶縁体パターンであっても,撮影中一次荷電粒子線照射起因帯電の影響を抑制し,二次荷電粒子の検出率の変化を抑制することにより視野内の計測歪みを抑制することのできる走査型荷電粒子顕微鏡を提供する。
【解決手段】 試料8上の二次元領域に対し,荷電粒子線4のライン走査の方向が交互に反転するように走査して走査領域の画像を形成する走査型荷電粒子顕微鏡において,荷電粒子線4の走査ライン間距離は,試料8に荷電粒子線4を照射したときの,試料8の帯電特性又は試料8の明度の視野内均一性に基づいて調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,荷電粒子線を用いて試料を観察する走査型荷電粒子顕微鏡及び試料観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い,ウェハ上に形成された数10nmの微細パターンを高精度かつ高速に計測する要求がますます高まっている。しかし,従来技術では,レジストやSiOなどの絶縁材料からなる微細パターンを走査型荷電粒子顕微鏡の一例である走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する場合,電子線照射により試料が帯電するため,画像において形状歪みや明るさムラが生じる。パターンの微細化に連れ,SEM像で電子線走査方向の明度変化が引き起こす計測値の変化,シェーディング,像ドリフトが問題となっている。さらに,これまでの測長アプリケーションは視野中心での測長が主であったが,今後ACD(Averaged Critical Dimension)法(複数の同様なパターンの測長値を平均化する計測方法)による測長やOPC(Optical Proximity Correction)補正等の用途が増えていくと,視野中心のみではなく,視野内の任意位置において計測精度を確保することが求められる。このためには帯電の影響を低減し,視野全面での高精度計測に適する高画質なSEM像を取得する技術の確立が必要である。
【0003】
図1(a)に画像を取得する際の電子線の視野内走査法の一例を示す。この走査法で得られたレジストパターンラインの画像及び波形,画像から測定した視野内のライン測長値の分布および波形から抽出したラインのホワイトバンド(WB)の明度をそれぞれ図2の(a),(b),(c)に示す。電子線照射が原因でライン走査方向(図1(a)を参照)にラインエッジのホワイトバンド明度(図2(b)を参照)の減少が発生しライン測長値が増加する傾向(図2(c)を参照)が観測される。この放出電子の検出効率の変化について次のように考えられている。エネルギー100eV程度の電子が熱酸化膜やレジストなど絶縁膜50に照射される場合,図3に示したように絶縁膜50内部への侵入深さ51が二次電子SEの脱出深さ程度(約10nm)であるため,入射電子Ipは表面付近のみに蓄積する。しかし二次電子(SE)および反射電子(BSE)からなる電子の放出率の和が1以上の場合,外部電界E 53によりこれらの放出電子を全て引き上げると表面は正に帯電する。ところが,この局所的な正帯電により二次電子を引き戻す電位障壁Vsが形成され,走査方向52に後継の二次電子(図3では右側からの二次電子)の検出効率が減少する。なお,符号54は,p型Si基板(p−Sisub)を示す。
【0004】
上記障害を抑制するには,電子線照射による帯電の影響を抑制する必要がある。従来,電子線照射起因帯電を抑制するには,以下のような方法が開示されている。例えば,特許文献1には,試料近辺に不活性ガスを導入し,一次電子線照射によりイオン化させ,画像撮影時試料表面発生した帯電を中和することが記載されている。特許文献2には,画像取得の各フレームの合間にフラッドガンや一次電子線(画像取得時と異なる照射エネルギー)照射により照射帯電中和することが記載されている。また,特許文献3,4,5には,撮影の間隙期間で一次電子線の走査パターンを変えて視野内外の帯電の違いを抑制することや往復走査などによりSEM画像の画質を改善することが記載されている。さらに,特許文献6には,視野内一次電子線の走査間隔を観察試料毎に最適化する方法が記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4057653号公報
【特許文献2】米国特許第7488938号明細書
【特許文献3】米国特許第6211518号明細書
【特許文献4】米国特許第7276690号明細書
【特許文献5】米国特許第6570154号明細書
【特許文献6】特開2008−123716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に,非金属材料を含む試料の電子線照射起因帯電量及び分布は,次の要因に大きく依存することが知られている。
(1)電子線照射する前の試料の初期帯電状態:帯電量,分布
(2)一次電子のエネルギー,プローブ電流,観察視野,照射時間,電子線照射による試料の二次電子/後方散乱電子イールド。電子線の視野内各照射位置の順番
(3)電子線照射起因非金属材料表面/バルクの電子・ホールの移動,拡散,再結合
(4)観察時試料周辺領域の電場/磁場分布
特許文献1には,不活性ガスから生成したイオンや電子を利用し,試料表面の電荷と再結合することにより,一次電子線照射起因帯電をリアルタイムに抑制することを図ることが記載されている。しかしながら,この場合,一次電子は,不活性ガスとの衝突により,ビーム径が太くなり画像の面分解能が低下する問題点がある。
【0007】
また,特許文献2には,フラッドガンや一次電子線を用いて画像取得のためのフレーム照射の前に試料の初期帯電状態をリセットすることを図るものである。しかしながら,この場合,フラッドガンや一次電子線照射で試料電位を正確に制御することが困難である。また,これによって画像取得のスループットを低下させてしまう問題点がある。
【0008】
特許文献3,特許文献4,特許文献5には,撮影の間隙期間で一次電子線の走査パターンを変えて視野内外の帯電の違いを抑制することや往復走査などによりSEM画像の画質を改善することを図るものである。しかしながら,間隙期間中一次電子線走査により,画像取得のスループットを低下させてしまう問題点がある。また,往復走査だけでは,ライン走査方向の明度均一性を維持しきれない課題があると考えられる。特許文献6には,エネルギーフィルタを用いて二次電子のエネルギーを弁別し,得られる電子収量の変化から試料電位の変動を測定し,電子ビーム照射時に形成される帯電の時定数を抽出し,得られた時定数を基にインターレス走査の走査間隔を最適化し,画像に現れる歪みや倍率変動を抑制する方法が記述されている。しかしこの方法でも一定の効果は得られるが,LSIパターンの微細化やパターン形状の複雑化に対してはまだ不十分であると予想される。
【0009】
本発明の目的は,絶縁体パターンであっても,撮影中一次荷電粒子線照射起因帯電の影響を抑制し,二次荷電粒子の検出率の変動を抑制することにより視野内の計測歪みを抑制することのできる走査型荷電粒子顕微鏡及び試料観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための一実施形態として,試料上の二次元領域に対し,荷電粒子線のライン走査の方向が交互に反転するように走査して走査領域の画像を形成する走査型荷電粒子顕微鏡において,前記荷電粒子線の走査ライン間距離は,前記試料に前記荷電粒子線を照射したときの,前記試料の帯電特性又は前記試料の明度の視野内均一性に基づいて調整されることを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡とする。
また,荷電粒子源と,試料を載置する試料ステージと,前記荷電粒子源から放出された荷電粒子線を前記試料上で走査する走査手段と,前記試料からの電気信号を用いて前記試料表面の画像を表示する表示手段とを備えた走査型荷電粒子顕微鏡において,前記表示手段はGUI画面を表示するものであり,前記GUI画面は,前記試料に関する情報を入力する試料情報入力手段と,前記荷電粒子線を走査し前記試料上の二次元領域に対する走査領域の画像を形成する際の前記荷電粒子線のライン走査方向,前記荷電粒子線の走査ライン間距離,前記走査ライン間距離の上限と下限とを含む走査条件と,前記走査条件を選択する選択手段とを含み,前記走査手段は,前記選択手段により選択された走査条件に基づいて前記試料を走査することを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡とする。
また,試料上の二次元領域に対し,荷電粒子線を走査して走査領域の画像を形成する走査型荷電粒子顕微鏡を用いた試料観察方法において,前記試料に前記荷電粒子線を照射したときの前記試料の帯電特性又は前記試料の明度の視野内均一性を求める第1の工程と,求められた前記試料の帯電特性又は前記試料の明度の視野内均一性に基づいて前記荷電粒子線の走査ライン間距離を調整する第2の工程と,調整された前記荷電粒子線の走査ライン間距離となるように,且つ前記荷電粒子線のライン走査の方向が交互に反転するように前記試料を走査する第3の工程と,を有することを特徴とする試料観察方法とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,試料に荷電粒子線を照射したときの試料の帯電特性又は試料の明度の視野内均一性に基づいて荷電粒子線の走査ライン間距離を含む走査条件を決定するため,絶縁体パターンであっても,撮影中一次荷電粒子線照射起因帯電の影響を抑制し,二次荷電粒子の検出率の変動を抑制することにより視野内計測歪みを抑制することのできる走査型荷電粒子顕微鏡及び試料観察方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像を取得する際の電子線の視野内走査法の例であり,(a)は従来のインターレス走査,(b)は往復走査を示す。
【図2】従来のインターレス走査法で取得したレジストL&Sパターンの観察の一例であり,(a)はSEM像の模式図およびSEM像に対応する明度を,(b)は走査方向に配列された各ラインに対応するWB明度を,(c)は走査方向に配列された各ラインのラインCDの計測値を示す。
【図3】電子走査起因の帯電による二次電子検出率への影響を説明するための説明図である。
【図4】非金属材料表面上チャージによるクーロン力作用を説明するための説明図である。
【図5】往復走査で得たSEM画像を用いた解析結果の一例であり,ラインWB明度及びラインCDの計測値を示す。
【図6】実施例1に係る走査型電子顕微鏡の全体概略構成のブロック図である。
【図7】帯電領域の画像輝度の時間変化から帯電特性パラメータを抽出する説明図である。
【図8】実施例1に係る走査型電子顕微鏡において,一次電子線走査方法を決定するまでの構成図である。
【図9】実施例1に係る走査型電子顕微鏡における画像取得ためのシーケンスである。
【図10】実施例2に係る走査型電子顕微鏡の全体概略構成のブロック図である。
【図11】実施例2に係る走査型電子顕微鏡における画像取得ためのシーケンスである。
【図12】実施例3における画像取得ためのシーケンスである。
【図13】実施例4における画像取得ためのシーケンスである。
【図14】実施例1に係る走査型電子顕微鏡における画像取得ためのGUIの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,本発明の実施形態について添付図面を用いて,走査型荷電粒子顕微鏡の一つである走査型電子顕微鏡を例として詳細に説明する。なお,本発明による実施形態は,本発明を実現する上での一例に過ぎず,本発明は,これによって限定されるものではない。電子に代えてイオンを用いることもできる。
【0014】
本発明の実施形態では,試料の電子線照射起因帯電緩和特性を測定し,その結果を基に,電子線照射帯電の影響を抑制する往復走査の制御パラメータを決定する方法及びそれを備えた走査型電子顕微鏡を提供する。
【0015】
電子線照射に起因して試料から放出される二次電子及び後方散乱電子の挙動は,試料の照射領域近辺における帯電量及び分布に大きく左右される。特に2次信号の大半を占める二次電子の運動エネルギーが小さい(数eV)ため,試料に蓄積した電荷とのクーロン力により軌道が大きく変化する。照射位置から放出した二次電子が受けるクーロン力は,次のように考える。
【0016】
図4に示す散乱領域を含む半径aの円盤の範囲内で均一な電荷密度σを持つと仮定すると,円盤中心位置の法線上の電位Vは,解析的に式(1)で表わせる。符合50は絶縁膜,符号53は外部電界,符号55は導体を示す。なお,同一符号は同一構成要素を示す。
【0017】
【数1】

【0018】
ここで,ε:比誘電率,h:絶縁膜50の膜厚,E:外部電界53の強度である。式(1)から,表面中心位置の電位Vsは次式(2)のようになる。
【0019】
【数2】

【0020】
正の帯電により法線上電位の最小値VzBが存在する場合,電位障壁Vは,式(3)となる。
【0021】
【数3】

【0022】
電位障壁の位置zは,次の式を満たす。
【0023】
【数4】

【0024】
表面の正帯電により照射位置に生じる電位障壁Vにより,二次電子のうちエネルギーがqVより高い成分ISEが検出される。ISEは,次の式で表わすことができる:
【0025】
【数5】

【0026】
ここでδは,二次電子発生効率で,Vσは,二次電子のエネルギー分散を表わす値である。ηは,高エネルギーを有するため電位障壁の影響を受けない後方散乱電子の放出効率である。照射位置の正帯電の増加に伴いVが高くなり,放出電子の検出効率が低下してSEM像の明度が減少する。
【0027】
ライン走査でIdtの電子が注入されたときの照射位置の電荷面密度の変化量dσは,次の式で表わされる。
【0028】
【数6】

【0029】
ここで,λINは,ライン走査時単位走査距離あたりの電子線の注入量であり,dxは,時間間隔dtの間に電子線の移動距離,Sは,照射位置の同電位領域の面積,dSは移動により次回照射で同電位領域になるフレッシュな領域である。式(1)から式(6)を用いることで,ライン走査中の明度分布の変化を推測できる。
【0030】
式(5)によれば,上記二次電子の検出効率の変化を抑制するには,照射位置の電位障壁Vを一定にする必要がある。また,式(1)−(4)から,Vを一定値に維持するには,照射位置近辺の電荷密度σを一定にする必要がある。
本発明の実施の形態で提案した往復走査により視野内ラインエッジのホワイトバンド明度の変動及び測長歪みが抑制されることを実験により確認した。
【0031】
さらに,一般的に試料の材料,構造によって,電子線の照射に起因する帯電電荷の時間変化が異なる。上記二次電子と試料帯電の相互クーロン作用を抑制するには,原理的に試料毎に帯電の時間変化を測定し,それに応じて最適な走査方法を選択する必要がある。そこで,本発明の実施の形態による試料の観察方法は,GUIにて計測試料の材料,構造,電気特性に関する情報を入力する手段,またはエネルギーフィルタを用いて,一次電子線照射により試料から放出した二次電子のエネルギーを分光し,特定のエネルギーを持つ二次電子の強度の時間変化から試料の帯電特性を算出する手段と,それを基に一次電子線の試料上走査する走査線密度および走査ライン間距離を決定手段と,を備え,決定された走査走査線密度及び走査ライン間距離で試料を走査する工程を含むことを特徴とする。
【0032】
本発明の実施の形態によれば,一次電子線照射起因の帯電の変動が観察中に低減され,試料から放出した二次電子又は後方散乱電子が,帯電による影響を最小限に抑制することができる。よって,非金属材料を含むパターンのSEM像では,安定なコントラストを得ることが可能となり,より安定かつ高精度な観察ができる。
【0033】
一例として本発明の実施の形態で提供した往復走査制御で得たSEM像を用いてラインエッジ部ホワイトバンド明度及びライン測長値の電子線走査方向の分布を図5に示す。両者とも走査位置による依存性が図2(b)(c)に比較して大幅に低下していることが分かる。すなわち,帯電を考慮しての往復走査により視野内測長歪の改善が実験で検証された。
更なる本発明の特徴は,以下本発明の実施例によって明らかになるものである。
【実施例1】
【0034】
本発明に係る第1の実施例について図6〜図9,図14を用いて説明する。
【0035】
〔装置の構成〕
本発明の第1の実施例に係る走査型電子顕微鏡の概略全体構成のブロック図を図6に示す。陰極(電子源)1と第一陽極2の間には,演算装置22で制御される高電圧制御電源13により電圧が印加され,所定のエミッション電流が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には演算装置22で制御される高電圧制御電源13により加速電圧が印加されるため,陰極1から放出された一次電子線4は加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は,入力装置の指令により,集束レンズ制御電源14で制御された集束レンズ5で収束され,絞り板7で一次電子線4の不要な領域が除去され,一次電子線のプローブ電流Ipが制御される。
【0036】
その後,対物レンズ制御電源15で制御された対物レンズ6により,試料8に微小スポットとして収束され,偏向器10で試料上を二次元的に走査される。偏向器10の走査信号は,入力装置19で指定された視野大きさ,走査速度,画素数,視野内各画素の走査順序を含む走査条件に応じて偏向器制御電源16により制御される。また,試料8は二次元的に移動可能な試料ステージ23上に固定されている。試料ステージ23はステージ制御部17により移動が制御される。一次電子線4の照射によって試料8から発生した二次電子9は,エネルギーフィルタの制御電源12で制御されたエネルギーフィルタ26を通過し,二次電子検出器11により検出され,描画装置20は検出された2次信号を可視信号に変換して別の平面上に適宜配列するように制御を行うことで,SEM像表示装置18に試料の表面形状に対応した画像を画像として表示する。
【0037】
二次電子検出器11で検出された信号は,二次信号アンプ28で増幅された後,描画装置20内の画像メモリに蓄積されるようになっている。画像メモリのメモリ位置に対応したアドレス信号は,演算装置22内,或いは別に設置されたコンピュータ内で生成され,アナログ変換された後に,偏向器10に供給される。X方向のアドレス信号は,例えば画像メモリが512×512画素でラスタ走査の場合,0から512を繰り返すデジタル信号であり,Y方向のアドレス信号は,X方向のアドレス信号が0から512に到達したときにプラス1され,0から512の繰り返しのデジタル信号である。これがアナログ信号に変換される。
【0038】
画像メモリのアドレスと電子ビームを走査するための偏向信号のアドレスが対応しているので,画像メモリには偏向器10による電子ビーム偏向領域の二次元像が記録される。なお,画像メモリ内の信号は,読み出しクロックで同期された読み出しアドレス生成回路で時系列に順次読み出すことができる。アドレスに対応して読み出された信号はアナログ変換され,画像表示装置18の輝度変調信号となる。
【0039】
画像メモリには,S/N改善のため画像データを合成して記憶する機能が備えられている。例えば,8回の二次元走査で得られた画像を重ねて記憶することで,1枚の完成した像を形成する。すなわち,1回もしくはそれ以上のX−Y走査単位で形成された画像を合成して最終的な画像を形成する。1枚の完成した画像を形成するための画像数(以下,フレーム積算枚数)は任意に設定が可能であり,二次電子発生効率等の条件を考慮して適正な値が設定される。
【0040】
入力装置19はオペレータと演算装置22のインターフェースを行うもので,オペレータはこの入力装置19を介して上述の各ユニットの制御を行う他に,測定点の指定や寸法測定の指令を行う。
【0041】
また,本装置は検出された二次電子等に基づいてラインプロファイルを抽出する手段であるラインプロファイル抽出機能24を備えている。ラインプロファイルは一次電子線を走査した時に二次電子の検出量,或いは画像の輝度情報等に基づいて形成されるものであり,得られたラインプロファイルは例えば半導体ウェハ上に形成されたパターンの寸法計測等に用いられる。本実施例1においては,パターンエッジ部ホワイトバンド明度の均一性を判定する機能(視野内測長均一性を維持可否判定機能)25において前記ラインプロファイルを用いる。
【0042】
また,記憶装置21において検査対象のパターンレイアウトやエッジ形状情報,観察用レシピが保存される。
〔帯電制御の手法〕
試料の帯電緩和特性(時定数)の測定の一例を図7に示す。
一次電子線4が,試料8に照射されると,二次信号9(二次電子及び後方散乱電子のうち少なくとも1つを含む)が発生する。試料ホルダ(ステージ)23,対物レンズ6及び電極27に作られている電界は,二次信号9に対しては加速電界として作用するため,対物レンズ6の通路内に引き上げられ,対物レンズ6の磁界の作用を受けながら上昇し,さらに走査偏向器10を通過し,エネルギーフィルタ26に入射する。エネルギーフィルタ26の設定値により運動エネルギーの低い二次信号成分は,エネルギーフィルタ26を通過できず,それより高い成分は,エネルギーフィルタ26を通過する。一次電子線4が,試料8に一定のドーズ量で照射されると,試料8は帯電し,試料8の照射位置における電位Vs’が変動する。ここで試料電位Vs’は,一次電子線4の照射で生成した試料8の帯電電位Vsと試料ホルダ23に印加されたリターディング電位Vrとの和である。帯電により試料電位Vs’が増加する(正帯電の場合)と,電子は帯電領域に引き寄せられエネルギーフィルタ26を通過できる二次信号量が減少するため,検出器11で検出される二次信号量が減少し画像上輝度が減少する。一次電子線4を試料8に予め照射し帯電領域を形成し,一定の時間間隔で同一領域に再度照射し,取得した画像上輝度を記録する。図7に前記時間間隔がある値(t)の時に画像上帯電領域の明るさの変化曲線の一例を示す。この時,一次電子線4の走査方法は,目的に応じて任意設定でよい(1点照射,ライン走査,2次元走査)。また,S/Nを上げるために,試料上複数箇所で上記測定を行い,その結果を平均化して出力する。点照射する場合,式(5)を用いれば,材料の二次電子および後方散乱電子のイールドや帯電の緩和特性(時定数t)を抽出可能である。
【0043】
図8は一次電子線走査方法を決定するまでの構成図である。図8に示されるように,まずは,式(5)から一次電子線4の照射エネルギー,試料の二次電子および後方散乱電子イールド,プローブ電流,それから走査ライン間距離のうち少なくとも一つの上限を基に,入力装置19内の走査条件設定装置31により一次電子線の走査パラメータを変化させてSEM像を取得する。
【0044】
次に,前記輝度の時間変化曲線を帯電特性演算装置29に入力し,試料8の二次電子及び後方散乱電子のイールドや帯電緩和時定数を抽出し,記憶装置21に保存する。保存された情報及び一次電子線走査の制限条件(走査ライン間距離,画像画素数,視野,積算回数のいずれかを含む)を用いて描画装置20内の走査方法決定装置30で一次電子線4の走査方法を決定する。走査方法には,前記一次電子線4の走査線密度を決定するプローブ電流及び走査速度,上記走査線密度に対応する視野内の走査ライン間距離を含む。そして,決定された走査方法或はオペレータが候補から選んだ走査方法で試料に対し一次電子線4を試料8に走査し画像を取得してその試料を観察する。なお,本実施例では各機能を各装置内で実行しているが,それぞれの機能を有するプログラムを演算装置22のプロセッサ上で動作させても良い。
【0045】
一例として式(5)に示した点照射の明度変化を図7に示したカーブとのフィッティングにより帯電特性(二次電子イールド,後方散乱電子イールド,帯電緩和時定数)が求められる。式(5)で求めたパラメータを式(6)に代入することで,各走査条件におけるライン走査中の明度変化が求められる。その明度変化が所定値(閾値)より小さくなるように(即ち,視野内における帯電の影響(横方向(試料表面に平行する)電界)を抑制するように)走査条件を決定できる。
〔処理シーケンス〕
図9は,本実施例に係る走査型電子顕微鏡における画像取得ためのシーケンスを説明するためのフローチャートである。ステップ S100では,同種類試料或は同じウェハで以前の帯電特性の測定歴の結果が記憶装置21に格納されているかどうかが判断され,帯電緩和時定数測定の要否が決定される。帯電特性を測定する場合は,ステップ S101で帯電特性の測定箇所に電子線を移動する。帯電特性の測定箇所は,観察領域近辺にある平坦部若しくは観察部,それと等価なパターン部が望ましい。
【0046】
続いてステップ S102において,エネルギーフィルタ26に印加するエネルギーフィルタ電位である阻止電位が設定され,エネルギーフィルタ26に印加される。エネルギーフィルタ電位は,試料上局所的な帯電分布によって影響を受けない高エネルギーの二次電子を取り込むための電位である。そして,ステップ S103で一次電子線4を試料8に照射して2次信号9と照射時間関(SEM画像)を取得する。上記ステップ S103―ステップ S105を繰り返す。なお,ステップ S101−ステップ S105は,走査条件設定装置31により設定された走査条件で実行される。
【0047】
ステップ S106では,前記ステップ S105まで取得したデータを帯電特性演算装置29に入力し,前記の方法で試料の帯電緩特性を算出し,記憶装置21に保存する。ステップ S107では,抽出した帯電特性パラメータ及び前記一次電子線4の走査に対する制限条件を基に,図8に示した方法で最適な(即ち,視野内における帯電の影響(横方向電界)を平均化するような)走査方法を決定する。複数の走査方法の候補が存在する場合は,オペレータにより選択することも可能である。その一例として,予め試料の帯電緩和特性パラメータに対応する走査方法のリストを記憶装置21に保存し,帯電緩和特性パラメータが入力されると,走査方法の候補が表示され,オペレータにより決定される。
【0048】
ステップ S108では,走査方法決定装置から出力された走査方法を用いて試料のSEM画像を取得し,観察を行う。また,ここで出力された走査方法を試料と共に記憶装置21に保存し,ステップ S109で処理が終了する。なお,後継の観察で試料の材料若しくは構造若しくはパターンが同等とみなせる場合,記憶装置21に記憶された情報を用いることにより,帯電緩和時定数測定や走査方法の最適化を行う必要なく最適な走査方法で画像を取得できる。
【0049】
ステップ S100で帯電緩特性パラメータの計測が不要と判断した場合には,ステップ S108に移行する。ステップ S108では,同等の試料で過去に帯電緩和時定数の測定歴がある場合,記憶装置21から帯電緩和時定数を読み出す。測定歴がない場合には,入力装置19から指定するかデフォルト値を使用する。
〔GUI〕
次に,画像表示装置18に表示されるGUIについて説明する。一例として図14に示したGUI 401や図9を用いて説明する。使用者がアライメント選択部407によりアライメントを選択し,試料(ウェハ)4上のチップのレイアウト402の任意の複数の位置を選択することによってアライメントを演算装置22で処理する。この処理を行なうと図9のS100を処理することになる。S100でYesの場合には,図14のキャリブレーション選択部408によりキャリブレーションを使用者は選択する。その際,試料に関する情報(試料作成時の試料の工程名,レジストの膜厚,材料,パターン等)を選択することになる。符号406は検査・計測ウェハの情報の選択部を示す。その後,図9でS101の処理を行い,S107まで処理を行なう。
【0050】
S107での推奨走査条件(最適走査条件の候補)が,例えばGUI 401の推奨走査条件の選択メニュー(走査ライン間距離,その上限及び下限)405およびGUI 401の推奨走査条件の選択メニュー(走査方向)409に表示され,使用者が推奨走査条件を選択することによって決定する。推奨走査条件でレシピを作成し,その試料に応じた走査線密度で走査してSEM像を取得する(S108)。このようにすることによって,好適な走査線密度で計測することで,試料パターンの特に横ラインを計測することができる。また,GUIにより使用者の操作性を向上することが出来る。
【0051】
本GUIは,検査・計測対象である試料(ウェハ)403のレイアウト402,位置,傾きを含む設定・校正を行う「アライメント」画面,ビームの走査条件を選定する「キャリブレーション」画面,選定されたビーム条件を校正する「ビーム校正」画面,検査・計測の位置,シーケンスを含む設定を行う「レシピ作成」画面,検査・計測を実施する「計測」画面からなる。「キャリブレーション」画面では,ウェハの材料や構造を含む情報を入力/選択する手段が設けられ,ユーザーによりインプットすることが可能である。装置は,試料上特定な場所で計測試料の帯電特性を計測し推奨走査条件を提供か,データベースから推奨走査条件を呼び出す。それらの走査条件による試し計測結果(帯電緩和特性や明度の時間または空間変化等)404を表示する。その結果に基づき,本検査・計測に用いる走査条件がユーザーによりまたは自動的に決定する。
【0052】
本実施例1に係る走査型電子顕微鏡を用いて,半導体ウェハ上に形成され,一視野内に多数含まれるレジストラインパターンの寸法計測を行なった結果,視野全面に渡って同等の寸法値を得ることができた。なお,電子に代えてイオンを用いることもできる。
【0053】
本実施例によれば,ライン走査の方向を交互に反転させて走査する往復走査でのパターン撮影の際,帯電緩和特性(時定数)の測定値を用いて視野内における帯電の影響(横方向電界)を平均化するような走査条件(プローブ電流,走査速度,走査ライン間距離の少なくとも一つを含む)を決定することにより,絶縁体パターンであっても一次荷電粒子線照射起因帯電の影響を抑制し,二次荷電粒子の検出率の変動を抑制することにより視野内の計測歪みを抑制することのできる走査型荷電粒子顕微鏡及び試料観察方法を提供することができる。
【実施例2】
【0054】
第2の実施例について図10及び図11を用いて説明する。なお,実施例1に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。図10は本実施例2に係る走査型電子顕微鏡の概略全体構成のブロック図である。
【0055】
図6に示した実施例1の装置構成に比べ,実施例2の装置構成では,試料の帯電緩和特性を測定するためのエネルギーフィルタ及びその制御系の代わりに,ケルビンプローブフォース顕微鏡或いはケルビンプローブ33が設置される。それぞれを用いて,ケルビンプローブフォース顕微鏡法或いはケルビン法を用いてプローブ制御部32を通して試料の帯電緩和の時間変化を測定する。測定データを用いて,図8に示した構成図で一次電子線走査方法を決定する。本実施例による画像取得ためのフローチャートを図11に示す。実施例1のフローチャートに比べ,試料帯電の時間変化の測定に,エネルギーフィルタ26を用いた方法の代わりにケルビンプローブフォース顕微鏡或いはケルビン法を用いた。即ち,本実施例においては,図9で示したステップ S102−S105に代えて,ライン走査で初期帯電生成するステップ S110とケルビンプローブフォース顕微鏡/ケルビン法による試料帯電の経時変化を測定するステップ S111を有する。ステップ S106以降は図9と同様であり,説明は省略する。
【0056】
本実施例2に係る走査型電子顕微鏡を用いて,半導体ウェハ上に形成され,一視野内に多数含まれるレジストラインパターンの寸法計測を行なった結果,視野全面に渡って同等の寸法値を得ることができた。なお,電子に代えてイオンを用いることもできる。
【0057】
本実施例によれば,ライン走査の方向を交互に反転させて走査する往復走査でのパターン撮影の際,帯電緩和特性(時定数)の測定値を用いて走査条件(プローブ電流,走査速度,走査ライン間距離の少なくとも一つを含む)を決定することにより,絶縁体パターンであっても一次荷電粒子線照射起因帯電の影響を抑制し,二次荷電粒子の検出率の変動を抑制することにより視野内の計測歪みを抑制することのできる走査型荷電粒子顕微鏡及び試料観察方法を提供することができる。特に,ケルビンプローブフォース顕微鏡法或いはケルビン法を用いることにより,実施例1に比べ帯電電圧の測定精度を高めることができる。
【実施例3】
【0058】
第3の実施例について図12を用いて説明する。なお,実施例1又は2に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。なお,本実施例では図6に示した走査型電子顕微鏡を用いた。
【0059】
図12は本実施例に係る画像取得ためのシーケンスである。
ステップ S201で開始し,試料をロードする(ステップ S202)。ステップ S203では,試料に関する情報を入力装置19から入力または,事前に記憶装置21に記憶させておいた各種試料の中から該当する試料に関する情報を記憶装置21から呼び出す。ステップ S204では,上記試料情報を基に,事前に各種走査方法(プローブ電流,走査速度,走査ライン間距離の少なくとも一つを含む)が記憶された記憶装置21から推奨する走査方法の候補を決定する。ステップ S205では,上記推奨走査方法を更に絞り込むために試し測定位置を指定し,各推奨走査方法を用い画像取得を行う。ステップ S206では,前ステップで取得した画像に対して,パターンのエッジ部明度抽出処理を行い,視野内均一性An(ばらつき)を算出する。Anが所定値より小さい走査方法が存在する場合,その走査方法を用いて本観察を行い,処理を終了する。また,上記条件を満たす走査方法が複数存在する場合,Anが最少となる走査方法を本観察に用いる。
【0060】
次に,ステップ S207においてAnが所定値(閾値)未満かどうかを判定する。ステップ S207においてNo,即ちAnが所定値より小さい走査方法が存在しない場合,ステップ S211に進み,試料(ウェハ)情報を再入力するかを判断する。ステップ S211においてYesの場合,ステップ S203へ戻り推奨走査方法を決定する試料情報の入力し直しを行いリトライする。ステップ S211においてNoの場合には,ステップ S212に進み本検査・計測を実施するかを判断する。ステップ S212においてYesの場合,ステップ S208へ進み試し測定で抽出エラー率が最少となる走査方法を決定し,ステップ S209において本観察(本検査・計測)を行う。ステップ S212においてNoの場合には測定せず,ステップ S210にて終了にする。
【0061】
ステップ S207においてYesの場合には,ステップ S208に進みAnが最小値となる走査方法を決定する。次にステップ S209において本検査・計測を行ない,ステップ S210にて終了する。
【0062】
また,上記パターンエッジ部明度のばらつきの代わりに,パターンエッジ部以外の明度のばらつきの閾値を設定し,各走査方法で得た画像から対応した明度を抽出し設定した閾値と比較し走査方法の候補を決定してもよい。
【0063】
また,決めた走査方法で画像のS/Nを求め,本観察で画像の積算フレーム回数を算出し,画像取得方法にフィードバックしてもよい。
【0064】
上記シーケンスに従って,半導体ウェハ上に形成され,一視野内に多数含まれるレジストラインパターンの寸法計測を行なった結果,視野全面に渡って同等の寸法値を得ることができた。なお,電子に代えてイオンを用いることもできる。
【0065】
本実施例によれば,ライン走査の方向を交互に反転させて走査する往復走査でのパターン撮影の際,取得した所定の箇所の画像パターン明度の視野内均一性の計算値を用いて走査条件(プローブ電流,走査速度,走査ライン間距離の少なくとも一つを含む)を決定することにより,絶縁体パターンであっても一次荷電粒子線照射起因帯電の影響を抑制し,二次荷電粒子の検出率の変動を抑制することにより視野内の計測歪みを抑制することのできる走査型荷電粒子顕微鏡及び試料観察方法を提供することができる。
【実施例4】
【0066】
第4の実施例について図13を用いて説明する。なお,実施例1乃至3のいずれかに記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。なお,本実施例では図6に示した走査型電子顕微鏡を用いた。
【0067】
図13は本実施例に係る画像取得ためのシーケンスである。
ステップ S301−S303では,観察用試料をロードし,電子線照射帯電に関わる材料情報を入力する。ステップ S304では,視野内明度ばらつき及びシュリンクを考慮した走査方法の候補の選定。決定方法は,前記実施例3に述べた方法でもよい。ステップ S305では,上記推奨走査方法で,一次電子線を制御するあるパラメータを変化させ,一連の画像の取得を行う。ステップ S306では,前ステップで取得した画像に対して解析を行い,視野内明度ばらつき/測長値およびシュリンク量を求める。ステップ S107では,推奨走査条件(プローブ電流,走査速度,走査ライン間距離の少なくとも一つを含む)の決定/選択する。次に,ステップ S108に進み,本観察(SEM像取得),観察結果の保存を行い,後,終了する(S109)。
【0068】
上記シーケンスに従って,半導体ウェハ上に形成され,一視野内に多数含まれるレジストラインパターンの寸法計測を行なった結果,レジストパターンのシュリンク量が低減されると共に,視野全面に渡って同等の寸法値を得ることができた。なお,電子に代えてイオンを用いることもできる。
【0069】
本実施例によれば,ライン走査の方向を交互に反転させて走査する往復走査でのパターン撮影の際,取得した所定の箇所の画像パターン明度の視野内明度ばらつき及びシュリンク量を用いて走査条件(プローブ電流,走査速度,走査ライン間距離の少なくとも一つを含む)を決定することにより,絶縁体パターンであっても一次荷電粒子線照射起因帯電の影響を抑制し,二次荷電粒子の検出率の変動を抑制することにより視野内の計測歪みを抑制することのできる走査型荷電粒子顕微鏡及び試料観察方法を提供することができる。また,走査条件を決定するに当りパターンのシュリンク量を考慮することにより,パターン観察時のシュリンク量を低減することができる。
【0070】
本発明の特徴を纏めると以下の通りである。
本発明は,試料上の二次元領域に対し,荷電粒子線を走査して走査領域の画像を形成する走査型荷電粒子顕微鏡において,前記試料に応じてライン走査の方向を交互に反転させて走査すること(図1(b))を特徴とする。
また,本発明は,GUIと,試料に関する情報を入力する試料情報入力手段と,推奨走査条件が前記GUIに表示する表示手段と,該推奨走査条件を選択することによって前記試料に応じた走査線密度および走査ライン間距離のうち少なくとも一つを選択し走査することを特徴とする。
さらに,前記試料の電気特性を測定する手段と,測定された前記電気特性に基づいて前記走査線密度および走査ライン間距離のうち少なくとも一つを選択し走査することを特徴とする。
さらに,電気特性は,荷電粒子線を前記試料に照射することで前記試料から放出される二次荷電粒子の強度の時間変化に基づいて算出された前記試料の二次荷電粒子イールド,後方散乱荷電粒子イールド及び帯電緩和時定数のうち少なくとも一つを含む前記試料の帯電特性パラメータであることを特徴とする。
さらに,電気特性は,荷電粒子線を前記試料の複数箇所に照射することで前記試料から放出される二次荷電粒子の強度の時間変化に基づいて算出された前記飼料の帯電特性パラメータであることを特徴とする。
さらに,走査線密度は,前記荷電粒子線の走査速度又は/及び前記荷電粒子線の電流を制御することを特徴とする。
さらに,画像から(信号/ノイズ)を算出し,算出された値に応じてフレーム数を算出することを特徴とする。
また,本願発明は,試料上の二次元領域に対し,荷電粒子線を走査して走査領域の画像を形成する試料観察方法において,試料に関する情報を入力する工程と,前記試料に関する情報に基づいて推奨走査条件をGUIに表示する工程と,前記推奨走査条件を選択することによって前記試料に応じた走査方向,走査線密度および走査ライン間距離のうち少なくとも一つを制御して走査することを特徴とする。
さらに,試料上の二次元領域に対し,荷電粒子線を走査して走査領域の画像を形成する試料観察方法において,前記試料に応じて走査線密度および走査ライン間距離のうち少なくとも一つを最適化して走査することを特徴とする。
さらに,試料の電気特性を測定し,測定された前記電気特性に基づいて前記走査方向,走査線密度および走査ライン間距離のうち少なくとも一つを制御して走査することを特徴とする。
さらに,電気特性に基づいて,走査する複数の走査線間距離と前記走査線間の時間間隔のうち少なくとも1つを制御して走査することを特徴とする。
【0071】
さらに,電気特性は,荷電粒子線を前記試料に照射することで前記試料から放出される二次荷電粒子の検出効率の時間変化に基づいて算出された前記試料の前記帯電特性パラメータであることを特徴とする。
さらに,電気特性は,荷電粒子線を前記試料の複数箇所に照射することで前記試料から放出される二次荷電粒子の強度の時間変化に基づいて算出された前記試料の帯電緩和時定数であることを特徴とする。
さらに,走査線密度は,前記荷電粒子線の走査速度又は/及び前記荷電粒子線の電流を制御することを特徴とする。
さらに,画像から(信号/ノイズ)を算出し,算出された値に応じてフレーム数を算出することを特徴とする。
さらに,焦点又は非点補正量を算出し,荷電粒子光学系にフィードバックすることを特徴とする。
【0072】
なお,本発明は上記した実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また,ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり,また,ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また,各実施例の構成の一部について,他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:陰極(電子源),2:第一陽極,3:第二陽極,4:一次電子線,5:集束レンズ,6:対物レンズ,7:絞り板,8:試料,9:二次電子,10:偏向器,11:二次電子検出器,12:エネルギーフィルタ制御電源,13:高電圧制御電源,14:集束レンズ制御電源,15:対物レンズ制御電源,16:偏向器制御電源,17:ステージ制御部,18:画像表示装置,19:入力装置,20:描画装置,21:記憶装置,22:制御演算装置,23:試料ステージ,24:ラインプロファイル抽出機能,25:視野内測長均一性を維持可否判定機能,26:エネルギーフィルタ,27:電極,28:二次信号アンプ,29:帯電特性演算装置,30:走査方法決定装置,31:走査条件設定装置,32:プローブ制御部,33:ケルビンプローブフォース顕微鏡用プローブ或いはケルビンプローブ,50:絶縁膜,51:侵入深さ,52:走査方向,53:外部電界,54:p型Si基板(p−Sisub),55:導体,401:検査・計測制御用GUI,402:ウェハ上チップのレイアウト,403:検査・計測対象(ウェハ),404:帯電緩和特性の測定結果,405:推奨走査条件の選択メニュー(走査ライン間距離),406:検査・計測ウェハの情報の選択部,407:アライメント選択部,408:キャリブレーション選択部,409:推奨走査条件の選択メニュー(走査方向)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上の二次元領域に対し,荷電粒子線のライン走査の方向が交互に反転するように走査して走査領域の画像を形成する走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記荷電粒子線の走査ライン間距離は,前記試料に前記荷電粒子線を照射したときの,前記試料の帯電特性又は前記試料の明度の視野内均一性に基づいて調整されることを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項2】
荷電粒子源と,試料を載置する試料ステージと,前記荷電粒子源から放出された荷電粒子線を前記試料上で走査する走査手段と,前記試料からの電気信号を用いて前記試料表面の画像を表示する表示手段とを備えた走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記表示手段はGUI画面を表示するものであり,
前記GUI画面は,
前記試料に関する情報を入力する試料情報入力手段と,
前記荷電粒子線を走査し前記試料上の二次元領域に対する走査領域の画像を形成する際の前記荷電粒子線のライン走査方向,前記荷電粒子線の走査ライン間距離,前記走査ライン間距離の上限と下限とを含む走査条件と,
前記走査条件を選択する選択手段とを含み,
前記走査手段は,前記選択手段により選択された走査条件に基づいて前記試料を走査することを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記荷電粒子線の前記試料上での走査速度およびプローブ電流のうち少なくとも1つは,前記試料に前記荷電粒子線を照射したときの,前記試料の帯電特性又は前記試料の明度の視野内均一性に基づいて制御されることを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項4】
請求項3に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記試料の帯電特性を測定する手段を有することを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項5】
請求項4に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記帯電特性は,前記荷電粒子線を前記試料の同一箇所に照射することで前記試料から放出される二次荷電粒子の強度の時間変化に基づいて算出された前記試料の二次荷電粒子イールド,後方散乱荷電粒子イールド及び帯電緩和時定数のうち少なくとも一つを含む帯電特性パラメータであることを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項6】
請求項3に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記荷電粒子線の走査ライン間距離,前記走査速度および前記プローブ電流を含む走査条件の最適走査条件候補は,複数の走査条件で取得した前記画像の視野内ライン走査方向の明度変化をそれぞれ算出し,算出されたそれぞれの前記明度変化と所定値とを比較して決定されることを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項7】
請求項3に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記試料は,前記荷電粒子線の照射によりシュリンクする材料を含むパターンを有し,
前記荷電粒子線の走査ライン間距離,前記走査速度および前記プローブ電流を含む走査条件の最適走査条件候補は,複数の走査条件で前記パターンに前記荷電粒子線を照射して取得した前記画像の視野内ライン走査方向における前記パターンの明度変化およびシュリンク特性をそれぞれ算出し,算出されたそれぞれの前記明度変化および前記シュリンク特性と所定値とを比較して決定されることを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項8】
請求項2に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記GUI画面は,更に前記荷電粒子線の前記試料上での走査速度およびプローブ電流のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項9】
請求項2に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記GUI画面は,複数の走査条件で取得した前記画像の明度の時間または空間変化を含むことを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項10】
請求項2に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記GUI画面は,
前記試料の電気特性の測定結果と,
前記荷電粒子線の走査速度およびプローブ電流のうち少なくとも1つの選択手段とを更に含むことを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項11】
請求項10に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記電気特性は,前記荷電粒子線を前記試料の同一箇所に照射することで前記試料から放出される二次荷電粒子の強度の時間変化に基づいて算出された前記試料の前記帯電特性パラメータであることを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項12】
請求項10に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記GUI画面は,
複数の走査条件で取得した前記画像の視野内ライン走査方向の明度変化と,
前記明度変化が所定値と比較して得られる最適走査条件の候補とを含むことを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項13】
請求項2に記載の走査型荷電粒子顕微鏡において,
前記試料は,前記荷電粒子線の照射によりシュリンクする材料を含むパターンを有し,
前記GUI画面は,複数の走査条件で前記試料を走査し,取得した画像内ライン走査方向における前記パターンの明度変化およびシュリンク特性を算出し,前記明度変化およびシュリンク特性に基づいて得られる最適走査条件の候補を含むことを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項14】
試料上の二次元領域に対し,荷電粒子線を走査して走査領域の画像を形成する走査型荷電粒子顕微鏡を用いた試料観察方法において,
前記試料に前記荷電粒子線を照射したときの前記試料の帯電特性又は前記試料の明度の視野内均一性を求める第1の工程と,
求められた前記試料の帯電特性又は前記試料の明度の視野内均一性に基づいて前記荷電粒子線の走査ライン間距離を調整する第2の工程と,
調整された前記荷電粒子線の走査ライン間距離となるように,且つ前記荷電粒子線のライン走査の方向が交互に反転するように前記試料を走査する第3の工程とを有することを特徴とする試料観察方法。
【請求項15】
請求項14に記載の試料観察方法において,
前記荷電粒子線の前記試料上での走査速度およびプローブ電流のうち少なくとも1つは,前記試料に前記荷電粒子線を照射したときの,前記試料の帯電特性又は前記試料の明度の視野内均一性に基づいて制御されることを特徴とする試料観察方法。
【請求項16】
請求項14に記載の試料観察方法において,
前記走査型荷電粒子顕微鏡は,前記試料の帯電特性を測定する手段を有し,
前記走査速度,プローブ電流,走査ライン間距離のうち少なくとも1つは,測定された前記帯電特性に基づいて制御されることを特徴とする試料観察方法。
【請求項17】
請求項16に記載の試料観察方法において,
前記帯電特性は,前記荷電粒子線を前記試料の同一箇所に照射することで前記試料から放出される二次荷電粒子の強度の時間変化に基づいて算出された前記試料の二次荷電粒子イールド,後方散乱荷電粒子イールド及び帯電緩和時定数のうち少なくとも一つを含む帯電特性パラメータであることを特徴とする試料観察方法。
【請求項18】
請求項16に記載の試料観察方法において,
前記走査速度,プローブ電流および走査ライン間距離を含む走査条件の最適走査条件候補は,複数の走査条件で取得した前記画像の視野内ライン走査方向の明度変化を算出し,明度変化が所定値と比較して決定されることを特徴とする試料観察方法。
【請求項19】
請求項14に記載の試料観察方法において,
前記試料は,前記荷電粒子線の照射によりシュリンクする材料を含むパターンを有し,
前記第1の工程は,複数の走査条件で前記試料を走査し,取得した画像内ライン走査方向の前記パターンの明度変化およびシュリンク特性を算出する工程を含み,
前記第2の工程は,算出された前記明度変化および前記シュリンク特性に基づいて前記走査ライン間距離を含む走査条件の最適走査条件候補を決定する工程を含み,
決定された前記最適走査条件候補をGUIに表示する工程を更に含むことを特徴とする試料観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−169070(P2012−169070A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27364(P2011−27364)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】