説明

走査探針顕微鏡及びそれを利用した測定方法

【課題】スキャナーの整列誤差に起因するイメージの歪曲が防止された走査探針顕微鏡及びそれを利用した測定方法を提供する。
【解決手段】(i)探針と、(ii)探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、(iii)サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、(iv)第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面が、第1スキャナーによる探針の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、第2スキャナーまたは第1スキャナーの位置を調整する調整装置と、を備えることを特徴とする走査探針顕微鏡及びそれを利用した測定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査探針顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)及びそれを利用した測定方法に係り、さらに詳細には、スキャナーの整列誤差に起因するイメージの歪曲が防止されたSPM及びそれを利用した測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SPMは、ナノスケールの解像力を有する顕微鏡であって、サンプルの表面形状やサンプルの電気的特性などをイメージとして表す顕微鏡である。SPMには、原子力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)、磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope:MFM)及び走査静電容量顕微鏡(Scanning Capacitance Microscope:SCM)などがある。このようなSPMは、探針のチップがサンプルの表面に接しつつ移動するか、または探針のチップがサンプルの表面と一定の距離を維持しつつ移動して、サンプルの表面形状やサンプルの電気的特性などの分析に利用されうる。しかし、従来のSPMの場合、備えられたスキャナーの整列誤差によって獲得したデータが、実際のサンプルの特性と異なりうるという問題点があった。
【0003】
図1は、従来のSPMを概略的に示す斜視図である。図1に示すように、フレーム50に第1スキャナー31及び第2スキャナー32が備えられている。第1スキャナー31の端部には、探針10が付着されており、第1スキャナー31は、探針10を±z方向に移動させる。第2スキャナー32上には、ステージ20が備えられており、第2スキャナー32は、ステージ20をxy平面上で移動させる。このステージ20上にサンプルが配置されれば、第1スキャナー31が探針10を±z方向に移動させ、第2スキャナー32がステージ20、すなわち、サンプルをxy平面上で移動させることによって、サンプルの表面形状やサンプルの電気的特性などに関するデータを得る。
【0004】
図2は、理想的なSPMでサンプルをスキャニングしてサンプルの表面形状を測定することを概略的に示す概念図である。ここで、理想的なSPMとは、第1スキャナー31による探針10の位置変化がなされる直線が、第2スキャナー(図示せず)によるサンプルの位置変化がなされる平面に垂直であることを意味する。図2では、探針がxy平面上で移動するように図示したが、これは、図示の便宜のためにそのように図示しただけであり、実際には、探針は、±z方向、すなわち、上下にのみ移動し、サンプルがxy平面上で移動する。
【0005】
図2に示すように、探針10のチップがサンプルの表面60上に接しつつ、第2スキャナーによりサンプルがxy平面上で移動する。このとき、サンプルの表面60に隆起がある場合、第1スキャナー31の長さが変わりつつ探針10の位置が±z方向に変わる。このとき、第1スキャナー31の長さの変化に関するデータにより、サンプルの表面60の形状に対応するイメージ70が具現される。
【0006】
図3は、従来のSPMでサンプルをスキャニングしてサンプルの表面形状を測定することを概略的に示す概念図である。前述したように、第1スキャナー31は、探針10の位置を直線上で変化させ、第2スキャナーは、サンプルの位置を平面上で変化させるところ、第1スキャナー31による探針10の位置変化がなされる直線は、第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面に垂直であることが望ましい。しかし、実際のSPMの場合、第1スキャナーと第2スキャナーとのアラインには誤差が存在して、図3に示すように、第1スキャナー31による探針10の位置変化がなされる直線が、第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面に垂直ではなく、所定角度θほど傾く。このような状態で、サンプルの表面60の形状を測定すれば、図3に示すように、実際のサンプルの表面60の形状と異なるイメージ70が具現されるという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点を含めて種々の問題点を解決するためのものであって、スキャナーの整列誤差に起因するイメージの歪曲が防止されたSPM、及びそれを利用した測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(i)探針と、(ii)前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、(iii)サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、(iv)前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面が、前記第1スキャナーによる探針の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整する調整装置と、を備えることを特徴とするSPMを提供する。
【0009】
このような本発明の他の特徴によれば、サンプルを支持するステージをさらに備え、前記第2スキャナーは、前記ステージの位置を平面上で変化させうる。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記調整装置は、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線に沿ってサンプルの第1形状を得て、サンプルを前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線に沿ってサンプルの第2形状を得て、前記第1形状及び前記第2形状の平均形状を求めて、前記第1形状及び前記第2形状のうち何れか一つの形状と前記平均形状との差によって、前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整できる。
【0011】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記調整装置は、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第1直線を得て、サンプルを前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、その二つの3次元座標を連結する第2直線を得て、前記第1直線及び前記第2直線の平均直線を求めて、前記第1直線及び前記第2直線のうち何れか一本の直線と前記平均直線との差によって前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整できる。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記調整装置は、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第1直線を得て、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面への前記第1直線の正射影イメージの長さlを求め、サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第2直線を得て、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面への前記第2直線の正射影イメージの長さlを求めて、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の高さの差をzとするとき、arctan((l−l)/2z)の角度ほど前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整できる。
【0013】
また、本発明は、探針と、前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、を備えた走査探針顕微鏡を利用した測定方法であって、(i)前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線に沿ってサンプルの第1形状を得るステップと、(ii)サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線に沿ってサンプルの第2形状を得るステップと、(iii)前記第1形状及び前記第2形状の平均形状を求めるステップと、を含むことを特徴とする測定方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、探針と、前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、を備えた走査探針顕微鏡を利用した測定方法であって、(i)前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線に沿ってサンプルの第1形状を得るステップと、(ii)サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線に沿ってサンプルの第2形状を得るステップと、(iii)前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面が、前記第1スキャナーによる探針の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、前記第1形状及び前記第2形状の平均形状を求めて、前記第1形状及び前記第2形状のうち、何れか一つの形状と前記平均形状との差によって、前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整するステップと、を含むことを特徴とする測定方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、探針と、前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、を備えた走査探針顕微鏡を利用した測定方法であって、(i)前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第1直線を得るステップと、(ii)サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、その二つの3次元座標を連結する第2直線を得るステップと、(iii)前記第1直線及び前記第2直線の平均直線を求めて、前記第1直線及び前記第2直線のうち何れか一本の直線と前記平均直線との差によって、前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整するステップと、を含むことを特徴とする測定方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、探針と、前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、を備えた走査探針顕微鏡を利用した測定方法であって、(i)前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第1直線を得て、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面への前記第1直線の正射影イメージの長さlを求めるステップと、(ii)サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第2直線を得て、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面への前記第2直線の正射影イメージの長さlを求めるステップと、(iii)前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面が、前記第1スキャナーによる探針の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の高さの差をzとするとき、arctan((l−l)/2z)の角度ほど前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整するステップと、を含むことを特徴とする測定方法を提供する。
【0017】
このような本発明の他の特徴によれば、既知の段差を有するサンプルを利用して前記第1スキャナーを較正するステップをさらに含みうる。
【0018】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記第1スキャナーを較正するステップは、前記既知の段差を有するサンプルの段差の測定時に得られる前記第1スキャナーからの電気的信号が、前記既知の段差に該当するという情報を前記SPMに入力するステップでありうる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のSPM及びそれを利用した測定方法によれば、スキャナーの整列誤差に起因するイメージの歪曲を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明すれば、次の通りである。
【0021】
図4は、本発明の一実施形態に係るSPMを概略的に示す斜視図である。図4に示すように、本実施形態に係るSPMは、探針100、第1スキャナー310、第2スキャナー320及び調整装置400を備える。探針100は、カンチレバー及びこのカンチレバーの先端に付着された尖ったチップを備えうる。
【0022】
第1スキャナー310は、探針100の位置を直線上で変化させる。図4では、探針100が第1スキャナー310により±z方向に移動することと図示されている。第2スキャナー320は、サンプル200の位置を平面上で変化させるが、図4では、サンプル200が第2スキャナー320によりxy平面上で移動することと図示されている。以下では、便宜上、第1スキャナー310は、探針を±z方向に移動させ、第2スキャナー320は、サンプル200の位置をxy平面上で移動させると説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。このとき、サンプル200は、図4に示すように、第2スキャナー320上に直接配置されてもよく、これと異なり、必要に応じてサンプルを支持するステージ上に配置され、このステージを第2スキャナー320によりxy平面上で移動させうるなど、多様な変形が可能であるということは言うまでも無い。
【0023】
前述したように、理想的なSPMの場合、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線が、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に垂直である。しかし、通常的なSPMの場合、第1スキャナー310及び第2スキャナー320のアラインには誤差が存在して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線が、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に垂直ではなく、所定の角度θほど傾く。このような状態でサンプルの表面形状を測定すれば、実際のサンプルの表面形状と異なるイメージが具現されるという問題点があった。
【0024】
本実施形態に係るSPMは調整装置400を備え、このような問題点を解決する。この調整装置400は、第2スキャナー320の位置を調整して、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面が、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線に対して垂直にする。図4には、調整装置400が第2スキャナー320の位置を調整すると図示されているが、もちろん、これと異なり、調整装置が第1スキャナー310の位置を調整してもよい。また、図4には、調整装置400が第2スキャナー320の各エッジごとに備えられた四つの副調整装置410、420(他の二つは図示せず)を備えると図示されているが、これと異なり、第2スキャナー320の中央部の下部に一つの構成要素として備えられてもよいなど、多様な変形が可能であるということは言うまでも無い。
【0025】
このように、本実施形態に係るSPMが、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面が、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、第2スキャナー320または第1スキャナー310の位置を調整する調整装置400を備えることによって、従来のSPMでの第1スキャナーと第2スキャナーとのアライン誤差に起因するイメージ歪曲などを効果的に防止できる。第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面が、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、第2スキャナー320または第1スキャナー310の位置を調整する角度を決定する方法は、図5Aないし図5Cを参照して説明する。
【0026】
図5Aないし図5Cは、図4に示すSPMでの角度補正方法を概略的に示す断面図である。
【0027】
まず、図5Aに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の直線に沿ってサンプルの第1形状710を得る。もちろん、図5Aに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に対して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線が角度θほど傾いているので、この第1形状710は、サンプルの表面600に正確に対応しない。
【0028】
その後、サンプルを、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内で180゜回転させ、図5Bに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の直線に沿ってサンプルの第2形状720を得る。このとき、第2形状720を得るときの第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線は、第1形状710を得るときの第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線と同じ直線である。もちろん、図5Bに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に対して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線が角度θほど傾いているため、この第2形状720は、サンプルの表面600に正確に対応しない。
【0029】
第1形状710及び第2形状720を得た後、図5Cに示すように、第1形状710及び第2形状720の平均形状730を求める。ここで、平均形状とは、図5Cで横方向の座標などの平均を意味する。すなわち、第1形状710における横方向の座標と、第2形状720における横方向の座標との平均を求めれば、第3形状730における横方向の座標となる。これは、後述する実施形態または変形例において、平均形状を求める方法においても同じである。このように得た平均形状730は、図5Cに示すように、実際のサンプルの表面600に正確に対応する。したがって、第1形状710及び第2形状720のうち何れか一つの形状と平均形状730との差を計算することによって、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に対して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線が傾いた角度θを計算できる。その後、このθほど第1スキャナー310または第2スキャナー320の位置を調整装置400を通じて調整することによって、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に対して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線を垂直にすることができる。その後、サンプルの全領域に対してスキャニングを実施して、サンプル表面の形状またはサンプルの電気的特性などに関する正確なデータを得ることができる。
【0030】
一方、これと異なり、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の直線に沿ってサンプル表面の形状を得ず、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の直線の両端に対応するサンプル表面の3次元座標を測定して、この二つの3次元座標を連結する直線を利用してもよい。
【0031】
すなわち、図5Dに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、この二つの3次元座標を連結する第1直線710を得る。その後、サンプルを第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内で180°回転させる。そして、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の同じ直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、その二つの3次元座標を連結する第2直線(図示せず)を得る。このように得た第1直線710及び第2直線の平均直線を求めて、第1直線710および前記第2直線のうちいずれか一本の直線と平均直線との差によって、第2スキャナー320または第1スキャナー310の位置を調整してもよい。
【0032】
また、これと異なり、 第2スキャナー320または第1スキャナー310の位置を調整装置400に調整させてもよい。すなわち、図5Aに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、この二つの3次元座標を連結する第1直線を得る。そして、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)への第1直線の正射影イメージの長さlを求める。その後、サンプルを、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内で180°回転させる。そして、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の同じ直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、この二つの3次元座標を連結する第2直線を得る。そして、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)への第2直線の正射影イメージの長さlを求める。
【0033】
このように求めたl及びlは、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の同じ直線の両端でのサンプル表面を連結した直線のxy平面への正射影イメージの長さlと次のような関係を有する。
【0034】
(数1)
=l+htanθ
【0035】
(数2)
=l−htanθ
【0036】
一方、既知の段差を有するサンプルを利用して、第1スキャナー310を較正するステップをさらに経得るが、これは、既知の段差を有するサンプルの段差の測定時に得られる第1スキャナーからの電気的信号が、その既知の段差に該当するという情報をSPMに入力するステップである。このようなステップを経る場合、サンプルを180°回転させる前後のサンプルの段差であるh及びhは、同じ値、すなわち、実際のサンプル表面の段差に該当する値を有する。したがって、数式1及び数式2からlを消去し、h及びhの代わりに実際のサンプル表面の段差に該当する値であるzを使用すれば、次の関係を得る。
【0037】
(数3)
θ=arctan((l−l)/2z)
【0038】
したがって、このように得られた角度ほど第2スキャナー320または第1スキャナー310の位置を調整することによって、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に対して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線を垂直にすることができる。その後、サンプルの全領域に対してスキャニングを実施して、サンプル表面の形状またはサンプルの電気的特性などに関する正確なデータを得ることができる。
【0039】
一方、第2スキャナー320または第1スキャナー310の位置を調整して、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に対して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線を垂直にせずとも、実際のサンプルの表面の形状を正確に測定してもよい。
【0040】
すなわち、まず、図5Aに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の直線に沿ってサンプルの第1形状710を得る。もちろん、図5Aに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に対して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線が角度θほど傾いているため、この第1形状710は、サンプルの表面600に正確に対応しない。
【0041】
その後、サンプルを、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内で180°回転させ、図5Bに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面(xy平面)内の直線に沿ってサンプルの第2形状720を得る。このとき、第2形状720を得るときの第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線は、第1形状710を得るときの第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線と同じ直線である。もちろん、図5Bに示すように、第2スキャナー320によるサンプルの位置変化がなされる平面に対して、第1スキャナー310による探針100の位置変化がなされる直線が角度θほど傾いているため、この第2形状720は、サンプルの表面600に正確に対応しない。
【0042】
第1形状710及び第2形状720を得た後、図5Cに示すように、第1形状710及び第2形状720の平均形状730を求める。この平均形状730は、図5Cに示すように、実際のサンプルの表面600に正確に対応する。したがって、このように、サンプルを180°回転させる前後にわたってサンプルの表面の形状を2回測定し、これらの平均形状を求めることによって、サンプル表面の形状またはサンプルの電気的特性などに関する正確なデータを得ることができる。
【0043】
本発明は、図面に示す実施形態を参考として説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点が理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まらねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、走査探針顕微鏡に関連した技術分野に好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】従来のSPMを概略的に示す斜視図である。
【図2】理想的なSPMでサンプルをスキャニングしてサンプルの表面形状を測定することを概略的に示す概念図である。
【図3】従来のSPMでサンプルをスキャニングしてサンプルの表面形状を測定することを概略的に示す概念図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るSPMを概略的に示す斜視図である。
【図5A】図4に示すSPMでの角度補正方法またはサンプルの形状獲得方法を概略的に示す断面図である。
【図5B】図4に示すSPMでの角度補正方法またはサンプルの形状獲得方法を概略的に示す断面図である。
【図5C】図4に示すSPMでの角度補正方法またはサンプルの形状獲得方法を概略的に示す断面図である。
【図5D】図4に示すSPMでの他の角度補正方法またはサンプルの形状獲得方法を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
100 探針
200 サンプル
310 第1スキャナー
320 第2スキャナー
400 調整装置
500 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探針と、
前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、
サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面が、前記第1スキャナーによる探針の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整する調整装置と、を備えることを特徴とする走査探針顕微鏡。
【請求項2】
前記調整装置は、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線に沿ってサンプルの第1形状を得て、サンプルを前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線に沿ってサンプルの第2形状を得て、前記第1形状及び前記第2形状の平均形状を求めて、前記第1形状及び前記第2形状のうち何れか一つの形状と前記平均形状との差によって、前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の走査探針顕微鏡。
【請求項3】
前記調整装置は、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第1直線を得て、サンプルを前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、その二つの3次元座標を連結する第2直線を得て、前記第1直線及び前記第2直線の平均直線を求めて、前記第1直線及び前記第2直線のうち何れか一本の直線と前記平均直線との差によって前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の走査探針顕微鏡。
【請求項4】
前記調整装置は、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第1直線を得て、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面への前記第1直線の正射影イメージの長さlを求め、サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第2直線を得て、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面への前記第2直線の正射影イメージの長さlを求めて、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の高さの差をzとするとき、arctan((l−l)/2z)の角度ほど前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の走査探針顕微鏡。
【請求項5】
探針と、前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、を備えた走査探針顕微鏡を利用した測定方法であって、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線に沿ってサンプルの第1形状を得るステップと、
サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線に沿ってサンプルの第2形状を得るステップと、
前記第1形状及び前記第2形状の平均形状を求めるステップと、を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項6】
既知の段差を有するサンプルを利用して、前記既知の段差を有するサンプルの段差の測定時に得られる前記第1スキャナーからの電気的信号が、前記既知の段差に該当するという情報を前記走査探針顕微鏡に入力することによって、前記第1スキャナーを較正するステップをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の測定方法。
【請求項7】
探針と、前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、を備えた走査探針顕微鏡を利用した測定方法であって、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線に沿ってサンプルの第1形状を得るステップと、
サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線に沿ってサンプルの第2形状を得るステップと、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面が、前記第1スキャナーによる探針の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、前記第1形状及び前記第2形状の平均形状を求めて、前記第1形状及び前記第2形状のうち、何れか一つの形状と前記平均形状との差によって、前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整するステップと、を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項8】
既知の段差を有するサンプルを利用して、前記既知の段差を有するサンプルの段差の測定時に得られる前記第1スキャナーからの電気的信号が、前記既知の段差に該当するという情報を前記走査探針顕微鏡に入力することによって、前記第1スキャナーを較正するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【請求項9】
探針と、前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、を備えた走査探針顕微鏡を利用した測定方法であって、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第1直線を得るステップと、
サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、その二つの3次元座標を連結する第2直線を得るステップと、
前記第1直線及び前記第2直線の平均直線を求めて、前記第1直線及び前記第2直線のうち何れか一本の直線と前記平均直線との差によって、前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整するステップと、を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項10】
既知の段差を有するサンプルを利用して、前記既知の段差を有するサンプルの段差の測定時に得られる前記第1スキャナーからの電気的信号が、前記既知の段差に該当するという情報を前記走査探針顕微鏡に入力することによって、前記第1スキャナーを較正するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の測定方法。
【請求項11】
探針と、前記探針の位置を直線上で変化させる第1スキャナーと、サンプルの位置を平面上で変化させる第2スキャナーと、を備えた走査探針顕微鏡を利用した測定方法であって、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第1直線を得て、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面への前記第1直線の正射影イメージの長さlを求めるステップと、
サンプルを、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内で180°回転させた後、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の3次元座標を測定して、前記二つの3次元座標を連結する第2直線を得て、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面への前記第2直線の正射影イメージの長さlを求めるステップと、
前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面が、前記第1スキャナーによる探針の位置変化がなされる直線に対して垂直になるように、前記第2スキャナーによるサンプルの位置変化がなされる平面内の前記直線の両端でのサンプル表面の高さの差をzとするとき、arctan((l−l)/2z)の角度ほど前記第2スキャナーまたは前記第1スキャナーの位置を調整するステップと、を含むことを特徴とする測定方法。
【請求項12】
既知の段差を有するサンプルを利用して、前記既知の段差を有するサンプルの段差の測定時に得られる前記第1スキャナーからの電気的信号が、前記既知の段差に該当するという情報を前記走査探針顕微鏡に入力することによって、前記第1スキャナーを較正するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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