説明

走行体用ケーブル処理装置

【課題】 駆動源を一つのモータにすることにより構造を簡素化するとともに、モータの制御を容易にする。
【解決手段】 モータ12は、ケーブル4を巻き取るケーブルドラム14と、ガイドローラ20を左右方向に往復動させるトラバースカム軸15と、ケーブル4を繰り出す繰り出しローラ30とを駆動する。モータ12と繰り出しローラ30との間には、巻取り時に繰り出しローラ30を空回りさせる一方向クラッチが設けられている。ケーブルの繰り出し時は、繰り出しローラ30によるケーブルの繰り出し速度が、ケーブルドラム14によるケーブルの繰り出し速度よりも速い。ケーブルの繰り出し時に繰り出しローラ30およびピンチローラ35によってケーブル4の異常を検出したときは、繰り出しローラ30の回転速度を速くする。ケーブルの巻取り時に繰り出しローラ30およびピンチローラ35によってケーブル4の異常を検出したときは、ケーブルドラム14の回転速度を遅くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル方式の移動ロボットや走行車両等の走行体のケーブルを巻き取ったり繰り出したりする走行体用ケーブル処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の走行体用ケーブル処理装置の一例として、例えば特許第3035086号公報(特許文献1)に示されているようなものがある。すなわち、この特許文献1に示されたものは、ケーブルを巻き取るためのケーブルドラムと、このケーブルドラムを回転駆動するドラム用駆動モータと、ケーブルを繰り出すためのガイドプーリと、このガイドプーリを回転駆動するプーリ用駆動モータとを備え、ケーブルの弛みが発生すると、ドラム用駆動モータとプーリ用駆動モータとを個別に制御し、ケーブルドラムとガイドプーリとの間のケーブルに積極的に張力を付与させ、ケーブルドラムによる巻取り不良を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3035086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような走行体用ケーブル処理装置においては、ケーブルドラムを回転駆動するドラム用駆動モータと、ガイドプーリを回転駆動するプーリ駆動用モータとの二つのモータを必要とし、ケーブルの弛みを除去するのに、二つのモータの駆動を個々に制御しながら行うため煩雑であるという問題があった。
【0005】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、駆動源を一つのモータにすることにより構造を簡素化するとともに、モータの制御を容易にするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、ケーブルを巻き取るためのケーブルドラムと、このケーブルドラムからケーブルを繰り出すための繰り出しローラと、前記ケーブルドラムの軸線方向に延在するトラバースカム軸と、このトラバースカム軸の回転によって前記ケーブルドラムの軸線方向を往復動するケーブル案内用ローラとを備え、前記ケーブルドラムと前記繰り出しローラと前記トラバースカム軸とを一つのモータによって駆動し、前記モータと前記繰り出しローラとの間に、前記ケーブルドラムによるケーブルの繰り出し速度よりも繰り出しローラによるケーブルの繰り出し速度を速くする回転伝達手段を介装し、この回転伝達手段に、ケーブルを繰り出す方向にのみモータの駆動を繰り出しローラに伝達する一方向クラッチを設けたものである。
【0007】
本発明は、前記発明において、ケーブルの巻取り時および繰り出し時における当該ケーブルの張力を検出するケーブル張力検出手段を備え、前記ケーブルの巻取り時に前記ケーブル張力検出手段によって異常が検出されたとき前記ケーブルドラムの回転速度を遅くするように前記モータの駆動を制御するとともに、前記ケーブルの繰り出し時に前記ケーブル張力検出手段によって異常が検出されたとき前記繰り出しローラの回転速度を速くするように前記モータの駆動を制御する制御装置を備えたものである。
【0008】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記ケーブル張力検出手段を、互いに対向する方向に揺動自在に支持された一対の検出レバーと、これら検出レバーの揺動端部のそれぞれに枢支され前記ケーブルを挟む方向に付勢された一対の検出ローラと、前記一対の検出レバーの揺動を検出するセンサとによって構成し、前記一対の検出レバー間に、一方の検出レバーの揺動によって他方の検出レバーが連動して揺動する連動手段を介装し、前記センサを前記一対の検出レバーのそれぞれに設け、これらセンサは各検出レバーの異なる揺動量を検知するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動源を一つのモータとしたことにより、部品点数の削減と製造コストの低減とを図ることができる。また、ケーブルの繰り出し時に、ケーブルドラムの回転速度よりも繰り出しローラの回転速度を速くしていることにより、ケーブルドラムと繰り出しローラとの間にケーブルの弛みが発生するようなことがない。
【0010】
前記発明のうちの一つの発明によれば、常にケーブルの巻取り時および繰り出し時にケーブルに適切な弛みをもたせることができるため、ケーブルに傷を付けたり、ケーブルを断線させるようなことがない。また、ケーブルに適切な弛みをもたせるために、ケーブルの巻取り時またはケーブルの繰り出し時に、一つのモータの駆動を制御すればよいから制御が容易である。
【0011】
前記発明のうちの一つの発明によれば、一対の検出レバーは一方の検出レバーが揺動すると他方の検出レバーが連動して揺動するため、センサを一方の検出レバー側に設ければよいから、他方側に別のセンサを設けることができることにより、限られたスペースに複数種のセンサを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る走行体用ケーブル処理装置を採用したロボット走行体の概要を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る走行体用ケーブル処理装置の側面図である。
【図3】本発明に係る走行体用ケーブル処理装置の平面図である。
【図4】本発明に係る走行体用ケーブル処理装置において、検出レバーの連動手段を説明するための要部の側面図である。
【図5】本発明に係る走行体用ケーブル処理装置において、モータの駆動を伝達するギアの配列図である。
【図6】本発明に係る走行体用ケーブル処理装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図6に基づいて説明する。
【0014】
図1において、全体を符号1で示すものは、無限軌道2を駆動することによって矢印A−B方向(前後方向)に走行するロボット走行体であって、前部に旋回可能なアーム3が設けられており、後部にケーブル4の巻取りまたは繰り出しを行う本発明の走行体用ケーブル処理装置5が備えられている。このロボット走行体1は、走行体用ケーブル処理装置5から繰り出されたケーブル4を介して電気的に接続された操作盤6を操作者7が遠隔操作することによって、矢印A−B方向に走行し、アーム3によって物品等を把持し、移動させる作業を行う。
【0015】
次に、図2ないし図6を用いて、本発明に係る走行体用ケーブル処理装置5について説明する。走行体用ケーブル処理装置5は、図3に示すように互いに対向する一対のフレーム11A,11Bが備えられており、一方のフレーム11Aの内面には、図2に示すように後述するケーブルドラム14、トラバースカム軸15、繰り出しローラ30を回転駆動する正逆方向および回転速度が可変可能なモータ12が取り付けられている。
【0016】
14は両端に鍔14a,14aが設けられケーブル4を巻き取るケーブルドラムであって、鍔14a,14aから突設されたドラム軸13を介してフレーム11A,11B間に回転自在に支持されている。15はフレーム11A,11B間に回転自在に支持されたトラバースカム軸であって、このトラバースカム軸15には、フレーム11A,11B間に横架された一対のステー16,16によってトラバースカム軸15に沿って往復動する移動子17が係合している。したがって、モータ12によってトラバースカム軸15が正方向または逆方向に回転駆動されると、移動子17がケーブルドラム14の鍔14a,14a間を矢印C−D方向(左右方向)に往復動する。
【0017】
18は移動子17に取り付けられた支持体であって、この支持体18には、図3に示すように矢印D方向に突設された軸19,19が、図2に示すように互いに平行となるように矢印E−F方向(上下方向)に並設されている。これら軸19,19には、ガイド溝20aを有する一対のケーブル案内用ローラ20,20が互いに対向するように回転自在に支持されている。
【0018】
また、支持体18には、図3に示すように軸21A,21Bを揺動中心として一対の検出レバー22A,22Bが矢印C−D方向に揺動自在に支持されており、これら検出レバー22A,22Bの揺動端部には、一対の検出ローラ23A,23Bが互いに対向するように回転自在に支持されている。これら一対の検出レバー22A,22Bには、一方の検出レバーが揺動するとこれと連動して他方の検出レバを揺動させる、後述する一対の検出レバー27A,27Bに設けられた連動手段39と同じ構造の連動手段と、検出ローラ23A,23Bが互いに近接する方向に付勢される付勢手段(いずれも図示せず)が備えられている。
【0019】
24は一方の検出ローラ23Aが図3において軸21Aを揺動中心として反時計方向(矢印C方向)に揺動したときに、一方の検出レバー22Aを検出する第1のセンサである。25は他方の検出ローラ23Bが図3において軸21Bを揺動中心として時計方向(矢印D方向)に揺動したときに、他方の検出レバー22Bを検出する第2のセンサである。この第2のセンサ25によって検出される他方の検出レバー22Bの揺動量は、第1のセンサ24によって検出される一方の検出レバー22Aの揺動量よりも大きい。
【0020】
図3において、27Aは軸28Aを揺動中心として一方のフレーム11Aに、図2において矢印E−F方向に揺動自在に支持された検出レバーである。27Bは軸28Bを揺動中心として他方のフレーム11Bに矢印E−F方向に揺動自在に支持された検出レバーである。30は左右のフレーム11A,11B間に延在する検出ローラとして機能する繰り出しローラであって、軸31を介して両検出レバー27A,27Bの揺動端部に回転自在に支持されている。
【0021】
32は軸31に回転自在に支持された伝達ギアであって、一方向クラッチ33を介して繰り出しローラ30に連結されており、この伝達ギア32と後述するモータギア42との間には、図5に示すようにギア53aを介して、モータギア42の回転速度よりも伝達ギア32の回転速度を速くする増速ギア列51が介装されている。一方向クラッチ33は、モータ12の正方向の駆動が、増速ギア列51を介して繰り出しローラ30をケーブル4が繰り出される方向、すなわち図2において時計方向に回転させるときに伝達ギア32の回転を繰り出しローラ30に伝達する。一方、モータ12の逆方向の駆動が増速ギア列51を介して繰り出しローラ30をケーブル4が巻き取られる方向、すなわち図2において反時計方向に回転させるときに伝達ギア32の回転を繰り出しローラ30に伝達しないように構成されている。
【0022】
35は繰り出しローラ30に対向する検出ローラとして機能するピンチローラであって、フレーム11A,11Bに軸36A,36B(一方の軸36Bは図示せず)を介して、図2において矢印E−F方向に揺動自在に支持された検出レバー37A,37B(一方の検出レバー37Bは図示せず)の揺動端部に回転自在に支持されている。これら繰り出しローラ30とピンチローラ35とが互いに近接するように、図4に示すように両検出レバー27A,37A間に引張りコイルばね38が懸架されている。
【0023】
39は検出レバー27Aと検出レバー37Aとの各揺動動作を連動させる連動手段であって、検出レバー27A,37Aの各基端部に固定され、互いに噛合するセグメントギア39A,39Bによって構成されている。したがって、一方の検出レバー27Aが軸28Aを揺動中心として図中時計方向に揺動すると、この連動手段39を介して、他方の検出レバー37Aが軸36Aを揺動中心として図中反時計方向に同じ量だけ揺動する。同様に、他方の検出レバー37Aが軸36Aを揺動中心として図中反時計方向に揺動すると、この連動手段39を介して、一方の検出レバー27Aが軸28Aを揺動中心として図中時計方向に同じ量だけ揺動する。
【0024】
40は一方の検出ローラ30が図2において軸28Aを揺動中心として時計方向(矢印F方向)に揺動したときに、一方の検出レバー27Aを検出する第3のセンサである。41は他方の検出ローラ35が図2において軸36Aを揺動中心として反時計方向(矢印E方向)に揺動したときに、他方の検出レバー37Aを検出する第4のセンサである。第4のセンサ41によって検出される他方の検出レバー37Aの揺動量は、第3のセンサ40によって検出される一方の検出レバー27Aの揺動量よりも大きい。
【0025】
図2において、42はモータ12の出力軸に軸着されたモータギアであって、このモータギア42とドラム軸13に軸着されたドラムギア52との間には、図5に示すように伝達ギア列53が介装されている。このような構成において、モータ12が正方向に駆動され、モータギア42が図2において反時計方向に回転すると、この伝達ギア列53を介してドラム軸13が時計方向に回転し、モータ12が逆方向に駆動すると、ドラム軸13が反時計方向に回転する。
【0026】
図3に示すように、トラバースカム軸15にはトラバースギア43が軸着されており、このトラバースギア43とモータギア42との間には、伝達ギア列53を介して減速ギア列54が介装されている。このような構成において、モータ12の正方向の駆動によって、ケーブルドラム14、トラバースカム軸15、繰り出しローラ30が同時に回転し、ケーブルドラム14および繰り出しローラ30が同じ回転方向、すなわち図2において時計方向に回転する。このとき、繰り出しローラ30の周速度は、モータギア42と伝達ギア32との間に増速ギア列51が介装されているので、ケーブルドラム14の周速度よりも速い。
【0027】
一方、モータ12の逆方向の駆動によって、ケーブルドラム14およびトラバースカム軸15が同時に図2において反時計方向に回転し、繰り出しローラ30は一方向クラッチ33により回転伝達が遮断される。
【0028】
次に、図6を用いて、本発明に係る走行体用ケーブル処理装置の制御について説明する。操作者7が操作盤6を操作し、走行体用ケーブル処理装置5からケーブル4を繰り出す指令を制御装置44に送ると、制御装置44ではモータ12を正方向に駆動する。この状態で、第1のセンサ24または第3のセンサ40による検出が行われると、制御装置44では、ケーブル4の張力に異常が発生したと判断し、モータ12の出力軸の回転を速くする制御を行い、第2のセンサ25または第4のセンサ41による検出が行われると、制御装置44ではモータ12の出力軸の回転をより一層速くする制御を行う。
【0029】
一方、操作者7が操作盤6を操作し、走行体用ケーブル処理装置5にケーブル4を巻き取る指令を制御装置44に送ると、制御装置44ではモータ12を逆方向に駆動する。この状態で、第1のセンサ24または第3のセンサ40による検出が行われると、制御装置44では、ケーブル4の張力に異常が発生したと判断し、モータ12の出力軸の回転を遅くする制御を行い、第2のセンサ25または第4のセンサ41による検出が行われると、制御装置44ではモータ12の出力軸の回転をより一層遅くする制御を行う。
【0030】
図2において、46は軸47を揺動中心としてフレーム11Aに揺動自在に支持された巻きオーバー検出レバーであって、揺動端部にはケーブルドラム14に巻き取られるケーブル4の外周面に当接する方向に付勢された検出ローラ48が枢支されている。49はケーブルドラム14からのケーブル4の繰り出しの終了を検出する第5のセンサであって、この第5のセンサ49によって巻きオーバー検出レバー46が検出されたときに、制御装置44ではモータ12の駆動を停止する。50は何らかの原因により、正常巻きのケーブルを越えた場合に検出する第6のセンサであって、この第6のセンサ50によって巻きオーバー検出レバー46が検出されたときに、制御装置44ではモータ12の駆動を停止する。
【0031】
次に、このように構成された走行体用ケーブル処理装置によるケーブルの処理動作について説明する。先ず、ロボット走行体1を矢印A方向に前進させる(制御盤6から離間させる)動作について説明する。予め、図2に示すように、ケーブルドラム14から引き出したケーブル4を一対のケーブル案内用ローラ20,20のガイド溝20a,20a間と、繰り出しローラ30とピンチローラ35との間に通し、制御盤6に電気的に接続する。
【0032】
この状態で、操作者7が制御盤6を操作してロボット走行体1を所定の速度で前進させる指令を出すと、ロボット走行体1の前進する速度に対応して、モータ12が正方向に所定の回転数で駆動する。モータ12を正方向に駆動することにより、ケーブルドラム14が図2において時計方向に回転し、繰り出しローラ30も時計方向に回転する。このとき、繰り出しローラ30によるケーブルの繰り出し速度がケーブルドラム14によるケーブルの繰り出し速度よりも速いため、ケーブルドラム14と繰り出しローラ30との間でケーブル4の弛みが発生しない。
【0033】
モータ12の正方向への駆動により、トラバースカム軸15が図2において反時計方向に回転し、これと係合している移動子17が、図3において矢印C−D方向に往復動するので、これと一体的に矢印C−D方向に往復動するケーブル案内用ローラ20,20によってケーブル4がケーブルドラム14から順次繰り出される。
【0034】
ここで、何らかの原因により、繰り出しローラ30と制御盤6との間において、ケーブル4が張られた状態となって、ケーブル4自体に張力が発生すると、ケーブル4が図2および図3において二点鎖線で示すように揺動しやすくなる。例えば、ケーブル4が図3において符号4Aで示す位置に揺動すると、検出ローラ23Aが軸21Aを揺動中心として反時計方向に揺動し、一方の検出レバー22Aが第1のセンサ24により検出される。この検出に基づいて、制御装置44では、ケーブル4の張力が異常であると判断し、モータ12の出力軸の回転速度を速くする制御を行うことにより、繰り出しローラ30によるケーブル4の繰り出し速度が、ロボット走行体1の前進速度よりも相対的に速くなるから、ケーブル4に発生した張力が低減される。このため、ケーブル4の断線や擦れ傷等の発生を防止することができる。
【0035】
また、ケーブル4が図3において符号4Bで示す位置に揺動した場合は、他方の検出ローラ23Bが軸21Bを揺動中心として図中時計方向に揺動し、この揺動が連動手段(図示せず)を介して、軸21Aを揺動中心として一方の検出レバー22Aを反時計方向に揺動させる。したがって、第1のセンサ24によって検出レバー22Aの揺動が検出されるから、制御装置44では、上述した制御と同じ制御を行う。このように、検出レバー22A,22Bが連動して揺動することにより、一つの第1のセンサ24によって、二つの検出レバー22A,22Bの揺動動作を検出することができる。
【0036】
また、図2に示すようにケーブル4が符号4Cで示す位置に揺動した場合は、繰り出しローラ30が軸28Aを揺動中心として図中時計方向に揺動し、一方の検出レバー27Aが第3のセンサ40により検出される。この検出に基づいて、制御装置44では、モータ12の出力軸の回転を速くする制御を行う。
【0037】
また、ケーブル4が図2において符号4Dで示す位置に揺動した場合は、ピンチローラ35が軸36を揺動中心として図中反時計方向に揺動し、この揺動が連動手段(図示せず)を介して、軸28Aを揺動中心として検出レバー27Aを時計方向に揺動させる。したがって、第3のセンサ40によって検出レバー27Aの揺動が検出されるから、制御装置44では、上述した制御と同じ制御を行う。
【0038】
ここで、ケーブル4に発生する張力がより一層大きい場合は、ケーブル4が図3において符号4Bよりも揺動量が大きい4Eで示す位置まで揺動するため、検出ローラ23Bが軸21Bを揺動中心として時計方向に揺動し、検出レバー22Bが第2のセンサ25により検出される。この検出に基づいて、制御装置44では、モータ12の出力軸の回転を前述した第1のセンサ24によって検出されたときよりもより一層速くする制御を行う。したがって、繰り出しローラ30によるケーブル4の繰り出し速度もより一層速くなるから、ケーブル4に発生したより一層大きい張力を低減することができる。
【0039】
また、ケーブル4が図3において符号4Fに示す位置に揺動したときは、連動手段(図示せず)を介して検出レバー22Bが第2のセンサ25によって検出される。また、ケーブル4が図2において符号4Gに示す位置に揺動したときは、検出レバー37Aが第4のセンサ41によって検出され、制御装置44では、上述した第2のセンサ25によって検出されたときと同じ制御を行う。また、ケーブル4が図2において符号4Hに示す位置に揺動したときは、連動手段39を介して検出レバー27Aの揺動動作に連動する検出レバー37Aが第4のセンサ41によって検出される。
【0040】
このように、検出レバー22A,22Bおよび検出レバー27A,37Aは、一方の検出レバーが揺動すると他方の検出レバーが連動して揺動するため、センサを一方の検出レバー側に設ければよいから、他方側に別のセンサを設けることができることにより、限られたスペースに複数種のセンサを配置することができる。
【0041】
次に、ロボット走行体1を矢印B方向に後退させる(制御盤6側に戻す)動作について説明する。この場合は、操作者7が制御盤6を操作してロボット走行体1を所定の速度で後退させる指令を出すと、ロボット走行体1の後退する速度に対応して、モータ12が逆方向に所定の回転数で駆動する。モータ12を逆方向に駆動することにより、ケーブルドラム14が図2中反時計方向に回転し、繰り出しローラ30は一方向クラッチ33により回転することがなく空回りする。したがって、ケーブル4はケーブルドラム14の回転のみによってケーブルドラム14に巻き取られる。
【0042】
モータ12の逆方向への駆動により、トラバースカム軸15が図2中時計方向に回転し、これと係合している移動子17が、図3において矢印C−D方向に往復動するので、一体的に矢印C−D方向に往復動するケーブル案内用ローラ20,20によってケーブル4がケーブルドラム14に順次巻き取られる。
【0043】
ここで、何らかの原因により、ケーブルドラム14と制御盤6との間において、ケーブル4が張られた状態となって、ケーブル4自体に張力が発生すると、ケーブル4が図2および図3において二点鎖線で示すように揺動しやすくなる。例えば、ケーブル4が図3において符号4Aで示す位置に揺動すると、検出ローラ23Aが軸21Aを揺動中心として反時計方向に揺動し、この揺動が第1のセンサ24により検出される。この検出に基づいて、制御装置44がモータ12の出力軸の回転速度を遅くする制御を行うことにより、ケーブルドラム14によるケーブル4の巻取り速度が、ロボット走行体1の後退速度よりも相対的に遅くなるから、ケーブル4に発生した張力が低減される。このため、ケーブル4の断線や、擦れ傷の発生を防止することができる。
【0044】
ケーブル4が図3において符号4Bで示す位置および図2において符号4C,4Dで示す位置に揺動したときは、第1のセンサ24および第3のセンサ40の検出により、制御装置44がモータ12の出力軸の回転速度を遅くする制御を行う。また、ケーブル4が図3において符号4E,4Fで示す位置および図2において符号4G,4Hで示す位置に揺動したときは、第2のセンサ25および第4のセンサ41の検出により、制御装置44がモータ12の出力軸の回転速度をより一層遅くする制御を行う。
【0045】
このように、一つのモータ12によって、ケーブルドラム14、トラバースカム軸15、繰り出しローラ30を駆動するようにしたことにより、部品点数の削減と製造コストの低減とを図ることができる。
【0046】
なお、本発明の実施の形態においては、モータギア42と伝達ギア32との間に増速ギア列51を介装したが、伝達ギア列53の替わりに減速ギア列を介装し、増速ギア列51の替わりに伝達ギア列または減速ギア列を介装してもよく、要はケーブルドラム14によるケーブル4の繰り出し速度よりも繰り出しローラ30によるケーブル4の繰り出し速度を速くするようにすればよい。
【符号の説明】
【0047】
1…ロボット走行体、4…ケーブル、5…走行体用ケーブル処理装置、6…操作盤、7…操作者、12…モータ、14…ケーブルドラム、15…トラバースカム軸、20…ケーブル案内用ローラ、23A,23B…検出ローラ、24…第1のセンサ、25…第2のセンサ、30…繰り出しローラ(検出ローラ)、33…一方向クラッチ、35…ピンチローラ(検出ローラ)、39…連動手段、39A,39B…セグメントギア、40…第3のセンサ、41…第4のセンサ、42…モータギア、43…トラバースギア、44…制御装置、51…増速ギア列、52…ドラムギア、53…伝達ギア列、54…減速ギア列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを巻き取るためのケーブルドラムと、
このケーブルドラムからケーブルを繰り出すための繰り出しローラと、
前記ケーブルドラムの軸線方向に延在するトラバースカム軸と、
このトラバースカム軸の回転によって前記ケーブルドラムの軸線方向を往復動するケーブル案内用ローラとを備え、
前記ケーブルドラムと前記繰り出しローラと前記トラバースカム軸とを一つのモータによって駆動し、
前記ケーブルドラムによるケーブルの繰り出し速度よりも繰り出しローラによるケーブルの繰り出し速度を速くするとともに、ケーブルを繰り出す方向にのみモータの駆動を繰り出しローラに伝達する一方向クラッチを備えたことを特徴とする走行体用ケーブル処理装置。
【請求項2】
ケーブルの巻取り時および繰り出し時における当該ケーブルの張力を検出するケーブル張力検出手段を備え、
前記ケーブルの繰り出し時に前記ケーブル張力検出手段によって異常が検出されたとき前記繰り出しローラの回転速度を速くするように前記モータの駆動を制御するとともに、前記ケーブルの巻取り時に前記ケーブル張力検出手段によって異常が検出されたとき前記ケーブルドラムの回転速度を遅くするように前記モータの駆動を制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の走行体用ケーブル処理装置。
【請求項3】
前記ケーブル張力検出手段を、互いに対向する方向に揺動自在に支持された一対の検出レバーと、これら検出レバーの揺動端部のそれぞれに枢支され前記ケーブルを挟む方向に付勢された一対の検出ローラと、前記一対の検出レバーの揺動を検出するセンサとによって構成し、
前記一対の検出レバー間に、一方の検出レバーの揺動によって他方の検出レバーが連動して揺動する連動手段を介装し、
前記センサを前記一対の検出レバーのそれぞれに設け、これらセンサは各検出レバーの異なる揺動量を検知することを特徴とする請求項2記載の走行体用ケーブル処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−103709(P2011−103709A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256864(P2009−256864)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】