説明

走行履歴収集システム

【課題】最新の走行履歴を効率よく収集可能な走行履歴収集システムを提供する。
【解決手段】端末装置1と、端末装置1と通信可能なセンタ装置7とで構成され、端末装置1には、車両の走行履歴を取得する車両走行履歴取得部11と、取得した走行履歴をそれぞれセンタ装置7に送信する狭域無線通信部3および広域無線通信部4と、走行履歴を狭域無線通信部3を介してセンタ装置7に送信可能な場合は、狭域無線通信部3を介してセンタ装置7に送信し、狭域無線通信部3を介してセンタ装置7に送信不可能な場合は、広域無線通信部3を介して走行履歴をセンタ装置7に送信する走行履歴送信部15とを有し、センタ装置は、端末装置1より送信された走行履歴をそれぞれ広域無線通信部6および狭域無線通信部5で受信することにより、広域無線通信部6の負荷を少なくし、かつリアルタイムに各端末装置1よりそれぞれの走行履歴を正確に収集することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された端末装置で前記車両の走行履歴を取得し、走行履歴を無線通信手段を介してセンタ装置に送信し、センタ装置において車両の走行履歴を収集する走行履歴収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行履歴を端末装置で取得し、路側装置と端末装置間の狭域無線通信手段、もしくは、携帯電話のような広域無線通信手段のどちらかを用いて、端末装置で取得した走行履歴をセンタ装置に送信し、センタ装置において端末装置から送られた車両の走行履歴を収集し、それを基に、交通情報、渋滞情報などを生成するシステムが知られている。
【0003】
ところで、これまでに知られているこの種のシステムは、それぞれ次のようなものであった。先ず、警察などで使われている交通管制システムは、路上にセンサを設置し、このセンサで検出した交通情報をそのセンタ装置で収集し、その情報を基に道路網の走行状態を解析するものである(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このものでは、路上にセンサが設置されている道路の、それもその地点の道路交通状況しか把握できないという問題があった。
【0005】
そこで、最近では、車両に端末装置を搭載し、その端末装置で車両の走行履歴を取得し、車両の走行履歴をセンタ装置に送信する。センタ装置では、端末装置からの走行履歴を受信し、解析して交通情報、渋滞情報などを生成するというものが考えられている。
【0006】
そして、この場合、端末装置で取得した走行履歴は、携帯電話のような広域無線通信手段を用いて端末装置からセンタ装置に送信したり、或いは、光ビーコンなどによる狭域無線通信手段を用いて端末装置からセンタ装置に送信するという方法が考えられている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−161894号公報
【特許文献2】特開2000−311286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、知られている特許文献1及び2に記載されたシステムでは、それぞれ次のような問題を有している。
【0008】
すなわち、光ビーコンや電波ビーコン、DSRCのような路側装置と車両間の狭域無線通信手段を用いる場合には、1台毎の通信となるため、通信網への負荷は少なくなるが、路側装置が設置されている地点を通過しない限り、車両の走行履歴をセンタ装置において受け取ることができないという問題があり、また、携帯電話やデジタルMCAのような広域無線通信手段を使用して車両の走行履歴を収集する場合には、走行履歴を収集する車両の台数が増加すると、それに伴い通信網への負荷が増大して輻輳が発生し、通信手段が使用できなくなるという問題がある。
【0009】
また、センタ装置において解析した道路状況を最新の状態に保つためには、定期的に短い間隔で車両から走行履歴を収集し更新する必要があり、この場合、収集間隔内での車両一台当たりの収集可能な道路区間が短くなり、その結果、道路網全体の道路状況の収集に必要な車両の台数が増加し、通信網に大きな負担をかけることになる。
【0010】
また、規定の距離、規定の地点、或いは、規定の時間になるまでの間、走行履歴を蓄積しておき、それをまとめてセンタ装置に送信する場合には、通信網の負担を少なくすることができるが、走行経路によっては車両で蓄積した分だけ走行履歴が古くなり、渋滞区間の情報をセンタ装置で収集してもその段階で既に古くて有用性がないものになることがあるという問題がある。
【0011】
更に、走行履歴の作成時点からセンタ装置に送信するまでの時間を早くする方法として、路側装置の場合は、その設置数を増加させる方法、広域無線通信手段を用いる場合は、走行履歴の蓄積データ量を削減してセンタ装置に頻繁に送信する方法が考えられるが、前者の場合は、路側装置の設置費用や設置完了までの期間が必要になるという問題があり、後者の場合は、広域無線通信手段への通信負荷が大きくなるという問題がある。
【0012】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、最新の走行履歴を効率よく収集できる走行履歴収集システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の走行履歴収集システムは、端末装置と、前記端末装置と通信可能なセンタ装置とを備え、前記端末装置は、車両の走行履歴を取得する車両走行履歴取得手段と、取得した前記走行履歴をそれぞれ前記センタ装置に送信する第1の狭域無線通信手段および第1の広域無線通信手段と、前記走行履歴を、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信可能な場合は、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信し、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信可能でない場合は、前記第1の広域無線通信手段を介して前記走行履歴を前記センタ装置に送信する走行履歴送信手段とを備え、前記センタ装置は、前記端末装置より送信された前記走行履歴を受信する第2の広域無線通信手段および第2の狭域無線通信手段を備えた構成を有する。
【0014】
この構成により、端末装置で取得した走行履歴を、第1の狭域無線通信手段で通信可能なときは第1の狭域無線通信手段を通して、それ以外のときは、第1の広域無線通信手段を通してセンタ装置に送信することができ、あらゆる場所でも走行履歴をセンタ装置に送信することができ、しかも、第1の狭域無線通信手段で通信可能なときは第1の狭域無線通信手段を用いて通信するため、第1の広域無線通信手段の通信負荷を軽減することができ、その上、比較的早期に走行履歴を送信でき、センタ装置において効率よく走行履歴を受信し、任意に交通情報を生成することができるという作用を有する。
【0015】
また、本発明の走行履歴収集システムは、 前記端末装置は、前記走行履歴に基づいて前記車両の渋滞区間を検出する渋滞区間検出手段を更に備え、前記渋滞区間検出手段において前記渋滞区間を検出したとき、前記走行履歴送信手段は前記第1の広域無線通信手段または前記第1の狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記センタ装置に送信する構成を有する。
【0016】
この構成により、渋滞区間が検出されると、その区間を含む走行履歴が直ちにセンタ装置に送信されるため、センタ装置では常にリアルタイムに渋滞情報を収集することができるという作用を有する。
【0017】
また、本発明の走行履歴収集システムは、前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間検出手段において前記渋滞区間が検出されても、前記渋滞区間を含む前記走行履歴を直ちには前記センタ装置に送信せず、前記渋滞区間の検出後、予め定めた一定距離走行するのを待って前記第1の広域無線通信手段または前記第1の狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記センタ装置に送信する構成を有する。
【0018】
この構成により、渋滞区間が検出されても一定距離走行するまで走行情報を送信せず、その間は更に走行情報を蓄積しておくことができ、一定距離走行した段階で一気に走行履歴を送信することになるため、送信の回数が少なくなり、通信負荷を軽減でき、また、渋滞区間を検出した時点では、第1の狭域無線通信手段が使用不可能であっても、一定距離走行している間に通信可能になることもあり、その場合、更に広域無線通信手段の通信負荷を少なくすることができるという作用を有する。
【0019】
また、本発明の走行履歴収集システムは、前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間検出手段において前記渋滞区間が検出されても、前記渋滞区間を含む前記走行履歴を直ちには前記センタ装置に送信せず、前記渋滞区間の検出後、更に予め定めた一定時間経過するのを待って前記第1の広域無線通信手段または前記第1の狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記センタ装置に送信する構成を有する。
【0020】
この構成により、渋滞区間が検出されても一定時間経過するまで走行情報を送信せず、その間は更に走行情報を蓄積しておくことができ、一定時間経過した段階で一気に走行履歴を送信することになるため、送信の回数が少なくなり、通信負荷を軽減でき、また、渋滞区間を検出した時点では、第1の狭域無線通信手段が使用不可能であっても、一定距離走行している間に通信可能になることもあり、その場合、更に第1の広域無線通信手段の通信負荷を少なくすることができるという作用を有する。
【0021】
また、本発明の走行履歴収集システムは、前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間検出手段が前記渋滞区間を検出し、前記予め定めた一定距離または一定時間、走行または経過するのを待っている状態で、新たな前記渋滞区間を検出したとき、直ちにこれまでの前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記第1の広域無線通信手段または前記第1の狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記センタ装置に送信する構成を有する。
【0022】
この構成により、渋滞を検出しても、それを送信しないで待っているときに、更に新たな渋滞を検出したとき、直ちにそれまでの渋滞を含む走行情報を送信することになり、渋滞が度々あった場合、更にリアルタイムにその渋滞を含む走行履歴を収集することができるという作用を有する。
【0023】
また、本発明の走行履歴収集システムは、前記渋滞区間検出手段は、前記車両の走行速度が予め定めた閾値以下の状態が、予め定めた区間、または予め定めた時間連続して継続した場合に渋滞と判定する構成を有する。
【0024】
この構成により、右折や左折といった通常の走行状態で走行速度が閾値以下になったとしても、これらを直ちに渋滞と判断せず、所謂、本当の渋滞を正しく渋滞と判断することになる。したがって、センタ装置において収集する走行履歴もより正確なものとなり、より正確な交通情報を生成することができる。
【0025】
また、本発明の走行履歴収集システムは、前記渋滞区間検出手段は、前記車両の走行速度が予め定めた閾値以下の状態が、予め定めた区間、または予め定めた時間連続して継続しない状態でも、前記予め定めた区間、または前記予め定めた時間より更に大きい一定区間、または一定時間の平均走行速度が前記予め定めた閾値以下のとき、渋滞と判定する構成を有する。
【0026】
この構成により、車両の走行速度が、閾値の近辺で度々上下しても、これらを無視し、より長い期間、距離において平均速度を求め、その平均速度で渋滞かどうかを判断することになり、細かい走行速度の変化に惑わされることなく、正確に渋滞区間を検知すること
ができるという作用を有する。
【0027】
また、本発明の走行履歴収集システムは、前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間が予め定めた許容値に達したとき、直ちにこれまでの前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記第1の広域無線通信手段または前記題1の前記狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記センタ装置に送信する構成を有する。
【0028】
この構成により、渋滞区間が予め定めた連続許容値に達したとき、自動的に走行履歴送信手段が走行履歴をセンタ装置に送信することになるため、センタ装置では、通信負荷を少なくしながら、更によりリアルタイムに走行履歴を収集することができる。
【0029】
また、本発明の走行履歴収集システムは、前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間が予め定めた許容値に達しても直ちにこれまでの前記渋滞区間を含む前記走行履歴を送信せず、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信可能な状態になるのを待って、前記第1の狭域無線通信手段を介してこれまでの前記渋滞情報を含む前記走行履歴を前記センタ装置に送信する構成を有する。
【0030】
この構成により、渋滞区間が予め定めた連続許容値に達しても直ちにこれまでの渋滞区間を含む走行履歴を送信せず、第1の狭域無線通信手段を介してセンタ装置に送信可能な状態になるのを待つことになるため、その間、リアルタイム性は損なわれるが、第1の広域無線通信手段の通信負荷は大幅に軽減され、第1の狭域無線通信手段を用いて正確に走行履歴を収集することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、端末装置と、前記端末装置と通信可能なセンタ装置とを備え、前記端末装置は、車両の走行履歴を取得する車両走行履歴取得手段と、取得した前記走行履歴をそれぞれ前記センタ装置に送信する第1の狭域無線通信手段および第1の広域無線通信手段と、前記走行履歴を、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信可能な場合は、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信し、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信可能でない場合は、前記第1の広域無線通信手段を介して前記走行履歴を前記センタ装置に送信する走行履歴送信手段とを備え、前記センタ装置は、前記端末装置より送信された前記走行履歴を受信する第2の広域無線通信手段および第2の狭域無線通信手段を備えたものであり、端末装置で取得した走行履歴を、第1の狭域無線通信手段で通信可能なときは第1の狭域無線通信手段を通してセンタ装置に送信することができ、それ以外のときは、第1の広域無線通信手段を通してセンタ装置に送信することができるため、あらゆる場所でも走行履歴をセンタ装置に送信することができ、しかも、第1の狭域無線通信手段で通信可能なときは第1の狭域無線通信手段を用いて通信するため、第1の広域無線通信手段の通信負荷を軽減することができ、その上、比較的早期に走行履歴を送信でき、センタ装置において効率よく走行履歴を受信し、任意に交通情報を生成することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムについて、図面を用いて説明する。
【0033】
図1は本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの概略ブロック図である。
【0034】
図1において、走行履歴取得用の端末装置1と、車両センサ2と、狭域無線通信手段3と、広域無線通信手段4とは、それぞれ走行履歴を取得するための対象となる車両に搭載される。
【0035】
走行履歴取得用の端末装置1は、車両センサ2で検出した車両の動作情報を取得する車両情報取得部11と、車両情報取得部11が取得した車両情報から走行履歴を生成し走行履歴データベース13に記録する走行履歴記録部12と、走行履歴を蓄積する走行履歴データベース13と、走行履歴から渋滞区間の検出を行う渋滞区間判定部14と、走行履歴内に渋滞区間がある場合に、狭域無線通信手段3を用いるか、広域無線通信手段4を用いるかの選択を行う機能と、走行履歴から走行履歴収集用のセンタ装置7に送信する送信データを作成する機能と、狭域無線通信手段3と広域無線通信手段4の制御を行う機能を有する走行履歴送信部15とを備えている。
【0036】
車両センサ2は、衛星を利用して位置を測位するGPS受信機21と、車両の旋回度を検出する角速度センサ22と、車両の速度を検出する車速センサ23等より、車両の位置情報や走行方向、車両速度の検出を行う。
【0037】
狭域無線通信手段3は、光ビーコンや電波ビーコン、DSRC等の路上に設置された装置との間で狭域の無線通信によりデータ通信を行う。
【0038】
広域無線通信手段4は、携帯電話やデジタルMCA等の広域の無線通信インフラとの間の無線通信によりデータ通信を行う。
【0039】
走行履歴を収集するセンタ側には、路側機5と、広域無線通信アンテナ6と、走行履歴収集用のセンタ装置7が用意されている。ここで、路側機5は、車両に搭載された狭域無線通信手段3との間で狭域の無線通信手段により、データ通信を行う。
【0040】
また、広域無線通信アンテナ6は、車両に搭載した携帯電話やデジタルMCA等の広域無線通信手段4との間の無線通信によりデータ通信を行う。
【0041】
走行履歴収集用のセンタ装置7は、狭域無線通信手段3と広域無線通信手段4から路側機5や広域無線通信アンテナ6を介して、1つ又は複数の走行履歴取得用の端末装置1から1つ又は複数の車両の走行履歴を受信し、受信した車両の走行履歴に含まれる位置情報や速度情報、走行方向等の情報から道路網について各地点間の移動に必要な所要時間や渋滞状況等の道路状況の算出を行い、算出した所要時間や渋滞状況等の道路情報を該当する道路区間と走行履歴を端末装置で検出した時間帯毎に蓄積する。
【0042】
次に、本実施の形態における走行履歴収集システムの動作について、図2〜図5を用いて詳細に説明する。
【0043】
図2〜図5は、それぞれ本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの動作を示すフローチャートである。
【0044】
車両情報取得部11において、まず、車両センサ2で検出した車両の位置座標、速度、走行方向などの車両情報を取得する(S201)。取得した車両情報は、走行履歴記録部12を介して走行履歴データベース13に供給され、ここで、車両情報から走行履歴が作成され、走行履歴データベース13に記憶される(S202)。走行履歴が走行履歴データベース13に記憶されると、それが渋滞区間判定部14に通知される(S203)。
【0045】
渋滞区間判定部14では、走行履歴データベース13に記録された走行履歴に基づいて最新の走行履歴から予め定めた一定の時間範囲内、あるいは、一定の走行距離内の走行履歴を参照して低速走行の区間長や走行方向等から渋滞区間の判定を行う(S204)。
【0046】
渋滞区間判定部14において、渋滞区間が有りと判定した場合(S205のYes)には、渋滞区間に該当する走行履歴を走行履歴データベース13より取得し(S206)、渋滞区間に該当する走行履歴を走行履歴送信部15に転送する(S207)。そして、その後、再び、車両情報取得部11において車両センサ2から最新の車両情報の取得を行い(S201)、同じ動作を繰返す。
【0047】
渋滞区間判定部14において、渋滞区間無しと判定した場合(S205のNo)には、そのまま、引続いて、車両情報取得部11において車両センサ2から最新の車両情報の取得を行い(S201)、同じ動作を繰返す。
【0048】
図3において、走行履歴送信部15で、滞区間判定部14から渋滞区間に該当する走行履歴を取得した場合(S301)には、先ず、渋滞情報の送信待ち状態かどうかを判定し(S302)、送信待ち状態では無い場合(S302のNo)には、渋滞区間に該当する走行履歴を走行履歴データベース13から取得し、狭域無線通信送信用データを作成し(S303)、最新の位置情報を1地点前の情報として記録し、渋滞区間判定地点からの走行距離Lと走行時間Tを初期化し(S304)、渋滞情報送信待ち状態に移行する(S305)。
【0049】
渋滞情報の送信待ち状態かどうかの判定(S302)において、渋滞情報の送信待ち状態であると判定した場合(S302のYes)には、新しい渋滞区間に該当する走行履歴を走行履歴データベース13から取得し、それを既に作成されている送信用データ(ステップ303で作成された送信データ)に追加し(S306)、渋滞情報送信待ち状態を継続する(S307)。
【0050】
図4において、走行履歴送信部15で、車両情報取得部11から最新の位置情報を取得し(S401)、渋滞情報送信待ち状態の判定を行い(S402)、渋滞報送信待ち状態ではない場合(S402のNo)には、走行履歴送信部15が、狭域無線通信待ち状態に移行し(S410)、渋滞報送信待ち状態の場合(S402のYes)には、最新の位置情報と1地点前情報との比較を行い、走行距離の差分Ldifと走行時間の差分Tdifをそれぞれ算出する(S403)。 そして、算出した走行距離の差分Ldifと走行時間の差分Tdifをそれぞれ渋滞区間判定地点からの走行距離Lと走行時間Tに加算し、最新の位置情報を1地点前の情報に記録し更新する(S404)。
【0051】
更新した渋滞区間判定地点からの走行距離Lと走行時間Tについて、許容値Llim、Tlim内であるかどうかの判定を行い(S405)、走行距離Lと走行時間Tの両方とも許容値Llim、Tlim内である場合(S405のYes)には、走行履歴送信部15が、狭域無線通信待ち状態に移行し(S411)、走行距離Lと走行時間Tのどちらか一方でも、許容値Llim、Tlimを超えた場合(S405のNo)には、渋滞情報送信待ち状態を停止し(S406)、渋滞区間に該当する走行履歴から作成した送信データについて、広域無線通信手段4を用いて、広域無線通信アンテナ6を介して走行履歴収集用のセンタ装置7に送信する(S407)。
【0052】
送信データを広域無線通信手段4を用いて走行履歴収集用のセンタ装置7に送信した場合(S407)、送信した渋滞区間の走行履歴を走行履歴データベース13から削除し(S408)、走行履歴送信部15を狭域無線通信待ち状態に移行する(S409)。
【0053】
ここで、許容値Llim、Tlimを負の値にすることにより、渋滞区間判定部14で判定した渋滞区間に該当する走行履歴を、走行履歴送信部15において、直ちに広域無線通信手段4を用いて、走行履歴収集用のセンタ装置7に送信処理することができるようになる。そして、許容値Llim、Tlimを正の値にした場合には、渋滞区間判定部14
で判定した渋滞区間に該当する走行履歴は、走行履歴送信部15において、一時、送信待ち状態になる。
【0054】
狭域通信待ち状態では、図5に示すように、走行履歴送信部15において、走行履歴収集用の端末装置1が狭域無線通信によるデータ通信可能地点に到達したかどうかを常時判定している(S501)。判定の結果、狭域無線通信が不可の場合(S502のNo)には、再度、判定を行い(S501)、狭域無線通信が可能になった場合(S502のYes)には、渋滞情報送信待ち情報の判定を行い(S503)、渋滞情報送信待ち状態ではない場合(S503のNo)には、次の処理(S505以降)を直ちに実行し、渋滞情報送信待ち状態の場合(S503のYes)には、渋滞情報送信待ち状態を停止してから(S504)、次の処理(S505以降)を実行する。
【0055】
すなわち、走行履歴送信部15において、走行履歴データベース13に蓄積されている走行履歴を全て取得し(S505)、取得した走行履歴から狭域無線通信手段で送信する送信データを作成する(S506)。そして、作成した送信データを、狭域無線通信手段3から路側機5を介して走行履歴収集用のセンタ装置7に送信し(S507)、送信した走行履歴を走行履歴データベース13から削除し(S508)、再び狭域無線通信可能地点到達かどうかの判定を行い(S501)、同じ動作を繰返す。
【0056】
図6、図7は、本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、無線通信手段3、4の選択処理を行う場合の一例を説明する図である。
【0057】
図6に示すように、車両aが渋滞区間bを通過し、それを検出した場合、その検出した地点cから、それ以降の走行距離L及び走行時間Tをそれぞれ算出する。算出した走行距離Lと走行時間Tにおいて、車両aが狭域無線通信用の路側機5と走行車両が通信可能な地点dに到達していない場合には、走行距離Lと走行時間Tについてそれぞれ許容走行距離Llimと許容走行時間Tlimとの比較を行う。比較の結果、走行距離Lと走行時間Tが共に許容値Llim、Tlim内である場合には、広域無線通信手段4による送信待ちを継続し、どちらか一方でも許容値Llim、Tlimを超えた場合には、車両aに搭載された広域無線通信手段4を用いて渋滞区間の走行履歴を走行履歴収集用のセンタ装置7に送信する。
【0058】
図7に示すように、算出した走行距離Lと走行時間Tが許容値Llim、Tlimを超えていない状態で、車両aに搭載された狭域無線通信手段3が路側機5と通信可能な地点dに到達した場合には、車両aで蓄積してきた全ての走行履歴を、渋滞区間bに該当する部分も含めて、車両aに搭載された狭域無線通信手段3を用いて走行履歴収集用のセンタ装置7に送信する。
【0059】
ここで、許容走行距離Llim、許容走行時間Tlimとは、車両aが渋滞区間を検出し、それを、広域無線通信手段4を用いて走行履歴収集用のセンタ装置7に送信する前に、狭域無線通信手段3を用いて送信可能になるかどうかを決める送信待ちの許容走行距離、及び許容走行時間である。
【0060】
このようにすることにより、渋滞区間の走行履歴を車両に搭載された走行履歴取得用の端末装置1から走行履歴収集用のセンタ装置7に送信するまでの送信遅れ時間を最小限に押えることが可能であり、かつ、多数の走行履歴取得用端末装置1の走行履歴を同時に走行履歴収集用センタ装置7で収集する場合でも、広域無線通信手段4を利用して走行履歴を走行履歴取得用端末装置1から走行履歴収集用センタ装置7に送信される頻度を極力減少させることができ、広域無線通信網に対する通信負荷を軽減し、輻輳を回避することができるという作用を有する。
【0061】
なお、渋滞区間の判定は、例えば、次のようにして実行される。
【0062】
図8、図9、図10は、それぞれ本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、渋滞区間の判定をどのように行うか、その例を示した説明図である。
【0063】
図8に示すように、車両の走行速度Vが渋滞判定を行うための閾値Vtraf以下に到達した地点から、渋滞判定閾値Vtraf以下になった区間の距離と時間を計測する。車両が右折や左折をしない状態で渋滞判定閾値Vtraf以上になったとき、渋滞判定閾値Vtraf以下の区間の距離と時間のどちらかが規定の距離Llowと規定の時間Tlow以上の場合、渋滞判定閾値Vtraf以下の区間を渋滞区間と判定する。両方とも規定の距離Llowと規定の時間Tlow以下の場合は、渋滞区間と判定しない。
【0064】
また、図9に示すように、渋滞判定閾値Vtraf以下の区間の距離と時間の両方が規定の距離Llowと規定の時間Tlowを超え、継続して渋滞判定閾値Vtraf以上にならない場合、渋滞判定閾値Vtraf以下の区間の距離と時間が、渋滞連続区間の蓄積する許容距離Lmax、あるいは、許容時間Tmaxのどちらか一方を越えた場合、渋滞区間と判定し、この時点で走行履歴収集用のセンタ装置7に送信を行う。
【0065】
また、図10に示すように、車両の走行速度が渋滞判定閾値Vtrafの付近で変動する場合には、図8に示す方法では渋滞区間の正確に判定することができないので、現在位置からの過去の一定の距離Lrange、一定の時間Trangeの走行履歴について、車両の平均値速度Vmを算出し、平均速度Vmが渋滞判定閾値Vtraf以上の場合は、一定の距離Lrange、一定の時間Trangeに該当する走行履歴を渋滞区間の走行履歴と判定せず、平均速度Vmが渋滞判定閾値Vtraf以下の場合に、一定の距離Lrange、一定の時間Trangeに該当する走行履歴を渋滞区間の走行履歴と判定する。
【0066】
このようにすることにより、それぞれの状況に応じて渋滞区間を走行履歴からより正確に検出することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明によれば、端末装置で取得した走行履歴を、狭域無線通信手段で通信可能なときは狭域無線通信手段を通してセンタ装置に送信することができ、それ以外のときは、広域無線通信手段を通してセンタ装置に送信することができるため、狭域無線通信手段で通信不可能なときでも、走行履歴をセンタ装置に送信することができ、また、狭域無線通信手段で通信可能なときは狭域無線通信手段を用いて送信するため、広域無線通信手段の通信負荷を大幅に軽減することができ、走行履歴を比較的早期にセンタ装置に送信し、センタ装置おいて効率よく走行履歴を受信し、任意に正確な交通情報を生成することができる。したがって、このような交通情報を生成し、提供する走行履歴収集システムとして非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの動作を説明する第1のフローチャート
【図3】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの動作を説明する第2のフローチャート
【図4】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの動作を説明する第3のフローチャート
【図5】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムの動作を説明する第4のフローチャート
【図6】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、無線送信手段の選択動作を説明する第1の説明図
【図7】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、無線送信手段の選択動作を説明する第2の説明図
【図8】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、渋滞区間の判定動作を説明する第1の説明図
【図9】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、渋滞区間の判定動作を説明する第2の説明図
【図10】本発明の一実施の形態における走行履歴収集システムにおいて、渋滞区間の判定動作を説明する第3の説明図
【符号の説明】
【0069】
1 走行履歴取得用端末装置
2 車両センサ
3 狭域無線通信手段
4 広域無線通信手段
5 路側機
6 広域無線通信アンテナ
7 走行履歴収集用センタ装置
11 車両情報取得部
12 走行履歴記録部
13 走行履歴データベース
14 渋滞区間判定部
15 走行履歴送信部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と、前記端末装置と通信可能なセンタ装置とを備え、前記端末装置は、車両の走行履歴を取得する車両走行履歴取得手段と、取得した前記走行履歴をそれぞれ前記センタ装置に送信する第1の狭域無線通信手段および第1の広域無線通信手段と、前記走行履歴を、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信可能な場合は、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信し、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信可能でない場合は、前記第1の広域無線通信手段を介して前記走行履歴を前記センタ装置に送信する走行履歴送信手段とを備え、前記センタ装置は、前記端末装置より送信された前記走行履歴を受信する第2の広域無線通信手段および第2の狭域無線通信手段を備えたことを特徴とする走行履歴収集システム。
【請求項2】
前記端末装置は、前記走行履歴に基づいて前記車両の渋滞区間を検出する渋滞区間検出手段を更に備え、前記渋滞区間検出手段において前記渋滞区間を検出したとき、前記走行履歴送信手段は前記第1の広域無線通信手段または前記第1の狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記センタ装置に送信することを特徴とする請求項1記載の走行履歴収集システム。
【請求項3】
前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間検出手段において前記渋滞区間が検出されても、前記渋滞区間を含む前記走行履歴を直ちには前記センタ装置に送信せず、前記渋滞区間の検出後、予め定めた一定距離走行するのを待って前記第1の広域無線通信手段または前記第1の狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記センタ装置に送信することを特徴とする請求項2記載の走行履歴収集システム。
【請求項4】
前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間検出手段において前記渋滞区間が検出されても、前記渋滞区間を含む前記走行履歴を直ちには前記センタ装置に送信せず、前記渋滞区間の検出後、更に予め定めた一定時間経過するのを待って前記第1の広域無線通信手段または前記第1の狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記センタ装置に送信することを特徴とする請求項2記載の走行履歴収集システム。
【請求項5】
前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間検出手段が前記渋滞区間を検出し、前記予め定めた一定距離または一定時間、走行または経過するのを待っている状態で、新たな前記渋滞区間を検出したとき、直ちにこれまでの前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記第1の広域無線通信手段または前記第1の狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記センタ装置に送信することを特徴とする請求項3又は4記載の走行履歴収集システム。
【請求項6】
前記渋滞区間検出手段は、前記車両の走行速度が予め定めた閾値以下の状態が、予め定めた区間、または予め定めた時間連続して継続した場合に渋滞と判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の走行履歴収集システム。
【請求項7】
前記渋滞区間検出手段は、前記車両の走行速度が予め定めた閾値以下の状態が、予め定めた区間、または予め定めた時間連続して継続しない状態でも、前期予め定めた区間、または前記予め定めた時間より更に大きい一定区間、または一定時間の平均走行速度が前記予め定めた閾値以下のとき、渋滞と判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の走行履歴収集システム。
【請求項8】
前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間が予め定めた許容値に達したとき、直ちにこれまでの前記渋滞区間を含む前記走行履歴を前記第1の広域無線通信手段または前記題1の前記狭域無線通信手段のいずれか一方を用いて前記センタ装置に送信することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の走行履歴収集システム。
【請求項9】
前記走行履歴送信手段は、前記渋滞区間が予め定めた許容値に達しても直ちにこれまでの前記渋滞区間を含む前記走行履歴を送信せず、前記第1の狭域無線通信手段を介して前記センタ装置に送信可能な状態になるのを待って、前記第1の狭域無線通信手段を介してこれまでの前記渋滞情報を含む前記走行履歴を前記センタ装置に送信することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の走行履歴収集システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載された走行履歴収集システムに使用する端末装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−23897(P2006−23897A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200304(P2004−200304)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】