説明

走行設備

【課題】 走行設備の安全性および作業性の向上
【解決手段】 この走行設備10は、所定の走行経路に沿って走行する走行装置15と、床下18で走行装置15に追従して動く追従装置21と、走行装置21の真下を通るように床19に形成した溝20を通して、走行装置15と追従装置21とを連結する連結部22を備えた走行設備において、溝20を閉塞するように溝20に設置し、走行装置21の走行に従動するプレートチェーン30を備えたものである。この走行設備10は、走行装置15の走行に従動するプレートチェーン30により、溝20が閉塞されているから、作業者が溝20に足を取られたり、部品が溝20に落ちたりすることがなく、走行設備10の安全性および作業性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行設備には、リフターやロボットなどを搭載して移動する台車を備えたものがある。例えば、自動車の組み立てライン10では、図1に示すように、オーバーヘッドコンベヤ11のハンガー12に吊り下げられて搬送される自動車のボディー13に対し、自動車のボディー13の真下にリフター14を搭載した台車15を装備した走行設備がある。斯かる走行設備10では、台車15に搭載したリフター14に自動車のボディー13に組み付ける部品16、17を乗せてラインに沿って自動車のボディー13と部品16、17をそれぞれ上下に位置させて搬送しながら、部品及び自動車のボディー13の各々に各種作業を行う。そして、所定のタイミングで、リフター14で部品を持ち上げて自動車のボディー13に取り付ける作業を行っている。
【0003】
斯かる走行設備10では、床上に作業スペースを確保するため、図1、2に示すように、リフター14の昇降や台車15の駆動に給電する給電ケーブル21や、台車15同士を連結する連結装置(図示省略)など、台車15に追従して動く追従装置21を床下18に配設したものがある。この場合、台車15の真下を通るように床19に溝20を形成し、溝20に連結部22を通して、床下18に配設した追従装置21と台車15を連結している。なお、特開2003−72608には、床下に連結装置を配設したものが開示されている。
【特許文献1】特開2003−72608
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した自動車の組み立てライン10に見られるように、台車15の真下を通るように床19に溝20を形成した走行設備では、床19の上で作業を行う作業者が不注意で溝20に足を取られる場合が生じうる。特に、上述したようにオーバーヘッドコンベヤ11を組み合わせた場合には、作業者は、オーバーヘッドコンベヤ11を流れる部材に気が取られて、溝20に足が取られるケースが起こり易くなる。また、部材に組み付けるねじなどの小さい部品を誤って落としたときに、溝20に落ちてしまい、取れなくなる場合も生じうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る走行設備は、所定の走行経路に沿って走行する走行装置と、床下で走行装置に追従して動く追従装置と、走行装置の真下を通るように床に形成した溝を通して、走行装置と追従装置とを連結する連結部とを備えた走行設備において、溝を閉塞するように溝に設置し、走行装置の走行に従動する閉塞部材を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
この走行設備は、溝を閉塞し、走行装置の走行に従動する閉塞部材を溝に設置したので、溝に作業者の足が取られたり、溝に小さい部品が落ちたりするのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る走行設備を図面に基づいて説明する。なお、同一の作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明する。
【0008】
この走行設備10は、図3、4に示すように、床19を走行する走行装置としての台車15の真下を通るように床19に形成した溝20に、溝20を閉塞し、台車15の走行に従動する閉塞部材としてのプレートチェーン30を設置したものである。
【0009】
プレートチェーン30は、例えば、図5、図6に示すようなトッププレート31付きのコンベアチェーンを用いており、図3に示すように、溝の両端にスプロケット32を取り付けて設置している。なお、図5、図6中、36はリンク本体、37はヒンジ部、38は連結ピンをそれぞれ示している。この実施形態では、図7に示すように、溝20の開口部両側上縁にガイドの段差41を形成し、この段差41にトッププレート31が嵌りつつ摺動するようにプレートチェーン30を設置して、プレートチェーン30の上面30aと床19の上面(床面)を略同じ高さレベルにしている。
【0010】
このように、プレートチェーン30の上面30aを床19の上面(床面)と略同じ高さレベルになるようにプレートチェーン30を設置することにより、床19に段差が無くなるので、作業者がプレートチェーン30に躓くことがなく、スムーズに作業スペース上を移動できるようになるから、安全性および作業性がさらに向上する。
【0011】
また、走行装置として床上を走行する台車15と、床下18に配設されて台車15に追従して動く追従装置21との連結は、例えば、プレートチェーン30は、台車15の真下でリンクを取り外して開口42させ、開口42に台車15と追従装置21とを連結する連結部22を配設するとよい。この際、開口42の両側のリンク42a、42bをそれぞれ台車15、追従装置21又は連結部22に連結するとよい。なお、図示は省略するが、プレートチェーン30を開口させず、プレートチェーン30の台車15の真下位置するリンクに、台車15と走行装置21との連結構造を備えたリンクを取り付けてもよい。
【0012】
この実施形態では、図3、8に示すように、溝20に沿ってプレートチェーン30を設置しているとともに、床下18を広くしており、台車15に追従して動く追従装置として、給電ケーブル21を収容した可動性を有する配管ラック(ケーブルベア(登録商標)を床下18に設置している。
【0013】
プレートチェーン30は、図3、4に示すように、各台車15の真下で数個のリンクを取り外して、溝20を開口させており、開口42の両側のリンク42a、42bをそれぞれ台車15に連結している。図3に示すように、床下18に配設した給電ケーブル21は、台車15の真下に設けたプレートチェーン30の開口42に連結部を設置して、給電ケーブル21と台車15を連結している。これにより、プレートチェーン30は、台車15の真下で開口し、それ以外は溝20を閉塞した状態を維持しながら、溝20に沿って台車15の走行に従動する。台車15の真下の開口43は維持され、台車15と給電ケーブル21の連結構造が阻害されることはない。
【0014】
なお、上述した実施形態では、開口42の両側のリンク42a、42bを台車15に連結したものを例示したが、開口42の両側のリンク42a、42bは追従装置側(給電ケーブル21側)や連結部に連結してもよい。また、台車15に追従する追従装置として床下に給電ケーブル21(配管ラック)を設置したものを例示したが、追従装置はこれに限定されない。例えば、図示は省略するが、特開2003−72608号に開示されるように、床下18に各台車15を連結する連結装置を設置する場合には、同様に、台車15の真下でプレートチェーン30を開口させ、プレートチェーン30の開口42に連結装置の連結部を進出させて、台車15と連結装置を連結するとよい。
【0015】
このように、この走行設備10は、台車15の真下を通るように床に形成した溝20を閉塞するとともに、台車15の走行に追従するプレートチェーン30を溝20に設置したので、作業者が溝20に足を取られたり、部品が溝20に落ちたりすることがなく、走行設備10の安全性および作業性が向上する。
【0016】
以上、本発明の一実施形態に係る走行設備を説明したが、本発明の走行設備は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
例えば、本発明は、走行装置に追従して動く追従装置を床下に配設し、走行装置と追従装置とを連結する連結部を溝に配設したものを例示したが、この場合、追従装置は上述した給電ケーブルや連結装置に限定されない。また、溝を閉塞するように溝に設置し、走行装置の走行に従動する閉塞部材としてプレートチェーンを例示したが、閉塞部材は溝を閉塞するように溝に設置し、走行装置の走行に従動するものであればよく、種々の構造を採用できる。例えば、プレートチェーンのチェーン構造に変えて、ベルトでトッププレートを連結支持した構造にでもよい。また、閉塞部材としてのプレートチェーンは、上記の実施形態に限定されず、種々の構造を採用することができる。また、上記の実施形態ではプレートチェーン30はスプロケット32により閉ループを構成するものを例示したが、閉塞部材は、溝を閉塞するものであればよく、必ずしも閉ループを構成しなくてもよい。
【0018】
また、走行設備として、床下に給電ケーブルなどを備え、リフターを搭載し、ワークを搬送する台車を例示したが、走行設備はこれに限定されない。走行設備は、例えば、台車にロボットなどを設置したものでもよく、床下に追従装置としてロボットの制御ケーブルを設けたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自動車組み立てラインを示す側面図。
【図2】自動車組み立てラインを示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る走行設備を示す側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る走行設備を示す平面図。
【図5】プレートチェーンを示す側面図。
【図6】プレートチェーンを示す平面図。
【図7】プレートチェーンの設置状態を示す横断正面図。
【図8】本発明の一実施形態に係る走行設備を示す横断正面図。
【符号の説明】
【0020】
10 自動車の組み立てライン(走行設備)
11 オーバーヘッドコンベヤ
12 ハンガー
13 ボディー
14 リフター
15 台車(走行装置)
18 床下
19 床
20 溝
21 給電ケーブル(追従装置)
22 連結部
30 プレートチェーン(閉塞部材)
30a 上面
31 トッププレート
32 スプロケット
41 段差
42 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行経路に沿って走行する走行装置と、
床下で前記走行装置に追従して動く追従装置と、
前記走行装置の真下を通るように床に形成した溝を通して、走行装置と追従装置とを連結する連結部とを備えた走行設備において、
前記溝を閉塞するように溝に設置し、前記走行装置の走行に従動する閉塞部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の走行設備。
【請求項2】
前記閉塞部材はプレートチェーンであって、前記連結部が溝を挿通する部分でプレートチェーンのリンクを取り外して開口し、前記開口の両側のリンクを、それぞれ走行装置、追従装置又は連結部に連結し、プレートチェーンが走行装置の走行に従動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の走行設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−69996(P2007−69996A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255658(P2005−255658)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】