説明

走行駆動換向装置

【課題】走行駆動換向装置において、装置高さを低く抑える。
【解決手段】走行駆動換向装置1は、車両フレーム5に旋回可能に軸支された旋回軸6と、旋回軸6を任意の方向に旋回させる操舵ユニット7と、旋回軸6の下端部に設けられ、車輪11を回転駆動する走行モータ8cを含む走行ユニット8と、を備える。走行モータ8cから導出された電源ケーブル3は、旋回軸6の内部に挿入され、旋回軸6の中を横切って車両フレーム5上に水平方向に引き出されて、走行モータ8cの動作を制御するコントローラ9へ接続される。これにより、車両フレーム5上に引き出された電源ケーブル3による装置高さの増大を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置高さを低く抑えた走行駆動換向装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行駆動換向装置は、走行車両において走行用の車輪を駆動すると共に、その向きを変える装置である。このような装置は、例えば、図5に示されるように、車両フレーム10に旋回可能に軸支された旋回軸20と、スプロケット等を利用して旋回軸20を任意の方向に旋回させる換向機構30と、を備える。旋回軸20の下端部には、車輪40を備えた走行ユニット50が設けられ、車輪40の動作は、車輪40を回転駆動するモータ60、及び車輪40の回転を制動するブレーキ70により制御される。モータ60及びブレーキ70は、それぞれ車両フレーム10の上方に設けられたコントローラ80と電源ケーブル90により電気的に接続されており、コントローラ80は、モータ60及びブレーキ70の動作を制御する。このとき、モータ60から導出された電源ケーブル90及びブレーキ70から導出された電源ケーブル90は、共に旋回軸20の内部を通って、車両フレーム10から垂直上方に引き出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、電源ケーブルが垂直上方に引き出されるため、引き出された電源ケーブルの高さ分だけ装置高さが高くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、装置高さを低く抑えることが可能な走行駆動換向装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の走行駆動換向装置は、走行車両の内部に設けられ、走行用の車輪を駆動及び換向するものであって、車両フレームと、前記車両フレームに旋回可能に軸支された円筒状の旋回軸と、前記旋回軸の上端部に設けられ、該旋回軸を任意の方向に旋回させる換向機構、及び前記車両フレームに設けられ、前記換向機構を駆動する換向モータを有した操舵ユニットと、前記旋回軸の下端部に設けられ、前記車輪、及び前記車輪を回転駆動する走行モータを有した走行ユニットと、前記車両フレームの上方に設けられ、前記走行モータの動作を制御するコントローラと、前記走行車両に設けられたバッテリと、前記走行モータ、前記コントローラ、及び前記バッテリを電気的に接続する電源ケーブルと、を備え、前記走行モータから導出された前記電源ケーブルは、前記旋回軸の内部に挿入され、該旋回軸の中を横切り、前記換向機構を避けて前記車両フレーム上に水平方向に引き出されて前記コントローラへ接続されていることを特徴とする。
【0007】
前記換向機構は、前記換向モータにより駆動される駆動スプロケットと、前記旋回軸の上端部に取り付けられた従動スプロケットと、前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットとの間に掛け回された無端状の換向チェーンと、を備えることが好ましい。
【0008】
前記走行車両は、搬送台車であることが好ましい。
【0009】
前記走行ユニットには、前記車輪に対するブレーキ機構及び路面に敷設された車両誘導用ラインを検出するガイドセンサが設けられ、前記ブレーキ機構から導出されたケーブル及び前記ガイドセンサから導出されたケーブルが、前記電源ケーブルと同じように配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の走行駆動換向装置によれば、走行モータから導出された電源ケーブルが、旋回軸の中を横切って、車両フレーム上に水平方向に引き出されるため、電源ケーブルが車両フレームから垂直上方に引き出される場合に比べて、装置高さの増大が起こらない。これにより、装置高さを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る走行駆動換向装置を備えた搬送台車の斜視図。
【図2】(a)は上記走行駆動換向装置の正面図、(b)はその斜視図。
【図3】(a)は上記走行駆動換向装置を構成する旋回軸の上面図、(b)は(a)のI方向から見たときの旋回軸の側面図、(c)は(a)のII方向から見たときの旋回軸の側面図。
【図4】(a)は車輪を旋回させていないときの上記走行駆動換向装置の上面図、(b)は車輪を右旋回させているときの上記走行駆動換向装置の上面図、(c)は車輪を左旋回させているときの上記走行駆動換向装置の上面図。
【図5】従来の走行駆動換向装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る走行駆動換向装置(以下、換向装置という)について、図面を参照して説明する。図1に示されるように、換向装置1は、走行用の車輪11を備え、この車輪11を駆動及び換向する装置である。換向装置1は、本実施形態においては、搬送台車2の内部に設けられ、搬送台車2の前端部中央及び後端部中央にそれぞれ1台ずつ設置されている。換向装置1の両脇には、車輪11に従動して回転する補助輪11aが設けられており、搬送台車2は、これら車輪11及び補助輪11aを介して地面上を走行する。換向装置1は、電源ケーブル3により搬送台車2の内部に設けられたバッテリ4と電気的に接続されている。
【0013】
換向装置1は、図2(a)(b)に示されるように、水平方向に伸びる平板状の車両フレーム5を備える。なお、図2(b)に示した換向装置1は、車輪11を略90度左方向に旋回させた状態にある。車両フレーム5には、車両フレーム5を貫通する円柱状の旋回孔5aが設けられており、旋回孔5aの内部には、車両フレーム5に旋回可能に軸支された円筒状の旋回軸6が設置されている。旋回軸6の動作は、操舵ユニット7により制御される。操舵ユニット7は、換向機構71と換向モータ72とを備える。換向機構71は、旋回軸6の上端部に設けられ、旋回軸6を任意の方向に旋回させる。換向モータ72は、車両フレーム5に設けられ、換向機構71を駆動する。換向モータ72の動作は、車両フレーム5に内蔵された換向モータコントローラ(図示せず)により制御される。
【0014】
換向機構71は、本実施形態においては、複数のスプロケットを含むシステムから構成され、換向モータ72により駆動される駆動スプロケット71aを備える。駆動スプロケット71aは、平板状とされ、車両フレーム5の上面に水平に保持されている。駆動スプロケット71aの側方には、旋回軸6の上端部に取り付けられた従動スプロケット71bが、駆動スプロケット71aと同じ高さで水平に配置されている。従動スプロケット71bは、平板状とされ、駆動スプロケット71aと同一ピッチで設けられた歯車を有する。駆動スプロケット71aと従動スプロケット71bとの間には、これら両スプロケットの歯車と嵌合する溝部を有する無端状の換向チェーン71cが、複数の補助スプロケット71dを介して掛け回されている。これにより、換向モータ72により駆動スプロケット71aが回転されると、それに連動して従動スプロケット71bが回転され、更には、旋回軸6が旋回される。
【0015】
旋回軸6の下端部には、ブラケット8aを介して走行ユニット8が設けられる。走行ユニット8を図2(a)において一点鎖線で囲んで示す。ブラケット8aは、車輪11の両側面及び上面を囲むように配置されており、その上面において旋回軸6の下面と接合される。ブラケット8aの下方には、ブラケット8aの両側面を貫通し、ブラケット8aにより回転可能に保持された車輪11の車輪軸8bが設けられる。車輪軸8bの一端には、車輪軸8bを回転駆動する走行モータ8cが設けられ、その他端には、車輪軸8bの回転を制動するブレーキ機構8dが設けられる。車輪11の前方には、ブラケット8aに固着された状態で、路面に敷設された磁気棒や磁気テープ等から成る車両誘導用ラインを検出するガイドセンサ8eが設置される。ガイドセンサ8eを設けることにより、搬送台車2を車両誘導ラインに沿って走行させることができるため、搬送台車2を自動又は無人で走行させることが可能となる。
【0016】
走行モータ8cからは、電源ケーブル3が導出されている。走行モータ8cから導出された電源ケーブル3は、旋回軸6の内部に挿入され、旋回軸6の中を横切り、換向機構71を避けて車両フレーム5上に水平方向に引き出される。車両フレーム5上に引き出された電源ケーブル3は、車両フレーム5の上方に設けられた走行モータ8cの動作を制御するコントローラ9に接続される。コントローラ9は、電源ケーブル3によりバッテリ4と電気的に接続される。なお、旋回軸6の構造及び旋回軸6の内部における電源ケーブル3の配置構成については、図3を参照して詳述する。
【0017】
ブレーキ機構8dやガイドセンサ8eからも、電源ケーブル3が導出されている。これらブレーキ機構8dから導出された電源ケーブル3及びガイドセンサ8eから導出された電源ケーブル3は、走行モータ8cから導出された電源ケーブル3と同じように配設され、車両フレーム5上に水平方向に引き出される。車両フレーム5上に引き出されたブレーキ機構8dからの電源ケーブル3は、車両フレーム5の上方に設けられたブレーキ機構8dの動作を制御するコントローラ(図示せず)に接続される。車両フレーム5上に引き出されたガイドセンサ8eからの電源ケーブル3は、車両フレーム5の上方に設けられたガイドセンサ8eの動作を制御するコントローラ(図示せず)に接続される。
【0018】
図3(a)(b)(c)は、旋回軸6の構造を示すと共に、旋回軸6内部における電源ケーブル3の配置構成を示している。旋回軸6は2段構造となっており、下段に上面視が略C字状の走行ユニット接合部6aを備え、上段に走行ユニット接合部6aの切り欠き部分を跨ぎ、走行ユニット接合部6a上面の周縁部の一部に配置される操舵ユニット接合部6bを備える。走行ユニット接合部6aは、旋回孔5aの内部を摺動して旋回するように、その外周円の直径が旋回孔5aの直径よりもやや小さく設定されており、その下面において走行ユニット8のブラケット8dの上面と接合される。操舵ユニット接合部6bは、その上面において操舵ユニット7の従動スプロケット71bの下面と接合される。
【0019】
旋回軸6の下方に位置する走行ユニット8から導出された電源ケーブル3は、走行ユニット接合部6a側方の切り欠き部分から走行ユニット接合部6aの内部に挿入される(図3(c)参照)。走行ユニット接合部6aの内部に挿入された電源ケーブル3は、走行ユニット接合部6aの内部を横切って操舵ユニット接合部6bの下を通過した後、走行ユニット接合部6aの上方に導出される。ここで、電源ケーブル3は、耐屈曲性に優れた材料から構成され、電源ケーブル3が伸びる方向に沿って前後に移動することができるように、余裕を持った長さで敷設されている。
【0020】
上記のように構成された換向装置1の動作を、図4(a)(b)(c)を参照して説明する。図4(a)は、搬送台車2が前後方向に直進しているときの換向装置1の状態を示している。このとき、旋回軸6の内部に位置する電源ケーブル3は、前後方向に対して直交した状態となっている。図4(b)は、右折時における換向装置1の状態を示している。右折時には、換向装置1は、駆動スプロケット71aを上方から見て時計回りに回転させることにより、従動スプロケット71bを同方向に回転させる。これにより、旋回軸6が同方向に旋回され、その結果、車輪11が右に旋回される。このとき、旋回軸6の内部に位置する電源ケーブル3は、旋回軸6の旋回に伴って屈曲されるが、耐屈曲性に優れた材料から構成され、かつ余裕を持った長さで敷設されているため断線しない。図4(c)は、左折時における換向装置1の状態を示している。左折時には、換向装置1は、右折時とは反対の方向に駆動スプロケット71aを回転させることにより、車輪11を左に旋回させる。
【0021】
本実施形態によれば、走行ユニット8の走行モータ8c、ブレーキ機構8d、及びガイドセンサ8eの各々から導出された電源ケーブル3を、車両フレーム5上に水平方向に引き出して、コントローラ9に接続することができる。そのため、車両フレーム5上に引き出された電源ケーブル3による装置高さの増大を抑制することができる。
【0022】
なお、本発明に係る走行駆動換向装置は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本実施形態においては、走行駆動換向装置は搬送台車に搭載されたが、本装置が搭載される走行車両は、搬送台車に限定されず、乗用車やフォークリフト等であってもよい。また、換向機構は、本実施形態のものに限定されず、例えば、モータ等により旋回軸を直接旋回させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 走行駆動換向装置
11 車輪
2 搬送台車(走行車両)
3 電源ケーブル
4 バッテリ
5 車両フレーム
6 旋回軸
7 操舵ユニット
71 換向機構
71a 駆動スプロケット
71b 従動スプロケット
71c 換向チェーン
72 換向モータ
8 走行ユニット
8c 走行モータ
8d ブレーキ機構
8e ガイドセンサ
9 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両の内部に設けられ、走行用の車輪を駆動及び換向する走行駆動換向装置であって、
車両フレームと、
前記車両フレームに旋回可能に軸支された円筒状の旋回軸と、
前記旋回軸の上端部に設けられ、該旋回軸を任意の方向に旋回させる換向機構、及び前記車両フレームに設けられ、前記換向機構を駆動する換向モータを有した操舵ユニットと、
前記旋回軸の下端部に設けられ、前記車輪、及び前記車輪を回転駆動する走行モータを有した走行ユニットと、
前記車両フレームの上方に設けられ、前記走行モータの動作を制御するコントローラと、
前記走行車両に設けられたバッテリと、
前記走行モータ、前記コントローラ、及び前記バッテリを電気的に接続する電源ケーブルと、を備え、
前記走行モータから導出された前記電源ケーブルは、前記旋回軸の内部に挿入され、該旋回軸の中を横切り、前記換向機構を避けて前記車両フレーム上に水平方向に引き出されて前記コントローラへ接続されていることを特徴とする走行駆動換向装置。
【請求項2】
前記換向機構は、前記換向モータにより駆動される駆動スプロケットと、前記旋回軸の上端部に取り付けられた従動スプロケットと、前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットとの間に掛け回された無端状の換向チェーンと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の走行駆動換向装置。
【請求項3】
前記走行車両は、搬送台車であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行駆動換向装置。
【請求項4】
前記走行ユニットには、前記車輪に対するブレーキ機構及び路面に敷設された車両誘導用ラインを検出するガイドセンサが設けられ、前記ブレーキ機構から導出されたケーブル及び前記ガイドセンサから導出されたケーブルが、前記電源ケーブルと同じように配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の走行駆動換向装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−188061(P2012−188061A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55146(P2011−55146)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】