説明

超伝導の電解ハイブリッド材料及びその製造方法、使用方法

本発明は、特に燃料電池の電解質に使用可能なプロトン超交換膜として、新規な超伝導のハイブリッドポリマー材料、及びその製造工程、使用方法に関する。特に燃料電池内のプロトン伝導のためのハイブリッド電解質膜として用いられ得、この膜が存在することにより、特に導電性/性能、水や動作温度の制御や、熱及び化学的安定性、寿命といった点で優れた性能を示す、改良された新規のハイブリッドポリマー材料を提供することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料電池の電解質に使用可能なプロトン超交換膜として、新規な超伝導のハイブリッドポリマー材料、及びその製造工程、使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に記載される本発明は、特にエネルギーの転換及び制御に用いられる。現在、エネルギーの製造及び消費は、主として化石資源の燃焼に基づいている。このことは、(化石燃料の欠乏や大気汚染の増加といった)最終的には世界経済に重大に影響を与え、地球の環境に好ましくない影響を与えると予想されている。このことは、燃料電池を用いることによる電気化学的なエネルギー転換が、選択的なエネルギー源、動力源(エネルギーキャリア)として真剣に考慮されるという理由である。
【0003】
ポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)という名称でも知られている、プロトン交換膜燃料電池は、輸送や携帯といった利用において進化したタイプの燃料電池である。燃料電池の原理は、1839年に英国の電気化学者であるサー、ウイリアム、グローブ(Sir William Grove)によって、実験で実証された。PEMFCタイプの最初の燃料電池は、米国において1960年代からGeneral Electric社により宇宙用途のために開発された。一般に、このタイプの電池は、中間温度(40〜120℃)において機能するように設計されており、自動車産業や携帯電気産業により世界的に開発されつづけている。しかしながら、申し分の無い環境的優位性や高いエネルギー効率にも関わらず、燃料電池は、そのコスト(出発材料や寿命)の高さゆえに、内燃機関との競争についたばかりである。
【0004】
PEMFCタイプの燃料電池の核は、ポリマー電解質膜、電極(一般的にプラチナの薄層からなるアノードやカソード)及びガス拡散に用いられるバイポーラプレートで構成されている。
【0005】
プロトン交換ポリマー電解質膜により機能する燃料電池は、以下の反応式により、高いエネルギー効率をもって、汚染物を排出することなく、ガス(H2/O2)の化学エネルギーを電気エネルギーに変換することを可能にする。
カソードにおける反応(酸素の還元のサイト)
1/2O2+2H++2e-→H2O
アノードにおける反応(水素の酸化のサイト)
H2→2H++2e-
【0006】
2つの電極は電解質(膜)で分離されており、酸化される燃料(水素)がアノードとカソードに運ばれ酸素(またはより単純に空気であってもよく、空気は酸素が多く含まれていてもいなくてもよい)が付与される。ジヒドロゲンはアノードにおいて反応して、アノードとカソードに接続された外部の電気回路に供給される2つの電子を放す(酸化)。酸素の陰極還元は、カソードにおいて起こる。反応物質は、原則として装置に連続的に導かれ、電池の起電力は、電極の電位差に等しい。このようにして、一般に知られた全体にわたる反応が得られる。
H2+1/2O2→H2O
【0007】
水は、このようにして、電池の通常の動作により発生し、そして、膜の外側に排出されなければならない。水の制御は電池の性能にとって重大であるため、水の量が、電池が適切に機能することを保証する最適レベルであり続けるように留意されるべきである。特に、水が多すぎると、膜が膨潤し過ぎかつチャンネル又は電極の配分ににブロッキングを生じてしまい、触媒サイトへの気体接触に好ましくない影響をもたらす。故に、膜から排出する水の量が不十分であると、導電率に悪影響を与え、電池の効率の悪化をもたらす。
【0008】
膜の役割は、アノードからカソードへのプロトン(H+)の輸送に貢献することにより、電気化学反応を可能とさせることにある。しかしながら、膜は、燃料電池をショートさせることとなるような、電子を導いてはならない。膜は、アノードにおいては、還元環境に耐性であると同時に、カソードにおいては、酸化環境に耐性であらねばならない。しかし、膜は、アノードに存在する水素とカソード存在する酸素が混合することを防がなければならない。
【0009】
このような膜を製造するために用いられ、今日においてこの分野におけるレファレンスとなっている、第一のプロトン輸送ポリマーとしては、1968年に米国のデュポン社(firm Du Pont de Nemours)により開発、完成されたペルフルオロスルホン酸(perfluorosulfonic)ポリマーのナフィオン(Nafion)(商標)がある。歴史的には、1960年代のNASAのジェミニ宇宙計画(Gemini space program)では、ポリスチレンスルホネート(polystyrenesulfonate)の膜からなる燃料電池が用いられた。しかし、それらはすぐにナフィオン(商標)膜に取って代わられた。ナフィオン(商標)膜がPEMFCの性能を向上させることを可能にしたからである。化学用語において、それはランダムに分散したイオン性基である柔軟なフッ化炭素鎖から形成された有機高分子である(Mauritz K. A. et al., Chem Rev.,2004,104,4535-4585)。ナフィオン(商標)を主として、アシプレックス(Aciplex)(商標)(日本の旭化成社)又はフレミオン(Flemion)(商標)(日本の旭硝子社)という商品名で販売される他の化学的なペルフルオロスルホン酸(perfluorosulfonic)ポリマーも存在する。
【0010】
これらのポリマーから製造された膜は、本来、化学的に、熱的及び機械的(柔軟性において)に非常に安定している。室温及び100%相対湿度において0.1S・cm-1オーダーで、高導電率を有するといった優れた電気化学特性を示している(ナフィオン(商標)のメーカー公表データによる)。しかしながら、これらの膜は、H+イオンの効果的な移動を可能にするために、90℃未満の温度で使用しなければならず、かつ、常に水で飽和しておかなければならない。これは、プロトンの伝導が、プロトンがイオン、親水性伝導経路に沿って飛び回るという(上述のMauritz K. A. et al., 2004, )、グロッタスタイプ(Grotthus type)のメカニズムによって行われるためである。更に、これらの膜の合成は、時間がかかり、困難である。実際に、フッ素を用いるという危険性を伴い、原価が非常に高い。水の制御及び温度変化に関する問題に鑑みて、いずれも完全に満足なものではない。これは、この系が、湿度レベルの大きな変動を受けた場合、膜の膨潤と収縮の連続するサイクルが発生して、その結果として膜に重大な材質疲労を生じさせるためである。更に、ナフィオン(商標)は、ガラス転移(Tg=120℃)を非常に起こしやすいポリマーであり、このことにより老化が加速し、化学構造の再編成が出現し、機械構造的な弱点(裂け)が生じやすくなり、その寿命が制限される。
【0011】
電解質膜の製造に用いられ得る、選択的な他のタイプのポリマーについても、既に提案されている。これらは、特にスルホン化され、又はドープされた、熱に対して安定したポリマーである(ポリベンズイミダゾール類、ポリアリルエーテルスルフォネート類、スルホン化ポリアリールエーテルケトン類等)。これらのポリマーも、膜として用いられると、特に、導電率(導電性)、寿命、水の制御に関して、いくつかの欠点を示す。
【0012】
米国特許出願第2005/0164063に、様々な固形状の化合物及びシルセスキオキサンに基づく前駆体から得られた電解質の合成について記載されている。シルセスキオキサンは、シロキサン官能基が、尿素官能基のない2価の基を通してフェニルスルホネート基に結合したものである。このような、シロキサン官能基をフェニルスルホネート基に結合させる2価の基は、アルキル又はアリール基であり、低導電性であるという欠点を有している(Electrochimica Acta, 2003, 48, 2181-2186)。
【0013】
このことにより、これらそれぞれの系におけるそれぞれの弱点を克服するために、近年、無機化学分野の会社により非常に多くの検討と改良が行われ、PEMFCの特性の全てにおいて改良がなされた。このことは、特に、水の制御、高温における材料の性質(乾燥)及びこれらの長期間に渡る安定性に反映されている。これらの考えは、ハイブリッド膜にも表されており、導電性電解質内における継続的な無機化学ネットワークの存在の重要性を立証することを可能としている。
【0014】
(3-イソシアネート-プロピル)トリエトキシシランと(P-アミノフェニル)ジフェニルホスフィンの反応により得られ、触媒の特性が改良されたロジウムベースの単量体錯体が、知られており、ゾル−ゲル重合に用いられる(J. Organomet. Chem., 2002, 641, 165-172)。
【0015】
4[(4"-アミノフェニル)スルフォニル]-4'-[N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]アゾベンゼンとアルコキシシランとの反応、及びゾル−ゲル重合により製造されたフィルムが、光学分野における用途用として、Chem. Mater., 1998, 10, 1642-1646で開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
不幸なことに、現在、PEMFCの製造会社及び利用者の厳重な要求を、その性質にかかわりなく、完全に満たす膜は存在しない。例えば、PSAプジョー シトロエンとラ’エナジーアトミック(l'Energie Atomique)[フランス原子力エネルギーコミッション]とのパートナーシップで出されたGENEPAC燃料電池、これは80kwに及ぶパワーを有している、といったような、電気化学システムに用いる使用可能な技術デバイスが多く市場に出ているにも関わらず、技術的な阻害要因が依然として存在する。
【0017】
先ず、水の制御に関して、上述のように、電池の稼動により発生し、電解質膜の特性(特に導電性)に影響を与える水を制御することは最も重要である。PEMFC内(入口、出口、カソードとアノードとの間の発生及び逆拡散)で発生する水の移動は、相対湿度に依存することのない電解質の生成の促進に対して非常に多くの制約となるので、水を管理及び制御することは必要である。
【0018】
動作温度についても、ナフィオン(商標)タイプの燃料電池だけが、最大90℃の温度で動作可能である。温度が高いと、膜は、水の保持ができなくなり、プロトンの伝導を適切になし得ない。温度の上昇に関係して相対的に湿度が低下することにより、燃料電池の効率は低下する。実際に、運搬用車両への燃料電池の適用について、90℃より高い温度、特に120〜150℃の間で十分に機能する膜が必要とされる。このタイプの膜は、現在のところ市場には存在しない。
【0019】
最終的な製造コストの点について、この技術を大規模に発達させ、これらの電力発電機を与えることで、明るい未来を運命付けるためには、触媒にプラチナを用いる燃料電池のコア(MEA)の製造コストと同様、電解質膜の製造コストの問題が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明者等は、これら様々な問題の解決を可能とし、特に燃料電池内のプロトン伝導のためのハイブリッド電解質膜として用いられ得、この膜が存在することにより、特に導電性/性能、水や動作温度の制御や、熱及び化学的安定性、寿命といった点で優れた性能を示す、改良された新規のハイブリッドポリマー材料を提供することを目的とする。この目的は、以下に定義され、本発明の最初の主題として構成される、ハイブリッドポリマー材料により達成される。
【0021】
本発明の対象は、フィルム形態として提供され、かつ次式(I)
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、
−R1及びR3は、同一であり、メチルオキシ又はエチルオキシ基を表し;
−R2は、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ又はフェニル基を表し;
−mは、2〜6を含む範囲の整数であり;
−nは、1又は2に等しい整数である)
で表される少なくとも1つのハイブリッド前駆体の求核性触媒によるゾル−ゲル重合によって生ずることを特徴とするハイブリッドポリマー材料である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
−図1は、1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3-(4-(ナトリウムスルホネート)フェニル)尿素(1)のX-線粉末回折図である(回折角(2θ)の関数とする任意単位の強度);
−図2は、前駆体(1)の結晶構造である;
−図3は、ダイマー形態(1)2中の前駆体(1)の分子組織の概略図である;
−図4は、ナノメータースケールでの前駆体(1)のサブミクロン組織を示す透過型電子顕微鏡写真である(図4A:倍率×80000;図4B:倍率×240000);
−図5は、前駆体(1)を使用しないで、可塑化前駆体(3)を使用して得られた材料との比較(本発明の一部を形成しない)であり、可塑化前駆体(化合物3)の存在又は非存在中、前駆体(1)で得られたハイブリッド材料のX-線回折図を示す: 材料A:化合物(3)のみで得た、材料D:前駆体(1)40重量%及び前駆体(3)60重量%で得た、材料H:可塑化前駆体(3)なしで前駆体(1)のみ使用して得た。この図で、強度(任意単位)は回折角(2θ)の関数である;
−図6は、倍率×120000で、ゾル−ゲル法により重合させた前駆体(1)100%からなるハイブリッドポリマー材料(以下の実施例2の表2の膜H)の透過型電子顕微鏡写真である(図6A:下方焦点(underfocus)での像、図6B:焦点での像);
−図7は、本発明によるハイブリッド膜の写真を示し、これら膜は印刷支持体上に配置されている;この図において、写真(i)及び(ii)は、前駆体(1)を40重量%含む、以下の実施例2の表2の膜Dのものであり、写真(iii)は、前駆体(1)を58重量%含む、以下の実施例2の表2の膜Fのものであり、写真(iv)は、化合物(1)を48重量%含む、以下の実施例2の表2の膜Eのものである;
−図8は、ゾル−ゲル法により重合させた前駆体(1)のみから構成された材料Hの写真であり(図8A)、及びそのハイブリッド材料のラメラ構造内に存在するプロトンチャネルの概略図でもある(図8B);
−図9は、膜のグラムあたりの化合物(3)のミリ当量(meq)の関数としての、室温における、膜A〜Hのイオン交換容量(IEC)を表す;
−図10は、膜A〜H及びナフィオン(商標)117タイプの参照膜の25℃及び100%相対湿度でのプロトン伝導性を表す;
−図11は、膜のグラムあたりの化合物(3)のミリ当量(meq)の関数として、室温で、膜A〜Hの膨潤度及び水和数を表す;
−図12は、本発明のハイブリッド膜の形成メカニズムを概略的に表す:
a)本発明によるハイブリッド膜の断面図、
b)ラメラナノドメインの概略組立体、
c)導電性基-SO3H-H2Oを含むプロトン−伝導チャネル結合の形成;
図13は、電気化学インピーダンス分光法により測定された浸漬膜のアレニウス曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この材料は、透明で柔軟性のあるフィルム形態として供給される。
好ましい具体例によると、前記材料は、上記式(I)でR1とR3がエチルオキシ基である場合の少なくとも1つの前駆体の重合により得られる。
式(I)の前駆体のR2基の上記定義の中で、エチルオキシ基であることが、特に好ましい。
【0026】
本発明の好ましい具体例によると、式(I)の前駆体は、R1=R2=R3=エチルオキシの化合物から選択される。
mに与えられる値の中で、m=3である式(I)の前駆体が好ましい。
上記の構造式(I)の前駆体において、n=1のとき、ナトリウムスルホネート基は、尿素基の窒素原子に結合した炭素原子に対してフェニル環のパラ位を占めることが好ましい。
n=2のとき、2つのスルホネート基は互いに、尿素基の窒素原子に結合した炭素原子に対してメタ位、あるいは、尿素基の窒素原子に結合した炭素原子に対してパラ位及びメタ位にあることが好ましい。
【0027】
これらの選択物は、以下の構造式(I-1)〜(I-3)に対応する。
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、R1、R2、R3及びmは、上記式(I)の前駆体に示したものと同じ意味である)
これら前駆体の間で、n=1である化合物、すなわち式(I-1)の前駆体が、好ましい。
上記の式(I)の前駆体の間で、1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3-(4-(ナトリウムスルホネート)フェニル)尿素が特に好ましい。この前駆体は、以下の式に相当する。
【0030】
【化3】

【0031】
このように、本発明の特に有利で好ましい具体例によると、ハイブリッドポリマー材料は1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3-(4-(ナトリウムスルホネート)フェニル)尿素の求核性触媒によるゾル−ゲル重合によって得られる。
【0032】
本発明の他の形態によれば、式(I)の前駆体の重合は、ハイブリッド可塑化前駆体の存在下で行われる。この場合、本発明のハイブリッドポリマー材料は、少なくとも1つの上記式(I)の前駆体及び少なくとも1つの下記式(II)の可塑化前駆体との、求核性触媒下におけるゾル−ゲル共重合によって得られる。
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、
-R4,R'4,R6及びR'6は、同一であり、メチル又はエチル基を表し;
−R5及びR'5は、同一であっても異なっていてもよく、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ又はフェニル基を表し;
x及びx'、ならびにy及びy'は、同一であっても異なっていてもよく、2〜6を含む範囲の整数であり;
zは、8〜16を含む範囲の整数である)
【0035】
本発明の好ましい具体例によると、式(II)の前駆体は、R4,R'4,R6及びR'6基がエチル基である化合物から選択される。
【0036】
本発明の他の好ましい具体例によると、式(II)の前駆体は、R5及びR’5基がエチルオキシ基である化合物から選択される。
x及びx'、ならびにy及びy'に与えられる値で、式(II)の可塑化前駆体に好ましいものは、x=x'=y=y'=3である。
【0037】
式(II)の可塑化前駆体において、zは12〜14を含む範囲の整数であることが好ましく、z=13であることが特に好ましい。
特に好ましい具体例によると、可塑化前駆体は、中心のポリテトラヒドロフラン単位に対して対称な式(II)の化合物から選択される。
【0038】
上記式(II)の可塑化前駆体として、テトラヒドロフラン単位の(z)の数値が13である、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル尿素)-3-ポリ(テトラヒドロフラン)が挙げられる。
【0039】
【化5】

【0040】
上記式(II)の可塑化前駆体の少なくとも1つが存在すると、本発明のハイブリッドポリマー材料に柔軟性、弾力性及び疎水性を増大させることを可能にする。
【0041】
本発明によるハイブリッドポリマー材料において、使用される可塑化前駆体は、式(I)の前駆体のモル数に関して、好ましくは、およそ10〜40mol%であり、より好ましくは、およそ15〜25mol%である。
本発明の好ましい具体例によると、ハイブリッドポリマー材料は、厚さが100〜200μmを含む範囲である。
【0042】
本発明の他の対象は、フィルムの形態で提供され、かつ上記で定義されたごときハイブリッドポリマー材料の製造方法であり、かつ下記工程
1)下記式(I)
【0043】
【化6】

【0044】
(式中、
−R1及びR3は、同一であり、メチルオキシ又はエチルオキシ基を表し;
−R2は、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ又はフェニル基を表し;
−mは、2〜6を含む範囲の整数であり;
−nは、1又は2に等しい整数である)
の少なくとも1つのハイブリッド前駆体の無水溶媒への溶解、
2)ゲルを得るために、水の存在下、第一級アミン及びイミダゾール誘導体から選ばれる求核性触媒の添加による前記ハイブリッド前駆体(I)のゾル−ゲル重合、
3)前記ゲルの成形、
4)フィルム形態の固形材料を得るための、前記ゲルの乾燥、
5)酸性溶液中での前記フィルムの浸漬による、Na+/H+イオン交換、及び
6)酸の痕跡を除去するための、前記フィルムの水での洗浄
を含むことを特徴とする。
【0045】
工程1)で用いられる無水溶媒は、例えば、メタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルアセトアミドから選択できる。
【0046】
工程1)で使用される式(I)のハイブリッド前駆体は、市販品ではない。以下の工程を含む合成工程により製造することができる。
i)下記式(III)
【0047】
【化7】

【0048】
(式中、nは、1又は2に等しい整数である)
の無水アミノベンゼンスルホネートを得るための、式(III)のアミノベンゼンスルホネートの完全脱水;
ii)上記工程で得られた式(III)の無水アミノベンゼンスルホネートの、メタノール、DMF、N,N-ジメチルアセトアミド及びこれらの混合物から選択され、無水メタノールが特に好ましい、無水有機溶媒への溶解;
iii)上記の溶液の、真空及び不活性雰囲気下への配置;
iv)上記の溶液への、下記式(IV)
【0049】
【化8】

【0050】
(式中、
−R1、R2、R3及びmは、式(I)のハイブリッド前駆体で示されるものと同じ意味である)
の無水イソシアネート化合物の、過剰で及び室温下での添加;
v)式(I)の所望の前駆体の、中性(非プロトン、aprotic)溶媒からの沈殿;及び
vi)中性溶媒中での、上記式(I)の前駆体の洗浄。
【0051】
工程i)の式(III)の無水アミノベンゼンスルホネートの脱水は、例えば、以下の方式で行ってもよい。すなわち、乾燥天秤(drying balance)上で150℃、及びベルジャー内において真空下60℃で1時間を連続3サイクル行うことによってもよい。
【0052】
工程iv)の間、式(IV)のイソシアネート化合物は、好ましくは、式(III)のアミノベンゼンスルホネートの量に関して、1.2〜1.3当量余分に用いられる。
【0053】
本発明の好ましい具体例によると、工程iv)の終わりに、反応収率を増すように、式(III)のアミノベンゼンスルホネート及び式(IV)のイソシアネート化合物を含む溶液を、ある期間、好ましくはおよそ3〜12時間、60〜80℃を含む温度にされる。
【0054】
工程v)及びvi)で用いられる中性溶媒は、好ましくは、アセトニトリル、エーテル、アセトン及びこれらの混合物から選択される。これらの中でも、アセトニトリル/エーテル混合物(50/50:v/v)が特に有効である。
【0055】
洗浄工程の後、このように得られた式(I)のハイブリッド前駆体を、従来の方法によって(不活性雰囲気下のグローブボックス、P2O5乾燥剤、シリカゲル等)乾燥させてから、デシケーターに保管しておいてもよく、また、本発明のハイブリッドポリマー材料の製造に直接用いてもよい。
【0056】
本発明のハイブリッドポリマー材料の製造工程の好ましい具体例によると、ハイブリッド前駆体又は工程1)の式(I)の前駆体の溶液は、下記式(II)
【0057】
【化9】

【0058】
(式中、
−R4,R'4,R6及びR'6は、同一であり、メチル又はエチル基を表し;
−R5及びR'5は、同一であっても異なっていてもよく、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ又はフェニル基を表し;
x及びx'、ならびにy及びy'は、同一であっても異なっていてもよく、2〜6を含む範囲の整数であり;
zは、8〜16を含む範囲の整数である)
の少なくとも1つの可塑化前駆体を更に含んでいてもよい。
【0059】
本発明の好ましい具体例によると、可塑化前駆体は、R4=R'4=R6=R'6=エチルである式(II)の化合物から選択される。
R5及びR'5で上記した基は、エチルオキシ基であることが特に好ましい。
式(II)の可塑化前駆体において、x,x',y及びy'に与えられる好ましい数値は、x=x'=y=y'=3である。
本発明によると、zは12〜14を含む範囲の整数であることが好ましく、z=13であることが特に好ましい。
【0060】
特に好ましい具体例によると、可塑化前駆体は、中心のポリテトラヒドロフラン単位に対称である、式(II)の化合物から選択される。
上記式(II)の可塑化前駆体としては、テトラヒドロフラン単位の(z)の数値が13であるビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル尿素)-3-ポリ(テトラヒドロフラン)を特に挙げることができる。
【0061】
式(II)の可塑化前駆体が用いられるとき、式(I)の化合物のモル数に関して、可塑化前駆体がおよそ10〜40mol%であることが好ましく、より好ましくは、およそ15〜25mol%である。
本発明におけるハイブリッドポリマー材料の製造工程の工程2)で用いられる求核性触媒としては、ベンジルアミン(第一級アミン)が特に好ましい。この工程において、ゲルが形成され、重合反応の過程で粘度が増加する。
【0062】
工程2)で用いられる求核性触媒の量は、反応媒体に存在するシリコンの総数に対して2〜3当量であり、水の量が、シリコンの総数に対して4〜6当量であることが好ましい。
工程2)は、室温にて行われることが好ましい。
【0063】
この工程の好ましい具体例において、工程3)におけるゲルの成形は、厚さが約100〜200μmを含む範囲であるようにする。これにより、その後、燃料電池の電解質として用いられるポリマーフィルムは、動作中、その系に優れた性能(低い固有抵抗)を発揮させることができる。
【0064】
所望であれば、工程4)の完了後、ポリマーフィルムを乾燥させてから、デシケーターに保管しておいてもよい。この場合、操作及び使用のために必要な、工程5)のイオン交換及び6)の洗浄を実施する前に、例えば、エタノール/水の混合物といった、水性/アルコール性の媒体に、連続して浸漬して、ポリマーフィルムを徐々に再水和させる必要がある。
【0065】
工程5)のイオン交換は、1〜4Mを含む範囲のモル数である塩酸溶液中にポリマーフィルムを浸漬することにより行うことが好ましい。
【0066】
本発明によるハイブリッドポリマー材料は、以下の利点を奏する。
−安価な合成工程により容易に製造される。扱いづらい装置を用いず、また特別な安全環境を必要とせずに大量に容易に製造できる。更に、ゲルを成形するうえで、鋳込み(テープキャスティング、スピンコーティング)、ホットプレス、押出し等の、ゲルを成形する多くの可能性を有する。更に、上記求核性触媒による超分子自己集合かつゾル−ゲル重合による合成方法の戦略が、高度に整った結晶性の膜フィルムの生産をさせる。
【0067】
−燃料電池のコアの製造に従来用いられる膜の構成材料である、ナフィオン(商標)ベースのポリマー材料より4〜8倍大きい導電率の優れた機能を示す。これにより、PEMFCタイプの燃料電池のプロトン伝導ポリマー電解質膜として選択される材料となり得る。
【0068】
−合成の間にナノ構造になるように調整されており、また、シリカ無機バックボーン/マトリックス(Si-O-Si)が連続的に存在することにより、均質性、化学的安定性及び熱安定性を兼ね備えているという顕著な特性を示す。これらの膜の分解温度は330℃より高く、また、加水分解及び/又は酸化環境下において優れた安定性を示す。
【0069】
−無機シリカ基盤(マトリックス)内に、ナノメートル寸法の親水性のイオンチャンネル形態の優れた構造を示す。この特別の構造は、水の保持に好ましいのみならず、プロトンの輸送においても好ましい。これにより、高温において水を保持する能力(他の電解質よりも遅く排出する)を増加することにより、水の制御の観点で、有利である。
【0070】
よって、本発明の他の対象は、
−燃料電池のプロトン伝導ポリマー電解質膜としての上記少なくとも1つのハイブリッドポリマー材料の使用;及び
−上記のハイブリッドポリマー材料から構成される、少なくとも1つのプロトン伝導ポリマー膜を電解質として含むことを特徴とする燃料電池
である。
【0071】
本発明のハイブリッドポリマー材料は、燃料電池の電解質膜として使用されるとき、通常、2つのプラチナ電極(例えば、プラチナ化カーボンといったタイプ)に挿入されるか、又は直接プラチナナノ粒子で覆われる。
【0072】
実用には、1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3-(4-(ナトリウムスルホネート)フェニル)尿素及び少なくとも1つの上記の式(II)の可塑化前駆体との求核性触媒によるゾル−ゲル共重合から得られるハイブリッドポリマー材料の使用が、特に好ましい。この場合、式(II)の可塑化前駆体は、テトラヒドロフラン単位の(z)の数値が13であるビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル尿素)-3-ポリ(テトラヒドロフラン)であることが好ましい。
【0073】
上述のものに加え、本発明は以下の記載から明らかになるような他のものも含む。すなわち、式(I)のハイブリッド前駆体の製造例で言及するもの、式(I)のハイブリッド前駆体に基づくポリマー電解質材料の製造例及び添付の図1〜8である。図1〜8については、以下のとおりである。
【0074】
−図1は、1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3-(4-(ナトリウムスルホネート)フェニル)尿素(1)のX-線粉末回折図である(回折角(2θ)の関数とする任意単位の強度);
−図2は、前駆体(1)の結晶構造である;
−図3は、ダイマー形態(1)2中の前駆体(1)の分子組織の概略図である;
−図4は、ナノメータースケールでの前駆体(1)のサブミクロン組織を示す透過型電子顕微鏡写真である(図4A:倍率×80000;図4B:倍率×240000);
【0075】
−図5は、前駆体(1)を使用しないで、可塑化前駆体(3)を使用して得られた材料との比較(本発明の一部を形成しない)であり、可塑化前駆体(化合物3)の存在又は非存在中、前駆体(1)で得られたハイブリッド材料のX-線回折図を示す: 材料A:化合物(3)のみで得た、材料D:前駆体(1)40重量%及び前駆体(3)60重量%で得た、材料H:可塑化前駆体(3)なしで前駆体(1)のみ使用して得た。この図で、強度(任意単位)は回折角(2θ)の関数である;
【0076】
−図6は、倍率×120000で、ゾル−ゲル法により重合させた前駆体(1)100%からなるハイブリッドポリマー材料(以下の実施例2の表2の膜H)の透過型電子顕微鏡写真である(図6A:下方焦点(underfocus)での像、図6B:焦点での像);
【0077】
−図7は、本発明によるハイブリッド膜の写真を示し、これら膜は印刷支持体上に配置されている;この図において、写真(i)及び(ii)は、前駆体(1)を40重量%含む、以下の実施例2の表2の膜Dのものであり、写真(iii)は、前駆体(1)を58重量%含む、以下の実施例2の表2の膜Fのものであり、写真(iv)は、化合物(1)を48重量%含む、以下の実施例2の表2の膜Eのものである;
【0078】
−図8は、ゾル−ゲル法により重合させた前駆体(1)のみから構成された材料Hの写真であり(図8A)、及びそのハイブリッド材料のラメラ構造内に存在するプロトンチャネルの概略図でもある(図8B);
【0079】
−図9は、膜のグラムあたりの化合物(3)のミリ当量(meq)の関数としての、室温における、膜A〜Hのイオン交換容量(IEC)を表す;
−図10は、膜A〜H及びナフィオン(商標)117タイプの参照膜の25℃及び100%相対湿度でのプロトン伝導性を表す;
【0080】
−図11は、膜のグラムあたりの化合物(3)のミリ当量(meq)の関数として、室温で、膜A〜Hの膨潤度及び水和数を表す;
−図12は、本発明のハイブリッド膜の形成メカニズムを概略的に表す:
a)本発明によるハイブリッド膜の断面図、
b)ラメラナノドメインの概略組立体、
c)導電性基-SO3H-H2Oを含むプロトン−伝導チャネル結合の形成;
図13は、電気化学インピーダンス分光法により測定された浸漬膜のアレニウス曲線を示す。
【実施例】
【0081】
しかし、これら実施例は、本発明の説明にのみ挙げられており、それら実施例はいかなる限定を構成するものではない、と理解されるべきである。
【0082】
(実施例1)
1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3-(4-(ナトリウムスルホネート)フェニル)尿素(前駆体(1))の製造
【0083】
【化10】

【0084】
第一工程として、市販のナトリウム4-アミノベンゼン-スルホネート二水和物(2)が、以下の手順で乾燥(脱水)された。すなわち、乾燥天秤(drying balance)上にて150℃で連続3サイクルさせ、続いてベルジャー内で真空60℃において1時間おき、そして得られた乾燥物を使用するまで貯蔵した。
【0085】
その後、このように乾燥させた1gのナトリウム4-アミノベンゼン-スルホネート(6.67mmol; 1eq.)を、30mlの無水メタノールが入った丸底フラスコに投入した。この溶液を攪拌し、超音波処理し、真空下に置き、続いて、不活性雰囲気下(窒素)においた。この溶液を攪拌しながら、1.65gの無水3-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(5.13mmol; 1.3eq.)を、滴下して加えた。
【0086】
その後、この化合物を80℃で5時間還流させた。反応終了後、得られた無色の溶液を真空下で凝集させ、続いて、アセトニトリル/エーテル混合物(50/50 : v/v)内で4℃までゆっくりと冷却して沈殿、結晶化させた。その後、混合物を速やかに濾過して、濾過残留物をアセトニトリル/トルエン混合物(75/25 : v/v)で数回洗浄して、白色糊状の物質を得、これをベルジャー内で60℃で速やかに乾燥させて、デシケーターに保管した。この実施例により、吸湿性を持った粉状の90%以上の純度の純前駆体(1)を得ることができた。
1H NMR(300MHz, d6-DMSO): δ (ppm) = 0.55(t, J = 8.1Hz, 2H); 1.14(t, J = 6.3Hz, 9H); 1.47(m, J = 8.35Hz, 2H); 3.04(q, J = 7.5Hz, 2H); 3.74(q, J = 8.1Hz, 6H); 6.36(t, J = 5.4Hz, 1H); 7.34(d, J = 6.2Hz, 2H); 7.46(d, J = 6.4Hz, 2H); 8.61(s, 1H).
13C NMR(75MHz, CDCl3): δ(ppm) = 7.4; 18.3; 23.5; 39.6; 57.5; 116.2; 126.5; 140.1; 141.5; 153.8.
【0087】
このようにして得られた前駆体(1)のX-線粉末回折による化学構造分析は、フィリップス社製の回折計量器パンアナリティカルX'パート プロI型(PanAnalytical X'pert Pro I model)(Bragg-Brentanoモードの測定、グラファイト第二モノクロメーター、X'celerator 検出器、Cu放射)を用いることにより行う。得られた回折記録を添付の図1に示し、図1は、強度(intensity)(任意単位)が回折角度(2θ)の関数となっている。前駆体(1)の結晶学的構造を添付の図2に示す。
【0088】
これらの結果は、この前駆体が高い結晶性を有することを示している。これらの結果から、前駆体(1)は、単斜晶格子、平均体積2194.79Åで空間群P2 l/cグループ、次の格子定数α = γ = 90°; β = 116.4°; a = 19.499Å; b = 5.014Å 及び c = 22.449Åで結晶化している。
【0089】
図1に示される前駆体(1)の回折図は、格子距離(interplanar distance)3.42nmにおいて非常に強い鋭角的ピークを示し、これは添付の図3で概略的に示す分子レベルにおける二量体(1)2の構造と明らかに対応している。特に、この距離は、2つの隣接する分子、すなわち互いに接近したスルホネート官能基対向配置の距離に対応すると考えられ得る。更に、尿素基の水素結合による自己集合(self-assembling)により、前駆体(1)の分子構造を平行配列にすることが可能となる(配向同位規則構造)(oriented isotopic superstructures)。
【0090】
透過型電子顕微鏡による分析により、サブミクロンレベルで非常に詳細な構造を観察することが可能となった(図4参照)。特に、ナノメートル単位(図4A及び4B)における前駆体(1)の構造に関して、陰の部分が、互いに平行に位置する連続分子経路(continuous molecular channels)の構造であることが分かる。
【0091】
(実施例2)
1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3-(4-(ナトリウムスルホネート)フェニル)尿素及び可塑化ハイブリッド前駆体に基づくハイブリッド電解質材料の製造
1)準備段階:可塑化ハイブリッド前駆体の合成:ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル尿素)-3-ポリ(テトラヒドロフラン)(3)
【0092】
【化11】

【0093】
アルドリッチ社が販売するポリ(テトラヒドロフラン)-ビス(3-アミノプロピル)(参照 436577; Mn = 1100, すなわち13 テトラヒドロフラン単位)2g(1eq.; 1.82mmol)を、30mlの無水クロロホルム溶液に溶解させた。この溶液を攪拌し、超音波処理し、真空下に置き、続いて、不活性雰囲気下(窒素)に置いた。この溶液を攪拌しながら、0.94gの3-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(2.1eq.; 3.8mmol)を、滴下して加えた。
【0094】
その後、この化合物を80℃で20時間還流させた。この反応混合物を、80℃の温度で4時間、真空下で乾燥させ、半透明の粘性の溶液を得た。この溶液を3×20mlのアセトニトリル/エーテル混合物(50/50 : v/v)で数回洗浄し、遠心分離機にかけて分離、沈降させることにより、粘性ゲル状の所望の可塑化ハイブリッド前駆体(3)を回収した。
1H NMR(300MHz, d6-DMSO): δ(ppm) = 0.51(t, J = 9.2Hz); 1.11(t, J = 6.2Hz); 1.36(m); 1.50(m); 1.59(m); 2.95(q, J = 6.1Hz); 3.02(q, J = 6.3Hz); 3.15(s); 4.42(s); 3.32(s); 3.74(q, J = 9.4Hz); 5.73(t, J = 5.6Hz); 5.81(t, J = 5.3Hz).
【0095】
2)ポリマー電解質膜の合成
ハイブリッドポリマー材料は、触媒としてのベンジルアミンを用いた求核性の触媒反応を伴うゾル−ゲル重合工程により合成した。反応媒体は、式(I)の機能性ハイブリッド前駆体である実施例1で製造された前駆体(1)と、式(II)の可塑化ハイブリッド前駆体である準備段階で得られた前駆体(3)とから形成される。
【0096】
前駆体(1)は、系に機能性(導電性)を与え、前駆体(3)は材料の物理的性質(柔軟性)を調整することを可能にする。
これを実施するためには、前駆体(1)を5mlの無水メタノール溶液に溶解させて、その上、前駆体(3)を強く攪拌しながら滴下して添加する。以下のハイブリッドポリマー材料A〜Gを準備するために用いられる前駆体のそれぞれの量は、下記の表1のとおりである。
【0097】
【表1】

(*):本発明を構成しない材料
【0098】
それぞれの溶液を、その後、超音波を加えての30分間の攪拌により均質化した。3eq.のベンジルアミン(媒体中に存在するトリエトキシシラン基の量に関連して算出される量に対応する:総n Si(OEt)3 量= 1eq)及び水(6eq.)を、加水分解反応を起こすために添加した。化合混合物を45分間強く攪拌した。粘性が徐々に増して、最後に、粘性のゲルを得た。
化合物(1)を35重量%含む膜Iを作製した。
【0099】
3)ポリマー材料の形成
このようにして得られたそれぞれのゲルを、その後、テフロン(登録商標)製の円形ペトリ皿に注ぎ、室温で24時間乾燥させ、更に、以下の加熱サイクルによりオーブンで乾燥させた:40℃で8時間、60℃で4時間、80℃で4時間、100℃で2時間及び120℃で1時間。乾燥したら、ハイブリッドポリマー材料を型から取り出して、冷却し、エタノール/水の混合物(95/5 : v/v)で徐々に再水和させた。1Mの塩酸溶液に材料を24時間浸し、脱イオン水槽に数時間(24時間に3回)浸し、そして、洗浄溶液としての中性で一定のpH(およそ7)になるまで、すすいで余分な酸を除去することにより、Na+/H+イオン交換を行った。
【0100】
4)結果
このようにして得られた材料A〜Gの電気化学特性及び熱特性を以下の表2に示す。表2には、比較のために、175μmの厚さのナフィオン(商標)117タイプのポリマー材料についても記載してある。以下に、測定方法を示した。
【0101】
1)イオン交換容量(IEC)
IECは、その重量に関してのイオン交換容量を定義する、特徴的な測定方法である。それは、予め決められた材料の量に含まれるイオン交換部位の均等の数に相当する。一般的に、酸性状(acid form)の乾燥材料のグラム当たりイオンのミリ当量(meq/g)で示される(この実施例において、対イオンはH+プロトンである)。すべての材料は定型の酸/塩基の滴定により測定される。実験的に、それぞれの電解質材料(イオン交換体)は、酸性状(H+)で、1モルの塩化ナトリウム(NaCl)溶液に24時間平衡させられ、プロトンが解放されてNa+カチオンに置き換えられた。水酸化ナトリウム(NaOH)タイプの塩基性の溶液で、プロトンを含む溶液を、定量可能である。pH測定器及び適切な色の指示薬(例えば、フェノールレッド)を用いることにより、正確に当量を測定することができる。IECは、以下の等式で表される。
【0102】
【数1】

【0103】
式中、CNaOHは、塩基性の水酸化ナトリウム溶液(単位mol/l)の濃度であり、V(単位L)は、平衡に達するのに必要な水酸化ナトリウムの量を表し、Wは、乾燥材料の重量(単位g)を表す。
最後に、この測定法は、イオン交換の位置及びこれらの実数(理論上の値に関連して)の利用容易性の特徴付けを可能にする。
【0104】
2)電解質材料の膨潤度
水性溶液(実際には同等の有機溶液)中で平衡であるときの体積膨張に対応する割合として求められる。このように、ポリマー鎖の架橋及び凝集から発生した自由空間が溶媒で満たされ得る間に、イオン交換の位置と対イオンは溶媒和し得る。膨潤度は、割合(パーセンテージ)で表され、乾燥材料の重量と材料内に存在する溶媒の重量との割合により規定される。膨潤度は、以下の等式により計算される。
【0105】
【数2】

式中、wwetは溶媒中で膨潤した後の材料の重量(単位g)であり、wdryは、溶媒中で膨潤する前の材料の重量(単位g)である。
【0106】
実験的に、膨潤度は、水の吸収/喪失の測定により決定された。このため、乾燥状態における材料の重さを量り、更に、脱イオン水に24時間浸した後、表面をふき取り、最後に、吸着した水の量を測定するために、材料をオーブンにより100℃で24時間乾燥させた。この測定方法は、乾燥天秤(drying balance)(Mettler社製、Sartorius社製等)を用いることにより、ならびに水和又は乾燥状態の間の材料の重量の変化を測定することにより行うことができる。
【0107】
3)分解温度
熱重量分析法(TGA)及び示差熱分析法(DTA)により、製造された膜の温度記録図のグラフにより示した。この測定方法は、窒素(N2)雰囲気下、10℃/分の加熱で、リファレンスTGA 2950 High Resolution及びSDT 2960 Simultaneousの下、TA Instruments社により販売される機器で行った。
【0108】
4)導電率
インピーダンス分光により測定した。正弦妨害(sinusoidal disturbance)(入力電圧)に従った材料の周波数(ω)の関数としての、合成インピーダンスZの測定によるオームの法則の概念であり、これにより、以下の等式により電気抵抗Rにアクセスすることができる。
【0109】
【数3】

【0110】
この測定方法は、25℃の温度及び100%の相対湿度(RH)において、Zplot(商標)及びZview(商標)ソフトウェアを用いたSolartron(商標)1260(分析機)及び1255(インターフェース)タイプを使用することにより、行った。スキャンされる周波数域は、可変であり、一般に0.1Hz〜10MHzである。正弦電圧信号の振幅は、1〜1000mVの間で変化し、線形範囲は一般にイオン伝導体に受け入れられる。電解質の電気化学特性の検討のために、膜が保持された区画間の2区画テフロンセルに含まれる直接コンタクトと、2つの液体水銀相の電極として使用された、水銀に浸されたプラチナ線は、測定機器に接続された。水銀は、それぞれの測定のために取り替えられ、特に、非常に優れた接触と、2つの電極と検討用に作られた材料とのインターフェースの効率化が可能になる。
【0111】
グラフ表示(ナイキスト図)(正規直交化基準のインピーダンス表示)が、得られた。これらのインピーダンス図(図示せず)は、検討用の周波数域における、実在部分の数値の関数としてのインピーダンスの仮想部分の反対の変化を表示する。インピーダンスの実在部分Z’(横座標)及び仮想部分-Z''のインピーダンス(縦座標)は、オーム(Ω)で示された。
【0112】
このように、サンプルR(Ω)の全ての固有抵抗の数値はグラフにより表示され、x軸の曲線の外挿又は論理積に対応した。この数値と材料の幾何学的要素を相関させることにより、すなわち、厚さ(e)及び露出表面積(S)を相関させることにより、全導電率を計算することができた。導電率は以下の等式により計算され、S.cm-1で表される。
【0113】
【数4】

【0114】
本発明の材料A〜G及び市販されているナフィオン(商標)117タイプの膜の、実験に基づく特性及び測定は、同条件、同じ装置、同じ工程(水和物、酸性におけるイオン交換、洗浄工程を含む)で行われた。
得られた結果物について以下の表2に示す。
【0115】
【表2】

(*):本発明を構成しない材料
【0116】
表2のC1、r1及びλの数値は次の意味である。
C1は、化合物(1)の凝集物であり、C2(重量%)=100-C1という関係から算出される。
r1は、化合物(1)のモル割合である。
そして、λは、水和数である。:
【0117】
【数5】

【0118】
化合物(3)から得られた参照の膜Aは、イオン交換容量(IEC)がゼロであり、非常に低いプロトン伝導率を示しており、これは、無機のシリカ網と、官能基の欠如に起因する。
【0119】
上記の表1に示される結果から、前駆体(1)を40重量%しか含まない材料Dは、参照膜であるナフィオン(商標)117タイプと比べて、膨潤度が1.75倍大きく、分解温度及びイオン交換容量が同等であり、導電率が1.45倍となっていることが分かった。材料Fと材料Gとは、前駆体(1)をそれぞれ58%、78%の密度で含み、膨潤及び熱安定性についてわずかな差異を示している。しかし、他方では、ナフィオン(商標)117タイプの参照膜と比べて、はるかに大きいイオン交換容量を示し、最大の優位点として、導電率において、ナフィオン(商標)117タイフ゜の参照膜の4〜8倍を示している。
【0120】
得られた材料A、D及びHのX-線回折による構造分析は、フィリップス社により販売される回折計量器PanAnalytical X'pert Pro I model(Bragg-Brentanoモード、グラファイト二級モノクロメーター、X-線検出器Cu放射線での測定)を用いることにより分かった。これらの分析から、ハイブリッドポリマー材料の特徴的な構成が分かる。
【0121】
材料A、D及びHの回折記録(diffractogram)は、添付の図5に示されており、任意の単位における回折角度2θの場合における回折の強さを示している。
【0122】
第一に注目すべきは、前駆体(1)を欠如して(式(I)のハイブリッド前駆体)(材料Aは、本発明を構成しない)得られた材料は回折ピークを示さず、このようなものはアモルファス(非晶質)であるということである。また、前駆体(1)の重量での含有量が増加すると、回折ピークが図から表れ(膜D及びH);これは、分離した強いピークを表し、主なピーク(001タイプの平面)が、小さい角度であり、3nmを中心とした面内距離に関係している。他の2つのピークは、弱く、第1のピークと関係した調和したピークであり、002タイプ及び004タイプの平面に関係しており、このことから3nmの平均幅をそなえる分子チャンネルを構成するラメラネットワークの存在を表わす。この点については、添付の図6の、材料Hの倍率120000倍の透過型電子顕微鏡写真に示されている(図6A:下方焦点(under focus)画像、図6B:焦点画像)。この図から、材料H内に平行なナノメートルのチャンネル(3nm)の構造があることが分かる。
【0123】
このように、出発前駆体(1)の高い結晶化度は、高い構造材料の形成と共にハイブリッドネットワーク内で移る。ハイブリッドネットワークにおいて、前駆体(1)は、再び重合、剛直化し(Si-O-Siタイプの結合を介した、無機バックボーン/マトリックスの形成)、スルホン官能基がチャンネルの内側に直接向いて配向している。近隣の対により、完全に凝縮した最終的な構造が生じ、ナノメーターの平行なチャンネルによりイオン種の移動、特にプロトン(H+)の移動のために好ましい空間が決められる。
【0124】
添付の図7は、ハイブリッド材料D(図7i及び7ii)、F(図7iii)及びE(図7iv)の写真であり、これらは、印刷支持体上に配置されている。
図8は、前駆体(1)単独から構成される材料Hの写真(図8A)と、この材料のハイブリッドマトリックス内に存在するプロトンチャンネルの概略図(図8B)であり、ラメラ構造であることが示されている。このタイプの、連続する平面で構成された構造では、無機バックボーンである(Si-O-Si)nが導電チャンネルの壁体を形成し、一方、チャンネルの内側を、有機パーツと特にスルホン官能基とがまとまって形成する。
【0125】
図9から、膜B〜Hのイオン交換容量(IEC)の測定値が、化合物(3)のモル当量(meq.g-1)から算出される理論値に非常に近いことが分かる。このことは、スルホン基のプロトンが、滴定の間に影響を受けやすく、プロトン伝導工程に関係していることを意味する。
【0126】
図10から、化合物(1)を40重量%しか含まない膜Dが、ナフィオン(商標)117よりも大きなプロトン伝導率を、同等のイオン交換容量(IEC)を、高い膨潤度を達成していることが分かる。膜D〜Hで測定されるプロトン伝導率が優れていることは、スルホン基の濃度が高いナノ領域(nanodomain)数の増加によるものであると考えられる(J. Power Sources, 2006, 154, 115-123)。
図11から、水和数λが不変であるのに、膜B〜Hの膨潤度が直線的に増加することが分かる。
【0127】
これらのデータは、チャンネルの構成を示す図12により確認できる。膨潤度がイオン交換容量(IEC)とともに一定で増加する間、イオン交換容量(IEC)とともに導電率が増加することが、膜B〜Dと比較して膜E〜Hの方がより顕著である。膜E〜Hでは、化合物(1)の濃度の高さにより、スルホン基の密度や配向が強まり、高プロトン伝導率の縮合導電ネットワークとなる。PEM(ポリマー電解質膜)膜のプロトン伝導率は、重要なパラメータであり、イオン交換容量(IEC)や温度、また輸送メカニズムの一般的考えを付与する活性化エネルギーEaに強く依存している。ナフィオン(商標)117の短所の一つは、DMFC(ダイレクトメタノール燃料電池)膜への適用が難しいことであり、これは、ナフィオン(商標)117のメタノールの透過性に直接的に関係しており、メタノールの速やかな排出に貢献するイオン伝導領域に関係している(J. Power Sources, 2008, 175, 256-260)。
【0128】
膜Iは、導電率σ = 25mS.cm-1を示し、これはナフィオン(商標)117の導電率(実験に基づき定義されたσ = 22.4mS.cm-1)と実質的に同じである。膜Iのメタノール透過率(25°CにおいてPM=4.1 × 10-7cm2/s)は、ナフィオン(商標)117のメタノール透過率(25°CにおいてPM = 18.1 × 10-7cm2/s)と比べて23%少ない。理論的には、DMFC(ダイレクトメタノール燃料電池)膜は、高いプロトン伝導率、低いメタノール透過率を示すべきであり、メタノール中でプロトン輸送のための膜の選択性(selectivity)は、β = σ/PMに等しい。膜Iでは、β = 61 × 10-6mS.s.cm-1であり、この選択性は、ナフィオン(商標)117に比べほぼ10倍となっている。この増大量は、膜Iとナフィオン(商標)117が同じプロトン伝導率を示すため、メタノール透過率が縮小していることに起因している。
【0129】
活性化エネルギーEaは、アレニウスの法則により決定される。
【0130】
【数6】

(式中、
−Eaは、アレニウス活性化エネルギーである。
−Tは、温度である。
−Rは、理論上のガス定数である(通常値:R = 8.314J.mol-1.K-1)。
【0131】
図13に示されるように、得られた数値は、概算値(略正確な数値)である。
・膜Iにおいて:Ea = 17.46kJ.mol-1
・ナフィオン(商標)117において:Ea = 13.32kJ.mol-1
【0132】
ナフィオン(商標)117と対比された膜Iの活性化エネルギーEaの数値から、水分子(及びメタノール分子)がより移動しない(ナフィオン(商標)117の構造と関連して)、膜Iのよりコンパクトな規則格子(superstructure)が示唆される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム形態で提供され、かつ下記式(I)
【化1】

(式中、
−R1及びR3は、同一であり、メチルオキシ又はエチルオキシ基を表し;
−R2は、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ又はフェニル基を表し;
−mは、2〜6を含む範囲の整数であり;
−nは、1又は2に等しい整数である)
の少なくとも1つのハイブリッド前駆体の求核性触媒によるゾル−ゲル重合から生じることを特徴とするハイブリッドポリマー材料。
【請求項2】
透明で柔軟なフィルム形態として提供されることを特徴とする請求項1による材料。
【請求項3】
請求項1の式(I)におけるR1及びR3が、エチルオキシ基である前駆体の少なくとも1つの重合により得られることを特徴とする請求項1又は2による材料。
【請求項4】
式(I)の前駆体におけるR2基が、エチルオキシ基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つによる材料。
【請求項5】
式(I)の前駆体が、R1=R2=R3=エチルオキシである化合物から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つによる材料。
【請求項6】
式(I)の前駆体が、m=3である化合物から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つによる材料。
【請求項7】
式(I)の前駆体が、n=1であり、ナトリウムスルホネート基が、尿素基の窒素原子に結合した炭素原子に対してフェニル環のパラ位を占める化合物から選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つによる材料。
【請求項8】
式(I)の前駆体が、n=2であり、2つのスルホネート基は互いに、尿素基の窒素原子に結合した炭素原子に対してメタ位、あるいは、尿素基の窒素原子に結合した炭素原子に対してパラ位及びメタ位にある化合物から選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つによる材料。
【請求項9】
式(I)の前駆体が、n=1である化合物から選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つによる材料。
【請求項10】
1-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3-(4-(ナトリウムスルホネート)フェニル)尿素の求核性触媒によるゾル−ゲル重合から得られることを特徴とする請求項1によるポリマー材料。
【請求項11】
請求項1及び請求項2〜10のいずれか1つによる式(I)の少なくとも1つの前駆体及び下記式(II)
【化2】

(式中、
−R4,R'4,R6及びR'6は、同一であり、メチル又はエチル基を表し;
−R5及びR'5は、同一であっても異なっていてもよく、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ又はフェニル基を表し;
−x及びx'、ならびにy及びy'は、同一であっても異なっていてもよく、2〜6を含む範囲の整数であり;
−zは、8〜16を含む範囲の整数である)
の少なくとも1つの可塑化前駆体の求核性触媒下におけるゾル−ゲル共重合から得られることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つによる材料。
【請求項12】
式(II)の前駆体が、R4,R'4,R6及びR'6基がエチル基である化合物から選択されることを特徴とする請求項11による材料。
【請求項13】
式(II)の前駆体が、R5及びR'5基がエチルオキシ基である化合物から選択されることを特徴とする請求項11又は12による材料。
【請求項14】
式(II)の前駆体が、x=x'=y=y'=3である化合物から選択されることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1つによる材料。
【請求項15】
式(II)の可塑化前駆体において、zが12〜14を含む範囲の整数であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1つによる材料。
【請求項16】
式(II)の前駆体が、テトラヒドロフラン単位の(z)の数値が13であるビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル尿素)-3-ポリ(テトラヒドロフラン)であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1つによる材料。
【請求項17】
前記可塑化前駆体が、式(I)の前駆体のモル数に関して、10〜40mol%であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1つによる材料。
【請求項18】
厚さが100〜200μmを含む範囲であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1つによる材料。
【請求項19】
フィルム形態で提供され、かつ下記工程
1)下記式(I)
【化3】

(式中、
−R1及びR3は、同一であり、メチルオキシ又はエチルオキシ基を表し;
−R2は、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ又はフェニル基を表し;
−mは、2〜6を含む範囲の整数であり;
−nは、1又は2に等しい整数である)
の少なくとも1つのハイブリッド前駆体の無水溶媒への溶解、
2)ゲルを得るために、水の存在下、第一級アミン及びイミダゾール誘導体から選ばれる求核性触媒の添加による前記ハイブリッド前駆体(I)のゾル−ゲル重合、
3)前記ゲルの成形、
4)フィルム形態の固形材料を得るための、前記ゲルの乾燥、
5)酸性溶液中での前記フィルムの浸漬による、Na+/H+イオン交換、及び
6)酸の痕跡を除去するための、前記フィルムの水での洗浄
を含むことを特徴とするフィルム形態で提供され、請求項1〜18のいずれか1つで規定されるハイブリッドポリマー材料の製造方法。
【請求項20】
工程1)で用いられる無水溶媒が、メタノール、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミドから選択されることを特徴とする請求項19による方法。
【請求項21】
工程1)のハイブリッド前駆体又は式(I)の前駆体の溶液が、請求項11〜16のいずれか1つの式(II)の少なくとも1つの可塑化前駆体を更に含むことを特徴とする請求項19又は20による方法。
【請求項22】
求核性触媒が、ベンジルアミンであることを特徴とする請求項19〜21のいずれか1つによる方法。
【請求項23】
工程2)で用いられる求核性触媒の量が、反応媒体に存在するシリコンの総数に対して2〜3当量であり、水の量が、シリコンの総数に対して4〜6当量であることを特徴とする請求項19〜22のいずれか1つによる方法。
【請求項24】
工程2)が室温で行われることを特徴とする請求項19〜23のいずれか1つによる方法。
【請求項25】
工程5)のイオン交換が、1〜4Mを含む範囲のモル数である塩酸溶液中でゲルを浸漬することにより行われることを特徴とする請求項19〜24のいずれか1つによる方法。
【請求項26】
燃料電池のプロトン伝導ポリマー電解質膜としての、請求項1〜18にいずれか1つによる少なくとも1つのハイブリッドポリマー材料の使用。
【請求項27】
請求項1〜18にいずれか1つによるハイブリッドポリマー材料から構成される、少なくとも1つのプロトン伝導ポリマー膜を電解質として含むことを特徴とする燃料電池。

【公表番号】特表2011−517711(P2011−517711A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500256(P2011−500256)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000289
【国際公開番号】WO2009/125084
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】