説明

超伝導ケーブルを備える装置

【課題】超伝導ケーブル(1)を、室温にある通常伝導ケーブルと接続するための装置が提供される。
【解決手段】ここで、上記装置は、熱絶縁(6)によって囲まれる導体(5)を有するブッシング(D)を備えている。超伝導ケーブルの導体(1)は、ブッシング(D)の導体(5)の一端と接続され、その他端には通常伝導ケーブルが接続可能である。ブッシング(D)の導体(5)への接続のために用いられる超伝導ケーブル(1)の末端には、電界制御に使用される電極(4)が取り付けられている。少なくとも電極(4)の範囲内には、これを囲むクライオスタットが設けられている。このクライオスタットは、無真空の熱絶縁を備えた電気絶縁材からなる、周面側が閉鎖されているカバーとして構成される。ブッシング(D)側の、クライオスタットのカバーの末端が、装置の運転状態において高電圧電位に置かれる一方、カバーの他端は接地電位に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1に示した上位概念による、超伝導ケーブルを室温にある通常導電ケーブルと導電的に接続するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、EP1811626A1に開示されている。
【0003】
この種の装置は、たとえば超伝導ケーブルを電流分配網に接続するために必要である。超伝導ケーブルは、今日の技術では、十分に低い温度で超伝導状態に変化する、セラミック材を含む合成材料からなる電気導体を有する。十分に冷却すれば、このように構成された導体の直流電気抵抗は、特定の電流強さを超えない限り、ゼロである。適当なセラミック材料は、たとえば、第一世代の材料としてBSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム銅酸化物)、また第二世代の材料としてはReBCO(希土・バリウム・銅酸化物)、特に、YBCO(イットリウム・バリウム・銅酸化物)である。この種の材料を超伝導状態に変化させるのに十分に低い温度は、たとえば67K乃至90Kの範囲である。適当な冷媒は、たとえば窒素、ヘリウム、ネオン、および水素、またはこれらの物質の混合物である。超伝導ケーブルを通常伝導ケーブルと接続するために、たとえば、電気的絶縁によって囲まれる導体を備えるブッシングが用いられる。ブッシングの導体には、当該装置の運転可能状態では、一方では、たとえば70Kの温度に冷却された超伝導ケーブルの導体が、他方では、約20℃の周囲温度で作動する電流分配網のケーブルが接続される。
【0004】
DE202004007187U1には、超伝導ケーブル用の検査終端部が示されている。超伝導ケーブルの末端には、電界制御に使用される電極が取り付けられる。超伝導ケーブルのこの末端は、管片として形成されて、その一端をふたが閉鎖するカバーによって囲まれる。前記ふたを通して、超伝導ケーブルの導体に電圧供給のためのブッシングが突出する。カバーの管片およびふたは、二重壁に構成されている。カバーとふたの両壁間には、真空または窒素の過剰圧力が存在する。
【0005】
冒頭に述べたEP1811626A1は、三つの部分からなるハウジング付きの装置を記載している。ハウジングの部分は、相並んで、または重なり合って配置されている。ハウジングの中央部分には、絶縁された導体を有するブッシングが設けられている。導体の絶縁層に配置されている電界制御層は、たとえば、当該絶縁層の外側表面に粘着する亜鉛層からなる。この電界制御層は、高圧技術で公知の、導体を囲む電界制御コーンに接続される。そのように装着される装置の導体は、電気絶縁材料からなる絶縁体内に埋め込まれる。ブッシングの一端には、電流供給網のケーブルと接続すべく絶縁体から導体が外へ導かれる一方、その他端は、真空断熱を備えた、金属管からなるクライオスタットによって囲まれる超伝導ケーブルの接続に使用される。ブッシングの導体と電気的絶縁体の間に備えられている中間層は、絶縁体内で導体をスムースにスライドできるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、冒頭に述べた装置をより簡便に構成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、特許請求の範囲請求項1の特徴的要件により解決される。
【0008】
クライオスタットのカバーは、何れの任意の有意な幾何学形態を有していてよい。好適な実施形態において、カバーは、好ましくは円筒横断面を有する管片として構成される。以下、「周面側が閉鎖されているカバー」の用語の代わりに、簡略化して「管片」の用語を使用する。
【発明の効果】
【0009】
電界制御に使用される電極を備えた超伝導ケーブルの末端は、この装置の場合、冷却器の管片によって囲まれ、該管片は、真空を必要とせずに熱絶縁された電気絶縁材料からなり、かつその外側表面において真空を必要としない熱絶縁された材料からなる層を備えている。したがって、公知の構造形式のクライオスタットに存在する高価な真空断熱は不要である。むしろ、とくに熱絶縁特性を有する公知の材料を管片の熱絶縁に対して使用可能である。上述の装置の構成の場合、周囲温度への超伝導ケーブルの導体の移行は、さらなる電気絶縁をほどこすことなく実行することが可能である。その理由は、装置の作動状態において当該の移行範囲は高電圧電位にあるからである。したがって、ブッシングの導体は、熱絶縁に使用される絶縁体によって囲まれるだけでよい。全体として装置はコンパクトに構成でき、かつ簡便に高電流に対しても設計することができる。超伝導ケーブルに取り付けられて電界制御に使用される電極は、同時に、全体として装置に対する電界制御のために使用可能である。
【0010】
さらに、超伝導直流電流ケーブルに対して当該装置を利用する場合、それが、固体絶縁材とともに慣例的な高圧直流ケーブルの場合それ自体公知のような、固体絶縁材において温度の問題または空間電荷の問題は発生しない。
【0011】
1KVを越える電圧は、「高電圧」の用語で理解すべきである。本事例の場合、200KVの範囲内の電圧が使用される。
【0012】
該装置は、好適な実施例において垂直方向の構成で使用される。超伝導ケーブルとクライオスタットの包囲管片のこのような位置において、管片内の温度層形成を回避するために、冷媒は管片内の最上位置に有利に運び入れることができる。これは、たとえば、管片の域内で冷媒を高電圧電位へ搬送する、絶縁材からなる管によって得られる。
【0013】
発明対象の実施例を図に示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】超伝導ケーブルを有する中継区間を概略的に示す図である。
【図2】本発明による装置の拡大したものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1では、超伝導ケーブルを備える電流中継区間の終端部Vを長方形によって示している。終端部Vに、一方で、図2に示す超伝導ケーブル1を含むクライオスタットKRが接続されている。他方で、電流供給網に属する通常伝導ケーブルKが、終端部Vと接続されている。超伝導ケーブル1と通常伝導ケーブルKの間を接続するため、たとえば図2に示すような、終端部V内にある装置を使用する。
【0016】
図2の装置は、クライオスタットKRの末端に設置される。それは基本的に水平方向の配置構成において使用できるが、好適な実施形態において、装置は、すでに述べたように、垂直方向の配置関係で構成される。この垂直方向の配置関係での構成の実施形態を図2に示している。その記載説明は、以下において、水平方向の配置関係での構成に対しても代表的に成り立つものである。
【0017】
図2によると、装置は、管片2として形成されるカバーを示し、該カバーは、電気絶縁材料からなり、かつ、真空を必要とせずに熱絶縁されている。カバーの管片2(以下では、単に管片2と呼称)は、たとえばガラス繊維強化樹脂からなる。熱絶縁のために、管片2は、その外側表面において真空を必要としない熱絶縁材、たとえば発泡ポリウレタンからなる、ジグザグ線で示す層3を備えている。管片2はその下端において、たとえばフランジ結合によって中継区間のクライオスタットKRと結合される。
【0018】
超伝導ケーブル1は、クライオスタットKR内に、管片2内にまで突出するように配置されている。その末端は、電界制御に使用される電極4によって囲まれている。電界制御は、容量性電界制御として、また、導電性の囲いから巻かれた構成として実現することができる(Die Feldsteuerung kann als kapazitive Feldsteuerung auch als aus leitenden Einlagen gewickelte Anordnung ausgefuehrt sein.)。ケーブル1の導体は、熱絶縁にのみ使用される絶縁体6によって囲まれるブッシングDの導体5と接続されている。その他端によって、導体5は、電流供給網のケーブルKに接続されている。
【0019】
管片2のブッシングDの側に向いた末端も、フランジによって終端されている。管片2のこの末端には高電圧がかかる。それを、図2に描かれる保護リング7によって示している。したがって、管片2とブッシングDの間の移行範囲は、高電圧電位への運転状況にある。管片2のブッシングDの反対側に向いた末端に、接地電位にある遮蔽リング8が存在する。
【0020】
冷媒は、熱的な層形成を回避するために、かつガス泡(Gasblase)によって、有利にはその最上位置で、したがって高電圧範囲内で管片2に供給される。このことは基本的に任意の方法で行うことができるが、好適な実施形態において管片2内の冷媒の流れに対して、管片2の上端範囲内まで突出し、かつ入口10を通って冷媒が供給される、絶縁材料からなる管9が配置されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導ケーブルを室温にある通常の伝導ケーブルと導電的に接続するための装置であって、該装置には、熱絶縁によって囲まれる電気導体(5)を有するブッシング(D)が設けられており、また、該超伝導ケーブル(1)は、冷媒の管理のために使用される管状クライオスタット(KR)内に配置されており、さらに、該超伝導ケーブルの導体がブッシング(D)の導体(5)の一端と接続されており、該ブッシングの導体の他端に通常伝導ケーブルが接続可能な装置であって、
ブッシング(D)の導体(5)への接続のために用いられる、該超伝導ケーブル(1)の末端に、それ自体公知の方法で、電界制御に使用される電極(4)が取り付けられており、
前記超伝導ケーブルの末端が、管片として構成された、真空を必要としない熱絶縁を備えた電気絶縁材からなる、周面側が閉鎖されているカバーによって囲まれており、該カバーはその外側表面に真空を必要としない熱絶縁材料からなる層(3)を施されており、さらに、
ブッシング(D)の側に向いたカバーの末端が、当該装置の運転状態において高電圧電位に置かれる一方、前記カバーの他端は接地電位に接続されている装置。
【請求項2】
クライオスタット(KR)内に冷媒を供給するための供給箇所が、ブッシング(D)側に向いたカバーの末端に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
冷媒の供給のためにクライオスタットのカバーの内部に絶縁材料からなる管(9)が配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−234610(P2011−234610A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93268(P2011−93268)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】