超撥水性膜
超撥水性液体接触面を有する微孔通気膜。本発明では、膜の液体接触面に超撥水性表面が設けられる。発明の一実施例において、超撥水性表面は、基材に形成された、緊密な間隔の多数のマイクロ規模からナノ規模の突出部を含む。所定圧力値以下の液体が膜の超撥水性液体接触面と接触すると、液体が突出部の上部に「懸架」されて液体・気体界面を形成する。液体・気体界面の面積は、微孔の総面積さらには超撥水性表面の面積を含むため、液体・気体界面の面積が微孔の面積のみに限定される従来の膜に対して、膜の通気率および効率が向上する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、参照によってここに全面的に導入する2003年4月15日出願の「Ultraphobic Surface for High Pressure Liquids」という名称の米国仮特許出願番号第60/462963号及び2004年4月14日出願の「UltralyohobicMembrand」という名称の出願番号“未定”の米国特許出願の利益を主張している。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概ね微孔膜、より詳しくは超撥水性または超疎液性の表面を有する微孔膜に関連する。
【背景技術】
【0003】
液体と気体の間の物質移動を行うには、微孔通気性膜が広く使用されている。このような膜は、フィルムまたは中空ファイバの形を取る。この種の膜の一般的な用途の一つは、例えば、患者の中を循環する血液中の酸素と二酸化炭素ガスとの交換を行う血液酸素添加装置である。血液酸素添加装置の特定例は、米国特許第3,794,468号、米国特許第4,329,729号、米国特許第4,374,802号及び米国特許第4,659,549号に開示されており、各々が参照によってここに全面的に導入されている。他の特殊な通気膜の使用例は、米国特許第5,254,143号に開示され、やはり参照によってここに全面的に導入されている。
【0004】
従来のフィルムタイプの微孔膜200の一例が、先行技術を示す図17に非常に拡大された断面図で描かれている。膜200は概して、多数の微孔204が内部に形成された膜本体202を含む。気体接触面206が膜200の片側において気体208に面するのに対して、液体接触面210が膜200の反対側において液体212に面している。微孔204の面積とほぼ等しい面積を有する液体・気体界面214が、各微孔204に形成されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,794,468号
【特許文献2】米国特許第4,329,729号
【特許文献3】米国特許第4,374,802号
【特許文献4】米国特許第4,659,549号
【特許文献5】米国特許第5,254,143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術の膜では、従来技術の膜の界面液体・気体エリアは、微孔204の合計エリアに限定される。その結果、通気率は、膜に利用可能な界面液体・気体エリアの量に依存するので、この従来の膜の通気率とその結果としての効率とに限界がある。この業界で必要とされるのは、通気率および効率を向上させた微孔通気膜である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、膜の微孔合計エリアよりも広い液体・気体界面を形成する液体接触面を有する微孔通気膜を提供することにより、業界の要求に応えるものである。本出願において、「マイクロ規模」は概して100マイクロメートル未満の寸法を指し、「ナノ規模」は概して100ナノメートル未満の寸法を指す。表面は、ある所定の圧力値まで超撥水性を維持するように設計されている。以下の式にしたがって決定される接触線密度値“ΛL”と等しいか該接触線密度値より高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される所定の接触線密度を表面が有するように、突出部が配置される。
ここで、Pは所定の圧力値であり、γは液体の表面張力であり、θa,0は実験測定による、突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角である。所定の圧力値は、膜が受けると予想される予想液圧より高くなるように選択される。
【0008】
所定圧力値以下の液体が膜の超撥水性液体接触面と接触すると、液体は突出部の上部に「懸架」され、突出部の合計断面積より小さい超撥水性表面の総面積と等しい面積を有する液体・気体界面を形成する。膜の気体接触面の側に導入された気体は、膜の微孔を通って、超撥水性表面の基材と液体・気体界面との間に形成される突出部を囲繞する空間へ移動する。液体・気体界面の面積は、微孔の総面積とともに超撥水性表面の面積を含むので、液体・気体界面の面積が微孔の面積のみに限定される従来技術の膜に対して、膜の通気率と効率とが著しく向上する。概して、超撥水性表面で利用可能な液体・気体界面エリアの量、ひいては膜の通気率および効率を最大とするには、膜が受けるであろう最高予想圧力で超撥水性を付与するのに充分なレベルに所定圧力値を維持しながら、表面の接触線密度を最小にすることが望ましい。
【0009】
突出部は、基材材料自体内もしくはその上に、あるいは基材の表面に配置された1層以上の材料に形成される。突出部は、規則的または不規則的な形状の三次元固体または凹部であり、規則的な幾何学的パターンで、またはランダムに配置される。突出部は、フォトリソグラフィを用いて、またはナノ機械加工、マイクロ打抜き加工、マイクロ接触印刷(microcontact printing)、自己組織化金属コロイド単分子層、原子間力顕微鏡ナノ機械加工、ゾル・ゲル成形、自己組織化単分子層方向性パターンニング、化学エッチング、ゾル・ゲル打抜き加工、コロイドインクによる印刷を用いて、または平行なカーボンナノチューブの層を基材に配置することにより形成される。
【0010】
本発明はまた、所定の圧力値までの液圧で超撥水性を有する表面を備える微孔通気膜を製造するための方法を含む。この方法は、突出部立上り角を選択する段階と、下記の式にしたがって、臨界接触線密度“ΛL”値を決定する段階と、表面部分を備える支持体を設ける段階と、臨界接触線密度と等しいかそれよりも高い実際の接触線密度を表面が有するように、表面部分に多数の突出部を形成する段階とを含む。
ここで、Pは所定圧力値であり、γは液体の表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角である。ここでも、膜が受ける最高予想圧力で超撥水性を付与するのに充分なレベルに所定圧力値を維持しながら表面の接触線密度を最小にすることにより、超撥水性表面で利用可能な液体・気体界面エリアの量を最大にすることが概して望ましい。
【0011】
上記方法はさらに、下記の式にしたがって、臨界突出部高さ値“Zc”(メートル)を決定する段階を含む。
ここで、dは隣接する突出部間のメートルでの距離であり、θa,0は表面に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
液体による浸潤に対する耐性を備える表面は、液体が水である場合には撥水性、他の液体については疎液性と呼ばれる。接触角ヒステリシス値が非常に低く(約20度未満)、液滴と表面との前進接触角が非常に高い(約120度を超える)こと、液滴を保持する表面の傾向が著しく低いこと、表面が完全に液体に浸漬された時に表面に液体・気体・固体界面が存在することのいずれかまたはすべてに特徴付けられる程度まで表面が浸潤に抵抗する場合に、表面は概して、超撥水性または超疎液性の表面と呼ばれる。本出願では、超撥水性および超疎液性の表面を指すのにまとめて超撥水性の語が用いられる。ここで使用される微孔膜の語は、約・・・の間の直径を持つ細孔を有する膜を意味する。
【0013】
図1aを参照すると、本発明による実施例の微孔通気フィルム膜100が非常に拡大された断面図で描かれている。膜100は概して、多数の微孔104が内部に貫通形成されたポリマー材料から製造された膜本体102を含む。微孔104は、望ましくは約0.005μmから約100μm、より望ましくは約0.01μmから約50μmの直径を有する。膜100は、気体107に面する側の気体接触面106と、液体109に面する反対側の液体接触面108とを有する。本発明によれば、液体接触面106に超撥水性表面20が形成されている。
【0014】
中空ファイバの形の別の実施例の微孔通気膜110が、図1bに描かれている。膜110は概して、多数の微孔114が貫通形成されたポリマー材料の筒状膜本体112を含む。膜110は、気体120に面する外面118上の気体接触面116と、液体126に面する内面124上の液体接触面122とを有する。本発明によれば、液体接触面122に超撥水性表面20が形成されている。気体接触面116が内面124上、液体接触面122が外面118上となるように、気体接触面116と液体接触面122の相対的な位置を逆転させられることは理解できるだろう。
【0015】
超撥水性表面20の好適な実施例の非常に拡大された図が、図1に見られる。表面20は概して、多数の突出部24を備える基材22を含む。各突出部24は、複数の側部26と上部28とを有する。各突出部24は、図では“x”で示された幅寸法と、図では“z”で示された高さ寸法とを有する。
【0016】
図1から3に描かれているように、突出部24は規則的な多角形のアレイで配置され、各突出部は、図で“y”と示された間隔寸法により隣り合う突出部から離間している。突出部24の上縁30により定められる角度はφで示され、基材22に対する突出部24の側部26の立上り角はωで示されている。角度φとωとの和は180度である。
【0017】
概して、液体・固体・気体界面が表面に維持される時に、超撥水性表面20が超撥水性を示す。図7に描かれているように、液体32が上部28と、突出部24の上縁30に近接する側部26の一部分のみと接触する場合には、空気または他の気体が充填された空間34が突出部の間に残り、液体・固体・気体界面が必ず存在する。液体は、突出部24の頂上と、突出部24の上縁30の間に「懸架」されていると言える。
【0018】
以下で開示されるように、液体・固体・気体界面の形成は、突出部24のある相関的な幾何学的パラメータと液体の性質とに左右される。本発明によれば、表面20が所望の液圧で超撥水性を示すように突出部24の幾何学的な性質が選択される。
【0019】
図1〜3の多角形のアレイを参照すると、表面20は、各突出部24を囲繞する、点線を境界線として描かれた均等なエリア36に分割される。各均一エリア36における突出部の面密度(δ)は以下の等式で表され、
ここで、yはメートルで測定された突出部間の間隔である。
【0020】
図1〜3に描かれた正方形断面の突出部24については、上縁30における上部28の周の長さ(p)は、
であり、ここで、xは突出部のメートルでの幅である。
【0021】
周pは、液体・固体・気体界面の場所を規定する「接触線」と称される。表面の単位面積あたりの接触線の長さである表面の接触線密度(Λ)は、周(p)と突出部の面密度(δ)との積であるため、以下となる。
【0022】
図1〜3に描かれた正方形突出部の矩形のアレイについては、以下となる。
【0023】
液体に作用する重力による体積力(F)が突出部の接触線に作用する表面力(f)より低い場合には、突出部24の頂上に、ある量の液体が懸架される。重力に関連する体積力(F)は、以下の式により決定され、
ここで、gは液体の密度(ρ)であり、(g)は重力による加速度であり、(h)は液体の深さである。ゆえに、例えばおよそ1000kg/m3の密度を持つ10メートルの水柱では、体積力(F)は、
となるであろう。
【0024】
他方、表面力(f)は、液体の表面張力(γ)と、垂線θsに対する突出部24の側部26の見かけの接触角と、突出部の接触線密度(Λ)と、液体の見かけの接触面積(Α)とに左右される。
【0025】
所定の固体材料における液体の真の前進接触角(θa,0)は、実験測定による本質的に突出部を持たない材料の表面に対する液体の最大静止接触角として定義される。真の前進接触角は、当業者に周知の技術によって容易に測定可能である。
【0026】
突出部を備える表面の上の懸架滴は、突出部の側部において真の前進接触角値(θa,0)を示す。突出部の側部における垂線に対する接触角(θs)は、以下のように、φまたはωにより真の前進接触角(θa,0)に関連する。
【0027】
Fとfを等しくして接触線密度Λを求めることにより、表面における超撥水性を予想するための臨界接触線密度パラメータΛLが決められる。
同式において、gは液体の密度(ρ)であり、(g)は重力による加速度であり、(h)は液体の深さであり、(γ)は液体の表面張力であり、ωは基材に対する突出部の側部の立上り角(度)であり、(θa,0)は、実験により測定された、突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)である。
【0028】
Λ>ΛLの場合、液体は突出部24の頂上に懸架されて超撥水性表面が形成される。そうでなくΛ<ΛLの場合には、液体は突出部から落下して、表面上の接触界面は超撥水性を持たない単なる液体/固体となる。
【0029】
上に挙げた等式の分子に適切な値を代入することにより、所望の圧力で超撥水性を保持する表面をつくるような臨界接触線密度の値が決定されることは理解できるだろう。等式は以下のようにまとめられる。
ここで、Pは、表面が超撥水性を示す、キログラム/平方メートルでの最高圧力であり、γは液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である。
【0030】
上記の関係にしたがって形成された表面20が、上の等式(9)で使用されたPの値までのおよびPの値を含む液圧値において超撥水性を示すことは概ね予想されるだろう。表面が浸漬されても、液体のジェットまたはスプレーを受けても、個々の液滴に衝突されても、超撥水性が見られる。膜100,110が受けるであろう最高予想液圧より高くなるように圧力値Pが選択されることは容易に理解できるであろう。予想されるよりも瞬間的または局所的に高い圧力や、公差の変動による表面の凹凸や、他のこのような因子とに対処するための適切な安全率を提供するように、Pの値が選択されるべきであることは、概ね理解できるであろう。
【0031】
臨界接触線密度の値が決定されると、接触線密度(Λ)についての等式で与えられるxとyの関係にしたがって、突出部の幾何学形状の残りの詳細が決定される。言い換えると、接触線等式でxとyのいずれかの値を選択して他の変数を求めることにより、表面の幾何学形状が決定されるのである。
【0032】
図6に描かれているように、液体界面は、隣り合う突出部の間で量D1だけ下方へ撓む。量D1が突出部24の高さ(z)よりも大きい場合には、突出部24の間の点で液体は基材22と接触する。これが起こると、液体は空間34へ引き寄せられて突出部から落下し、表面の超撥水性が損なわれる。D1の値は臨界突出部高さ(Zc)を表し、以下の式により決定することができる。
ここで、(d)は隣接する突出部の間の距離であり、ωは突出部立上り角であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角である。突出部24の高さ(z)は、臨界突出部高さ(Zc)に少なくとも等しいか、望ましくはこれより高いことが必要である。
【0033】
図1〜3では、突出部の立上り角ωは90度であるが、他の突出部幾何学形状も可能である。例えば、ωは図9に描かれているように鋭角でも、図10に描かれているように鈍角でもよい。概して、ωは80度と130度の間であることが望ましい。
【0034】
本発明の範囲内で多様な突出部形状および配置が可能であることも理解できるだろう。例えば、突出部は多面体、図11〜12に描かれた円筒形、類円柱、あるいは他の適当な三次元形状でよい。そのうえ、突出部の接触線密度を最大化するために様々な戦略を利用できる。図14と15に描かれているように、突出部24は基部38と頭部40とを備えるように形成されてもよい。上縁30における頭部40の周が長くなると、表面の接触線密度が高くなる。また、上縁30での周を長くして接触線密度を高めるため、図16に描かれているようにくぼみ42などの構造が突出部24に形成されてもよい。突出部は、基材に形成された凹部でもよい。
【0035】
突出部は、上述したような矩形のアレイ、図4〜5に描かれた六角形のアレイなどの多角形のアレイ、または円形や卵形の配置で配されてもよい。臨界接触線密度が維持される限り突出部はランダムに分散されてもよいが、このようなランダム構成は超撥水性の予想可能性が低いため、あまり望ましくない。このような突出部のランダム構成では、臨界接触線密度と他の関連パラメータは、その表面の平均値として説明される。図13の表には、他の様々な突出部形状と構成について接触線密度を計算するための式が挙げられている。
【0036】
概して、膜本体102に使用される材料は、マイクロまたはナノ規模の突出部が適当に形成されるとともに、膜が使用される処理環境での使用に適しているいかなる材料でもよい。本発明に適している微孔膜構造の特殊な例は、米国特許第3,801,404号、第4,138,459号、第4,405,688号、第4,664,681号、第5,013,439号、第6,540,953号に開示され、各々がここに全面的に参照によって導入されている。
【0037】
突出部は、フォトリソグラフィまたは様々な適当な方法のいずれかにより、膜本体102自身に直接、または膜本体に設けられた1層以上の他の材料に形成される。マイクロ・ナノ規模の突出部を形成するのに適したフォトリソグラフィ法は、国際特許公開公報WO 02/084340に開示されており、ここに全面的に参照によって導入されている。
【0038】
所望の形状と間隔の突出部を形成するのに適した他の方法は、米国特許公開第2002/00334879号に開示されたナノ機械加工と、米国特許第5,725,788号に開示されたマイクロ打抜き加工と、米国特許第5,900,160号に開示されたマイクロ接触印刷法と、米国特許第5,609,907号に開示された自己組織化金属コロイド単分子層と、米国特許第6,444,254号に開示されたマイクロ打抜き加工と、米国特許第5,252,835号に開示された原子間力顕微鏡法ナノ機械加工と、米国特許第6,403,388号に開示されたナノ機械加工と、米国特許第6,530,554号に開示されたゾル・ゲル成形と、米国特許第6,518,168号に開示された自己組織化単分子層方向性パターンニングと、米国特許第6,541,389号に開示された化学エッチングと、米国特許公開公開第2003/0047822号に開示されたゾル・ゲル打抜き加工とを含み、これらすべてがここに全面的に参照によって導入されている。所望の突出部形状を形成するため、カーボンナノチューブ構造も有益である。カーボンナノチューブ構造の例は、やはりここに参照によって全面的に導入する米国特許公開第2002/0098135号及び第2002/0136683号に開示されている。また、コロイドインクによる周知の印刷法を用いて適当な突出部構造が形成される。言うまでもなく、マイクロ・ナノ規模の突出部が必要な精密度で形成される他の方法も使用されることは理解できるだろう。概ね本発明による超撥水性表面に関連するさらなる詳細は、すべてが本発明の所有者によって所有されている、米国特許出願番号第10/454,740号、第10/454,742号、第10/454,743号、第10/454,745号、第10/652,586号、第10/662,979号に見られ、これれはここに参照によってて全面的に導入されている。
【0039】
さて図1aに戻ると、膜100,110の作用が理解できるであろう。表面が超撥水性を示すにちがいない最高圧力(P)以下の圧力を持つ液体109が、液体接触面108と接触し、液体・気体界面128を形成する突出部24の上面縁30の間で上縁の頂上の超撥水性表面20に懸架されている。液体・気体界面128は、超撥水性表面20の面積と等しく、突出部の総断面積より小さな面積を持つ。気体107は膜100の気体接触面106の側から導入され、矢印で示されているように、微孔104を通って、基材22と懸架液体109との間に形成される空間へ移動して、液体・気体界面128で液体109に面する。理解できるであろうが、膜100,110の液体・気体界面の総面積は、液体・気体界面128の面積と微孔104の面積との和である。
【0040】
利用可能な液体・気体界面の面積が増大することにより、膜100,110は、従来技術の微孔膜に対して、通気率および効率が著しく向上している。さらに、超撥水性表面は液体不純物とバイオフィルムの成長による詰まりまたは汚れを受けにくい。
【0041】
本発明は、その精神または本質的な属性から逸脱することなく、他の特定の態様で実施でき、そのため本実施例はあくまでも例示のためのものであって限定のためのものではないものとみなされることを望む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1a】本発明によるフィルム膜を示す非常に拡大された断面図である。
【図1b】本発明による中空ファイバ膜を示す非常に拡大された断面図である。
【図1】超撥水性表面を示す非常に拡大された斜視図であり、多数のナノ・マイクロ規模突出部が矩形のアレイで配されている。
【図2】図1の表面の一部分を示す上面図である。
【図3】図2に描かれた表面部分を示す側面図である。
【図4】突出部が六角形のアレイで配された、本発明による代替実施例の部分的上面図である。
【図5】図4の代替実施例の側面図である。
【図6】突出部間に懸架された液体の撓みを示す側面図である。
【図7】突出部の上に懸架されたある量の液体を示す側面図である。
【図8】突出部の間の空間の底面と接触する液体を示す側面図である。
【図9】突出部立上り角が鋭角である、本発明の代替実施例の単一突出部を示す側面図である。
【図10】突出部立上り角が鈍角である、本発明の代替実施例の単一突出部を示す側面図である。
【図11】突出部が円筒形であり矩形のアレイで列された、本発明の代替実施例を示す部分的上面図である。
【図12】図11の代替実施例を示す側面図である。
【図13】様々な突出部形状と配置についての接触線密度の式を挙げた表である。
【図14】本発明の代替実施例を示す側面図である。
【図15】図14の代替実施例を示す上面図である。
【図16】本発明の代替実施例の単一突出部を示す上面図である。
【図17】従来技術によるフィルムタイプの微孔膜を示す、非常に拡大された断面図である。
【関連出願】
【0001】
本出願は、参照によってここに全面的に導入する2003年4月15日出願の「Ultraphobic Surface for High Pressure Liquids」という名称の米国仮特許出願番号第60/462963号及び2004年4月14日出願の「UltralyohobicMembrand」という名称の出願番号“未定”の米国特許出願の利益を主張している。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概ね微孔膜、より詳しくは超撥水性または超疎液性の表面を有する微孔膜に関連する。
【背景技術】
【0003】
液体と気体の間の物質移動を行うには、微孔通気性膜が広く使用されている。このような膜は、フィルムまたは中空ファイバの形を取る。この種の膜の一般的な用途の一つは、例えば、患者の中を循環する血液中の酸素と二酸化炭素ガスとの交換を行う血液酸素添加装置である。血液酸素添加装置の特定例は、米国特許第3,794,468号、米国特許第4,329,729号、米国特許第4,374,802号及び米国特許第4,659,549号に開示されており、各々が参照によってここに全面的に導入されている。他の特殊な通気膜の使用例は、米国特許第5,254,143号に開示され、やはり参照によってここに全面的に導入されている。
【0004】
従来のフィルムタイプの微孔膜200の一例が、先行技術を示す図17に非常に拡大された断面図で描かれている。膜200は概して、多数の微孔204が内部に形成された膜本体202を含む。気体接触面206が膜200の片側において気体208に面するのに対して、液体接触面210が膜200の反対側において液体212に面している。微孔204の面積とほぼ等しい面積を有する液体・気体界面214が、各微孔204に形成されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,794,468号
【特許文献2】米国特許第4,329,729号
【特許文献3】米国特許第4,374,802号
【特許文献4】米国特許第4,659,549号
【特許文献5】米国特許第5,254,143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術の膜では、従来技術の膜の界面液体・気体エリアは、微孔204の合計エリアに限定される。その結果、通気率は、膜に利用可能な界面液体・気体エリアの量に依存するので、この従来の膜の通気率とその結果としての効率とに限界がある。この業界で必要とされるのは、通気率および効率を向上させた微孔通気膜である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、膜の微孔合計エリアよりも広い液体・気体界面を形成する液体接触面を有する微孔通気膜を提供することにより、業界の要求に応えるものである。本出願において、「マイクロ規模」は概して100マイクロメートル未満の寸法を指し、「ナノ規模」は概して100ナノメートル未満の寸法を指す。表面は、ある所定の圧力値まで超撥水性を維持するように設計されている。以下の式にしたがって決定される接触線密度値“ΛL”と等しいか該接触線密度値より高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される所定の接触線密度を表面が有するように、突出部が配置される。
ここで、Pは所定の圧力値であり、γは液体の表面張力であり、θa,0は実験測定による、突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角である。所定の圧力値は、膜が受けると予想される予想液圧より高くなるように選択される。
【0008】
所定圧力値以下の液体が膜の超撥水性液体接触面と接触すると、液体は突出部の上部に「懸架」され、突出部の合計断面積より小さい超撥水性表面の総面積と等しい面積を有する液体・気体界面を形成する。膜の気体接触面の側に導入された気体は、膜の微孔を通って、超撥水性表面の基材と液体・気体界面との間に形成される突出部を囲繞する空間へ移動する。液体・気体界面の面積は、微孔の総面積とともに超撥水性表面の面積を含むので、液体・気体界面の面積が微孔の面積のみに限定される従来技術の膜に対して、膜の通気率と効率とが著しく向上する。概して、超撥水性表面で利用可能な液体・気体界面エリアの量、ひいては膜の通気率および効率を最大とするには、膜が受けるであろう最高予想圧力で超撥水性を付与するのに充分なレベルに所定圧力値を維持しながら、表面の接触線密度を最小にすることが望ましい。
【0009】
突出部は、基材材料自体内もしくはその上に、あるいは基材の表面に配置された1層以上の材料に形成される。突出部は、規則的または不規則的な形状の三次元固体または凹部であり、規則的な幾何学的パターンで、またはランダムに配置される。突出部は、フォトリソグラフィを用いて、またはナノ機械加工、マイクロ打抜き加工、マイクロ接触印刷(microcontact printing)、自己組織化金属コロイド単分子層、原子間力顕微鏡ナノ機械加工、ゾル・ゲル成形、自己組織化単分子層方向性パターンニング、化学エッチング、ゾル・ゲル打抜き加工、コロイドインクによる印刷を用いて、または平行なカーボンナノチューブの層を基材に配置することにより形成される。
【0010】
本発明はまた、所定の圧力値までの液圧で超撥水性を有する表面を備える微孔通気膜を製造するための方法を含む。この方法は、突出部立上り角を選択する段階と、下記の式にしたがって、臨界接触線密度“ΛL”値を決定する段階と、表面部分を備える支持体を設ける段階と、臨界接触線密度と等しいかそれよりも高い実際の接触線密度を表面が有するように、表面部分に多数の突出部を形成する段階とを含む。
ここで、Pは所定圧力値であり、γは液体の表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角である。ここでも、膜が受ける最高予想圧力で超撥水性を付与するのに充分なレベルに所定圧力値を維持しながら表面の接触線密度を最小にすることにより、超撥水性表面で利用可能な液体・気体界面エリアの量を最大にすることが概して望ましい。
【0011】
上記方法はさらに、下記の式にしたがって、臨界突出部高さ値“Zc”(メートル)を決定する段階を含む。
ここで、dは隣接する突出部間のメートルでの距離であり、θa,0は表面に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
液体による浸潤に対する耐性を備える表面は、液体が水である場合には撥水性、他の液体については疎液性と呼ばれる。接触角ヒステリシス値が非常に低く(約20度未満)、液滴と表面との前進接触角が非常に高い(約120度を超える)こと、液滴を保持する表面の傾向が著しく低いこと、表面が完全に液体に浸漬された時に表面に液体・気体・固体界面が存在することのいずれかまたはすべてに特徴付けられる程度まで表面が浸潤に抵抗する場合に、表面は概して、超撥水性または超疎液性の表面と呼ばれる。本出願では、超撥水性および超疎液性の表面を指すのにまとめて超撥水性の語が用いられる。ここで使用される微孔膜の語は、約・・・の間の直径を持つ細孔を有する膜を意味する。
【0013】
図1aを参照すると、本発明による実施例の微孔通気フィルム膜100が非常に拡大された断面図で描かれている。膜100は概して、多数の微孔104が内部に貫通形成されたポリマー材料から製造された膜本体102を含む。微孔104は、望ましくは約0.005μmから約100μm、より望ましくは約0.01μmから約50μmの直径を有する。膜100は、気体107に面する側の気体接触面106と、液体109に面する反対側の液体接触面108とを有する。本発明によれば、液体接触面106に超撥水性表面20が形成されている。
【0014】
中空ファイバの形の別の実施例の微孔通気膜110が、図1bに描かれている。膜110は概して、多数の微孔114が貫通形成されたポリマー材料の筒状膜本体112を含む。膜110は、気体120に面する外面118上の気体接触面116と、液体126に面する内面124上の液体接触面122とを有する。本発明によれば、液体接触面122に超撥水性表面20が形成されている。気体接触面116が内面124上、液体接触面122が外面118上となるように、気体接触面116と液体接触面122の相対的な位置を逆転させられることは理解できるだろう。
【0015】
超撥水性表面20の好適な実施例の非常に拡大された図が、図1に見られる。表面20は概して、多数の突出部24を備える基材22を含む。各突出部24は、複数の側部26と上部28とを有する。各突出部24は、図では“x”で示された幅寸法と、図では“z”で示された高さ寸法とを有する。
【0016】
図1から3に描かれているように、突出部24は規則的な多角形のアレイで配置され、各突出部は、図で“y”と示された間隔寸法により隣り合う突出部から離間している。突出部24の上縁30により定められる角度はφで示され、基材22に対する突出部24の側部26の立上り角はωで示されている。角度φとωとの和は180度である。
【0017】
概して、液体・固体・気体界面が表面に維持される時に、超撥水性表面20が超撥水性を示す。図7に描かれているように、液体32が上部28と、突出部24の上縁30に近接する側部26の一部分のみと接触する場合には、空気または他の気体が充填された空間34が突出部の間に残り、液体・固体・気体界面が必ず存在する。液体は、突出部24の頂上と、突出部24の上縁30の間に「懸架」されていると言える。
【0018】
以下で開示されるように、液体・固体・気体界面の形成は、突出部24のある相関的な幾何学的パラメータと液体の性質とに左右される。本発明によれば、表面20が所望の液圧で超撥水性を示すように突出部24の幾何学的な性質が選択される。
【0019】
図1〜3の多角形のアレイを参照すると、表面20は、各突出部24を囲繞する、点線を境界線として描かれた均等なエリア36に分割される。各均一エリア36における突出部の面密度(δ)は以下の等式で表され、
ここで、yはメートルで測定された突出部間の間隔である。
【0020】
図1〜3に描かれた正方形断面の突出部24については、上縁30における上部28の周の長さ(p)は、
であり、ここで、xは突出部のメートルでの幅である。
【0021】
周pは、液体・固体・気体界面の場所を規定する「接触線」と称される。表面の単位面積あたりの接触線の長さである表面の接触線密度(Λ)は、周(p)と突出部の面密度(δ)との積であるため、以下となる。
【0022】
図1〜3に描かれた正方形突出部の矩形のアレイについては、以下となる。
【0023】
液体に作用する重力による体積力(F)が突出部の接触線に作用する表面力(f)より低い場合には、突出部24の頂上に、ある量の液体が懸架される。重力に関連する体積力(F)は、以下の式により決定され、
ここで、gは液体の密度(ρ)であり、(g)は重力による加速度であり、(h)は液体の深さである。ゆえに、例えばおよそ1000kg/m3の密度を持つ10メートルの水柱では、体積力(F)は、
となるであろう。
【0024】
他方、表面力(f)は、液体の表面張力(γ)と、垂線θsに対する突出部24の側部26の見かけの接触角と、突出部の接触線密度(Λ)と、液体の見かけの接触面積(Α)とに左右される。
【0025】
所定の固体材料における液体の真の前進接触角(θa,0)は、実験測定による本質的に突出部を持たない材料の表面に対する液体の最大静止接触角として定義される。真の前進接触角は、当業者に周知の技術によって容易に測定可能である。
【0026】
突出部を備える表面の上の懸架滴は、突出部の側部において真の前進接触角値(θa,0)を示す。突出部の側部における垂線に対する接触角(θs)は、以下のように、φまたはωにより真の前進接触角(θa,0)に関連する。
【0027】
Fとfを等しくして接触線密度Λを求めることにより、表面における超撥水性を予想するための臨界接触線密度パラメータΛLが決められる。
同式において、gは液体の密度(ρ)であり、(g)は重力による加速度であり、(h)は液体の深さであり、(γ)は液体の表面張力であり、ωは基材に対する突出部の側部の立上り角(度)であり、(θa,0)は、実験により測定された、突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)である。
【0028】
Λ>ΛLの場合、液体は突出部24の頂上に懸架されて超撥水性表面が形成される。そうでなくΛ<ΛLの場合には、液体は突出部から落下して、表面上の接触界面は超撥水性を持たない単なる液体/固体となる。
【0029】
上に挙げた等式の分子に適切な値を代入することにより、所望の圧力で超撥水性を保持する表面をつくるような臨界接触線密度の値が決定されることは理解できるだろう。等式は以下のようにまとめられる。
ここで、Pは、表面が超撥水性を示す、キログラム/平方メートルでの最高圧力であり、γは液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である。
【0030】
上記の関係にしたがって形成された表面20が、上の等式(9)で使用されたPの値までのおよびPの値を含む液圧値において超撥水性を示すことは概ね予想されるだろう。表面が浸漬されても、液体のジェットまたはスプレーを受けても、個々の液滴に衝突されても、超撥水性が見られる。膜100,110が受けるであろう最高予想液圧より高くなるように圧力値Pが選択されることは容易に理解できるであろう。予想されるよりも瞬間的または局所的に高い圧力や、公差の変動による表面の凹凸や、他のこのような因子とに対処するための適切な安全率を提供するように、Pの値が選択されるべきであることは、概ね理解できるであろう。
【0031】
臨界接触線密度の値が決定されると、接触線密度(Λ)についての等式で与えられるxとyの関係にしたがって、突出部の幾何学形状の残りの詳細が決定される。言い換えると、接触線等式でxとyのいずれかの値を選択して他の変数を求めることにより、表面の幾何学形状が決定されるのである。
【0032】
図6に描かれているように、液体界面は、隣り合う突出部の間で量D1だけ下方へ撓む。量D1が突出部24の高さ(z)よりも大きい場合には、突出部24の間の点で液体は基材22と接触する。これが起こると、液体は空間34へ引き寄せられて突出部から落下し、表面の超撥水性が損なわれる。D1の値は臨界突出部高さ(Zc)を表し、以下の式により決定することができる。
ここで、(d)は隣接する突出部の間の距離であり、ωは突出部立上り角であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角である。突出部24の高さ(z)は、臨界突出部高さ(Zc)に少なくとも等しいか、望ましくはこれより高いことが必要である。
【0033】
図1〜3では、突出部の立上り角ωは90度であるが、他の突出部幾何学形状も可能である。例えば、ωは図9に描かれているように鋭角でも、図10に描かれているように鈍角でもよい。概して、ωは80度と130度の間であることが望ましい。
【0034】
本発明の範囲内で多様な突出部形状および配置が可能であることも理解できるだろう。例えば、突出部は多面体、図11〜12に描かれた円筒形、類円柱、あるいは他の適当な三次元形状でよい。そのうえ、突出部の接触線密度を最大化するために様々な戦略を利用できる。図14と15に描かれているように、突出部24は基部38と頭部40とを備えるように形成されてもよい。上縁30における頭部40の周が長くなると、表面の接触線密度が高くなる。また、上縁30での周を長くして接触線密度を高めるため、図16に描かれているようにくぼみ42などの構造が突出部24に形成されてもよい。突出部は、基材に形成された凹部でもよい。
【0035】
突出部は、上述したような矩形のアレイ、図4〜5に描かれた六角形のアレイなどの多角形のアレイ、または円形や卵形の配置で配されてもよい。臨界接触線密度が維持される限り突出部はランダムに分散されてもよいが、このようなランダム構成は超撥水性の予想可能性が低いため、あまり望ましくない。このような突出部のランダム構成では、臨界接触線密度と他の関連パラメータは、その表面の平均値として説明される。図13の表には、他の様々な突出部形状と構成について接触線密度を計算するための式が挙げられている。
【0036】
概して、膜本体102に使用される材料は、マイクロまたはナノ規模の突出部が適当に形成されるとともに、膜が使用される処理環境での使用に適しているいかなる材料でもよい。本発明に適している微孔膜構造の特殊な例は、米国特許第3,801,404号、第4,138,459号、第4,405,688号、第4,664,681号、第5,013,439号、第6,540,953号に開示され、各々がここに全面的に参照によって導入されている。
【0037】
突出部は、フォトリソグラフィまたは様々な適当な方法のいずれかにより、膜本体102自身に直接、または膜本体に設けられた1層以上の他の材料に形成される。マイクロ・ナノ規模の突出部を形成するのに適したフォトリソグラフィ法は、国際特許公開公報WO 02/084340に開示されており、ここに全面的に参照によって導入されている。
【0038】
所望の形状と間隔の突出部を形成するのに適した他の方法は、米国特許公開第2002/00334879号に開示されたナノ機械加工と、米国特許第5,725,788号に開示されたマイクロ打抜き加工と、米国特許第5,900,160号に開示されたマイクロ接触印刷法と、米国特許第5,609,907号に開示された自己組織化金属コロイド単分子層と、米国特許第6,444,254号に開示されたマイクロ打抜き加工と、米国特許第5,252,835号に開示された原子間力顕微鏡法ナノ機械加工と、米国特許第6,403,388号に開示されたナノ機械加工と、米国特許第6,530,554号に開示されたゾル・ゲル成形と、米国特許第6,518,168号に開示された自己組織化単分子層方向性パターンニングと、米国特許第6,541,389号に開示された化学エッチングと、米国特許公開公開第2003/0047822号に開示されたゾル・ゲル打抜き加工とを含み、これらすべてがここに全面的に参照によって導入されている。所望の突出部形状を形成するため、カーボンナノチューブ構造も有益である。カーボンナノチューブ構造の例は、やはりここに参照によって全面的に導入する米国特許公開第2002/0098135号及び第2002/0136683号に開示されている。また、コロイドインクによる周知の印刷法を用いて適当な突出部構造が形成される。言うまでもなく、マイクロ・ナノ規模の突出部が必要な精密度で形成される他の方法も使用されることは理解できるだろう。概ね本発明による超撥水性表面に関連するさらなる詳細は、すべてが本発明の所有者によって所有されている、米国特許出願番号第10/454,740号、第10/454,742号、第10/454,743号、第10/454,745号、第10/652,586号、第10/662,979号に見られ、これれはここに参照によってて全面的に導入されている。
【0039】
さて図1aに戻ると、膜100,110の作用が理解できるであろう。表面が超撥水性を示すにちがいない最高圧力(P)以下の圧力を持つ液体109が、液体接触面108と接触し、液体・気体界面128を形成する突出部24の上面縁30の間で上縁の頂上の超撥水性表面20に懸架されている。液体・気体界面128は、超撥水性表面20の面積と等しく、突出部の総断面積より小さな面積を持つ。気体107は膜100の気体接触面106の側から導入され、矢印で示されているように、微孔104を通って、基材22と懸架液体109との間に形成される空間へ移動して、液体・気体界面128で液体109に面する。理解できるであろうが、膜100,110の液体・気体界面の総面積は、液体・気体界面128の面積と微孔104の面積との和である。
【0040】
利用可能な液体・気体界面の面積が増大することにより、膜100,110は、従来技術の微孔膜に対して、通気率および効率が著しく向上している。さらに、超撥水性表面は液体不純物とバイオフィルムの成長による詰まりまたは汚れを受けにくい。
【0041】
本発明は、その精神または本質的な属性から逸脱することなく、他の特定の態様で実施でき、そのため本実施例はあくまでも例示のためのものであって限定のためのものではないものとみなされることを望む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1a】本発明によるフィルム膜を示す非常に拡大された断面図である。
【図1b】本発明による中空ファイバ膜を示す非常に拡大された断面図である。
【図1】超撥水性表面を示す非常に拡大された斜視図であり、多数のナノ・マイクロ規模突出部が矩形のアレイで配されている。
【図2】図1の表面の一部分を示す上面図である。
【図3】図2に描かれた表面部分を示す側面図である。
【図4】突出部が六角形のアレイで配された、本発明による代替実施例の部分的上面図である。
【図5】図4の代替実施例の側面図である。
【図6】突出部間に懸架された液体の撓みを示す側面図である。
【図7】突出部の上に懸架されたある量の液体を示す側面図である。
【図8】突出部の間の空間の底面と接触する液体を示す側面図である。
【図9】突出部立上り角が鋭角である、本発明の代替実施例の単一突出部を示す側面図である。
【図10】突出部立上り角が鈍角である、本発明の代替実施例の単一突出部を示す側面図である。
【図11】突出部が円筒形であり矩形のアレイで列された、本発明の代替実施例を示す部分的上面図である。
【図12】図11の代替実施例を示す側面図である。
【図13】様々な突出部形状と配置についての接触線密度の式を挙げた表である。
【図14】本発明の代替実施例を示す側面図である。
【図15】図14の代替実施例を示す上面図である。
【図16】本発明の代替実施例の単一突出部を示す上面図である。
【図17】従来技術によるフィルムタイプの微孔膜を示す、非常に拡大された断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微孔膜であって、多数の微孔が貫通形成された膜本体部分を有し、該膜本体部分は液体接触面と、反対側の気体接触面とを有し、前記液体接触面は、ほぼ同一形状の多数の突出部を備える基材を含む超撥水性表面を有し、各突出部が、前記基材に対して共通の突出部立上り角を有し、前記突出部が、以下の式により決定される臨界接触線密度値“ΛL”と等しいかそれより高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される、接触線密度を前記超撥水性表面が有するように配置され、
ここで、γは表面と接触する液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)であり、Pはキログラム・メートルでの所定の液圧値であり、前記所定液圧値までのおよび該所定液圧値を含む液圧の液体が超撥水性表面と接触すると、前記基材から離間した液体・気体界面を液体が形成する、微孔膜。
【請求項2】
前記膜がフィルムである、請求項1の膜。
【請求項3】
前記膜がファイバである、請求項1の膜。
【請求項4】
前記突出部が突起である、請求項1の膜。
【請求項5】
前記突出部が多面体の形状である、請求項4の膜。
【請求項6】
各突出部がほぼ正方形の横断面を有する、請求項4の膜。
【請求項7】
前記突出部が円筒形または類円柱の形状である、請求項4の膜。
【請求項8】
前記突出部がほぼ均等なアレイで配置される、請求項1の膜。
【請求項9】
前記突出部が矩形のアレイで配置される、請求項8の膜。
【請求項10】
前記突出部が、前記基材部分に対してほぼ一定の突出部高さを持ち、該突出部高さが、以下の式により決定される臨界突出部高さ値“Zc”よりも大きく、
ここで、dは隣り合う突出部の間のメートルでの距離であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である請求項1の膜。
【請求項11】
超撥水性液体接触面を備える微孔膜を製造する方法であって、
多数の微孔が形成された膜本体部分を有する微孔膜を設ける段階を有し、ここで膜本体部分は第1面を有し、
前記第1面に超撥水性液体接触面を形成する段階を有し、ここで超撥水性表面は、ほぼ一定な形状の多数の突出部を備える基材を含み、各突出部が、前記基材に対して共通の突出部立上り角を有し、また前記突出部が、以下の式により決定される接触線密度値“ΛL”と等しいかそれよりも高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される接触線密度を超撥水性表面が有するように配置されており、
ここで、γは表面と接触する液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)であり、Pはキログラム/メートルでの所定の液圧値であり、前記所定液圧値までのおよび該所定液圧値を含む液圧の液体が前記超撥水性表面と接触すると、前記基材から離間した液体・気体界面を該液体が形成する方法。
【請求項12】
ナノ機械加工と、マイクロ打抜き加工と、マイクロ接触印刷法と、自己組織化金属コロイド単分子層と、原子間力顕微鏡ナノ機械加工と、ゾル・ゲル成形と、自己組織化単分子層方向性パターンニングと、化学エッチングと、ゾル・ゲル打抜き加工と、コロイドインクによる印刷と、平行なカーボンナノチューブの層を前記基材に配置することからなるグループから選択される方法により前記突出部が形成される、請求項11の方法。
【請求項13】
最低接触線密度を決定する段階をさらに含む、請求項11の方法。
【請求項14】
所定の圧力値までの液圧で超撥水性を備える液体接触面を有する微孔膜を製造するための方法であって、
突出部の立上り角を選択する段階と、
以下の式にしたがって、臨界接触線密度“ΛL”を決定する段階とを有し、
ここで、Pは前記所定圧力値であり、γは液体の表面張力であり、θa,0は実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角であり、
また、多数の微孔が形成された膜本体部分を設ける段階と、
前記膜本体部分に超撥水性表面を形成する段階とを有し、前記超撥水性表面が、多数の突出部を備える基材を含み、前記突出部が、臨界接触線密度と等しいかそれよりも高い真の接触線密度を前記面が有するように配置される方法。
【請求項15】
ナノ機械加工と、マイクロ打抜き加工と、マイクロ接触印刷法と、自己組織化金属コロイド単分子層と、原子間力顕微鏡ナノ機械加工と、ゾル・ゲル成形と、自己組織化単分子層方向性パターンニングと、化学エッチングと、ゾル・ゲル打抜き加工と、コロイドインクによる印刷を用いて、または、平行なカーボンナノチューブの層を前記基材に配置することにより、前記突出部が形成される、請求項14の方法。
【請求項16】
前記突出部についての幾何学形状を選択する段階をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項17】
前記突出部についてのアレイパターンを選択する段階をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項18】
前記突出部についての少なくとも一つの寸法を選択する段階と、接触線密度の等式を用いて前記突出部についての少なくとも一つの他の寸法を決定する段階とを含む、請求項14の方法。
【請求項19】
最低接触線密度を決定する段階をさらに含む、請求項18の方法。
【請求項20】
以下の式にしたがって臨界突出部高さ値“Zc”を決定する段階をさらに有し、
ここで、dは隣接する突出部の間のメートルでの距離であり、θa,0は表面に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である請求項14の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微孔膜であって、多数の微孔が貫通形成された膜本体部分を有し、各微孔は横断面積を有し、該膜本体部分は液体接触面と、反対側の気体接触面とを有し、前記液体接触面は、ほぼ同一形状の多数の突出部を備える基材を含む超撥水性表面を有し、各突出部が、前記基材に対して共通の突出部立上り角を有し、前記突出部が、以下の式により決定される臨界接触線密度値“ΛL”と等しいかそれより高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される、接触線密度を前記超撥水性表面が有するように配置され、
ここで、γは表面と接触する液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)であり、Pはキログラム・メートルでの所定の液圧値であり、前記所定液圧値までのおよび該所定液圧値を含む液圧の液体が超撥水性表面と接触すると、面積を有していて前記基材から離間した液体・気体界面を液体が形成し、前記液体・気体界面の面積は微孔の横断面積の合計よりも大きい、微孔膜。
【請求項2】
前記膜がフィルムである、請求項1の膜。
【請求項3】
前記膜がファイバである、請求項1の膜。
【請求項4】
前記突出部が突起である、請求項1の膜。
【請求項5】
前記突出部が多面体の形状である、請求項4の膜。
【請求項6】
各突出部がほぼ正方形の横断面を有する、請求項4の膜。
【請求項7】
前記突出部が円筒形または類円柱の形状である、請求項4の膜。
【請求項8】
前記突出部がほぼ均等なアレイで配置される、請求項1の膜。
【請求項9】
前記突出部が矩形のアレイで配置される、請求項8の膜。
【請求項10】
前記突出部が、前記基材部分に対してほぼ一定の突出部高さを持ち、該突出部高さが、以下の式により決定される臨界突出部高さ値“Zc”よりも大きく、
ここで、dは隣り合う突出部の間のメートルでの距離であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である請求項1の膜。
【請求項11】
超撥水性液体接触面を備える微孔膜を製造する方法であって、
多数の微孔が形成された膜本体部分を有する微孔膜を設ける段階を有し、ここで各微孔は横断面積を有し、膜本体部分は第1面を有し、
前記第1面に超撥水性液体接触面を形成する段階を有し、ここで超撥水性表面は、ほぼ一定な形状の多数の突出部を備える基材を含み、各突出部が、前記基材に対して共通の突出部立上り角を有し、また前記突出部が、以下の式により決定される接触線密度値“ΛL”と等しいかそれよりも高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される接触線密度を超撥水性表面が有するように配置されており、
ここで、γは表面と接触する液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)であり、Pはキログラム/メートルでの所定の液圧値であり、前記所定液圧値までのおよび該所定液圧値を含む液圧の液体が前記超撥水性表面と接触すると、面積を有していて前記基材から離間した液体・気体界面を液体が形成し、前記液体・気体界面の面積は微孔の横断面積の合計よりも大きい方法。
【請求項12】
ナノ機械加工と、マイクロ打抜き加工と、マイクロ接触印刷法と、自己組織化金属コロイド単分子層と、原子間力顕微鏡ナノ機械加工と、ゾル・ゲル成形と、自己組織化単分子層方向性パターンニングと、化学エッチングと、ゾル・ゲル打抜き加工と、コロイドインクによる印刷と、平行なカーボンナノチューブの層を前記基材に配置することからなるグループから選択される方法により前記突出部が形成される、請求項11の方法。
【請求項13】
最低接触線密度を決定する段階をさらに含む、請求項11の方法。
【請求項14】
所定の圧力値までの液圧で超撥水性を備える液体接触面を有する微孔膜を製造するための方法であって、
突出部の立上り角を選択する段階と、
以下の式にしたがって、臨界接触線密度“ΛL”を決定する段階とを有し、
ここで、Pは前記所定圧力値であり、γは液体の表面張力であり、θa,0は実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角であり、
また、多数の微孔が形成された膜本体部分を設ける段階と、
前記膜本体部分に超撥水性表面を形成する段階とを有し、前記超撥水性表面が、多数の突出部を備える基材を含み、前記突出部が、臨界接触線密度と等しいかそれよりも高い真の接触線密度を前記面が有するように配置される方法。
【請求項15】
ナノ機械加工と、マイクロ打抜き加工と、マイクロ接触印刷法と、自己組織化金属コロイド単分子層と、原子間力顕微鏡ナノ機械加工と、ゾル・ゲル成形と、自己組織化単分子層方向性パターンニングと、化学エッチングと、ゾル・ゲル打抜き加工と、コロイドインクによる印刷を用いて、または、平行なカーボンナノチューブの層を前記基材に配置することにより、前記突出部が形成される、請求項14の方法。
【請求項16】
前記突出部についての幾何学形状を選択する段階をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項17】
前記突出部についてのアレイパターンを選択する段階をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項18】
前記突出部についての少なくとも一つの寸法を選択する段階と、接触線密度の等式を用いて前記突出部についての少なくとも一つの他の寸法を決定する段階とを含む、請求項14の方法。
【請求項19】
最低接触線密度を決定する段階をさらに含む、請求項18の方法。
【請求項20】
以下の式にしたがって臨界突出部高さ値“Zc”を決定する段階をさらに有し、
ここで、dは隣接する突出部の間のメートルでの距離であり、θa,0は表面に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である請求項14の方法。
【請求項1】
微孔膜であって、多数の微孔が貫通形成された膜本体部分を有し、該膜本体部分は液体接触面と、反対側の気体接触面とを有し、前記液体接触面は、ほぼ同一形状の多数の突出部を備える基材を含む超撥水性表面を有し、各突出部が、前記基材に対して共通の突出部立上り角を有し、前記突出部が、以下の式により決定される臨界接触線密度値“ΛL”と等しいかそれより高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される、接触線密度を前記超撥水性表面が有するように配置され、
ここで、γは表面と接触する液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)であり、Pはキログラム・メートルでの所定の液圧値であり、前記所定液圧値までのおよび該所定液圧値を含む液圧の液体が超撥水性表面と接触すると、前記基材から離間した液体・気体界面を液体が形成する、微孔膜。
【請求項2】
前記膜がフィルムである、請求項1の膜。
【請求項3】
前記膜がファイバである、請求項1の膜。
【請求項4】
前記突出部が突起である、請求項1の膜。
【請求項5】
前記突出部が多面体の形状である、請求項4の膜。
【請求項6】
各突出部がほぼ正方形の横断面を有する、請求項4の膜。
【請求項7】
前記突出部が円筒形または類円柱の形状である、請求項4の膜。
【請求項8】
前記突出部がほぼ均等なアレイで配置される、請求項1の膜。
【請求項9】
前記突出部が矩形のアレイで配置される、請求項8の膜。
【請求項10】
前記突出部が、前記基材部分に対してほぼ一定の突出部高さを持ち、該突出部高さが、以下の式により決定される臨界突出部高さ値“Zc”よりも大きく、
ここで、dは隣り合う突出部の間のメートルでの距離であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である請求項1の膜。
【請求項11】
超撥水性液体接触面を備える微孔膜を製造する方法であって、
多数の微孔が形成された膜本体部分を有する微孔膜を設ける段階を有し、ここで膜本体部分は第1面を有し、
前記第1面に超撥水性液体接触面を形成する段階を有し、ここで超撥水性表面は、ほぼ一定な形状の多数の突出部を備える基材を含み、各突出部が、前記基材に対して共通の突出部立上り角を有し、また前記突出部が、以下の式により決定される接触線密度値“ΛL”と等しいかそれよりも高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される接触線密度を超撥水性表面が有するように配置されており、
ここで、γは表面と接触する液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)であり、Pはキログラム/メートルでの所定の液圧値であり、前記所定液圧値までのおよび該所定液圧値を含む液圧の液体が前記超撥水性表面と接触すると、前記基材から離間した液体・気体界面を該液体が形成する方法。
【請求項12】
ナノ機械加工と、マイクロ打抜き加工と、マイクロ接触印刷法と、自己組織化金属コロイド単分子層と、原子間力顕微鏡ナノ機械加工と、ゾル・ゲル成形と、自己組織化単分子層方向性パターンニングと、化学エッチングと、ゾル・ゲル打抜き加工と、コロイドインクによる印刷と、平行なカーボンナノチューブの層を前記基材に配置することからなるグループから選択される方法により前記突出部が形成される、請求項11の方法。
【請求項13】
最低接触線密度を決定する段階をさらに含む、請求項11の方法。
【請求項14】
所定の圧力値までの液圧で超撥水性を備える液体接触面を有する微孔膜を製造するための方法であって、
突出部の立上り角を選択する段階と、
以下の式にしたがって、臨界接触線密度“ΛL”を決定する段階とを有し、
ここで、Pは前記所定圧力値であり、γは液体の表面張力であり、θa,0は実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角であり、
また、多数の微孔が形成された膜本体部分を設ける段階と、
前記膜本体部分に超撥水性表面を形成する段階とを有し、前記超撥水性表面が、多数の突出部を備える基材を含み、前記突出部が、臨界接触線密度と等しいかそれよりも高い真の接触線密度を前記面が有するように配置される方法。
【請求項15】
ナノ機械加工と、マイクロ打抜き加工と、マイクロ接触印刷法と、自己組織化金属コロイド単分子層と、原子間力顕微鏡ナノ機械加工と、ゾル・ゲル成形と、自己組織化単分子層方向性パターンニングと、化学エッチングと、ゾル・ゲル打抜き加工と、コロイドインクによる印刷を用いて、または、平行なカーボンナノチューブの層を前記基材に配置することにより、前記突出部が形成される、請求項14の方法。
【請求項16】
前記突出部についての幾何学形状を選択する段階をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項17】
前記突出部についてのアレイパターンを選択する段階をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項18】
前記突出部についての少なくとも一つの寸法を選択する段階と、接触線密度の等式を用いて前記突出部についての少なくとも一つの他の寸法を決定する段階とを含む、請求項14の方法。
【請求項19】
最低接触線密度を決定する段階をさらに含む、請求項18の方法。
【請求項20】
以下の式にしたがって臨界突出部高さ値“Zc”を決定する段階をさらに有し、
ここで、dは隣接する突出部の間のメートルでの距離であり、θa,0は表面に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である請求項14の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微孔膜であって、多数の微孔が貫通形成された膜本体部分を有し、各微孔は横断面積を有し、該膜本体部分は液体接触面と、反対側の気体接触面とを有し、前記液体接触面は、ほぼ同一形状の多数の突出部を備える基材を含む超撥水性表面を有し、各突出部が、前記基材に対して共通の突出部立上り角を有し、前記突出部が、以下の式により決定される臨界接触線密度値“ΛL”と等しいかそれより高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される、接触線密度を前記超撥水性表面が有するように配置され、
ここで、γは表面と接触する液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)であり、Pはキログラム・メートルでの所定の液圧値であり、前記所定液圧値までのおよび該所定液圧値を含む液圧の液体が超撥水性表面と接触すると、面積を有していて前記基材から離間した液体・気体界面を液体が形成し、前記液体・気体界面の面積は微孔の横断面積の合計よりも大きい、微孔膜。
【請求項2】
前記膜がフィルムである、請求項1の膜。
【請求項3】
前記膜がファイバである、請求項1の膜。
【請求項4】
前記突出部が突起である、請求項1の膜。
【請求項5】
前記突出部が多面体の形状である、請求項4の膜。
【請求項6】
各突出部がほぼ正方形の横断面を有する、請求項4の膜。
【請求項7】
前記突出部が円筒形または類円柱の形状である、請求項4の膜。
【請求項8】
前記突出部がほぼ均等なアレイで配置される、請求項1の膜。
【請求項9】
前記突出部が矩形のアレイで配置される、請求項8の膜。
【請求項10】
前記突出部が、前記基材部分に対してほぼ一定の突出部高さを持ち、該突出部高さが、以下の式により決定される臨界突出部高さ値“Zc”よりも大きく、
ここで、dは隣り合う突出部の間のメートルでの距離であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である請求項1の膜。
【請求項11】
超撥水性液体接触面を備える微孔膜を製造する方法であって、
多数の微孔が形成された膜本体部分を有する微孔膜を設ける段階を有し、ここで各微孔は横断面積を有し、膜本体部分は第1面を有し、
前記第1面に超撥水性液体接触面を形成する段階を有し、ここで超撥水性表面は、ほぼ一定な形状の多数の突出部を備える基材を含み、各突出部が、前記基材に対して共通の突出部立上り角を有し、また前記突出部が、以下の式により決定される接触線密度値“ΛL”と等しいかそれよりも高い、平方メートルでの表面積あたりの、メートルでの接触線で測定される接触線密度を超撥水性表面が有するように配置されており、
ここで、γは表面と接触する液体のニュートン/メートルでの表面張力であり、θa,0は、実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)であり、Pはキログラム/メートルでの所定の液圧値であり、前記所定液圧値までのおよび該所定液圧値を含む液圧の液体が前記超撥水性表面と接触すると、面積を有していて前記基材から離間した液体・気体界面を液体が形成し、前記液体・気体界面の面積は微孔の横断面積の合計よりも大きい方法。
【請求項12】
ナノ機械加工と、マイクロ打抜き加工と、マイクロ接触印刷法と、自己組織化金属コロイド単分子層と、原子間力顕微鏡ナノ機械加工と、ゾル・ゲル成形と、自己組織化単分子層方向性パターンニングと、化学エッチングと、ゾル・ゲル打抜き加工と、コロイドインクによる印刷と、平行なカーボンナノチューブの層を前記基材に配置することからなるグループから選択される方法により前記突出部が形成される、請求項11の方法。
【請求項13】
最低接触線密度を決定する段階をさらに含む、請求項11の方法。
【請求項14】
所定の圧力値までの液圧で超撥水性を備える液体接触面を有する微孔膜を製造するための方法であって、
突出部の立上り角を選択する段階と、
以下の式にしたがって、臨界接触線密度“ΛL”を決定する段階とを有し、
ここで、Pは前記所定圧力値であり、γは液体の表面張力であり、θa,0は実験測定による突出部材料に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角であり、
また、多数の微孔が形成された膜本体部分を設ける段階と、
前記膜本体部分に超撥水性表面を形成する段階とを有し、前記超撥水性表面が、多数の突出部を備える基材を含み、前記突出部が、臨界接触線密度と等しいかそれよりも高い真の接触線密度を前記面が有するように配置される方法。
【請求項15】
ナノ機械加工と、マイクロ打抜き加工と、マイクロ接触印刷法と、自己組織化金属コロイド単分子層と、原子間力顕微鏡ナノ機械加工と、ゾル・ゲル成形と、自己組織化単分子層方向性パターンニングと、化学エッチングと、ゾル・ゲル打抜き加工と、コロイドインクによる印刷を用いて、または、平行なカーボンナノチューブの層を前記基材に配置することにより、前記突出部が形成される、請求項14の方法。
【請求項16】
前記突出部についての幾何学形状を選択する段階をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項17】
前記突出部についてのアレイパターンを選択する段階をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項18】
前記突出部についての少なくとも一つの寸法を選択する段階と、接触線密度の等式を用いて前記突出部についての少なくとも一つの他の寸法を決定する段階とを含む、請求項14の方法。
【請求項19】
最低接触線密度を決定する段階をさらに含む、請求項18の方法。
【請求項20】
以下の式にしたがって臨界突出部高さ値“Zc”を決定する段階をさらに有し、
ここで、dは隣接する突出部の間のメートルでの距離であり、θa,0は表面に対する液体の真の前進接触角(度)であり、ωは突出部立上り角(度)である請求項14の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2006−524567(P2006−524567A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510089(P2006−510089)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/011683
【国際公開番号】WO2004/091747
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(506022865)インテグリス・インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/011683
【国際公開番号】WO2004/091747
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(506022865)インテグリス・インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】
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