説明

超短波を用いたプラズマCVD法及び該プラズマCVD装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、均質にして均一膜厚の大面積堆積膜の形成を高堆積速度で達成できる超短波を使用するプラズマCVD法及び該プラズマCVD法を実施するに適したプラズマCVD装置に関する。より詳細には本発明は、従来のRFプラズマCVD法において使用される周波数領域よりは高い領域の周波数を使用して比較的高い堆積速度で、電子写真感光体等の大面積を有するデバイス用の大面積堆積膜を均一膜厚で且つ均質膜質で形成することを可能にするプラズマCVD法及び該プラズマCVD法を実施するに適したプラズマCVD装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体デバイスの製造においては、いわゆるRFプラズマCVD法が繁用されている。当該RFプラズマCVD法においては、13.56MHzの高周波が電波法に基づく観点から一般的に使用されている。RFプラズマCVD法は、放電条件の制御が比較的容易であり、得られる膜の膜質が優れているといった利点を有するが、ガスの利用効率が低く、堆積膜の形成速度が比較的小さいといった問題がある。この問題を解決するについて、周波数2.45GHzのいわゆるマイクロ波を用いたマイクロ波CVD法が提案されている。マイクロ波CVD法は、ガスの利用効率が高く、堆積膜の形成速度を格段に大きくできるという利点があるものの、成膜時のプラズマ密度が極めて高くそれが故に原料ガスの分解が急激になされて膜堆積が高速で行われることから、緻密な堆積膜の形成を安定して行うのは極めて難しいという問題がある。
【0003】こうした背景から、最近13.56MHzより高い周波数の30MHz〜150MHz程度の所謂VHF領域の超短波を用いたプラズマCVD法についての検討がなされてきている。例えばPlasma Chemistry and Plasma Processing,Vol 7,No3,(1987)p267−273(以下、「文献1」という。)には、容量結合型のグロ−放電分解装置を使用して原料ガス(シランガス)を周波数25〜150MHzの超短波エネルギ−で分解してアモルファスシリコン(a−Si)膜を形成することが記載されている。具体的には、文献1には、周波数を20MHz〜150MHzの範囲で変化させてa−Si膜の形成を行い、70MHzを使用した場合、膜堆積速度が、21Å/secと最も大きくなり、これは上述のRFプラズマCVD法の場合の5〜8倍程度形成速度であること、及び得られるa−Si膜の欠陥密度、光バンドギャップ及び導電率は、励起周波数によってはあまり影響を受けないことが記載されている。しかし文献1に記載の成膜は実験室規模のものであり、大面積の膜の形成においてこうした効果が期待できるか否かについて全く触れるところはない。因に文献1には、高周波(13.56MHz〜200MHz)の使用は、数μmの厚さの要求される低コストの大面積a−Si:H薄膜デバイスの高速プロセシングに興味ある展望を開くとして、単に可能性を示唆するにとどまっている。この点は、後述する本発明者らが行った実験結果から明らかなように、所謂VHF領域の超短波エネルギ−の使用はガスの高分解効率と高堆積速度をもたらしはするものの、実用に供し得る大面積堆積膜の形成は難しいことである。また、特開平3−64466号公報(以下、「文献2」という。)には、20MHz以上(好適には30MHz〜50MHz)の超短波エネルギ−を使用して円筒状基体上にアモルファスシリコン系半導体膜を形成する方法が開示されている。具体的には、原料ガスを反応室内に導入し、該反応室を10-4〜0.2Torrのガス圧に設定し、前記原料ガスの流量に対する比率で0.1〜10w/sccmに相当する量の超短波エネルギ−を前記反応室に導入して、グロ−放電を発生させ、アモルファスシリコン系半導体膜を形成する方法が開示されている。文献2の方法によれば、成膜速度10μm/hour以上が得られ、得られる堆積膜の膜厚のムラを20%以下に小さくできるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、文献2の方法では上述した周波数領域を越える周波数の超短波エネルギ−を使用して上述した膜堆積速度の膜堆積速度を達成しようとしても満足のゆく結果は得られない。即ち、後述するように本発明者らは、周波数40MHz以上の高周波電源を用いて文献2に記載の方法を実施してみたところ、周波数60MHz以上の場合、円筒状基体の軸方向及び周方向のそれぞれについて堆積膜の膜厚にはムラが生じ、良質の膜を高堆積速度で得ることはできないことが判明した。
【0005】本発明の主たる目的は、従来技術における上述した問題点を解決し、円筒状基体の表面上に該円筒状基体の軸方向、及び周方向のいずれの方向に関しても、膜厚が極めて均一で且つ均質膜質である高品質な堆積膜を高速度で形成し得るVHF領域の高周波を使用するプラズマCVD法(以下、“VHFプラズマCVD法”という)を提供することにある。
【0006】本発明の更なる目的は、高周波電源の周波数増加に伴う高周波電力の損失を防止し、効率的にプラズマを生起し得るVHFプラズマCVD法を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、円筒状基体の周囲に設けられたカソ−ド電極が、円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割されており、該分割されたカソ−ド電極のそれぞれに高周波電力供給手段を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給して反応容器内にプラズマを生起させ円筒状基体上に堆積膜を形成するVHFプラズマCVD法を提供することにある。
【0008】本発明の更に別の目的は、円筒状基体をとり囲むカソ−ド電極が、円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割され、該分割された各カソ−ド電極のそれぞれに高周波電力供給手段を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給するようにしたプラズマCVD装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成する本発明のVHFプラズマCVD法は、次の2つの態様を包含する。即ち、本発明の第1の態様は、減圧下の反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給し、前記反応容器内に配される回転可能な円筒状基体の周囲に設けられたカソ−ド電極にVHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するVHFプラズマCVD法であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割されており、分割された前記カソ−ド電極のそれぞれに前記高周波電力供給手段を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給して前記反応容器内にプラズマを生起させ前記円筒状基体上に堆積膜を形成することを特徴とするものである。
【0010】本発明の第2の態様は、減圧下の反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給し、前記反応容器内に配される回転可能な円筒状基体の周囲に設けられたカソ−ド電極にVHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するVHFプラズマCVD法であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割されており、分割された前記カソ−ド電極のそれぞれが独立して高周波電力供給手段に接続する複数の接続点を有し、それら複数の接続点を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給して前記反応容器内にプラズマを生起させ前記円筒状基体上に堆積膜を形成することを特徴とするものである。
【0011】本発明は、上記プラズマCVD法を実施するに適したプラズマCVD装置を包含する。即ち、本発明のプラズマCVD装置は、以下の2つの態様を包含する。即ち、第1の装置態様は、減圧できる反応容器、該反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給する原料ガス供給手段、前記反応容器内に配された回転可能な基体保持手段、前記基体保持手段に配される円筒状基体をとり囲むように設けられたカソ−ド電極及びVHF帯高周波電源を有し、前記VHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して前記カソ−ド電極に供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するプラズマCVD装置であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割され、分割された各カソ−ド電極のそれぞれに前記高周波電力供給手段を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給するようにしたことを特徴とするものである。
【0012】第2の装置態様は、減圧できる反応容器、該反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給する原料ガス供給手段、前記反応容器内に配された基体保持手段、前記基体保持手段に配される円筒状基体をとり囲むように設けられたカソ−ド電極及びVHF帯高周波電源を有し、前記VHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して前記カソ−ド電極に供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するプラズマCVD装置であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割され、分割された各カソ−ド電極のそれぞれが独立して高周波電力供給手段に電気的に接続する複数の接続点を有し、それら複数の接続点を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を各カソ−ド電極に供給するようにしたことを特徴とするものである。
【0013】本発明によれば、円筒状基体の表面上に該円筒状基体の軸方向、及び周方向のいずれの方向に関しても、膜厚及び膜質が極めて均一である高品質の堆積膜を高堆積速度で安定して形成することができる。一般に成膜に使用する高周波電力についてその周波数を増大する場合、その増大に伴って当該高周波エネルギ−の損失が増大するが、本発明においてはかなり大きい周波数領域の超短波エネルギ−を使用するにも拘らず、そうしたエネルギ−損失は極めて少なく、効率的に原料ガスが分解されて所望のプラズマが生起するので所望の堆積膜を高速度で形成することができる。
【0014】本発明者らは、従来のVHFプラズマCVD技術における上述した問題を解決し、上述した本発明の目的を達成すべく下述する実験を行った。本発明は、該実験を介して得られた後述する知見に基づいて完成したものである。
【0015】(実験−1)上述した文献2(特開平3−64466号公報)に記載された技術に基づいて実験を行った。即ち、種々の周波数の高周波電源を用いて複数のアモルファスシリコン膜を感光層とする電子写真感光体を作製した。それぞれの電子写真感光体の作製において高周波電源の周波数が堆積膜の膜厚のムラ、成膜速度に及ぼす影響について観察した。また、得られた電子写真感光体の特性について観察した。それぞれの電子写真感光体は、図1に示すプラズCVD装置を共用して作製した。図1において、100は反応容器を示す。反応容器100は、ベ−スプレ−ト101と、該ベ−スプレ−ト101上に配された円筒状の絶縁部材102A、円筒状(内径208mm、長さ400mm)のカソ−ド電極103、及び円筒状の絶縁部材102Bからなる。115は反応容器100の上蓋である。105Aは基体ホルダ−であり、該基体ホルダ−は内部にヒ−タ−支柱105A’を有している。105A”は、ヒ−タ−支柱105A’取りつけられた基体加熱用ヒ−タ−である。106は、基体ホルダ−105A上に配設された円筒状基体である。105Bは円筒状基体106の補助保持部材である。基体ホルダ−105Aは、その内部にモ−タ−に連結した回転機構(図示せず)を備えていて、必要により回転できるようにされている。107は、排気バルブを備えた排気パイプであり、該排気パイプは、真空ポンプを備えた排気機構107’に連通している。108は、ガスボンベ、マスフロ−コントロ−ラ−、バルブ等で構成された原料ガス供給系である。原料ガス供給系108は、ガス供給パイプ117を介して複数のガス放出孔を備えたガス放出パイプ116と接続している。原料ガスはガス放出パイプ116の複数のガス放出孔を介して反応容器内に供給される。111は高周波電源である。高周波電源111からの高周波電力は高周波電力供給線118及び整合回路109を介してカソ−ド電極103に供給される。104はシ−ルド壁である。
【0016】本実験では、直径108mm、長さ358mm、厚さ5mmのAl製円筒状基体を18本用意した。図1に示したプラズマCVD装置を使用し、それぞれのAl製基体上に第1表及び第2表に示す条件で、電荷注入阻止層、光導電層及び表面保護層をこの順序で形成し、電子写真用感光体を作製した。この手法で18個の電子写真感光体(試料No.1a,2a,2b,3a,3b,4a,4b,5a,5b,6a,6b,7a,7b,8a,8b,9a,9b及び10a)を作製した。これら電子写真感光体試料の中、“a”の記号を付したものは、成膜時円筒状基体を回転させたものであり、“b”の記号を付したものは、成膜時円筒状基体を回転させなかったものである。Al製円筒状基体106を基体ホルダ−105A上に配置した後、反応容器100内を排気機構107’を作動して排気し、反応容器100内を1×10−6Torrの圧力に調整した。ついで、ヒ−タ−105”に通電して円筒状基体106を250℃の温度に加熱保持した。ついで第1表の電荷注入阻止層の欄に示す条件で電荷注入阻止層の形成を行った。即ち、原料ガス供給手段108からがガス供給パイプ117及びガス放出パイプ116を介して、SiHガス、Hガス、NOガス、Bガスをそれぞれ、500sccm、10sccm、10sccm、2000ppmの流量で反応容器内に導入し、該反応容器内を50mTorr或は500mTorrの圧力に調整した。こうしたところで、高周波電源111により第2表に示す周波数13.56MHz乃至350MHzの高周波を発生させ、該高周波を高周波電力供給線118及び整合回路109を介してカソ−ド電極103に供給した。ここで高周波電源111としては上述した範囲の周波数が与えられるよう、所定の高周波電源を用いた。整合回路109は、当該高周波電源の周波数に応じて適宜調整した。かくして円筒状基体106とカソ−ド電極103で囲まれた空間において、上記原料ガスは高周波エネルギ−により励起されて分解し、円筒状基体106上に電荷注入阻止層としてのアモルファスシリコン膜(a−Si:H:N:O:B膜)が約1μmの厚みで形成された。次いで同様の手法で第1表の光導電層の欄に示す条件で約25μm厚のa−Si:H膜からなる光導電層を形成し、引き続いて第1表の表面保護層の欄に示す条件で約1μm厚のa−SiC:H膜からなる表面保護層を形成し、電子写真感光体を作製した。上記成膜操作は、第2表に示すように、それぞれの電子写真感光体試料に対応して周波数及び成膜時の反応容器内圧を変えて繰り返し行った。また符号“a”を付した試料の作製においては回転機構を作動させて、円筒状基体を回転させた。符号“b”を付した試料の作製においては、円筒状基体の回転は行わなかった。
【0017】また、試料2a,2b,3a,3b,4a,4b,5a,5b,6a,6b,7a,7b,8a,8b,9a,及び9bのそれぞれについては、2つの試料を作製した。これら試料の一方は膜厚分布の評価に使用し、他の試料は電子写真特性の評価に使用した。
【0018】周波数13.56MHzを使用した試料1aの成膜においては、50mTorrの成膜時圧力では放電が断続的に生起し成膜は行えなかった。こうしたことから試料2a及び2bの場合、成膜時圧力を500mTorrとして成膜を行った。試料2a,2b乃至試料9a,9bについては第1表に示した条件で成膜がなされた。試料10aの成膜においては、試料1aの場合と同様で放電が断続的に生起し成膜は行えなかった。試料2a,2b乃至試料9a,9bの各々については、基体106の軸方向に33mmおきに線を引き、周方向に32mmおきに線を引いた場合の交点100箇所について渦電流式膜厚計(Kett科学研究所製)を使用して膜厚を測定し、膜厚のの分布状態を評価した。ここで膜厚の分布状態の評価は、次のようにして行った。即ち、軸方向の膜厚分布については、軸方向1列の測定点10箇所における膜厚の最大値と最小値との差を求め、該差を10箇所の平均膜厚値で割り、1列あたりの膜厚分布{(最大値−最小値)/平均値}を求めた。ついで他の9列についても同様に1列あたりの膜厚分布を求め、得られた10列の膜厚分布の平均値を算出し、これを軸方向の膜厚分布(即ち、膜厚ムラ)として百分率で第3表に示した。周方向の膜厚分布については、周方向1行の測定点10箇所における膜厚の最大値と最小値との差を求め、該差を10箇所の平均膜厚値で割り、1行あたりの膜厚分布{(最大値−最小値)/平均値}を求めた。ついで他の9行についても同様に1行あたりの膜厚分布を求めた。得られた10行の膜厚分布の平均を周方向の膜厚分布(即ち、膜厚として百分率で示した。成膜速度については、膜厚分布の値が20%を越えるものについては、算出をしなかった。膜厚分布(膜厚ムラ)の値が20%以下のものについては、100箇所における膜厚に基づいて算出し、得られた値の平均値を成膜速度として第3表に示した。更に、試料2a,2b乃至試料9a,9bについては、これら試料を電子写真複写装置(キヤノン(株)製NP6060を実験用に改造したもの)に搭載し、帯電能、得られる画像について評価した。得られた結果を第3表に示す。この際のそれぞれの評価項目についての評価は以下の基準で行った。
【0019】帯電能評価:試料を電子写真複写装置に搭載し、帯電器に+6KVの電圧を印加してコロナ帯電を行い、表面電位計により、試料表面の暗部表面電位を測定した。この際の測定は、上述した膜厚分布の評価の場合と同様にして、計100箇所について行い、得られて測定結果から平均値を求め、該平均値から最も離れた値を下記の基準で評価した。
◎:10V以下であり、非常に優れた均一性である。
:20V以下であり、良好な均一性である。
△:30V以下であり、実用上問題なし。
×:30Vを越える場合であり、均一性に劣っていて高速の複写装置に用いる場合には、不十分である。
【0020】画像評価:全面ハ−フト−ンの原稿(キヤノン(株)製ハ−フト−ンテストチャ−トFY9−9042)を原稿台に置き、画像形成を行って画像サンプルを得、得られた画像について以下の評価基準で評価した。
◎:濃度むらはなく優れた画像である。
:僅かに濃度むらはあるものの良好な画像である。
△:全体に濃度むらはあるものの採用に価する画像である。
×:濃度むらが著しく採用に価しない画像である。
【0021】以上の実験より、以下のことが判明した。即ち、(i)基体を回転させて成膜を行った場合、軸方向の膜厚ムラは電源周波数を40MHzよりも大きくすると周波数に依存して大きくなるが、周方向の膜厚ムラは電源周波数に依存せずに小さく抑えられる;(ii)基体を回転させずに成膜を行った場合、軸方向の膜厚ムラ及び周方向の膜厚ムラとも電源周波数を40MHzよりも大きくすると周波数に依存して大きくなる;(iii) 基体を回転させるか否かにかかわらず、電源周波数が40MHzを越えると得られる電子写真用感光体の画像特性は悪化する。
【0022】(実験−2)本実験は実験−1で得られた結果に鑑みて、使用する高周波電力の周波数を40MHzよりも大にした場合であっても、成膜される堆積膜に膜厚むらが生ぜず、該堆積膜からなる電子写真用感光体が帯電能及び複写画像について満足のゆくものとなる可能性を見極める観点で行った。本実験では、実験−1で使用したプラズマCVD装置においてカソ−ド電極に高周波電力を供給する高周波電力供給線とカソ−ド電極との接点を複数にし、該複数の接点よりカソ−ド電極に電力が供給されるように変更したプラズマCVD装置を用いて成膜を行った。本実験で用いたプラズマCVD装置は、図2に示す構成のものである。図2に示したプラズマCVD装置は、高周波電源118で発生した高周波電力をカソ−ド電極103に供給する高周電力供給線118が整合回路109よりもカソ−ド電極103側で118Aと118aの2つに分岐しており、118Aとカソ−ド電極103との接点及び118aとカソ−ド電極103との接点の2箇所よりカソ−ド電極103に電力が供給されるようにした以外は図1に示したプラズマCVD装置と同じ構成である。図1のプラズマCVD装置と同一の構成部分については説明を省略する。なお、高周電力供給線118Aとカソ−ド電極103との接点及び高周電力供給線118aとカソ−ド電極103との接点は円筒状基体106を中心としてそれぞれ対称となる位置に設けた。本実験では、実験−1で作製した試料2a、2b乃至9a、9bの作製条件と同様の条件で試料の作製を行い、試料12a、12b乃至19a、19bを得、これら試料について実験−1と同様の評価を行った。得られた結果を第4表に示す。
【0023】第4表に示した結果から以下の事実が判明した。
【0024】即ち、(i)カソ−ド電極への電力の供給を複数の点より行なうことにより基体の周方向の膜厚ムラは低く抑えられる;(ii)カソ−ド電極への電力の供給を複数の接続点より行なうことで、電力供給を1点より行う場合(第3表)に比べて軸方向の膜厚ムラは若干抑制されるが、基体を回転させるか否かに係わらず、電源周波数が40MHzを越えると軸方向の膜厚ムラは電源周波数に依存して大きくなる;(iii) 基体を回転させるか否かに係わらず、電源周波数100MHz以上で作製した電子写真感光体の画像特性は十分なものではない。
【0025】(実験−3)上述の実験−1、及び実験−2の結果に鑑みて、40MHzを越える周波数の高周波電源を用いた際に、円筒状基体の軸方向の膜厚のムラが大きくなる原因について本実験では検討した。本発明者らは、実験−1及び実験−2のそれぞれで使用したプラズマCVD装置において、円筒状基体の軸方向の膜厚のムラが大きくなる原因について次のように推測した。即ち、高周波電源よりカソード電極に供給される高周波電力は、所謂表皮効果よ(skin effect) り、カソード電極表面から薄い部分を介して供給されるため、カソード電極近傍部分のみを介して供給され、カソ−ド電極の表面から深い部分は通らない。そして、高周波電源の周波数が大きくなると表皮効果は顕著となり、高周波電力は電極表面に極近の極めて薄い部分のみを通る。この場合、カソード電極の抵抗が大きくなり、高周波電力は更に伝わりづらくなる。この点は、当該技術分野において周知である。実験−1及び実験−2で使用したプラズマCVD装置においては、高周波電力供給線118が接続された円筒状カソ−ド電極103の外周部より該電極の表面づたいに内周部に電力は供給される。そして供給される高周波電力が周波数が大きいものである場合には、それが円筒状基体106と対面する円筒状カソ−ド電極103の内周中央部に到達する前に、該電力は円筒状基体106の上端部あるいは下端部の近傍で放電生起エネルギ−として使用されてしまう。したがって、円筒状基体の両端部近傍と中心部とではプラズマ密度に差が生じ、そのプラズマ密度の差が軸方向の膜厚ムラの原因となると考えられる。そこで本実験では、図1のプラズマCVD装置にプラズマ密度測定用のプロ−ブ130を配した図3R>3に示したプラズマCVD装置を用いて、円筒状基体106と円筒状カソ−ド電極103とで囲まれる放電空間のプラズマ密度を種々の位置で測定した。図3において、131は、シ−ルフランジである。130はプロ−ブであり、上下方向に移動可能に設計されている。プラズマ密度(電子密度Ne )は、シングルプロ−ブ法を用いて熱拡散電子電流Ie0及び電子温度Te を求め、次式により算出した。下記の式中のSはプロ−ブの表面積を示す。
【0026】
e =3.73×1011×Ie0÷S÷Te1/2本実験においては、周波数40MHz及び100MHzの高周波電源を用い、周波数がプラズマ密度に与える影響について検討した。具体的には実験−1における試料3a(周波数40MHz)及び試料5a(周波数100MHz)と同様の条件で第1表に示される光導電層の形成を行い、該光導電層形成の間に、プロ−ブ130を上下に移動させ、円筒状基体106とカソ−ド電極103で囲まれた放電空間のプラズマ密度を測定した。プロ−ブの位置とプラズマ密度との関係を、図4及び図5にプロットして示す。図4及び図5においては、基体ホルダ−105Aを基準として、高さ358mmの円筒状基体106の1/2の高さの位置をゼロとし、これよりも上方をプラス、下方をマイナスにしている。図4から明らかなように周波数40MHzの高周波電源を使用した場合には、円筒状基体106が配された358mm以上の範囲にわたって、比較的均一なプラズマ密度が得られていることが判る。これに対し、図5から明らかなように、周波数100MHzの高周波電源を使用した場合には、円筒状基体106が配された358mmの範囲内で、プラズマ密度にかなりの差が生じており、円筒状基体106の高さ1/2の位置(即ち、ゼロの位置)付近でプラズマ密度は最も小さくなっており、基体端部に向かうにつれてプラズマ密度は大きくなっていることが判る。上記周波数40MHzの高周波電力を使用して形成された円筒状基体106上のシリコン膜と、上記周波数100MHzの高周波電力を使用して形成された円筒状基体上のシリコン膜のそれぞれについて膜厚分布を実験−1におけると同様の手法で調べたところ、前者のシリコン膜は図4に示したプラズマ密度分布に依存していて比較的均一の膜厚分布であることが判った。また、後者のシリコン膜は、第5に示したプラズマ密度分布に依存していて不均一の膜厚分布であることが判った。
【0027】(実験−4)実験−3の結果に鑑み、本実験では表皮効果の影響が少なく、円筒状基体106と円筒状カソ−ド電極103とで囲まれる放電空間におけるプラズマ密度のバラツキが小さいプラズマCVD装置を別途用いて検討を行った。本実験では、カソ−ド電極を円筒状基体の軸方向に電気的に複数に分割し、分割された各々のカソ−ド電極に高周波電力を供給できるプラズマCVD装置を作製し、該装置を用いて円筒状基体106と円筒状カソ−ド電極103とで囲まれる放電空間のプラズマ密度を測定した。本実験で用いたプラズマCVDは、図6に示す構成のものである。図6に示したプラズマCVD装置は図3に示したプラズマCVD装置を一部改造したものである。図6に示したプラズマCVD装置は、カソ−ド電極が円筒状基体の軸方向に103A(高さ75mm)、103B(高さ230mm)、103C(高さ75mm)の3つに電気的に分割されて構成されている。カソ−ド電極103Aとカソ−ド電極103Bとの間、及びカソ−ド電極103Bとカソ−ド電極103Cとの間には高さ10mmの絶縁部材121Aと絶縁部材121Bとが配されている。120は高周波電力分配器である。109A、109B、109Cは整合回路である。高周波電源111で発生した高周波電力は、高周波電力分割手段120により3分割され、整合回路109A、109B、109Cを介して、カソ−ド電極109A、109B、109Cに供給される。ここではカソ−ド電極の単位面積あたりの電力供給量が、3つのカソ−ド電極でほぼ等しくなるように電力を配分した。その他の構成は図3に示したプラズマ処理装置と同様である。本実験においては、図6に示したプラズマ処理装置に周波数40MHz及び100MHzの高周波電源を接続して、実験−3と同様の成膜を行い、実験−3と同様にしてプラズマ密度を測定した。なお、光導電層の形成に際しては、カソ−ド電極103A及び103Cにそれぞれ200Wを供給し、カソ−ド電極103Bには600Wを供給した。プロ−ブの位置とプラズマ密度との関係を、図7及び図8にプロットして示す。図7及び図8から明らかなように、周波数40MHzの高周波電源を使用した場合及び周波数100MHzの高周波電源を使用した場合のいずれにあっても、円筒状基体106が配された358mm以上の範囲にわたって、プラズマ密度は、ほぼ均一であることが判る。しかしながら、周波数40MHzと周波数100MHzとではプラズマ密度の値については、周波数100MHzを使用した場合のほうが大きいことが判る。以上のことから、以下のことが判明した。即ち、高周波電源の周波数を100MHzとした場合であっても、カソ−ド電極を円筒状基体の軸方向に複数に分割することにより、該軸方向についてのプラズマ密度を均一化することができる。
【0028】(実験−5)上述の実験−4の結果に鑑みて、カソ−ド電極を円筒状基体の軸方向に複数に分割したプラズマCVD装置を使用して、電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体について特性を調べた。本実験では図9に示したプラズマCVD装置を使用した。図9に示したプラズマ処理装置は、図6に示したプラズマ処理装置からプラズマ密度測定用のプロ−ブ130とシ−ルフランジ131を取り除いたものである。本実験では、図9に示したプラズマ処理装置に接続する高周波電源の周波数を、種々変化させるとともに、高周波電源111で発生した高周波電力を高周波電力分配器120により3分割し、整合回路109A、109B、109Cを介して、カソ−ド電極109A、109B、109Cに供給して成膜を行った。具体的には、実験−1で作製した試料2a、2b乃至9a、9bの作製条件と同様の条件で電子写真感光体試料の作製を行ない、試料22a、22b乃至29a、29bを得た。これに加えて、周波数350MHzの高周波電源を使用した以外の成膜条件を他の試料と同一とし、基体を回転させたものとして30a、及び基体を回転させなかったものとして30bを得た。これら試料について実験−1と同様の評価を行った。得られた結果について第5表にまとめて示す。なお、周波数350MHzの高周波電源を使用した試料30a及び30bの成膜においては、時々、異常放電が生じ安定した成膜は行い得なかった。
【0029】第5表に示した結果から以下のことが判明した。即ち、(i)カソ−ド電極を円筒状基体の軸方向に複数に分割し、該分割されたカソ−ド電極のそれぞれに電力を供給して成膜を行なうと、周波数60MHz以上の高周波電源を使用した場合であっても、円筒状基体の軸方向の膜厚ムラを低く抑えることができる;(ii)円筒状基体を回転させながら成膜を行ない、周波数60MHz以上300MHz以下の高周波電源を使用した場合には、40μm以上の大きな成膜速度で、電子写真特性に優れた堆積膜を形成することができる;(iii) 円筒状基体を回転させながら成膜を行うと周波数200MHzの高周波電源を使用した場合に成膜速度は最大となり、更に周波数を上げると成膜速度が低下するのと共に、膜厚ムラも大きくなる;(iv)円筒状基体を回転させずに成膜を行なうと周波数60MHz以上の高周波電源を使用した場合には、円筒状基体の周方向の膜厚ムラが大きなものとなり、電子写真特性に優れた堆積膜を形成することはできない。
【0030】(実験−6)上述の実験−5より、周波数60MHz以上の高周波電源を使用し、円筒状基体を回転させながら成膜を行うことで電子写真特性に優れた堆積膜を形成することができることが判明したが、本実験では円筒状基体を回転させない場合であっても、電子写真特性に優れた堆積膜の形成が可能であるか否かについて検討を行った。本実験では上述の実験−2で得られたカソ−ド電極への電力の供給を複数の点より行った場合に、円筒状基体の周方向の膜厚ムラが低く抑えられるとの知見に鑑み、カソ−ド電極を円筒状基体の軸方向に複数に分割するとともに、該分割されたカソ−ド電極のそれぞれに複数の点より電力の供給を行うプラズマ処理装置を作製し成膜を行った。本実験で使用したプラズマ処理装置は、図10に示す構成のものであり、この装置は図9に示した装置を一部改造したものである。図10に示したプラズマ処理装置は、整合回路109A、109B、109Cより、カソ−ド電極109A、109B、109Cのそれぞれ電力を供給する高周波電力供給線118A、118B、118Cを、それぞれ118A,118a、118B,118b、118C,118cに分岐させ、それぞれのカソ−ド電極に2箇所の点より電力の供給を行い得るようにした以外は図9に示す装置と同じ構成である。なお、高周波電力供給線118Aとカソ−ド電極103Aとの接点及び高周波電力供給線118aとカソ−ド電極103Aとの接点は、円筒状基体106を中心として対称となる位置に設けた。他の電力供給線と他のカソ−ド電極についてもこれと同様とした。本実験では、図10に示したプラズマ処理装置を使用して、実験−1で作製した試料2a、2b乃至9a、9bの作製条件と同様の条件で電子写真感光体試料の作製を行ない、試料32a、32b乃至39a、39bを得た。これに加えて、周波数350MHzの高周波電源を使用した以外の成膜条件を他の試料と同一とし、基体を回転させたものとして40a、及び基体を回転させなかったものとして40bを得た。これら試料について実験−1と同様の評価を行った。得られた結果について第6表にまとめて示す。
【0031】第6表に示された結果より以下のことが判明した。即ち、(i)カソ−ド電極を円筒状基体の軸方向に複数に分割するとともに、該分割されたカソ−ド電極のそれぞれに、複数の点より電力の供給を行ないながら成膜を行うことで、円筒状基体を回転させない場合であっても円筒状基体の周方向の膜厚ムラを低く抑えることができる;(ii)基体を回転させない場合であっても、周波数60MHz以上300MHz以下の高周波電源を使用することで、40μm以上の大きな成膜速度で、且つ電子写真特性に優れた堆積膜を形成することができる;(iii) 周波数が300MHzを越えると軸方向の膜厚ムラは増加し、それに伴い得られる電子写真感光体の電子写真特性は悪化する;(iV)成膜速度と電子写真特性の観点から周波数の領域を検討すると好ましい周波数領域は、100MHz〜250MHz、最適には100MHz〜200MHzの範囲である。
【0032】(実験−7)上述の実験−4乃至実験−6より、カソ−ド電極を円筒状基体の軸方向に複数に分割し、該分割されたカソ−ド電極のそれぞれに電力を供給して成膜を行なうと、周波数60MHz以上の高周波電源を使用した場合であっても、円筒状基体の軸方向の膜厚ムラを低く抑えることができ、電子写真特性に優れた堆積膜を高成膜速度で形成できることが確認された。本実験ではカソ−ド電極を分割するのに、如何に分割するのが好ましいかについて検討した。本実験では、まず、一般的に多く使用されている周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、この周波数の電源を使用するとカソ−ド電極が如何なる長さまで、円筒状基体とカソ−ド電極との間に均一なプラズマ密度が得られるかについて検討した。具体的には図3に示したプラズマ密度測定用のプラズマ処理装置を以下の2つの場合に対応する装置に変更し、円筒状基体106とカソ−ド電極103で囲まれた領域のプラズマ密度を測定した。
(1)長さ800mm、内径208mmのカソ−ド電極103及び長さ800mm、直径108mmのAl製円筒状基体を用いる場合;及び(2)長さ1000mm、内径208mmのカソ−ド電極103及び長さ1000mm、直径108mmのAl製円筒状基体を用いる場合。
【0033】上記(1)及び(2)の場合のそれぞれについて、周波数13.56MHzの高周波電源を使用し、上記大きさのカソ−ド電極及び円筒状基体に対応したプラズマ密度測定用プロ−ブを使用した以外、実験−3で述べたのと同様にして、円筒状基体の軸方向についてのプラズマ密度を測定した。上記(1)の場合に得られた結果を図11に、そして上記(2)のばあいに得られた結果を図12にそれぞれグラフ化して示す。図11及び図12に示された結果より、次のことが判明した。即ち、カソ−ド電極の長さが800mmまでは、該カソ−ド電極の長手方向の全域にわたって、均一なプラズマ密度が得られているのに対し、カソ−ド電極の長さを1000mmとすると、電極の中央部付近で、プラズマ密度が低くなり、均一なプラズマ密度が得られていない。そこで、カソ−ド電極の長さ800mmを基準として以下の考察を行った。
【0034】カソ−ド電極が、半径a、長さlの円筒状電極である場合、インダクタンスLは、次式で示される。
L=μ0 /2π×[l・ln〔{1+(a2 +l21/2 }/a〕−{(a2 +l21/2 }−a]
(ここで、μ0 は真空の透磁率である)
この式を用いて、直径が208mmのカソ−ド電極について、カソ−ド電極長に対する各周波数のインピ−ダンスZ(Z=ωL)を求めた。周波数13.56MHz、カソ−ド電極長800mmの場合のインピ−ダンスを1.0として周波数とカソ−ド長を変化させた場合のインピ−ダンスの比をグラフ化して図13に示す。図13より、インピ−ダンスの比が1.0以下となるのは、次の場合であることが判った。
【0035】
周波数 60MHz:電極長0.33m以下周波数100MHz:電極長0.25m以下周波数200MHz:電極長0.17m以下周波数300MHz:電極長0.14m以下
【0036】従って、使用する高周波電源の周波数に応じて、分割されたカソ−ド電極の長さを上述の範囲とすれば、円筒状基体とカソ−ド電極との間にプラズマ密度の均一なプラズマを形成できることが判明した。
【0037】本発明は、上述の実験−1乃至実験−6の結果を介して完成に至ったものである。本発明は、VHFプラズマCVD法と該プラズマCVD法を実施するに適したプラズマCVD装置を包含する。本発明のVHFプラズマCVD法は次の2つの態様を包含する。即ち、本発明の第1の方法態様は、減圧下の反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給し、前記反応容器内に配される回転可能な円筒状基体の周囲に設けられたカソ−ド電極にVHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するVHFプラズマCVD法であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割されており、分割された前記カソ−ド電極のそれぞれに前記高周波電力供給手段を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給して前記反応容器内にプラズマを生起させ前記円筒状基体上に堆積膜を形成することを特徴とするものである。
【0038】本発明の第2の方法態様は、減圧下の反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給し、前記反応容器内に配される回転可能な円筒状基体の周囲に設けられたカソ−ド電極にVHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するVHFプラズマCVD法であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割されており、該分割されたカソ−ド電極のそれぞれが独立して高周波電力供給手段に接続する複数の接続点を有し、それら複数の接続点を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給して前記反応容器内にプラズマを生起させ前記円筒状基体上に堆積膜を形成することを特徴とするものである。本発明のプラズマCVD装置は、以下の2つの態様を包含する。即ち、第1の装置態様は、減圧できる反応容器、該反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給する原料ガス供給手段、前記反応容器内に配された回転可能な基体保持手段、前記基体保持手段に配される円筒状基体をとり囲むように設けられたカソ−ド電極及びVHF帯高周波電源を有し、前記VHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して前記カソ−ド電極に供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するプラズマCVD装置であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割され、分割された各カソ−ド電極のそれぞれに前記高周波電力供給手段を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給するようにしたことを特徴とするものである。
【0039】第2の装置態様は、減圧できる反応容器、該反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給する原料ガス供給手段、前記反応容器内に配された基体保持手段、前記基体保持手段に配される円筒状基体をとり囲むように設けられたカソ−ド電極及びVHF帯高周波電源を有し、前記VHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して前記カソ−ド電極に供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するプラズマCVD装置であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割され、分割された各カソ−ド電極のそれぞれが独立して高周波電力供給手段に電気的に接続する複数の接続点を有し、それら複数の接続点を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を各カソ−ド電極に供給するようにしたことを特徴とするものである。
【0040】上述した構成の本発明のプラズマCVD法及びプラズマCVD装置によれば、円筒状基体の表面上に該円筒状基体の軸方向、及び周方向のいずれの方向に関しても、極めて膜厚が均一で膜質が高品質な堆積膜を安定して形成することができる。そして特に電子写真特性に優れた堆積膜を安定して形成することができる。更には、高周波電源の周波数増加に伴う高周波電力の損失を防止し、効率的にプラズマを生起し得るので堆積膜を高速度で形成することができる。
【0041】以下、図面を参照しながら本発明を説明する。図9に示したプラズマCVD装置は本発明装置の第1態様の1例を示すものである。図9に示したプラズマCVD装置は次のように構成されている。図9において、100は反応容器を示す。反応容器100は、ベ−スプレ−ト101と、絶縁部材102A、カソ−ド電極103C、絶縁部材121B、カソ−ド電極103B、絶縁部材121A、カソ−ド電極103A、絶縁部材102B及び上蓋115から構成されている。105Aは基体ホルダ−であり、該基体ホルダ−は内部にヒ−タ−支柱105A’を有している。105A”は、ヒ−タ−支柱105A’に取りつけられた基体加熱用ヒ−タ−である。106は、基体ホルダ−105A上に配設された円筒状基体である。105Bは円筒状基体106の補助保持部材である。基体ホルダ−105Aは、その低部にモ−タ−に連結した回転機構(図示せず)を備えていて、必要により回転できるようにされている。107は、排気バルブを備えた排気パイプであり、該排気パイプは、真空ポンプを備えた排気機構107’に連通している。108は、ガスボンベ、マスフロ−コントロ−ラ−、バルブ等で構成された原料ガス供給系である。原料ガス供給系108は、ガス供給パイプ117を介して複数のガス放出孔を備えたガス放出パイプ116と接続している。原料ガスはガス放出パイプ116の複数のガス放出孔を介して反応容器内に供給される。111は高周波電源であり、ここで発生した高周波電力は高周波電力供給線118及び整合回路109を介してカソ−ド電極103に供給される。図9に示したプラズマCVD装置においては、カソ−ド電極が円筒状基体の軸方向に103A、103B、103Cの3つに電気的に分割されて構成されている。高周波電源111で発生した高周波電力は、高周波電力分割手段120により3分割され、整合回路109A、109B、109Cを介して、カソ−ド電極109A、109B、109Cに供給される。104はシ−ルド壁である。
【0042】本発明のプラズマCVD装置において、円筒状カソ−ド電極を電気的に複数に分割する分割長さは、カソ−ド電極の径、使用する高周波電源の周波数によって異なる。例えば電極の内径が208mmの場合、分割されたカソ−ドの長さは、周波数60MHzでは330mm以下、周波数100MHzでは250mm以下、周波数200MHzでは170mm以下、周波数300MHzでは140mm以下とするのが望ましい。電極の分割個数は円筒状基体の大きさによって異なるが、内径208mm、長さ358mmの円筒状基体を用いる場合、周波数周波数60MHzでは2分割以上、周波数100MHzでは2分割以上、周波数200MHzでは3分割以上、周波数300MHzでは3分割以上が望ましい。前記円筒状基体を複数個重ねて堆積膜を形成する場合には、重ねた基体の全長を、上述の分割されたカソ−ドの長さの最大値で割った値を小数点第1位にて切り上げ、整数値とした値以上の分割数とするのが望ましい。図9に示したプラズマCVD装置においては、高周波電源111で発生させた高周波電力を電力分配器120により分配して、カソ−ド電極に供給するが、図14に示されるように、電力分配器を設けずに複数の高周波電源111A、111B、111Cを設けることも可能である。
【0043】図10は、本発明のプラズマCVD装置の第2の態様の1例を示すものである。図10に示したプラズマCVD装置は、整合回路109A、109B、109Cより、カソ−ド電極109A、109B、109Cにそれぞれ電力を供給する高周波電力供給線118A、118B、118Cを、それぞれ118A,118a、118B,118b、118C,118cに分岐させ、それぞれのカソ−ド電極に2箇所の点より電力が供給されるように構成した以外は図9に示す装置と同じ構成である。図10に示したプラズマCVD装置をX−Xの位置で切断した断面図が図15である。図15においては電力分配器を省略したが整合回路109Aを経た後、分岐した電力供給線118A及び電力供給線118aは、それぞれ150A、150aでカソ−ド電極103Aに接続している。カソ−ド電極への接続点は図16に示すように、150D、150E、150Fの3点とすることもできるし、図17に示すように、150D、150E、150F、150Gの4点とすることもできる。接続点数については、2点以上が望ましく、使用するカソ−ド電極の径に応じて適宜増やすのが望ましい。接続点は、カソ−ド電極を中心として互いに点対称の位置に設けるのが望ましい。
【0044】本発明のプラズマCVD法は次のようにして行われる。図9に示したプラズマCVD装置を使用した例について説明する。円筒状基体106を基体ホルダ−105Aにセットした後、反応容器100内を排気機構107’を作動させて排気し、反応容器100内を所望の圧力に減圧する。ついで、ヒ−タ−105A”に通電して基体106を所望の温度に加熱保持する。次に、原料ガス供給系108からガス供給パイプ117及びガス放出パイプ116を介して、原料ガスを反応容器100内に導入し、該反応容器内を所望の圧力に調整する。こうしたところで、高周波電源111により周波数60MHz乃至300MHzの高周波を発生させ、高周波電力を高周波電力分配器120で分割し、整合回路109A、109B、109Cを介して、それぞれカソ−ド電極103A、103B、103Cに供給する。かくして円筒状基体106とカソ−ド電極で囲まれた空間において、原料ガスは高周波エネルギ−により分解され活性種を生起し、円筒状基体106上に堆積膜の形成をもたらす。
【0045】本発明において分割されたそれぞれのカソ−ド電極に供給する電力は、それぞれのカソ−ド電極について、電極の単位面積あたりの電力量が等しくなるようにするのが望ましいが、単位面積あたりの電力量を異ならせることもできる。具体的な電力は、プラズマを生起できる電力であればいずれの電力でも採用できるが、好ましくは0.001W/cm2 〜10W/cm2 、より好ましくは0.01W/cm2 〜5W/cm2 とするのが望ましい。
【0046】本発明において、高周波電源の周波数は、好ましくは60MHz〜300MHz、より好ましくは100MHz〜250MHz、最適には100MHz〜200MHzの範囲とするのが、成膜速度及び膜質を考慮すると望ましい。
【0047】本発明の方法を実施するに際して、使用するガスについては、公知の物を適宜選択し得る。例えば、a−Si系の機能性堆積膜を形成する場合であれば、シラン、ジシラン、高次シラン等あるいはそれらの混合ガスが好ましい原料ガスとして挙げらる。他の機能性堆積膜を形成する場合であれば、例えば、ゲルマン、メタン、エチレン等の原料ガスまたはそれらの混合ガスが挙げられる。
【0048】キャリアーガスを用いて原料ガスを供給する場合に使用するキャリアーガスとしては、水素あるいは、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。
【0049】堆積膜のバンドギャップ幅を変化させる等の特性改善用ガスとしては、例えば、窒素、アンモニア等の窒素原子を含むガス、酸素、酸化窒素、酸化二窒素等の酸素原子を含むガス、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン等の炭化水素ガス、四フッ化珪素、六フッ化二珪素、四フッ化ゲルマニウム等のガス状フッ素化合物またはこれらの混合ガス等が挙げられる。
【0050】ドーピングを目的としたドーパントガスとしては、例えば、ジボラン、フッ化ホウ素、ホスフィン、フッ化リン等が挙げられる。
【0051】成膜時の反応容器内圧力は、プラズマ生成がなされる圧力であれば、いずれの圧力でもよいが、a−Si膜を形成する場合には、好ましくは5Torr以下、より好ましくは0.1mTorr〜3Torr、最適には0.3mTorr〜500mTorrとするのが望ましい。
【0052】堆積膜形成時の基体温度は、適宜設定できるが、アモルファスシリコン系の堆積膜を形成する場合には、好ましくは20℃〜500℃、より好ましくは50℃〜450℃とするのが望ましい。
【0053】
【実施例】以下に具体的に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0054】(実施例1)図9に示した装置の高周波電源111として周波数100MHzの電源を接続した装置を使用し、上述した実験−5におけると同様の成膜手順で第7表に示した条件下で成膜を行って、基体上にアモルファスシリコン膜を堆積させ、電子写真感光体を作製した。
【0055】基体106として、直径108mm、長さ358mmのAl製円筒状基体を用いた。成膜は次のように行った。即ち、Al製円筒状基体106を基体ホルダ−105Aにセットした後、反応容器100内を排気機構107’を用いて排気し、反応容器100内を1×10-6Torrの圧力に調整した。ついで、基体106を回転させると共に、ヒ−タ−105A”に通電して基体106を250℃の温度に加熱保持した。次に、原料ガス供給系108からがガス供給パイプ117及びガス放出パイプ116を介して、第7表に示す条件でガスを反応容器内に導入し、該反応容器内を50mTorrの圧力に調整した。こうしたところで、高周波電源111により高周波を発生させ、第7表に示したように高周波電力をそれぞれのカソ−ド電極に供給した。このようにして電荷注入阻止層、次いで光導電層及び表面保護層からなる光受容層を総計約30分で形成し、電子写真感光体を作製した。この成膜操作を繰り返し行って5個の電子写真感光体を得た。得られた感光体のそれぞれについて実験−1と同様に帯電能、画像濃度について評価した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0056】(比較例1)図9に示した装置に代えて、カソ−ド電極を直径208mm、長さ400mmの単体で構成した図1の装置を装置を用い、電荷注入阻止層の形成時から800Wの電力を1箇所から投入し、光導電層の形成時1000Wの電力を1箇所から投入した以外は実施例1におけると同様にして成膜を行って、5個の電子写真感光体を作製した。得られたそれぞれの感光体について実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体もかなりの帯電能むらと画像むらを生じ、実用に供せられるものではないことが判った。
【0057】(実施例2)図9に示した装置に代えてカソ−ド電極103A、103B、103Cのそれぞれへの電力供給を、それぞれ2つの接続点より行う図10に示した装置を使用した以外実施例1と同様にして、5個の電子写真感光体を作製した。得られた感光体のそれぞれについて実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体も全ての評価項目について優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0058】(実施例3)円筒状基体106を回転させない以外実施例2と同様にして、5個の電子写真感光体を作製した。得られた感光体のそれぞれについて実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体も全ての評価項目について優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0059】(実施例4)図18に示した装置を使用して実施例1と同様にして5個の電子写真感光体を作製した。図18に示した装置は、図9に示した装置とはカソ−ド電極が103A及び103Bの2つに分割されている点で異なっている。ここではカソ−ド電極103A及び103Bをそれぞれ直径208mm、長さ195mmで構成した。カソ−ド電極103A及び103Bに等しい電力を(電荷注入阻止層及び表面保護層の形成時400W,光導電層形成時500W)を供給する以外実施例1と同様にして5個の電子写真感光体を作製した。得られた感光体のそれぞれについて実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体も全ての評価項目について優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0060】(実施例5)図19に示した装置を使用して実施例4と同様にして5個の電子写真感光体を作製した。図19に示した装置は、図18に示した装置とはカソ−ド電極103A及び103Bにそれぞれ18A,118a及び118B,118bの2つの電力供給線から電力が供給される点で異なっている。また、当該位置においては電力供給線とカソ−ド電極との接点が基体を中心として対称の位置にくるように設計されている。得られたそれぞれの感光体について実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体も全ての評価項目について優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0061】(実施例6)円筒状基体106を回転させない以外実施例5と同様にして、5個の電子写真感光体を作製した。得られた感光体のそれぞれについて実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体も全ての評価項目について優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0062】(実施例7)図20に示した装置を使用して実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。図20に示した装置は、図9に示した装置とはカソ−ド電極が103A,103B,103C及び103Dの4つに分割されている点で異なっていて、カソ−ド電極103A,103B,103C及び103Dをそれぞれ直径208mm、長さ92.5mmにされている。カソ−ド電極103A,103B,103C及び103Dに等しい電力(電荷注入阻止層及び表面保護層形成時200W,光導電層形成時250W)を供給する以外実施例1と同様にして5個の電子写真感光体を作製した。得られた感光体のそれぞれについて実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体も全ての評価項目について優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0063】(実施例8)図21に示した装置を使用して実施例7と同様にして電子写真感光体を作製した。図2121に示した装置は、図20に示した装置とはカソ−ド電極103A,103B,103C及び103Dにそれぞれ18A,118a、118B,118b、118C,118c、118D,118dの2つの電力供給線から電力が供給される点で異なっていて、電力供給線とカソ−ド電極との接点が基体を中心として対称の位置にくるように構成されている。得られた感光体のそれぞれについて実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体も全ての評価項目について優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0064】(実施例9)円筒状基体106を回転させない以外実施例8と同様にして、5個の電子写真感光体を作製した。得られた感光体のそれぞれについて実験−1と同様の評価を行った。その結果、いずれの電子写真感光体も全ての評価項目について優れた結果を示した。このことからいずれの電子写真感光体も電子写真特性に優れたものであることが判った。
【0065】
【表1】


【0066】
【表2】


【0067】
【表3】


【0068】
【表4】


【0069】
【表5】


【0070】
【表6】


【0071】
【表7】


【0072】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明のプラズマCVD法及びプラズマCVD装置によれば、円筒状基体の表面上に該円筒状基体の軸方向、及び周方向のいずれの方向に関しても、極めて膜厚が均一で膜質が高品質な堆積膜を安定して形成することができる。そして特に電子写真特性に優れた堆積膜を安定して形成することができる。更には、高周波電源の周波数増加に伴う高周波電力の損失を防止し、効率的にプラズマを生起し得るので堆積膜を高速度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のプラズマCVD装置を示す模式図である。
【図2】図1のプラズマCVD装置を実験用に一部改造したプラズマCVD装置を示す模式図である。
【図3】図1のプラズマCVD装置を実験用に一部改造したプラズマCVD装置を示す模式図である。
【図4】従来のプラズマCVD装置において40MHzの周波数の電力を使用した場合のプラズマ密度を円筒状基体の位置との関係で測定した結果のグラフである。
【図5】従来のプラズマCVD装置において100MHzの周波数の電力を使用した場合のプラズマ密度を円筒状基体の位置との関係で測定した結果のグラフである。
【図6】本発明に属するプラズマCVD装置(実験用)を示す模式図である。
【図7】図6のプラズマCVD装置において40MHzの周波数の電力を使用した場合のプラズマ密度を円筒状基体の位置との関係で測定した結果のグラフである。
【図8】図6のプラズマCVD装置において100MHzの周波数の電力を使用した場合のプラズマ密度を円筒状基体の位置との関係で測定した結果のグラフである。
【図9】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図10】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図11】図1の装置を1部変更したのプラズマ装置において13.56MHzの周波数の電力を使用した場合のプラズマ密度を円筒状基体の位置との関係で測定した結果のグラフである。
【図12】プラズマCVD装置内のプラズマ密度を円筒状基体の位置に対してプロットしたグラフである。
【図13】カソ−ド電極の長さとインピ−ダンスの関係を種々の周波数の高周波電源を用いた場合について示したグラフである。
【図14】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図15】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図16】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図17】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図18】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図19】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図20】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。
【図21】本発明のプラズマCVD装置の1例を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 減圧下の反応容器内に成膜用の原料ガスを供給し、前記反応容器内に配される回転可能な円筒状基体の周囲に設けられたカソ−ド電極にVHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するVHFプラズマCVD法であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割されており、分割された前記カソ−ド電極のそれぞれに前記高周波電力供給手段を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給して前記反応容器内にプラズマを生起させ堆積膜を形成することを特徴とするVHFプラズマCVD法。
【請求項2】 前記カソ−ド電極に供給されるカソ−ド電極の単位面積あたりの超短波エネルギ−はそれぞれの電極についてほぼ等しくなるように制御される請求項1に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項3】 前記超短波エネルギ−は、前記カソ−ド電極の単位面積あたり0.001W/cm〜10W/cmの範囲で供給される請求項1に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項4】 前記堆積膜を形成する際の前記反応容器内の圧力は、5Torr以下に維持される請求項1に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項5】 前記円筒状基体は、20℃〜500℃の温度に保持される請求項1に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項6】 前記堆積膜は、シリコン系の堆積膜である請求項1に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項7】 前記堆積膜は、電子写真感光体用のものである請求項6に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項8】 減圧下の反応容器内に成膜用の原料ガスを供給し、前記反応容器内に配される回転可能な円筒状基体の周囲に設けられたカソ−ド電極にVHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するVHFプラズマCVD法であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割されており、分割された前記カソ−ド電極のそれぞれが独立して高周波電力供給手段に接続する複数の接続点を有し、それら複数の接続点を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給して前記反応容器内にプラズマを生起させ堆積膜を形成することを特徴とするVHFプラズマCVD法。
【請求項9】 前記カソ−ド電極に供給されるカソ−ド電極の単位面積あたりの超短波エネルギ−はそれぞれの電極についてほぼ等しくなるように制御される請求項8に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項10】 前記超短波エネルギ−は、前記カソ−ド電極の単位面積あたり0.001W/cm〜10W/cmの範囲で供給される請求項8に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項11】 前記堆積膜を形成する際の前記反応容器内の圧力は、5Torr以下に維持される請求項8に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項12】 前記円筒状基体は、20℃〜500℃の温度に保持される請求項8に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項13】 前記堆積膜は、シリコン系の堆積膜である請求項8に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項14】 前記堆積膜は、電子写真感光体用のものである請求項13に記載のVHFプラズマCVD法。
【請求項15】 減圧できる反応容器、該反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給する原料ガス供給手段、前記反応容器内に配された回転可能な基体保持手段、前記基体保持手段に配される円筒状基体をとり囲むように設けられたカソ−ド電極及びVHF帯高周波電源を有し、前記VHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して前記カソ−ド電極に供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するプラズマCVD装置であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割され、分割された各カソ−ド電極のそれぞれに前記高周波電力供給手段を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を供給するようにしたことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項16】 前記分割されたカソ−ド電極は、円筒状である請求項15に記載のプラズマCVD装置。
【請求項17】 前記分割されたカソ−ド電極の長さは330mm以下である請求項15に記載のプラズマCVD装置。
【請求項18】 前記超短波エネルギ−は、電力分配器により複数に分割されて前記分割されたカソ−ド電極に供給される請求項15に記載のプラズマCVD装置。
【請求項19】 減圧できる反応容器、該反応容器内に堆積膜形成用の原料ガスを供給する原料ガス供給手段、前記反応容器内に配された基体保持手段、前記基体保持手段に配される円筒状基体をとり囲むように設けられたカソ−ド電極及びVHF帯高周波電源を有し、前記VHF帯高周波電源で発生させた高周波電力を高周波電力供給手段を介して前記カソ−ド電極に供給し、前記円筒状基体と前記カソ−ド電極との間にプラズマを発生させて前記円筒状基体表面上に堆積膜を形成するプラズマCVD装置であって、前記カソ−ド電極は、一つの前記円筒状基体の軸方向に関して電気的に複数に分割され、分割された各カソ−ド電極のそれぞれが独立して高周波電力供給手段に電気的に接続する複数の接続点を有し、それら複数の接続点を介して周波数60MHz〜300MHzの範囲の超短波エネルギ−を各カソ−ド電極に供給するようにしたことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項20】 前記接続点は、前記円筒状基体を中心にして対称となる位置に配された請求項19に記載のプラズマCVD装置。
【請求項21】 前記分割されたカソ−ド電極は、円筒状である請求項19に記載のプラズマCVD装置。
【請求項22】 前記分割されたカソ−ド電極は、高さが330mm以下である請求項21に記載のプラズマCVD装置。
【請求項23】 前記超短波エネルギ−は、電力分配器により複数に分割されて前記分割されたカソ−ド電極に供給される請求項19に記載のプラズマCVD装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【特許番号】特許第3406936号(P3406936)
【登録日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【発行日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−51776
【出願日】平成6年3月23日(1994.3.23)
【公開番号】特開平6−342764
【公開日】平成6年12月13日(1994.12.13)
【審査請求日】平成13年3月5日(2001.3.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−148108(JP,A)
【文献】特開 平5−32489(JP,A)
【文献】特開 平4−100215(JP,A)
【文献】特開 平2−225674(JP,A)