説明

超電導ケーブルの端末構造

【課題】超電導ケーブルの製造中に、ケーブルをドラムに巻き取ったり、引き出したりする動作を繰り返しても、断熱管内のケーブルコアの撚りの弛みを保持することができる超電導ケーブルの端末構造を提供する。
【解決手段】断熱管20の内部に複数のケーブルコア10が撚り合わされた状態で配置された超電導ケーブル100の端部に、断熱管20が複数のケーブルコア10と共に扁平状に圧縮された扁平部24を形成している。この扁平部24により、撚り合わされたケーブルコア10の端部が束の状態で断熱管20に固定されるので、撚りの弛みを保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱管の内部に複数のケーブルコアが撚り合わされた状態で配置される超電導ケーブルの端末構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルとして、例えば、Bi系高温超電導テープ線などからなる超電導導体(超電導線材)を用いたものが知られている。この種の超電導ケーブルは、中心から順にフォーマ、超電導導体層、電気絶縁層、シールド層、保護層を備えるケーブルコアを、二重金属コルゲート管から構成される断熱管の内部に収納している。
【0003】
この断熱管は、内管と外管との間の空間を真空にするとともに、この空間に真空断熱材を配置している(例えば特許文献1参照)。そして、超電導ケーブルは、ケーブル運転時に、断熱管の内管の内部に液体窒素などの液冷媒を流通させて、内管内に収納されるケーブルコアを臨界温度以下に冷却するようになっている。
【0004】
ところで、特許文献1に開示されている超電導ケーブルのように、断熱管内に撚り合わされた複数のケーブルコアが収納される場合、液体窒素でケーブルコアを冷却すると、ケーブルコアは、常温状態に比べて収縮する。しかし、ケーブルコアの両端部は中間接続部や終端接続部で固定されるため、撚り合わせたケーブルコアが熱収縮すると、撚りが締まり、ケーブルコアに軸方向の応力(引張応力)がかかって、超電導導体が損傷してしまうことがある。
【0005】
そこで、超電導ケーブルは、例えば、特許文献1にも開示されているように、複数のケーブルコアを撚り合わせる際に、ケーブルコア間にスペーサを介在させ、撚り合わせたケーブルコアを断熱管の内管内に収納する前に、スペーサを取り除くことにより、ケーブルコアの撚りに弛みを与えて、この撚りの弛みで収縮を吸収するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−216555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、超電導ケーブルは、製造時及び出荷時において専用のドラムに巻き付けられた状態で輸送されたり、保管されたりする。特に、ケーブル製造中は、一工程毎にケーブルをドラムに巻き取っては、次の工程でドラムからケーブルを引き出す。
【0008】
ケーブルをドラムに巻いている時は、ドラムに巻き取られたケーブルは湾曲するため、内管の内部に収納されているケーブルコアは、内管の巻きの中心側が圧縮された状態となり巻きの外側が引っ張られた状態になる。
【0009】
従って、製造中において、断熱管に各ケーブルコアの端部が固定されていないと、ドラムへの巻取りや引き出しを繰り返すうちに、内管内に配置されるケーブルコアは、内管の内部で軸方向にずれて、ケーブルコアの撚りの弛み量が小さくなってしまう虞がある。特に、長尺ケーブルの場合には、ケーブルの重量が重くなるので、摩擦抵抗が大きくなり、撚りの弛みの状態は元の状態に戻り難くなる。
【0010】
その結果、ケーブル布設時において、撚りの弛み量が必要量に足らなくなると、ケーブル運転時にケーブルコアが熱収縮した際、撚りの弛みが足らず、ケーブルコアが破損する可能性がある。
【0011】
以上のように、本発明は、超電導ケーブルの製造中に、ケーブルをドラムに巻き取ったり、引き出したりする動作を繰り返しても、断熱管内のケーブルコアの撚りの弛みを保持することができる超電導ケーブルの端末構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の超電導ケーブルの端末構造は、断熱管の内部に複数のケーブルコアが撚り合わされた状態で配置された超電導ケーブルの端部に、断熱管が複数のケーブルコアと共に扁平状に圧縮された扁平部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
複数のケーブルコアが弛みを持たせた状態で撚り合わされて収納された断熱管の端部をケーブルコアと共に扁平になるように圧縮して、扁平部を形成することにより、この断熱管の扁平部で、複数のケーブルコアの端部が固定される。つまり、ケーブルコアが軸方向に伸び出そうとしても、この伸び出し力を扁平に圧縮された断熱管で受け止めて、ケーブルコアの軸方向への動きを阻止することができる。
【0014】
その結果、断熱管に扁平部を形成するだけで、各ケーブルコアが断熱管に対して軸方向に移動することが無くなるので、撚りの弛みが小さくなることを阻止でき、ケーブルコアの撚りの弛みの状態を維持することができる。
【0015】
なお、扁平部は、製造工程中、断熱管が内管のみで形成されているときには、この内管を圧縮成形して扁平部を形成することができるし、また、内管の外側に外管を配置させたときには、これら内管と外管とを圧縮成形して扁平部を形成することができる。
【0016】
さらに、この扁平部は、圧縮した後、切断して端部をそろえるようにすることが好ましい。例えば、ケーブルコアを収納した断熱管の端部を油圧カッターで圧縮すると同時に切断することが挙げられる。
【0017】
ところで、従来から、超電導ケーブルを構成する断熱管は、特許文献1にも開示されているように、二重のステンレスコルゲート管で構成されている。コルゲート管は、通常、ステンレス板を溶接してパイプ状に形成し、その後、波付け加工を行って形成する。
【0018】
ところが、コルゲート管の溶接部において溶接割れやピンホールが存在すると、超電導ケーブルは、断熱管の内管内部から冷媒が外部に漏れたり、断熱管の真空劣化が生じたりしてケーブルコアを超電導状態に維持できなくなる。
【0019】
そこで、通常は、溶接割れやピンホールの有無の検査をするために、ケーブル製造中に、断熱管の圧力試験や微少リーク試験をケーブル全長に亘って行っている。
【0020】
圧力試験は、ケーブル運転時の断熱管における内管内部の圧力が設定圧力(例えば0.6MPa)に耐えられるか否かの確認を行う試験である。この圧力試験は、ケーブルコアが収納された内管の端部を蓋体で封鎖し、この内管の内部に、ケーブル端部に取り付けたポートを介して高圧ガス(例えば窒素、空気など)を封入し、所定の試験圧力に耐えうることを確認する。
【0021】
また、微少リーク試験は、感度の良いヘリウムガスを用いる方法が一般的である。そして、内管と外管のそれぞれについてリーク試験を行う必要がある。微少リーク試験としては、例えば、真空法、真空容積法、加圧法などがある。
【0022】
何れのリーク試験も、内管のリーク試験を行った後に、外管のリーク試験を行う。リーク試験は、ケーブルコアを収納した内管のリーク試験を行う場合には、この内管の両端開口部を、ポートを有する蓋体で封鎖して行う。また、外管のリーク試験を行う場合には、内管と外管との間に形成される両端開口部を蓋体で封鎖して行う。
【0023】
しかしながら、ケーブルコアの撚りの弛みを維持するために、超電導ケーブルの端部を扁平に圧縮して扁平部を形成すると、ケーブル端部は、扁平部の長さが断熱管の直径よりも大きくなってしまう。その結果、ケーブルの断熱管の外径と同じ内径を有する筒状の蓋体をそのまま取り付けることができない。
【0024】
そこで、本発明の超電導ケーブルの端末構造は、ケーブル端部に蓋体を取り付ける場合には、断熱管の端部に、前記扁平部を覆って断熱管の端部を封鎖する蓋体を固定する。この蓋体は、断熱管の扁平部を覆う大径部と、この大径部に続き、断熱管の外面に嵌め合わされる小径部とを有する構成とすることができる。そして、この蓋体は、大径部の軸方向端部が閉鎖されると共に、小径部の外周全体と断熱管における小径部の開口部近くの外周全体とにシール部が形成されていることにより、蓋体が断熱管に気密状に固定されていることが好ましい。
【0025】
なお、断熱管と蓋体とは、通常、金属で形成するので、シール部は、ハンダや鉛工など、金属でシール部を形成することが好ましい。特に、シール面積を確保することを考慮すると、鉛工処理を施すことが好ましい。
【0026】
このように、超電導ケーブルの端部にケーブルコアの撚りの弛みを保持するための扁平部が形成されることによりケーブル端部が断熱管の外径より大きくなっても、蓋体を小径部と大径部を有する構成とすることにより、扁平部を完全に覆いながら、蓋体と断熱管との間の気密性を良好にできる。
【0027】
本発明は、先端形状の大きいケーブルと蓋体とを、蓋体の開口部が断熱管に密着された状態でシール部を形成できるので、蓋体と断熱管との間の気密性と接合強度とを十分満足する超電導ケーブルの端末構造を提供することができる。
【0028】
その結果、扁平部を有するケーブルの端部に前記蓋体を取り付けることにより、ケーブルコアの撚りの弛みを維持できながら、断熱管の圧力試験やリーク試験を簡単、かつ確実に行うことができる。
【0029】
さらに、前記蓋体は、大径部となる一端が閉鎖された大径円筒部材と、小径部となる小径円筒部材と、大径円筒部材と小径円筒部材とを気密状に接続し、小径円筒部材の端部に一体に形成されるリング状の接続部とを備える構成とすることが好ましい。
【0030】
この場合、小径円筒部材と接続部とが、一体化された筒状部材を半割れにした半割れ部材を互いに接合して構成されていることが好ましい。そして、小径円筒部材が筒状に形成された状態で、接続部の端部と大径円筒部材の開口端部とを接合して、蓋体を構成する。
【0031】
蓋体を、大径円筒部材と、接続部が形成された小径円筒部材とを組み合わせて構成しているので、気密性を良好にできながら、蓋体の断熱管への組み付けも簡単に行える。
【0032】
具体的には、半割れ部材同士は、扁平部よりも軸方向内方側の内管を覆った状態で溶接して接続部を有する小径円筒部材を形成するので、小径円筒部材を断熱管に密着させた状態に簡単に取り付けることができる。そして、前記大径円筒部材内に内管の扁平部を収納した状態で、この大径円筒部材と小径円筒部材に形成した接続部とを溶接することにより、小径円筒部材と大径円筒部材とが一体化された蓋体を簡単に構成できる。このように、蓋体を構成する各部材を溶接して接合することにより、蓋体の超電導ケーブルへの組み付けを容易に行えながら、蓋体と断熱管との接合強度を高圧に耐えうる強度に確保できる。
【0033】
なお、蓋体は、大径部と小径部とが一体化された筒状体を半割れにした半割れ部材を形成して、これら半割れ部材を断熱管の周囲に配置させた状態で、半割れ部材同士を溶接により接合して、蓋体を断熱管に取り付けることもできる。
【0034】
さらに、シール部は、蓋体の小径部と断熱管における小径部の開口部近くとに鉛工処理することにより形成され、このシール部(鉛工部分)の周りに合成樹脂からなる補強部が形成されていることが好ましい。
【0035】
断熱管と小径部とを鉛工処理を施して固定した後、この鉛工部分の周りに補強部を形成して鉛工部分を補強することにより、断熱管と蓋体との接合強度を向上させることができる。この補強部の形成により、高圧での圧力試験においても、鉛工部分による気密性を確実に維持でき、断熱管の圧力試験を確実に行うことができる。
【0036】
しかも、高圧での圧力試験時に、断熱管に伸び出し力が発生し、鉛工部分も機械的に伸び出そうとしても、この補強部により、鉛工部分の伸び出しを防止して、超電導ケーブルが破損することを防止することができる。
【0037】
なお、補強部は、ガラス繊維で形成されたシート部材に、エポキシ樹脂を含浸させてプリプレグ状態にし、この樹脂含浸シートを鉛工部分に巻き付けてエポキシ樹脂を熱硬化させて形成することが好ましい。また、補強部を形成する合成樹脂として、ガラス繊維を有する熱硬化樹脂などの繊維強化樹脂を用いてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の超電導ケーブルの端末構造は、断熱管の端部が複数のケーブルコアと共に扁平状に圧縮されて形成された扁平部を有するので、この扁平部で複数のケーブルコアの端部が断熱管に固定され、ケーブルコアが断熱管に対して軸方向に移動することが無くなる。その結果、扁平部により、ケーブルコアの撚りの弛みが小さくなることを阻止できるので、ケーブルをドラムに巻き付けたり、引き出したりする動作を繰り返しても、ケーブルコアの撚りの弛みの状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の超電導ケーブルの端末構造の実施の形態を説明する。本実施形態では、断熱管内に3心のケーブルコアが収納される超電導ケーブルについて、ケーブルコアの周りに断熱管の内管のみが形成された状態のときの、ケーブル端末構造について説明する。
【0040】
本実施形態に係る超電導ケーブル100の完成状態は、図4に示すように、3心のケーブルコア10と、そのケーブルコア10を収納する断熱管20とから構成されている。各ケーブルコア10は、中心から順に、フォーマ11、超電導導体層12、絶縁層13、超電導シールド層14、保護層15を有している。
【0041】
超電導導体層12は、フォーマ11上に超電導線材を多層で螺旋状に巻き付けて形成している。この超電導線材は、銀マトリクス中にBi2223系超電導フィラメントが多数本埋め込まれて形成されている。絶縁層13は、絶縁紙とポリプロピレンフィルムとを接合した半合成紙を超電導導体層12上に巻き付けて形成している。超電導シールド層14は、超電導導体層12に用いたものと同様の超電導線材を絶縁層13上に多層に巻き付けて形成している。
【0042】
一方、断熱管20は、内管21および外管22を備える二重管からなり、内外管21、22の間に真空断熱層が構成される。内管21および外管22は、いずれもコルゲート管で構成されている。真空断熱層内には、プラスチックメッシュと金属箔を積層したいわゆるスーパーインシュレーション(商品名)が配置されている。さらに、外管22の外側には、順次、防食層23、保護被覆層(図示せず)が形成される。
【0043】
断熱管20における内管21の内部は、ケーブルコア10を冷却する液体窒素などの冷媒を充填する冷媒流通路となっている。
【0044】
本実施形態では、上記構成を有する3心のケーブルコア10は、内管21の内部に、撚りに弛みが持たされた状態で収納される。本実施形態では、内管21で3心のケーブルコア10が覆われた状態のときの超電導ケーブルの端末構造について説明する。なお、これらケーブルコア10の撚りの弛みの形成は、既知の方法で行うことができる。
【0045】
本実施形態に係る超電導ケーブルの端末構造は、図1に示すように、断熱管20の内管21の端部を、複数のケーブルコア10と共に扁平状に圧縮して扁平部24を形成している。
【0046】
この扁平部24は、ケーブルコア10を収納した断熱管20の内管21の端部を油圧カッターで圧縮すると同時に切断することにより、内管21の端部に形成される。内管21の端部に扁平部24を形成することにより、ケーブルコア10が軸方向に伸び出そうとしても、この伸び出し力を内管21の扁平に圧縮された部分で受け止めて、ケーブルコア10の軸方向への動きを阻止できるようにしている。
【0047】
このように、内管21の端部に扁平部24を形成しているので、ケーブルコア10が内管21に対して軸方向に移動することが無くなり、撚りの弛みが小さくなることが阻止されるので、ケーブルコア10の撚りの弛みの状態を維持することができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、超電導ケーブル100の端部に扁平部24を形成した後、図2に示すように、断熱管20の内管21の端部に、前記扁平部24を覆って内管21の端部を封鎖する蓋体3を固定して、内管21の圧力試験とヘリウムリーク試験を行うようにしている。
【0049】
この蓋体3は、内管21の扁平部24を覆う大径部31と、この大径部31に続き、内管21の外面に嵌め合わされる小径部32とを有する構成としている。
【0050】
蓋体3の具体的な構成について説明すると、蓋体3は、大径部31となる大径円筒部材4と、小径部32となる小径円筒部材5とを備える。
【0051】
大径円筒部材4は軸方向端部が閉鎖された円筒をしており、大径円筒部材4の筒部内径は、扁平部24の最大長さよりも大きくしている。この大径円筒部材4の内部にケーブル100の扁平部24を収納するようになっている。
【0052】
さらに、大径円筒部材4の筒部外周面における軸方向中央には、リング状の係止部41が突設されている。この係止部41には、ワイヤが挿通され、このワイヤは、ケーブル100をドラムに巻き付けたときに、前記係止部41に挿通させた状態でドラムに固定するようになっている。ワイヤをドラムに固定することにより、ドラムに巻き付けられたケーブルが、軸方向に伸び出さないようにしている。
【0053】
また大径円筒部材4における筒部一端を封鎖する封鎖面には、圧力試験時に内管21の内部に高圧ガスを注入するための圧力試験用ポート42と、リーク試験時に内管21の内部にヘリウムガスを注入したり、内管21の内部を真空引きしたりするためのリーク試験用ポート43とを設けている。
【0054】
小径円筒部材5は、大径円筒部材4との接続側端部にリング状の接続部33が一体に形成されている。接続部33を有する小径円筒部材5は、2つの半割れ部材6から構成されている。この半割れ部材6は、内管21の外径と同径の内径を有する円筒部材を半割れにした半割れ円筒部材61と、この半割れ円筒部材61の外径と同径の内径を有し、大径円筒部材4の外径と略同径の外径を有するリング部材を半割れにした円弧部材62とを溶接により接合して構成されている。なお、本実施形態では、円弧部材62同士が接合されて接続部33が構成される。
【0055】
円弧部材62と半割れ円筒部材61との接合は、円弧部材62の内面を半割れ円筒部材61の軸方端部の外周面に当接させた状態で、これら円弧部材62と半割れ円筒部材61の重なり部分を半割れ円筒部材61の外側から溶接することにより行う。
【0056】
そして、円弧部材62と半割れ円筒部材61とが接合されて一体化した半割れ部材6を2つ用意し、これら半割れ部材6の周方向端部同士を付き合わせて溶接により接合して接続部33を有する小径円筒部材5が形成される。
【0057】
そして、接続部33の端面と、大径円筒部材4の開口端面とを突き合わせて、接続部33と大径円筒部材4とを溶接により接合して一体化している。このように、接続部33と大径円筒部材4とを接合して一体化することにより、小径円筒部材5と大径円筒部材4とが一体化されて、蓋体3が構成される。
【0058】
本実施形態では、蓋体3を内管21に気密状に固定するために、小径円筒部材5の外周面全体と、内管21における小径円筒部材5の開口部近くの外周面全体とに亘るように鉛工処理を施してシール部となる鉛工部分7を形成している。
【0059】
さらに、本実施形態では、前記鉛工部分7の周りに補強部8を形成している。補強部8は、ガラス繊維で形成されたシート部材に、エポキシ樹脂を含浸させてプリプレグ状態にし、この樹脂含浸シートを鉛工部分7に巻き付けてエポキシ樹脂を熱硬化させて形成している。この補強部8を形成することによって、ケーブル100の端部を高圧試験にも耐えられる構造としている。
【0060】
次に、扁平部24を有する超電導ケーブル100の端部に、前記蓋体3を取り付けるための、蓋体3の各部品の組み付け方法を図3に基づいて説明する。
【0061】
まず、内管21の内部にケーブルコア10が収納されたケーブル100の端部を、圧縮・切断して扁平部24を形成して、3心のケーブルコア10の端部を扁平に圧縮された内管21で固定した状態にしておく。
【0062】
そして、蓋体3を構成する小径円筒部材5について、まず、半割れ円筒部材61と円弧部材62とを溶接により接合して一体化した半割れ部材6を2つ形成する。次に、各半割れ部材6を内管21の扁平部24が形成されている位置よりも軸方向内方側となる内管21の外周面に密着させた状態で、これら各半割れ部材6同士を溶接により接合する。この接合により、2つの半割れ部材6同士が一体化されて接続部33を有する小径円筒部材5が形成され、この小径円筒部材5と接続部33とが内管21の周りに嵌められた状態になる。
【0063】
そして、扁平部24を覆うように、ケーブル100の端部に大径円筒部材4を被せる。この大径円筒部材4の開口端面と、小径円筒部材5における接続部33の端面とを突き合わせた状態で、周方向に亘って溶接して、大径円筒部材4と小径円筒部材5とを一体化させて蓋体3を形成する。
【0064】
蓋体3における小径円筒部材5の外周面全周と、この小径円筒部材5の開口部の近くにおける内管21の外周面全周とに鉛工処理を施して、内管21から小径円筒部材5に至る所定の厚みの鉛工部分7を形成する。この鉛工部分7の形成により、蓋体3の小径円筒部材5と内管21との間を気密にする。
【0065】
鉛工部分7が形成された後、この鉛工部分7の周りに、エポキシ樹脂が含浸されたガラスシートを巻き付けて熱硬化させて補強部8を形成する。補強部8を形成することにより、ケーブル100の端部に蓋体3が気密状態で取り付けられた状態となる。
【0066】
そして、ケーブル100の端部に蓋体3を取り付けた状態で、ケーブル100をドラムに巻き付け、ケーブル100をドラムに巻き付けた状態のまま、内管21の加圧試験とリーク試験とを行う。
【0067】
なお、圧力試験を行うときは、ドラムに巻き付けられたケーブル100の巻きの外側端部において、この端部に設けた蓋体3に形成する係止部41にワイヤを挿通させ、ワイヤをドラムに固定しておいて、圧力試験を行う。
【0068】
以上のように、本実施形態にかかる超電導ケーブルの端末構造では、3心のケーブルコア10を弛みを持たせた状態で撚り合わせて収納させた断熱管20の内管21の端部を、ケーブルコア10と共に扁平になるように圧縮して扁平部24を形成している。この内管21の扁平部24で、3心のケーブルコア10の端部が内管21に固定された状態になる。
【0069】
その結果、ケーブルコアが軸方向に伸び出そうとしても、この伸び出し力を扁平に圧縮された断熱管で受け止めて、ケーブルコアの軸方向への動きを阻止することができる。
【0070】
即ち、内管21に扁平部24を形成するだけで、各ケーブルコア10が内管21に対して軸方向に移動することが無くなるので、撚りの弛みが小さくなることを阻止でき、ケーブルコア10の撚りの弛みの状態を維持することができる。
【0071】
また、本実施形態では、内管21の溶接部において溶接割れやピンホールが有るか無いかを検査するために、内管21の端部に蓋体3を取り付けて圧力試験とリーク試験とを行う。
【0072】
圧力試験は、ケーブルコア10が収納された内管21の端部を蓋体3で封鎖しておき、この内管21の内部に、蓋体3の圧力試験用ポート42から高圧ガス(例えば窒素、空気など)を封入して行う。
【0073】
また、リーク試験は、蓋体3で端部が封鎖された内管21に対して、蓋体3のリーク試験用ポート43から、感度の良いヘリウムガスを内管21の内部に注入して、内管21の外面からのヘリウムガスの漏れを検出して行う。
【0074】
本実施形態では、蓋体3を、扁平部24を覆いながら、内管21の端部に気密状に嵌め合わすようにして取り付けているので、扁平部24を完全に覆った状態で、蓋体3と内管21との間の気密性を良好にできる。
【0075】
即ち、先端形状の大きいケーブル100と蓋体3とを、蓋体3における小径円筒部材5の開口部が内管21の外面に密着された状態で鉛工処理を実施できるので、蓋体3と内管21との間の気密性と接合強度とを十分満足する超電導ケーブルの端末構造を提供することができる。
【0076】
その結果、扁平部24を有するケーブル100の端部に前記蓋体3を取り付けることにより、ケーブルコア10の撚りの弛みを維持できながら、内管21の圧力試験やリーク試験を簡単、かつ確実に行うことができる。
【0077】
また、蓋体3を、大径部31となる大径円筒部材4と、半割れ部材6が接合して形成される接続部33を有する小径円筒部材5とを組み合わせて構成しているので、気密性を良好にできるのは勿論のこと、蓋体3の内管21への組み付けも簡単に行える。
【0078】
即ち、本実施形態では、ケーブル100の端部に内管21の外径よりも大きい幅を有する扁平部24が形成されていても、半割れ部材6同士を、扁平部24よりも軸方向内方側の内管21を覆った状態で溶接して小径円筒部材5を形成するので、小径円筒部材5を内管21に密着させた状態で簡単に取り付けることができる。そして、前記大径円筒部材4内に内管21の扁平部24を収納した状態で、この大径円筒部材4に形成した接続部33と前記小径円筒部材5とを溶接することにより、小径円筒部材5と大径円筒部材4とが一体化された蓋体3を簡単に構成できる。このように、蓋体3を構成する各部材を溶接して接合することにより、蓋体3の超電導ケーブル100への組み付けを容易に行えながら、蓋体3と内管21との接合強度を高圧に耐えうる強度に確保できる。
【0079】
さらに、鉛工部分7の外周に補強部8を形成して、鉛工部分7を補強しているので、内管21と蓋体3との接合強度を向上させることができる。この補強部8の形成により、高圧での圧力試験においても、鉛工部分による気密性を確実に維持でき、内管21の圧力試験を確実に行うことができる。
【0080】
しかも、高圧での圧力試験時に、内管21に伸び出し力が発生し、鉛工部分7も機械的に伸び出そうとしても、この補強部8により、鉛工部分7の伸び出しを防止して、超電導ケーブルが破損することを防止することができる。
【0081】
さらに、ケーブル100をドラムに巻き付けたまま圧力試験を行う場合、内管21の両端部は蓋体3で封鎖され、その内部に高圧力が掛かるため、蓋体の封鎖面には面圧がかかり、ケーブル100が軸方向に伸び出す力が発生する。
【0082】
本実施形態では、蓋体3の大径円筒部材4に形成した係止部41にワイヤを挿通させておいて、ワイヤをドラムに固定しておくので、加圧時に生ずるケーブルの軸方向への伸び出しをこの係止部41に挿通させるワイヤで抑えることができる。その結果、この係止部41に挿通させるワイヤでケーブルの伸び出しを防止できるので、鉛工部分7と補強部8の機械的余裕度を増すことができる。しかも、加圧試験時のケーブル伸び出しによる内管21の伸びに伴って、ケーブルコア10の撚りの弛みが減少するのを防止することができる。
【0083】
ところで、内管21に対して、圧力試験とリーク試験とを行う場合、それぞれの試験で接続する機器との間の配管は、仕様が異なる。従って、蓋体にポートが一つだけ形成されている場合には、ポートに接続するコネクタが合わなかったり、コネクタに合わせて蓋体を交換したりして、ポートとコネクタとの接続作業が煩雑になるし、蓋体を交換する場合には、蓋体と断熱管との間の気密状態の信頼性の低下などの問題が生ずる。
【0084】
本実施形態では、蓋体3の大径円筒部材4の封鎖面に、圧力試験用ポート42とリーク試験用ポート43とを設けているので、配管の仕様が異なっても、蓋体3を試験が異なるごとに交換する作業が不要となるし、蓋体3の内管21への組み付け時の信頼性も向上する。その結果、各試験を行うための作業時間が短縮でき、しかも、各試験を確実にミス無く効率的に実施できる。
【0085】
なお、本実施形態では、扁平部24は、内管21のみで形成されているケーブルに形成したが、内管の外側に外管を配置させた状態のケーブルに対して扁平部を形成することもできる。内管と外管とにより扁平部を形成する場合にも、外管を覆うように前記した大径部と小径部とを有する蓋体をケーブルの端部に取り付けることができる。
【0086】
また、本発明の超電導ケーブルの端末構造は、直流送電用、交流送電用の何れの超電導ケーブルで採用してもよい。
【0087】
さらに、本発明の超電導ケーブルの端末構造は、上記した実施形態に限らないのであり、本発明の範囲が上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明超電導ケーブルの端末構造は、ケーブルの圧力試験やリーク試験を行う場合に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明超電導ケーブルの端末構造であって、超電導ケーブルの端部に扁平部を形成した状態を示す斜視図である。
【図2】端部に扁平部が形成された超電導ケーブルの端部に蓋体を取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】超電導ケーブルの端部に取り付ける蓋体の各部材の組み付けを説明するための説明図である。
【図4】超電導ケーブルの径方向断面図である。
【符号の説明】
【0090】
100 超電導ケーブル
10 ケーブルコア
11 フォーマ 12 超電導導体層 13 絶縁層
14 超電導シールド層 15 保護層
20 断熱管 21 内管 22 外管 23 防食層
24 扁平部
3 蓋体
31 大径部 32 小径部 33 接続部
4 大径円筒部材
41 係止部 42 圧力試験用ポート 43 リーク試験用ポート
5 小径円筒部材
6 半割れ部材 61 半割れ円筒部材 62 円弧部材
7 鉛工部分 8 補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱管の内部に複数のケーブルコアが撚り合わされた状態で配置された超電導ケーブルの端部に、
断熱管が複数のケーブルコアと共に扁平状に圧縮された扁平部が形成されていることを特徴とする超電導ケーブルの端末構造。
【請求項2】
断熱管の端部に、前記扁平部を覆って断熱管の端部を封鎖する蓋体が固定されており、
この蓋体は、断熱管の扁平部を覆う大径部と、この大径部に続き、断熱管の外面に嵌め合わされる小径部とを有し、
大径部は軸方向端部が閉鎖され、小径部の外周全体と断熱管における小径部の開口部近くの外周全体とにシール部が形成されていることにより、蓋体が断熱管に気密状に固定されている請求項1に記載の超電導ケーブルの端末構造。
【請求項3】
前記蓋体は、
大径部となる一端が閉鎖された大径円筒部材と、小径部となる小径円筒部材と、大径円筒部材と小径円筒部材とを気密状に接続し、小径円筒部材の端部に一体に形成されるリング状の接続部とを備え、
小径円筒部材と接続部とが、一体化された筒状部材を半割れにした半割れ部材を互いに接合して構成されている請求項2に記載の超電導ケーブルの端末構造。
【請求項4】
シール部は、蓋体の小径部と断熱管における小径部の開口部近くとに鉛工処理することにより形成され、このシール部の周りに合成樹脂からなる補強部が形成されている請求項2または請求項3の何れかに記載の超電導ケーブルの端末構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−243621(P2008−243621A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82931(P2007−82931)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】