説明

超電導装置の梱包構造

【課題】衝撃、及び、定常的な振動による超電導装置の破損の可能性を低下することが可能であり、コストの増大を防止することが可能な超電導装置の梱包構造を提供する。
【解決手段】超電導装置2を内部に収納する箱体3と、箱体3の下面を支持し、超電導装置2を輸送する際に運搬台4に設置される衝撃吸収材5と、箱体3と超電導装置2との間に配置され、超電導装置2を支持する振動吸収材6とを有している。振動吸収材6及び超電導装置2を含む箱体3と衝撃吸収材5とからなる系の固有振動数は、運搬台4から所定の高さにおける該系の位置エネルギーが該系に作用する時間を所定値以上とする値に設定されている。振動吸収材6と超電導装置2とからなる系の固有振動数は、輸送における振動周波数の最低値に対して1/√2よりも小さい値に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導装置の輸送時における梱包構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、超電導装置等は、運用時において内部の超電導マグネットを極低温に保持する必要がある。そのため、超電導マグネットは、クライオスタットと呼ばれる断熱容器の内部に設けられる。このようなクライオスタットにおいて、断熱性を有効にするために、超電導マグネット等の内部構造の支持が脆弱となっている。
【0003】
このような超電導装置の輸送において自動車車両、鉄道、船舶、航空等の輸送手段が用いられ、輸送の際には運搬台に載置された超電導装置が定常的な振動を受ける。このような超電導装置に対する継続的な振動の付加や、この振動の振動数が超電導装置の固有振動数と近い値になった場合の共振現象による振幅の増大によって、超電導装置の破損の可能性が高まる。
【0004】
そこで、超電導装置を輸送する際の内部構造の破損を防止するものとして、特許文献1〜3のようなものが知られている。特許文献1には、クライオスタットの固有振動数がクライオスタットを輸送する際の輸送手段の固有振動数の√2倍以上になるように、各内部構造の上側支持材の剛性を下側支持材のそれよりも大きく形成された超電導マグネット用クライオスタットが開示されている。
【0005】
特許文献2には、超電導装置を取り付ける振り子部材の振動数の√2倍が、輸送時の最大の振動加速度が発生する最大の振動数よりも小さくなるように振り子の長さが設定された徐振装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、輸送時においてのみ取り付けられるクライオスタットの首管を補強する首管補強構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−12296号公報
【特許文献2】特開平5−106683号公報
【特許文献3】実開平6−6897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、自動車車両等の輸送手段において路面に穴や突起物がある場合、運搬台に設置された超電導装置が突発的な衝撃を受けて超電導装置が破損する可能性がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1・2では、輸送中の定常的な振動に対するものに限定され、上記のような突発的な衝撃に対応できないという問題があった。また、特許文献3では、保護の箇所が限定されると共に、運用前に首管補強構造を取り外すための特殊な作業が発生するためコストが増大するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑み、衝撃、及び、定常的な振動による超電導装置の破損の可能性を低下することが可能であり、コストの増大を防止することが可能な超電導装置の梱包構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の超電導装置の梱包構造は、超電導装置を内部に収納する箱体と、前記箱体の下面を支持し、前記超電導装置を輸送する際に運搬台に設置される衝撃吸収材と、前記箱体と前記超電導装置との間に配置され、前記超電導装置を支持する振動吸収材と、を有し、前記振動吸収材及び前記超電導装置を含む前記箱体と前記衝撃吸収材とからなる系の固有振動数は、前記運搬台から所定の高さにおける該系の位置エネルギーが該系に作用する時間を所定値以上とする値に設定され、前記振動吸収材と前記超電導装置とからなる系の固有振動数は、前記輸送における振動周波数の最低値に対して1/√2よりも小さい値に設定されている。
【0012】
上記構成によれば、超電導装置を輸送する際に運搬台に設置される衝撃吸収材が、箱体の下面を支持している。そして、振動吸収材及び超電導装置を含む箱体と衝撃吸収材とからなる系の固有振動数は、運搬台から所定の高さにおける該系の位置エネルギーが該系に作用する時間を所定値以上とする値に設定されている。即ち、該系が所定の高さから運搬台に落下した場合であっても、衝撃吸収材によって着地した際の箱体の初速がゼロに至るまでの時間が所定値以上にされる。これにより、箱体に対する衝撃加速度を緩和させることができる。
【0013】
また、振動吸収材が、箱体と超電導装置との間に配置されている。そして、振動吸収材と超電導装置とからなる系の固有振動数が、輸送における振動周波数の最低値に対して1/√2よりも小さい値に設定されているため、理論上の振動伝達率が1未満となる。これにより、輸送における振動の周波数が、超電導装置の固有振動数と共振するような値である場合でも、振幅の増大を回避する可能性を高くすることができる。これらの結果、運搬台からの所定の高さにおける位置エネルギーに相当する衝撃、及び、輸送時の定常的な振動による超電導装置の破損の可能性を低下させることができる。
【0014】
さらに、超電導装置の内部における超電導マグネット等の支持構造を輸送時において強化する必要がないため、設置の際に支持構造の強化を解除する作業を要しない。これにより、コストの増大を防止することができる。
【0015】
また、本発明の超電導装置の梱包構造は、前記振動吸収材及び前記超電導装置を含む前記箱体と前記衝撃吸収材とからなる系の固有振動数が、10Hz未満かつ3.5Hz以上の値に設定されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、30cmの位置から落下して着地の際の箱体が有する初速が2.4m/sであっても、この初速が瞬間的にゼロになることを防止し、衝撃が作用する時間を0.024秒よりも大きくすることができるため、箱体に伝達される加速度を98m/sよりも小さく緩和することができる。
【0017】
また、本発明の超電導装置の梱包構造は、前記振動吸収材と前記超電導装置とからなる系の固有振動数が、3.5Hzよりも小さい値に設定されていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、輸送時の振動の周波数が5Hz以上である場合に、理論上の振動伝達率を1よりも小さくすることができるため、輸送時の振動との共振を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、衝撃、及び、定常的な振動による超電導装置の破損の可能性を低下することが可能であり、コストの増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の超電導装置の梱包構造の概念を示す説明図である。
【図2】第1実施形態に係る超電導装置の梱包構造の全体構成を示す模式図である。
【図3】第2実施形態に係る超電導装置の梱包構造の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の超電導装置の梱包構造の概念を示す説明図である。図1に示すように、梱包構造1は、超電導装置2を内部に収納する箱体3と、箱体3の下面を支持し、超電導装置2を輸送する際に運搬台4に設置される衝撃吸収材5と、箱体3と超電導装置2との間に配置され、超電導装置2を支持する振動吸収材6とを有している。
【0022】
また、本発明の梱包構造1において、振動吸収材6及び超電導装置2を含む箱体3と衝撃吸収材5とからなる系(以下、第1の系と称す)の固有振動数は、運搬台4から所定の高さにおける該系の位置エネルギーが該系に作用する時間を所定値以上とする値に設定されている。さらに、振動吸収材6と超電導装置2とからなる系(以下、第2の系と称す)の固有振動数は、輸送における振動周波数の最低値に対して1/√2よりも小さい値に設定されている。即ち、輸送における振動周波数の最低値を、第2の系の固有振動数で割った値が√2よりも大きい値となる。
【0023】
尚、第1の系の固有振動数は、衝撃吸収材5のばね定数と、第1の系の総質量とから算出される。また、第2の系の固有振動数は、振動吸収材6のばね定数と、第2の系の総質量とから算出される。
【0024】
上記構成によれば、超電導装置2を輸送する際に運搬台4に設置される衝撃吸収材5が、箱体3の下面を支持している。そして、振動吸収材6及び超電導装置2を含む箱体3と衝撃吸収材5とからなる第1の系の固有振動数は、運搬台4から所定の高さにおける第1の系の位置エネルギーが第1の系に作用する時間を所定値以上とする値に設定されている。即ち、第1の系が所定の高さから運搬台4に落下した場合であっても、衝撃吸収材5によって着地した際の箱体3の初速がゼロに至るまでの時間が所定値以上にされる。これにより、箱体3に対する衝撃加速度を緩和させることができる。
【0025】
また、振動吸収材6が、箱体3と超電導装置2との間に配置されている。そして、振動吸収材6と超電導装置2とからなる第2の系の固有振動数が、輸送における振動周波数の最低値に対して1/√2よりも小さい値に設定されているため、理論上の振動伝達率が1未満となる。これにより、輸送における振動の周波数が、超電導装置2の固有振動数と共振するような値である場合でも、振幅の増大を回避する可能性を高くすることができる。これらの結果、運搬台4からの所定の高さにおける位置エネルギーに相当する衝撃、及び、輸送時の定常的な振動による超電導装置2の破損の可能性を低下させることができる。
【0026】
さらに、超電導装置2の内部における超電導マグネット等の支持構造を輸送時において強化する必要がないため、設置の際に支持構造の強化を解除する作業を要しない。これにより、コストの増大を防止することができる。
【0027】
また、このような超電導装置の梱包構造の各構成は限定されず、様々な形状に適用可能である。次に、このように示される本発明の超電導装置の梱包構造の概念を具体的に適用した超電導装置の梱包構造1について説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係る超電導装置の梱包構造1全体の斜視図を示す模式図である。
【0028】
(超電導装置2)
図2に示すように、本実施形態の梱包構造1が梱包する超電導装置2は、本体部2aと、第1突出部2bと、第2突出部2cとを有している。
【0029】
本体部2aは、外形状が円筒形であり、軸方向に貫通する開口を有している。図示しないが、本体部2aは、内部に超電導マグネット、外気から超電導マグネットを断熱する断熱構造及び、これらを支持する支持構造等を有している。
【0030】
第1突出部2bと、第2突出部2cとは、外形状が円柱形であり、本体部2aの側面から同じ径方向に突出するように並んで取り付けられている。即ち、第1突出部2bの軸方向と、第2突出部2cの軸方向とが平行となるように取り付けられている。
【0031】
(梱包構造1)
次に、上述のような超電導装置2を梱包する梱包構造1の構成について具体的に説明する。図2に示すように、梱包構造1は、超電導装置2を内部に収納する箱体3と、箱体3の下面を支持し、超電導装置2を輸送する際に運搬台4に設置される衝撃吸収材5と、箱体3と超電導装置2との間に配置され、超電導装置2を支持する振動吸収材6とを有している。さらに、梱包構造1は、振動吸収材6を支持する下部支持部材7、側部支持部材8、及び、上部支持部材9を有している。
【0032】
(箱体3)
箱体3は、6面が木材製の中空の箱であり、超電導装置2を内部に収納する。尚、図2においては、箱体3の6面のうち側面の2面及び上面を省略している。箱体3には、下面の対向する2辺に沿って板状のパレット3aが夫々配置されている。図2に示すように、超電導装置2は、本体部2aの軸方向とパレット3aとが平行であり、第1突出部2b、及び、第2突出部2cの軸方向が垂直方向と平行になるように、箱体3の内部に収容される。
【0033】
(衝撃吸収材5)
衝撃吸収材5は、パレット3a下面の両端部の夫々に配置されている。即ち、衝撃吸収材5は、箱体3の下面を支持する。従って、梱包構造1によって梱包された超電導装置2を輸送する際には、衝撃吸収材5が運搬台4に設置されるようになっている。尚、衝撃吸収材5は、樹脂製であり、ドーナツ型の形状を有している。衝撃吸収材5に樹脂を用いることによりコストが高くなることを防止することができる。
【0034】
(振動吸収材6)
振動吸収材6は、径方向振動吸収材61・63と、軸方向振動吸収材62と、突出部振動吸収材64とを有している。振動吸収材6は、超電導装置2と、箱体3との間に配置される。尚、振動吸収材6は、弾性を有するポリスチレンフォーム等の発泡材である。これにより、エネルギーを吸収するダンピング効果を得ることができると共に、加工を容易にすることができる。
【0035】
径方向振動吸収材61・63は、本体部2aの周方向に沿って当接する切欠が設けられた直方体である。即ち、径方向振動吸収材61・63は、中央に行くに従って細くなる凹部を有している。径方向振動吸収材61・63は、この凹部が超電導装置2の下面及び上面に嵌合されるようになっている。
【0036】
具体的に、径方向振動吸収材61は、下部支持部材7の上面に配置される。ここで、下部支持部材7は、本体部2aの軸方向の長さよりも短い距離を有して対向する一対の板状部材であり、長手方向がパレット3aと垂直となるように箱体3の内部底面に水平に配置される。径方向振動吸収材61は、凹部が上面となるように一対の下部支持部材7の上面に配置され、該凹部に嵌合するように配置された超電導装置2の下面を支持する。
【0037】
径方向振動吸収材63は、上部支持部材9の下面に配置される。ここで、上部支持部材9は、箱体3内部の水平方向の4辺に沿って配置された板状部材9a・9bを有している。具体的に、一対の板状部材9aは、上部支持部材9は、箱体3内部壁面に沿って、水平かつ本体部2aの軸方向と平行に配置されている。また、一対の板状部材9bは、板状部材9aの下面に、水平かつ板状部材9aと垂直に箱体3内部壁面に沿って配置されている。径方向振動吸収材63は、凹部が下面となるように一対の板状部材9bの下面に配置され、該凹部に嵌合するように配置された超電導装置2の上面を支持するようになっている。
【0038】
軸方向振動吸収材62は、箱体3内部壁面に配置された側部支持部材8の側面に取り付けられる。ここで、側部支持部材8は、本体部2aの軸方向の両端面の上部及び下部に対応する箱体3内部壁面の水平位置に取り付けられている。軸方向振動吸収材62は、側部支持部材8の側面に本体部2aの軸方向端面の上部及び下部と接触するように配置されている。
【0039】
突出部振動吸収材64は、長手方向が一対の板状部材9bと平行であり、一対の板状部材9aの上面に中央に設けられた板状部材である。突出部振動吸収材64は、中央に第1突出部2bと、第2突出部2cとが嵌合かつ貫通される2つの貫通孔を有している。
【0040】
このように、径方向振動吸収材61・63は、超電導装置2の上面及び下面を挟持して支持する。これにより、超電導装置2は垂直方向に固定される。また、径方向振動吸収材61・63は、凹部に超電導装置2を嵌合し、なおかつ、軸方向振動吸収材62は、超電導装置2の本体部2aの軸方向に支持する。これにより、超電導装置2は水平方向に固定される。さらに、突出部振動吸収材64には、超電導装置2の第1突出部2b及び第2突出部2cが嵌合かつ貫通される。これにより、超電導装置2は、本体部2aの周方向への回転が防止される。即ち、振動吸収材6は、箱体3と超電導装置2との間に配置され、超電導装置2を予め定められた位置及び姿勢に支持するようになっている。
【0041】
(動作)
次に、衝撃及び振動を受けた時の梱包構造1の動作について説明する。先ず、衝撃について、例えば、自動車車両等の輸送手段において路面に穴や突起物を走行した場合に、梱包構造1が30cmの位置から運搬台4に落下する場合を考える。
【0042】
梱包構造1が30cmの位置から運搬台4に自由落下する場合、梱包構造1の衝撃吸収材5の下面が運搬台4に着地する直前に梱包構造1が持つ初速は、約2.4m/sとなる。即ち、このときの超電導装置2が持つ初速についても、約2.4m/sとなる。ここで、初速を持つ箱体3が瞬間的に停止して梱包構造1の30cmにおける位置エネルギーが梱包構造1に衝撃として作用する場合、箱体3が受ける衝撃加速度は98m/sを超えることが想定され、超電導装置2が破損する可能性が高くなる。
【0043】
本実施形態では、衝撃吸収材5を第1の系の下部に設けているため、衝撃吸収材5の下面が運搬台4に着地してから箱体3が停止するまでに、第1の系の固有振動数に基づく時間が設けられる。具体的に、第1の系の固有振動数が3.5Hz以上かつ10Hz未満の値に設定されているため、箱体3が持つ初速である約2.4m/sがゼロに至る(停止する)までの時間を0.024sよりも大きくすることができる。即ち、超電導装置2に伝達される加速度を98m/sよりも小さく緩和することができるため、超電導装置2が破損する可能性を軽減することができるようになっている。
【0044】
次に、振動を受けた時の梱包構造1の動作について説明する。輸送手段において、梱包構造1は、定常的な振動が運搬台4を介して伝達される。ここで、梱包構造1に伝達される振動周波数を5〜50Hzとし、そのときのパワースペクトル密度を0.015G/Hzとする。この場合、梱包構造1は、0.27〜0.86Gの加速度を定常的に受けることになる。
【0045】
振動は、衝撃吸収材5、及び、箱体3を介して、第2の系に伝達される。本実施形態では、超電導装置2を振動吸収材6によって支持し、超電導装置2と振動吸収材6とからなる第2の系の固有振動数が、梱包構造1に伝達される振動周波数の最低値に対して1/√2よりも小さい値に設定されている。具体的に、上述の第2の系の固有振動数を、梱包構造1に伝達される振動周波数の最低値である5Hzに対して1/√2よりも小さい値である3.5Hzに設定されている。
【0046】
即ち、第2の系への理論上の振動伝達率は1よりも小さい値となる。これにより、定常的な振動に第2の系が共振する可能性を軽減することができる。即ち、超電導装置2が共振して振幅が増大し、梱包構造が0.27〜0.86Gよりも大きい加速度の振動を受ける可能性を軽減している。
【0047】
このように、運搬台4からの所定の高さにおける位置エネルギーに相当する衝撃、及び、輸送時の定常的な振動による超電導装置2の破損の可能性を低下させることができる。さらに、超電導装置2の内部における超電導マグネット等の支持構造を輸送時において強化する必要がないため、設置の際に支持構造の強化を解除する作業を要しない。これにより、コストの増大を防止することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図3は、本実施形態に係る超電導装置の梱包構造201全体の斜視図を示す模式図である。
【0049】
(超電導装置202)
図3に示すように、本実施形態の梱包構造201が梱包する超電導装置202は、本体部202aと、第1突出部202bと、第2突出部202cとを有している。
【0050】
本体部202aは、外形状が円筒形であり、軸方向に貫通する開口を有している。以下、この軸方向が垂直方向であるとして説明を行う。
【0051】
第1突出部202bは、外形状が四角柱形であり、本体部202aの軸方向上部の周面から水平方向に突出するように取り付けられている。第2突出部202cは、本体部202aの軸方向下部の周面の同じ水平面上の4箇所に突出するように設けられている。第2突出部202cは、外形状が二等辺三角形を水平方向に伸ばしたような略三角柱形であり、本体部202aから下に傾斜する傾斜面、水平面となる下面、及び、本体部202aの側面に接する側面を有している。また、第2突出部202cは本体部202aの軸方向に対して互いに垂直となるように水平に隣り合っている。また、第2突出部202cの1つの突出方向は、第1突出部202bの突出方向と平行に設けられている。
【0052】
(梱包構造201)
次に、上述のような超電導装置2を梱包する梱包構造201の構成について具体的に説明する。図3に示すように、梱包構造201は、超電導装置202を内部に収納する箱体203と、箱体203の下面を支持し、超電導装置202を輸送する際に運搬台204に設置される衝撃吸収材205と、箱体203と超電導装置202との間に配置され、超電導装置202を支持する振動吸収材206とを有している。さらに、梱包構造201は、振動吸収材206を支持する下部支持部材207、及び、枠部材208を有している。
【0053】
(箱体203)
箱体203は、6面が木材製の中空の箱であり、超電導装置202を内部に収納する。尚、図3においては、箱体203の6面のうち側面及び上面を省略している。図3に示すように、超電導装置202は、本体部202aからの第1突出部202bの突出方向が、箱体203下面の長手方向と平行になるように、箱体203の内部に収容される。
【0054】
(衝撃吸収材h)
衝撃吸収材205は、箱体203下面の長手方向の端部の2辺及び略中央の短手方向に、夫々5つが配置されている。即ち、衝撃吸収材205は、箱体203の下面を支持する。従って、梱包構造201によって梱包された超電導装置202を輸送する際には、衝撃吸収材205が運搬台204に設置されるようになっている。尚、衝撃吸収材205は、樹脂製であり、ドーナツ型の形状を有している。衝撃吸収材5に樹脂を用いることによりコストが高くなることを防止することができる。
【0055】
(振動吸収材206)
振動吸収材206は、水平方向振動吸収材206aと、垂直方向振動吸収材206bとを有している。振動吸収材206は、超電導装置202と、箱体203との間に配置される。尚、水平方向振動吸収材206aは、弾性を有するポリスチレンフォーム等の発泡材である。また、垂直方向振動吸収材206bは、弾性を有するゴム製部材である。
【0056】
水平方向振動吸収材206aは、外形状が直方体であり、垂直方向に箱体203の本体部202aが嵌合する円柱形状の貫通孔を有している。水平方向振動吸収材206aは、枠部材208によって支持される。ここで、枠部材208は、上面が直方体状に繰りくり抜かれたくり抜き部を有する箱状の部材である。水平方向振動吸収材206aは、枠部材208のくり抜き部に嵌合して配置される。また、枠部材208は、下部支持部材207によって支持される。ここで、下部支持部材207は、枠部材208の下面の4隅部、及び、4辺の中央部の合計8箇所に配置され、箱体203の内部底面に設置される。
【0057】
垂直方向振動吸収材206bは、各第2突出部202cの下面を支持し、枠部材208に設置される軸方向が垂直方向となる円柱形状の部材である。
【0058】
このように、超電導装置202は、水平方向振動吸収材206aによって水平方向に固定され、垂直方向振動吸収材206bによって垂直方向に支持される。即ち、振動吸収材206は、箱体203と超電導装置202との間に配置され、超電導装置202を少なくとも水平方向への移動を固定し、垂直方向に支持するようになっている。
【0059】
(固有振動数)
本実施形態の梱包構造201について、振動吸収材206、超電導装置202、下部支持部材207、及び、枠部材208を含む箱体203と、衝撃吸収材205とからなる系を第1の系とした場合の固有振動数の説明については、第1実施形態の第1の系の固有振動数と同様であるため省略する。
【0060】
また、振動吸収材206と超電導装置202とからなる系を第2の系とした場合の固有振動数の説明については、第1実施形態の第2の系の固有振動数と同様であるため省略する。
【0061】
(動作)
第1の系、及び、第2の系の動作については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0062】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 梱包構造
2 超電導装置
2a 本体部
2b 第1突出部
2c 第2突出部
3 箱体
3a パレット
4 運搬台
5 衝撃吸収材
6 振動吸収材
7 下部支持部材
8 側部支持部材
9 上部支持部材
9a・9b 板状部材
61・63 径方向振動吸収材
62 軸方向振動吸収材
64 突出部振動吸収材
201 梱包構造
202 超電導装置
202a 本体部
202b 第1突出部
202c 第2突出部
203 箱体
204 運搬台
205 衝撃吸収材
206 振動吸収材
206a 水平方向振動吸収材
206b 垂直方向振動吸収材
207 下部支持部材
208 枠部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導装置を内部に収納する箱体と、
前記箱体の下面を支持し、前記超電導装置を輸送する際に運搬台に設置される衝撃吸収材と、
前記箱体と前記超電導装置との間に配置され、前記超電導装置を支持する振動吸収材と、
を有し、
前記振動吸収材及び前記超電導装置を含む前記箱体と前記衝撃吸収材とからなる系の固有振動数は、前記運搬台から所定の高さにおける該系の位置エネルギーが該系に作用する時間を所定値以上とする値に設定され、
前記振動吸収材と前記超電導装置とからなる系の固有振動数は、前記輸送における振動周波数の最低値に対して1/√2よりも小さい値に設定されていることを特徴とする超電導装置の梱包構造。
【請求項2】
前記振動吸収材及び前記超電導装置を含む前記箱体と前記衝撃吸収材とからなる系の固有振動数は、10Hz未満かつ3.5Hz以上の値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導装置の梱包構造。
【請求項3】
前記振動吸収材と前記超電導装置とからなる系の固有振動数は、3.5Hzよりも小さい値に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導装置の梱包構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−207519(P2011−207519A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78083(P2010−78083)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(502147465)ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社 (56)
【Fターム(参考)】