超音波センサ及びその製造方法
【課題】長期にわたって共振周波数を制御できる超音波センサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一部に薄肉部120が形成された基板110と、基板110の厚さ方向において、2つの検出用電極132,133間に圧電体薄膜131を配置してなり、薄肉部120上に形成された圧電振動子130と、メンブレン構造体を構成する薄肉部120と圧電振動子130のうち、薄肉部120に所定電圧を印加するための調整用電極141,142と、を含み、印加された所定電圧に応じて、メンブレン構造体が変形する。
【解決手段】一部に薄肉部120が形成された基板110と、基板110の厚さ方向において、2つの検出用電極132,133間に圧電体薄膜131を配置してなり、薄肉部120上に形成された圧電振動子130と、メンブレン構造体を構成する薄肉部120と圧電振動子130のうち、薄肉部120に所定電圧を印加するための調整用電極141,142と、を含み、印加された所定電圧に応じて、メンブレン構造体が変形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の障害物検知システム等に超音波センサが採用されている。このような超音波センサとして、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて作製された圧電式の超音波センサが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示される超音波センサは、SOI(Silicon On Insulator)構造の半導体基板に薄肉部(半導体活性層と絶縁膜層)を形成し、強誘電体を2つの電極(上部検出用電極、下部検出用電極)で挟設する圧電振動子を、強誘電体の上下面に各電極が配置される態様で、薄肉部を覆うように形成してなるものである。
【特許文献1】特開2003−284182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサにおいては、製造ばらつきによって、薄肉部と圧電振動子からなるメンブレン構造体の共振周波数が所望の共振周波数からずれる恐れがある。また、メンブレン構造体がアレイ化されたセンサにおいては、メンブレン構造体間に共振周波数のばらつきが生じる(すなわち、センサ感度にばらつきが生じる)という問題がある
これに対し、特許文献1においては、センサの動作中において、2つの電極間に所定電圧を印加することにより、センサの共振周波数を調整する方法が提案されている。この場合、強誘電体内に生じる自発分極の変化に伴って、剛性に関わる物性値(例えば膜応力、ヤング率)が変化し、共振周波数が変化する。しかしながら、電圧を印加し続けると分極の状態が徐々に変化するため、長期にわたって共振周波数を制御するのが困難である。
【0005】
また、特許文献1においては、センサの動作前において、2つの電極間に所定電圧を印加し、予め強誘電体の自発分極を変化させる(ポーリングする)ことで、センサの共振周波数を調整する方法も提案されている。しかしながら、この方法の場合、例えば室温で放置しておくと、自発分極が弱まることが知られており、長期にわたって共振周波数を制御するのが困難である。
【0006】
なお、これらの方法では、強誘電体のように自発分極を持つ材料でないと調整することができず、例えば窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)といった圧電体には適用することができない。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、長期にわたって共振周波数を制御できる超音波センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の超音波センサは、一部に薄肉部が形成された基板と、基板の厚さ方向において、2つの検出用電極間に圧電体薄膜を配置してなり、薄肉部上に形成された圧電振動子と、メンブレン構造体を構成する薄肉部と圧電振動子のうち、薄肉部に所定電圧を印加するための調整用電極と、を含み、印加された所定電圧に応じて、メンブレン構造体が変形することを特徴とする。
【0009】
このように本発明によれば、メンブレン構造体を構成する薄肉部に所定電圧を印加することが可能であり、所定電圧を印加すると、静電気力が生じてメンブレン構造体が変形(変位)する。すなわち、メンブレン構造体のばね定数が実質的に変化するので(所謂負の静電ばね効果)、共振周波数を調整することができる。また、圧電振動子を構成する圧電体薄膜には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0010】
なお、上述したように、共振周波数の制御に圧電体薄膜の自発分極を利用しないので、圧電体薄膜として、PZTのような強誘電体以外にも、例えば窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)といった圧電体を適用することができる。
【0011】
例えば請求項2に記載のように、調整用電極として、第1調整用電極と第2調整用電極を含み、第1調整用電極と第2調整用電極との間に、所定電圧を印加する構成を採用することができる。
【0012】
具体的には、請求項3に記載のように、基板が第1導電型の半導体基板と、半導体基板の圧電振動子側の表面上に多層に積層配置された絶縁膜を含み、第1調整用電極が、半導体基板の圧電振動子側の表層において、第1導電型とは反対の、第2導電型の拡散領域として構成され、第2調整用電極が、基板の厚さ方向において、絶縁膜に挟まれて配置され、薄肉部の形成領域において、第1調整用電極を残して半導体基板が除去され、絶縁膜のうち、少なくとも半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、第2調整用電極を含むメンブレン構造体と第1調整用電極とが離間された構成とすると良い。
【0013】
このように本発明によれば、メンブレン構造体と第1調整用電極とが離間されている(すなわち、メンブレン構造体と第1調整用電極との間に空隙がある)ので、所定電圧の印加によりメンブレン構造体を変形させ、共振周波数を調整することができる。なお、半導体基板と第1調整用電極とは、PN接合にて絶縁分離されている。
【0014】
また、請求項4に記載のように、半導体基板がシリコンからなる場合には、第1導電型としてN導電型、第2導電型としてP導電型を採用すると良い。このように構成すると、強アルカリ液によって半導体基板をエッチングし、薄肉部を形成するに当たり、半導体基板のみを除去し、P導電型の第1調整用電極を選択的に残すことができる。
【0015】
また、請求項5に記載のように、基板が、支持基板上に埋め込み絶縁膜を介して半導体層を配置してなる半導体基板と、半導体基板の圧電振動子側の表面上に多層に積層配置された絶縁膜を含み、第1調整用電極が、半導体層に不純物を導入することにより構成され、第2調整用電極が、基板の厚さ方向において、絶縁膜に挟まれて配置され、薄肉部の形成領域において、第1調整用電極を残して半導体基板が除去され、絶縁膜のうち、少なくとも半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、第2調整用電極を含むメンブレン構造体と第1調整用電極とが離間された構成としても良い。
【0016】
このように、埋め込み絶縁膜を有する半導体基板(例えばSOI構造半導体基板)を採用しても、請求項3に記載の発明と同様の構造を実現することができる。
【0017】
なお、請求項3〜5いずれかに記載の発明においては、請求項6に記載のように、基板の厚さ方向において、第1調整用電極の厚さを、メンブレン構造体の厚さよりも厚くした構成とすることが好ましい。これにより、電圧印加時の第1調整用電極の変形を抑え、第2調整用電極を含むメンブレン構造体の変形量を大きくすることができる。
【0018】
次に、請求項2に記載の発明とは異なる構成として、請求項7に記載のように、調整用電極として第1調整用電極を含み、2つの検出用電極の一方である基板側の下部検出用電極と第1調整用電極との間に、所定電圧を印加する構成を採用することもできる。
【0019】
このように、検出用電極を構成する下部検出用電極と第1調整用電極との間に所定電圧を印加することによっても、負の静電ばね効果によって、共振周波数を調整することができる。また、圧電振動子を構成する圧電体薄膜には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0020】
さらには、調整用電極の一方と検出用電極の一方を共通化しているので、請求項2に記載の発明に比べて、構成を簡素化することができる。
【0021】
請求項8,9に記載の発明の作用効果は、それぞれ請求項3,4に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0022】
なお、メンブレン構造体は超音波の受信や所定電圧の印加による静電気力によって変形する。したがって、変形による応力によって下部検出用電極が破壊されないようにすることが好ましい。請求項10に記載のように、下部検出用電極として、粒界のない単結晶シリコンに不純物を導入してなる構成を採用すると、粒界が存在する多結晶シリコンを採用する構成に比べて、下部検出用電極を破壊されにくくすることができる。すなわち経時的な安定性を高めることができる。
【0023】
請求項11に記載の発明の作用効果は、それぞれ請求項6に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0024】
請求項1〜11いずれかに記載の発明において、メンブレン構造体の個数は特に限定されない。例えば請求項12に記載のように、メンブレン構造体が複数形成され、メンブレン構造体を構成する薄肉部ごとに所定電圧を印加できる構成としても良い。このように、メンブレン構造体が複数形成された(換言すれば超音波素子がアレイ化された)超音波センサにおいても、上述した発明を適用することができる。この場合、1つの超音波センサに形成された、複数のメンブレン構造体(超音波素子)の共振周波数のばらつきを調整することができる。例えば請求項13に記載のように、所定電圧の印加により、複数のメンブレン構造体を、共振周波数が同一の周波数に調整された構成とすることができる。
【0025】
次に、請求項14に記載の発明は、基板の厚さ方向において2つの検出用電極間に圧電体薄膜が配置された圧電振動子を、基板に形成された薄肉部上に配置してなる超音波センサの製造方法であって、基板を構成するN導電型の第1シリコン基板の、圧電振動子側の表層に、薄肉部に所定電圧を印加するための第1調整用電極として、P導電型の拡散領域を形成する第1調整用電極形成工程と、第1調整用電極の形成後、薄肉部が形成される基板の部位上に、絶縁膜を介して、下部検出用電極、圧電体薄膜、上部検出用電極の順に積層してなる圧電振動子を形成する振動子形成工程と、第1シリコン基板の圧電振動子側表面の裏面から強アルカリ液によるエッチング処理を実施し、薄肉部の形成領域において、第1調整用電極を残して第1シリコン基板を除去するエッチング工程と、薄肉部の形成領域において、絶縁膜のうち、少なくとも第1シリコン基板の表面に接する絶縁膜を除去して、メンブレン構造体と第1調整用電極とを離間させる離間工程を備えることを特徴とする。
【0026】
このように本発明によれば、強アルカリ液によって薄肉部の形成領域に対応する第1シリコン基板を除去し、P導電型の第1調整用電極を選択的に残すことができる。したがって、第1調整用電極と薄肉部を効率よく形成することができる
なお、請求項15に記載のように、振動子形成工程の前に、第1調整用電極との間で、薄肉部に所定電圧の印加が可能な第2調整用電極を、第1調整用電極が形成された第1シリコン基板の表面上に、基板の厚さ方向において、多層に積層された絶縁膜間に挟まれる態様で形成する第2調整電極形成工程を備えると良い。これにより、第1調整用電極と第2調整用電極との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサを製造することができる。
【0027】
また、請求項16に記載のように、振動子形成工程の前に、第1調整用電極が形成された第1シリコン基板に対し、表面に絶縁膜としてシリコン酸化膜の形成された第2シリコン基板を、圧電振動子側表面とシリコン酸化膜形成面が接触するように貼り合せる貼り合せ工程を備え、振動子形成工程において、第2シリコン基板に不純物を導入し、第1調整用電極との間で、薄肉部に所定電圧の印加が可能な下部検出用電極を形成しても良い。これにより、第1調整用電極と下部検出用電極との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。図3は、図1を圧電振動子側から見た平面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波センサ100は、MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサであり、基板110と、基板110の薄肉部120上に形成された圧電振動子130と、薄肉部120に所定電圧を印加するための調整用電極140とを含んでいる。本実施形態に係る調整用電極140は、第1調整用電極141と第2調整用電極142の2つの電極からなる。
【0030】
基板110は、第1導電型の半導体基板111を含んでいる。本実施形態においては、半導体基板111として、面方位(100)のN型シリコン基板を採用しており、半導体基板111の圧電振動子側の表層に、P導電型の拡散領域として第1調整用電極141が形成されている。また、半導体基板111には、薄肉部120に対応して、貫通孔Hが形成されており、第1調整用電極141の一部が、貫通孔H内に露出している。第1調整用電極141は、貫通孔Hを完全に塞がないように、基板110の平面方向において、メンブレン構造体の形成領域の一部に配置されている。より具体的には、図2に示すように、メンブレン構造体の形成領域(図2中の破線で囲んだ領域)において、第1調整用電極141は格子状に構成されている。
【0031】
なお、半導体基板111には、図1に示すように、第1調整用電極141の形成部位とは異なる圧電振動子側の表層に、N+拡散領域111aが形成されている。そして、第1調整用電極141のパッド141aに対してN+拡散領域111aのパッド111bの電位が例えば数V以上高く設定され、半導体基板111と第1調整用電極141とがPN接合にて絶縁分離されている。
【0032】
また、基板110は、半導体基板111とともに、半導体基板111上に多層に積層配置された絶縁膜と、絶縁膜に挟まれて配置された第2調整用電極142とを含んでいる。
【0033】
本実施形態に係る絶縁膜は、圧電振動子側の半導体基板111の表面から、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜112、シリコン窒化膜からなる窒化膜113、シリコン酸化膜からなる第2酸化膜114、及びシリコン酸化膜からなる第3酸化膜115を順に積層して構成されている。そして、第2酸化膜114と第3酸化膜115に挟まれる態様で、不純物(例えばボロンやリン)の導入された多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)からなる第2調整用電極142が配置されている。本実施形態においては、多結晶シリコン膜にボロンが導入され、所定濃度に調整されている。
【0034】
第1酸化膜112は、半導体基板111に貫通孔Hを形成する際のエッチングストッパとしての機能を果たすものであり、薄肉部120(メンブレン構造体)に対応する部位が除去され、除去された部分に空間Sが構成されている。そして、第1酸化膜112上に積層された上述の絶縁膜113〜115と第2調整用電極142のうち、空間S上の部分が薄肉部120となっている。すなわち、薄肉部120の下面(窒化膜113)と第1調整用電極141との間には空間Sが構成され、少なくとも圧電振動子130が振動しない状態で、両者が離間されている。
【0035】
窒化膜113は、第1酸化膜112に空間Sを構成する際のエッチングストッパとしての機能を果たすとともに、自身の膜応力が引張であることを利用して、圧電振動子130が振動しない状態におけるメンブレン構造体(薄肉部)の坐屈を防ぐ機能を果たしている。
【0036】
圧電振動子130は、圧電体薄膜131を2つの検出用電極132,133間に配置してなるものである。本実施形態においては、図3に示すように、メンブレン構造体の形成領域(図3中の破線で囲んだ領域)を覆うように、第3酸化膜115上に、下部検出用電極132、圧電体薄膜131、上部検出用電極133の順で積層配置されている。
【0037】
圧電体薄膜131の構成材料としては、強誘電体であるPZTや、窒化アルミニウム(AlN),酸化亜鉛(ZnO)等を採用することができる。また、検出用電極132,133の構成材料しては、白金(Pt),金(Au),アルミニウム(Al)等を採用することができる。本実施形態においては、圧電体薄膜131の構成材料としてPZTを採用し、検出用電極132,133の構成材料として、Ptを採用している。なお、図1に示す符号132a,133a,142aは、それぞれパッドであり、符号118は、貫通孔Hを形成する際のマスクとなるシリコン窒化膜118である。
【0038】
このように本実施形態に係る超音波センサ100は、薄肉部120と圧電振動子130とにより、他の部位よりも薄肉のメンブレン構造体が構成され、このメンブレン構造体が超音波等の外力印加にともなって変形可能に構成されている。
【0039】
このように、MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサにおいては、製造ばらつきによって、薄肉部120と圧電振動子130からなるメンブレン構造体の共振周波数が所望の共振周波数からずれる恐れがある。また、メンブレン構造体がアレイ化された超音波センサ100においては、メンブレン構造体間に共振周波数のばらつきが生じる(すなわち、センサ感度にばらつきが生じる)という問題がある。
【0040】
これに対し、本実施形態に係る超音波センサ100においては、薄肉部120を構成する第2調整用電極142と、薄肉部120と空間Sを介して離間された第1調整用電極141との間に、所定電圧を印加することができる。すなわち、メンブレン構造体のうち、薄肉部120に所定電圧を印加することができる。そして、第1調整用電極141と第2調整用電極142との間に所定電圧を印加し、両電極141,142間に、超音波を受けた際のメンブレン構造体のばねの復元力とは逆向きの静電気力(静電引力)を生じさせて、メンブレン構造体を変形(変位)させることができる。
【0041】
ここで、垂直方向(基板110の厚さ方向)に作用する静電気力は、両電極141,142間の間隔に2乗に反比例し、印加電圧の2乗に比例して増大する。したがって、印加電圧が大きく、間隔が狭くなるほど、正味のばねの復元力は小さくなり、共振周波数が低周波側へシフトする。このように、所謂負の静電ばね効果によって、メンブレン構造体のばね定数を実質的に変化させて、共振周波数を所望の値に調整することができる。例えば、所定の周波数の超音波を受信した状態で、超音波センサ100の出力が最大となるように、両電極141,142間に印加する電圧を調整すれば良い。
【0042】
特に本実施形態においては、第1調整用電極141を薄肉部120(メンブレン構造体)と離間し、第1調整用電極141の厚さを、メンブレン構造体の厚さよりも厚く設定している。したがって、両電極141,142間に静電気力(静電引力)を生じさせた際に、第1調整用電極141は変位せず、第2調整用電極142を含むメンブレン構造体が変形(変位)する。このように、第1調整用電極141の変位を抑制し、第2調整用電極142を含むメンブレン構造体が変形するように構成すると、メンブレン構造体の変形量を大きくすることができる。すなわち、効率よく共振周波数を調整することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、圧電振動子130を構成する圧電体薄膜131には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜131の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0044】
このように構成される超音波センサ100は、例えば以下に示す製造方法によって形成することができる。図4は、図1に示す超音波センサ100の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2調整用電極形成工程、(c)は振動子形成工程を示している。図5は、図4(c)に続く、超音波センサ100の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)はエッチング工程、(b)は離間工程を示している。
【0045】
先ず、図4(a)に示すように、半導体基板111として、面方位(100)のN型シリコン基板を準備し、半導体基板111の圧電振動子配置面側の表層に、調整用電極140の一方である第1調整用電極141を形成する。具体的には、半導体基板111の圧電振動子配置面側の表面に例えば厚さ1μmのシリコン酸化膜からなるマスク(図示略)を形成して、所定位置に不純物をイオン注入(本実施形態においてはボロンイオンをドーズ量8×1016/cm2で注入)し、熱処理(例えば1150℃で10h)する。これにより、厚さ(深さ)約3μmの第1調整用電極141が形成される。以上が、第1調整用電極形成工程である。
【0046】
また、第1調整用電極141の形成領域とは異なる半導体基板111の圧電振動子配置面側の表面に不純物をイオン注入(本実施形態においてはリンイオンを注入)し、半導体基板111の電位取り出し用のN+拡散領域111aを形成する。なお、第1調整用電極141、N+拡散領域111aの形成に当たっては、イオン注入法以外にも、拡散法を適用することもできる。
【0047】
第1調整用電極141形成後、図4(b)に示すように、第1調整用電極141が形成された半導体基板111の表面上に、調整用電極140の他方である第2調整用電極142を形成する。具体的には、半導体基板111の表面上に、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜112を形成する。本実施形態においては、プラズマCVD法を用いて、厚さ4μm程度の第1酸化膜112を形成する。プラズマCVD以外にも、熱酸化によって形成しても良い。第1酸化膜112形成後、第1酸化膜112上に、シリコン窒化膜からなる窒化膜113を形成する。本実施形態においては、LP−CVD法を用いて、厚さ0.4μm程度の窒化膜113を形成する。このとき、半導体基板111の裏面に、シリコン窒化膜からなる窒化膜116が形成される。窒化膜113形成後、窒化膜113上に、シリコン酸化膜からなる第2酸化膜114を形成する。本実施形態においては、プラズマCVD法を用いて、厚さ0.2μm程度の第2酸化膜114を形成する。
【0048】
第2酸化膜114形成後、第2酸化膜114上に、例えばポリシリコン膜を堆積させ、不純物イオンを注入する。本実施形態においてはボロンイオンをドーズ量2×1016/cm2で注入し、その後熱処理(例えば1150℃で2h)している。なお、ポリシリコン膜に注入される不純物はボロンに限定されるものではない。例えばリンでも良い。また、不純物の導入されたポリシリコン膜の形成方法も上記例に限定されるものではない。不純物がドープされたポリシリコン膜を形成しても良い。このように、不純物が導入されたポリシリコン膜142を形成後、ポリシリコン膜142上に、シリコン酸化膜からなる第3酸化膜115を形成する。本実施形態においては、プラズマCVD法を用いて、厚さ0.2μm程度の第3酸化膜115を形成する。なお、このとき、半導体基板111の裏面に、ポリシリコン膜117が形成される。
【0049】
そして、第3酸化膜115、ポリシリコン膜142、第2酸化膜114、窒化膜113、第1酸化膜112の順で、不要部を例えばドライエッチングにより除去し、図4(b)に示すようにそれぞれをパターニングする。これにより、ポリシリコン膜142がパターニングされて、上下面を第3酸化膜115と第2酸化膜114に挟まれ、薄肉部120を覆う態様の、第2調整用電極142が形成される。以上が第2調整用電極形成工程である。
【0050】
第2調整用電極142形成後、図4(c)に示すように、第2調整用電極142上に、薄肉部120の形成領域を覆うように、圧電振動子130を形成する。具体的には、第3酸化膜115上に、Pt膜を蒸着法により堆積し、不要部を例えばドライエッチングにより除去する。これにより、薄肉部120を覆うようにパターニングされた下部検出用電極132が形成される。なお、本実施形態においては、厚さ0.25μm程度の下部検出用電極132を形成する。下部検出用電極132形成後、下部検出用電極132上に、圧電体薄膜131としてのPZT膜を、薄肉部120を覆うように、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法等により形成し、不要部を例えばドライエッチングにより除去する。なお、本実施形態においては、スパッタ法を用いて、厚さ1.0μm程度の圧電体薄膜131を形成する。圧電体薄膜131形成後、圧電体薄膜131上に、Pt膜を蒸着法により堆積し、不要部を例えばドライエッチングにより除去する。これにより、薄肉部120を覆うようにパターニングされた上部検出用電極133が形成される。なお、本実施形態においては、厚さ0.25μm程度の上部検出用電極133を形成する。以上が、圧電振動子形成工程である。
【0051】
圧電振動子130形成後、図5(a)に示すように、半導体基板111の裏面を研削・研磨し、窒化膜116及びポリシリコン膜117を除去する。その後、半導体基板111の裏面にシリコン窒化膜118をプラズマCVD法により形成し、薄肉部120の形成部位に対応する不要部を例えばドライエッチングにより除去する。なお、本実施形態においては、厚さ0.5μm程度のシリコン窒化膜118を形成し、エッチング時のマスクとする。マスク形成後、半導体基板111の裏面側をTMAHやKOH等の強アルカリ性溶液に浸し、第1酸化膜112をエッチングストッパとして、半導体基板111を異方性エッチングする。これにより、半導体基板111に貫通孔Hが形成される。なお、N導電型の半導体基板111は強アルカリ性溶液によって異方性エッチングされるが、P導電型である第1調整用電極141はエッチングされず、貫通孔H内に残る。以上がエッチング工程である。
【0052】
なお、貫通孔H内に在る(すなわちメンブレン構造体の形成領域に在る)第1調整用電極141の部分は、格子状となっている。したがって、貫通孔H形成後、格子状の第1調整用電極141を介して、薄肉部120(メンブレン構造体)に対応する第1酸化膜112の部位を除去する。具体的には、半導体基板111の裏面側を例えばフッ酸液に浸し、第1酸化膜112を除去する。これにより、薄肉部120(メンブレン構造体)に対応する第1酸化膜112の部位が除去されて空間Sが形成され、基板110に薄肉部120が形成される。すなわち、薄肉部120と圧電振動子130からなるメンブレン構造体が形成される。また、薄肉部120と第1調整用電極141とが離間される。以上が離間工程である。
【0053】
このように本実施形態に係る超音波センサ100の製造方法によれば、第1調整用電極141と第2調整用電極142との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサ100(図1参照)を形成することができる。
【0054】
また、強アルカリ液によって薄肉部120の形成領域に対応する半導体基板111を除去し、P導電型の第1調整用電極141を選択的に残すことができる。したがって、第1調整用電極141と薄肉部120を効率よく形成することができる。
【0055】
なお、第1調整用電極141と第2調整用電極142との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサ100は、上記例に限定されるものではない。例えば、図6に示すように、図1に示す構成に対して、第2調整用電極142と窒化膜113の積層順を入れ替えた構成としても良い。この場合、第1調整用電極141と第2調整用電極142との間の間隔が縮まるので、図1に示す構成よりも低電圧で共振周波数を調整することができる。図6は、変形例を示す断面図である。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図7に基づいて説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【0057】
第2実施形態に係る超音波センサは、第1実施形態に係る超音波センサ100と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0058】
図7に示すように、本実施形態に係る超音波センサ200も、MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサであり、基板210と、基板210の薄肉部220上に形成された圧電振動子230と、薄肉部220に所定電圧を印加するための調整用電極240とを含んでおり、調整用電極240は、第1調整用電極241と第2調整用電極242の2つの電極からなる。
【0059】
基板210は、埋め込み絶縁膜(シリコン酸化膜)211aを介して、支持基板211b上に半導体層を配置してなる半導体基板211を含んでいる。この半導体層に、不純物(本実施形態においてはボロン)が導入され、所定形状にパターニングされて、図7に示す第1調整用電極241が構成されている。また、支持基板211bには、薄肉部220に対応して、貫通孔Hが形成されている。
【0060】
基板210は、半導体基板211とともに、半導体基板211上に多層に積層配置された絶縁膜と、絶縁膜に挟まれて配置された第2調整用電極242とを含んでいる。絶縁膜及び第2調整用電極242の構成は、第1実施形態に示した超音波センサ100の絶縁膜及び第2調整用電極142と基本的に同じである。異なる点は、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜212が、埋め込み絶縁膜211a及び第1調整用電極241上に形成されている点である。そして、埋め込み絶縁膜211a及び第1酸化膜212の、薄肉部120(メンブレン構造体)に対応する部位がそれぞれ除去され、除去された部分に空間Sが構成されている。したがって、本実施形態においても、第1酸化膜212上に積層された窒化膜213、シリコン酸化膜からなる第2酸化膜214、及びシリコン酸化膜からなる第3酸化膜215と第2調整用電極242のうち、空間S上の部分が薄肉部220となっている。すなわち、薄肉部220の下面(窒化膜213)と第1調整用電極241との間には空間Sが構成され、少なくとも圧電振動子230が振動しない状態で、両者が離間されている。それ以外の構成については、第1実施形態に示した超音波センサ100と同様であるので、その記載を省略する。
【0061】
このように本実施形態に係る超音波センサ200においても、薄肉部220を構成する第2調整用電極242と、薄肉部220と空間Sを介して離間された第1調整用電極241との間に、所定電圧を印加することができる。すなわち、メンブレン構造体のうち、薄肉部220に所定電圧を印加することができる。そして、第1調整用電極241と第2調整用電極242との間に所定電圧を印加し、両電極241,242間に、超音波を受けた際のメンブレン構造体のばねの復元力とは逆向きの静電気力(静電引力)を生じさせて、メンブレン構造体を変形(変位)させることができる。したがって、所謂負の静電ばね効果によって、メンブレン構造体のばね定数を実質的に変化させて、共振周波数を所望の値に調整することができる。
【0062】
また、本実施形態においても、第1調整用電極241を薄肉部220(メンブレン構造体)と離間し、第1調整用電極241の厚さを、メンブレン構造体の厚さよりも厚く設定している。したがって、第1調整用電極241の変位を抑制し、第2調整用電極242を含むメンブレン構造体を変形させることができるので、メンブレン構造体の変形量を大きくすることができる。すなわち、効率よく共振周波数を調整することができる。
【0063】
また、圧電振動子230を構成する圧電体薄膜231には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜231の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0064】
このように構成される超音波センサ200は、例えば以下に示す製造方法によって形成することができる。図8は、図7に示す超音波センサ200の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2調整用電極形成工程、(c)は振動子形成工程を示している。図9は、図8(c)に続く、超音波センサ200の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)はエッチング工程、(b)は離間工程を示している。
【0065】
先ず、図8(a)に示すように、半導体基板211として、シリコン酸化膜からなる埋め込み絶縁膜211aを介して、支持基板211b上に半導体層211cを配置してなる半導体基板(SOI基板)211を準備する。本実施形態においては、半導体層211cの厚さを3.5μm、埋め込み絶縁膜211aの厚さを0.5μm程度としている。そして、半導体層211cに、不純物をイオン注入(本実施形態においてはボロンイオンをドーズ量8×1016/cm2で注入)して熱処理(例えば1150℃で10h)し、所定形状にパターニングする。これにより、第1調整用電極241が形成される。本実施形態においては、第1調整用電極241の構造を、第1実施形態に示した第1調整用電極141の構造とほぼ同じとしている。すなわち、メンブレン構造体の形成領域において、第1調整用電極241は格子状に構成される。なお、不純物としてはボロンに限定されるものではなく、それ以外にも例えばリンを採用することができる。以上が、第1調整用電極形成工程である。
【0066】
第1調整用電極241形成後、調整用電極240の他方である第2調整用電極242を形成する。具体的には、図8(b)に示すように、埋め込み絶縁膜211a及び第1調整用電極241の表面上に、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜212を形成する。本実施形態においては、プラズマCVD法を用いてシリコン酸化膜を成膜し、エッチバックによる平滑化処理をして、厚さ5μm程度の第1酸化膜212を形成する。なお、平滑化処理を省略しても良い。第1酸化膜212形成後、第1実施形態同様の製造方法及び構成で、シリコン窒化膜からなる窒化膜213、第2酸化膜214、第2調整用電極242、第3酸化膜215を積層形成する。以上が第2調整用電極形成工程である。なお、図8(b)に示す符号216は、窒化膜213の形成に伴って、支持基板211bの埋め込み絶縁膜211a配置面の裏面に形成された窒化膜であり、符号217は、第2調整用電極242の形成に伴って形成されたポリシリコン膜である。
【0067】
第2調整用電極242形成後、図8(c)に示すように、第2調整用電極242上に、薄肉部220の形成領域を覆うように、第1実施形態同様の製造方法及び構成で、圧電振動子230を形成する。したがって、その記載を省略する。
【0068】
圧電振動子230形成後、図9(a)に示すように、支持基板211bの裏面を研削・研磨し、窒化膜216及びポリシリコン膜217を除去する。その後、支持基板211bの裏面にシリコン窒化膜218をプラズマCVD法により形成し、薄肉部220の形成部位に対応する不要部を例えばドライエッチングにより除去する。なお、本実施形態においては、厚さ0.5μm程度のシリコン窒化膜218を形成し、エッチング時のマスクとする。マスク形成後、支持基板211bの裏面側をTMAHやKOH等の強アルカリ性溶液に浸し、埋め込み絶縁膜211aをエッチングストッパとして、支持基板211bを異方性エッチングする。これにより、支持基板211bに貫通孔Hが形成される。以上がエッチング工程である。
【0069】
貫通孔H形成後、薄肉部220(メンブレン構造体)に対応する埋め込み絶縁膜211a及び第1酸化膜212の部位を除去する。具体的には、支持基板211bの裏面側を例えばフッ酸液に浸し、埋め込み絶縁膜211a及び第1酸化膜212を除去する。これにより、薄肉部220(メンブレン構造体)に対応する埋め込み絶縁膜211a及び第1酸化膜212の部位が除去されて空間Sが形成され、基板210に薄肉部220が形成される。すなわち、薄肉部220と圧電振動子230からなるメンブレン構造体が形成される。また、薄肉部220と第1調整用電極241とが離間される。以上が離間工程である。
【0070】
このように本実施形態に係る超音波センサ200の製造方法によれば、第1調整用電極241と第2調整用電極242との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサ200(図7参照)を形成することができる。
【0071】
また、本実施形態においては、半導体基板211として、SOI構造の半導体基板211を採用しており、半導体層211cに不純物を導入し、パターニングして第1調整用電極241を形成する。したがって、第1実施形態に示す超音波センサ100のように、PN接合にて絶縁分離するための、N+拡散領域やパッドを不要とすることができる。
【0072】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、図10に基づいて説明する。図10は、本発明の第3実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【0073】
第2実施形態に係る超音波センサは、第1,第2実施形態に係る超音波センサ100,200と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0074】
図10に示すように、本実施形態に係る超音波センサ300も、MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサであり、基板310と、基板310の薄肉部320上に形成された圧電振動子330と、薄肉部320に所定電圧を印加するための調整用電極340とを含んでいる。そして、2つの調整用電極340のうち、第2調整用電極342が、圧電振動子330の下部検出用電極332と共通化されている。
【0075】
基板310は、第1実施形態同様、第1導電型の半導体基板311を含んでいる。本実施形態においても、半導体基板311として、面方位(100)のN型シリコン基板を採用しており、半導体基板311の圧電振動子側の表層に、P導電型の拡散領域として第1調整用電極341が形成されている。また、半導体基板311には、薄肉部320に対応して、貫通孔Hが形成されており、第1調整用電極341の一部が、貫通孔H内に露出している。第1調整用電極341は、貫通孔Hを完全に塞がないように、格子状に構成されている。なお、図10に示す符号311aは、半導体基板311と第1調整用電極341とをPN接合にて絶縁分離するための、N+拡散領域であり、符号311bはパッドである。
【0076】
また、基板310は、半導体基板311とともに、半導体基板311上に配置された絶縁膜と、絶縁膜上に配置された圧電振動子330の下部検出用電極332とを含んでいる。
【0077】
本実施形態に係る絶縁膜は、圧電振動子側の半導体基板311の表面に配置された、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜313である。そして、第1酸化膜313上に、不純物(例えばボロンやリン)の導入された単結晶シリコンからなる下部検出用電極332が配置されている。
【0078】
第1酸化膜313は、半導体基板311に貫通孔Hを形成する際のエッチングストッパとしての機能を果たすものであり、薄肉部320(メンブレン構造体)に対応する部位が除去され、除去された部分に空間Sが構成されている。そして、第1酸化膜313上に積層された下部検出用電極332のうち、空間S上の部分が薄肉部320となっている。すなわち、薄肉部320の下面(下部検出用電極332)と第1調整用電極341との間には空間Sが構成され、少なくとも圧電振動子330が振動しない状態で、両者が離間されている。このように、本実施形態においては、下部検出用電極332が、第2調整用電極342としての機能と薄肉部320としての機能を果たすように構成されている。それ以外の構成については、第1実施形態に示した超音波センサ100と同様であるので、その記載を省略する。
【0079】
このように本実施形態に係る超音波センサ300においても、薄肉部320を構成する下部検出用電極332(第2調整用電極342)と、薄肉部320と空間Sを介して離間された第1調整用電極341との間に、所定電圧を印加することができる。すなわち、メンブレン構造体のうち、薄肉部320に所定電圧を印加することができる。そして、第1調整用電極341と下部検出用電極332(第2調整用電極342)との間に所定電圧を印加し、両電極341,332(342)間に、超音波を受けた際のメンブレン構造体のばねの復元力とは逆向きの静電気力(静電引力)を生じさせて、メンブレン構造体を変形(変位)させることができる。したがって、所謂負の静電ばね効果によって、メンブレン構造体のばね定数を実質的に変化させて、共振周波数を所望の値に調整することができる。
【0080】
また、本実施形態においても、第1調整用電極341を薄肉部320(メンブレン構造体)と離間し、第1調整用電極341の厚さを、メンブレン構造体の厚さよりも厚く設定している。したがって、第1調整用電極341の変位を抑制し、下部検出用電極332(第2調整用電極342)を含むメンブレン構造体を変形させることができるので、メンブレン構造体の変形量を大きくすることができる。すなわち、効率よく共振周波数を調整することができる。
【0081】
また、圧電振動子330を構成する圧電体薄膜331には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜331の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0082】
また、下部検出用電極332と第2調整用電極342を共通化しているので、第1、第2実施形態に示した構成に比べて、構造を簡素化することができる。
【0083】
なお、本実施形態においては、下部検出用電極332(第2調整用電極342)が、単結晶シリコンに不純物を導入してなる例を示した。それ以外にも、第1実施形態同様、ポリシリコン膜に不純物を導入してなる構成とすることも可能である。しかしながら、ポリシリコン膜は粒界が存在するため、メンブレン構造体の変形にともなって、粒界を起点とし、粒界に沿って亀裂が生じやすい。したがって、本実施形態に示すように、粒界のない単結晶シリコンを用いて、下部検出用電極332(第2調整用電極342)を構成することが好ましい。
【0084】
このように構成される超音波センサ300は、例えば以下に示す製造方法によって形成することができる。図11は、図10に示す超音波センサ300の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2シリコン基板準備工程、(c)は貼り合せ工程、(d)は振動子形成工程のうち、下部検出用電極(第2調整用電極)の形成部分を示す図である。図12は、図11(d)に続く、超音波センサ300の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は振動子形成工程、(b)はエッチング工程、(c)は離間工程を示している。
【0085】
先ず、図11(a)に示すように、本実施形態においても、半導体基板311として、面方位(100)のN型シリコン基板を準備し、半導体基板311の圧電振動子配置面側の表層に、調整用電極340の一方である第1調整用電極341を形成する。この工程は、第1実施形態に示す第1調整用電極形成工程と同様であるので、その記載を省略する。なお、第1実施形態同様、第1調整用電極341と併せて、半導体基板311に電位取り出し用のN+拡散領域311aも形成する。
【0086】
また、本実施形態においては、第1調整用電極形成工程と並行して、図11(b)に示すように、第2シリコン基板312を準備し、当該基板312の表面にシリコン酸化膜からなる酸化膜313を形成する。本実施形態においては、熱酸化によって、厚さ2μm程度の酸化膜313を形成する。なお、第2シリコン基板312の準備は、第1調整用電極341の形成前後に実施しても良い。以上が、第2シリコン基板準備工程である。
【0087】
次に、図11(c)に示すように、第1調整用電極341が形成された半導体基板311の表面上に、第2シリコン基板312を、酸化膜313が第1調整用電極形成面に接するように配置し、両者を貼り合わせて接合する。そして、第2シリコン基板312の厚さが所定厚さとなるように、酸化膜形成面の裏面から研削・研磨する。本実施形態においては、この研削・研磨により、第2シリコン基板312の厚さ(酸化膜313除く)を1μm程度とする。以上が、貼り合せ工程である。
【0088】
貼り合せ終了後、所定厚さに調整された第2シリコン基板312に対し、不純物を導入して熱処理し、不要部を例えばドライエッチングして所定形状にパターニングする。これにより、図11(d)に示すように、下部検出用電極332(第2調整用電極342)が形成される。本実施形態においては、ボロンイオンをドーズ量8×1016/cm2で注入し、その後熱処理(例えば1150℃で2h)している。なお、第2シリコン基板312に注入される不純物はボロンに限定されるものではない。例えばリンでも良い。以上が、振動子形成工程のうち、下部検出用電極332の形成部分である。なお、この下部検出用電極の形成が、第1、第2実施形態に記載の第2調整用電極形成工程に相当する。また、この工程において、酸化膜313の不要部を例えばドライエッチングし、酸化膜313をパターニングする。図11(d)においては、パッド341a,311b用のコンタクトホールが形成される。
【0089】
下部検出用電極332(第2調整用電極342)の形成後、図12(a)に示すように、下部検出用電極332上に、圧電体薄膜331、上部検出用電極333の順に積層配置し、圧電振動子330を形成する。なお、圧電体薄膜331、上部検出用電極333の構成及び製造方法は、第1実施形態と同様であるので、その記載を省略する。以上が、圧電振動子形成工程である。
【0090】
圧電振動子330形成後、半導体基板311の裏面を研削・研磨した後、半導体基板311の裏面にシリコン窒化膜318をプラズマCVD法により形成し、薄肉部320の形成部位に対応する不要部を例えばドライエッチングにより除去する。これにより、図12(b)に示すように、半導体基板311に貫通孔Hが形成される。貫通孔Hの形成方法は、第1実施形態と同様であるので、その記載を省略する。以上がエッチング工程である。
【0091】
なお、本実施形態においても、貫通孔H内に在る(すなわちメンブレン構造体の形成領域に在る)第1調整用電極341の部分は、格子状となっている。したがって、貫通孔H形成後、格子状の第1調整用電極341を介して、薄肉部320(メンブレン構造体)に対応する酸化膜313の部位を除去する。具体的には、半導体基板311の裏面側を例えばフッ酸液に浸し、酸化膜313を除去する。これにより、図12(c)に示すように、薄肉部320(メンブレン構造体)に対応する酸化膜313の部位が除去されて空間Sが形成され、基板310に薄肉部320が形成される。すなわち、薄肉部320(下部検出用電極332)と圧電振動子330からなるメンブレン構造体が形成される。また、薄肉部320と第1調整用電極341とが離間される。以上が離間工程である。
【0092】
このように本実施形態に係る超音波センサ300の製造方法によれば、調整用電極340として第1調整用電極341を含み、下部検出用電極332と第1調整用電極341との間に、所定電圧を印加する構成の超音波センサ300(図10参照)を形成することができる。
【0093】
また、下部検出用電極332と第2調整用電極342を共通化しているので、第1、第2実施形態に示した構成に比べて、製造工程を簡素化することができる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。なお、本発明の主旨は、メンブレン構造体を構成する薄肉部のみに所定電圧を印加し、それにより生じる静電気力によって、メンブレン構造体全体を変位(変形)させ、共振周波数を調整できる点にある。
【0095】
本実施形態においては、基板110,210,310に構成されるメンブレン構造体の個数については特に限定しなかった。メンブレン構造体は、1つの超音波素子として構成されている。例えば、1つの基板110,210,310に構成された1つのメンブレン構造体に対して、上述した本発明を適用しても良い。また、1つの基板110,210,310に複数のメンブレン構造体がアレイ化された超音波センサに対して、それぞれのメンブレン構造体の共振周波数を調整し、共振周波数のばらつきを低減することができる。すなわち、所定電圧の印加により、複数のメンブレン構造体を、共振周波数が同一の周波数に調整された構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1を圧電振動子側から見た平面図である。
【図4】図1に示す超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2調整用電極形成工程、(c)は振動子形成工程を示している。
【図5】図4(c)に続く、超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)はエッチング工程、(b)は離間工程を示している。
【図6】変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【図8】図7に示す超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2調整用電極形成工程、(c)は振動子形成工程を示している。
【図9】図8(c)に続く、超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)はエッチング工程、(b)は離間工程を示している。
【図10】本発明の第3実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【図11】図10に示す超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2シリコン基板準備工程、(c)は貼り合せ工程、(d)は振動子形成工程のうち、下部検出用電極(第2調整用電極)の形成部分を示す図である。
【図12】図11(d)に続く、超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は振動子形成工程、(b)はエッチング工程、(c)は離間工程を示している。
【符号の説明】
【0097】
100・・・超音波センサ
110・・・基板
111・・・半導体基板
120・・・薄肉部
130・・・圧電振動子
131・・・圧電体薄膜
132・・・下部検出用電極
133・・・上部検出用電極
140・・・調整用電極
141・・・第1調整用電極
142・・・第2調整用電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の障害物検知システム等に超音波センサが採用されている。このような超音波センサとして、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて作製された圧電式の超音波センサが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示される超音波センサは、SOI(Silicon On Insulator)構造の半導体基板に薄肉部(半導体活性層と絶縁膜層)を形成し、強誘電体を2つの電極(上部検出用電極、下部検出用電極)で挟設する圧電振動子を、強誘電体の上下面に各電極が配置される態様で、薄肉部を覆うように形成してなるものである。
【特許文献1】特開2003−284182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサにおいては、製造ばらつきによって、薄肉部と圧電振動子からなるメンブレン構造体の共振周波数が所望の共振周波数からずれる恐れがある。また、メンブレン構造体がアレイ化されたセンサにおいては、メンブレン構造体間に共振周波数のばらつきが生じる(すなわち、センサ感度にばらつきが生じる)という問題がある
これに対し、特許文献1においては、センサの動作中において、2つの電極間に所定電圧を印加することにより、センサの共振周波数を調整する方法が提案されている。この場合、強誘電体内に生じる自発分極の変化に伴って、剛性に関わる物性値(例えば膜応力、ヤング率)が変化し、共振周波数が変化する。しかしながら、電圧を印加し続けると分極の状態が徐々に変化するため、長期にわたって共振周波数を制御するのが困難である。
【0005】
また、特許文献1においては、センサの動作前において、2つの電極間に所定電圧を印加し、予め強誘電体の自発分極を変化させる(ポーリングする)ことで、センサの共振周波数を調整する方法も提案されている。しかしながら、この方法の場合、例えば室温で放置しておくと、自発分極が弱まることが知られており、長期にわたって共振周波数を制御するのが困難である。
【0006】
なお、これらの方法では、強誘電体のように自発分極を持つ材料でないと調整することができず、例えば窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)といった圧電体には適用することができない。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、長期にわたって共振周波数を制御できる超音波センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の超音波センサは、一部に薄肉部が形成された基板と、基板の厚さ方向において、2つの検出用電極間に圧電体薄膜を配置してなり、薄肉部上に形成された圧電振動子と、メンブレン構造体を構成する薄肉部と圧電振動子のうち、薄肉部に所定電圧を印加するための調整用電極と、を含み、印加された所定電圧に応じて、メンブレン構造体が変形することを特徴とする。
【0009】
このように本発明によれば、メンブレン構造体を構成する薄肉部に所定電圧を印加することが可能であり、所定電圧を印加すると、静電気力が生じてメンブレン構造体が変形(変位)する。すなわち、メンブレン構造体のばね定数が実質的に変化するので(所謂負の静電ばね効果)、共振周波数を調整することができる。また、圧電振動子を構成する圧電体薄膜には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0010】
なお、上述したように、共振周波数の制御に圧電体薄膜の自発分極を利用しないので、圧電体薄膜として、PZTのような強誘電体以外にも、例えば窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)といった圧電体を適用することができる。
【0011】
例えば請求項2に記載のように、調整用電極として、第1調整用電極と第2調整用電極を含み、第1調整用電極と第2調整用電極との間に、所定電圧を印加する構成を採用することができる。
【0012】
具体的には、請求項3に記載のように、基板が第1導電型の半導体基板と、半導体基板の圧電振動子側の表面上に多層に積層配置された絶縁膜を含み、第1調整用電極が、半導体基板の圧電振動子側の表層において、第1導電型とは反対の、第2導電型の拡散領域として構成され、第2調整用電極が、基板の厚さ方向において、絶縁膜に挟まれて配置され、薄肉部の形成領域において、第1調整用電極を残して半導体基板が除去され、絶縁膜のうち、少なくとも半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、第2調整用電極を含むメンブレン構造体と第1調整用電極とが離間された構成とすると良い。
【0013】
このように本発明によれば、メンブレン構造体と第1調整用電極とが離間されている(すなわち、メンブレン構造体と第1調整用電極との間に空隙がある)ので、所定電圧の印加によりメンブレン構造体を変形させ、共振周波数を調整することができる。なお、半導体基板と第1調整用電極とは、PN接合にて絶縁分離されている。
【0014】
また、請求項4に記載のように、半導体基板がシリコンからなる場合には、第1導電型としてN導電型、第2導電型としてP導電型を採用すると良い。このように構成すると、強アルカリ液によって半導体基板をエッチングし、薄肉部を形成するに当たり、半導体基板のみを除去し、P導電型の第1調整用電極を選択的に残すことができる。
【0015】
また、請求項5に記載のように、基板が、支持基板上に埋め込み絶縁膜を介して半導体層を配置してなる半導体基板と、半導体基板の圧電振動子側の表面上に多層に積層配置された絶縁膜を含み、第1調整用電極が、半導体層に不純物を導入することにより構成され、第2調整用電極が、基板の厚さ方向において、絶縁膜に挟まれて配置され、薄肉部の形成領域において、第1調整用電極を残して半導体基板が除去され、絶縁膜のうち、少なくとも半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、第2調整用電極を含むメンブレン構造体と第1調整用電極とが離間された構成としても良い。
【0016】
このように、埋め込み絶縁膜を有する半導体基板(例えばSOI構造半導体基板)を採用しても、請求項3に記載の発明と同様の構造を実現することができる。
【0017】
なお、請求項3〜5いずれかに記載の発明においては、請求項6に記載のように、基板の厚さ方向において、第1調整用電極の厚さを、メンブレン構造体の厚さよりも厚くした構成とすることが好ましい。これにより、電圧印加時の第1調整用電極の変形を抑え、第2調整用電極を含むメンブレン構造体の変形量を大きくすることができる。
【0018】
次に、請求項2に記載の発明とは異なる構成として、請求項7に記載のように、調整用電極として第1調整用電極を含み、2つの検出用電極の一方である基板側の下部検出用電極と第1調整用電極との間に、所定電圧を印加する構成を採用することもできる。
【0019】
このように、検出用電極を構成する下部検出用電極と第1調整用電極との間に所定電圧を印加することによっても、負の静電ばね効果によって、共振周波数を調整することができる。また、圧電振動子を構成する圧電体薄膜には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0020】
さらには、調整用電極の一方と検出用電極の一方を共通化しているので、請求項2に記載の発明に比べて、構成を簡素化することができる。
【0021】
請求項8,9に記載の発明の作用効果は、それぞれ請求項3,4に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0022】
なお、メンブレン構造体は超音波の受信や所定電圧の印加による静電気力によって変形する。したがって、変形による応力によって下部検出用電極が破壊されないようにすることが好ましい。請求項10に記載のように、下部検出用電極として、粒界のない単結晶シリコンに不純物を導入してなる構成を採用すると、粒界が存在する多結晶シリコンを採用する構成に比べて、下部検出用電極を破壊されにくくすることができる。すなわち経時的な安定性を高めることができる。
【0023】
請求項11に記載の発明の作用効果は、それぞれ請求項6に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0024】
請求項1〜11いずれかに記載の発明において、メンブレン構造体の個数は特に限定されない。例えば請求項12に記載のように、メンブレン構造体が複数形成され、メンブレン構造体を構成する薄肉部ごとに所定電圧を印加できる構成としても良い。このように、メンブレン構造体が複数形成された(換言すれば超音波素子がアレイ化された)超音波センサにおいても、上述した発明を適用することができる。この場合、1つの超音波センサに形成された、複数のメンブレン構造体(超音波素子)の共振周波数のばらつきを調整することができる。例えば請求項13に記載のように、所定電圧の印加により、複数のメンブレン構造体を、共振周波数が同一の周波数に調整された構成とすることができる。
【0025】
次に、請求項14に記載の発明は、基板の厚さ方向において2つの検出用電極間に圧電体薄膜が配置された圧電振動子を、基板に形成された薄肉部上に配置してなる超音波センサの製造方法であって、基板を構成するN導電型の第1シリコン基板の、圧電振動子側の表層に、薄肉部に所定電圧を印加するための第1調整用電極として、P導電型の拡散領域を形成する第1調整用電極形成工程と、第1調整用電極の形成後、薄肉部が形成される基板の部位上に、絶縁膜を介して、下部検出用電極、圧電体薄膜、上部検出用電極の順に積層してなる圧電振動子を形成する振動子形成工程と、第1シリコン基板の圧電振動子側表面の裏面から強アルカリ液によるエッチング処理を実施し、薄肉部の形成領域において、第1調整用電極を残して第1シリコン基板を除去するエッチング工程と、薄肉部の形成領域において、絶縁膜のうち、少なくとも第1シリコン基板の表面に接する絶縁膜を除去して、メンブレン構造体と第1調整用電極とを離間させる離間工程を備えることを特徴とする。
【0026】
このように本発明によれば、強アルカリ液によって薄肉部の形成領域に対応する第1シリコン基板を除去し、P導電型の第1調整用電極を選択的に残すことができる。したがって、第1調整用電極と薄肉部を効率よく形成することができる
なお、請求項15に記載のように、振動子形成工程の前に、第1調整用電極との間で、薄肉部に所定電圧の印加が可能な第2調整用電極を、第1調整用電極が形成された第1シリコン基板の表面上に、基板の厚さ方向において、多層に積層された絶縁膜間に挟まれる態様で形成する第2調整電極形成工程を備えると良い。これにより、第1調整用電極と第2調整用電極との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサを製造することができる。
【0027】
また、請求項16に記載のように、振動子形成工程の前に、第1調整用電極が形成された第1シリコン基板に対し、表面に絶縁膜としてシリコン酸化膜の形成された第2シリコン基板を、圧電振動子側表面とシリコン酸化膜形成面が接触するように貼り合せる貼り合せ工程を備え、振動子形成工程において、第2シリコン基板に不純物を導入し、第1調整用電極との間で、薄肉部に所定電圧の印加が可能な下部検出用電極を形成しても良い。これにより、第1調整用電極と下部検出用電極との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。図3は、図1を圧電振動子側から見た平面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波センサ100は、MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサであり、基板110と、基板110の薄肉部120上に形成された圧電振動子130と、薄肉部120に所定電圧を印加するための調整用電極140とを含んでいる。本実施形態に係る調整用電極140は、第1調整用電極141と第2調整用電極142の2つの電極からなる。
【0030】
基板110は、第1導電型の半導体基板111を含んでいる。本実施形態においては、半導体基板111として、面方位(100)のN型シリコン基板を採用しており、半導体基板111の圧電振動子側の表層に、P導電型の拡散領域として第1調整用電極141が形成されている。また、半導体基板111には、薄肉部120に対応して、貫通孔Hが形成されており、第1調整用電極141の一部が、貫通孔H内に露出している。第1調整用電極141は、貫通孔Hを完全に塞がないように、基板110の平面方向において、メンブレン構造体の形成領域の一部に配置されている。より具体的には、図2に示すように、メンブレン構造体の形成領域(図2中の破線で囲んだ領域)において、第1調整用電極141は格子状に構成されている。
【0031】
なお、半導体基板111には、図1に示すように、第1調整用電極141の形成部位とは異なる圧電振動子側の表層に、N+拡散領域111aが形成されている。そして、第1調整用電極141のパッド141aに対してN+拡散領域111aのパッド111bの電位が例えば数V以上高く設定され、半導体基板111と第1調整用電極141とがPN接合にて絶縁分離されている。
【0032】
また、基板110は、半導体基板111とともに、半導体基板111上に多層に積層配置された絶縁膜と、絶縁膜に挟まれて配置された第2調整用電極142とを含んでいる。
【0033】
本実施形態に係る絶縁膜は、圧電振動子側の半導体基板111の表面から、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜112、シリコン窒化膜からなる窒化膜113、シリコン酸化膜からなる第2酸化膜114、及びシリコン酸化膜からなる第3酸化膜115を順に積層して構成されている。そして、第2酸化膜114と第3酸化膜115に挟まれる態様で、不純物(例えばボロンやリン)の導入された多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)からなる第2調整用電極142が配置されている。本実施形態においては、多結晶シリコン膜にボロンが導入され、所定濃度に調整されている。
【0034】
第1酸化膜112は、半導体基板111に貫通孔Hを形成する際のエッチングストッパとしての機能を果たすものであり、薄肉部120(メンブレン構造体)に対応する部位が除去され、除去された部分に空間Sが構成されている。そして、第1酸化膜112上に積層された上述の絶縁膜113〜115と第2調整用電極142のうち、空間S上の部分が薄肉部120となっている。すなわち、薄肉部120の下面(窒化膜113)と第1調整用電極141との間には空間Sが構成され、少なくとも圧電振動子130が振動しない状態で、両者が離間されている。
【0035】
窒化膜113は、第1酸化膜112に空間Sを構成する際のエッチングストッパとしての機能を果たすとともに、自身の膜応力が引張であることを利用して、圧電振動子130が振動しない状態におけるメンブレン構造体(薄肉部)の坐屈を防ぐ機能を果たしている。
【0036】
圧電振動子130は、圧電体薄膜131を2つの検出用電極132,133間に配置してなるものである。本実施形態においては、図3に示すように、メンブレン構造体の形成領域(図3中の破線で囲んだ領域)を覆うように、第3酸化膜115上に、下部検出用電極132、圧電体薄膜131、上部検出用電極133の順で積層配置されている。
【0037】
圧電体薄膜131の構成材料としては、強誘電体であるPZTや、窒化アルミニウム(AlN),酸化亜鉛(ZnO)等を採用することができる。また、検出用電極132,133の構成材料しては、白金(Pt),金(Au),アルミニウム(Al)等を採用することができる。本実施形態においては、圧電体薄膜131の構成材料としてPZTを採用し、検出用電極132,133の構成材料として、Ptを採用している。なお、図1に示す符号132a,133a,142aは、それぞれパッドであり、符号118は、貫通孔Hを形成する際のマスクとなるシリコン窒化膜118である。
【0038】
このように本実施形態に係る超音波センサ100は、薄肉部120と圧電振動子130とにより、他の部位よりも薄肉のメンブレン構造体が構成され、このメンブレン構造体が超音波等の外力印加にともなって変形可能に構成されている。
【0039】
このように、MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサにおいては、製造ばらつきによって、薄肉部120と圧電振動子130からなるメンブレン構造体の共振周波数が所望の共振周波数からずれる恐れがある。また、メンブレン構造体がアレイ化された超音波センサ100においては、メンブレン構造体間に共振周波数のばらつきが生じる(すなわち、センサ感度にばらつきが生じる)という問題がある。
【0040】
これに対し、本実施形態に係る超音波センサ100においては、薄肉部120を構成する第2調整用電極142と、薄肉部120と空間Sを介して離間された第1調整用電極141との間に、所定電圧を印加することができる。すなわち、メンブレン構造体のうち、薄肉部120に所定電圧を印加することができる。そして、第1調整用電極141と第2調整用電極142との間に所定電圧を印加し、両電極141,142間に、超音波を受けた際のメンブレン構造体のばねの復元力とは逆向きの静電気力(静電引力)を生じさせて、メンブレン構造体を変形(変位)させることができる。
【0041】
ここで、垂直方向(基板110の厚さ方向)に作用する静電気力は、両電極141,142間の間隔に2乗に反比例し、印加電圧の2乗に比例して増大する。したがって、印加電圧が大きく、間隔が狭くなるほど、正味のばねの復元力は小さくなり、共振周波数が低周波側へシフトする。このように、所謂負の静電ばね効果によって、メンブレン構造体のばね定数を実質的に変化させて、共振周波数を所望の値に調整することができる。例えば、所定の周波数の超音波を受信した状態で、超音波センサ100の出力が最大となるように、両電極141,142間に印加する電圧を調整すれば良い。
【0042】
特に本実施形態においては、第1調整用電極141を薄肉部120(メンブレン構造体)と離間し、第1調整用電極141の厚さを、メンブレン構造体の厚さよりも厚く設定している。したがって、両電極141,142間に静電気力(静電引力)を生じさせた際に、第1調整用電極141は変位せず、第2調整用電極142を含むメンブレン構造体が変形(変位)する。このように、第1調整用電極141の変位を抑制し、第2調整用電極142を含むメンブレン構造体が変形するように構成すると、メンブレン構造体の変形量を大きくすることができる。すなわち、効率よく共振周波数を調整することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、圧電振動子130を構成する圧電体薄膜131には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜131の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0044】
このように構成される超音波センサ100は、例えば以下に示す製造方法によって形成することができる。図4は、図1に示す超音波センサ100の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2調整用電極形成工程、(c)は振動子形成工程を示している。図5は、図4(c)に続く、超音波センサ100の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)はエッチング工程、(b)は離間工程を示している。
【0045】
先ず、図4(a)に示すように、半導体基板111として、面方位(100)のN型シリコン基板を準備し、半導体基板111の圧電振動子配置面側の表層に、調整用電極140の一方である第1調整用電極141を形成する。具体的には、半導体基板111の圧電振動子配置面側の表面に例えば厚さ1μmのシリコン酸化膜からなるマスク(図示略)を形成して、所定位置に不純物をイオン注入(本実施形態においてはボロンイオンをドーズ量8×1016/cm2で注入)し、熱処理(例えば1150℃で10h)する。これにより、厚さ(深さ)約3μmの第1調整用電極141が形成される。以上が、第1調整用電極形成工程である。
【0046】
また、第1調整用電極141の形成領域とは異なる半導体基板111の圧電振動子配置面側の表面に不純物をイオン注入(本実施形態においてはリンイオンを注入)し、半導体基板111の電位取り出し用のN+拡散領域111aを形成する。なお、第1調整用電極141、N+拡散領域111aの形成に当たっては、イオン注入法以外にも、拡散法を適用することもできる。
【0047】
第1調整用電極141形成後、図4(b)に示すように、第1調整用電極141が形成された半導体基板111の表面上に、調整用電極140の他方である第2調整用電極142を形成する。具体的には、半導体基板111の表面上に、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜112を形成する。本実施形態においては、プラズマCVD法を用いて、厚さ4μm程度の第1酸化膜112を形成する。プラズマCVD以外にも、熱酸化によって形成しても良い。第1酸化膜112形成後、第1酸化膜112上に、シリコン窒化膜からなる窒化膜113を形成する。本実施形態においては、LP−CVD法を用いて、厚さ0.4μm程度の窒化膜113を形成する。このとき、半導体基板111の裏面に、シリコン窒化膜からなる窒化膜116が形成される。窒化膜113形成後、窒化膜113上に、シリコン酸化膜からなる第2酸化膜114を形成する。本実施形態においては、プラズマCVD法を用いて、厚さ0.2μm程度の第2酸化膜114を形成する。
【0048】
第2酸化膜114形成後、第2酸化膜114上に、例えばポリシリコン膜を堆積させ、不純物イオンを注入する。本実施形態においてはボロンイオンをドーズ量2×1016/cm2で注入し、その後熱処理(例えば1150℃で2h)している。なお、ポリシリコン膜に注入される不純物はボロンに限定されるものではない。例えばリンでも良い。また、不純物の導入されたポリシリコン膜の形成方法も上記例に限定されるものではない。不純物がドープされたポリシリコン膜を形成しても良い。このように、不純物が導入されたポリシリコン膜142を形成後、ポリシリコン膜142上に、シリコン酸化膜からなる第3酸化膜115を形成する。本実施形態においては、プラズマCVD法を用いて、厚さ0.2μm程度の第3酸化膜115を形成する。なお、このとき、半導体基板111の裏面に、ポリシリコン膜117が形成される。
【0049】
そして、第3酸化膜115、ポリシリコン膜142、第2酸化膜114、窒化膜113、第1酸化膜112の順で、不要部を例えばドライエッチングにより除去し、図4(b)に示すようにそれぞれをパターニングする。これにより、ポリシリコン膜142がパターニングされて、上下面を第3酸化膜115と第2酸化膜114に挟まれ、薄肉部120を覆う態様の、第2調整用電極142が形成される。以上が第2調整用電極形成工程である。
【0050】
第2調整用電極142形成後、図4(c)に示すように、第2調整用電極142上に、薄肉部120の形成領域を覆うように、圧電振動子130を形成する。具体的には、第3酸化膜115上に、Pt膜を蒸着法により堆積し、不要部を例えばドライエッチングにより除去する。これにより、薄肉部120を覆うようにパターニングされた下部検出用電極132が形成される。なお、本実施形態においては、厚さ0.25μm程度の下部検出用電極132を形成する。下部検出用電極132形成後、下部検出用電極132上に、圧電体薄膜131としてのPZT膜を、薄肉部120を覆うように、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法等により形成し、不要部を例えばドライエッチングにより除去する。なお、本実施形態においては、スパッタ法を用いて、厚さ1.0μm程度の圧電体薄膜131を形成する。圧電体薄膜131形成後、圧電体薄膜131上に、Pt膜を蒸着法により堆積し、不要部を例えばドライエッチングにより除去する。これにより、薄肉部120を覆うようにパターニングされた上部検出用電極133が形成される。なお、本実施形態においては、厚さ0.25μm程度の上部検出用電極133を形成する。以上が、圧電振動子形成工程である。
【0051】
圧電振動子130形成後、図5(a)に示すように、半導体基板111の裏面を研削・研磨し、窒化膜116及びポリシリコン膜117を除去する。その後、半導体基板111の裏面にシリコン窒化膜118をプラズマCVD法により形成し、薄肉部120の形成部位に対応する不要部を例えばドライエッチングにより除去する。なお、本実施形態においては、厚さ0.5μm程度のシリコン窒化膜118を形成し、エッチング時のマスクとする。マスク形成後、半導体基板111の裏面側をTMAHやKOH等の強アルカリ性溶液に浸し、第1酸化膜112をエッチングストッパとして、半導体基板111を異方性エッチングする。これにより、半導体基板111に貫通孔Hが形成される。なお、N導電型の半導体基板111は強アルカリ性溶液によって異方性エッチングされるが、P導電型である第1調整用電極141はエッチングされず、貫通孔H内に残る。以上がエッチング工程である。
【0052】
なお、貫通孔H内に在る(すなわちメンブレン構造体の形成領域に在る)第1調整用電極141の部分は、格子状となっている。したがって、貫通孔H形成後、格子状の第1調整用電極141を介して、薄肉部120(メンブレン構造体)に対応する第1酸化膜112の部位を除去する。具体的には、半導体基板111の裏面側を例えばフッ酸液に浸し、第1酸化膜112を除去する。これにより、薄肉部120(メンブレン構造体)に対応する第1酸化膜112の部位が除去されて空間Sが形成され、基板110に薄肉部120が形成される。すなわち、薄肉部120と圧電振動子130からなるメンブレン構造体が形成される。また、薄肉部120と第1調整用電極141とが離間される。以上が離間工程である。
【0053】
このように本実施形態に係る超音波センサ100の製造方法によれば、第1調整用電極141と第2調整用電極142との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサ100(図1参照)を形成することができる。
【0054】
また、強アルカリ液によって薄肉部120の形成領域に対応する半導体基板111を除去し、P導電型の第1調整用電極141を選択的に残すことができる。したがって、第1調整用電極141と薄肉部120を効率よく形成することができる。
【0055】
なお、第1調整用電極141と第2調整用電極142との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサ100は、上記例に限定されるものではない。例えば、図6に示すように、図1に示す構成に対して、第2調整用電極142と窒化膜113の積層順を入れ替えた構成としても良い。この場合、第1調整用電極141と第2調整用電極142との間の間隔が縮まるので、図1に示す構成よりも低電圧で共振周波数を調整することができる。図6は、変形例を示す断面図である。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図7に基づいて説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【0057】
第2実施形態に係る超音波センサは、第1実施形態に係る超音波センサ100と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0058】
図7に示すように、本実施形態に係る超音波センサ200も、MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサであり、基板210と、基板210の薄肉部220上に形成された圧電振動子230と、薄肉部220に所定電圧を印加するための調整用電極240とを含んでおり、調整用電極240は、第1調整用電極241と第2調整用電極242の2つの電極からなる。
【0059】
基板210は、埋め込み絶縁膜(シリコン酸化膜)211aを介して、支持基板211b上に半導体層を配置してなる半導体基板211を含んでいる。この半導体層に、不純物(本実施形態においてはボロン)が導入され、所定形状にパターニングされて、図7に示す第1調整用電極241が構成されている。また、支持基板211bには、薄肉部220に対応して、貫通孔Hが形成されている。
【0060】
基板210は、半導体基板211とともに、半導体基板211上に多層に積層配置された絶縁膜と、絶縁膜に挟まれて配置された第2調整用電極242とを含んでいる。絶縁膜及び第2調整用電極242の構成は、第1実施形態に示した超音波センサ100の絶縁膜及び第2調整用電極142と基本的に同じである。異なる点は、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜212が、埋め込み絶縁膜211a及び第1調整用電極241上に形成されている点である。そして、埋め込み絶縁膜211a及び第1酸化膜212の、薄肉部120(メンブレン構造体)に対応する部位がそれぞれ除去され、除去された部分に空間Sが構成されている。したがって、本実施形態においても、第1酸化膜212上に積層された窒化膜213、シリコン酸化膜からなる第2酸化膜214、及びシリコン酸化膜からなる第3酸化膜215と第2調整用電極242のうち、空間S上の部分が薄肉部220となっている。すなわち、薄肉部220の下面(窒化膜213)と第1調整用電極241との間には空間Sが構成され、少なくとも圧電振動子230が振動しない状態で、両者が離間されている。それ以外の構成については、第1実施形態に示した超音波センサ100と同様であるので、その記載を省略する。
【0061】
このように本実施形態に係る超音波センサ200においても、薄肉部220を構成する第2調整用電極242と、薄肉部220と空間Sを介して離間された第1調整用電極241との間に、所定電圧を印加することができる。すなわち、メンブレン構造体のうち、薄肉部220に所定電圧を印加することができる。そして、第1調整用電極241と第2調整用電極242との間に所定電圧を印加し、両電極241,242間に、超音波を受けた際のメンブレン構造体のばねの復元力とは逆向きの静電気力(静電引力)を生じさせて、メンブレン構造体を変形(変位)させることができる。したがって、所謂負の静電ばね効果によって、メンブレン構造体のばね定数を実質的に変化させて、共振周波数を所望の値に調整することができる。
【0062】
また、本実施形態においても、第1調整用電極241を薄肉部220(メンブレン構造体)と離間し、第1調整用電極241の厚さを、メンブレン構造体の厚さよりも厚く設定している。したがって、第1調整用電極241の変位を抑制し、第2調整用電極242を含むメンブレン構造体を変形させることができるので、メンブレン構造体の変形量を大きくすることができる。すなわち、効率よく共振周波数を調整することができる。
【0063】
また、圧電振動子230を構成する圧電体薄膜231には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜231の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0064】
このように構成される超音波センサ200は、例えば以下に示す製造方法によって形成することができる。図8は、図7に示す超音波センサ200の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2調整用電極形成工程、(c)は振動子形成工程を示している。図9は、図8(c)に続く、超音波センサ200の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)はエッチング工程、(b)は離間工程を示している。
【0065】
先ず、図8(a)に示すように、半導体基板211として、シリコン酸化膜からなる埋め込み絶縁膜211aを介して、支持基板211b上に半導体層211cを配置してなる半導体基板(SOI基板)211を準備する。本実施形態においては、半導体層211cの厚さを3.5μm、埋め込み絶縁膜211aの厚さを0.5μm程度としている。そして、半導体層211cに、不純物をイオン注入(本実施形態においてはボロンイオンをドーズ量8×1016/cm2で注入)して熱処理(例えば1150℃で10h)し、所定形状にパターニングする。これにより、第1調整用電極241が形成される。本実施形態においては、第1調整用電極241の構造を、第1実施形態に示した第1調整用電極141の構造とほぼ同じとしている。すなわち、メンブレン構造体の形成領域において、第1調整用電極241は格子状に構成される。なお、不純物としてはボロンに限定されるものではなく、それ以外にも例えばリンを採用することができる。以上が、第1調整用電極形成工程である。
【0066】
第1調整用電極241形成後、調整用電極240の他方である第2調整用電極242を形成する。具体的には、図8(b)に示すように、埋め込み絶縁膜211a及び第1調整用電極241の表面上に、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜212を形成する。本実施形態においては、プラズマCVD法を用いてシリコン酸化膜を成膜し、エッチバックによる平滑化処理をして、厚さ5μm程度の第1酸化膜212を形成する。なお、平滑化処理を省略しても良い。第1酸化膜212形成後、第1実施形態同様の製造方法及び構成で、シリコン窒化膜からなる窒化膜213、第2酸化膜214、第2調整用電極242、第3酸化膜215を積層形成する。以上が第2調整用電極形成工程である。なお、図8(b)に示す符号216は、窒化膜213の形成に伴って、支持基板211bの埋め込み絶縁膜211a配置面の裏面に形成された窒化膜であり、符号217は、第2調整用電極242の形成に伴って形成されたポリシリコン膜である。
【0067】
第2調整用電極242形成後、図8(c)に示すように、第2調整用電極242上に、薄肉部220の形成領域を覆うように、第1実施形態同様の製造方法及び構成で、圧電振動子230を形成する。したがって、その記載を省略する。
【0068】
圧電振動子230形成後、図9(a)に示すように、支持基板211bの裏面を研削・研磨し、窒化膜216及びポリシリコン膜217を除去する。その後、支持基板211bの裏面にシリコン窒化膜218をプラズマCVD法により形成し、薄肉部220の形成部位に対応する不要部を例えばドライエッチングにより除去する。なお、本実施形態においては、厚さ0.5μm程度のシリコン窒化膜218を形成し、エッチング時のマスクとする。マスク形成後、支持基板211bの裏面側をTMAHやKOH等の強アルカリ性溶液に浸し、埋め込み絶縁膜211aをエッチングストッパとして、支持基板211bを異方性エッチングする。これにより、支持基板211bに貫通孔Hが形成される。以上がエッチング工程である。
【0069】
貫通孔H形成後、薄肉部220(メンブレン構造体)に対応する埋め込み絶縁膜211a及び第1酸化膜212の部位を除去する。具体的には、支持基板211bの裏面側を例えばフッ酸液に浸し、埋め込み絶縁膜211a及び第1酸化膜212を除去する。これにより、薄肉部220(メンブレン構造体)に対応する埋め込み絶縁膜211a及び第1酸化膜212の部位が除去されて空間Sが形成され、基板210に薄肉部220が形成される。すなわち、薄肉部220と圧電振動子230からなるメンブレン構造体が形成される。また、薄肉部220と第1調整用電極241とが離間される。以上が離間工程である。
【0070】
このように本実施形態に係る超音波センサ200の製造方法によれば、第1調整用電極241と第2調整用電極242との間に所定電圧を印加する構成の超音波センサ200(図7参照)を形成することができる。
【0071】
また、本実施形態においては、半導体基板211として、SOI構造の半導体基板211を採用しており、半導体層211cに不純物を導入し、パターニングして第1調整用電極241を形成する。したがって、第1実施形態に示す超音波センサ100のように、PN接合にて絶縁分離するための、N+拡散領域やパッドを不要とすることができる。
【0072】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、図10に基づいて説明する。図10は、本発明の第3実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【0073】
第2実施形態に係る超音波センサは、第1,第2実施形態に係る超音波センサ100,200と共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0074】
図10に示すように、本実施形態に係る超音波センサ300も、MEMS技術を用いて作製された圧電式の超音波センサであり、基板310と、基板310の薄肉部320上に形成された圧電振動子330と、薄肉部320に所定電圧を印加するための調整用電極340とを含んでいる。そして、2つの調整用電極340のうち、第2調整用電極342が、圧電振動子330の下部検出用電極332と共通化されている。
【0075】
基板310は、第1実施形態同様、第1導電型の半導体基板311を含んでいる。本実施形態においても、半導体基板311として、面方位(100)のN型シリコン基板を採用しており、半導体基板311の圧電振動子側の表層に、P導電型の拡散領域として第1調整用電極341が形成されている。また、半導体基板311には、薄肉部320に対応して、貫通孔Hが形成されており、第1調整用電極341の一部が、貫通孔H内に露出している。第1調整用電極341は、貫通孔Hを完全に塞がないように、格子状に構成されている。なお、図10に示す符号311aは、半導体基板311と第1調整用電極341とをPN接合にて絶縁分離するための、N+拡散領域であり、符号311bはパッドである。
【0076】
また、基板310は、半導体基板311とともに、半導体基板311上に配置された絶縁膜と、絶縁膜上に配置された圧電振動子330の下部検出用電極332とを含んでいる。
【0077】
本実施形態に係る絶縁膜は、圧電振動子側の半導体基板311の表面に配置された、シリコン酸化膜からなる第1酸化膜313である。そして、第1酸化膜313上に、不純物(例えばボロンやリン)の導入された単結晶シリコンからなる下部検出用電極332が配置されている。
【0078】
第1酸化膜313は、半導体基板311に貫通孔Hを形成する際のエッチングストッパとしての機能を果たすものであり、薄肉部320(メンブレン構造体)に対応する部位が除去され、除去された部分に空間Sが構成されている。そして、第1酸化膜313上に積層された下部検出用電極332のうち、空間S上の部分が薄肉部320となっている。すなわち、薄肉部320の下面(下部検出用電極332)と第1調整用電極341との間には空間Sが構成され、少なくとも圧電振動子330が振動しない状態で、両者が離間されている。このように、本実施形態においては、下部検出用電極332が、第2調整用電極342としての機能と薄肉部320としての機能を果たすように構成されている。それ以外の構成については、第1実施形態に示した超音波センサ100と同様であるので、その記載を省略する。
【0079】
このように本実施形態に係る超音波センサ300においても、薄肉部320を構成する下部検出用電極332(第2調整用電極342)と、薄肉部320と空間Sを介して離間された第1調整用電極341との間に、所定電圧を印加することができる。すなわち、メンブレン構造体のうち、薄肉部320に所定電圧を印加することができる。そして、第1調整用電極341と下部検出用電極332(第2調整用電極342)との間に所定電圧を印加し、両電極341,332(342)間に、超音波を受けた際のメンブレン構造体のばねの復元力とは逆向きの静電気力(静電引力)を生じさせて、メンブレン構造体を変形(変位)させることができる。したがって、所謂負の静電ばね効果によって、メンブレン構造体のばね定数を実質的に変化させて、共振周波数を所望の値に調整することができる。
【0080】
また、本実施形態においても、第1調整用電極341を薄肉部320(メンブレン構造体)と離間し、第1調整用電極341の厚さを、メンブレン構造体の厚さよりも厚く設定している。したがって、第1調整用電極341の変位を抑制し、下部検出用電極332(第2調整用電極342)を含むメンブレン構造体を変形させることができるので、メンブレン構造体の変形量を大きくすることができる。すなわち、効率よく共振周波数を調整することができる。
【0081】
また、圧電振動子330を構成する圧電体薄膜331には所定電圧を印加しない(すなわち、圧電体薄膜331の自発分極を利用するものではない)ので、長期にわたって共振周波数を制御することができる。
【0082】
また、下部検出用電極332と第2調整用電極342を共通化しているので、第1、第2実施形態に示した構成に比べて、構造を簡素化することができる。
【0083】
なお、本実施形態においては、下部検出用電極332(第2調整用電極342)が、単結晶シリコンに不純物を導入してなる例を示した。それ以外にも、第1実施形態同様、ポリシリコン膜に不純物を導入してなる構成とすることも可能である。しかしながら、ポリシリコン膜は粒界が存在するため、メンブレン構造体の変形にともなって、粒界を起点とし、粒界に沿って亀裂が生じやすい。したがって、本実施形態に示すように、粒界のない単結晶シリコンを用いて、下部検出用電極332(第2調整用電極342)を構成することが好ましい。
【0084】
このように構成される超音波センサ300は、例えば以下に示す製造方法によって形成することができる。図11は、図10に示す超音波センサ300の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2シリコン基板準備工程、(c)は貼り合せ工程、(d)は振動子形成工程のうち、下部検出用電極(第2調整用電極)の形成部分を示す図である。図12は、図11(d)に続く、超音波センサ300の一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は振動子形成工程、(b)はエッチング工程、(c)は離間工程を示している。
【0085】
先ず、図11(a)に示すように、本実施形態においても、半導体基板311として、面方位(100)のN型シリコン基板を準備し、半導体基板311の圧電振動子配置面側の表層に、調整用電極340の一方である第1調整用電極341を形成する。この工程は、第1実施形態に示す第1調整用電極形成工程と同様であるので、その記載を省略する。なお、第1実施形態同様、第1調整用電極341と併せて、半導体基板311に電位取り出し用のN+拡散領域311aも形成する。
【0086】
また、本実施形態においては、第1調整用電極形成工程と並行して、図11(b)に示すように、第2シリコン基板312を準備し、当該基板312の表面にシリコン酸化膜からなる酸化膜313を形成する。本実施形態においては、熱酸化によって、厚さ2μm程度の酸化膜313を形成する。なお、第2シリコン基板312の準備は、第1調整用電極341の形成前後に実施しても良い。以上が、第2シリコン基板準備工程である。
【0087】
次に、図11(c)に示すように、第1調整用電極341が形成された半導体基板311の表面上に、第2シリコン基板312を、酸化膜313が第1調整用電極形成面に接するように配置し、両者を貼り合わせて接合する。そして、第2シリコン基板312の厚さが所定厚さとなるように、酸化膜形成面の裏面から研削・研磨する。本実施形態においては、この研削・研磨により、第2シリコン基板312の厚さ(酸化膜313除く)を1μm程度とする。以上が、貼り合せ工程である。
【0088】
貼り合せ終了後、所定厚さに調整された第2シリコン基板312に対し、不純物を導入して熱処理し、不要部を例えばドライエッチングして所定形状にパターニングする。これにより、図11(d)に示すように、下部検出用電極332(第2調整用電極342)が形成される。本実施形態においては、ボロンイオンをドーズ量8×1016/cm2で注入し、その後熱処理(例えば1150℃で2h)している。なお、第2シリコン基板312に注入される不純物はボロンに限定されるものではない。例えばリンでも良い。以上が、振動子形成工程のうち、下部検出用電極332の形成部分である。なお、この下部検出用電極の形成が、第1、第2実施形態に記載の第2調整用電極形成工程に相当する。また、この工程において、酸化膜313の不要部を例えばドライエッチングし、酸化膜313をパターニングする。図11(d)においては、パッド341a,311b用のコンタクトホールが形成される。
【0089】
下部検出用電極332(第2調整用電極342)の形成後、図12(a)に示すように、下部検出用電極332上に、圧電体薄膜331、上部検出用電極333の順に積層配置し、圧電振動子330を形成する。なお、圧電体薄膜331、上部検出用電極333の構成及び製造方法は、第1実施形態と同様であるので、その記載を省略する。以上が、圧電振動子形成工程である。
【0090】
圧電振動子330形成後、半導体基板311の裏面を研削・研磨した後、半導体基板311の裏面にシリコン窒化膜318をプラズマCVD法により形成し、薄肉部320の形成部位に対応する不要部を例えばドライエッチングにより除去する。これにより、図12(b)に示すように、半導体基板311に貫通孔Hが形成される。貫通孔Hの形成方法は、第1実施形態と同様であるので、その記載を省略する。以上がエッチング工程である。
【0091】
なお、本実施形態においても、貫通孔H内に在る(すなわちメンブレン構造体の形成領域に在る)第1調整用電極341の部分は、格子状となっている。したがって、貫通孔H形成後、格子状の第1調整用電極341を介して、薄肉部320(メンブレン構造体)に対応する酸化膜313の部位を除去する。具体的には、半導体基板311の裏面側を例えばフッ酸液に浸し、酸化膜313を除去する。これにより、図12(c)に示すように、薄肉部320(メンブレン構造体)に対応する酸化膜313の部位が除去されて空間Sが形成され、基板310に薄肉部320が形成される。すなわち、薄肉部320(下部検出用電極332)と圧電振動子330からなるメンブレン構造体が形成される。また、薄肉部320と第1調整用電極341とが離間される。以上が離間工程である。
【0092】
このように本実施形態に係る超音波センサ300の製造方法によれば、調整用電極340として第1調整用電極341を含み、下部検出用電極332と第1調整用電極341との間に、所定電圧を印加する構成の超音波センサ300(図10参照)を形成することができる。
【0093】
また、下部検出用電極332と第2調整用電極342を共通化しているので、第1、第2実施形態に示した構成に比べて、製造工程を簡素化することができる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。なお、本発明の主旨は、メンブレン構造体を構成する薄肉部のみに所定電圧を印加し、それにより生じる静電気力によって、メンブレン構造体全体を変位(変形)させ、共振周波数を調整できる点にある。
【0095】
本実施形態においては、基板110,210,310に構成されるメンブレン構造体の個数については特に限定しなかった。メンブレン構造体は、1つの超音波素子として構成されている。例えば、1つの基板110,210,310に構成された1つのメンブレン構造体に対して、上述した本発明を適用しても良い。また、1つの基板110,210,310に複数のメンブレン構造体がアレイ化された超音波センサに対して、それぞれのメンブレン構造体の共振周波数を調整し、共振周波数のばらつきを低減することができる。すなわち、所定電圧の印加により、複数のメンブレン構造体を、共振周波数が同一の周波数に調整された構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1を圧電振動子側から見た平面図である。
【図4】図1に示す超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2調整用電極形成工程、(c)は振動子形成工程を示している。
【図5】図4(c)に続く、超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)はエッチング工程、(b)は離間工程を示している。
【図6】変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【図8】図7に示す超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2調整用電極形成工程、(c)は振動子形成工程を示している。
【図9】図8(c)に続く、超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)はエッチング工程、(b)は離間工程を示している。
【図10】本発明の第3実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【図11】図10に示す超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は第1調整用電極形成工程、(b)は第2シリコン基板準備工程、(c)は貼り合せ工程、(d)は振動子形成工程のうち、下部検出用電極(第2調整用電極)の形成部分を示す図である。
【図12】図11(d)に続く、超音波センサの一製造方法の一部を示す断面図であり、(a)は振動子形成工程、(b)はエッチング工程、(c)は離間工程を示している。
【符号の説明】
【0097】
100・・・超音波センサ
110・・・基板
111・・・半導体基板
120・・・薄肉部
130・・・圧電振動子
131・・・圧電体薄膜
132・・・下部検出用電極
133・・・上部検出用電極
140・・・調整用電極
141・・・第1調整用電極
142・・・第2調整用電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に薄肉部が形成された基板と、
前記基板の厚さ方向において、2つの検出用電極間に圧電体薄膜を配置してなり、前記薄肉部上に形成された圧電振動子と、
メンブレン構造体を構成する前記薄肉部と前記圧電振動子のうち、前記薄肉部に所定電圧を印加するための調整用電極と、を含み、
印加された前記所定電圧に応じて、前記メンブレン構造体が変形することを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記調整用電極は、第1調整用電極と第2調整用電極を含み、
前記第1調整用電極と前記第2調整用電極との間に、前記所定電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記基板は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の圧電振動子側の表面上に多層に積層配置された絶縁膜を含み、
前記第1調整用電極は、前記半導体基板の圧電振動子側の表層において、前記第1導電型とは反対の、第2導電型の拡散領域として構成され、
前記第2調整用電極は、前記基板の厚さ方向において、前記絶縁膜に挟まれて配置され、
前記薄肉部の形成領域において、前記第1調整用電極を残して前記半導体基板が除去され、前記絶縁膜のうち、少なくとも前記半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、前記第2調整用電極を含む前記メンブレン構造体と前記第1調整用電極とが離間されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記半導体基板はシリコンからなり、
前記第1導電型は、N導電型であり、
前記第2導電型は、P導電型であることを特徴とする請求項3に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記基板は、支持基板上に埋め込み絶縁膜を介して半導体層を配置してなる半導体基板と、前記半導体基板の圧電振動子側の表面上に多層に積層配置された絶縁膜を含み、
前記第1調整用電極は、前記半導体層に不純物を導入することにより構成され、
前記第2調整用電極は、前記基板の厚さ方向において、前記絶縁膜に挟まれて配置され、
前記薄肉部の形成領域において、前記第1調整用電極を残して前記半導体基板が除去され、前記絶縁膜のうち、少なくとも前記半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、前記第2調整用電極を含む前記メンブレン構造体と前記第1調整用電極とが離間されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記基板の厚さ方向において、前記第1調整用電極の厚さが、前記メンブレン構造体の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項3〜5いずれか1項に記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記調整用電極は、第1調整用電極を含み、
前記2つの検出用電極の一方である基板側の下部検出用電極と前記第1調整用電極との間に、前記所定電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項8】
前記基板は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の圧電振動子側の表面上に配置された絶縁膜を含み、
前記第1調整用電極は、前記半導体基板の圧電振動子側の表層において、前記第1導電型とは反対の、第2導電型の拡散領域として構成され、
前記薄肉部の形成領域において、前記第1調整用電極を残して前記半導体基板が除去され、前記絶縁膜のうち、少なくとも前記半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、前記メンブレン構造体と前記第1調整用電極とが離間されていることを特徴とする請求項7に記載の超音波センサ。
【請求項9】
前記半導体基板はシリコンからなり、
前記第1導電型は、N導電型であり、
前記第2導電型は、P導電型であることを特徴とする請求項8に記載の超音波センサ。
【請求項10】
前記下部検出用電極は、単結晶シリコンに不純物を導入してなることを特徴とする請求項9に記載の超音波センサ。
【請求項11】
前記基板の厚さ方向において、前記第1調整用電極の厚さが、前記メンブレン構造体の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項8〜10いずれか1項に記載の超音波センサ。
【請求項12】
前記メンブレン構造体が複数形成されており、
前記メンブレン構造体を構成する前記薄肉部ごとに前記所定電圧を印加できることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項に記載の超音波センサ。
【請求項13】
前記所定電圧の印加により、複数の前記メンブレン構造体の共振周波数が同一の周波数に調整されていることを特徴とする請求項12に記載の超音波センサ。
【請求項14】
基板の厚さ方向において2つの検出用電極間に圧電体薄膜が配置された圧電振動子を、前記基板に形成された薄肉部上に配置してなる超音波センサの製造方法であって、
前記基板を構成するN導電型の第1シリコン基板の、圧電振動子側の表層に、前記薄肉部に所定電圧を印加するための第1調整用電極として、P導電型の拡散領域を形成する第1調整用電極形成工程と、
前記第1調整用電極形成工程後、前記薄肉部が形成される前記基板の部位上に、絶縁膜を介して、下部検出用電極、圧電体薄膜、上部検出用電極の順に積層してなる前記圧電振動子を形成する振動子形成工程と、
前記第1シリコン基板の圧電振動子側表面の裏面から強アルカリ液によるエッチング処理を実施し、前記薄肉部の形成領域において、前記第1調整用電極を残して前記第1シリコン基板を除去するエッチング工程と、
前記薄肉部の形成領域において、前記絶縁膜のうち、少なくとも前記第1シリコン基板の表面に接する絶縁膜を除去して、前記メンブレン構造体と前記第1調整用電極とを離間させる離間工程を備えることを特徴とする超音波センサの製造方法。
【請求項15】
前記振動子形成工程の前に、前記第1調整用電極との間で、前記薄肉部に所定電圧の印加が可能な第2調整用電極を、前記第1調整用電極が形成された前記第1シリコン基板の表面上に、前記基板の厚さ方向において、多層に積層された前記絶縁膜間に挟まれる態様で形成する第2調整電極形成工程を備えることを特徴とする請求項14に記載の超音波センサの製造方法。
【請求項16】
前記振動子形成工程の前に、前記第1調整用電極が形成された前記第1シリコン基板に対し、表面に前記絶縁膜としてシリコン酸化膜の形成された第2シリコン基板を、前記圧電振動子側表面と前記シリコン酸化膜形成面が接触するように貼り合せる貼り合せ工程を備え、
前記振動子形成工程において、前記第2シリコン基板に不純物を導入し、前記第1調整用電極との間で、前記薄肉部に所定電圧の印加が可能な前記下部検出用電極を形成することを特徴とする請求項14に記載の超音波センサの製造方法。
【請求項1】
一部に薄肉部が形成された基板と、
前記基板の厚さ方向において、2つの検出用電極間に圧電体薄膜を配置してなり、前記薄肉部上に形成された圧電振動子と、
メンブレン構造体を構成する前記薄肉部と前記圧電振動子のうち、前記薄肉部に所定電圧を印加するための調整用電極と、を含み、
印加された前記所定電圧に応じて、前記メンブレン構造体が変形することを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記調整用電極は、第1調整用電極と第2調整用電極を含み、
前記第1調整用電極と前記第2調整用電極との間に、前記所定電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記基板は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の圧電振動子側の表面上に多層に積層配置された絶縁膜を含み、
前記第1調整用電極は、前記半導体基板の圧電振動子側の表層において、前記第1導電型とは反対の、第2導電型の拡散領域として構成され、
前記第2調整用電極は、前記基板の厚さ方向において、前記絶縁膜に挟まれて配置され、
前記薄肉部の形成領域において、前記第1調整用電極を残して前記半導体基板が除去され、前記絶縁膜のうち、少なくとも前記半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、前記第2調整用電極を含む前記メンブレン構造体と前記第1調整用電極とが離間されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記半導体基板はシリコンからなり、
前記第1導電型は、N導電型であり、
前記第2導電型は、P導電型であることを特徴とする請求項3に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記基板は、支持基板上に埋め込み絶縁膜を介して半導体層を配置してなる半導体基板と、前記半導体基板の圧電振動子側の表面上に多層に積層配置された絶縁膜を含み、
前記第1調整用電極は、前記半導体層に不純物を導入することにより構成され、
前記第2調整用電極は、前記基板の厚さ方向において、前記絶縁膜に挟まれて配置され、
前記薄肉部の形成領域において、前記第1調整用電極を残して前記半導体基板が除去され、前記絶縁膜のうち、少なくとも前記半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、前記第2調整用電極を含む前記メンブレン構造体と前記第1調整用電極とが離間されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記基板の厚さ方向において、前記第1調整用電極の厚さが、前記メンブレン構造体の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項3〜5いずれか1項に記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記調整用電極は、第1調整用電極を含み、
前記2つの検出用電極の一方である基板側の下部検出用電極と前記第1調整用電極との間に、前記所定電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項8】
前記基板は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の圧電振動子側の表面上に配置された絶縁膜を含み、
前記第1調整用電極は、前記半導体基板の圧電振動子側の表層において、前記第1導電型とは反対の、第2導電型の拡散領域として構成され、
前記薄肉部の形成領域において、前記第1調整用電極を残して前記半導体基板が除去され、前記絶縁膜のうち、少なくとも前記半導体基板の表面に接する絶縁膜が除去され、前記メンブレン構造体と前記第1調整用電極とが離間されていることを特徴とする請求項7に記載の超音波センサ。
【請求項9】
前記半導体基板はシリコンからなり、
前記第1導電型は、N導電型であり、
前記第2導電型は、P導電型であることを特徴とする請求項8に記載の超音波センサ。
【請求項10】
前記下部検出用電極は、単結晶シリコンに不純物を導入してなることを特徴とする請求項9に記載の超音波センサ。
【請求項11】
前記基板の厚さ方向において、前記第1調整用電極の厚さが、前記メンブレン構造体の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項8〜10いずれか1項に記載の超音波センサ。
【請求項12】
前記メンブレン構造体が複数形成されており、
前記メンブレン構造体を構成する前記薄肉部ごとに前記所定電圧を印加できることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項に記載の超音波センサ。
【請求項13】
前記所定電圧の印加により、複数の前記メンブレン構造体の共振周波数が同一の周波数に調整されていることを特徴とする請求項12に記載の超音波センサ。
【請求項14】
基板の厚さ方向において2つの検出用電極間に圧電体薄膜が配置された圧電振動子を、前記基板に形成された薄肉部上に配置してなる超音波センサの製造方法であって、
前記基板を構成するN導電型の第1シリコン基板の、圧電振動子側の表層に、前記薄肉部に所定電圧を印加するための第1調整用電極として、P導電型の拡散領域を形成する第1調整用電極形成工程と、
前記第1調整用電極形成工程後、前記薄肉部が形成される前記基板の部位上に、絶縁膜を介して、下部検出用電極、圧電体薄膜、上部検出用電極の順に積層してなる前記圧電振動子を形成する振動子形成工程と、
前記第1シリコン基板の圧電振動子側表面の裏面から強アルカリ液によるエッチング処理を実施し、前記薄肉部の形成領域において、前記第1調整用電極を残して前記第1シリコン基板を除去するエッチング工程と、
前記薄肉部の形成領域において、前記絶縁膜のうち、少なくとも前記第1シリコン基板の表面に接する絶縁膜を除去して、前記メンブレン構造体と前記第1調整用電極とを離間させる離間工程を備えることを特徴とする超音波センサの製造方法。
【請求項15】
前記振動子形成工程の前に、前記第1調整用電極との間で、前記薄肉部に所定電圧の印加が可能な第2調整用電極を、前記第1調整用電極が形成された前記第1シリコン基板の表面上に、前記基板の厚さ方向において、多層に積層された前記絶縁膜間に挟まれる態様で形成する第2調整電極形成工程を備えることを特徴とする請求項14に記載の超音波センサの製造方法。
【請求項16】
前記振動子形成工程の前に、前記第1調整用電極が形成された前記第1シリコン基板に対し、表面に前記絶縁膜としてシリコン酸化膜の形成された第2シリコン基板を、前記圧電振動子側表面と前記シリコン酸化膜形成面が接触するように貼り合せる貼り合せ工程を備え、
前記振動子形成工程において、前記第2シリコン基板に不純物を導入し、前記第1調整用電極との間で、前記薄肉部に所定電圧の印加が可能な前記下部検出用電極を形成することを特徴とする請求項14に記載の超音波センサの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−295405(P2007−295405A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122577(P2006−122577)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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